はい15000文字ィィィ!!
携帯のメモ容量が重たいィィィ!!
でもやめらんねぇな!!がはははっ!
「ヒヨリ、どっちだ?」
「こっちの方です…!」
彼女の声を従って進む。
俺はこの場所を知らないから。
「敵影が増えてきたな」
「やはり奥に進むほどですね…」
「とりあえず一呼吸挟もう。水ある?」
「はい、こちらに…!」
後ろに声をかければバックパックから水を取り出し、こちらに渡してくれるのは、アリウスからの協力者、またはアリウスの救難者。
名は__槌永ヒヨリ。
「ヒヨリも一口飲んでおけ」
「ぁ………うぇへへ、間接ですねぇ…」
「?」
「いえ、なんでも無いです……えへへ」
SRT特殊学園の装備を身に纏った彼女はまだ中等部であるが、なかなか様になっている。
ちなみに服装はSRT制服とかではなく、医療スタッフさんが用意してくれたそこら辺で売っている簡単な衣類だが、スタッフさんが気を利かせてくれたの銃撃戦などで動きやすい種類を選んでくれた。
なので格好に関しては特に違和感なくSRTの装備ともマッチしており、この威力偵察も問題なく務めれそうだ。
ただ、ヒヨリは前日まで衰弱状態にあり、病み上がりのため無茶はさせれない。なので戦闘になった場合は基本的に俺が全て片付けるように言ってある。その代わりヒヨリにはアリウスの案内と荷物役を任せている。
「散策ポイントは三つだな?」
「はい。まず私達の居住区。次に罪人のために使われる牢獄。そして細々とした訓練所です。接敵の確率が低いのが居住区ですね。ほか二つは良くアリウス兵を見かけます」
「了解した。まずはローリスクなところから散策しよう。それで良いね?」
「はい」
いまから約1時間前にトリニティ自治区に入り込み、そして裏道を通ってヒヨリが知っているカタコンベの入り口を散策すると、まだカタコンベの仕組みが切り替わってなかったのかアリウスに侵入することが出来た。
それからヒヨリと共に奥まで進むと全てが薄暗い世界が広がっていた。空気感があまりにも不気味で、希望のために顔を上げても見えるのは失意を教え込むような薄暗い空が埋め尽くしている。人口太陽も明るくない。視界を確保する程度の明るさでしかない。
ここは洗濯物とか乾かなそうで嫌だな。
そんなことを考えながら街中に入るとある程度インフラ整備されたレンガ道や古びた街灯が並んでいたが、街に活気が全く無い。
しかもそれを助長させるように虚しい空気が常に肌を撫でる。あまり長く居座ると気が狂いそうだ。この環境で長居はしんどい。
そして、それはどこまでも続いているため既にSAN値とやらが削られ、精神面で試されている現状、もしや精神攻撃でも受けているのか?なんてことも考えてしまう。
しかしこの重い空気に引き攣らせながら進軍するわけにもいかない。後ろには俺を求めてSRTまで目指してきたヒヨリがいるんだ。アリウスの空気感に怯んでるような後ろ姿を見せるわけにはいかない。
そう意識を切り替えて__
パキッ__と、何かが足元から響く。
「………え?」
何かを踏みつけ……いや、踏み砕いた。
空っぽな、空洞のような、何か。
俺はポケットからペンライトを取り出す。
そして、踏んだ"正体"を視界に入れた。
「____え」
それはいずれ、誰もが行き着く先。
「っ___!!、???」
「お、お兄さん…!」
しかし、あまりにも報われない行先。
それもまだ小さな 軀 だ。
「あ、ぅっ……?ぇ…これ、は…!?」
「う、後ろに!ゆっくり下がって…!」
硬直してしまった俺に、ヒヨリが慌てながら声をかけて、後ろに退くよう促す。
「あ、ああ、悪い…………ッ、おぇ…っ!」
「!」
頭痛がする。
そこにある末路が訴える。
「はぁ……はぁ……!」
薄暗い中にある、一つの物体。
もう既に事切れて、長く動かない者だ。
肉が爛れ___骨が皮膚から浮き上がる。
そして皮膚から白が飛び出している辺りで視線を逸らして、思わず頭を抑える。
押さえ込んだ嘔吐部を喉で押さえ込む。
額からは、すごい汗が流れ落ちる。
「だ、大丈夫ですか?」
「あ、ァ……………ぁぁ……なん、とか…」
精一杯の強がりだ。
なにせ、ヒヨリが近くにいる。
彼女に弱いところを見せるのはダメだ。
俺が先駆者として歩むなけらば。
だから踏み越えろ。
幼いままに朽ちた命を乗り越えろ。
今の俺は責任を知る者だ。
彼女に…
子供の前で情けない格好は____
ストンッ…
「!」
「…っ…大丈夫、です」
背中に柔らかくのしかかる。
俺よりも、一回りほど小さな命の形。
ゆっくりと、背中から前に腕が回される。
冷たさに引き込まれないような優しさ。
「本当は大丈夫じゃないかもですが、でも…大丈夫ですから、お兄さん…」
「…」
ああ___情けない。
コレが今の月雪カナタなのか?
そりゃ骸を、人の死体は初めて見た。
初めて見る惨さに背筋から冷たさが伝う。
感情の処理に体が追いつかないのだ。
痛くて、痛くて、たまらない。
見ているだけで、苦しくなる。
でも___
彼女のお陰で大丈夫になった。
「生徒達を……助けないと」
「!」
「止まってられない。行こう…ヒヨリ」
「っ…はいっ」
全てに虚しさがあっても。
その虚しさに朽ちる理由はない。
それでも。
ココにいる子供達は__
「(何も知らないから、そうなっている…)」
子供だから。
大人を知らないから。
何が正しいかも、何が必要かも、知らない。
子供故に知らない君が、トリニティの環境を測り損ねたように、知らないがために未来で何も成せずに砕け散った子供で多い。
ここはそういう世界だ___
「ッッ…!!」
__ベアトリーチェ!!
__大人をしない大人っ!!
何が目的でこうなってるかわからない。
何故こんなにも惨たらしい事が出来る?
だが子供を食い物にしてる事は分かる。
こんなにも虚しさに埋め尽くされている。
ならそれをなんとかするのが大人のはず。
子供を知ってるからこそ大人を全うする。
その手で拾い上げてやるのが先人の役割。
なのに___それを放棄しているだと??
目に見えているこの惨状を??大人が??
頭のヘイローがひどく__落ち着かない。
まるで否定のために、蠢くようで。
「ヒヨリ___次の場所は?」
「!」
「目的を違えない。優先は君の家族」
「っ……はい、向かいましょう…」
敵を避けつつ寂れた街中を進む。
正直、まだ感情の処理が追いついてない。
訓練不足が伺えるな。
いやでも、これはしょうがないはず。
純粋にこの現実に対する怒りが体の底に溜まって仕方ないのだ。
正直に言えば俺は今すぐベアトリーチェとかいう大人を捻り倒したい。
なんならこの手で跡形もなく滅ぼしてやりたい気分だ。
それこそRTA並みの速さでとっととベアトリーチェをダイナマイトでも何でも使って爆破してやりたい気分だ。もしくは代わりに誰かがやってくれないだろうか?あんな大人相手に遠慮する必要はない。けれど…
「ヒヨリ、体は大丈夫か?」
「はい。後ろを追いかけるくらい、なら…」
まだ、違えるなよ、俺。
いまはSRTとしての任務。
そりゃ連邦ちゃんは俺の個人的な気持ちも汲み取ってくれた上でこの任務を威力偵察として派遣してくれたけど、でもこの制服を身に纏っている時はSRTとして期待以上の働きで報いるべきだ。
それは月雪カナタの神秘を頼りに伝えに来てくれたヒヨリのためにも、俺の未熟さで潰えるわけにはいかない。敢然と征くんだ。
「見回りが多くなってきたな。これ以上の隠密行動は難しい」
「でしたら……ここからは、流石に…」
「ああ、ココからは__屋根を使おう」
「……え?」
「ヒヨリは背負っている荷物を腹元に抱きかかえろ。そしたら俺がヒヨリごと下から抱きかかえて屋根の上に跳ぶ」
「ふぇ?ぁ、ぇ、ええと…それって…」
「ほら、敵さんに見つかるから」
「っ〜」
ヒヨリは背中にある荷物を前に持ってきてこぼれ落ちないように抱きしめる。
そして俺はヒヨリの太もも裏と腰に腕を通すと下から掬い上げるように抱き上げた。
俗にいうお姫様抱っこってヤツだ。
それから「舌を噛むなよ」と声をかけながらヒヨリを神秘で浮かせて軽くし、その場から屋根に向けて跳び上がる。
一度だけ壁を蹴って更に上へ跳び、そして屋根の上に着地した。
「このくらいの神秘ならバレないだろう」
「ふ、ふぇぇぇ……す、すごいですねぇ…」
「神秘の使い方さえ学べば壁を蹴って登るくらい誰でも出来る」
「えへへ、可能性ですねぇ…」
それから足音に注意しながら、屋根から屋根に移り、目的地を目指す。
そして一つ目のチェックポイントだ。
居住区と言うべきか、雨風凌げれば問題ない程度の建物ばかりが幾つも並んでおり、先ほどの街中より活力が感じられない。この場所で生きてる事が生きてるとは感じられないほどに何もかもが重苦しい。この場所に彼女は…
「あ、あれが私たちの家です…!」
「視認した。裏口とかあるか?」
「はい、あります。正面から右回りに」
「なら回り込んで、一気に行くぞ」
俺を先頭にしてヒヨリ達が使っている家へ一気に駆け込む。敵影に気をつけながら家を回り込み、裏口に手をかける。
念の為に閃光弾だけを準備しながら少しだけ扉を開け、一度だけ呼吸を固めると銃口を前に構えながら一気に家に入り込んだ。
そして…
「え?」
そこにはマスクをつけた少女が一人。
俺の侵入に声をこぼす。
「姫ちゃん!」
「!!??」
続いて後ろから入ってきたヒヨリはマスクで見えない筈の少女を知っているのかすぐに名前を呼んで再会を喜ぶ。
「ヒヨリ…なの?」
「そうです!そうなんです!」
「うそ、あなた、だって……前に…」
「はいっ…!はい…ッ…!たしかに、投獄中の私を迎えにきたサオリ姉さんの、ハンドサインを見て、それでアリウスから逃げました…!それは間違無い事実です…っ」
ヒヨリは荷物を落としながらアツコと呼ばれる少女を抱きしめる。
アツコと呼ばれる少女も戸惑いながら、でも彼女がヒヨリであることを理解するとその安否を喜ぶように受け止めた。
「そのっ…ごめんなさいっ…ごめんなさいっ!わたしが外を夢見たから…!わたしが虚しさに溶けることを恐れたから…!サオリ姉さんを…皆を心配させてしまったんです…わたしがこの虚しさを受け入れていれば…こんなことになんてならないはずでしたのに…う、ぅぅ、ぅぅ…ぅぁあ」
「ヒヨリ…」
「ねぇ?なに?この状況??」
そしてもう一人、階段から降りてきた。
顎下にマスクを固定している少女。
ヒヨリの家族だろうか?
「っ、ミサキ、さん…!」
「え?嘘…なんで?どうしてヒヨリが…?」
「っ、わ、わたし…は…!」
「なんでココに……え、意味がわからない」
低い声がヒヨリを突きつける。
まあ、理解はできる。
見方を変えれば、ヒヨリは家族を置いて一人勝手にアリウスから抜け出した、裏切り者にもなるからだ。しかしアリウスに戻ってきた彼女に対して何を思うか。怒りか?失意か?
「なんで…」
「ミサキ、さ__」
「サオリが逃したのになんで戻ってきたの?」
「!」
静かな怒りだ。
「貴方は誰よりも外を望んだ。だからわたし達なんかよりもヒヨリが一番適任なんだ。それは私達よりも幸せを噛み締めれる人間として一番の役割なのに…皆、それで良いと、虚しいだけでしか終われない筈の僅かな夢… …っ、なのにお前はッ!サオリの願いを…! どうしてこのアリウスに戻ってしまう…っ!!」
「ぁ、ぁ、わたしは…」
何もかも興味などない。
生きることにすら興味なんてない。
そんな印象に見えたミサキという少女だが、でも家族のことを大事に思う。
そんな優しさを今の声色で理解した。
俺はアサルトライフルをおろして割り込む。
「家族が大事だからヒヨリは戻ってきた」
「誰?」
「あの、貴方は?」
騒ぎによってバレることも恐れた俺はヒートし過ぎる前に静止するとアツコが首を傾げる。
なんと言うか、終始落ち着いてる子だな。
「俺は月雪カナタ。SRT特殊学園に所属する連邦生徒会長の私兵だ。ここに来たのはヒヨリのためであり、任務の一環としてアリウスの内部状況の調査…まあ、君達を助けに来た事になる」
「助けに?」
「メインはサオリという人物だ。ヒヨリの脱獄を手引きした結果、サオリの身柄が心配だとヒヨリ本人から聞かされた。彼女は何処だ?」
「その、リーダーは…」
「あの人は牢獄だよ」
「っ!!」
「牢獄か…」
「マダムに全て見透かされてる。ヒヨリの脱獄を手引きしたことも。それ以上にヒヨリの遠征訓練を申し出た理由も合法的に外の世界に触れさせてやりたいという優しさも見抜いている。遠征訓練に頷いたのは今年になってスクワッドと命名された故に必要だから。でもそれはともかくマダムは見え見えの飴と鞭で虚しさを叩き込もうと考えだったんだよ。でもヒヨリを30日以上も牢獄に閉じ込めているなんてサオリも想定外だった」
「っ、それは……わたしが……」
改めて聞くとベアトリーチェの悪質性がよくわかる説明だ。
しかもそれを『教育』という側面で子供を躾けようとして『洗脳』しようとしている。
最初は噛みついて睨みつけれるだろうが、しかし子供と大人の立場ではどう足掻いても子供の心がその重圧に耐えきれない。大人に従えば何もかも守られるとわかるから反抗心を持つことをやめてしまう。それが成長の立場。
過程が分からないから子供は……そうだった
それは前世も合わせて俺がよく知っている。
「だが、あまりにも度が過ぎた刑罰だ」
「他所からやって来た部外者が分かるの?」
「ああ。だって俺が原因だな」
「!」
「え、原因…?」
「なんで?どうして他所の貴方が?」
ヒヨリは目を見開き、二人は首を傾げる。
何の接点もないと思われているから。
__まぁ、ココではな。
「実は俺、二ヶ月前に遠征訓練中のヒヨリと出会ったんだよ。それで俺の神秘が彼女に纏わりついていたみたいでね、それがベアトリーチェからしたら怒りに触れる案件だったらしい。それで八つ当たりに近いのかな。ヒヨリにかなり重たい刑罰を加えたみたいなんだよ。まあ…普通はそんな子供にする事では無いけどな?」
「なら、貴方が助長の原因じゃん…」
「っ!ち、違いますっ!これはわたしが外を望んだから始まったことで…!」
「それは勿論だけど…でも、それはアリウスなら刑罰の一つや二つは普通のこと。過程にソレが起こっただけ。あのね、わたしがこの事実で一番嫌なのは……ヒヨリがこうして戻ってきたことなんだよ」
「ぇ…」
表情にあまり差分のないミサキ。
しかし、眼の奥は怒りに染まっている。
「私達家族の中で貴方が一番幸せを得て、それでこの場の誰よりも虚しさを忘れて『生きる』が出来る子供の筈なのに……ッ、でも!貴方は戻ってきたことでサオリは今、マダムに対する重罪な反逆者である意味を無くしてしまった…!この場所にヒヨリがいるせいで…!」
「!」
「ただ虚しいだけに、ただ堕ちるだけな私達スクワッドだけど、でもヒヨリ一人に託すことでスクワッドの中にほんの一滴分の希望を見出せたとサオリは喜んでいたんだ。ならヒヨリはサオリのために何もかも忘れるべきで、アリウスに戻ってくるべきじゃ無いのに…っ、でもまたこうして…こうしてお前は…!サオリが無駄死にを…ッ!!」
「させねぇよ、そんなくだらない結末」
これ以上の怒りを無理やり留めるために俺はアサルトライフルをわざとガチャと音を鳴らすように揺らす。くだらない結末を止めるためにこの引き金を引いても構わないという、覚悟を示すために。
「俺はSRTの兵士として威力偵察を名目にアリウスまで派兵された。しかしこれは連邦生徒会の会長がこれまで見つからなかったアリウスの治安立法を調査するためだから。何故なら連邦生徒会というのはキヴォトス全体を管理する中央組織だからな。無論アリウスもその管理下にあるとする。そして…」
俺はヒヨリに視線を移す。
サオリの行方と、現在の扱いを聞き、己の過ちによってこうなった結末に涙を溢しそうになっていた。
俺はヒヨリの頭をポンポンと叩く。
ビクっと、体。
でもその髪に沿ってゆっくりと撫でる。
「おに、い、さん?」
「全て、終わらせることを今、決めた」
頭のヘイローが強く光る。
過去の錆色から、未来の琥珀色に。
俺は彼女達に告げる。
「
「「「!!!??」」」
「当たり前だ。どう見てもベアトリーチェとかいう大人はアウトだ。キヴォトスでこの現状が正当化されるわけないだろう。俺はココに来る途中で見たんだ。白骨化して砕け散った子供の姿をっ、無限に未来があったはずの骸を…!」
これまで抑えていた怒りが身体中から溢れる。
あの骸を思い出すほどに、もう許されない。
「生徒のために大人をしない大人はこの箱舟に揺られる権利はない。何故ならここはキヴォトスだ。生徒のために生み出された世界だ。なら俺はキヴォトスの安定を求める連邦生徒会長に仕える私兵として、子供を踏み躙る危険異分子の排除をこの身で正当化する。ああ、ここまできたらもうこの引き金は軽いぞ」
「マダムを、粛清…」
「貴方が…ここの支配者を??排除する??」
信じられないような目で見るミサキ。
同時にアツコもマスク越しに固まる。
ヒヨリも目を見開いていた。
「貴方は、サオリを助けれるの?」
「生徒を守る。なら助ける」
「そうなんだ。そうなんだね…」
「そうだ」
「そっか………うん、わかった」
「っ!アツコっ!?」
するとアツコはマスクを外した。
小顔で、優しげな眼が姿を表す。
まるで__お嬢様のような顔立ちだ。
「サオリを助けて。大事な人だから」
「アツコちゃんっ…!」
「っ、アツコ…」
虚しいだけ。そう教えられている世界。
でも彼女はどうだろうか。
その眼はまだ未来を見ている。
マスクの中で、まだ諦めてない。
なら、それに応える責任者を果たすのみ。
「ヒヨリ、行くぞ。サオリを助ける!」
「!」
「サオリを助けて、アリウスを否定して、ベアトリーチェも排除する。それは虚しくなんかない俺たちにしかできない明日のためだから!」
「ッッ……はいっ!!」
ヒヨリは涙を拭うと、バックパックを背負い直して立ち上がり、俺の隣に立つ。
裏口から出ようとして、ヒヨリは立ち止まる
そして、二人に振り返り。
「アツコさん!ミサキさん!どうか待っていてください!お兄さんがサオリ姉さんを助けてくれます!そしてっ!」
___『私』が【家族】を助けますから!!
その眼は___もう、濁ってなんかない。
琥珀色に負けない、青藍色に
♢
_こら、ヒヨリ。
_あまりキョロキョロするな
_時間はあまり与えられていない。
私は、家族を守りたい。
私は、家族に希望を持っていて欲しい。
_マダム、一つお願いがあります。
_スクワッドになる以上は必要な事です。
_外の任務に慣れるために許可を貰いたい。
私は、家族を守りたい。
私は、家族に虚しさに溺れないで欲しい。
_ヒヨリは?ヒヨリは何処ですか???
_ッ!?な、何故そこまでの教育を!?
_や、やめてください!お願いです!!
_罰なら私がこの身で受けますから!!
私は、家族を守りたい。
私は、家族に元気で未来を見て欲しい。
__わたしが間違っていた?わたしが虚しさを受け入れないから?わたしが虚しいだけの世界を知らないから?だからヒヨリを??
彼女は……
ヒヨリは……
ここの誰よりも外を望んでいる。
そのことをよく口に出して、外には何があるんだろうとよく語っているから、ここの誰よりも虚しさに溺れず、こんなアリウスでも希望や夢を抱いて明日を待っている。
だから私はそんな彼女に、途絶えさせたくない明日のために、外を見せたいと思った。
けれど__
浅はかだった___
子供の軽率な願いだった__
スクワッドを理由にマダムに願い、私の思惑を見透かそうとも、明日のヒヨリのために外をもっと見せたい、そんな行動が、家族を殺しそうになってしまうなんて思わなかった。
ヒヨリは食費を抑えて雑誌を買っていた。
それは自分のためでもあるけど、ヒヨリは優しい女の子だから、私達にも外の楽しさを見せようと考えて、昔のように皆で共有しやすい形にして持って帰ろうとした。
彼女と__アズサとはまた違う強さだ。
それは牙が一つもない行動だが、でもアリウスの世界に押し留められない彼女なりの反抗心は虚しさに溺れてはいない、ヒヨリだけの図太さなんだ。それはとても頼もしい。
でも___許されない
ヒヨリは思った以上に、マダムの怒りに触れてしまい、その痛みと虚しさを撃ち込まれた。
ヒヨリの悲鳴が聞こえる。
喉が千切れるような鳴き声が響く。
ああ__今すぐ助けたい。
今すぐ、私の家族を助けたいっ!!
『サオリ』
ッッッ!!!????
その声に顔をあげる。
すると真っ赤な空間に私はいた。
そこには幾つもの 眼 が私を見下ろす。
「ぁ、ぁ…」
『忘れたのですか?この
ごめんなさいっ!
痛いっ!痛いっ!
ごめんなさいっ!
助けて!助けて!
ごめんなさいっ!
許して!許して!
ごめんなさいっ!
助けて!助けて!
ごめんなさいっ!
虚しい!虚しい!
ごめんなさいっ!
許してください!
助けて!!
助けてください!嫌だ!!
サオリ姉さァァァん!!!!
「________ぁ」
膝に、感覚は無い。
耳は、拒絶を得る。
脳は、過ちを見る。
手は、震えを知る。
奥から聞こえる声に、私は崩れ切った。
ああ____そっか。
アリウスは___そうなんだ。
家族を___守れないんだ。
こうなったのは___明日を夢見た。
_____私の【ミス】なんだ。
…
…
…
でも…
けれど…
私の家族の中で___彼女が
「さ…お…り……ねぇ…さ……ん…?」
ヒヨリを解放する日が来た。
ああ、一体、何日、何十日、ほんの少しの光しか刺さないこの牢獄にヒヨリはどれほど明日を待っていたんだろうか?
充分な食事も与えられず、大好きは雑誌は燃やされてしまい、何も与えられず、ただ虚しいだけの牢獄で見えない明日を待っている。
代われるなら、すぐに代わってあげたい。
抱きしめれるなら、抱きしめてあげたい。
逃がされるなら、逃してあげ___
ドクン。
明日を、夢見れないと知ったはず。
明日を、待てないと分かったはず。
なのに…
なのに…
「ぇ、へ…へ……」
夢は壊れずに__まだヒヨリはいる。
「私のミスだった…」
私は光の差す下に立ち、声を掛ける。
ヒヨリは虚な目で私を見る。
まだ、見開ける眼がある。
だから__指を動かして光に重ねる。
こ、こ、か、ら、い、ま、す、ぐ、に。
「!!」
ヒヨリが飛び出すタイミングで私はサイレンサー付きの引き金を引いて南京錠を壊す。
するとヒヨリは牢屋の扉を破壊しながら飛び出して私に体当たりを行った。
「逃げてくれ」
「!!」
「逃げるんだ」
「ッッ!」
ヒヨリの攻撃を受け止めた私は言葉を紡ぐ。
そして、ヒヨリは私から予備の銃を奪い取るとアリウスを駆け出した。
「あぁ…」
私は安心した。
本当は一か八かだった。
ヒヨリがハンドサインを素直に従ってここから逃げてくれるか、を。
スクワッド結成する前。
教官役のアリウス兵が居たせいで私からは家族に何も教えれず、ただただ、理不尽に鍛えられていたが、スクワッド結成後は私が皆を鍛える教官役となったからアリウス兵の監視の目が付かなくなり、私たちは自由に訓練が出来るようになった。
その時、私は一番最初に教えた。
__明日を待てる者が、私達家族のためにアリウスから抜け出して、明日を迎える。
言わば__ここから逃げ出せという反逆者として一直線の命令だ。
無論、それは誰かが明日を待てるその者のために命を張り、アリウスの外で明日を迎えさせる自己犠牲上等な歪んだ、家族の愛。
もちろん、ヒヨリは泣いて拒み、アツコもそんな家族の犠牲は嫌だと言って、ミサキはそんな日は来ないと言い、アズサは何も言わずにいた。
でも私は一番最初に教えた。
これが出来る日が訪れるならそれはまだ私達に希望がある。
ここで誰かが潰えても、私達がこれまで身を寄せ合って生きてきた誰かが明日を待てる証拠になるんだと。
それが___今日だ。
だが、その犠牲は私一人で良い。
だからミサキとアツコ、あとアズサには理由を付けて今日は家から出ないように言ってある。
もしかしたら__そうする日が今日なのかもしれないと思ったから。
このことは家族には何も言っていない。
私一人でヒヨリを逃すことを。
アツコはそのことに理解している。
ミサキも同じように理解している。
アズサも汲み取って理解している。
だから三人は私の命令に従う。
私の覚悟を汲んでくれたから。
あとはヒヨリだけ。
そう思って___彼女は
ホッとした。
ヒヨリはそうであってくれた。
「ヒヨリっ!」
「サオリっ!」
私は逃げるヒヨリを追いかける。
反逆者の粛清__の姿を見せるために。
そしてトリニティの外に出たヒヨリの背中にわざとサイレンサーを外した銃口を向ける。
よく響く弾丸を放った。
三発、ヒヨリの背中に入った。
「っ」
私は家族の体に実弾を撃ち込んだ。
「ッッ!??ぉ__ぐ、ぅ、ぇ、っ!」
吐きそうだ。
吐いてしまいそうだ。
だが、ダメだ。
飲み込め!
飲み込んで、明日を送り込め!
そうでなければ、私はヒヨリを意図的に逃したんだと、アリウス兵にバレる。
そしてバレてしまえば次は家族に被害が被るかもしれない。それは避けなければならない。
私一人だけが背負うんだ。
「おい!誰だ!?」
「こんな時間に発砲だと!?」
「止まれ!正義実現委員会だ!!」
サイレンサーを外した弾丸は周りに人を集めてくれるらしい。
こんなところでアリウス兵が見つかるのは勘弁願いたい。
私たちはカタコンベに逃げ込みヒヨリの追跡を諦めた。
「ちっ、どうする?」
「追いかけれないだろな」
「くそぅ、流石に目立ちすぎたか…」
「やれやれ、マダムに何を言われるか…」
アリウス兵はカタコンベの中で状況把握に努めながらヒヨリの追跡を考える。
私はその隙にサイレンサーを取り付け、そして帽子を深く被って、言葉を被せる。
「見る限りだと背中に何発か入った。元から衰弱している体に実弾だ。恐らくは何処かでくたばるだろう。だから後日またこの時間に脱獄者の情報を集めて生死を把握しよう。もし生きていれば……その時に反逆者を捕まえれば良い」
「そう……だな。いまはそうするしかない」
「確かに、アレなら何処かで死んでそうだ」
「しかしカタコンベに詳しい反逆者だった」
「……」
カタコンベに関してはスクワッド結成後にスクワッドのリーダーである私にも操作する権限を貰い、それであらかじめ撹乱しながら簡単に外へ逃げ込めるルートを作ってある。ヒヨリはそれを覚えてくれていた。だから正規のアリウス兵を撒いてヒヨリは逃げることができた。
「撤収だ」
「ああ、見つかる前に戻ろう」
「バカなやつだ、ただ虚しいだけなのに…」
そして追跡チームと解散。
私は………ヒヨリを明日のために逃した。
それから家に戻ると二人はいた。
「ヒヨリは?」
「……外に逃げた」
「そう…」
「ヒヨリは明日を見れるかしら?」
「わからないな。だが…」
もし、この世界に救い主がいるなら。
ヒヨリのために___希望を。
『そんな理想は無いと教えたはずですよ』
「______」
子供が大人に怒られる時、どんな気持ちか。
いま、まさに絶望を感じるに容易い事か。
私はその声に全身の体が凍りつくようだ。
子供の私は大人に隠しことができない。
だから、私はヒヨリの代わりに。
明日を待つことは許されないらしい。
…
…
…
撃ち抜かれて。
気絶して。
叩き起こされて。
撃ち抜かれて。
気絶して。
叩き起こされて。
泥水に顔を押し付けられて。
髪を乱雑に持ち上げやられて。
ゼロ距離で顎下を撃ち抜かれて。
気絶して。
叩き起こされて。
繰り返して。
そして、投げ入れられた。
衣類どころか、下着すらも、取られ。
冷たい岩床に、光一つ刺さない部屋。
虚しさが全てを埋め尽くす。
与えられる食事も乾いたパンを一つ。
壁から零れ落ちる泥水だけで喉を潤す。
枯れ果てた、喉と髪。
爛れ切った、肌と爪。
そして眠りそうになれば、撃たれる。
叩き起こされてしまう。
気絶しても、脊髄を狙って叩き起こす。
脳が警告する。
これ以上は危険だと。
耳鳴りが長く続く。
何もかもが遠くに感じる。
そうやって、どれだけ、経過した?
一日?それとも2日?
もしくはまだ数時間?
パンを食べた記憶はあるか?
もしや何かを口に入れたのは幻覚か?
ならば私は今どうなっている?
光のない世界で私は何を求める?
明日すら与えられない日に何を得る?
ああ__虚しい、んだ。
虚しいだけなんだ。
この場所も。
私の命運も。
ただ虚しいだけなんだ。
___ヒヨリ。
お前は明日を見ているか?
明日を見て、いられるか?
お前は、生きてくれてるのか?
家族の中にある、たった一つの希望か?
「は、…は、……は、は…」
死ぬ___かも、な。
死んでしまうかも__な。
ヘイローが、もう…
消えそうに…
「お前が死んだら次は残りのスクワッドだ」
「__!!!????」
アリウス兵から無慈悲を告げられる。
だめ、だ。
それだけは、ダメだ。
やめてくれ、やめろ。
たのむから、たのむ。
それは、それだけは。
それ、だけは…
やめて…
「んぁ?」
やめてく、ください。
「ああ?なんだって?」
おねがい、します。
「……」
かぞくだけは、おねがいです。
「はんっ、その逃げた家族の背中を撃ったのに、それで残った家族を助けたいだぁ?」
どうか、おねがいします。
おねがい、しますから。
かぞくは、たすけて、ください。
わたしは、いいので。
おねがい、です。
もう、もとめません。
はんこうも、しません。
いのりも、しません。
きぼうも、あすも、ひかり、も。
いだかないように、つとめます。
だから、どうか…
どうか…っ……
「断る」
「____」
「お前は直に死ぬ。そしたら次は一人選んでその分を背負う。虚しさの中で朽ち果てることをマダムはお望みだ」
「ぁ、ぁぁ、ぁぁぁ…」
「そして今ごろ脱獄者はアリウス兵に捕まっているだろう。もう5日が経過した。存命か、もしくは死体かは知らないが、ともかくあの傷で生きていける確率なんて高が知れている。だってさぁ…?」
「ぅ、ぁっ、ぁぁ、ぁぁぁっ、ぁぁあ!!」
「なぜなら____」
お前が
___この 人殺し が。
「__________ぅ、ァ…」
何も得れず。
何も祈れず。
何も獲れない。
何も叶えれず。
ひたすらに虚しさだけが蝕む。
ここは希望を抱えれない。
そういう場所なんだ。
ああ____そっ、か。
そうだ__よな。
ただ___ただ。
それはもう___ひたすらに。
明日も___虚しいだけなんだ。
えへへ、わかりますよ。
苦しいですよねぇ。
悲しいですよねぇ。
寂しいですよねぇ。
虚しいですよねぇ。
でも人生なんてそんなものですから。
そんなものでたくさんありますから。
ですが____だからこそ。
「んぁ?」
「明日を子供が待つんだよ…!!」
「っ、なんだ!?お前ら__」
「螺旋丸ッッ!!!」
「なにっ!?ぎぃぁぁぁあ!!!!」
っ!!??
ドゴーーン!!!__と、響く音。
心の糸が千切れる間近で繋ぎ止められる。
しかしそれ以上に、私は虚に疑う。
何故なら__
明日を知る、そんな彼女の声が。
「サオリ姉さん!」
「ぇ、ぁ…ぇ?」
「サオリ姉さん!サオリ姉さん!」
「ぁ、ぁ?…ぅ…ぇ?」
「私です!私ですよぉ!わかりますか!」
「ぁ、ぁ……な、んで…?」
「助けに来ました!わたしが家族を助けに来ました!助けに戻ってきたんです!」
「ヒ、ヨリ…?」
懐中電灯を眩く光らせているせいで、声の主が少しだけわかりづらい。
けれど、その声と、その髪色と、明日のために希望を夢見る青藍色の目に、わたしが見間違えるとは思えない。
なら、そこにいるのは__
「ヒヨリ、下がれ」
「!」
そして、ヒヨリと共にこの場まで来た一人の者が声をかけて前に出る。
すると鎖に錘が付いたような武器を取り出して振り回すと遠心力で南京錠を叩き壊した。
「百鬼夜行で習得した万力鎖がこんなところで役立つとはな。まあ神秘との相性が良すぎで人を壊しかねないから、使えるのもこんな時くらいだろうな」
「あわわっ、これ、実はめちゃくちゃ硬い南京錠ですよ?」
「遠心力は重戦車を破壊するよ。それより彼女がサオリか?___ヒヨリ」
「はいっ!」
ヒヨリ__
ヒヨリ____
ヒヨリ________
いま、そう言った、のか?
脳が都合の良い幻聴を拾ったのでは?
わたしは__
「っ!サオリ姉さぁん___!!」
「ぁ」
柔らかに、抱きしめられる。
爛れ切った肌でも、それは分かる。
特徴として少し体温が高い彼女の温もり。
昔は冬の時に一緒の布団で眠っていたから。
それと、ほんの僅かに香るメントール。
これも本物だ。
ボディーシートを好んで使う彼女だから。
だから___彼女はヒヨリだ。
「助けに来ました、サオリ姉さん」
「……………ぅぅぅ……」
膝をつき、力なく倒れる私。
しかし今はヒヨリが支える。
いつもは支えているはずの私なのに。
「あのですね。サオリお姉さん。ありがとうございます。わたしはですね。私はサオリ姉さんのお陰で…」
___
虚しいだけの世界に差し込む__光。
そして、頬を伝う。
私は、零れ落ちる涙を理解した。
あ。
ああ。
ああああっ。
「うあああああああああんっっ!!」
「っ…姉さんっ」
「うあああぁぁぁあん!!ヒヨリぃ!ヒヨリぃ!ごめんね!ごめんね!わたしはぁ!ヒヨリの背中を撃って!!わたしは!!ヒヨリの明日を奪いそうになって!!わたしはぁぁあ!!」
「はいっ、はいっ…!知っています…知っていますよ…!分かってますよ…えへへ!サオリ姉さんは残った家族を守るためにそうしなければならないことをわたしは知ってます。だから虚しくなんて無かったんですよ。わたしはサオリ姉さんに明日を貰えて良かったと、いま沢山言えるんですよ…えへへ」
「生きていてよかったっ!!本当に生きていてよかったぁっ!明日を迎えたヒヨリが無事で良かったっ!!うあああっ!!ぅぅう!!わたしの家族はっ!!スクワッドの家族はっ!!ただ虚しいだけに終わらないんだってっ!!」
「はい、終わりませんでした…槌永ヒヨリは何も終わってないんですねぇ…えへへ…だからココまで…サオリ姉さんの元まで戻って来れたんですね…ぅえ、へへ…ぐすっ…」
ああ、希望はアリウスにもあったんだ。
彼女が、私達家族の明日なんだ。
だからアリウスにもお日様が巡ってくる。
それは錯覚なんかじゃない。
「ヒヨリ、騒ぎを聞きつけて増援が来る。流石にココで立てこもりはキツいから早めに開けた場所に向かうぞ。サオリは抱えれるな?」
「っ、はいっ!わたし、いけます…!」
「よし、なら先ほどまで偵察していたポイントまで俺が突破する。ヒヨリは五歩分を距離にして後ろを追いついてこい。それと絶対に足を止めるなよ?」
「大丈夫です。お兄さん信じてます」
「そうか。なら責任を果たす甲斐があるよ」
ヒヨリの協力者。
この人は私を助けるために…
「サオリ姉さん。この布を纏ってください。わたしが運びますから」
「だ、大丈夫…た、立てる…うぐっ…」
「あまり無理するな。何日もそこに居たんだ。流石に走るも歩くもできない」
「くっ……ぅぅ、な、さ…けない…な…」
「ヒヨリ、俺のヘイローを渡しておく。それをサオリに握らせろ。握力が怪しいならテーピングで固定しても良い。効力は変わらん。とりあえず浮いて軽くなれば運びやすいはずだ」
「はいっ、わかりました」
彼はヘイローを掴み取るとヒヨリに渡し、そしてわたしの手に握らせる。握力はまだなんとかある。落とす心配もない__待て。
私は今、この人を『彼』と言ったのか?
男性なのにヘイローを持っている?
何者なんだ???
「俺は月雪カナタ。今はそれで良い」
「!」
「お兄さん!準備できました!」
「よしっ……ならっ!」
アサルトライフルを構えた彼は__
月雪カナタは牢獄の出口に駆け出し…
「今、この責任を果たすときっ!」
その背中を目で追う。
ああ、なるほど。
これが、そうなんだ。
あれが本当の___大人なのかもしれない。
つづく
ベアトリーチェ「洗脳と軍拡と統治が完了する前に乗り込んで来るとか私のシマではノーカンなんですけど?」
月雪カナタ「うるさいはよ氏ね」
原作開始前が4年前(まだ中等部)なのでまだそれほど虚しさに溺れてないスクワッドメンバー。そのためサオリは家族のために幾らでも身を削るし、ヒヨリも自分の明日を願えれる、まだ強かな頃の自己解釈。そこに月雪カナタとかいう燃料を投下したらどうなるか?言わずもがなこうなるんやろうな。つまり勝ち確。これには忘れられた神々のためのキリエもニッコリ。
じゃあな!
また明日な!