なんか俺のヘイロー砕けてね?   作:つヴぁるnet

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土曜日分

近所にいる面白いお兄ちゃん。
それが月雪カナタ。


第14話

 

 

「しかし、ナグサとアヤメは今年から中等部になったのかー、時の流れは早いもんだな」

 

「そう?私はカナタ君が転校してきた日が昨日のように感じられるよ」

 

「それは随分とお変わりのない日を送れてる証拠だな。平和でよきよき」

 

「ふふっ、そうだね」

「カナタは今年で三年生なん?」

 

「そうだよアヤメ。俺は三年生」

 

「ほーん、だとすると来年には中等部は卒業して高等部になんね。あ、そうなると寺子屋から出るんと?」

 

「それなー、マジでどうしようかな。一応俺達が通う寺子屋は小中高一貫として扱うって先生が言ってたんだよ。それなら別にあの寺子屋からわざわざ出る選択もない話。だから高等部になってもおそらくはこのままだと…思う」

 

「確かにあの先生ならそう言うね。でもせっかく百鬼夜行におるんけんさ、ココの連合学院とかもっと大きいところは行かんと?あそこなら寺子屋以上に風呂敷が広いと思うんけど」

 

「確かに連合学院は名前負けしないレベルで大きい場所だ。学生には文武両道を推してるし、部活動にも力入れてる。ミレニアムほどの規模はないけど学園としてはとても良いところだと思うよ。でも俺は寺子屋の環境で満足してるし、先生も生徒である限りは学年は問わないと言ってるからな。それなら()()()()わざわざ変える必要も無いと言った認識よ」

 

「なるほど」

 

「てか百鬼夜行に居るってだけで充分すぎるプラスアルファが保証されてるからな、ほんと。俺がそうだったように自身に見合った空気感だけ探せば、あとは百鬼夜行ってだけで環境が完結する。学びの場として最高すぎんか??」

 

「子を宝として扱う山海経のように百鬼夜行も子供好きな町やけんね。その大人達も昔そうしてくれたように今を返しとる。百鬼夜行はそんな場所。カナタはええところに来たんよ」

 

「それな。だから百鬼夜行に腰落ち着けれるなら学舎そのものに拘りない…ってのが、俺の答えになるな。あ、でもハイランダー鉄道学園とか少し考えたことあるな。あの学園なら所属する路線によっては百鬼夜行にも戻れるだろうし」

 

「それはもう普通の駅員さんの仕事なんよ」

 

「ハイランダー鉄道学園はまんまそうだけどな」

 

 

さて、百鬼夜行に来て早くも2年と数ヶ月。

 

俺も今年で中等部三年になり、後輩のアヤメとナグサも中等部一年となったりと、時の流れは早いなぁと、思いながら放課後は団子を購入してそのまま俺の家に集っている。昔から変わりない日常だ。

 

三人分の麦茶と団子をテーブルに並べ、俺の部屋で想い想いに過ごしており、ベッドに腰を預けながら窓を眺めれば外は梅雨の季節、曇り空が深い。外で活動するには少し気分が重くなるが夜は神秘研究のため外に出る。今のうちに英気を養おうと食べ飽きない団子に手を伸ばす。

 

 

「よし!今日こそUZQueenに勝ったる!」

 

「また俺のアカウントで…」

 

「カナタのアカウントを使わんと会えん!」

 

「まぁ、そうだけどさぁ…」

 

「おっし!マッチした!」

 

「アヤメちゃん…」

 

 

モモトークでUZQueenさんに「身内が遊びたがってるのでよろしく」とメッセージを飛ばすと一時期流行ったミーム猫のスタンプで「おけ」と返信される。ヤギでベロベロしてるスタンプで「ありがとう」と適当に送たら秒で「はぁ?」と例のスタンプで返ってきた。ただのノリなんだけど猛者からそのスタンプで返されるとなんか怖いわ。

 

脳内で絶望猫が悲鳴あげてる。

にゃー!にゃー!

クスクス。にゃー!

 

 

そしてゲーム画面には明らかに練習キャラで対面してくるUZQueenさん。そんなのアヤメが知る由もなく正統派なキャラを選択して勝負開始。もう既に立ち回りで負けている。今回は何回辺りで折れるかな。まあ俺の家でしかプレイ出来ないゲームのようなのでしばらくはこのまま夢中に食いついてるだろう。

 

 

さて、賑やかな空間作りアヤメに任せるとしてそろそろ俺は例の作業に取り掛かるか。

 

 

「布と綿棒。アルコールティッシュ。それと重曹と電解水のスプレー。あと仕上げの椿油は今回の分で…足りるか?あとでまた買わないとな」

 

「カナタ兄さん、今からお手入れ?」

 

「アヤメを作業BGM代わりにお手入れする。ナグサは……あー、暇しちゃうか」

 

「ううん。私は大丈夫。見ていて楽しいよ」

 

「……それなら手伝ってくれる?」

 

「!…いいの?」

 

「ああ。ナグサは丁寧だからな。むしろ手伝ってくれるとありがたい」

 

「そう?ならお団子分、頑張ろうかな」

 

「じゃあ、サイズ通りに並べるぞ」

 

 

そう言って__俺は頭のヘイローに手を伸ばして全て回収する。受け止め皿として敷かれた布の上にサイズごとに揃えて、小型のスタンドライトのスイッチを入れて光を当てる。

 

 

「なぁ、しれっとやってるんけどさ…」

 

「?」

 

 

すると早速負けたアヤメが再戦のロード時間を活かすとコチラに視線を向けて語りかけてくる。

 

 

「その、()()()()()()()()()()ってかなり意味分からんよね。こうしてみるとアクセサリーを手入れするのと変わらんとよ」

 

「見た目そうだろうな。だって普通は触れないモノとしての扱いだからな。コレ」

 

 

アヤメの言うことはわかる。なにせ俺のテーブルの前には砕け散ったヘイローが並んでいる。しかもサイズ通りに。異様な光景である。

 

 

「触れると言うことは物理的干渉が可能と言うこと。つまり埃を被ったりもするし、汚れも付着したりする。梅雨の季節なら尚更だな」

 

「お得意の神秘で浮かさんの?」

 

「出来ないことは無いが…手でやった方が綺麗になるからな。だから時間があるときはこうして椿油を使ってまで手入れするんだよ。心なしか神秘の通気性も良くなる気がするし」

 

「ほーん」

 

 

そう言ってローディングが完了したゲーム画面に再度食いつくアヤメ。俺はチラリと対戦カードを目に入れながらまた視線はヘイローに。ナグサもアルコールティッシュで手先を綺麗にしたのかヘイローの手入れに取り掛かろうとする。

 

 

「やり方覚えてる?」

 

「最初は乾拭きだよね?」

 

「そう。細かな埃を払う。そしたら次にアルコールティッシュで消毒を行うんだ」

 

「うん、覚えてるよ。消毒が終わったら重曹スプレーを使いながら布や綿棒でヘイローの汚れを拭き落として、次に電解水を使うことで重曹では落ちなかった汚れを落とす…だよね?」

 

「そうそう。手順はその通り。最後は綿棒を使って椿油で表面をケアする。後は乾かして終わりだな。あ、凹みとか穴あき部分は綿棒で汚れを取ってくれると助かる」

 

「わかった。カナタ兄さんのヘイローを綺麗にするね!」

 

「ありがとう」

 

「うーん、やっぱヘイローの手入れってのが聞くだけだと謎すぎるんよ…うわ!ちょ!そこで壁ハメ!?」

 

 

 

俺のヘイローは率直に言えば見た目が悪い。

 

まず表面は殆ど錆色で染まっている。

塗装が落ちたようなみすぼらしさ。

 

元々は歪みながらも輪っかとして繋がっていたんだけど、光輪(ヘイロー)として扱うにはそのため見た目はかなり酷く、あとネズミに齧られたような跡まで残っていたりと、それはもう虐めの対象として扱われるには充分すぎた。そしてその期待を裏切らないとばかりにトリニティの環境がトドメを刺してくれた。トリカスがこの野郎ぉ…

 

 

それで前任者が自壊のためヘイローを砕いてしまったため、現在は輪っかとして繋がっておらずバラバラに浮かんでいる。まるで惑星。憑依者の俺からしたらコレはコレで個性的に感じられるが、周りからすればまともなヘイローとしての扱いにはならないだろう。

 

ただそれでもヘイローとしての役割を全うしようとしてるのか、砕け散った状態でも頭の上ではヘイローの輪として形成してふよふよと浮かんでいる。

 

 

と、まあこのように、綺麗な光輪として褒めるには非常に苦しい形をしているが、しかしそれでも俺が月雪カナタとして存在証明たらん証である。コレは大事な一部だ。だから綺麗にしておきたい。理由はそれだけである。

 

 

「梅雨の季節はカビが怖い……いや、そもそもヘイローにカビ生えるのか?」

 

「うんしょ、うんしょ…」

 

 

二人揃って地味な作業。

 

側から見たらアヤメの言う通りアクセサリーの手入れにしか見えない。まあ、憑依者の俺からしたらアクセサリーみたいなモノだけどな。ヘイローって存在は。色々形あるし。

 

 

「あ、れ?埃が引っ付いて取れない……?」

 

「んん?あ、もしかして静電気で引っ付いてるのか?てか、ヘイローにも静電気の概念があるのか。もうこれわかんねぇな」

 

「それなら……すぅぅぅぅ…」

 

「?」

 

ふぅぅぅー

 

「!!?」

 

 

布にも静電気はある。そのため静電気に静電気を被せても埃が取れないケースは良くある。そのためナグサは布で埃を取ることを諦めると口元にヘイローを持ってくる。そして細く息を吹きかけることで埃を払おうとした。

 

 

__背筋に甘く感触がのしかかる。

 

 

「???」

 

 

ヘイローを握ったまま僅かにプルプルと震えてしまう。

え?なに?今の?

 

もしかしてナグサの細い息吹がヘイロー越しに伝わったのか?

そんなバカな。

 

ヘイローに流れ弾が当たっても大して痛く無いのにこそばゆい感覚はあるとでも?

 

いや、いやいや、今のは視覚的干渉だ。

実際に感触があった訳じゃない。

 

ヘイローにそんな機能は…

 

 

「あっ、凹んだ部分に少し汚れが。ええと、ここは綿棒で奥の方を……コリコリ、こしょ、こしょ…」

 

「あっ、あっ、あっ、あっ」

 

 

 

おっ、やべぇ、おっ。

 

なんか甘くなぞられてる……気がする。

 

 

いや男の喘ぎ声とか誰得だよ。

落ち着け。特に感触ないだろう。

ただの視覚的干渉だ。気のせいだ。

 

 

 

「こしょ、こしょ……あっ、綺麗になった、ふふっ」

 

「……」

 

 

謎の背徳感。

 

ただ純粋にヘイローを手入れしてるだけなんだけど、ダメなことをさせてる気分になる。

 

あ、でも、なんか手入れされるごとに心地良いわ。

 

あれだ。耳かき的なやつ。

 

 

 

「ええと、あとは椿油で表面を…」

 

 

ナグサの指細っ。

 

あと、めっちゃ丁寧。

 

 

 

「あっ、あっ、あっ」

 

「カナタ?何へんな顔しとるけど、大丈夫と?」

 

「あっ、いや、あっ、なんか、あっ、特に感触は無いのに、あっ、視覚的な感受というか、あっ、ともかく煩悩と格闘中なだけ、あっ、水見式という方法が、あっ、最も簡単で、あっあっ…」

 

「それ一番あかんやん…」

 

「うんしょ、うんしょ…」

 

 

このままだと俺のヘイローでキメラアント編が始まりそうになるので、ゴンさんのタンバリン思い出すことで色々と崩壊させ、意識を手元に戻す。あ、ヘイローは既に崩壊してるとする。

 

 

 

「さて、俺も始めるか」

 

 

改めて、ヘイローを掃除する道具としてまずは綿棒と布を準備。次に消毒用のアルコールティッシュ。それから洗剤代わりとして重曹と電解水の二つも必要。そして最後に手入れの仕上げとして使用する椿油だ。これ重要。

 

椿油に関しては百鬼夜行の名品であり、コレで仕上げればヘイローも琥珀のように綺麗なる…と、言うより俺のヘイローって実は琥珀色に見えないことないんだよね。

 

2年前にクズノハが上モノの酒を飲ませてくれたお陰でヘイローに透明感が現れて、それで濁りも薄まって内側も綺麗になった。

 

錆色が濃く映るようになったが、しかしそこはヘイローを綺麗に磨くことで太陽光を吸収しやすくなり、椿油などで手入れすればしばらくは艶やかに彩る琥珀色になる。もちろんコレは俺のヘイローだから出来ること。ある意味自分磨きかな。

 

 

 

「あれ?コレ…もしかして貫通してる?」

 

 

ところどころネズミに齧られたような跡があるヘイローだが、よく見ると貫通してるモノまである。めちゃくちゃ小さい穴だが。

 

 

「紐とか、ワイヤーとか、通せそうだな……」

 

「どうしたの?」

 

「穴に糸とか通せばアクセサリーになるんじゃないかなってな」

 

「ヘイローがアクセサリー?ふふっ、面白いこと考えるんだね、カナタ兄さんは」

 

「俺ならではの話だけどな。さて、この穴あきに関しては後で活用法を考えるとしてだ。こうして改めてヘイローを集めると全部で12個になるのか」

 

 

しかも面白いことに大中小で4個ずつ備わっている。更に言えば内それぞれ1個ずつ穴あきのヘイローと来た。嫌に均等だな。

 

この月雪カナタに使い道を探せってか?

 

 

 

「まあ銃弾に当たっても軽い音がする程度で何とも無いヘイローだからな。紐を通すくらいなら傷も入らないか…」

 

 

まあここら辺は後で考えるとして、磨き終えたヘイローをピンっと指で弾き、頭の上に飛ばすとヘイローは定位置へと勝手に移動する。コレで一つ完了だな。

 

なお指に弾かれて勝手に移動するヘイローを見たナグサは相変わらず不思議な目をしていた。

 

やっぱり変なんだろう。

俺のヘイローってのは。

 

とりあえずナグサの無防備な頬を指で突いてやると、ハッとしたように表情を見せ、いそいそと手元のヘイローに集中する。

 

可愛らしい。

 

 

 

「だぁぁあー!また、まけたぁー!」

 

「アヤメって実はゲーム下手では?」

 

「そんなぁ!言わんといてぇ!」

 

「自覚あったのか…」

 

「カナタ兄さん、椿油が少なくなってきた…」

 

「マジか。残量は今回分で何とか粘れる?」

 

「大丈夫だと、思う」

 

「わかった」

 

 

コントローラーのボタンの音を交えながら、俺とナグサはヘイローの汚れを落とし、椿油で綺麗に表面を手入れする。時折、麦茶で小休止挟みながら地味な作業を1時間近く続ける。

 

そして…

 

 

「見ろナグサ!ヘイローも綺麗になって喜んでいるぞ。ほーれ、ぐるぐるぐるぐる」

 

「ヘイローが喜ぶってワードいつ聞いても耳疑うんよね」

 

「でも表面はツルツルに光ってるね。私も手入れしようかな?」

 

「まず触れることは出来んけんね?」

 

「ふふっ、冗談だよ」

 

「しかしナグサが手入れしてくれたヘイローめちゃくちゃ綺麗だな。丁寧な仕事と言うか」

 

「そう?」

 

「おう。なんなら毎日してほしいくらい」

 

「え?」

 

「なん?その、毎日味噌汁作って欲しい的な言い回しは」

 

「ふぇ…!!??」

 

「オイ誰のヘイローが味噌汁の色だぁ?見ろよ!琥珀色に艶やかだろ!」

 

「わかった、わかったけん。もうよか。そんなに回すとまた汚れるんよ」

 

「それは困る。じゃあ布に包んで懐の中に隠しておくか」

 

「いやそれポケットに隠せるんかい!?」

 

「できなくはないな。ただ意識しないと勝手に頭の上に戻るけどな」

 

「ほんと、変なのヘイローやね…」

 

 

ま、毎日、カ、カナタ兄さんに味噌汁を?……ぅぅぅ…

 

 

 

各々の学年が繰り上がっても、変わりない日常風景とそれを保たせてくれる百鬼夜行に感謝しつつ、俺もコントローラーを掴み取り、アヤメと協力プレイに洒落込む。ナグサは相変わらず静かだ。今は随分と静かだが。手入れで疲れたのだろう。彼女の丁寧な仕事に感謝。

 

 

 

「え??待って!嘘やん!?うああああああ!!」

 

「アヤメお前ぇ!今年は申年だからと言って全覚醒抜け横格闘暴発覚醒落ちはマジで犯罪レベルやぞ!!?もう許せるぞオイ!!」

 

「落ちすぎ!前に出ます!うわーん!ビームマグナムの判定がデカすぎます!」

 

「やめなって!全覚抜けはキヴォトスでは恥ずかしいことなんだよ!」

 

 

 

やっぱガンプラ機ってクソっすね。

忌憚のない意見ってヤツっす

 

助かりました▽

了解です▽

えらいえらい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「パスタリーグ?茹で上がってんのか?」

 

「キャスパリーグ…!これから広まる名前…!あと首根っこを掴むな…!降ろせ!降ろして…!」

 

「なるほどですわ!これが、いんたーなしょなる、と言うものなのですね!初めて見ましたわ!」

 

「まーたこのお嬢ちゃんは間違った認識を」

 

 

大らかな百鬼夜行だろうと、やはりココはキヴォトスという箱舟。弾丸が放たれる引き金の先で自由意志が尊重される世界。

 

そのため不良やら、チンピラやら、スケバンやら、普通に存在するし、一日一回以上聞こえる銃声もいたって普通の日常の一部ある。

 

もう慣れた。

 

そして昨年、ハイランダー鉄道学園が百鬼夜行に新路線を繋いでからは外からも人が多く来るようになり、それに伴って色んな人達が来るようになった。それと同時に百鬼夜行では見かけない不良達も前年と比べて見かけるようになっている。

 

服装とか銃器を見れば何処から来たのかある程度わかったりする。毛色が異なるから。

 

 

さて、そんな不良達がわざわざ百鬼夜行までやって来る理由とは、一体何か?

 

とても単純な話。

 

あまり足を伸ばさない新地点でその名を広めるためである。と、言うよりキヴォトスの不良達の目的なんてのは大体そうである。至る所でオラオラやっては承認欲求を満たそうとする。治安悪いけど平和である。言葉にすると意味わからんけど。

 

そんなわけで、新路線が開通したことでアクセスしやすくなった百鬼夜行に目を付けた不良達はわざわざ遠出までして不良行為に勤しもうとやってくるのだが……

 

 

まあ大体は現地の強い奴らからボコボコに叩きのめされてしまい、地元のお山にスタコラ逃げ帰るのがデフォルトである。

 

 

まあ、そりゃね?鍛錬が日常の一部になっている百鬼夜行の生徒が相手だ。

 

普段はお団子食べたり、緑茶を飲んだり、触り心地良さそうなフサフサのケモ耳や尻尾を揺らしては、百鬼夜行ならではの盛んな部活動を謳歌している生徒達で多い。

 

しかし、いざ武器を握りしめれば百鬼夜行連合学院の生徒達は戦闘民族に早変わりだ。

 

え?無害そうに見えただって?

バカを言うな。

 

俺の二つ年下のナグサとアヤメですら高等部を片手で倒してしまうレベルやぞ。もし外からやってきて百鬼夜行の生徒を倒せるならソイツは大したもんだろう。

 

 

 

で、だ。

 

 

今回も香ばしいチャレンジャーが他所からやって来て、キャスパリーグのネームドを広めようと百鬼夜行自治区で現地民と喧嘩を繰り広げていたのだが、コレが結構強くて驚いた。

 

しかもまだ初等部だ。

 

随分と胆力がある娘だなぁ、と感心していたら喧嘩の流れ弾に当たってしまった自称エリートのお嬢ちゃんが「悪き者は成敗ですわ!」と突如参入してきた。

 

 

そして…

 

 

 

「案外やるんだな、エリート」

 

「当然ですわ!なにせ身共はえりーとですの!」

 

「うぅぅ、こんな外を知らなそうな奴に、しかも同い年の奴に負けるなんて…」

 

「このエリートお嬢ちゃんが強いだけだ。ココまで強いとは思わなかったけど…」

 

「コレが、あうとろー…ふふっ!なかなかに良い刺激ですわ!いつもはお屋敷でお勉強ばかりですから一度は体験したかったですの!しかも今回は来訪者とのあうとろー、なかなかに!ぐろーばるですわ!」

 

「弾丸を名刺代わりに交わすグローバルがあってたまるか。マジで治安悪すぎんだろ」

 

 

まあ見ての通り、この自称エリートのお嬢ちゃんがチャレンジャーを倒しやがった。

 

なかなかの番狂せに感心していたのだが、まあそれはそれとしてこれ以上の被害は好ましくないため俺も割り込み、チャレンジャーの首根っこを猫のように摘み上げて喧嘩を収集させた。

 

お、パーカーの下はケモ耳か?

黒猫っぽくて可愛らしいな。

 

 

「ところでそちらの、ぱすたりぃーぐ、の方はどう致しますの?」

 

「パスタじゃない…!キャスパリーグだから…!」

 

「今回はどうもしないよ。特に壊したモノもないし、自警団に引き渡す程の損害もないので、そこら辺にポイして終わりだ」

 

「まるで野良猫みたいですのね」

 

「ね、猫って言うな___!!」

 

 

「挑戦状を受け取ってくださぁぁあい!!」

 

 

「ひゃ!急になんでございますの!?」

 

「うお、急に生えてきたな。びっくりした」

 

「え?…えええ!?う、宇沢!?な、な、なんでアンタが百鬼夜行に!?」

 

 

去年と同じように百鬼夜行まで道場破りに来たのだろうか、俺たちの間に割って入るように宇沢レイサが飛び出してきた。梅雨明けと言えどまだ背筋が重たく感じる季節なのだが、この子変わらず元気すぎる。

 

 

「レイサか、久しいな。今年も来たのか」

 

「はい!今年も道場破りのため百鬼夜行まで遠征に来ました!なにせ!新しく鉄道が繋がったので!」

 

「ま、待って、コイツと知り合いなの…?ああもう…!なんか収集つかないんだけど…!!」

 

「なんだ?知り合いか?キヴォトスって案外狭いのかもな」

 

「ぐろーばる、も様々ですのね」

 

「おお!もしやそこにいるのは杏山カズサですか!?あ、もしかしてカズサも道場破りに百鬼夜行まで来たとか?ほほう、なら宇沢レイサと同じですね!」

 

「ち、違うから!別に道場破りになんか興味は___!!」

 

 

「主人殿ぉぉおお!!道場破りとお聞きしてこのイズナ!飛んで参りました!!」

 

 

「ひゃ!?」

 

「おお!イズナさん!お久しぶりです!」

 

「なんか途端に人が増えてきたな。なんだ?梅雨明けだからか?」

 

「雨宿りを終えたカエルみたいですわね」

 

 

屋根の上からシュタッと降りてきたのは忍者研究部のイズナだ。ケモ耳をピコピコ揺らしながら道場破りの単語に目をキラキラさせて参入してきた。あと前も言ったけど俺は別に道場建てたわけじゃないからな?忍者研究部はイズナが勝手に命名しただけやぞ?あと俺は師範でも何でもない。

 

 

「やはりいつ聞いても道場破りは心踊るシチュエーション!ならば百鬼夜行の忍びであるこのイズナ!道場破りとお聞きしたからには参加いたします!」

 

「お前が道場破る側にどうすんだよ。いや道場なんか元から無いけどさ」

 

「でしたらイズナさん!今回はご一緒に月雪先輩のご看板を頂きましょう!お二人なら絶ッッ対に勝てますよ!」

 

「なるほど!でしたら……主人殿!このイズナ!今回は下剋上と参りますので!お覚悟を願います!」

 

「…ほー?じゃあ俺に負けたらイズナのこと破門にするわ。覚悟は出来てるだろうな?」

 

「うぇ!!??」

 

 

破門の言葉を捉えたケモ耳がピーンとなり、イズナの勢いがピタリと止まった。

 

道場破りなんて心踊るシチュエーションだろうと破門扱いは相当響いたらしく「あわわわ!」と目をグルグル、ケモ耳を荒ぶらせさせながらレイサとこの流れに乗るべきかめちゃくちゃ迷ってる。可愛らしい。

 

 

「なんと!イズナさんの命運と境目ですか。むむ…でしたら!杏山カズサ!その腕を見込んでこの道場破りに参加してください!そうすれば勝機は上がってイズナさんが破門されなくなります!」

 

「レイサ殿!」

 

「はぁ!?なんで私が!?私は別に___!!」

 

 

「道場破り!!とても良い響きの しちゅえーしょん、ですわ!是非えりーとの身共も えんとりぃー、の方を申し込みますわ!!」

 

 

「ひゃ!?」

 

「おお!飛び入り参加希望の方ですか!なら一緒によろしくお願いいたします!!」

 

「おいコラ勘解由小路の小娘、あまり数増やされても困るわ。あと響きの良いシチュエーションでも無いぞコレ。てか道場破りで参加希望ってなんだよ意味わからんわ」

 

「きびだんごも無しに仲間入りとは!このイズナ!予想できませんでした!」

 

「もー!もーぉ!なんなのコレ…!?ぅぅ、こんな事なら百鬼夜行に来るんじゃなかった…!」

 

「あの!良ければお名前をお聞きしてもよろしいでしょうか!」

 

「ええ、もちろん!こほん…身共は勘解由小路家のえりーとである、ユカリと申しますわ。唐突な、だいなみっくえんとりー、になりましたが…是非!身共もこの、あうとろー、にあやからせて下さいまし!密かならがら、あうとろーに憧れてましたの!」

 

「コレで四人でございますね!ふっふっふー、流石に主人殿もこの数は大変でござるでしょう!にんにんっ!」

 

「だーかーらー!私は別にぃ___!!!」

 

 

「月雪様!何やら!何やら、ご大変な気配を感知したので!微力ながらもこのワカモがお力添えのため今参りました!」

 

 

「なんだよもー!またかよー!!」

 

「ワカモか。この時間は珍しいな?確かに大変なことになってるけど水遊びで解決する話だから、そこまで大層なことにはならないわ」

 

「あら?そうでございますの?ふむ。でしたら…私もご参加しますわ!月雪様との水上戦…!コレほど心踊る闘争はあまり無いですから…!」

 

「むむ!何やら月雪先輩とのお知り合いのようですが…いえ!その感じですと月雪先輩との水上戦をご存知と言うことですね!なら大戦力に間違い無いでしょう!うむっ!コレで道場破りは五人です!月雪先輩もこの数は苦戦を強いられますね!」

 

「何やら大所帯のようですが、しかしコレも、こみゅにてぃ、といった交わりですわね!ああ…!お屋敷のお外ってこんなにも楽しい事ばかりですのね!」

 

「あらぁ?そのお姿?もしや勘解由小路家の者でございますの?なるほど。さすが月雪様。多くの人脈をお持ちになりますのね……」

 

「主人殿!もしイズナが勝ちましたら破門はご勘弁を…!」

 

「…もう、なに?…ねぇ?…これ?ほんとうに…なに??」

 

「それは俺も聞きたい。なんでこんなに集まったんだろう。こんなつもりなかったんだけどな…??」

 

 

周りを見渡す。

 

百鬼夜行の外からやって来たキャスパリーグの杏山カズサ。

 

トリニティから挑戦者としてキヴォトスを歩き回る宇沢レイサ。

 

時折お暇を浮かそうと狐のお面を被って俺の元に訪れる弧坂ワカモ。

 

時代劇に出てくる忍者に憧れているため忍者研究に勤しん久田イズナ。

 

自身をエリートを自称する華族の箱入り娘こと勘解由小路ユカリ。

 

 

 

「なんだこの豪華メンバーは、たまげたなぁ」

 

 

 

しかも一人は勘解由小路家の華族だし。

 

え?なに?

 

本当にコレらを今から相手するの??

 

道場破りの名目で?

 

ヘイローは足りても体が足りねぇぞ。

 

 

 

「もう…!月雪!アンタの所為だよ…!」

「月雪先輩!本日はよろしくお願いします!」

「下剋上と参ります主人殿ぉ!お覚悟を!」

「えねみー!で御座いますわ!月雪様!」

「貴方様との大事なお暇…頂きますわ!」

 

 

 

「……キヴォトスってこえーな」

 

 

綺麗にしたばかりのヘイローは回る。

 

俺の悩みなんか知らないとばかりに。

 

琥珀色は五人の道場破りを映していた。

 

 

 

 

この後、めちゃくちゃ水上戦した。

 

 

つづく

 








原作ゲームだとレア度⭐︎3の集いですが、現段階の彼女達はまだ心身ともに未熟な初等部、また中等部になったばかりです。そのため異性として模範となる適切で正しい距離感を持って少女たちと接するように一人の先人として心掛けてましょう。なので脳を焼くような真似は絶対に控えるように。宜しいですね?




尚、勘解由小路家のユカリは水の上に佇むカナタ君の姿が物語や童話に出てくる彦星様のように見えたらしく脳内でNichirinのBGMが流れては焼かれてしまい、カズサは二度と百鬼夜行に来ないと言っていたが脳裏にはカナタ君の存在証明が刻まれてしまったりと少しばかし表面がサッと焼かれてしまい、ワカモは五人を同時に相手にしても一人勝ち得たカナタ君の姿はまさに強者そのものだったので再びこんがりと焼き直されてしまい、レイサは帰り際に撮った集合写真を待ち受けにすると帰りの電車に揺られながら携帯画面を眺めてはメモロビのように穏やかな笑みのまま今日の思い出に焼かれてしまい、作者はその頃セイア実装のトレンドに騙されてしまい、イズナは破門を受けた。




実は前日まで体調を崩してたんや!悔しい!いま日曜日分を書いてるけど更新できんかったらごめんな!

じゃあな!
またの更新でな!!
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