なんか俺のヘイロー砕けてね?   作:つヴぁるnet

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土曜日分

今回 18000文字 もあるってマ?
情報量が多すぎるっピ!!




第11話

 

 

 

ケモ耳だぁぁぁああああ!!!!

 

だから何故秒で飛び付けるんじゃ!?

 

 

 

だってそこにケモ耳があるし??

 

それで反応しないの失礼じゃん。

 

 

 

「って、アレ?なんでココにいるんや俺?もう半年経ったのか?」

 

「前回の邂逅からまだ二ヶ月程度じゃな…と、言うより半年毎に会える訳では無いぞ?たまたま半年ごとに…って、そんなのはどうでもよい!お主!お主!色彩から始まる成り代わりとはいえそれでも脆さを引きずる器ぞ!なのに正面から格上と向かい打とうなど随分と無理しおってからに!」

 

「えー、だって調停委員会の奴らがクズノハガチ勢故に月雪カナタを否定するんだもん。そりゃ俺も黙ってらんねぇよなぁ?クズノハと出会えた月雪カナタの幸運の意味を百花繚乱の都合で否定されてたまるかってんだ!ふんっ!」

 

「だからと言ってあの者達と正面から撃ち合うなど正気を疑う。それも情動に慄えるがまま月雪カナタの正当化に身を任せるなど…まったく…」

 

「わかってるよ。かなり危険な事も。一応相手も心頭お怒り様とはいえ火力面では手加減はしてくれたから腕の肉を軽く削ぐだけ済んだ。頭や臓も貫通する恐れはないとわかってたから俺も噛み付いたまで。それでも激痛は避けられないけど。はー、傷元が熱かったぁ…」

 

 

何がトリガーとなってこの黄昏に招かれてるのかよく分かってない。

 

ただ純粋に月雪カナタのブルーアーカイブはそのように仕組まれてるのか、はたまた俺のなにかしらの行動によってその都度黄昏ることが許されてるのか不明である。クズノハも原因がよく分かってない。

 

だから、彼女は言う。

この邂逅は『幸運』であると。

 

なら月雪カナタはそれほどに幸せ者である。

俺はそう感じる。この続きに対して。

 

 

だからこそ、彼女は傾げるのだろう。

 

この気狂いな憑依に。

 

どうして?なぜ、と。

 

 

「何故…?お主はあのように無茶を通してまで亡き魂に寄り添う?重ねゆく邂逅にてお主から聞いた。色彩として選ばれた以上はその恐怖すらも反転させ、正当化すると。しかし…ああ、しかし、じゃ。今の月雪カナタは間違いなく憑依者であるお主ではないか?役割や使命に身を投じるにせよ肉付く器は別問題なのじゃぞ?」

 

「たしかに、その認識は間違いない。過去の倫理観と危機感がこの命を守るなら、俺は過去のまま冷静だったさ。無論弁える。けれど俺はこの後悔と追憶(ブルーアーカイブ)を拾い上げることを選んだ彩付(いろづ)く魂だ。それが脆さを引きずる器だろうと、しかし月雪カナタとしてこの箱舟に投じる事となるなら、それは月雪カナタに与えられたアーカイブを否定させてはならない」

 

 

RPGゲームは『はい』と『いいえ』の先にある物語。幾度なくプレイヤーに語りかけてくる選択画面があるからこそ物語が構成される。

 

それがロールプレイングゲームという古のコンテンツであり、人生としても当て嵌まる。

 

選択という『出会い』あっての価値だろう。

 

 

 

「俺は月雪カナタとして、この黄昏でクズノハと出会えた幸運と、クズノハの施しにより確立されたその意味を守りたい。だから月雪カナタを否定させない。させたくないんだよ」

 

 

月雪カナタを描く(ロール)するという意味でなら俺の二度目はそうなのかもしれない。

 

しかし、月雪カナタだからこそ…を、言い訳にすることで、この器にヒビ割れを入れるような行為はまさに正常とは言えないバグ行為だと思われても否定しようがない。

 

まあ強くてニューゲームって意味では反則上等な行為であるが、けれど俺はそうなった俺だからこそ『はい』が選ばれて、月雪カナタの物語が構成されている。

 

ああ、そうとも。

俺は注ぎ、注がれた憑依者(プレイヤー)としてコレを選択したんだ。

 

 

 

(かれ)』の後悔と追憶(ブルーアーカイブ)を拾い上げますか?▽

 

『はい』

『いいえ』

 

 

 

前者(はい)を選ぶから『彼』の二度目が始まった。

 

その『彼』というのは俺であり『(おれ)』である。

 

なら、月雪カナタのために始まった『はい』を偽るなど『俺』が許さない。

 

もし選ばない(いいえ)なら端っから俺は前任者を亡き者として扱っているし、無関係な追憶として捨てる。流れる涙など無意味だ。妹に悟られないだけを考えて月雪カナタをしていた。

 

 

 

「俺は箱舟に嵌まらない歪んだ歯車。無理やり骨組みに嵌め込まれたとしても、歪みによって弾かれるが、しかし、されど身勝手な歯車は床を転がり続けて役割を全うする。それはクズノハも言ってたことだろ?間違いないよ、俺の扱いは」

 

「そうか……その結果がコレか。なるほど。たしかに歪んだ歯車としてまんま壊れておるのだろうな。しかし落ちても尚、身勝手に転がるとは全く思わなかった。やはりマニュアルなど参考にならない魂は理解されない色彩として規格外に浮いておるのだな。お主は」

 

「……もしかして、無茶のために顧みない俺のことは嫌いになっちゃった、かい?」

 

「もしそこで命尽きるようだったら妾は月雪カナタを拾い上げたお主を無責任な『大人』として許さなかった。それは確かだ」

 

「そうか。うん。俺はクズノハに嫌われたくないから気をつけるよ。だってクズノハのケモ耳は最高だもん。貴方には好かれておきたい」

 

「お調子者めが。今回は触らせてやらんぞ……妾のためにも反省しておけ」

 

「!……ああ、分かった。そうするよ」

 

 

 

反省……か。

 

ああ、やはり彼女はとても優しいな。

 

こうして反省させたい程に……クズノハは俺のことを心配してくれたようだ。

 

なら、しかと、反省しよう。

 

 

 

「カナタよ」

 

「?」

 

「人は己を愛し、己に問い続けることが死ぬまでの課題であろう」

 

「…そうだな。自分に関心が無くなれば死んだのと変わらないからな」

 

「人を生かすから人生。しかしお主は浮いてるがためにその意味を超えてしまった。拾い上げた後悔と追憶に報いようと注ぎ続ける役割は、憑依者というレッテルに収まらない色彩として前任者の恐怖を反転させた。歪んだ歯車だ。大人としての役割を果たそうとした故に、月雪カナタは狂い人として箱舟に揺れる。その責任は取れるのだな?」

 

「……俺は、身分証明書(大人のカード)を置いてきた自己管理のできない社会人だから、年齢だけは大層に重ねてしまった大人なんだと自負する。それが信頼に値するほどの責任者なのかは、問わずとも分かるはず。でも先駆者として強いられてきた時の数が、色彩として選んでくれた俺で許してくれるなら、成り代わりを選択したその日から責任は抱えている。これは確かだ」

 

 

こうなるまで、俺自身幾つまで生きてたかなんて実はハッキリと覚えていない。忘却するほどに浮いた魂。まあ、恐らくまだ若かったと思うけど、社会に疲れた大人である事はなんとなく覚えている。ならば子供よりも年上の生き物であることは明らかだろう。そうなれば望まずとも大人としての責任が付いてくることになる。それが社会。それが先駆者になる意味。知ってたけど可哀想な生き物だな。大人も。

 

 

 

「っと…もうなのか。今回は早いな…」

 

 

 

段々と意識が遠のく。

 

今回はもう終わりのようだ。

 

しかしまたこの場で出会えた幸運は確か。

 

だからこの刹那を惜しいとは思わない。

 

月雪カナタはまたこうして彩るから。

 

 

 

「月雪カナタ。お主はお主のモノだ。この邂逅すらもお主の幸運だ。妾はあくまで切っ掛けに過ぎぬ。だが妾も繰り返す四季の中で黄昏るだけに留まろうとは考えぬ。ああ…だからこのままでは不平等だ。だからカナタよ。妾にもこの奇跡と軌跡を幸運とさせよ」

 

「クズノハ?」

 

「なに。ケモ耳を堪能した分、お主に言伝を頼みたいだけじゃ。ダメか?」

 

「良いよ」

 

「!……やれやれ悩むもなく、即答じゃの」

 

「断る理由がないし、クズノハだからな」

 

「妾……だからか。まったく、相変わらず口もそれなりに達者で困る奴じゃ。ならば頼まれてくれよ、狂い人。求めるのは簡単な言伝じゃ」

 

 

 

ふわふわとした感覚の中。

意識はこの場所から離れ、声だけが見送る。

 

 

___百花繚乱の者達にこう伝えておけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……

 

 

 

………

 

 

 

……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「___伝承は百花繚乱である限り確かだ。しかしまだ会う事は叶わない。だがそれは後のために託される意味として、今のお主達が百花繚乱を護って欲しい。目まぐるしく変わろうとする季節の中でも百花繚乱は灯籠に濁らず、常に健在で有れ___って、クズノハが言ってた」

 

「そう。クズノハ様が……うん、肩の震えも感じない。なら、それは真実なんだね…」

 

 

目覚めたら百花繚乱の建物。

 

腕は包帯が巻いてある。

決闘後に治療を受けたようだ。

 

……やはりあの後気を失ってたか。

 

 

ったくあの委員長め!不意をついてヘイローで引き寄せたのは良かったが、あちらも流石に百花繚乱紛争調停委員会の委員長。

 

咄嗟に白兵戦に切り替えると腰に忍ばせていた木刀を引っ張り出して俺の鳩尾を抉りやがった。

 

コチラは痛みで精一杯だったし、あと一矢報いてやろうと『螺旋丸』の真似事で神秘を手のひらに集中させたが、それが原因で防御力は皆無。

 

そうなるとキヴォトス人としての頑丈性が頼りだったが、相手も同じキヴォトス人である。それで体格差で力負け。何より相手は百花繚乱の委員として常日頃鍛えられている。こうなるとフィジカルで勝てる訳がない。

 

一応俺も鍛えてる側であるが、それはあくまで神秘の理解を進める方針で内側を鍛えてるだけであって、普通に考えれば百花繚乱紛争調停委員会のように身体能力は天と地の差である。

 

元より勝ち目など無い喧嘩だ。

 

認めたく無いが負ける事が前提としてあの場は成立していた。

 

 

 

しかし、それでも…

 

月雪カナタを突き通す必要があった。

 

相手が格上でも引いてはならない。

 

死んだら元の子もないのは同然だが、でも意思表示せずして何が月雪カナタの生たろうか。

 

どのみち俺は立ち向かうしか選択はない。

 

 

 

しかしこうなると何処ぞのエミヤのように危険な思考だろうな。己の理念を、曲げない、譲らない、覆らないを、人の身で愚直に押し通すだけの体。そりゃクズノハに『狂い人』と呆れられても仕方ない体たらくだろう。

 

俺は別に、あの人間のフリをした機械(にんげん)ほど正義のヒーローに憧れるつもりも、英雄に気取るつもり無いし。てかあんなの早々に真似できてたまるか。アレは衛宮士郎ってキャラがおかしい。鉄の人間め…

 

 

しかし、俺が砕け散った先として成り代われた月雪カナタである限り、コレまで紡いできた行いも、これから始まる行いも、月雪カナタの何もかもを否定させたくない。

 

今回の喧嘩はそれが理由。

 

無論、委員長の言い分もわかる。百花繚乱紛争調停委員会の名を背負い、研鑽を積み続け、その羽織に誇りを持っているからこそ預言者クズノハに会うためと資格と常に戦っていた。

 

しかし、百花繚乱紛争調停委員の名も意義も背負ってもいない適当な人間(おれ)が「クズノハと会えた」と吐いても委員長にとってはそれが戯言に聞こえたんだ。しかしその虚言を本当の事のように吐き捨てるものだからそりゃ怒りも買うよね。理解はする。

 

百花繚乱紛争調停委員会の人間として預言者クズノハの伝承と紡ぎを信じ、それを糧として彼女達自身の存在証明を正当化してきた。この歩に誰も否定する事はできない。

 

 

でもそれは俺も同じ。

 

月雪カナタが、預言者クズノハに出会えた幸運が確かであって欲しいから、そんな願望付きでこの意味を守りたくて譲らなかった。だから退けなかった。

 

 

もし俺が月雪カナタを他者として扱い、良くありげな憑依者としてこの二度目を歩んでいたらそれはまごう事なき、俺自身の強くてニューゲームとして二度目を謳歌している心持ち。

 

だからクズノハ云々で喧嘩するつもりもなかったし、否定されたところで気に止めない、そんなの俺には関係ないと終わっていた。

 

 

でも俺は『月雪カナタ』の続き。

後悔と追憶を拾い上げ、同じ涙を頬に伝う。

 

だから他人事として終えれなかった。

この喧嘩は、それだけなんだ。

 

 

 

 

まぁ、ただ、今回を終えてみれば…

 

 

 

「訳アリと言えど、クズノハも冷たい奴だな」

 

「!?」

 

 

彼女は既に亡くなった過去の者とする。

 

俺なんかでは理解できない理由を抱えながらあの黄昏でキセル片手に煙を浮かしている。

 

あそこは特別な場所だ。だから本来なら会える事自体がイレギュラーなんだろう。しかし俺の場合それが何度も。そしてクズノハは優しいからその異常を『幸運』として施す側にいる。良い人なんだよね。何度も言ってるけど。

 

でもあの場は基本的に会えない事が前提として作られている世界だ。

 

それが黄昏。

 

それ相応の資格がなければ預言者クズノハに会えることは叶わない。

 

 

 

「でも一度でも良いから調停委員会の者と会ってあげるくらいしても良いだろうに。それが無理ならせめて何か意図を示すくらいの証だって残せる筈だろうに…」

 

 

まぁだから、そのために今回は言伝(おれ)を使わしたんだろうけど……

 

しかし、うーん…

 

俺自身こうなったのは自業自得として分かるけど、痛い思いの先に駒使いかぁ。

 

 

 

「うん、これはまたクズノハのケモ耳をモフってやらんと割に合わないねぇな」

 

「……ケモ耳、好きなの?」

 

「おう」

 

「……変な人」

 

「浮いてるからな、俺ってヤツは」

 

「……それも嘘じゃないのなら、貴方は本当によくわからない人だね」

 

「理解されようとは思わないさ。ただ俺は『(おれ)』を果たすまで。周りは関係ない」

 

「……ねぇ。貴方にこんなことを言うのは変かも知れないけど……その、ありがとう…」

 

「何が?」

 

「今回決闘を仕掛けた委員長……貴方に腹を打ち込まれて吹っ飛んだあと、頭から塀を壊して倒れたんだ。でもすぐに復活して、立ち上がったけど…」

 

 

 

 

___神秘が似ていた……継承されるあの銃に込められた手触りと……全く同じだった。

 

 

 

 

「どこか納得したような顔だった」

 

「そうなの?まぁ、納得するのは大いに結構だけど、でも俺とクズノハの幸運(かいこう)を否定した事は許さないけど。……あー、そう考えるとなんかまたムカついてきたなぁ」

 

「次は確実に負けちゃうよ?委員長は感情に素直でやや扱いが面倒な方だけど、でも実力は本物だし、冷静になった以上は貴方に勝ち目はない」

 

「だろうな。片腕で捌かれてたし。流石に百花繚乱紛争調停委員会の人間だ。俺もその強さをよく知ってる。実際に百花繚乱の人達には何度か助けられてる身だ。ココの人たちはカッコいいよな。皆そう口を揃えてる」

 

「そうなの?」

 

「ああ。皆、ここの人達に感謝している。百鬼夜行自治区は彼女たちの活躍もあるから平穏に保たれいるんだってな」

 

「そうなんだ……そっか。なら…ボクはこの組織で頑張ってきて良かったと思うよ。ありがとう」

 

「礼を言うのは自治区の住人だって」

 

「……うん、そうだね。頑張る」

 

「……そんでさ。その委員長は何処に?」

 

「帰ったよ。山まで頭冷やすって」

 

「山?」

 

「うん。あ、それと…」

 

 

 

 

 

__私の負けだ。あとこの体たらく。鍛え直すために委員長を降りる。今季はお前が継げ。

 

 

 

 

 

「委員長の座はボクに譲渡したね。もう……面倒なことをさせてくれたね、君は」

 

「でも認められるほどの人物ってことだろ?それはそれで嬉しいんじゃないのか?」

 

「どうかな。ボクはそこまで地位にこだわりないんだけどね」

 

「なら返上するのか?」

 

「……正直に言うと、ボクは誰かの助けになれるのなら訓練に明け暮れてばかりの百花繚乱のような組織じゃなくても良かったんだよ。でもボクは案外ココは嫌いじゃないみたい。なら続けれるまで続けたい。だから委員長の座は受け取る」

 

「ええやん。その気持ち。社会人になっても忘れるなよ」

 

「なんで年下の君に言われちゃうのかな?」

 

「浮いてるからな」

 

「なにそれ…?まあ良いよ。とりあえず今日はココに泊まって。君の学舎にも説明をしなければならないから……はぁ、委員長の初仕事が謝罪案件なんてどうかしてるよ…」

 

「社会人になったらあるあるの一つだぞ。良かったな、先に体験しておいて」

 

「百花繚乱で社会人検定なんかしたくないよ。まったく…君のせいだよ。こうなったのは」

 

「俺は被害者なんだけどなぁ…」

 

「そういえばそうだったね」

 

「そうだったね…じゃないんだが??俺怪我人。おまえ人の心とかないんか?」

 

「皆から言われるけど、ボクは色々と疎いから…」

 

「おけ。おまえ一度くたばって黄昏てクズノハに叱られろ。委員長なら会える資格あるし。良かったな。ボクっ子」

 

「叱られるのも嫌……」

 

 

このボクっ子、ややダウナー要素もあるのかめんどくさがり屋のようだ。やっぱりブルアカって変なのばかりいるらしいな。まあ俺もその変なの筆頭になるけど。はぁぁぁ…イズナのケモ耳でもいいからモフモフして今日のこと忘れてぇわ。めっちゃ疲れた。あと腕が痛い。

 

 

 

「それじゃ、何かあったらで良いから呼んでね。誰かしら起きてるだろうから」

 

「分かった。ありがとう」

 

「ううん、こちらこそ。君に…月雪カナタの意思が百花繚乱の意味に縛られていた彼女を浮かせてくれた。本当は私達がやるべきことなんだけど、委員長の気持ちも理解できるから誰も中々踏み越えれなかった。現委員長として貴方に感謝する」

 

「気にするな。俺はただ『(おれ)』を通したかっただけだ」

 

 

そして今回の件で委員長になったボクっ子は部屋を出て襖を閉める。

 

俺は客人用の部屋でひとり仰向けに転がって布団に身を任せる。

 

まだ痛む腕だけど、キヴォトス人だけあって回復はそれなりに早いことは知っている。

 

明日には包帯も取れるだろう。

 

 

 

「……なぁ、前任者(カナタ)。お前を理由に俺は縛られてると思うか?こんな事してるけど俺はそんなつもりは無いよ。そりゃ月雪カナタは憑依者の俺で、その続きを拾い上げたからこの百鬼夜行を選んだ。でも勘違いするな。俺はケモ耳好きに狂っている月雪カナタでもあるんだ。君とは違う。こうして紡ぐのは歪んだ『僕』とは違って砕け散った先の『俺』なんだ」

 

 

 

しかし…

 

 

 

「されどこの器は月雪カナタである。なら注ぐべくして『役割』を果たそう。だから付き合ってもらうぞ(おれ)……どんなに『僕』が恐怖に足がすくんでも『俺』が反転させてやる。それが箱舟に浮いた色彩ならば、クズノハのいう狂い人だろうとそれが月雪カナタとして…」

 

 

 

 

 

 

__この規格外(ひとりよがり)を正当化しようではないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

頭に浮かぶヘイローは回る。

 

俺の心に比例して濁らせながらも。

 

それは時折、透明感を見せながら併せる。

 

何故なら『僕』であり『俺』だから。

 

月雪カナタはこの箱舟でそうである。

 

 

彼方(かなた)へと綴る【存在証明(アーカイブ)】はまだ『はい』を選んだばかりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ピー、ICカードの料金が足りません』

 

 

「ふぁ!?」

 

 

手元から鳴り響くは改札口の警告音。

間違いなく俺に対してだ。

 

てか、うおおお…

やっっべぇ…!

この感じ、なんか懐かしい…!

社会人としての焦りを思い出すわ!

 

 

「あ、あかん、チャージしないと…」

 

 

ICカード、または交通系の電子マネーの残額があまりにも少なく、出鼻をくじかれてゲートに堰き止められてしまった俺氏。うっかりさんの中でもかなりメンタルに来るうっかりさんを起こしてしまう。いやー、これは幾つの年齢になっても慣れないな。なんなら踏みとどまれずゲートに膝ぶつけてしまったし。恥ずかしい。

 

 

すると…

 

 

 

「 あれぇ?もしかしてぇおにぃさん?

 電子マネーの残高足りてないのぉ?

 それで改札口で躓いているんだぁぁ?

 やだー♡お兄さぁんよわよわ〜♡

 頭はフサフサなのに残額はスカスカぁ♡

 きゃははは♡はずかしいぃ〜♡

 おにいさんとてもかわいそぉ〜♡」

 

 

 

 

「は…?」

 

 

 

改札口の奥に一人の小さな女の子。

 

コチラを小馬鹿にしたような表情だ。

 

そして何故か煽られてしまう。

 

コレが噂の『メスガキ』ってやつか?

 

いや、違うな。

メスガキと言うよりも…

 

 

 

「あれれ?怒ったの?怒ったのかなぁ??」

 

 

「は…??いや??怒ってないが??」

 

 

「やだ〜ぁ、こわいお顔してる〜」

 

 

「は??してないし?意味わかんないし」

 

 

「きゃぁぁあ♡おじさんこわーい!」

 

 

「おじさん!?お兄さんだるるぉぉお??」

 

 

「きゃはは♡お兄さんのざぁぁぁぁこ♡」

 

 

「なっ、こ、コイツ…!?」

 

 

「ざこざこ♡ざぁ〜こ♡よわよわ〜」

 

 

「こッ…!この!シュポガキ、ッッ…!!」

 

 

 

何故か改札口の向こうで煽られる俺氏。

 

しかし悲しいな。

追いかけようにも残額が無くて通れない。

 

そしてシュポガキは満足したのか「きゃはは」と笑いながら人混みの中に消えていく。

 

 

「な、なんだ今のは?本当にメスガキなのか?てかメスガキって存在は都市伝説じゃなかったのか??まさかブルアカでは実在したと??キヴォトスなんでもアリかよ…すげーな…」

 

 

改札口でポツーンと残される俺氏。

既にキャパオーバーである。

 

てか、さりげなく「シュポガキ」って言っちまったけどコレで合ってるのか?

 

なんか変な電波(トレンド)を受信したからそのままシュポガキで命名しちまったけど。

 

 

やれやれ、コレも浮かされた存在故か…

なんか、かなしいな…

 

もっと生産性ある電波くれよ…

 

 

 

「ともかく、カードにチャージするか…」

 

 

 

さて、シュポガキから一方的に煽られた俺こと月雪カナタは現在、百鬼夜行自治区の側端から外に繋がる鉄道駅までやって来た。そして本日は百鬼夜行自治区と外部に繋がる、新たな鉄道の開通日である。

 

まあ、開通日と言ってもまだ本格的な運行へと乗り出した訳ではなく、まだそれなりの調整と運行試験が必要とされているのだが、今日はその試験運行として鉄道駅は一時解放される事になり、興味がある百鬼夜行自治区の市民達は鉄道駅のエントランスの前までやってきた。

 

そしてエントランスを潜れば大きなホールが俺たちを歓迎する。一応ながらミレニアムの最新技術が織り込まれてる鉄道であり、アナログとは程遠いイメージを持たせてしまうが、百鬼夜行の雰囲気を崩さぬようホール内の中は和風おしゃれに内装されていたりと開発に気合いが入ってることが分かる。自販機とかはモニター式だけど。

 

そしてホールの奥を進めば改札ゲートが幾つか並んでおり、現金払いの切符対応。または交通系の電子マネー対応と前世でも見慣れたシステムが充実している。あと学生は料金が安い。

 

そして今日、この鉄道駅にはこの路線にて新しく使用される予定となっている最新の電車がホームに停まっている。その新しい電車を一目拝もうと人々が集われているのだが、ここで一つとある問題が。

 

この鉄道を管理する…と、言うよりキヴォトス全土の鉄道を管理していると言っても過言ではない管理組織の【ハイランダー鉄道学園】が百鬼夜行に繋がるこの鉄道を管理しているのだが「もしホームまで試験運行を見たい方は入館料としてお金払ってくださいね!」と料金を取られる形で改札を通ることになっている。マジか。

 

まあ、入館料のみならジュース一本分で済むので懐の痛手にはならないが、しかし今日は厄日かなぁ……俺の持っている交通系の電子マネーにたまたま金が入っておらず、改札口で通行拒否を食ってしまった。

 

そのせいで人の流れを止めてしまい、後ろに並んでいた人達に申し訳ない気持ちに駆けられながら視線でペコペコとしていたところに何故かハイランダー鉄道学園の小さな駅員に追撃として煽られる。このシュポガキ共めッ!!

 

 

……なんか既に疲れたわ。

とっとと電車拝んで撤退しよ。

それで途中、足湯で歩き疲れた足を休めながら温泉卵と団子食って帰ろう。

 

うん。そうしよう。

 

この後のプランに心躍らせれば足取りも少しは軽くなる。そう気持ち切り替えながら切符販売機まで足を運び、財布から現金札とICカードを取り出してチャージを選択。

 

ただ、しわくちゃのお札が認証されなかったのか現金口からベ~と吐き出された。

 

 

 

「うへぇ…」

 

 

 

お札がスムーズに入らない。

うん、あるあるだよね。

 

 

そんでこの短時間で電車を逃したりする。

うん、あるあるだよね。

 

 

そうやって入札にモタモタしてると…

 

 

 

「ねぇねぇ?よわよわのお兄さん」

「どうしたのぉ?もしかしてお困りぃ?」

 

 

「ふぁ!!?」

 

 

 

いつの間にか隣に立っているチビ二人。

 

って、さっきの奴らか!

 

てか、一人増えて二人になってないか!?

 

しかも 吊り目 と タレ目……だと??

 

なんで種類増やしてんだよ!

メスガキに多様性って誰得だよ!?

 

いいや、いいや……そうじゃない。

まずは、落ち着け。

ここはひとまず落ち着けよ、オレ。

 

そうさ、思い出せ。

 

まずメスガキ属性とはまともに正面からやり合うと主導権を取られる。

 

それで相手に苛立ったり、反論したりするとその時点で相手のペースになってしまう。

 

その上、子供という身分を存分に活かした上での煽り行為は基本的に大人に勝ち目がないと思え。

 

まともにやり合うな。

何事も大人の対応だ。

 

そう、ここは……無視だ!

そんでもって放置だ!!

 

コイツらをいない者として扱うと事。

それが効果的と聞いている。

 

よーしよし。

いまからその余裕面を壊してやれ…!

 

 

「ねぇねぇ?どうしたのぉ?」

「ほらほら、頑張れ♡頑張れ」

 

 

「……」

 

 

 

俺は無視を決めてお札を入れる。

 

目の前に全集中。

 

しかし、お札に不備があるのか拒否されて吐き出されてしまう。

 

ぐ、ぐぬぬ…!!

 

いや、いや、お、落ち着け。

 

何事もポーカーフェイスだ。

 

メスガキなんかに乱されれるな。

 

もう一度、綺麗にお札を入れ直すんだ。

 

 

「むぅ…」

「ぐぬ…」

 

 

よーしよし、無視されてるのか効いてる。

 

なるほど、確かに。

 

相手にされないのが一番効果的だ。

 

 

ははは、ざまぁみろシュポガキども!

二度と大人を舐めるなよ??

 

 

 

「むむ、でしたら…」

「ふむ、こうしよう…」

 

 

「………んぁ?」

 

 

しかし諦めが悪いシュポガキ二人。

 

すると、それぞれ俺の両脇に移動した。

 

挟み撃ち??

なにをする気だ?

 

 

それから精一杯に背伸び。

 

コチラの耳に、彼女達は口を添えて…

 

 

 

ほぉら♡はやく♡はやく

ねぇね♡はやく♡はやく

 

 

 

吐息混じりの声が耳を撫でる。

 

 

 

ほら大きい(紙幣)の入れて♡

おにいさぁん、はやく入れてよぉ♡

 

 

 

情欲を唆るような幼なげの声。

 

 

 

 

シュポ♡シュポ♡

シュポ♡シュポ♡

 

 

シュポ♡シュポ♡

シュポ♡シュポ♡

 

 

シュポ♡シュポ♡

シュポ♡シュポ♡

 

 

 

 

 

 

いや、コレどないせぇちゅうねん。

 

 

 

 

「おいシュポガキ共、キヴォトスでメスガキごっこは恥ずかしい事だぞ?わかってるのか?」

 

 

カードのチャージも終えたので反応する。

 

無視も疲れるな。

まだ喋ってる方がええわ。

 

 

「えー?ネットによると俗物はこういうのが嬉しいって聞いたのですが。違うのですか?」

 

「んー?なんか違うみたいだ。やれやれ。せっかくサービス向上のため練習したのにな」

 

 

え?サービスなのかこれ?

 

コレってサービスの一環なのか?

 

キヴォトスすげーな。

多様性の塊じゃねぇか。

 

 

「てかさっきから何さ?もしかして暇なんか?」

 

「「うん」」

 

 

 

メスガキしなくなると随分と素直だった。

 

いや、マジでコイツらなんだ?

 

 

 

「うん!じゃないんだが?仕事しろよ、ハイランダー鉄道学園。その駅員服は飾りかよ」

 

「えー、私達はまだ中等部として仕事はそう任されないのです。先輩達からは拳銃だけ背負って牽制しておけと指示されてます」

 

「んー、しかし臨機応変も指示の中にあるので私達は私達なりの考えでサービスを建前に試験業務を行っています」

 

 

「はい?試験業務?あと建前って??」

 

 

「えー、一応マニュアルで書いてある俗物撃退方法と言う手法ですね。アチラから手を出してくれば正当防衛が成立なので、沸点の低い俗物にはこうして煽ることで効果があるとのことですね」

 

「んー、その通りだ。一応ながら視覚的にも煽り性能を高める方法がある。そのため帽子を少し深く被り、小馬鹿にする感じで笑み、わずかに前屈みで語りかけ、対象の焦りと苛立ちを引き出す。すると自然とその手のジャンルに合わせた形になるらしいが、どうやら相手を間違えたみたいだな」

 

 

「つまり俺は綾鷹並みに選ばれたと??」

 

 

「えー、そうですね。年下に弱そうなお手軽な人が見つかったと思いました。しかしこのお客様は声を荒げてもコチラに手を出すことは有りませんでした。むむ、これはもっと工夫が必要でしょうね」

 

「んー、そうなるな。もう少し属性を高めれるように試す必要がある。なら次はもう少し標的を見定めて決行するとしよう。何事も経験だ」

 

 

「おい待て、おいコラ、おいテメェら、おい何勝手に実験材料にしてんだ、おい」

 

 

「えー、試験運行は同時に係員の業務能力も計ることになるんです。私達はそれに伴って本職を全うしてるだけです。お客様にはご理解を」

 

「んー、その通りだ。コレもハイランダー鉄道学園の業務である。なのでお兄さんはいわゆるコラテラルダメージとして致し方ない犠牲になってもらった。どうかご理解を」

 

 

 

コイツらマジぃ??…って、思ったけどそういやココってキヴォトスだったわ。

 

百鬼夜行の治安良すぎて感覚が鈍ってたわ。

 

もうやだキヴォトス。

 

頭おかしい奴が普通に居座ってるのほんと怖すぎるわ。

 

 

 

「あのさぁ、煽る事が業務ならそこらじゅうで怒り爆発してるし、なんなら本当の意味で爆発するかもだろ。ここキヴォトスだぞ?マジ勘弁してくれ…」

 

 

「えー、申し訳ありませんがハイランダー鉄道学園をゲヘナのような扱いはNGです。どうかお控えください」

 

「んー、その通りだ。ゲヘナは勘弁しろ。それからゲヘナは死ね!瞬く間に死ね!」

 

 

 

安直な罵倒に俺は乾いた笑いしか出ない。

もう会話にならねぇ。これは白旗。

 

それから俺は軽く死んだような眼をして再び改札口に向かう。後方ではゲヘナをディスつつ次の業務に向かうシュポガキ達。どうやら次のコラテラルダメージがこの鉄道駅で発生するらしいな。

 

てか致し方ない犠牲の意味超えてね?

意図的に犠牲を産んでるよな?

そうだよな?

 

いや、もうどうでも良いか。

 

もうアイツらの相手にしたくねぇ…

 

 

 

「うへぇ…動いてないのに熱いぞぉ…」

 

 

この疲れを誤魔化すために試験運行へと意識を切り替え……いや、もう帰ろうかなぁ。

 

シュポガキでお腹いっぱいなんだが。

 

電車に関しては動画で見ても良いし。

 

別に見ることに特段こだわりない。

 

今日は暇だから来ただけだ。

 

 

 

「お腹空かせたいし、もう少し苦労するか…」

 

 

この後の足湯とお団子のためにもノソノソと改札口を通ることにする。チャージも完了してるのでゲートに煽られる事もなくなり、一つの達成感を得ながら、惰性に今日の目的を果たそうとホームへの通路を歩いていると…

 

 

 

「??」

 

 

感じ取ったことのある神秘が頬を撫でた。

 

力が抜けていた体は背筋が伸び、重かった呼吸も一気に軽くなる。

 

 

これは…

これは…

 

 

__夏祭りの時と同じ。

 

 

 

「おお?」

 

 

見つけた。知っている顔だ。

 

それと水色の髪。あと傘型の銃。

 

ああ、よく覚えている。その姿。

 

それから…

 

 

 

「待てよ、あれ鉄道学園の制服か?」

 

 

つまり彼女はそういうことか?

いや、どうだ??

 

まあいい。

それより重要なのは、その名前。

 

 

それは……たしか。

 

 

 

 

「もしかして____ 白鳥 か?」

 

 

 

 

「___え??」

 

 

 

本来なら、これは偽りの名前。

 

告げることが出来ない故に吐かれた証。

 

だからこそ、その名に詳しい。

 

 

 

「しら、とり…って、まさか…!ああっ!」

 

「おお、やはり白鳥か。久しいな」

 

「カ、カナタくん、なの!?」

 

「そうだ。俺だ。夏祭り以来だな」

 

 

数ヶ月前の夏祭りで出会った以来。

 

まさかココで出会えるとは思わなかった。

 

あと先ほどのシュポガキとは打って変わって彼女は清楚な白色の制服を纏っている。

 

随分と似合ってるな。清楚だ。

 

ついでに首元にぶら下げている細い鉄笛はハイランダー鉄道学園の生徒としての証だろうか。

 

そんな彼女は俺に気づくと「パァ!」っと表情が明るくなり、革靴の音を軽やかに響かせながらコチラへと小走りで走り寄る。そして再会が嬉しいのか握りしめた腕をブンブン!と上下に振り回して喜びを表す。リアクションが幼い。でも眼がキラキラお星様してる。てかアレだ。目がしいたけって奴だ。

 

 

 

「えへへ、カナタくんが百鬼夜行にいる事は知っていましたが、今日は来てくれたんですね!」

 

「百鬼夜行に新しく鉄道が繋がるって言うんだ。そりゃ気にもなる」

 

「うんうん!電車は良いものですよ!いちごミルクと同じくらいに!それに電車の窓からは飽きない光景が次々と舞い込むので楽しい空間なんです!えへへ」

 

「その時が通勤ラッシュじゃなければ電車が良いのは同意だな」

 

「むぅ…!カナタくん!あまりロマンスに欠けること言わないでください。なんか嫌ですよ」

 

「悪かった。さっきのシュポガキ達が原因で昔のいらん記憶が呼び起こされてんだ。てか、本当になんだよシュポガキって名称。意味わかんねぇ…」

 

「シュ、シュポ?」

 

 

それから彼女の案内と共にたわいのない話を広げながら新しい電車の前まで足を進める。

 

するとホームには人も多く集まっており、報道陣や電車オタクがカメラを構え、シャッターの音が鳴り響いている。やはり皆気になってこの開通日に足を運ばれたようだ。

 

 

俺も気になり電車の中を覗いてみる。

 

まず内装も綺麗だ。

座席は濃いめの赤いシート。

もちろん手摺もある。

こうしてみると普通の鉄道だな。

 

 

「この鉄道ってたしか特急がメインで稼働するんだよな?なら山海経とか一本で行けるのか?」

 

「はい、行けますよ。ミレニアムとか、トリニティとか、キヴォトスで代表するレベルの学園に関してはこの鉄道を使えば他の路線よりも早く到着できるように敷かれているよ。本当はレッドウィンターまで繋げる予定だったけど寒冷地対応まで行うと管理ができないから気候が穏やかな百鬼夜行が終点だね。あ、ゲヘナは論外。あの学園は早々にくたばれば良いよ」

 

「まあ、あそこは大体月一で線路がおじゃんになってるからな。ハイランダー鉄道学園からしたらゲヘナは目の敵か」

 

「本当にだよ!もう、信じられない!線路の修理がどれだけ大変なのかもわからないで好き勝手するんだもん!ああもう!なにが代々受け継がれる温泉開発ですか!路線上の保有地は正式にハイランダー鉄道学園が所有権を得て鉄道を敷いてるのに無許可領土侵略からの破壊活動!頭ゲヘナはコレだから!!」

 

「じゃあ、あの電車の側面に付いている照射物ってのは…」

 

「対鉄装甲用のレーザー光線ですね!人には無害ですが戦車などの鉄製の兵器に対しては瞬時に溶かして分解する自衛式攻撃法です!ふっふっふー、コレで鉄道に手を出す不届きものは外からも消し飛ばせますね。ざまぁみろです」

 

 

ちょっと悪い顔している白鳥だけど、ハイランダー鉄道学園からすると迎撃用の兵器は得て当然らしい。やっぱりキヴォトスか。

 

俺もう百鬼夜行に引き篭もろうかな?

お外怖いもん。なぁ前任者(カナタ)

息災で生を全うするのも『俺』だと思うぞ?

先月なんて包帯の腕で大変だったんだよ?

 

あの時は血に濡れた腕に包帯巻いてるとイズナが「腹切りは勘弁してください主人殿ぉ!」と腹じゃなく傷は腕の方なのに勝手に腹切りと勘違いしてはワンワンと泣き喚くし。

 

寺子屋のナグサに関しては元から白い肌が更に青ざめてしまっては「に、兄さん?」とガクガクと震えては、ぐしゃぐしゃの顔になってしまったりとナグサだけに(なぐさ)めるの大変だったわ。この子メンタル弱すぎィ!ああ!もう!鼻水こぼれてるよ!チーンして!ね?ね?

 

あと定期的にお暇を貰いにくるワカモにも運悪く見られてしまい「誰が!誰が貴方様を!?」と仮面の下は怒り心頭で発火してたし。仮面の下が赤く光ってて怖かったわ。なので無理やりケモ耳モフって宥めた。そんな夏の思い出。

 

なんで夏なのにジメジメと曇るん??

 

 

そんな先月の苦労に対して俺は遠い眼をしていると後ろから騒がしく足音が聞こえる。

 

 

「あのー!」

 

 

振り返ると、白鳥と同じハイランダー鉄道学園の制服を身に纏った関係者がコチラに急いで走ってくる。

 

そして……

 

 

「すみません!__A■■N、さん!」

 

 

!!??

 

 

 

 

 

一瞬のノイズ。

 

 

同時に無音が支配する。

 

 

耳を通るはずの名前が伏せられた。

 

 

まるで俺がその真名を捉えることを、この箱舟が月雪カナタを拒否したかの様だ。

 

 

ほんの一瞬だけの静寂。しかしそれが重くのしかかる感覚は気のせいではないらしい。

 

 

耳鳴りに近く、浮かされた感覚だ。

 

 

しばらくするとホーム内の騒がしい音が戻ってくる。

 

 

 

「…これは………」

 

 

 

思わず耳を疑いたくなる。

 

しかし冷静な自分がいる。

 

一応、周りを見渡す。駅ホームに搭載されたスピーカーの音に耳を傾けてみるが、異常をきたした様な音は拾えない。正常に稼働している証拠だろう。

 

今日この場まで足を運ばれた客人達も先ほど捉えたノイズ音に反応はなく、今も新しい電車に夢中であり今もシャッター音が鳴り響くだけ。

 

視線を白鳥と他駅員に戻す。

 

 

 

「マナーの悪い客人がホールで暴れて大変なんですよ。コチラの応援願えませんか?」

 

「その……発砲許可は?」

 

「出てます!武力鎮圧は許されてます!なのでR■■Aさんも安全装置の確認後速やかにホールまで応援に来てください」

 

「っ……わかりました。ではこの方の案内が完了次第すぐに向かいます」

 

 

 

まただ。その名を捉えることは叶わない。

 

必要なその部分だけノイズが邪魔をする。

 

それでも周りはなんてことなく物事が正常に進み、まるでノイズを無いものとして扱う。

 

ただし、俺のみ、その正常から拒否されたような感覚に襲われてしまう。

 

ああ、やはりこれは俺だけが変なのか?

 

 

それから他駅員と会話を終えた白鳥は優れない顔のままコチラに振り向き…

 

 

 

「っ……あ、あの…カナタくん……その…そ、の……」

 

 

その表情は暗く、辛そうに笑い、俺に向ける視線はどこか引け目を感じさせていている。彼女もこの異常を理解してる様だ。自分だけじゃないと分かって少しホッとしている俺がいる。

 

 

 

あはは……ぁぁ、やはり、こうなっちゃいましたね…」

 

「まあ、職務中となると同業者もいる訳だし、そうなるだろうな」

 

「ぅぅ、軽率でした。流石に浮かれ過ぎていましたね。私のミスでした…」

 

「…それで?白鳥はこうなることを知ってたからあの夏祭りで俺に真名を告げず、偽名で名乗ることを選んだのか?」

 

「っ……ええ、はい。そうですね。私は視る者ですから、カナタくんがこの箱舟にない歯車であることを認識しました。だからこうなることをなんとなく分かっていました…」

 

「なるほど……じゃあ、コレは俺が原因か」

 

「っ!?い、いえ!そんなことはっ!!」

 

「まあ待て。俺も身に覚えあるんだよ。何故なら俺は浮いた歯車だから。その事を教えてくれた恩人がいる。それに白鳥もこの意味を分かっているんだろ?俺が外から招かれた心である事と同時に、俺のことを『歯車』と認識した。ならば月雪カナタがこの箱舟でどの様に扱われているかは視る者である白鳥が解を得ていたはずだ」

 

「……カナタくんは、頭が良いんですね」

 

「別にそうでもない。色々と答えを得れる機会が多くてな。それ故に考察も捗るんだよ。だから恐らくそうなんだろうとまとめれるだけ。それに…」

 

「?」

 

「ここはキヴォトスだ。君の言う通り【神秘の箱舟】なんだ。なら不思議の一つや二つは備わって当然だろ?少なくとも外から招かれた俺はそう思うね。このキヴォトスって世界の事を」

 

 

非現実的な物事ばかりだ。

子供が銃社会で生きるなんて。

 

その上、撃たれても基本的に平気だって。

前世の価値観や倫理観が全く役に立たない。

 

それでいて月雪カナタに憑依した。

成り代わりとして『(おれ)』を全うする。

 

異常だらけの、規格外だらけだ。

だってココは【ブルーアーカイブ】だから。

 

創られた故に始まった世界。

 

なら用意される不思議の一つや二つ、このブルーアーカイブって場所では普通の出来事なんだろう。ひどく笑えるな。

 

 

 

「まあ今回はアレだよアレ。スタンド使いは引かれ合うヤツだ。俺たちは箱舟を箱舟と認識できる者同士。ロマンチックにも花火大会という舞台で会うべくして会えた。ただ用意されたその行先では、歯車だけに噛み合わせが悪いイレギュラーとして発生した。それが今回、君の真名を知ることができないという異常事態としてアーカイブが刻まれる。しかしそれがキヴォトスなんだろうと受け入れる他ない俺たちは、この鉄道でノイズ混じりのため息で箱舟に揺らされるしかない。そういうことだ」

 

「……随分と落ち着いているんですね」

 

「納得してるからな。それが月雪カナタなんだって事を。ま、これはとある大預言者がキヴォトスの月雪カナタを確立させてくれたお陰だから落ち着いているだけで、何も知らなければ戸惑いの中で箱舟に揺られるがまま、月雪カナタは頭のヘイローの様に再び砕け散ることになるだろう。まぁ俺がそんなこと許さないがな」

 

「……私は視る者です。だからカナタくんが何者なのかをある程度ながら解を得ます。しかし規格外故に測れません。箱舟に浮いた月雪カナタって存在がこの先で何を成し、何処に正解と失敗を示すのか。言葉だけ大層に紡ぐしかない私程度の歯車ではカナタくんはわからない。やはり不思議な人なんですね、貴方は……ふふっ」

 

「お、やっと笑ったか。ただでさえ前髪で片目隠してるのに暗く表情を作るんじゃたまったもんじゃねぇな。お前は脳内で苺ミルクに狂うアホみたく、お眼目キラキラ椎茸してる方が断然似合ってるよ」

 

「なっ…!べ、別に毎回、苺ミルクに気を取られてるわけじゃないですから。30分に一回ペースで苺ミルクが過ぎってるだけですから」

 

「充分すぎんだろ。仕事に支障来たしそうな煩悩じゃねぇか。と、いうより仕事で思い出したけど…改札ホールに向かわなくて良いのか?トラブルだから増援欲しがってんだろ」

 

「あ、そうですね。向かわなければ…」

 

 

案内を建前に状況整理を行って数分ほど。そこまで時間が経ったわけでもないがハイランダー鉄道学園の生徒として職務を果たすため白鳥は向かわなければならない。と、なると、彼女とはここでおさらばか。

 

 

 

「白鳥」

 

「?」

 

「俺は月雪カナタの正当化に狂う。この箱舟で月雪カナタは健在であることを俺が『(おれ)』のために存在証明する。だがキヴォトスは幾らでも揺らすだろう。何故なら舟だから。箱舟だから。しかし俺は浮いた歯車。むしろ箱舟を歪に揺らす側にある。だからさ…」

 

「!」

 

 

ポンと、無意識ながら手癖で白鳥の頭に手を置いてしまう。また少しだけ俯いていたから、妹を慰める時のように、もしくは後輩に心配させないように年上として、また元大人として、選択の数々を乗り越えてきた人生の先駆者として強気に笑って見せる。

 

ああ、コレで良い。

月雪カナタはもう砕け散らない。

 

それを俺がやるんだから。

 

 

 

「その内、白鳥の真名を拾い上げてやる」

 

「!!??」

 

 

彼女は驚いた様な眼をする。

 

下に俯いていた顔は、見上げて持ち上がる。

 

そうすれば水色の眼が、色濃く注がれる。

 

ああ__空のように無垢で、綺麗な色だ。

 

 

 

「何を驚くか。箱舟を揺らすんだぞ?そうすりゃどこかの甲板からポロっと出てくるだろ」

 

「!!……箱舟から…ポロっと…?って…そんな…かんたんに……っ、っっ、ぷっ……ぷくくくっ…!あはははは!ふふふふ!!」

 

 

 

想像が出来たのか彼女は笑う。

 

お子ちゃまな表現で例えたが、しかしそれが気に入ったのか、落ち込んでいた表情から一転して笑顔に包まれる。

 

花火大会の時のように明るい顔だ。

 

 

 

「しかし月雪カナタはまだそこまで振るえる程の力はない。脆さも、弱さも、未だ引きずる。このキヴォトスではまだまだカナタは彼方に浮くことは叶わない。だが俺は『(おれ)』のために規格外に乗り越えて征く。それが月雪カナタのブルーアーカイブだから」

 

「!」

 

「だからもうしばらく、白鳥で勘弁してくれ」

 

「……」

 

 

改札ホームから銃声の音が聞こえる。

 

誰かが暴れているらしい。

 

まったく、頭キヴォトスかよ。

 

大人しく出来ないのかココ

 

 

「わたし、行きますね」

 

「おう。止めて悪かったな」

 

「いえ。またカナタ君とお話しできて良かったです」

 

「俺もだ。それとさ、また百鬼夜行の祭りに来いよ?俺はその時案内できるかわかないけど、もしお暇だったら先人に見習ってまた歓迎するさ」

 

「ふふ、わかりました。では、また何処かで!」

 

 

 

彼女は腰のホルスターに手をかけて銃声の聞こえる方に向かう。俺は巻き込まれない様に別の改札口から出ようかな。駅ホーム内に吊り下げられている電光看板を探そうと周りを見渡していると…

 

 

「カナタくーん!」

 

「?」

 

 

階段を降りる手前で白鳥の声。

 

何か伝えることでもあるのか?

 

俺は彼女に振り向き、意識を寄せる。

 

そして…

 

 

 

 

 

「えへへ、わたし、好きですよ!」

 

 

 

 

 

「………へ?」

 

 

 

 

唐突な告白だ。

 

俺は数秒ほど反応に遅れた。

 

しかし彼女はお構いなしに言葉を続ける。

 

 

 

 

「白鳥の名前!実は気に入っているんです!」

 

 

 

「……え?…あ、ああ!……なるほど?」

 

 

 

 

理解するに数秒。

 

俺はどんな顔をしていたか。

 

そんな彼女はケラケラと笑いながら、しかし最後はハイランダー鉄道学園の駅員として綺麗に敬礼を行い、これから職務を全うする事を知らせる様に合図すると今度こそ階段を降りて姿を消した。

 

 

 

「……白鳥か。まあ、即席で思いついた割には良い名前じゃないの?それに…」

 

 

 

それに、ここは百鬼夜行だ。

 

偽名でお忍ぶ人達は良くいる。

 

ならこの百鬼夜行で白鳥の偽名を名乗るくらいなんて事ない。よくある話だ。

 

 

 

「さて、お団子屋と足湯探すか。それで帰ったら鍛錬だな。とっとと神秘を仕上げるか。寒くなると落ちた時が大変だし、まだ気候がマシな内に追い込もう」

 

 

シュポガキに、白鳥の真名、あとノイズ。

 

情報量の多い一日になったな。

 

こういう時は、団子食べて〆るといい。

 

それを百鬼夜行で学んだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

えへへ、言ってしまいました…

 

 

 

彼女もまた、言葉の奥で学んだ。

白い鳥は 彼方 まで彩るらしいから。

 

 

 

つづく

 






大胆な告白は女の子の特権ってそれ良く言われてるから。
ま、多少はね?

なお本人はそれ以上の感情は無くただ単に白鳥って偽名を気にってるだけでカナタ君にそう言っただけです。さてはお前頭アロナだな??

でも箱舟に浮いた弊害として観測者側にある白鳥(連邦生徒会長)の真名がわからないのは中々に辛いことだが、カナタ君は白鳥が「白鳥で良い!」と言うならそれ以上は言わないスタンスなので、白鳥からしたら理解あるスパダリの他にならない。つまり彼女の脳を焼いたってことに違いない。はー、ほんまコイツ。


尚シュポガキには煽られるスパダリくんの模様。

シュポ♡シュポ♡
シュポ♡シュポ♡



土曜日分終わり!
じゃあな!
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