仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ アズール×ムラサメ DUST TO DUST   作:正気山脈

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PAGE.08[蒼穹と紫電の交わる時]

「……現れたか。虫ケラ共が、性懲りもなくなんとも無駄な足掻きを」

 

 銀河王船(エクソダス)の艦内にて。

 セルメダルによって構築された玉座に腰掛け、頬杖をついて二人の仮面ライダーを見下ろす者がいた。

 この船の主、超絶大銀河王(ヘキサギンガオー)

 この宇宙だけでなく全ての世界の銀河を掌握し人類を滅ぼさんと目指す彼に立ち向かうのは、翔の変身する仮面ライダーアズールと、紫乃が変身する仮面ライダームラサメだ。

 

「全く理解に苦しむな。死ぬと分かっていて、なぜここに来た?」

「死なないし、死なせないからだよ。僕自身や、この世界だけじゃない……他の世界の人たちもみんな」

「愚かしい。そもそもこの超絶大銀河王が何もせずとも、貴様ら人間は自らの生存圏を賭けて互いに争い合い、その身を滅ぼす……ならば今、この手で消し去ったところで何も変わるまい?」

 

 翔の言葉を聞いて銀河王が溜め息混じりに首を左右に振り、そこへ紫乃が厳しい口調で指摘する。

 

「本当に愚かなのはお前の方だ、銀河王」

 

 六つの鷲頭の目が、ピクッと反応を示す。

 

「人間の誰もが滅びを望んでいるワケでもなければ、好きで戦っているワケでもない。何より、進んで宇宙を滅ぼそうという者を許すはずがないだろう」

「あり得んな。現にこのコアメダルとセルメダルに『破滅』という人間の願望が宿っていたからこそ、この超絶大銀河王という存在が生まれた……ならば、それが人間の欲望であるという事に変わりはないだろう」

「それが愚かだと言っている。貴様が取り込んだ欲望は確かに人間由来のものだろうが、それは歪んだ認知を持つ集団がヒステリー的に意思を統合した産物に過ぎない」

 

 超絶大銀河王の目付きが鋭くなっていく中、怯まずムラサメは指を突きつけながら続けた。

 

「貴様の見ているものが一つの側面であったとしても、それが人間の全てではない! 貴様は何も理解していない!」

 

 前に歩み出てムラサメが言い放ち、そこへアズールが言葉を紡ぐ。

 

「お前が思っている程、人間の欲望は単純じゃないんだよ。たとえ自己や他人の破滅が欲望になるんだとしても、僕らは必ずそれを止める!」

 

 深い溜め息。

 銀河の頂点を名乗るその怪人は、呆れとも怒りとも取れるそれを吐き出し、静かに立ち上がる。

 

「……もう良い、下等な虫ども相手に最初から問答の必要などない……」

 

 そして玉座をセルメダルに変換して飲み込み、殺気を放つと同時にギンガブリューを手に取った。

 戦うつもりだ。それを察知し、アズールとムラサメも武器を手に身構える。

 すると、黒いローブが音を立てて変形・硬質化していき、内側に隠れていた肉体の全貌が明らかとなった。

 

「見ろ、これがこの超絶大銀河王の完全戦闘形態だ。圧倒的な力を前にただ平伏するが良い!!」

 

 背中から刃が付いた六つの骨の翼を生やし、体の各部を刺々しく堅牢な甲冑めいた骨の装甲で覆い尽くした重厚な威容。

 アズールとムラサメは互いに頷き合うと、共に同じ敵に向かって駆け出す。

 

「行くぞ、翔!」

「頼んだよ、紫乃くん!」

 

 頭上を飛ぶ超絶大銀河王が翼を伸ばして先端の刃で斬りかかり、アズールとムラサメはその場を駆け回って回避し続ける。

 すると銀河王は舌打ちし、落下しながらギンガブリューを振り下ろして牽制しつつ、自らの左腕を前に掲げた。

 

「カス共が……この超絶大銀河王の力を、今再び思い知れ!」

 

 瞬間、最初に戦った時と同様に姿が消えてしまう。

 さらに見えない状態で骨の刃を振り抜かれ、背中や胸に攻撃を受け、二人ともよろめいてしまう。

 

「くっ!? やはり、見えん……!!」

 

 ムラサメのサイキックでの防御さえも間に合わない、異常なスピード。

 アズールも敵の攻撃を察知しようとするものの、やはり何も見えず回避もできない。

 それならば、とアメイジングアローとアズールセイバーで周囲を攻撃するものの、闇雲な攻撃など当たるはずもなく、骨の刃が飛んで装甲を裂く。

 攻撃しても当たらない、アクイラの力でも知覚さえできない。能力の正体が、二人には理解できなかった。

 

「どれ、そろそろ終わらせてやるとしようか」

 

 数秒の後に再び姿を現し、超絶大銀河王はセルメダルをギンガブリューに装填しながら告げる。

 このままでは何もできずに倒されてしまう。そう思った直後に、ムラサメは仮面の中でハッと目を見開いて、アズールの方に右手を伸ばす。

 

「翔! 手を!」

「えっ!?」

 

 戸惑いつつも、アズールの方も素速くその手を取る。

 

「ギャラクティカ・ドゥーム!」

 

 そして、圧壊されたセルメダルのエネルギーが爆音と共に解き放たれた。

 迸る光線、着弾の後に舞う砂煙。

 その煙が晴れた後、超絶大銀河王の視界には――。

 

「……なに!?」

 

 手を取り合って無傷で立つ、アズールとムラサメの姿があった。

 

「バカな、凌いだというのか!?」

 

 一体どうやって。

 翔と紫乃が散々感じていた疑問を、今度は超絶大銀河王が口にする。

 しかし、よく目を凝らせば、必殺の一撃が阻まれた原因は明らかだった。

 

「ようやく見えた……オレたちの、勝利の可能性!」

「うん! これなら、きっと!」

 

 二人の眼前には、今までよりさらに強力な念動力の壁が展開されているのだ。

 そこで銀河王も気付いた。

 アズールのベルトであるアプリドライバー、その動力は感情エネルギーを媒介にして生まれるカタルシスエナジー。制御は必要だが、その気になれば出力はほぼ無尽蔵に膨れ上がる。

 ムラサメの装甲であるオリハルコンは使用者の思念に応じて柔剛自在となる金属であり、それを全身に行き渡らせる事で思念波の操作によるサイキックが発動できる。加えて、内蔵された賢者の石によってオリハルコンの容器を生成可能。

 この二つのアイテムは、偶然にもどちらも『感情』や『想像力(イマジネーション)創造力(クリエーション)』という精神的な部分に関わる近似した特性を持つ。

 では、両者の特性を理解した上で()()()()()()()()()()()()

 

「紫乃くんのお陰で分かったんだ、アクイラの力……地球の書庫(アカシック・レコード)への接続(アクセス)、その使い道が」

「船に乗り込む過程があったからこそ、オレも理解した。あの時の、クロノスの言葉の意味が!」

 

 カレイドライザーに組み込まれたプリズムエリクシルから光が溢れ、液体金属が飛び出す。

 その液状オリハルコンは三つに分かれ、一つはマテリアプレートと同一の板型に、残りは二つ一組のモンストリキッドへと変化していく。

 翔がアカシック・レコードを用いて必要な情報(データ)を瞬時に解析・収集し、カタルシスエナジーと共に思念波を通して紫乃に伝達。

 データを受け取った紫乃は賢者の石にそれを出力して、マテリアプレートとモンストリキッドをその場で製造した。

 それによって形成されたのは、クリアバイオレットの外装が付いた白いプレートと、エレメント側がスカイブルーでフィジカル側がゼニスブルーのモンストリキッド。

 アズールは生み出されたマテリアプレートを手に取って起動し、ムラサメもレリックドライバーに変更した後、二つのモンストリキッドを左右の端子に合着させる。

 

「勝利の可能性は、最初から……!」

「オレたちの中にあった!」

《叢雨丸 討戯伝!!》

《青天白日!! サイバーアズール!!》

 

 起動音が鳴ると同時に、二人はそれらを各々のドライバーに装填。

 共に並び立つ二人の戦士は、眼前の打ち倒すべき敵を見据えて言い放つ。

 

《ユー・ガット・カラー!! ユー・ガット・カラー!!》

Gaming Color(ゲーミング・カラー)!! DIGITAL GRADATION(デジタル・グラデーション)!!》

「覚悟しろ、超絶大銀河王!」

「オレたちが、お前の野望を打ち砕く!」

Alright(オーライ)!! クロマティック・マテリアライド!! ムラサメ・アプリ!!》

CROSS-OVER(クロス・オーバー)!!》

 

 続いてマテリアフォンをかざすとアプリドライバーから白と紫のインクの塊が飛び出して周囲に張り巡らされ、トリガーを弾いたレリックドライバーからは無数の『0』と『1』で構成されたグローブルーのサイバーフレームの嵐が吹き荒れる。

 そして、それらが二人の戦士に宿った時、彼らを新たな姿へと新生させた。

 

《雷の如く吼える封魔の刃、仮面ライダームラサメ!! インストォォォール!!》

「その歪んだ欲望、僕が全て断ち斬る!」

《電脳世界を翔ける蒼穹の戦士!! 絶対無敵!! 仮面ライダーアズール!!》

「超絶大銀河王……お前を塗り潰す色は、決まった!」

 

 アズールは白いアンダースーツの上に紫の陣羽織のような形状のアーマーを装着した、サムライのような風貌に。

 ムラサメには青いスーツの上に青く光る電子的なカラーラインが施された白い装甲が配備されている、サイバーパンクな剣士にそれぞれ変化した。

 仮面ライダーアズール ムラサメリンカーと、仮面ライダームラサメ サイバーアズールカラー。今再び、仮面ライダーと異形の怪人が激突する。

 

「虫ケラめが……今度は防がせんぞ! この超絶大銀河王の力、とくと味わえぇい!」

 

 姿を変えたアズールとムラサメを前にしても臆する事なく、銀河王はまた左腕を掲げて拳を握り込む。

 瞬間、彼の視界において風景が暗転して色を失い、まるで時が止まったかのように全ての物体の速度が極めて遅くなる。

 

「これが究極の力――『銀河王域(ギャラクティカ・ドミニオン)』だ」

 

 銀河王域。

 自分の周囲の空間の『複製』を生み出し、層を作るような形で上から被せる能力。

 下層の空間と繋がってはいるが、下層にあるモノは銀河王域で作り出した空間に直接干渉する事はできず、上層にいる銀河王を攻撃できない。

 だが上層から下層への干渉は可能であり、超絶大銀河王だけは一方的に攻撃する事が可能。加えて時間の流れも大きく異なっているため、守りを固めていようとも無意味となる程の乱打を繰り出す事ができる。

 次元が異なるという性質故に、時間操作を無力化できるムラサメエクシードでも見破れなかったのだ。

 

「貴様らには認識も理解もできぬ……この新たな銀河の中で、ただ自分が死んでいくという事実だけが突きつけられる」

 

 銀河王域を維持できる時間は、下層基準で約6秒。

 その間に始末をつけるべく、超絶大銀河王は動き出す。

 床を蹴り膨大な量のセルメダルを巻き上げ、ギンガブリューを天に振り上げる。

 

「全てを識るのはこの超絶大銀河王のみ! さぁ、滅びろ仮面ライダー!」

 

 すると、宙を舞う銀貨が刃のスロットへと次々に呑み込まれていき、タンクへエネルギーが凝縮されていく。

 

「ギャラクシー・オブ・ラース!!」

 

 斧に付いた引き金を弾くと同時に、超圧縮された大量のセルメダルによって生み出された朱いエネルギーの刃が出現し、超絶大銀河王は身を翻しながら大きくそれを振り被った。

 斬り捨てられ身体が真っ二つになるアズールとムラサメ、続いて背後で巻き起こる大爆発。

 勝った。

 そう確信して振り返った時――そこには、未だ無傷の仮面ライダー二人が立っていた。

 

「ハッ!?」

 

 驚き、思わず十二の目を一斉に見開く超絶大銀河王。

 確かに致命傷であったはずだが、目を凝らしてもやはりアズールもムラサメも何事もなかったかのように生きている。

 

「な、なんだと……ば、バカな!?」

 

 必殺技は確かに当たっていた。身体が両断されるところまで、その目で見ていた。

 何より、アズールとムラサメの方は超絶大銀河王に干渉できない。よって分身や幻覚のような能力を使えたとしても、銀河王域の中ではそれは存在しないモノとなり、そもそも銀河王の目に映る事はないはず。

 だが彼はそれ以上考えるよりも前に、残された時間で仮面ライダーたちを排除するべく、再び大量のセルメダルをギンガブリューに喰わせた。

 

「依然優位はこの超絶大銀河王だ、今度こそ死ねェッ!! ギャラクティカ・ドゥーム!!」

 

 今度はバズーカモードによる破壊的な一撃。

 極大の光線が艦の壁ごとアズールとムラサメを撃ち抜いて爆散せしめ、今度こそ超絶大銀河王は勝利に笑う。

 その瞬間。

 

「グオッ!?」

 

 超絶大銀河王の身体が、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「なに……ガァッ!?」

 

 続いて、背後から突然に姿を見せたムラサメが背中を斬る。

 

「バカな!? 貴様らなぜ生きている、そもそもまだ銀河王域の発動下だったはずだ!!」

 

 よろめきながら捲し立て、ギンガブリューを構える超絶大銀河王。

 するとアズールが肩で剣を担ぎ、彼の狼狽する様をフッと鼻で笑った。

 

「僕らも別にお前の能力について全てを把握したワケじゃない。だけど直接時間を操作するワケじゃないのなら、その正体は空間そのものに対して作用する力じゃないか……と推測を立てた」

「となれば勝つ方法はひとつ。()()()()()()()()()

 

 ムラサメがそう語り、Aウェポンの切っ先を突きつける。

 

「お前が支配下に置けるのは、飽くまでも自分の能力で掌握できる世界だけだ」

「だけど、今の僕らにはそれ以外の次元を生み出す力がある!」

 

 それを聞いて、超絶大銀河王は彼らの言う『前提』の意味を理解した。

 

「……サイバー・ラインか……!?」

 

 これまで銀河王域によって無敵となれるのは、飽くまでも地球上での話。

 アズールとムラサメは変身した直後から、既にこの場を一時的に電脳空間に変化させていた。今の二人にはその能力があるのだ。

 銀河王域によって複製した空間に、下層の存在は干渉できない。

 だがそれが『サイバー・ラインの複製』となる以上、現実世界と電脳世界を行き来できアクイラの力を有するアズールと、そのアズールから力を譲り受けた今のムラサメならば容易く侵入できる。

 仮に彼がデジブレインの力を得ていたなら、この空間からの脱出は可能だった。素体となった刈人の二人も、自力で次元から脱出する能力は持っていた。

 超絶大銀河王は超絶大銀河王に()()()()()()()()()()、サイバー・ラインから抜け出せず窮地に陥ったのだ。

 

「さっきまでお前が見ていた僕らの姿も、ただ人の形をしたデータの塊だ。もう、お前じゃ僕らを倒せない!」

「く……そんなはずが、あるかァッ!!」

 

 喚き、乱暴に斧を振るう銀河王。

 しかし二人は同時に飛び退いて剣を振り、攻撃を弾いて逸らす。

 精神的に優位に立っているためか、先程よりも動きに淀みがなく軽々と避け続けている。

 

「おのれ!?」

「そろそろ反撃させて貰うよ!」

 

 言いながらアズールは距離を詰めて剣を振るい、銀河王はそれをギンガブリューで受け止めた。

 だがその直後、紫の剣士の周囲で稲光が閃き、雷撃が斧に降り注ぐ。

 そこで怯むと同時に、アズールは再び斬り掛かった。

 

「そぉりゃあああ!!」

「ガッ!?」

 

 袈裟に裂かれ、セルメダルが散らばる。

 続け様に放たれる雷がさらに超絶大銀河王の身を焼いて、アズールセイバーと紫電を伴う無数の思念波の刃が手足を貫く。

 ムラサメリンカーによってアズールが得たのは、雷の放出と思念波の操作能力。

 発した雷は念動力との併用で自在に動かす事ができ、いくら逃げようとも確実に命中させる事ができるのだ。

 

「逃げ切れん……!」

「ハァッ!」

 

 サイキックの発動により自分の分身を生み出したアズールは、その分体と共に駆け出して雷を宿す剣で一斉に襲撃し、王を名乗る怪物を斬り伏せる。

 よろめき、膝をつきかける超絶大銀河王。しかし足に力を込めて堪え、ギンガブリューで力強く分身アズールたちを薙ぎ払った。

 

「ぐぅぅぅっ、この……ガキ共がァァァッ!」

「フン!」

「ぬぅあ!?」

 

 その刹那、攻撃を仕掛けたのはサイバーアズールカラーのムラサメ。

 攻撃直後の右手首をAウェポンの一振りで斬り落とし、斧を取り落とさせたところでさらに頭へと突きを繰り出す。

 

「ぐっ!? 虫ケラ如きが!!」

「おっと!」

 

 腕を再生している間に右足のキックで応戦する超絶大銀河王だが、ムラサメは宙返りでそれを回避すると、何も無い空中を壁のように蹴って猛スピードで突撃する。

 面食らった銀河王は反応が遅れて左腕を叩き斬られ、さらに素早い連続蹴りを受けてよろめいてしまう。

 しかしこの瞬間に右腕の再生が完了すると、即座にギンガブリューを拾い上げセルメダルをプレスし、振り返ってムラサメに砲口を向けた。

 

「喰らうが良い!!」

 

 放たれるギャラクティカ・ドゥーム。全てを撃ち抜き破壊する光線が、真っ直ぐにムラサメへと迫る。

 するとムラサメは再び跳躍した後、サイバー・ラインのデータを集めて実体化させ、両足にボード状の物体を形成する。

 そして、まるでサーフィンをしているかの如く、光線の上を滑って受け流す形で回避した。

 

「なんだそれは……バカな!?」

「こんなこともできるぞ!」

 

 空中でジャンプしながら離れた位置から右足を突き出すと、ムラサメの足が巨大化して伸び、銀河王を思い切り蹴り飛ばす。

 これまでの形態とは大きく異なる力を持つ、ムラサメのサイバーアズールカラー。

 まるでゲームを遊んでいるかのような、予測不能の変幻自在な戦い方に、超絶大銀河王はただただ翻弄されていた。

 

「おのれ猪口才な……!」

「余所見して良いの?」

「ハッ!?」

 

 ムラサメに気を取られている間に、アズールは再び接近して念動刃と雷の剣で斬りかかる。

 またもや両腕を斬り落とされ、しかも今度は飛び回るムラサメとのコンビネーションで翼も全て破壊された。

 傷口からボロボロとセルメダルが散らばり、超絶大銀河王はその身体の治癒に注力せざるを得なくなってしまう。

 その隙を、二人のライダーは見逃さない。

 

「やるぞ、翔」

「うん!」

《リローディングフィニッシュコード!! Alright(オーライ)!!》

Regaming Color(リゲーミング・カラー)!! Last Calling(ラスト・コーリング)!!》

 

 ドライバーを操作し、同時に疾駆。

 続いてムラサメが空から背後に回り込み、アズールの方はそのまま念動力を纏って正面から突っ込む。

 

《ムラサメ・マテリアルエクソシズム!!》

《サイバーアズール・クロマティックインパルス!!》

『ハァァァァァーッ!!』

 

 そうして二人は挟み撃ちの形で足を突き出し、渾身のキックが超絶大銀河王の腰へと直撃した。

 狙いはヘキサギンガオードライバー。紫の雷を纏うアズールと青く煌くエネルギーを帯びたムラサメの必殺により、ついにそのベルトの破壊に成功する。

 上半身と下半身が分断され、超絶大銀河王は断末魔を上げて、砕けたドライバーと共に倒れ伏す。

 ――しかし。

 

「お、終わらぬ……まだ終わらぬわ!!」

 

 未だ健在の六枚のショッカーメダルを銀河王が体内に取り込み、立ち上がる。

 

「滅ビ……消エ去るのハこノ超絶大銀河王でハナい、貴様ラでなクテは……ナランノダァァァァァーッ!!」

 

 戦艦の天井や壁を再び膨大な量のセルメダルに変え、それも喰らい尽くしていくと、今度は巨大な黒い骨格へと姿を変じた。

 頭部が花開いたかのように左右に分かれ、その中から三ツ目の人間の頭蓋骨が露出している、星雲めいた怨念を纏うティラノサウルスの骨の怪物。

 銀河骸骨恐竜と呼ぶべきその異形は、アズールとムラサメを轢き潰さんと、必要最低限の足場のみとなった戦艦を駆けて行く。

 そこへ、頭上からレーザー光線が降り注いだ。

 

「グガッ!?」

 

 見上げれば、空にはアーカイブレイカーが飛んでいる。このギリギリの局面で、晴明が呪いを完全に解いたのだ。

 アズールはすぐさまそれを呼び寄せ、ロックを解除してドライバーへとユニットとマテリアプレートを合着させていく。

 

《ビヨンド・ザ・ブルースカイ!!》

「そんな姿になってまで戦う気か、往生際の悪い……」

Alright(オーライ)!! ユニバース・マテリアライド!! エタニティ・アプリ!!》

「そろそろ観念して貰うぞ!!」

《夜空に瞬く幾千の綺羅星!! 銀河を彩る神々しき惑星!! 無限に拡がる大宇宙、エヴォリューション!!》

 

 さらにムラサメの方も、ドライバーからサイバーアズールを外し、新たに別のモンストリキッドを装填する。

 

Loading Color(ローディング・カラー)!! MIRACLE GRADATION(ミラクル・グラデーション)!!》

「逃がしはしない」

BRUSH-UP(ブラッシュ・アップ)!!》

「オレもいい加減頭に来ているんでな」

《時を超え空を駆ける絆の翼!! 天元突破!! ソニックペガサスエクシード!!》

 

 翼を拡げて舞い上がり、ムラサメは上空から斬り掛かりつつ視線を誘導、アズールが下から足骨を砕く。

 だが今回は戦艦の製造に用いていたセルメダルをほぼ全て使っているためか、先程までよりも段違いに肉体の再生が速い。

 

「ガキ共ガァァァッ!!」

 

 長く太い骨尻尾を振り上げ、二人を叩き落とさんとする銀河骸骨恐竜。

 しかしその尾は、背後から飛来した一つの影によって半ばから両断される。

 

「ギィッ!?」

「紫乃! 今だ、行けーッ!」

 

 アマツムラサメだ。エクソダスが形を失い始めた瞬間から、何かが起きると思い身を隠していたのだ。

 これで攻撃の隙はできた。アズールとムラサメは同時に動き出し、ドライバーを操作する。

 

《アストラルフィニッシュコード!! All together(オール・トゥギャザー)!!》

Reloading Color(リローディング・カラー)!! Last Calling(ラスト・コーリング)!!》

「この世界から消えろッ!!」

「これが最期の景色だ!!」

《エタニティ・アプリケーションコンプリート!!》

《エクシード・クロマティックオネスティストライク!!》

 

 二人は跳躍して足を突き出し、真っ直ぐに骸骨恐竜へと力強くキックを繰り出す。

 青と紫の極光が混じり合い、アマツに気を取られていた銀河骸骨恐竜の胸部へとその一撃がクリーンヒット。

 

「ザ、残念無ネ……グアアアアアアーッ!!」

 

 メダルの怪物の断末魔が空の上で響き渡り、セルメダルを散らせて木っ端微塵に大爆発する。

 こうしてアズールとムラサメは、今度こそ刈人を、超絶大銀河王の野望を阻む事に成功したのであった。

 

 

 

 その後、地上にて。

 

「ショウ……!」

「紫乃くん!」

 

 敵との決着をつけて降り立った翔を迎えたのは、アシュリィとツキミとフィオレ、さらに紫乃の前にはロゼが駆けつけた。

 続いてグレイも無事に戻り、そこにアダンとクリスとロッソが寄っていく。

 そして翔の口から、事の顛末が語られた。

 

「そうか、敵はこれで全滅か」

「はい。ただ……」

 

 目を細めて思案顔の翔に代わり、紫乃が話を紡ぐ。

 

「アイツらの言っていたショッカーメダルが見つからない。あの爆発で砕け散ったのか、それとも……」

「その辺りの捜索も必要だろう。あの手のモノの管理に詳しいようだし、見つかり次第我々がLOTに知らせる」

 

 そう言った後、翠月は「それよりも」と言ってグレイに目を向ける。

 彼の手にあるのは、冷たい手錠だ。

 

「グレイ・ダスト。今回の件を企てた犯人の一人として、君を逮捕する」

 

 ゆっくりと歩いて来る翠月に対して、グレイは抵抗しない。

 むしろ自ら両腕を差し出し、逮捕を受け入れようとしてさえいる。

 その時だった。

 

「待ってくれ!!」

 

 必死の形相で二人の間に飛び出して来たのは、アダンだ。

 

「……確かにこの子は事件に関わっている、人を襲わせたりもしただろう……だが、逮捕は待ってくれ!! この子は誰も殺してはいない!! 全ての責任がこの子にあるワケではない!!」

「アダン……」

「頼む!! 罰なら俺が、いくらでも代わりに受ける!! だから……!!」

 

 言いながら翠月に向かって土下座し、懇願する。

 すると、その彼の後ろからもう三人ほど、翠月に頭を下げる者が現れた。

 

「オレからも頼む」

「アタシもだ。っつーかよ、コイツがいなかったらアタシら全滅だったんだぜ? ちょっとくらい許してやれよ」

「その言い方はどうかと思いますが……僕も先輩たちと同意見ですね」

 

 紫乃とクリス、そしてロッソ。

 元キュクロプスの三人も、説得に加わった。

 全員からの視線が集まる中、翠月は一度長い溜め息を吐くと、手錠をベルトに戻す。

 

「保護観察だ」

「……え?」

「アダンと言ったな。お前が責任を持ってグレイ・ダストの行動を監視し、更正できるように共同生活ができるというのなら受け入れよう。ただし、次に問題を起こせば問答無用で即逮捕する」

 

 その言葉に一番面食らい、戸惑ったのは他ならぬグレイ自身だった。

 

「良かったな」

 

 しかし紫乃から背に手を添えられ、そんな声をかけられると、我に返って膝から崩れ落ちる。

 

「ありがとう……ありがとう、アダン……みんな……!!」




 ――その翌日の夜。
 事件が終わって無事に帝久乃市の観光ができるようになった八重垣一家は、ファミリーレストランの前を通りかかると、その窓からある光景を目にした。
 ビッグサイズのパフェをキラキラとした眼差しで見つめる紫乃と、その隣でスプーンを使ってクリームを掬い食べさせようとするロゼ。
 その向かい側に、弟でも見るような眼差しで微笑んでいる翔、傍らには楽しげに料理を食するアシュリィに、ツキミとフィオレも同席している。
 よくよく見れば店内には、他にも今回の戦いに参加した面々が集まっており、打ち上げを行っている様子であった。
 そして紫乃は三人の姿を見つけると、遠慮がちながらも小さく手を振り、僅かに唇を釣り上げる。
 すると竜胆が両親から手を離し、自らの両腕を目一杯に振った。両親も同様に紫乃へ手を振り、再び竜胆と手を繋ぎ直して歩き出す。

「おとーさん、おかーさん! 僕ね、絶対仮面ライダーになる! お父さんとお母さんとお姉ちゃんを守れる、お兄ちゃんみたいなカッコいいヒーローに!」

 幼い少年の決意に思わず笑みをこぼしながら、三人はホテルに戻っていくのであった。



END.
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