これは幼い頃にとある忌子の代わりに『後悔』を拾い上げた時の追憶…
最初は………たしか……
…
…
…
真っ暗な部屋にいた。
「ぅ、ぁ?」
身体中が痛く、瞼も重い。
それから伸び切った髪。
それから頬に被れるような感触。
絆創膏だろうか。
あと片目が見えな……いや、見えるか。
ただ目を開けれないだけ。
包帯が片目を覆い隠すように巻かれていた。
怪我……してるのか?
良くない状態なのはわかる。
同時に気怠さも全身を蝕んでいた。
なんとも活力がない体だ。
重たい瞼の奥に薄暗く差し込む光。
この顔を上げる。
ここは_____何処だ?
戸惑いながらも、痛む体を引き摺るように立ち上がり、周りを見渡してみる。薄暗い部屋に差し込む日の光。視力を落としそうな閉鎖空間。
また濁ったような香りと、ほんの僅かに包帯から香る薬品が鼻を不快に刺激する。
コレはそれほどの怪我なのか。
再度、周りを見渡す。
机に椅子、ベッド、絨毯。
壁に備え付けられたクローゼット。
なんて事ない家具の数々。
何より____目線が低い。
何故だ?
俺はこんなに背が低かったか?
いや、待て。違和感だ。
体に肉が足りない。
あと腰にもいつもの力が行き渡らない。
___っ!?
もしや……体が、縮んで…いる?
おいおい、なんだよそれ。
俺は何処ぞの高校生探偵か?
毒薬を飲まされた記憶も無いのだが?
そうして手元を見る。薄暗く部屋に映る小さな手のひらだ。同時に部屋着も小さい。
受け入れるしかない……
体は少年と言える身長だった。
薄暗い部屋でもそれはわかった。
そうなると…
___俺は『誰』だ?
なんの記憶も無い。
目が覚めたら薄暗いこの部屋にいて、体が縮んでいる。
声帯も野細くて若々しいやや高い声だ。
ただ足元はしっかりしているから身体的に小学生だろうか?
いや中学生か?
判断材料がやや足りない。
てか俺はいま『子供』なのか?
社会に疲れた『大人』では無かったのか?
わけがわからない。
そしてこの『体』はなんだ?
もしくは『誰』のだ??
俺はいま『誰』の体にある?
これは『俺』なのか?
それとも___まだ『僕』なのか?
「っ!!?」
そう言葉に出せば、頭痛が走る。
思わず片足ついてしまい、髪の毛を毟るように頭を抑え、同時に呼吸が激しくなる。
そうして毛が何本か落ちる。
手の甲と地面に見える黒い髪。
簡単に抜け落ちやがった。
コレは……
ああ、コレは良く無い状態だ。
「げっほ…げっほ……の、ど、が」
いまだ頭痛に悩まされる。
耳鳴りもする。吐き気もする。
ひどい、ひどい、ひどい、苦しみ。
だが、コレは『俺』のじゃない。
俺が背負った痛みに思えない。
なら誰のだ?
__ああ、なるほど。
__コレは『僕』の方なんだろう。
そう理解が進めば、俺じゃない『僕』の方に刻まれた記憶が、走馬灯のように駆け巡り…
そして『僕』が聞きたくない声が聞こえた。
__うわー!まともな光輪を持たない半端者じゃないの!歪んでるし気持ち悪い!
__恥ずかしいヘイロー持ちだ。まともなヘイローも浮べれないなんて。かわいそう。
__あらやだわね。正常に裏切られて欠陥した可哀想な子供よ。見てられないわ。
__男として産まれたからそうなったのよ!女として生まれたらヘイローもちゃんとしてたのにね!残念なひと!
__うわぁ、男がヘイロー持ちなんてなんか気持ち悪いなぁ。しかも色も濁っているし。なるほど。天使にもなれない堕天使ね。あなた。
__あんたなんかではこの先トリニティに進学なんて絶対に無理ね。私だったらこんなの生き恥だわ。とっとと消えちまえばいいわ。
__えええー??そんなオンボロなヘイローなんか浮かべて生きていけるの?それとも実は機能してる……訳ないか、あはは!
__ねぇいいこと考えた!試しに弾を撃ち込んでみない?そしたら分かる筈だよ!今からコイツに試そうよ!
__いえーい!賛成!試してみよう!まあそんなに怖がらなくていいよ?だって一応ヘイローはあるでしょ?なら大丈夫____え?血?
そして、
__肩に
__腕に
__脚に
記憶のない痛みが一瞬だけ広がる。
「っ!!?」
今の意識は『俺』の筈。
しかし『僕』だったこの体は記憶から逃れたくて記憶を閉じようとして全身が震える。
__嫌いだ……
__嫌いだ……
__こんな『僕』は嫌いだ。
頑張っても、頑張っても、頑張っても。
__何も報われない。
__何も生まれない。
どうしてこんなにも僕は欠陥品なんだ?
__どうして…
__どうして…
ああ、そうだ。
このヘイローを壊せば良いんだ。
コレがあるから、皆から非難されるんだ。
こんなのが浮かんでいるから、ダメなんだ。
なら、こんな…
こんな欠陥品のヘイローなんか…
両手で、掴んで_____壊せば良い。
_____死んでしまえ。
「!!??……はぁ!はぁ…!…はぁ!はぁ?…がはっ!!……くっ!!?お、おえっ…」
俺の記憶じゃない。
しかしこの体にあった悲しい記憶と追憶がこの意識を無視して悲鳴を上げている。
まるで否定されることを恐れてひどく嫌がっている。電気を流されたカエルの死体みたいだ。
「ぜぇ……ぜぇ………」
額に巻かれた包帯を壁に擦り付けながら背もたれにして、重たいため息と共に定位置であろう絨毯に座り込む。先ほど目覚めた場所。
何故か落ち着く……
ここが『僕』の拠り所なのか?
よく見たらこの座っているこの位置だけ色褪せている。どれだけ腰掛けてうずくまっていたのか。想像に容易くて想像はしたくない。
「ああ……なるほど……な……」
掠れた声で納得する。
この体は『僕』だったけど、記憶は『俺』とは全く関係ないモノだ。
そのため第三者の視点として、客観的に受け止めることができた。
体はまだ記憶に震えているが。
「なるほど。イジメか、なるほど……これは虐めを受けてしまった時の記憶で、それで…」
抜け落ちた髪の毛を見る。
まだ頭には心配されない程度に髪の毛は生えているが、それでもむしれば簡単に抜け落ちるコレを見て相当ストレスに長いこと悩まされ、精神的に襲われている。そう感じ取れる。
なにせこの体はいつまでも震えが止まらない。
自律神経の共々が異常を来してるようだ。
かわいそう……可哀想に。
えあ、それよりも…
「ヘイロー……いや、ヘイロー?……待て。何処かで聞いたことあるな言葉………もしや史実にある競馬?……のとは、また違うな」
一瞬だけプリティーでダービーの方を思い浮かべてしまうが、この記憶からしてプリティーどころの話ではない。
もっと命に関わるような内容だ。
なんというか、もっとステータスに直結するような。そんな感じがしている。
思考を巡らせるほど落ち着きを取り戻す。
__喉が渇いた。
長いこと自己管理を放置してたような渇き。
とりあえずこの薄暗い部屋を何とかするか。
ここはあまりにも気が滅入る。
俺は立ち上がり、部屋のカーテンを開ければ光を取り込む。
座り込んでいたこの部屋はそこそこ大きな間取りをしている。
一人暮らしには向いている広さ。
それから扉を見つける。
もしかしたらこの先はキッチンか?
部屋の扉に手をかけ、ドアノブを捻ろうとして……ガチャ、ガチャ。
動かない。
鍵がかけてあるのか。
俺は扉の鍵を解除して、また捻る。
そしてギィィと音を響かせながら扉は開く。
足を踏み入れた部屋にも光が入り、そこがキッチンであることがわかる。
なるほど1DKか。男の一人暮らしには充分すぎる広さだ。それにしてはこの体は若いが。
それでもまだ漂う重たい空気は気を落ち込ませてくれる。鬱陶しい。
「やはり一人住まいだな…」
おぼつかない足取り。
壁を支えに歩く。
それよりも水だ。
渇いた。
喉が渇いている。
乱雑に置かれたコップを手に取り、水道水だろうと構わず注ぎ、喉に流し込む。
呼吸は少しだけ落ち着いた。
まだ荒さは残るが、先ほどよりもマシ。
お陰で意識はある程度覚まされ、半開きだった片目もしっかり開く。
そしてコップをシンクに置き、ゆっくりと顔を上げて___鏡が目に入る。
「?」
今の『俺』の顔と対面する。
ああ……まだやや幼いな。
中学生くらいか?
垢抜けないのは間違いないが。
__馴染みある俺の顔じゃないな。
やはり別人か。
鏡に別人がいる
しかし、それは『俺』だ。
頬に手を触れ、ぎこちなく瞬きを行い、肩は受け入れ難い現実に反応して少し荒く上下に動いている。視覚に入る動作。認識する限りが鏡の中で連動している。間違いなく俺を見てる。
ああ……くそっ…
コレってつまり……そういう…っ…
再び早くなる鼓動。
落ち着いてしまったからこそ繰り返して焦燥感に見舞われる。
だが、それ以上に、驚くものが目に入る。
「ぅぁ?なんだ、この浮いてる…のは?」
鏡の中に何か……ガラクタのようなモノが浮いている。それは俺の背後だ。
「っ!?」
振り返る。
しかし、何もない。
まわりを見渡しても何もない。
__気のせいか?
再度、鏡を見る。
そして頭にガラクタが浮いている。
「!?」
驚き、体は硬直する。
なんだ…!?
なんだこの歪な浮遊物は!?
しかし、それ以上のアクションは無い。
ただ__不気味にソレが浮いている。
「コ、コレは…………ッ!?うあ"あ"あ"!!があ"あ"あ"あ"!!」
また走る頭痛。
そして駆け巡る__悲しい記憶達。
__酷いヘイローだ。
__歪んだヘイローだ。
__嫌われたヘイローだ。
__欠陥したヘイローなんだ。
受け入れ難い非難が内側から突き刺す。
これは___『
これは___『
何度も浴びた『僕』が恐れる言葉の数々。
それが『俺』にも伝わる。
「うぐっ…!!おぇっ!げっほ!げっほ!」
渇きを潤した筈の水分を吐き出し、また乾こうとする体は、まるでそれ以上を求めることを拒否しているようで、己に恐る。
「はぁ…!はぁ…!?くっ……!」
倒れそうになる体。しかしキッチンのシンクに手をつき、床に倒れ落ちないよう支える。
しかし足腰が震える。
しかし頭がふらつく。
しかし心の切り傷が痛む。
俺のモノじゃない痛みが俺にも伝わる。
ああ……そのまま倒れ込みたい。
何もかも放棄して、終わりたいんだ。
だからこのまま力尽きて、朽ちたい___
「___断るッッ!」
死ぬだ……と?
何も知らずに死ぬだと??
ふざけるな…!
ふざけるなよ…っ!
俺はまだ何も知らない…!
知らない顔で、知らない痛みで、何も明かされぬまま俺が尽きるだと??
何度でも言ってやる!
ふざけるな!
絶対に倒れてやらないッッ!
それは…!
この『俺』が嫌だからだ…!!
「あ"あ"あ"あ"あ"あ"ッッッ!!!」
喉を焼き切る勢いで叫び散らし、そして身に覚えのない後悔を消すように俺はシンクに頭をガン!と強く打ち付ける。その衝撃でコップが倒れてしまう。同時に額に巻いてある包帯が赤く染まっていく。血が出たようだ。薄暗く写る鏡だろうとその赤は良く分かりやすい。やりすぎたか…
「はぁ…!はぁ…!はぁ…ッッッ!!」
コップは傾いても、血は流れても、しかし俺は朽ちるこの体に断固拒否し、弱り切った心に喝を入れ、荒れる喉に無理やり空気を流し込み、全身を奮い立たせて、そして立ち上がる。
幻聴に、幻覚に、記憶に、見知らぬそれぞれが俺を貫こうとするが、それでも歯を食いしばっている。
こんな意味不明な『僕』の痛みに飲まれて『俺』が終わるなど!!
ああっ、絶対に認めねぇ…!
「はぁ………はぁ……………はぁ……は、ふぅ」
落ち着き取り戻した呼吸。
頭に痛みはまだある。
吐き気もまだする。
だが、それらを飲み込んで閉じ込める。
『僕』はダメでも『俺』は耐えてやる。
そして……
「おに、い、ちゃん?」
「__え?」
横から声が聞こえた。
キッチンルームに繋がるのは玄関。
薄暗い空間でも、それはわかった。
「だ……だ、れだ?」
玄関には、ランドセルの子供。
すると…
「!!!……ッ〜〜!!お兄ちゃん!!!」
「ぇ……うわっ!!?」
俺よりも二回りほど小さな子供。
靴を蹴り脱ぎ、ランドセルを投げ捨て、こちらにも走ってくると手を広げて抱きしめてきた。
そして押し切られる体。
な、なんだこの身体能力??
に、人間なのか??
いや、それよりも、お、お兄ちゃん??
身内…なのか???
だとしたら……もしや、この子は『妹』と言うことだろうか??
「よかった……よかった……まだ、生きてる…!」
「ぇ、と…」
「連絡…っ!10日も不通だったから…っ!なのに入院してたって聞いたから…っ!そんなにも追い詰められていた、なんてっ!なにも知らなかったのっ!」
「入院……」
ああ、もしやこの包帯。
俺……だった『僕』は入院してたのか?
この心配具合、どうやら普段から身内に気に掛けられていたほどらしく、そしてこの『僕』はあまりにも脆弱のようだ。
そのためか妹であろう小さな女の子は俺を抱きしめて、顔をこちらのお腹に埋める。同時に体から震えが伝わる。それほどなのか。
「お兄ちゃんっ…私はお兄ちゃんの味方ですから…!学校の人達がお兄ちゃんを虐めたりしても私は味方だから…っ!だから…!死ぬなんて言わない…くだざい……お願いです…から…」
こんなにも心配される__この人間。
それが身内から。もしくは血縁になるだろう妹から抱きしめられてしまい、そして声を枯らす勢いで『死』を望まないでと小さな体で希う。
「ぼく…は………、お、れ……は…」
お陰で少しずつ、クリアになる。
頭の中と、この痛みの正体。
意味がわかってきた。
「……そう、か…」
今の俺は間違いなく『僕』だった人。
これは想像通りだろう。
当然ながらこの体は俺のではない。
それは、つまり……
俺は誰かに成り変わった、ってことか?
かもな。そうじゃないとこの状況をそう説明付けなければ納得いかない。
だって見知らぬ妹がこの腕の中にいて、こんなにも悲しんでくれる。
「…え、と……その……」
名前____妹だろうこの子、の名前。
俺は知らない。
いやでも『僕』なら覚えてるかもしれない。
だから自然にこの体にある痛みと共に『僕』の中にある記憶に繋げてみる。
そして『名前』がスッと浮かぶ。
ほんのわずかに幸せが心に灯されながら。
浮かび上がった彼女の名を口に出してみる。
「ミヤコ」
「!」
そう『ミヤコ』だ。
この子は『月雪ミヤコ』って名前。
そして3つほど歳が下の妹。
僕を……兄を心配してくれる優しい女の子。
一人暮らしのこの家にまで足を運んでくれた心優しい妹だ。
頬に、温かくナニカが伝って落ちる。
「あ、あれ?」
「お兄ちゃんっ…」
「あ、えと、これは……なみ、だ?」
「っ!!……ぅぅ!お兄ちゃん…!」
ああ、コレは涙だ。
俺のモノではない、涙だ。
まだいた『僕』が流して、流して、流し続けて、しかし絶えずに流れ落ちては、幾度なく湿らせて、渇こうとしていた、痛々しい涙だ。
けれど…
ああ、こんなにも心が苦しいのか。
「ぅぅ…」
俺は無意識にこの妹を、ミヤコを強く抱きしめてしまう。
それに対してミヤコは少し驚いたように反応を示す。
しかしミヤコもこの体を一人にさせまいと抱きしめる。
オンボロに苦しんだこの体を抱きしめて、涙と苦しみを受け止める。
こぼれ落ちる涙の下には綺麗な白い髪。
この涙で汚れるのか。
「ごめんね……ごめんなさい…」
「っ!お兄ちゃんは悪くない……!悪くないです、から……っ!」
口調も、涙も、俺のモノじゃないのに、俺は止まらない涙によって溢れ出る苦しさと悲しさを堰き止めれない。
まるでコレは自分のようにも感じているから。
だからこの温もりが渇いた体に欲しくてたまらなくて、そして耐え難いあらゆる痛みに震えが止まらなくて、今はこんなにも誰かに受け止めてほしいと心が蝕む。
ああ…
『僕』だった『俺』は…
こんなにも苦しんでたのか…
同情する。
想像の限りだが、でもそれしか無い。
『僕』はコレほどに絶えることを望んだ。
__ダメな、お兄ちゃんで、ごめんね。
「!!!??」
ふと、顔を上げる。
そこには見える。
同じ誰かが立っている。
顔も見た。先ほどの鏡の通り。
なら間違いない。
それは『俺』と同じ『僕』だ。
本当の『僕』がぐしゃぐしゃな泣き顔でいた。
『っ、お前は』
__ヘイローは……僕自身が壊したから、もうそこに僕はいられない筈で、本当は何もかも消えるつもりの筈で…… ああ、でも……まだ僕はそこにいるみたいだね。
『僕』は疲れたように、笑う。
しかし、涙を流しながら___
__でも僕は……もう、そこに座れない。
『僕』は疲れたように、溢す。
されど、涙を流しながら____
__それでもヘイローは頭に浮くんだ。砕け散ってしまった断片だろうとまだ『僕』を諦めさせてくれないんだ。ああ……あは、は…
『僕』は疲れたように、俯く。
けれど、涙を流しながら____
__だから君は僕じゃない誰かなんだ。僕はそんな風に強く立ち上がれない。でも。もう良いんだ。僕は『僕』をやめて、それで楽になりたかったから。もうなんだって良いんだ。
『僕』は疲れたように、泣く。
そして、涙を流しながら______けど。
「『お前は……後悔しているの、か??』」
__……………………………っ…
もう戻れない肉体からの解放。
ヘイローを壊し、自分の魂を剥し、この体から何もかもを遠ざけてしまったことにより戻れない者としてそこにいる。
絶えない涙と共に『俺』を見ている。
しかし、されど、けれど。
この『僕』は『後悔』に触れていた。
ああ、そうだろう。
悔しい筈だ。
そうはなりたく無い筈のところに『僕』は立ってしまっている。
いま妹に抱きしめられ、涙を流してるのは本当なら『僕』のはず。
借り物の痛みで涙流す『俺』なんかじゃない。
だけど。でも。
__もう『僕』はそこに居られない。
そんな思いが『俺』に伝わる。
何故なら『僕』だった体にいるから。
刻まれた痛みがまだ残るから。
…
…
…
何も知らない、苦痛だ。
何も知らない、記憶だ。
何も知らない、追憶だ。
何も知らない、後悔だ。
何も、ああ、何も…
何も知らないでいる。
全ては虚しいだけなのかもしれない。
でも_______理解はできる。
この『僕』に何があったのか。
この『僕』が何をしたいのか。
この『僕』が何をやりたいのか。
そうだったら良かったを。
この『僕』が、こうだったら良かったを。
幾度なく繰り返す思いが、体に残る。
しかしそれを、まだ経験の浅い『子供』に道を決めろなど酷な事この上ない。
何も知らないから、何もできずに朽ちた。
それが『僕』が歪ませる後悔の色。
手放してしまった『僕』の つづき を。
なら…
ならば…
そうならば…
こうなったのならば…!
「ここからは『
_____ッ…!!??
『僕』には背負えない痛み。
けれど『俺』なら背負っていける……筈。
でも『俺』はもう『僕』じゃない。
なら、ここからは『僕』の代わりに征く。
それが、ヘイローがまだ残っている証。
後悔の一欠片だけが、浮かんでいる形。
でもそれを後悔の証として、また後悔としての形として、この先残すつもりは『俺』にない。
これは『俺のヘイロー』にする。
砕け散ろうとも『俺』が繋ぎ止める。
新しいヘイローとして受け止める。
『僕』が与えてくれた一欠片の
だから、今日からは…
ココから『僕』が『
__っ…………あぁ、そう、なん…だね。
死して絶とうとした『弱さ』の結末。
しかしまだ、ほんの僅かだけが残る。
それはまだ諦めれない『強さ』があるからヘイローは完全に壊れず『僕』を生かした。
バラバラに砕け散っているが、それでも輪として形を保とうと、まだ絶えることを選ばない。
なら、後悔の先に『俺』が報いろう。
__僕は、まだ……生きてるんだね…!
ああ。お前は生きる。
残ったヘイローが君に『生きる』を強いる。
ならば終わらない。
この体は絶えることを選ばない。
なぜなら続けるから、まだ『僕』として。
だから…
「あとは 『
___ありがとう……
その声は、これが最後だった。
…
……
………
……
…
「何か考えごとですか?」
「んあ?……まぁ、そうだな。ちょいと役割のこと考えてた」
「勤勉なんですね」
「あんたほどじゃないよ」
広い部屋に、机と椅子。
山のように聳え立つ資料。
ついでに二人分のコーヒーの香り。
大役を示すそれぞれの制服を揺らしながら外を眺める。
「むむ……今は二人だけなんだから昔みたいに名前で呼んでくれても良いですよ?」
「何を言うか。ほんの夏祭りで案内してやった程度の関係だろ?それも2回だけ」
「ふふっ、私からしたら2回も!ですよ。また行きたいですね。ナグサちゃん達は元気でしょうか」
「さてどうかな。まあナグサなら相変わらずアヤメにお熱じゃないのか?あの天才に追いつこうとめちゃくちゃ努力してたからな。今は調停委員会に入ってるだとよ」
「貴方のお陰ですね」
「むしろ俺は助けられた側だ。しかも彼女だけじゃない。そこに居た多くの人達によって俺は助けられた。まあ、だから…そこを選んで『俺』は正解だったな」
「ふふっ、そうですか。対して私は『
「悲観主義はやめておけ。良いことない」
「大丈夫ですよ。私はむしろ楽観主義者です。だが同時に現実主義です。だからこそ目を逸らさない。自身の失敗も。来るべきその先も」
「……コーヒーごちそうさま。暇したらまた来てやるよ。もちろん『私兵』としてもな」
「はい!よろしくお願いします。隊長さん!これからもSRT特殊学園の大黒柱として、お粗末な連邦生徒会長である私を助けてくださいね」
「超人のあんたがお粗末は冗談キツイ話だよ、まったく」
「ふふっ、冗談ですよ」
今だけは重役を忘れる彼女は楽しそうに声を転がし、片目だけ隠れた水色の髪を揺らす。
そんな彼女に対してコチラも諦めたように最後は笑いながら、もう一度だけ窓の外を眺めて…
___ここまで辿りついたぞ、
つづく
このくらい【絶望】したらそれが【神秘】になって外から【ナニカ】を招くほどになり【結果】として【憑依】すらもあり得るんかね?ブルアカわかんねぇ。世界観作り込まれすぎてるもん。そりゃ面白いわ。
まあコレも全部トリニティーって奴が悪いんだ…!
ああ…ゆるさん…!
絶対にゆるさんぞ!陸八魔アル!!
因みに『苗字(妹)』の候補は複数あった。
『月雪』『守月』『才羽』『中務』の四つね。
どうやら「うさぎではない」方が強火(意味深)な気がしたのでコッチにしました。どうなるかは知らんけど料理は火力らしいからコレで正解だな!ミヤコかわいいぞミヤコ。なにせ死んだ兄の砕け散ったヘイローに針穴を開けてそこに糸を通してアクセサリーとして編んで「お兄ちゃんだよ!」ってミヤコの首にかけてプレゼントしたらめちゃくちゃ喜んでくれそうだからな!コレで寂しくないな!お兄さんと一緒にラビットステップだ!あぁ^〜心がぴょんぴょんするんじゃ^〜