なんか俺のヘイロー砕けてね?   作:つヴぁるnet

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あ、今日はちょいと短めになるぞ。
錠前サオリだ、よろしく頼む。


第29話

 

 

 

朝起きれば陽の光を浴び、昼を吸えば満たしを知りに、夜になれば安眠が約束される、そんな表世界に慣れて、数か月が経過した。

 

 

私は…

 

いや、()()家族は現在、トリニティ自治区にあるやや大きめの家、3LDKと言った贅沢な家に住んでいる。四六時中警戒する必要のない生活が出来るなど過去思わなかっただろう。

 

 

それも、そうだ。

 

あの世界が全てと思い込まされ、虚しさのみこの魂に救いがある信じ、そう錯覚しなければ生きていけない。だから何かを与えられることなど稀であると理解した上で私は家族を守らなければならない。地獄のよう箱庭である。

 

 

 

だが、それはある日__

 

唐突に終わりを告げた。

 

 

 

ヒヨリが連れてきた一人の青年。

 

名は___月雪カナタ。

 

 

彼はSRTと呼ばれる組織の兵士であり、アリウスを脱したヒヨリの助けを聞き受けると単独でアリウス自治区の統治者であるベアトリーチェを屠殺し、後に駆けつけた連邦生徒会やトリニティと共にアリウス自治区を制圧し、全てに終止符を打ったキヴォトスの人間。

 

 

その成果は語るに規格外そのものだ。

 

 

しかし私達アリウス生徒からすれば月雪カナタという人間は救世主そのもの。

 

 

私達は地獄のような日々から逃れたいと願っていた。

 

口にも言葉にも出せない日々だったけど、誰もが解放されたい思いのまま、果てしない虚しさと付き合い、見えもしない微かな光を求め続けていた。無論、それは私も同じ。

 

 

だから全てを終わらせた月雪カナタは救い主だと思っている。

 

この小さな手のひらで救えなかった私の家族を彼が救ってくれた。

 

そして表世界に生きる権利と居場所と願える明日を与えてくれた。

 

 

 

まだ、これが夢ではないかと、たまに思ってしまう。

 

目が覚めて起きたら、冷たいコンクリートの上なのではと、怯える。

 

しかし半年経過した今、夢でもなんでもない現実として私達に明日を与え続けた。

 

だからコレは本物。

 

キヴォトスに生きる自由な生徒としての権利が与えられて私たちは呼吸している。

 

 

 

「……水が、美味しい…」

 

 

 

蛇口を撚れば綺麗な水が出る。

 

それを更に濾過して、飲める水になる。

 

アリウスでは絶対有り得ない飲み水。

 

飢えを凌ぐために表世界から流れ落ちる雨水を飲んで胃袋を誤魔化すことはあったが、濾過なんて贅沢は存在しない。

 

でもココにはある。

 

どこよりも安全な家の中に、ある。

 

 

家__か。

 

 

本来なら私達はこのような家に構えず、トリニティ自治区の一角に隔離された収容施設に元アリウス生徒達と収容される筈だった。

 

しかし月雪カナタはトリニティ自治区の統括者であるティーパーティとやらにアリウススクワッドだった私達にいち早く外を歩き回れるように市民権を与えろと、ヒヨリの功績を交渉材料に迫った。

 

その結果として私達はトリニティ自治区の端側に構えた家を貰い、そこで生活している。

 

私としては、家族が離ればなれにならなければトリニティが管理する収容施設に隔離されても問題なかったが、しかし誰よりも外を願っていたヒヨリのために月雪カナタが気を利かせ、一日でも早く表世界を歩き回れるように連邦生徒会やティーパーティに交渉してくれた。

 

お陰で私達も既にトリニティ自治区の居住権利も得て、生徒手帳も貰っており、外で不自由しない状態にある。

 

 

何もかも、月雪カナタが用意してくれた。

 

正直、頭が上がらない限りだ。

 

 

 

そしてそれを直接、伝えたことがある。

 

しかし彼は…

 

 

 

 

__そう思うならサオリが出来なかった明日を存分にやってくれ。そしたら俺に対して上がらない頭とかそんなのは気にしなくて良い。もうお前達は自由意志が許されるキヴォトスの生徒なんだから。自分のために尽くして欲しい。俺はひとりそれを願う。

 

 

 

 

出来なかった明日を、存分にやる。

 

 

それが彼に対する報いとなる。

 

 

ならばその気持ちを裏切れない。

 

 

 

 

と、言っても、だ。

 

戦いばかり学んでいた私は何をするべきか困惑している。

 

今の私は何がしたかっただろうか?

表世界で何を得たかったか?

 

正直、すぐには思い浮かばない。

 

このような日常が与えられるなど考えもしなかったから。

 

 

 

「えへへ、この雑誌は分厚くて良いですね。読み応えがありますねぇ。あ、でもこの雑誌少しだけトマトの香りがしますねぇ。えへへ、トマトと言えば一緒に参加したお祭りちゃんは元気でしょうか」

 

 

テーブルに広げた雑誌の数々に、少しだけだらしない顔をしているのは槌永ヒヨリ。

 

この中で誰よりも明日を求めた子供。

 

そのため彼女は衰弱していた体を完治させるとここにいる誰よりも早く、表世界を謳歌しようと外に飛び出した。

 

そして前から好きだった雑誌集めをしながら駅弁巡りもするようになっていた。

 

いつぞやのカナタと出会った遠征以来、駅弁に味をしめたらしい。

 

あとトマトに関してはとある旅先で奇妙なお祭りを嗅ぎつけ、そして参加費無料かつその時の空腹を理由に参加すると百鬼夜行からやって来たお祭り娘とやらに出会い、街中でトマトにかぶりつきながら投げ合ったと楽しそうに話してくれた。あと着替えは犬耳のお祭り娘が予備を持ってたのでそれを貰ったとか。背中に大きく『祭』と書いてある。

 

しかし、なんというか…

 

ヒヨリの図太さというか、強かさと言うか、強請り癖があるのは如何なものと思うが、だがそれがコミニュケーション能力の高さに直結している部分もあるから、いろいろと恵まれている。

 

だからある意味、頼もしい。

 

 

ああ、そうだな…

 

大人に怯え続けていた私なんかよりも彼女は強い子供なんだろう。

 

 

 

「ふむ、やはりこのモモフレンズもなかなかに捨てがたいな、今度また聞いてみるか…」

 

 

もう一人、白洲アズサもヒヨリと同じように表世界を謳歌している。

 

ここの誰よりも学習意欲が高い彼女は普段勉強ばかり励んでいる身であるが、ある日息抜きに外出するとモモフレンズとやらに興味を惹かれたらしく、またそこで同じモモフレンズ好きの生徒と出会った。

 

それからその生徒と友達になり、モモフレンズ巡りという目的を見つけたアズサもヒヨリと同じように外に出る頻度は多くなっていた。

 

特に夏場は外出する頻度も多く、その時に月雪カナタから昼ご飯を奢ってもらい、モモフレンズを題材とした映画を視聴し、またパスタリーグという異名を持った生徒と友人になったりと非常に充実した夏場を過ごしてきたようだ。

 

今の私にとって、アズサは眩しすぎるな。

 

 

 

「うん、なるほどね…こうして、葉を切ったら良いみたいだね…」

 

 

庭用のサンダルを履き、携帯を片手に参考動画を眺めながら花壇に向かい会うのはアリウスの姫こと、秤アツコ。

 

アツコは先ほどの二人と比べて外出する機会はそう多く無いが、誰よりも早めに覚えたネットショッピングを利用し、花屋さんからいくつか花を取り寄せると庭の花壇に植えたりして、適度に日差しを浴びる生活をしている。

 

ただ悪環境なアリウスの生活が長すぎた弊害故に喉の器官が弱くなり、あまり外に居られない。なので外出しても庭に出る程度か、その近辺を散歩する程度に収まっているのだが、それでもアツコからしたら充分な自由だと今の生活をとても気に入っていた。

 

アツコにはそのまま健やかにいて欲しい限りだ。

 

 

 

 

「このアドレス?まぁ一応は聞いてみるけど…」

 

 

そして、もう一人。

 

メールを確認しているのは戒野ミサキ。

 

他3人と比べて外とはほぼ無縁だ。

 

何にも興味を持たず、何にも感性を抱かない。

 

ただ、ずっと家の中でジッとしている。

 

それでも自傷癖はアリウスの頃に比べて減り、ボーっと外の世界を眺めては携帯のラジオを適当に流してひたすら耳を傾けるだけ。

 

でもそうなっているのは私と同じで、自由と権利を得た表世界で自分は何を得るべきかを迷っているだけだ。

 

ヒヨリやアズサ、アツコのように自分はこれがやりたいという目的も意欲も見つからない。

 

だからミサキも何もなくこのまま……

 

 

 

と、思っていた。

 

 

 

ミサキはある日、雨の中を外出した。

 

適当なビニール傘を刺して目的もなく歩き、気づいた時にはとあるアウトレットモールとやらに足を運んでいた。

 

そしてこれも何かの運命なのか外出中のカナタと行先で出会い、そこで何か一つ趣味を見つけては持って帰って来たらしい。

 

ただその趣味を発掘させたのはカナタではなく月雪カナタを盗聴してストーカーしていたとある一人の生徒からだった。

 

 

 

__キャッチ、拾うことすら稀な神秘から音を聴取。このノイズひとつない呼応は透明感に優れていると分析します。なので是非オンリーワンな貴方から特別な環境音を貰い受けたいとします。てかよこしやがれください。

 

 

__ふぁ!なんだこの不思議ちゃん属性は!?

 

 

 

盗聴を趣味とすることはあまり褒められたものではないが、しかし何かに耳を澄ませ、音に傾けることも娯楽の一つとして、その生徒は環境音(ASMR)をミサキに紹介した。

 

あと「家でやることが決まらないなら適当に積読でもしておけ」とカナタに幾つか教本や図書など雑に手土産として渡された。

 

それからのミサキは無料のサイトから環境音をダウンロードしてはヘッドホンを身に着け、家という動く必要のないスペースだからこそ出来る過ごし方をカナタと盗聴癖のある生徒からアドバイスをもらい、いまはその通りに積読しながらヘッドホンを頭に被っては静かに家の中で過ごしている。

 

お陰で自傷癖はほぼ無くなった。

 

無気力ながらも何かできる。

 

コレを機に少しずつ何かに興味を持ってくれたらと思う。

 

 

 

 

そして…

 

 

 

「私…だけだな」

 

 

 

何もない。

 

アリウスから救い出されたとはいえ、あの頃の日々が染みついてしまったのか今も鍛錬を怠ることもなく、たまに日雇いのアルバイトを試したりする程度で、実のところ誰よりも惰性に生きている。

 

リーダーとして手本にならないな。

 

 

実の私ってのはこんなにも…弱々しいのか。

 

 

家族を守らなければならない言う使命感と脅迫概念が無くなれば錠前サオリに残された意味とはなんだ?

 

 

幼少期の私は何をしたかった?

 

私は何をしてたかった??

 

 

わからない…

 

わからないよ…

 

 

 

これでは、ただ虚しい__

 

 

 

「っ!!ち、違うっ!!」

 

 

 

その言葉を振り払うように吐き出したことで近くにいた通行人が驚くが、しかしまた足を進めることで社会の歯車は私を次々と横切る。

 

 

私はこの街中で何をやっているんだ。

 

自分探しのために少し家を出たのに。

 

 

なのにやりたいこと、願っていることを、明日を覚えてない。

 

私は…

 

 

 

 

ねぇねぇ?どうしたのかな?

 

 

 

「え?あ、いや…」

 

 

 

天使の羽だ。

 

アズサのような真っ白な羽。

 

だがそれよりも驚いたのはヘイロー。

 

一眼見てわかる。

 

この神秘はとてつもなく、強固で、強い。

 

 

 

「す、すまない。気にしないでくれ…」

 

「そうなの?化粧品売り場の近くで悩ましい顔をしていたから何かお探し物かなって思っちゃったよ」

 

 

 

化粧品?

 

私は横を見る。

 

そこには__女性らしさを引き立てるアイテムが多く並んでいた。

 

 

 

 

「化粧品…」

 

「もしかして興味があったりするのかな?」

 

「っ!い、いや、別に、私は……」

 

「そう?なんだかお目目がすごくキラキラしてたみたいだけど?」

 

「!!……そう、見え…たのか?」

 

「うん。すっごくね。うんうん!やはり女の子は綺麗に着飾らないとね!ほら、こういうのとか良いと思わない?私、今日新しいモノを買いに来たんだよ。あ、どうせなら一緒にどう?」

 

「え、と、わ、私はあまり、こういうのは…」

 

「そうなの?じゃあ色々教えてあげる!お化粧に関してはナギちゃんよりも詳しいんだから!」

 

 

 

その手を強く引かれ、または着飾れることを知っているそんな彼女に惹かれ、灰色のみ満たされていた筈の私の周りには色取り取りな化粧品が視界に入り、それに眩暈すら覚える。

 

 

 

「はい、コレなんかどうかな?」

 

「これは…」

 

「リップスティックだよ。あまり大人すぎるのはミステイクだから少し控えめなヤツ。あー、でもサオリちゃんは身長もあるし、あと鍛えられてるのかな?モデル体型に見るから少し大人っぽいのが似合うかもね」

 

「モデル体型?」

 

「綺麗な体ってことだよ」

 

「そ、そうか……あまり、そう言う事を考えることのない…世界で生きてたから…」

 

「あっ…そうなんだね。じゃあさ!いまから色々と知って行こうよ!私が手伝うから!」

 

「!」

 

「手始めに化粧品!次にアクセサリー!あと可愛い小道具も良いじゃんね!」

 

 

自分のことのように喜び表す彼女はとてもじゃないが、気難しいことなどに無縁な感じがしていて、でもだからこそ偽りのない姿に私は憧れすら感じている。

 

 

こう、なれる。

 

こう、なれるなら。

 

 

 

「沢山お店回ったね!」

 

「…そうだな」

 

「……楽しかった?」

 

「え?」

 

「私は楽しかったよ。こうしてお友達を沢山作りながらね、互いに知っていくの。ゲヘナとかの生徒は文字通り話にならないから基本的に無理だけど、でも同じトリニティの生徒ならいくらでも仲良くなれるって思うからね!」

 

「友達…?仲良く…?」

 

「え?あ……もしかして、嫌だった?」

 

「あ、あ、えと、そうじゃなくて…わ、私は…そのっ…と、友達とか、あまり、わからなくて…」

 

「そうなんだ。じゃあ私がサオリちゃんの初めての友達だね?ふふっ!光栄ってやつかなー?」

 

「!」

 

 

 

あっけらかんと、もしくは飄々と、裏表のない表情で、そして純粋さのまま宣言する。

 

この私を【友】であると___紡ぐ。

 

 

 

「ねぇ、サオリちゃん。また私と一緒にお出かけしない?次はスイーツ巡りとかしたいな」

 

「また、一緒に?」

 

「うん。友達なんだから、ね?」

 

「っ!!!……良いのか?…本当に?」

 

「良いも悪いもないよ?だって友達ってのはそうであるべきでしょ?もし知らないならもっと私が教えてあげるじゃんね!」

 

「……感謝、する」

 

「もー、違うよ。そう言う時はね__」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「む、サオリ、なんだか良い香りがするな」

 

「そうか?……もしや香水の付けすぎか…」

 

「付けすぎかわからないが、隠密行動には向かなそうだ」

 

「それ言ったら、ペロロ…?のリュックサックもあまり武器が入らなそうだ。戦闘時に武器不足に困るかもしれんな」

 

「かもな。だが…」

 

「?」

 

「私達はそうなることもできる。これはある意味重要なんだと知った」

 

「……ああ。かもな」

 

「今日は出掛けるのか?」

 

「ああ。夕方には戻る」

 

「一人でか?」

 

「いや…一人じゃない」

 

 

 

 

 

____ 友達と出掛けてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サオリー!

わたしはこっちだーよ!

 

 

 

す、すまない。

待たせたか?

 

 

 

ううん!私も今来たよ!

じゃあ…スイーツ巡りしよっか!

 

 

 

ああ、わかった。

その…今日はよろしく頼む。

 

 

 

うん!まっかせてー!

沢山楽しもうね!サオリ!

 

 

 

そうだな…

そうしたいな。

 

___ありがとう、ミカ。

 

 

 

 

 

 

 

 

捻れることなく。

 

砕け散ることなく。

 

 

 

 

憎悪に苦しむこともなく。

 

魔女に染まり切ることもなく。

 

 

 

 

すれ違うことなく出会えたとしたら。

 

こうなるかもしれない一つの始発点。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お待たせしました___カナタ

 

待ってたぞ____白鳥

 

 

 

 

 

それは『解』があってこそ生まれた。

 

箱舟に生きる生徒達の___青春物語(ブルーアーカイブ)

 

 

 

 

 

 

つづく






巡行ミサイルとか、アリウスの憎悪とか、ベアトリーチェとか、そんなのがなかったら聖園ミカって絶対に頼もしい隣人になるし、サオリとも友達になるって作者の中ではそれ良く言われてるから。やさしいせかい。やさいせいかつ。


そして次回から高等部2年に突入!!
超人こと白鳥も連邦生徒会に参戦!!
もう敵は無しだからあとは余裕や!!
勝ったなガハハ!!!


またの更新でな!
じゃあな!
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