1
「嬢ちゃん、大丈夫か!」
無理もない反応だった。敷島は、お世辞にも見知らぬ子供に警戒を抱かせないような優し気な風貌をしていなかった。痩身長躯の見た目は如何にも不健康そうで、眼の下にできた隈は容貌をより不吉に見せていた。あちこちに伸び放題の髪も、整えられていない無精ひげも、今ほど自分の無頓着さを恨んだことはない。
対照的に、少女は人好きのしそうな印象を受けた。今は険しく強張っているその顔すらも美しく整っており、身じろぎに合わせて揺れるポニーテールは彼女の活発さを予感させる。切れ長の目の奥には強い意志を秘めており、彼女は決して敷島から目を逸らすことをしなかった。
「ここ……学校、ですよね? あなたは……?」
恐怖と困惑を多分に含んだ目で後ずさりながら、少女が口を開く。それでも、思いのほか冷静な反応に敷島は胸を撫で下ろしながら、両手を上げてこちらからも少し距離を開けた。
「おっと、悲鳴とか通報は勘弁してくれよ。怪しいもんじゃない、俺はオカルト記者で……敷島ってモンだ。ここにゃ取材に来た」
「オカルト記者?」
「おう、聞いたことない? 『アマノジャク』って雑誌。
「はあ……。あまの……タク……? えっと、すいません。全然」
怪訝そうな顔で見上げながら立ち上がる少女には全くピンと来ている様子がない。あまりの知名度の無さに敷島は大げさに肩を落として見せた。そりゃまあ、こんな年頃の子が今時怪しいオカルト雑誌なんて読み込もうはずがない。
「まあ知らんよな。しゃーない、こっちの噂の方は知らないか? 廃校に夜な夜な現れる亡霊少女ってヤツ」
「……廃校?」
少女の目に浮かぶ警戒の色が目に見えて濃くなった。意味不明な話題ばかり振られて、とうとう同じ人間を見る目ですらなくなってきたようだ。これには敷島も堪らず焦り始めるが、身元を明かして逆効果だったのだからこれを打開する術を持ち合わせていない。
だから、仕方なく。話を変えるついでに、敷島も聞いておかなくてはならない疑問を口にした。
「それで、嬢ちゃんはなんかえげつない犯罪とかいじめに巻き込まれてたりする?」
「は?」
「だって、おかしいぜ。嬢ちゃんみたいな年頃の子が、こんな時間、こんな場所で気を失ってるなんて」
割れた窓から射し込む夕陽が、乱雑に並べられたままの机を真っ赤に照らす。
視界を一色に染め上げていくその光に、互いの表情がわからなくなる。
「……何言ってるんですか? ここは私の――――」
少女が口を開いた、次の瞬間。
ぐおおん、と耳をつんざく轟音が空気を震わせ、中に居る二人を巻き込んで