なんか俺のヘイロー砕けてね?   作:つヴぁるnet

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日刊ランキング載ってて草

ええのですか!?
こんな見切り発車な作品が載ってて!?

ええよ。
うんありがとう。



第3話

 

二次小説によくある『憑依』ってジャンルはご存知だろうか。これは転生ではない。

 

 

__憑依。

 

または『成り変わり』である。

 

 

しかしまさか、こんな虐められっ子の代わりになるとは俺も思わなかった。唐突すぎる。

 

 

 

__虐められっ子。

 

これに何が起きていたのか?

 

まず前任者は、キヴォトスで男性として生まれたが、女性のみが持つはずのヘイローを持った生まれてしまったイレギュラーである。コレだけなら「珍しい」の一言に尽きるが、しかし、そのヘイローは普通じゃなかった。

 

 

まず前任者のヘイローはまともじゃなかった。

 

ヘイローは言い換えれば『光輪』であり、とても綺麗な輝きを持つ。中にはおどろおどろしいヘイローもあるが、むしろその不気味さすら神秘的である。天使の輪っかだ。綺麗である。

 

 

だがしかし、この前任者。

 

彼のヘイローはボロボロになったフラフープのような形をしており、しかも側面にはネズミに齧られたような穴が幾つも空いていた。ドブ川から拾い上げたフラフープと指差されても否定できないほどにみすぼらしく濁っており、光輪(ヘイロー)と言うには全く光らない。そりゃもうオンボロの名に相応しい。天使の輪として褒めるところがないのだ。

 

 

まぁだから。

 

 

 

 

___ガラクタが頭の上に浮いている。

 

 

 

そう言われたらその通りだ。

 

劣化の極み。ヘイローの名汚しである。

 

実際に汚れてたようなものだが。

 

そして、そんなヘイロー持ちだからこそ子供の虐めの対象としてなり得るに充分だった。

 

 

 

前任者は幼い頃から虐めを受けていた。

 

男の癖に光輪を持つ。

 

なのにボロボロで汚らしい。

 

しかも周りの純粋なヘイロー持ちと違って身体能力に差があり、自身のヘイローの弱さも関係して耐久面に難があったりと、男の癖して軟弱者だと嘲笑われる。それが虐めの対象として加速することになってしまうが、更に最悪なことに、戦力や武力で優劣を決めようとするキヴォトスの倫理観が終わってるのか前任者は弱者として標的にされていた。誤って弾を受ける度に怪我を負い、血を流す時もある。そのため世間に恐怖してしまい、最終的には不登校にもなったりと初等部の頃から散々である。

 

コレが前任者の記録だ。

 

 

 

しかしある日、希望を見出した。

 

 

 

 

__ココなら受け入れられるはず!

 

 

 

彼は『トリニティ系統』の総合学園に目を受けて再起を試みようとした。

 

 

__ココなら大丈夫だ。

__神聖な学びの場所だから。

__ミッション系の高貴な集いどころ。

__だから自分にも救いがあるはず!

 

 

 

 

そう願い。

 

そう思い。

 

そう縋り。

 

 

 

そして…

 

 

 

 

 

 

 

それは、あまりにも間違いだった。

 

 

 

結果、彼は___深い傷を負った。

 

心にも、体にも、魂にも。

 

あらゆるものを否定された。

 

 

 

 

……いや、もっと良い中学校無かったのか?

 

この世界で過ごした事で得た回答。

 

 

そりゃトリニティは外面だけみたら神聖に包まれた立派なマンモス校だ。また校舎は宮殿のような佇まいであり、実際にも信仰に厚い場所だから弱き物にも救いある場所だと声が届く。だから内側の事情を知らない者からしたらトリニティー総合学園は誠実な学びの場所だろうと印象与えてしまう。

 

まぁだからかな……

 

お嬢様学校故にプライドの高さから始まる陰湿な虐めが蔓延るような学園とは思わず、そこに何も知らない前任者が希望抱いて学園生活を始めてしまう。しかし中等部の段階で既に優劣やら序列やらに厳しさを持ち込む学園の内情、過去に虐めの対象として扱われるに充分なヘイローを持ち込んだらどうなるか。

 

そこにキヴォトスの倫理観をひとつまみすりゃあとはご存知の通りだ。

 

トリニティ系統の学園にそぐわないみすぼらしい見た目と言うことで前任者は人格やら共々非難されてしまった。

 

再起と救いを求めていた前任者はトリニティの環境に絶望してしまい、また虐めの歯止めを知らない子供達の純粋なヘイロー持ちに敵う訳もない。仕舞いにはヘイロー持ちの耐久テストとばかりに前任者は抵抗虚しく弾丸を浴びて重症を負ってしまい、それが傷となって前任者は心を病ませて完全に引きこもった。

 

 

……トリニティまじでトリニティだな。

 

 

もちろん学園には前任者を庇ってくれる優しい学生もいたが、しかし中等部にもなれば子供達の意識が高くなるのか派閥やら党派やら組織力に意味を持たせるようになり、集団攻撃また恐喝も覚えるようになるトリニティでそんなことすれば庇った者も学園で孤立してしまう。優しさにも現実には勝てない。

 

そしたら前任者は日記帳な『ごめんなさいごめんなさい痛いですごめんなさいごめんなさい許してくださいごめんなさいごめんなさいごめんなさい欠陥品でごめんなさいごめんなさい苦しませないで助けて』の長文はまるで贖罪を求めるようであまりにも痛々しかった。

 

 

コレを見て俺は一度吐いている。

記憶からも悲痛が訴えかけるから。

 

 

一応、その日記帳は読破した。

理解はしておきたかったから。

 

そんで読み慣れてくると次に怒りが湧き上がったし、この体に鉛玉ぶち込んだ奴捕まえて半殺しにしてやろうかとも考えた。キヴォトスなら合法的に引き金に指をかけて正当化できる。憎悪に身を任せたくもなった。

 

 

まあやらなかったけど。

 

仕返したところで意味がないのもそうだが、あんなマンモス高で鉛玉をぶち込んだ犯人を探すのも無理だ。あと報復されたらそれこそ面倒だから膨れ上がる憎悪は耐えることにした。腹立たしい限りだったが。

 

ともかく、前任者にとってはトリニティは環境共々含めてあまりにも相性が悪かった。

 

選択ミスだ。

元に戻れない程の傷を負った。

 

 

……いや、マジで学校間違えてんだろ。

ミレニアム行け、ミレニアムに!

あそこなら前任者の誠実さは学園に買われただろうに。ああ、もう……くそっ。

 

 

本当に厄介だな、トリニティ。

外側は綺麗だから「ココなら大丈夫な筈っ!」と願ってしまうことに無理はない。

 

また信仰に厚い団体だから「弱き者にも救いを!」と縋りたくもなる。

 

だから追い込まれていた前任者を責めることは俺なんかにできない。

 

ああでも!何度も考える!

 

行先で正しい選択をしてくれたら前任者は救われた未来はあったのでは!?

 

……その想像は幾度なくあった。

もう取り戻せない時間だが、悔やまれる。

 

 

 

ちなみに日記帳はすぐに捨てた。成り代わった後とはいえ兄である俺こと『カナタ』を心配した妹の『ミヤコ』が定期的に様子を見にきては、それで家の掃除したりしてくれたりと、世話を焼くようになったから。

 

その時に日記帳なんか見つかったら絶対良くないことになりそうだから燃やして灰にして捨てた。前任者の痛みは俺だけが背負う。そう決めた。

 

 

 

ちなみに妹だけこの事情を知って親は全く知らない。それは何故か?

 

 

コレがまた頭悩ませる話。

 

前任者は家族に虐めを隠していたから。

 

 

全く、良くないことを。

子供が一人抱えるなんて最悪なパターンだ。

 

 

しかし致し方ない理由がある。

 

まずキヴォトスでは中学生の段階で既に一人暮らしするくらいには自立心が高く、早めに独り立ちする。それはヘイロー持ちとして自衛能力が高いからこそ出来る話だから。そのため前任者はトリニティ入校と共に一人暮らしを開始。

 

しかし進学した中等部は初等部の頃よりも虐めのレベルが上がり、そこにキヴォトス特有の倫理観やら価値観が『自己責任』と言う形で半強制させる。武器を持てるのだから武器で正当化しろという暗黙の了解またはルール。これがキヴォトスの生き方。

 

そんな前任者は『ヘイロー持ち』としての"枠内"に立っているため、個人の戦闘力も関係して自衛できず、耐え難い環境にいた。

 

そして在学した環境がトリニティとなると親が認知する間も与えない勢いで理不尽が加速するのは確定明らか。もちろん前任者が虐めを隠していたのもあるが、彼の家族が過度な虐めを察する前に前任者はトリニティー入学から数ヶ月目で倫理観の足りない学生から遊びの弾丸を浴びて重症。

 

 

コレが全ての結末である。

 

 

ちなみにこれは後から知ったが、虐めとして弾丸を浴びせた学生達は退学処分を受けていたようだ。今更どうでもいいわ。

 

 

そんな処置を下したところで虐めや環境に耐えれなくなった前任者は己のヘイローを破壊することで自壊を選んだ。

 

命を断とうとした。

 

 

 

 

そして何故か___俺が成り変わった。

 

 

 

 

いや、何故こうなったし?

意味がわからない。

 

 

しかし探る手段もなく原因は不明。

 

そんなわけでこのまま俺は2回目を開始。

 

 

この場合、強くてニューゲーム…

いや、弱くてニューゲームが正しいか?

 

何せ俺の頭にあるヘイローは前任者が壊したせいで粉々に砕け散ってしまっている。

 

もちろん外装はドブ川から拾い上げたようなボロボロのフラフープのまま、ネズミに齧られたように穴も空いている。コレがヘイローかと尋ねられたらヘイローと答えるに厳しい。燃えないゴミが頭の上に浮いてると指差されたら納得するレベルである。ひどいなぁ。

 

 

でもこれはれっきとしたヘイローである。

 

 

まあお陰で身体能力は一般人よりも高め。

腐ってもヘイロー持ちか。

 

でも悲しいかな。

耐久性は純粋なヘイロー持ちの半分以下。

 

弱目の弾丸なら耐えれる。

クッソ痛いけど。

死なないからこその痛みかな。

 

今は工夫してるから昔よりは耐えれるようになったけど、成り代わったばかりの頃はそりゃペラッペラの耐久力。戦闘区域は必死に避けて生きてきたわ。ヘイローも震えてやがるぜ!

 

 

だからそう言った意味で弱くてニューゲームはあながち間違いでは無い。

 

それが俺の人生2回目である。

 

 

 

では、その後の俺はどうしたのか?

また引きこもったのか?

 

それなら楽だろう。

 

外とのアクセスを絶って生きる。

 

それはココでも可能だろう。

 

 

 

けれど、俺はそうしなかった。

 

前任者に……

 

前の『僕』に報いるためである。

 

 

だから俺は『僕』が座り慣れた部屋の隅っこに怯え続けるのではなく、欠陥なヘイロー持ちの人間としてコレと向き合うことにした。

 

 

 

 

 

そりゃもちろん前任者に対しては恨み口の一つは叩きたかった本音はあるよ?

 

何故こんな【ブルーアーカイブ】なんて倫理観が欠落した危険な世界に招いてくれたんだとも思ったりもした。理不尽だ。

 

 

けれど、恨みも、怒りも、飲み込んだ。

俺なら耐えれると思ったから。

 

 

____大人だったから。

 

 

前世は褒められるほどの大人をしてたかはわからないが、でも諦めと、そして切り替えを覚えれるほどには人生を費やしてた筈だから、現状を飲み込めた。まあ前世でもう少し親孝行してればと後悔はしたけれどな。結構さみしい。

 

でもこの状況を、過去に妄想くらいはしたことある展開として前向きに捉えた。そもそも二次小説のあるあるが俺にくるとは思わなんだ。よりによってブルーアーカイブだったが。

 

資本主義のタヌキが相手でも構わないから借金返済(おいでよどうぶつ)の森に転生とかできんか?できんかぁ…

 

 

なら仕方ねぇな。

 

消えゆく前任者と交わした言葉の通りだ。

 

俺は代わって『(おれ)』になり、残された『後悔(ヘイロー)』のためにこの弱くてニューゲームを歩むことにする。そうなった以上はコレをそうする。覚悟は早かった。

 

 

ただそう意気込むも前任者と別れを告げた後もしばらくは次々と流れ込む、痛みやら記憶やらに眩暈や頭痛、ついでに吐き気と痙攣、数日ほど酷かった。しまらねぇ…

 

しかもいつだったか白目剥いて倒れてるところをタイミング悪く妹に見られてしまい、お目目ハイライト無いなったミヤコから「お兄ちゃんの面倒は私が一生見るから安心して」と監禁されそうになったのは記憶に強い。

 

とても良い子だけど、なんか重たい……重たくない?

 

え?__ワタシはうさぎではないので?

 

 

お、お前は一体何を言っているんだ??

絶対っ、碌でも無いナニカだろそれ…

 

こわっ……変なところで強火だな。

 

そんな感じに過保護気味な妹の支えもあってか憑依後の症状自体は3日か4日くらいで収まり心身共に正常を取り戻した。

 

ちなみにミヤコと会話する時はちゃんと前任者の時の口調やら雰囲気やら引っ張り出して接している。そりゃ中身は本当の兄じゃないから会話する時とか罪悪感はあったけど人格の消失と改変を語るのはあまりにも酷だから、俺は心の奥で「どけ!俺はお兄ちゃんだぞ!」と奮起することにした。

 

そのため今は『立ち直った兄が昔とは思えないほどに強くなった』と社会復帰できた兄の姿にミヤコは喜んでくれている。

 

__弱かった自分とお別れをした!(S覚醒)

 

おう、そうだな。

もう二度と環境に出て来るなよガンプラァ!

 

 

しかし俺は軟禁中のガンプラ機体とは違ってキヴォトスの環境に追いつく必要がある。

 

そのため色々と情報を集め、同時にこのヘイローとの付き合い方も考えながら、無法地帯上等な美少女GTAことキヴォトスで生きていくには何を必要とするか?

 

今回の人生は二度目と言うこともあり、知識量は少なくとも強くてニューゲーム。

 

だから道筋を模索し、考え、考えて、悩み、悩まし、頭の中ヘイローを眺める。

 

考えがまとまらない時は膝下で満足そうにする妹の頭を撫で、撫でて、女の子特有の柔らかい髪を堪能。どうやら前任者も妹のことはとても大事にしていたようだ。なら俺も血の繋がる彼女を大事にしよう。

 

しかし撫でる最中、ほんの僅かに物足りなさを感じる。このナデナデの中に何かひとつまみ分の追加要素が欲しい。そう贅沢に思い…

 

 

そして、俺はある日のこと。

 

一つの見落としに気づいてしまった。

 

 

ああ、何故…!

俺は何故コレをいままで放置してたのか…!

 

 

キヴォトスならではの要素。

 

 

創作の世界だからこそ存在する神秘。

 

 

画面越しのみ許された人間の欲求!

 

 

一体それは何なのか?

 

 

だから、ふと、俺はこうつぶやいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

___え、この世界ってケモ耳あんの??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気づいたら『百鬼夜行連合学院』に引っ越してた。

 

 

 

 

バカじゃねぇの??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の兄は普通から、欠けてしまっている。

 

別に心身共におかしいのではない。

 

兄は人格者で優しい人だ。並み以上に頭も良く、運動もできる。そして今よりも泣き虫だった頃の私をよく慰めてくれたり、私が誕生日の時は必ず何かを用意してくれたりと、私にとって立派に兄をしてくれる。そんな兄がカッコよくて私は好き。

 

 

しかしこの世界は優しくなかったのか、常識から外れた生まれ方を強いられてしまい、男性にも関わらずヘイロー持ちとして命を与えた。

 

しかし男性として神秘を受けてしまった結果なのかわからないが、与えられたヘイローはボロボロなフラフープの形をしており、所々ネズミに齧られたような穴も空いていたりと光輪の名にそぐわない形をしていた。

 

ところどころ歪んでいるのも合わせて綺麗な輪と言えない酷い有様を頭に掲げる。

 

そのためかヘイロー持ちの男性という異常性も合わせ、虐めに遭うことも珍しくなかった。

 

 

 

__妹は何の関係ない!手を出すなら僕だけにしてくれ!

 

 

 

兄に対するいじめは、時には妹の私にも届くことがあり、その度に震えてばかりの私を兄は前に立って庇ってくれる。私はうさぎのように弱いから。

 

そして兄の怒りに反映してガタガタと震えるヘイローは怪奇現象のように不気味で、その度にヘイローは濁り、また塗装がどんどん剥がれ落ちるように色も失われてしまう。それはまるでナニカをすり減らしてるように感じられて心配にもなった。

 

しかしその不気味さが兄の異常性を加速させるのか標的として注目を集める。だからいつまでも心が無い苛めっ子達は兄を攻撃した。もちろん兄も黙ってばかりにならず反撃に出て抵抗することもあった。

 

しかし、純粋なヘイロー持ちのスペックには届かない現実、低度な頑丈性故によく怪我をしては問題に発展していた。そんなやり取りを繰り返すごとに段々と目の色が失われていく兄を見るのは、あまりにも痛ましい。

 

いつしか背筋も、視線も、地に落ちるようになり、活力すらも衰えていき、最終的には不登校になった。

 

 

だが、それでも…

 

 

 

__ミヤコ、お兄ちゃんは…大丈夫だよ。

 

 

 

人は大丈夫じゃない時に「大丈夫」と言ってしまうの危ないサイン。

 

そんなこと当時の私は何も知らない。

 

でも私と話す時だけは目の色がほんの僅かながらも灯される。

 

 

 

__お兄ちゃんがミヤコを守るから。

 

 

 

軽い依存症。

 

しかしそう自己暗示に陥なければ壊れてしまうかもしれない弱さ。

 

妹を守ることで自我を保つ。

 

そして長男だから家族を守ろうとする姿勢は色が無くなっても変わらない。

 

それが兄を生かす。

 

私はなすがまま抱きしめられる。兄から抱きしめられるという嬉しさの反面怖さもあった。本当にこれで大丈夫なのかと。

 

しかし四つも年下の私が何でも出来るはずの兄に何かしてあげれることなんて何もない。

 

だからせめて……依存するように(私を守りたくて)抱きしめてくる兄にこの小さな腕で抱きしめ返してあげる。

 

そのくらいが月雪ミヤコの限界。

 

ボロボロなヘイローが更にボロボロになっていく姿に私は見ているだけしかできない。

 

私は子ウサギのように弱いから。

 

 

 

 

何度も思う。

 

 

 

もし兄が男性ではない、女性として生まれていればヘイローは綺麗でまともだったはず。

 

元々何でも出来るくらいに頭の良い兄なら、ミレニアムに入れるくらいのすごい人間になってたはず。

 

しかし。それも全て生まれつき与えられたヘイローが彼を地に堕としてしまう。兄を産んだ親も悔やんでいた。もっと普通ならと。

 

でも愛情だけは絶やさずに注いでたから私も同じように兄に「大丈夫」を注ぎ続けた。

 

 

 

いつか兄が救われますように。

 

兄に優しい場所が与えられるますように。

 

そう願い…

 

 

 

 

__トリニティの入校試験に受かった!ココなら…!ココだったら…!僕は…!

 

 

 

 

ある日、久しぶりに兄の元気な声を聞いた。

 

トリニティ系列の中等学校の合格通知を受けて喜んでいた。やはり頭が良い人だ。そんな兄を見て妹の私は誇らしくなる。

 

そして兄は周りの同世代と同じように独り立ちをして、離れたところで一人暮らしを始める。

 

元気な兄にホッとしたけど、同時にそんな兄がいなくなってしまうことに寂しく思えた。私はまだうさぎだから。まだ寂しがり屋なんだ。

 

私を抱きしめてくれる日が無くなり、ほんの僅かに残念だと思いながらも、目の色を僅かに取り戻した兄の回復に私は喜んで、しかし最後は「寂しい!行かないで!」とわがままに泣きながら見送った。やはり私はうさぎだから。鳴いてしまうんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

___兄が、撃たれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

救いを、行先の可能性を、それらを求めていたトリニティの中等部学校は期待を裏切る。

 

その場所でも兄に対する虐めは絶えず、寧ろ加速していた。

 

何で?何でなの?

 

 

後に知った事だけど、トリニティだからこそそう言ったことは起きてしまうらしい。

 

思った以上に、階級社会が蔓延る世界。

 

 

__党派。

__派閥。

__主教。

__思想。

__正義。

__組織。

 

 

それ故に優劣で物事を取り決める。

 

騙し合いすら上等。時には裏切る。

醜い足の取り合いにも躊躇わない。

 

陰謀策謀が渦巻く__それがトリニティ。

 

弱いと何もできずに廃れていくだけ。

 

 

 

兄はそこにすり潰された。

 

 

 

そして最後は撃ち抜かれて入院。

 

私はそのことを遅れて知った。

 

授業中だろうと駆け出し、兄の元に向かう。

 

しかし兄は病院を抜け出していた。

 

 

どこに…?

どこに…!?

 

 

嫌な予感がした。

 

兄の住まう家に駆け出す。

 

息を切らし、扉に手をかける。

 

鍵が空いている。

中にいるんだ。

 

私は靴とスクールバックを投げ捨て。

 

 

そして…

 

 

 

 

 

 

 

 

__ぁ、え?……だ、れ…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

砕け散ったヘイローが浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん、もう大丈夫なの?」

 

「大丈夫だ。めっちゃ元気になった」

 

「そうです…か」

 

「あ、もしかして鬱陶しかったか?」

 

「っ、ううん!?そんなことないです。お兄ちゃんが落ち着くまで頭を、撫でても良いので……むしろ、もっと撫でても……」

 

「ミヤコは優しいな」

 

「っ〜」

 

「じゃあもうちょっとだけな」

 

 

 

カーテンで締め切られて薄暗かった部屋には外の明かりが差し込み、怪我から復帰した兄の元気と合わせて曇りがなくなる。

 

だがたまに頭を抑えて膝をつく時があり、まだ痛みを抱えている姿を見せる。

 

それでも時間をかけて「『(ぼく)』は負けない」と奮い立たせる。

 

これも……自己暗示だったのかな。

そうやって『自分』を生かす。

 

それが痛ましさにも見えて、私は無力に歪む。

 

 

でも…

 

 

それは今までとナニカが違っている。

 

ナニカ、変わっている。

 

そんな気がして、僅かに恐怖を感じた。

 

 

 

「ミヤコ。お兄ちゃんはトリニティに通うのは辞めるよ。次は銃弾なんかじゃ済まない気がする。もう少し身の丈にあった場所を目指すよ」

 

「学校……通い続けるの?」

 

「……正直、迷った。でも砕けたままではいられない。ヘイローがこうである以上はどうしようも無い。だから…… このままで居られるように頑張ろうと思う」

 

「っ、きけん、だよ?」

 

「知ってる。キヴォトスはそうだから。でも『(ぼく)』は選ぶのを辞めない。トリニティだってその一つ。失敗だったけど。でも僕がそうであり続けるのが嫌だから『(ぼく)』はこのままに収まらない。必ず……今よりも、必ず」

 

 

 

私の頭を撫でる兄の手に力が入る。

そして同時に僅かな違和感を覚える。

 

ナニカ、変わっているような……

そんな気がした。

 

そこにいるのは兄なのに。

 

兄だけど……

なにか、少しだけ……噛み合わないような。

 

 

 

「お兄ちゃんが信じられないか?」

 

「!!ううん!そ、そんなことないよ!」

 

「なら信じて。お兄ちゃんを。君の兄を」

 

「っ、うん、信じて…る!」

 

 

 

ギュッと抱きしめられる。

 

ああ……これは…お兄ちゃんだ。

 

うさぎのような小さな私を膝の上に乗せて、後ろから抱きしめてくれる、暖かくて大好きな家族想いの兄。ここにいるのは月雪ミヤコの兄である月雪カナタだ。だから変わりない。

 

私の『兄』であることに変わりない。

 

それは間違いない。

 

 

 

「ミヤコの髪は柔らかくて綺麗だな」

 

「うん……お兄ちゃん、好きだよね」

 

 

 

撫でてくれる手つきが柔らかくなり、撫でられる頭が気持ちいい。まるで子うさぎになった気分だ。ふわふわとしてくる。お兄ちゃん…

 

 

 

「『(おれ)』は強くなるから……」

 

「!」

 

「このヘイローが砕けようとも『(ぼく)』は終わらない。終わらせやしない。月雪カナタは絶対に…」

 

「お兄ちゃん…」

 

 

 

今までとは違う、力強い声。

 

砕けた先で、変わったナニカ。

 

私はソレがなんなのかわからない。

 

でも…

 

けれど…

 

 

 

後悔と追憶(ブルーアーカイブ)

 

「え?」

 

「濁ったままでも決して、それは『俺』だ」

 

「!」

 

 

 

 

月雪カナタという人間に変わらない。

 

 

 

でも…

 

 

 

 

この日から月雪カナタは変わった____

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『今回も襲撃事件に駆け付け!そして見事に解決されたのはSRT特殊学園所属RABBIT隊の月雪カナタさんです!』

 

『お疲れ様です…って、また報道部はココまで来たのかい?終わったとはいえ戦闘現場だぞ?相変わらず命知らずなやつだ。まあいい。事後処理あるので短めでお願いするぞ?』

 

『は、はい!あの!今回の襲撃事件で__』

 

『ソレに関しては前から動きが見られ__』

 

 

 

 

学校の食堂にあるテレビに映るのは、あの日から有言実行を果たした兄の姿だ。

 

その報道に学校の生徒達が立ち止まって眺めては…

 

 

「す、すごいね!カナタさん!」

「うん!さすがSRTの大黒柱!」

「いやー、ほんとにすごい人だね」

「わぁぁ、素敵ぃぃ…」

「私!サイン貰ったことあるよ!」

「ええ!本当!?見せてよ!」

 

 

 

あの頃とは違う。

 

SRT特殊学園の月雪カナタを見て黄色い声がそこら中に上がる。

 

まるでアイドルを見るように盛り上がり、だけどその活躍は誰もが知る。

 

 

 

「一人だけで構成された部隊って本当?」

「みたいだよ。一応RABBIT隊だってね」

「思ったよりも可愛らしい名前だった!」

「実はBULLETのつもりだったらしいよ」

「弾丸ってこと?え?なんで変わったの?」

「ええー、可愛くて良いじゃん!ウサギ!」

 

 

 

うさぎは寂しいと死んでしまうというのは嘘であり、一匹でも生きていける。寧ろ勇敢に立ち向かえる動物であり、その脚で何処にでも駆け行く。兄からそう教えて貰った。

 

そしてRABBIT隊はたった一人の隊員で構成されて小隊であり、必要とあらば他の部隊と連携して動けるSRT最強の遊撃小隊。それがSRTの月雪カナタ。そして…

 

 

 

「連邦生徒会長のお気に入りだってね!」

「すごいね!私兵の中でも特別だってよ!」

「そういえばSNSでタコパ*1してたよね」

「誕生日祝ってたらしいよ。会長室で」

「え?実は合成写真……え、本アカ!?」

「カナタさんの本アカ。会長もピースしてる」

 

 

現、連邦生徒会長とは何故かSNS越しにも非常に良好な関係にあることが分かる。しかしその仲の良さがあるためか、一般情報どころかSRT特殊学園にすら明かされてない仕事を個人で請け負って解決するなど、根本の方まで手助けしたりと元ある役割のそれ以上を果たしたりもしているらしい。

 

まるで何処ぞのゲームに出てくる『伝説の傭兵』のような人だ。しかしそれを出来るのはそれ相応に実力が無ければ成立しない。それに月雪カナタが選ばれている。

 

 

 

『__と、まあ、それだけ組織が大きくなるとやり出すことも大きくなり……!!?』

 

『え?…きゃ!!なに!?』

 

『爆発…!?屋根の方か!!とりあえずインタビューはココまでだ。君たちはココから一旦離れなさい。わかったな!』

 

『は、はい!』

 

 

 

報道部は退きながらも爆発した方を映す。そこにはロケットランチャーを持った残党が屋根の上で叫んでおり、下面の方ではざわつく。

 

 

「に、兄さん…!」

 

 

いつしか「お兄ちゃん」から「兄さん」呼びに変わってしまった私は画面越しに映る現場が心配でそう言葉をこぼす。学校の食堂も爆発の映像にざわつき、皆が食いつく。現場にはヴァルキューレ隊や少数ながらもSRT隊が到着しているがどうなってしまうのか?

 

 

すると画面端の方で小さく映る兄の姿。

 

私は兄に気づいていた。

 

 

すると兄は自分の頭の上に浮かぶバラバラになったヘイローに手を伸ばすとそこから一つだけヘイローの破片を抜き取り、それを鋭く屋根の上に飛ばし___刹那、兄の姿が消えた。

 

 

 

 

『え?』

 

 

 

 

一人の報道部は声を漏らす。

 

それもそうだ。

 

何故なら___屋根の上に兄が瞬間移動して残党を真上から蹴り落としていたからだ。

 

 

 

「………え、え?」

「……い、今のって」

「す、すげぇ……」

「ま、マジか……あれ、本当なんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

__このヘイローは『俺』だからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

その意味(ことば)を理解することはできない。

 

でも兄は砕け散ったヘイローを誇る。

 

それがあるから『今の自分』とばかりに。

 

 

その神秘を___理解するのは無理だろう。

 

でもそのヘイローだから『俺』は出来る。

 

まるでコレが『存在証明』とばかりに__

 

ヘイローの様に『常識』から___浮く。

 

 

その『イレギュラー』すらも強みにして……

 

 

 

 

 

「兄さん…」

 

 

 

 

 

 

画面に映るその兄は____誰よりも、強い。

 

 

 

 

つづく

 

*1
たこ焼きパーティの意味







「あ、そうだ(唐突)」
「ん?」
「BULLET隊だと可愛くないんだよなぁ」
「ふぁ!?」
「じゃけんRABBIT隊に改名しましょうね」
「お、そうだな!……おい!待てい!(江戸っ子)」

こんな話があったとか、なかったとか。草。



【で?今回の話ってどういうこと?】

つまり、ケモ耳で頭おかしいなった主人公君はケモ耳を求めて百鬼夜行連合学院に向かい、数年後SRTになった兄の姿に妹ミヤコはこんがり脳を焼かれた話ってこと。なおやってることは二代目考案の卑劣な術の真似事。仕方ないやん。主人公くん百鬼夜行連合学院(中等部)の出なんだし。あと紙装甲なんだから回避率あげんと。ま、多少はね?


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もうランキングには載らないからな!
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