仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ アズール×ムラサメ DUST TO DUST   作:正気山脈

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「晴明さん!! まだ終わらないんですか!?」

 翔と紫乃たちが刈人と戦っている最中、ホメオスタシスの地下研究所にいる若葉は、未だ鎖の解除に手こずっている晴明に業を煮やしていた。

「急かさないでくれ……あともう少しなんだ」

 一方の晴明も、焦りながらも残り四分の一というところまで解呪を進め鎖を外す事ができている。
 駿斗もその様子を時折横目に見つつ、鋼作や琴奈が観測している街の様子を同じく眺めていた。
 そして、数刻の後。翔らのいる廃工場の方で、白い光の柱が立ち上る。

「なんだ!?」
「あれは一体……!?」

 思わずガタッ、と椅子を倒して立ち上がる一同。
 晴明もまた手を止めてしまい、神妙な面持ちで息を呑んでいた。

「ま、まさか。セピア様の予言通りだとすれば……間に合わなかったというのか……!?」

※ ※ ※ ※ ※

「喰らいやがれ!」

 翔たちが工場内に入った後、外に残った五人の仮面ライダーたちは四罪ヤミーと交戦していた。
 リボルブは共工を、雅龍とザギークは驩兜を、ネイヴィは鯀を、キアノスは三苗をそれぞれ相手取っている。
 銃口からの火炎弾を共工ヤミーに向けて発射するものの、同時に共工の方も口から火炎を放って相殺。そのまま自らの爪でリボルブへと襲いかかった。

「チッ! この野郎……!」

 その寸前、キアノスのパーフェクトガンナーからの銃弾がヤミーの側頭部を撃ち抜き、隙を突いてリボルブも蹴って距離を取る。

「ギャァッ!?」
「悪いが長々と相手をしてやる余裕はない。ここで全員、消えろ!!」

 キアノスの言葉に応じて、全員が動き出す。
 雅龍とザギークは驩兜に槍を突き出し共工にぶつけ、キアノスもサーベルで三苗を斬って同じ方向に転がし、残る鯀はネイヴィが蹴倒してチェーンアームで四体纏めて絡め取る。
 こうして拘束した瞬間、五人は息を合わせて同時にドライバーを操作した。

《リボルビングフィニッシュコード! Alright(オーライ)! ラプターズ・マテリアルエクスプロージョン!》
《マスタリーパニッシュメントコード! Oh YES(オゥ・イエス)! ブリザード・マテリアルターミネイション!》
《パニッシュメントコード! Oh YES(オゥ・イエス)! スピーディフォレスト・マテリアルパニッシャー!》
《フィニッシュコード! Alright(オーライ)! サイクロン・マテリアルエンド!》
《パーフェクトフィニッシュコード!! Alright(オーライ)!! エイペクス・マテリアルディバイダー!!》
『ハァァァァァーッ!!』

 一塊になったヤミーたちを取り囲んで放たれた、五人がかりのライダーキック。
 それにより爆散した四罪ヤミーたちはセルメダルをバラ撒きながら消滅し――その銀色のメダルが、上空へと舞い上がっていった。

「……なに!?」

 驚き、空を見上げるリボルブ。
 そこには白い光の柱が建っており、全てのメダルがそこに集合しつつあるようだった。

「一体何が起きているんだ……!?」

 間違いなく状況が動き出そうとしている。それを理解しつつ、一同は廃工場の方に足を進める。

※ ※ ※ ※ ※

『ヤァァァッ!』
「ハァーッ!」
《フィニッシュコード・トリオ! Action(アクション)! オトギガールズ・マテリアルシンフォニー!》
Charging Color(チャージング・カラー)! Last Calling(ラスト・コーリング)! トライカラー・クロマティックスクリュー!》

 紫乃が下階でグレイと戦っているのと同じ頃、アシュリィたち三姉妹とロゼは、前後から挟み込む形で必殺技を発動し、バケキツネザルを追い詰めていた。

「ぐっ!?」

 正面からの三人の斬撃を鎖鎌で防ごうとするが押し切られ、さらに背後からのブリューナクの一突きを受けてしまい、よろめく化神。
 素早い相手だが数の差という要素は、この戦況において彼女らを優勢とした。

「よし……少しずつ攻撃が当たるようになってる、こっちが有利!」
「このまま一気に攻め立てましょう!」

 だが、バケキツネザルはそれでも余裕を崩さず「フン」と鼻で笑う。

「いい気にならないで貰いたいですねぇ、あのメダルさえ完成すれば貴方がたなど……!」

 傷をかばいながらそう言った、次の瞬間。
 トランクを隠しておいた小部屋の方で、チカチカと光が明滅する。
 それを確認して、バケキツネザルは身を震わせながら部屋の方へ走り出した。

「ちょ!? 逃げた!?」
「き、来た! 来た来た来た来た来た、来たァ~!!」

 歓喜の叫びを上げてドアを蹴破り、くノ一の化神はトランクをこじ開け一本のベルトを手に取る。
 直後、刈人たちの前に現れた仮面ライダーたちがコアメダルを摘出しようとしている場面に遭遇すると、彼女は思い切り腕を振り被る。

「させるかァ!!」

 そして迷うことなく、その戦場へ銀色のベルトを投げ入れた。
 すると、ベルトは仮面ライダーと刈人との間で浮遊し、ひとりでに起動し始める。

「この時を待っていた……あは、あははははは!!」


PAGE.07[銀河へGiant Step]

《ヘキサギンガオードライバー!!》

 

 音声を発し、漂いながらリガレとマルムの方へゆっくりと向かっていくベルト。

 それでも構わずムラサメは強大な念動力を発揮し、コアメダルを取り除こうとする。

 しかし、目の前のベルトから発せられる不可思議な力場により、メダルは刈人たちの身体から動かなかった。

 

「これは……剥がせない!?」

「どうして!? 一体何が起きてるんだ!?」

 

 異変はそれだけに留まらず、リガレとマルムも苦しみ始めた。

 

「ぐ、俺たちも……」

「身体が、め、メダルに……!?」

 

 見ればその肉体は徐々にセルメダルへと変質しており、まるで喰われているかのように黒い泥がドライバーへと吸収されていく。

 それによってリガレは左半身を、マルムは右半身を失っていた。

 

「教えて差し上げましょう。今、何が起こっているのか」

「バケキツネザル……!」

 

 勝ち誇った様子でくつくつと笑う化神が、両腕を拡げ一行に向かって語りだす。

 

「リガレ様とマルム様の体内に埋め込んだコアメダル、それは『ショッカーメダル』という特殊なもので、かつて異界の悪の組織(ショッカー)の首領が最強最悪の仮面ライダー『ヘキサオーズ』に変身するために用いたメダルなのですよ」

「ショッカー? ヘキサオーズ? 一体何の話だ!?」

「あはは! この宇宙の人間が知る必要はありませんよ……ともかく、ヴァンダル・リーグ上層部の方々はこのメダルの内三枚を再生し、現物が失われた残り三枚に代わる新たなショッカー系メダルの開発を目指した」

 

 ジャラジャラ、というセルメダルの金属音を聞きなながら、バケキツネザルは頭を振る。

 

「ですがそれだけでは仮面ライダーを相手にするには不足と判断した彼らは、六枚のショッカーメダルを扱うための新たなドライバーを開発したのです。それこそが、このヘキサギンガオードライバー! 本来なら『SOLU』という宇宙生命体の力が不可欠なのですが……幸いにも丁度良く、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

 それを聞くと、半身をさらにセルメダルに分解されつつある刈人の二人は、ハッと目を剥いた。

 

「ま、まさか……」

「俺たちを、そのSOLUってヤツの代わりに!?」

 

 自分たちをこのドライバーの動力に変換するために、ヴァンダル・リーグはグレイを介して近づき、そしてアズールに消されないようにメダルを体内に埋め込みつつ時間をかけて完成させたのだ。

 全てが計画された動き。それを知って、リガレとマルムは――()()()()()()()()()

 

「いいねそれェ! 最ッ高じゃねーの!」

「マルムと完全に一体となり、新たな姿の動力としてこの宇宙を滅ぼす、か……実に面白い!」

「ナマでブッ壊れるトコを見れねェのが惜しいけどな! 虚無に還れるなら悪かねェ!」

 

 既に身体の大半を喪失しながらも大笑いする彼らの様子を、ムラサメは不気味に感じて息を呑む。

 

「こいつら……イカレてるのか!?」

「そういう連中なんだよ、刈人っていうのは!!」

 

 自分たちが何らかの実験の素材に使われたとしても、それが最終的に宇宙の滅びと虚無の供物に繋がるならそれで良い。

 刈人とはそのような破滅思想の持ち主であり、だからこそヴァンダル・リーグのような組織へ協力を惜しまないのだ。

 アズールはうんざりだとでも言うようにリガレとマルムを睨みつけ、そして二人の刈人は完全にセルメダルそのものと化し、混ざりあった。

 

「さぁ! 今こそ、目覚めるのです! 全宇宙の銀河を掴む真なる王よ!」

 

 バケキツネザルのその呼びかけに呼応して、セルメダルの中に紛れたショッカーメダルが動き出し、一枚ずつヘキサギンガオードライバーに装填されていく。

 

《ショッカー!》

《ゲルショッカー!》

《デストロン!》

《大ショッカー!》

《スペースショッカー!》

SHOCKER(ショッカー)!》

 

 そして最後に、人の形を成したセルメダルの群体にドライバーが装着され、銀貨で構成されたその腕が天面のスイッチを押す。

 瞬間、その場に白い光の柱が立ち昇って天井を突き破ると共に、メダルの塊に実体を与える。

 光の消失と共に現れたのは、まさしく『異形』と称するに値する怪人。

 一つの頭部に六つの鷲の顔の骨格がぐるりと一周する形で配置され、さらにその頭頂部は透き通った機械的なパーツで保護されており、内側はプラネタリウムのように無数の細かい星が散りばめられている。

 両肩と胸から下の身体の各部は黒いローブに覆われて全貌は把握できないが、隙間から覗く右腕には蛇の牙を彷彿とさせる長い骨の刃が伸び出ている他、左腕にも蛇の骨格を思わせるノコギリめいた曲刀が生えているのが分かった。

 脚部はサソリを彷彿とさせるものになっており、特に爪先はサソリのツメに似た尖ったものになっている。さらに、背からは骨で形成されたサソリの尾が生える。

 また左手には、リガレも使っていた終焔剣絶終を持つ。

 

「我が名は超絶大銀河王(ヘキサギンガオー)……銀河に蔓延る目障りな下等生物どもよ、塵芥となって消えるが良い」

 

 十二の眼をギラリと光らせ、銀河の王を名乗る怪人は告げる。

 と同時に、銀河王は自らの右手を地面に叩きつけた。

 

《ギンガブリュー!》

「ヌゥン!!」

 

 すると、床の破損部からセルメダルが飛び散ると共に、その手にクリアオレンジの刃を持つ斧が装備される。

 パーツには大口を開けたドラゴンの意匠が施されており、赤く鋭い目はアズールとムラサメを睨んでいるかのようであった。

 

「行くぞ」

 

 攻撃が来る。

 それを察知してムラサメは念動力を全開にし、アズールと自身を守る盾とした。

 だが、瞬きの間に間合いを詰めた超絶大銀河王のギンガブリューによる一振りは、その防御を容易く突き破って二人を後方へ押し退ける。

 

「く!? なんてパワーだ!!」

「念動壁を突き破るだと……!?」

 

 まともに受ければ無事では済まないだろう。

 そう思って二人とも距離を取ろうとした瞬間に、目の前にいたはずの銀河王の姿が()()()

 

「はっ!?」

「なに!?」

 

 突然の出来事に戸惑い、二人は素速く周囲に目をやって消えた敵影を探す。

 そして後ろを振り返った刹那、音もなく銀河王がその場に現れ、背中のローブを刃が付いた六つの骨の翼に変えてアズールとムラサメを斬り刻んだ。

 

「ヌゥン!!」

『うわあああっ!?』

 

 斬撃を受けてよろめきながらも、紫乃は敵の攻撃の正体について考える。

 突然に消えて、また突然背後から現れた。自分もアズールもその瞬間は目撃していない。

 となれば、やはり時間を操作してこちらが知覚できない状態で攻撃している可能性が高いだろう。

 そう思ったムラサメは「ならば!」とカレイドライザーを抜き取ってレリックドライバーに変更し、新たにリキッドを装填する。

 

BRUSH-UP(ブラッシュ・アップ)!! 時を超え空を駆ける絆の翼!! 天元突破!! ソニックペガサスエクシード!!》

 

 時間操作を無力化する能力を持つ形態、ムラサメ エクシード。この姿ならば銀河王の攻撃を見切れるはず。

 だが。

 その直後に再び超絶大銀河王の姿が消失し、今度は頭上から骨サソリの尾針が襲いかかって来た。

 

「……ぐっ!? 時を止める能力ではないというのか!?」

 

 避けきれずに腕で受けつつ、ムラサメはアズールと共にバックステップ。

 敵の能力の詳細が全く分からない。ただひとつ確かなのは、これでは撤退するのも継戦するのも困難だという事だ。

 

「そろそろ遊びは終わりにしよう」

 

 超絶大銀河王は剣を投げ捨て、自身の胸に左手を突き入れる。

 そして引き抜くと、その手中には四枚のセルメダルが収まっていた。

 さらにギンガブリューの刃のスロットから内側へとそれらを装填、レバーを下ろしてプレス機のようにメダルを圧壊させると、斧の下部にあるタンクに超高圧縮されたエネルギーが流れ込んで蓄積されていく。

 続いてグリップを握りながら素速くギンガブリューをバズーカ形態に変形させ、超絶大銀河王はアズールとムラサメを狙いトリガーを引いた。

 

「ギャラクティカ・ドゥーム!」

 

 タンクと直結した砲口から放たれる、極大な漆黒の光線。

 ムラサメは咄嗟にサイキックの力で自分とアズール、さらにブリューナクとピクシーズを操作して射線から外れるものの、あまりの破壊力故に直撃を避けたにも関わらず吹き飛ばされてしまう。

 

「ぐ、あ!?」

「そんな……!」

 

 既に原型を失いつつあった廃工場はこの一撃で半壊し、問答無用で一同は変身解除され、地に伏した。

 そうして仮面ライダーたちを一網打尽にした超絶大銀河王は、散らばるセルメダルを見やった後に腕を天に掲げ、その銀貨たちを操って上空へ集めていく。

 

「一体何を?」

「この超絶大銀河王の偉大さと強大さは証明された。もう遊んでやる必要はない、このまま()()()()()()()()()

 

 銀河王はそう告げた後、手をグッと握り込む。

 

「いでよ、銀河王船(エクソダス)

 

 瞬間、集約したセルメダルは一塊になって、銀色に煌くボディの浮遊する巨大戦艦へと変化した。

 そうして作られた戦艦に、銀河王と彼に擦り寄るバケキツネザルが共に乗り込む。

 

「さらばだ仮面ライダー。せいぜいこの超絶大銀河王に挑んだ己の愚かさを呪い、無様に死んでいけ」

 

 天から聞こえて来る、超絶大銀河王とバケキツネザルの嘲笑う声。

 一方、地上の紫乃たちは戦艦を見上げ歯を軋ませていた。

 

「くっ……マズいぞ! あのまま飛ばれたら追いつけん、今度こそ終わる!」

「翔、紫乃! ありゃ一体どうなってんだ!?」

 

 工場の外で戦っていた鷹弘らが駆けつけ、翔たちは手短ながら事情を説明する。

 マガツムラサメは倒したものの、刈人が新たな姿の超絶大銀河王として生まれ変わり、その力で工場を吹き飛ばしてしまった事を。

 鷹弘たちの方も、先程まで戦っていた四罪ヤミーが全員セルメダルになって空に飛んでいった事を伝え、エクソダスを見上げ頭を抱えていた。

 

「バカな……こんなの、ボクには一言も……」

 

 アダンに支えられ合流したグレイも、呆然として空の船を仰いでいる。

 この宇宙を滅ぼす以上自分が死ぬ事そのものは織り込み済みだったのだが、明らかに計画していた内容と乖離しているのだ。そもそも、当初の予定ではバケキツネザルも共に滅びる予定だったはず。

 ヴァンダル・リーグは私欲のため、超絶大銀河王を生み出すために、自分たちを単なる捨て駒として利用したのか。グレイは、そう結論を出さざるを得なかった。

 

「まさかあんなものを作れるとはな」

「どうにかして止めないと!」

 

 そんな会話をしている間に、頭上のエクソダスは地上に向かっての砲撃が始まる。

 狙いは当然、翔たちホメオスタシスとLOTの連合軍。

 変身が解けている者もいる中、多量のセルメダルから圧縮抽出されたエネルギー弾幕が放たれた――その瞬間、十二の聖獣たちが一行の前に現れて結界を貼った。

 

「十二天将!? 晴明か!!」

 

 この場に本人の姿はないものの、紫乃は彼からの助力を確信し、駆けつけた聖獣に目を向ける。

 すると、その内の一体である太裳が一枚の霊符を渡して、結界を展開し続けて砲撃から全員を守り抜く。

 渡された札を見て、紫乃はハッと目を剥き、頷いた。

 

「なるほど……Aパワーアーマーか!」

 

 言うなりその霊符を放って内包された力を解放すると、稲光と共に8m近い巨大な鉄の塊めいた鎧が出現する。

 対大規模神的災害専用兵装、Aパワーアーマー。以前ウロボロス・ギガとの戦いで破壊された後、回収してムラサメの生成するオリハルコンで修繕したものだ。

 この装備ならば戦艦を落とすことも不可能ではなく、状況的にも今なら使用が認められる。紫乃はすぐに判断し、カレイドライザーでムラサメ 千紫万紅に変身した後、胸の操縦席に乗り込む。

 

「お前も乗れ翔、必ずヤツを止めるぞ!」

「分かった!」

 

 翔もアズール チャンピオンリンカーの姿で肩にしがみつき、二人はパワーアーマーごと空へ飛び立つ。

 当然それを銀河王たちが見逃すはずもなく、砲撃が二人に向かって集中する。

 だが、意思に反応し柔剛自在となる金属のオリハルコンの堅牢な鎧は同乗しているアズールの分も上乗せされており、セルメダル砲の連撃にも耐え凌いで見せた。

 

「よし……流石はオリハルコン! なんともないぞ!」

「銀河王め、必ず決着をつけてやる! 行こう紫乃くん!」

「ああ!」

 

 オリハルコン・パワーアーマーはさらに高く飛翔し、今なお砲撃を続けるエクソダスを追跡していく。

 

 

 

「紫乃が……戦っている……こんなことになっても、まだ諦めてないのか」

 

 その様子を地上から眺めるのは、無力な打ちひしがれたグレイだった。

 

「ボクは、こんなところで何をやっている……?」

 

 続いて震える自分の手を見下ろして、再び嘆きの声を発する。

 すると背後から、苛立ったクリスの叫びが聞こえて来た。

 

「あぁクソッ!! アタシたちは見てる事しかできねぇのかよ!? あいつらのために、何かやれる事ねぇのか!?」

「アレ程の強大な戦艦が相手では、むしろ二人の足手まといになりかねないからな……」

 

 響の言葉に鷹弘らも悔しげに頷き、せめて翔たちのためにと声を上げて応援を始める。

 戦えないのは自分だけじゃない。しかし彼らはグレイと違い紫乃たち同様に諦めず、なんとかして支える方法や万が一倒されてしまった場合の備えを考えていた。

 グレイは改めて、自分自身に問う。

 今のボクに何ができる?

 気付けば項垂れていたはずの彼の体は動き出し、トワイライトナインテイルのリキッドを握っていた。

 当然、鷹弘はその行動に反発する。

 

「動くんじゃねぇ! テメェが敵なのは分かってんだ、少しでも妙な事をしたら――」

「待ってくれ」

 

 そこで止めに入ったのは、アダンだった。

 グレイからは先程までの意気消沈した様子も、再会した時の世界を呪う事に執着した様子も見られない。

 何よりもアダンは、再起しつつある彼の姿から、紫乃や灰矢のような『光』を見ていた。

 

「紫乃は……紫乃やクリスは、ボクの家族だったんだ! 事件の後生きていてくれたのを知って、本当はすごく嬉しかった……今はもう道を違えてしまったけど、その家族が危険な目に遭ってるのに……何もせずにいて良いワケがない!」

 

 瞬間、その手に持っているトワイライトナインテイルが白い光に包みこまれる。

 ――グレイの使うレリックライザーDに組み込まれた遺物は、使い物にならず廃棄された妖刀 村雨の破片。しかしムラサメ用レリックライザーに使われているものより質が落ちており、変身するのに充分な量とは言えない。

 そこを補ったのが、銃とリキッドの両方に内蔵されている『殺生石』だった。元々は九尾の狐そのものであり、それが退治された末に石に変じたものだ。

 そして、九尾の妖狐とは元来、辟邪の力を持つ瑞獣でもある。

 

「彼らに救われたボクだからこそ……!!」

 

 マガツムラサメの持つ呪いの力は、カタルシスエナジーと似通った感情に起因するもの。

 だからこそ、その呪いを自らの心で打ち払った時、()()()()()姿()()()()()

 

《白面金毛!! サンライズナインテイル!!》

「今立ち上がらなくて、いつやるんだよ!?」

 

 黒い缶の表面に加わった、金縁の白い狐の面のような装飾。

 グレイがそのスイッチを押し込むと、黒いインクが周囲に張り巡らされていく。

 

「待っててくれ、紫乃! ボクもすぐに行くから!」

Correcting Color(コレクティング・カラー)!! DAWNBREAK GRADATION(ドーンブレイク・グラデーション)!!》

「変身!!」

WHITE-OUT(ホワイト・アウト)!!》

 

 リキッドをドライバーにセットしてトリガーを引いた瞬間に、これまでと同じくグレイの全身は呪わしいインクで埋め尽くされる。

 だが、そうしてマガツムラサメの姿が完成した直後、その顔部を白い仮面が覆った。

 すると黒いボディに亀裂が走り、カサブタが剥がれるように中から金色に輝く装甲があらわとなって、アンダースーツも黒から白へ転じていた。

 

《天・地・人!! 現し世を照らす光の如し!! 纏いし白面が呪禍を祓う!!》

「ボクが……戦う!!」

《サンライズナインテイル!!》

 

 オリハルコンと同じ性質を持つヒヒイロカネの装甲が煌き、白いマントを翻す、新たに生まれ変わった戦士。

 仮面ライダーアマツムラサメは、ドライバーにセットされているサンライズナインテイル・リキッドを押し込むと、再びトリガーを引く。

 

《サンライズナインテイル!! Calling(コーリング)!!》

 

 そうしてインクの塊が眼前に生み出され、それが大きな体躯の白い九尾の狐の姿を形作る。

 アマツムラサメはその狐に跨がり、命じた。

 

「飛べ!」

 

 その言葉の通りに妖狐はアマツを乗せて飛翔し、高く高くムラサメを追って飛んでいく。

 アダンはその姿を黙って見上げ、満足そうに薄く微笑んだ。

 

 先に空での攻防を繰り広げていたムラサメとアズールは、船へ近づくにつれ徐々に防戦一方になっていた。

 銀河王船が全セルメダル砲の照準を操縦席の一点に集中させ、念動波の壁とオリハルコンを無理矢理こじ開けようとしているのだ。

 実際その戦術は最も効果的であり、至近距離から雨霰と放たれた砲撃によって、サイキックのバリアが先程破られてしまった。すぐに再生はできたものの、立て続けに攻撃を受ければどうなるかは分からない。

 せめて武器を使うだけの隙さえできれば、簡単に船に乗り込めるのだが。

 紫乃がそう考えた、その直後。

 

「封!!」

 

 発射されたセルメダル砲のエネルギー弾が、Aパワーアーマーの前を横切ったアマツムラサメの生み出す光のヴェールの中へと吸い込まれた。

 

「……グレイ!?」

「紫乃、翔! キミたちを支援する、守りはボクに任せてくれ!」

 

 言葉通りに、彼は何度も何度もセルメダル砲を防ぎ続けている。

 

「すごい! 彼は敵の攻撃を無力化できるのか!」

「呪いを捨て、封呪の力を得たか……やるな、グレイ」

 

 これなら、ようやく一撃を叩き込めるだろう。

 ムラサメはそう思ってグレイに心の中で感謝を捧げつつ、Aパワーアーマーの背中にマウントしてある唯一の武器を外し、両腕で()()()()()()()()()()()

 それは、一見すれば巨大なコンテナか何かのようにしか見えない鉄の塊。しかしよく見れば上部には刀の鍔のようなものがあり、それが柄である事を示している。

 続いて操縦席のムラサメがオリハルコンを通して念力を送り込むと、その鍔部から巨大な念動力の刃が形成される。

 

「『トツカノツルギ-金剛破断超力無双巨刃(サイキック・ソリッド・ブレード)』――抜ッッッッッ……刀ォォォォォリャアアアアアッ!!」

 

 そして、全力で振り下ろす。

 巨大すぎる念動刃はセルメダル圧縮エネルギーのバリアに阻まれるものの、それはほんの一瞬であり、すぐに甲板に直撃。

 大破して高度を落とし始めた瞬間、Aパワーアーマーとアマツムラサメは、損傷が再生しない内にエクソダスへと飛び乗った。

 

「無茶苦茶だねこれ……なんで武器らしいものを何も持ってないんだろうと思ったけど、これ一本で充分だからか……」

「元は再びテュポーン並の脅威が現れた時のための武装だ。このくらいでなくてはな」

 

 言いながら巨大鎧から降りた後、ムラサメはアマツと視線を交わす。

 刹那の無言の間。

 その直後、正面の扉からバケキツネザルが飛び出して来る。

 

「貴様ら、よくもやってくれましたね!? 今すぐ皆殺しにしてやりますよォッ!!」

 

 尻尾で鎖鎌を振るい、手裏剣を無数に投擲して奇襲するバケキツネザル。

 しかしアズールとムラサメの前にアマツが出て来ると、全ての手裏剣を刀一本で叩き落とし、鎖鎌も弾き返す。

 

「二人は行ってくれ。こいつとは……ボクが決着をつける!」

 

 刀を収めて構え、居合の体勢を取りながら、背中越しに語るアマツ。

 ムラサメはアズールと顔を合わせた後、頷いて走り出した。

 

「頼んだぞ」

「ああ!」

 

 二人は共に跳躍してバケキツネザルの上を取り飛び越え、そのまま扉を通って超絶大銀河王の元に向かう。

 くノ一の化神は怒り狂いながら、両手に忍者刀を装備して斬りかかる。

 

「貴方如きがぁ!! 私の計略に乗せられたザコの分際で!!」

「そうだね……だからボクは、自分が許せないんだよ!」

 

 納刀したまま鞘で斬撃を受け止めつつ、身を翻し抜刀、鞘から手を離しての回転斬り。

 バケキツネザルは身をかわしたもののこれによって右耳を切断され、呻きながらも反撃に転じる。

 

「ではこれならどうです!?」

 

 尻尾から放つ鎖鎌、さらに忍者刀も併せた怒涛の同時攻撃。

 アマツムラサメはその攻勢を前にしても冷静に、飛び退いてから疾走して被弾を避ける。

 だが、その瞬間にバケキツネザルは口角を釣り上げた。

 

「かかりましたねェェェッ!!」

 

 尻尾の内側から飛び出す細長い針。目に見えない程小さなそれは、凄まじい速度で撃ち出されてアマツムラサメへと向かっていく。

 さらに、防ぐ間隔を与えまいと再び放たれる手裏剣。

 360度全方位を囲むこの攻撃を凌ぐことなど決してできまい、とバケキツネザルが追い打ちのために足を踏み出す、その時。

 

「解」

 

 その宣言と共に、彼の周囲に光の膜が生み出され、そこから先程吸い込んでいたセルメダル圧縮エネルギー弾が放たれる。

 これが、アマツムラサメの能力。ただ攻撃を封じ込め無力化するというだけでなく、封じたものを解放して反撃する事も可能なのだ。

 バケキツネザルの放った武器の嵐は全て砲弾によって除去され、彼女自身にもその毒牙が迫った。

 

「な、あっ……に、逃げ……!?」

 

 身を翻したところで当然避けきれるはずもなく、バケキツネザルにエネルギー弾が直撃して吹き飛び、背中を強かに打ち付け転倒。

 何発もの砲撃が修復しきれていない船を襲い、そして立ち上がろうとしている化神の姿をアマツムラサメが捉える。

 

Recorrecting Color(リコレクティング・カラー)!! Last Calling(ラスト・コーリング)!!》

「終わりだ」

《サンライズナインテイル・クロマティックレトリビューション!!》

 

 必殺発動の後、鞘に収まった刀へ静かに手を伸ばす。

 そして、シャキンッというただ一度の鍔鳴りの後――。

 

「あり得な、い……私の目指した、化神の……世が……」

 

 刀を抜く一瞬の内に放たれた無数の斬撃を受け、バケキツネザルは塵と化して散滅する。

 アマツはその死に様に目もくれず、扉の方に手を掛けるものの、ビクともしない。刀で攻撃しても結果は同じ。

 どうやら銀河王は、これ以上の侵入を許す気はないようであった。

 

「先へは進めない、か」

 

 溜め息と共に刀で甲板を小突く白狐。

 友の無事を祈って、彼はただ時を待つ。

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