なんか俺のヘイロー砕けてね?   作:つヴぁるnet

31 / 61
うああああ!
週一更新しかできねぇ。ひぃん。


第31話

 

 

「お前らー、どんどん食えよ」

 

 

「わぁぁあ!」

「あ、ありがとうございます!」

「あのっ、良いんですか!?」

「先輩に任せちゃって良いのかな…」

 

「良いんだよ!カナタんに任せて!」

「ほらほら!後輩達は沢山食べる!」

「冷たいレモネードもあるよー!」

「うぇーい!リーダー鉢巻似合ってるぅ!」

 

 

錆色混じりな琥珀色のヘイローをクルクル回しながら、百鬼夜行仕込みの腕っぷしで臼に放り込んだ餅米を(きね)で餅つき、その度に周りは「おおー」と歓声を上げてくれる。

 

時々パシャパシャとカメラの音も鳴ったりしてとても学園らしい活動だ。

 

 

「先輩!レモネードです!」

 

「おっ、助かる。ちょうど飲みたかった」

 

 

新しく入ってきた後輩からレモネードを受け取って一気に喉へ流し込む。

 

梅雨明けとはいえもう既に日差しは暑い。日射病対策として設営したテントの下での作業だが梅雨混じりの熱風はSRTで2年目だろうとなかなか堪える。水分補給を忘れてはならない。

 

 

「あー!さりげないアピールだー!」

「ポイント稼ぎだー!ずるー!」

「私も持っていこうと思ったのになぁ」

「違うよぉ!別にそんなんじゃないよぉ!」

 

 

外野からワーギャワーギャとレモネードを持ってきた、同じ二期生に批難の声。

 

もちろん冗談だと思うが、SRT餅つき大会の輪の中、皆の見ているところでなのでレモネードの子は同期達の揶揄いを止めようとして追いかける。それに対して一期生達は二期生達の戯れを微笑ましそうに眺めながら餅を頬張る。一時の平和だ。

 

 

 

「相変わらず人気ね、リーダー」

 

「ウリエか。餅は美味いか?」

 

「ええ。相変わらず、多才で尊敬するわ」

 

「百鬼夜行には色々あったからな」

 

 

一期生のみ与えられる藍色のジャージ姿を揺らしながら、話しかけてくるのは今年になって二年生になったウリエ。

 

その片手にはきな粉と黒蜜を垂らした、きな粉餅を持っている。

 

随分と贅沢な組み合わせだ。

 

 

「最初はあんなにも警戒されていたのに今となっては人気者ね。これも貴方の魅力かしら?」

 

「さてね。俺としては普通に先輩として接しているだけなんだが。まあ入ってきた子たちが素直だったのもあるけど。もちろん小生意気な活きの良いヒヨッコも何人かいたが、実力主義なところがあったのかすんなりと認めてくれた。そこらへんホッとしている。これも前会長が見越しての人選なんだろう。いやはや。居なくなる最後までコチラに信頼を置いてくれるとは光栄なこった」

 

「リーダーは前会長とは仲が良かったものね。それでも今の連邦生徒会長とはそれ以上に親しいようだけど……と、言うよりリーダー?あの件なんだけど、かなり話題になっているわよ?」

 

「話題?」

 

「リーダーがSNSに投稿した生徒会長とタコ焼きパーティーよ。アレどうしたの?」

 

「ああ、就任祝いのタコパか」

 

「タコパって…SRTって組織的には秘密主義寄りの運営下にあるはずなんだけど、もしかして抑えきれない承認欲求故にあんなことしたのかしら?」

 

「いやいや。承認欲求のつもりはないし、そこら辺は連邦生徒会長と話して決めた事だ。てかSRTの存在は前から噂になっていただろ? そりゃ認知度に関しては俺が過去にトドメ刺してたけれども…」

 

「ならチーズ味の餅でも作るかしら?気に入ったのなら祭りの時のように転がしてきても構わないわよ?」

 

「年が明けてもまだ掘り起こされるのかよあの黒歴史……勘弁してくれ…」

 

 

ウリエが言っているのは、去年の『チーズ転がし祭り』だろう。あの祭りに関してはSNSで取り上げられるほどになっていた。

 

そして参加者である俺の姿もはっきりと動画に映っていた。ヘイローを使って瞬間移動した場面もしっかり撮られており、ショート動画として載っている。ただ瞬間移動に関しては動画内の映像のバグなのでは?と疑われている。まあ有り得ないからな。

 

まあそれでもヘイロー持ちの男性が祭りに参加していると言う珍しい光景がキヴォトス中で話題を生んでいる状態。

 

そのお陰でシラトリ区以外にも月雪カナタの存在が認識されるようになり、また流れるようにゲームセンターでハイスコアを叩き出し続ける月雪カナタの存在もどんどん明かされてきた。

 

あと俺の百鬼夜行時代の姿も次々と認知されてきて、段々有名になってきた。まあ元々それなりに男性キヴォトス人の話はネットのスレなどで広まっていたが、今回で断定的になった話。

 

ただこの時点ではまだ、月雪カナタって人間だけが先行しているだけであり、月雪カナタがSRT特殊学園の生徒だとは知られておらず、同じようにSRT特殊学園の存在も世間的には認識されていない。

 

 

 

この時点では。

 

 

 

問題はこの後。

 

 

 

それはある日のことだ。

 

いつだったか、ヴァルキューレの手に負えないレベルの重犯罪者グループが街中で暴れており、それを鎮圧するためにSRTが駆り出された。

 

もちろん俺もSRTのメンバーとして鎮圧に参加したのだが、そこに命知らずな報道部がヘリコプターで現場まで駆け込み、その戦闘状況を生中継で送る。

 

 

そして、俺の姿が映ってしまった。

 

 

琥珀色の砕け散ったヘイローを頭に浮かばせている男性が大々的に目立ち。ある日のチーズ転がし祭りに参加していた男性キヴォトス人と姿が一致と判断されてしまい、それが一気に話題となってキヴォトス中で広まった。

 

しかもその話題は俺限定として収まらず、鎮圧に駆り出された兵士たちは質の良い装備を身に纏ってため「この部隊はなんだ?」とその方面でも話が広まってしまい、なによりヴァルキューレ部隊とは比べ物にならないほどに強い組織が秘密裏に存在していることも世間的に認知され始めた。

 

こんなこともあり、初期稼働当時から続けてきたSRTの秘密主義も段々と難しくなってしまったという話。

 

やれやれ。これも全てクロノスとか言う命知らずな報道部が現場に来たせいだ。アイツらさぁ。

 

 

それで頭を抱える俺氏。

 

しかも一番頭を抱えたのはモモトークから妹のミヤコに「兄さん大丈夫?」と問われた時。

 

 

機密裏に稼働するSRTのこともあってミヤコには俺の進学先を明かしてなかった。

 

一応、進学と同時に百鬼夜行から出る事は伝えていたが、連邦生徒会長直属の私兵として活動する事は何一つ伝えていない。

 

だから心配されるのはごく自然な事。

 

けれど「心配するな」と心苦しくとも突っぱねるような形でメッセージを返した。

 

今度会った時どう説明するか。

 

そう悩ましていた俺。

 

そしたら「兄さんを信じてます」と返ってきた。

 

 

わ……ァ………あ、泣いちゃった。

めちゃくちゃええ妹や。

 

うわああん!

ミヤコの信頼がデカ過ぎます!

 

 

あ、ちなみに俺のチーズ転がしてた黒歴史に関しては特にお咎め無し。

 

と、いうより白鳥はその内SRTの存在を明かす予定だったらしくそれが今回早まった話。てか元より白鳥は俺をSRTの顔として広告を打ちたかったらしい。

 

なのでチーズ転がしていた月雪カナタがファーストペンギンになってくれたのは寧ろ好都合です良かったとケラケラ笑っていた。

 

 

あ、因みに俺と一緒に映っていたお祭り娘こと里浜ウミカも少しだけ有名になっていた。いつの間にかウミカと友達になっていたヒヨリから聞いた。丸いチーズをわっしょーい!と持ち上げていた姿はなかなか様になっているとSNSでコメントが多かった。へー。

 

 

 

 

つーか、さぁ。

 

 

 

「秘密主義は比較的無理だろ。キヴォトスとかいうドンパチ賑やかな箱庭で直接鎮圧に当たるんだからさぁ。それで身分やら所属先やらを隠し続けるとか寧ろストレスになってしまう。ああ非効率っ!」

 

「まあ、それはそうねぇ。目立ちすぎも良くないけれど、表で活動する以上は永久に秘密主義として通し続けるのは苦痛ね…」

 

「だから生徒会長に言ったんだよ。地固めも終わって本格的に駆り出るようになった段階なんだから運営方針を変えないか?って。そしたら生徒会長も逆に大々的に明かしてしまおうと提案したわけ。そうすることで犯罪者グループに牽制を与えられるし、一時的ながらも治安維持に充てられる。もしSRTを試そうとするマヌケが現れたらお望み通り圧殺して世間に存在を知らしめる。そうなれば世間的抑止力にも繋がるし、結果的に治安維持の延長になるので悪い事はない。そんな考えさ」

 

「で、投稿したのがタコパってこと?」

 

「うん」

 

「えぇ…」

 

 

投稿に関しては別になんでもよかったけど、この話を持ちかけたタイミングが連邦生徒会長の就任祝いをする日だった。あと誕生日も兼ねての祝い。

 

そしたらお口にソースを付けた白鳥が「撮りましょう!」とまるで学生のようなノリで提案。

 

それから二人で初めてのツーショット。

 

その後は白鳥が投稿用のアカウントを作り、連邦生徒会のみが権限として扱えるセントラルネットワークを使って「お前らのSNSにぶち込んでやるぜー!」とウキウキ気味にワンクリックして投稿。

 

そしたら瞬くまに例のタコパ投稿が広まった。

 

お陰で生徒会長のフォロワー数がとんでもない勢いで爆上がりし、それに飛び火して俺のアカウントにも何割かフォロワーがなだれ込む。

 

ああもうめちゃくちゃだよ。

 

ちなみに俺のアカウントはシラトリ区のゲーセンでハイスコア叩き出す度に載せてたのでそれが月雪カナタのアカウントとバレた。

 

学生さんのサーチ力半端ねぇな。

 

新しくアカウント作るのも面倒なので、観念して白鳥とのタコパのツーショットを俺の方でも投稿して本物であることを証明。

 

まあチーズ転がし祭りの時点で手遅れなのでこうなったら適度にSNS上でも活動して、犯罪者共に牽制を与えようと切り替える。もちろん度が過ぎる投稿はNGだがな。

 

 

え?SNS上のハッキングは心配ないのか?

 

ああ、それは心配無用。

 

 

てかSRTにハッキングとか、バカだろ。

 

それで既に何人か捕まえている。

 

 

こっちにはミレニアム候補生もいるんだぞ?

 

ハッキングを得意とする兵士もいる。

 

 

だからネット上でも隙は無いし、生徒会長に直接言えばコチラでもセントラルネットワークを使うことだって可能だ。権限も多い。

 

 

だから世間は再認識した方がいい。

 

SRT特殊学園は超人によって創設され、そして超人の慧眼によって選ばれた者たちが集ったキヴォトス最強の組織であることを。

 

 

___SRTを無礼(なめ)るなよ??

 

あ、ただしウララちゃんは別だ!

 

 

 

 

「ほれ、新しく餅できたぞ」

 

「わーい!」

「やったー!あざっすー!」

「ええと…カナタん!おかわりー!」

「カ、カナタん先輩っ!私も下さい!」

 

「あら?後輩ちゃんもカナタん呼び?」

「分かる〜、やっぱカナタん、っしょ!」

「カナタんの時は先輩付けなくてええよ〜」

「そうそう!羽伸ばす時は不必要だよ!」

 

 

 

誇り高く、仲間意識も強く。

 

このキヴォトスで最強の兵士だ。

 

その事実に疑いはない。

 

 

 

でもその前に俺たちは学生である。

 

周りの仲間達が俺のことを「カナタん」と呼んで戯れるように、SRTだって学生らしさを忘れずこの餅のようにしっかりと体を伸ばし、ガス抜きすることも重要だ。

 

 

 

「食えない奴いる?…いねぇよなぁ!!」

 

「「「「うぇぇい!!!」」」」

 

 

 

だから今は餅を突いて皆に振舞おう。

 

百鬼夜行仕込みの元気な力餅として。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画面越しに見える、勇ましい姿。

 

それは有言実行したからこそ、得た姿。

 

 

 

 

『爆発…!?屋根の方か!!とりあえずインタビューはココまでだ。君たちはココから一旦離れなさい。わかったな!』

 

『は、はい!』

 

 

 

画面越しから伝わる緊張感。

 

現場の映像を流しているクロノス報道部は素直に聞き従い、その場から離れる。

 

それでもカメラは__彼に向けられている。

 

 

 

「!?」

 

 

そして私は…私達は信じられない瞬間を目の当たりにする。

 

 

 

『え?』

『き、消えたっ!?』

 

 

クロノス報道部は困惑の声を漏らす。

 

何故なら__

 

 

 

『なんだお前!?ぐあっ!!』

 

 

 

頭に浮かんでいる、ヘイロー。

 

手で掴めるはずもない不思議な光輪。

 

しかし、彼はそれを手で掴み取るとロケットランチャーを構えていたテロリストの真上に鋭く投擲し、そして建物の上に瞬間移動した。

 

急な瞬間移動にテロリストは反応できる訳もなく、その後頭部を蹴り飛ばされてしまい、建物から真っ逆様に落ちる。

 

数秒も与えずに爆破犯を無力化させた。

 

 

 

「兄さん…」

 

 

画面に映っている人物。

 

それは、私の兄___名は月雪カナタ。

 

リアルタイムで流れてきたその活躍に学園の食堂は少しだけ騒がしくなる。

 

 

「………え、え?」

「……い、今のって」

「す、すげぇ……」

「ま、マジか……あれ、本当なんだ」

 

 

今年になってからが少しずつ明かされてきたSRT特殊学園。その存在は連邦生徒会長直属の私兵であり、軍隊としての質は非常に高く、キヴォトスの中で5本指に入るかもしくは問答無用で頂点に君臨すると畏れられている組織。

 

そして異質ながらも、SRTメンバーの中にいる一人の男性キヴォトス人。

 

それが私の兄。

 

そのことを知ったのは数ヶ月前。

 

常にどこかで銃撃戦が起きるキヴォトス内では基本的にヴァルキューレが対応に当たり、鎮圧活動を行っているが、ある日ヴァルキューレでは手に負えないほどのテロ活動がキヴォトスで起きた。

 

そこに駆けつけたのがSRT特殊学園の兵士たちである。SRTはヴァルキューレなど片手で薙ぎ払ってしまうような強さを持った部隊だ。

 

そこで初めて秘密裏の組織が認知され…

 

 

 

___月雪カナタの姿があった。

 

 

 

世間は瞬く間に騒ぎ立てた。

 

シラトリ区にあるゲームセンターでハイスコアを独占し続けていたゲーマーの正体はSRT特殊学園の兵士であり、そしていま画面越しに見せてくれた鎮圧力はSRT特殊学園に選ばれて当然と言えるほどの実力である証明。この人に一体どれだけのキヴォトス人が脳を焼かれてしまったのか。

 

 

 

「ちゃんと、有言実行したんですね…」

 

 

兄は生まれつき歪なヘイローを持っている。しかしそんなハンデに負けないよう努力を重ね続けてきた。

 

途中トリニティの陰湿な虐めにて兄の肩は無慈悲な弾丸にて貫かれてしまい、それと同時にヘイローは砕け散ってしまうほどに兄は追い込まれ、トリニティから出ることを選んだ。

 

それから月雪カナタを受け入れてくれた百鬼夜行自治区にて弱かった己の再起を図り。

 

そして私に約束した。

 

 

もう、弱かった頃のカナタで在らない。

強くなって、己を正当化し続ける。

 

 

私は今よりも小さかったため、兄が決意したその言葉の意味をあまり良くわかっていない。

 

けれど今より強くなり、ヘイローが砕け散った程度で、折れないことを私に約束する。

 

 

 

そして___有言実行の先が今の兄。

 

兄はSRT特殊学園の兵士になっていた。

 

腕に巻いてある【KANATA】の腕章。

 

それはおそらく組織から認められた証。

 

その勇ましさに疑いなど持たない程だ。

 

 

 

 

っ〜!!

 

にい、さんっ!

 

 

 

「兄さん……兄さんっ!」

 

 

 

 

ああ…!!

 

ああっ…!!

 

 

カッコいい…!!

 

カッコいいです…!!

 

 

私の兄さんは、こんなにも!!

 

私の兄さんは、これほどにも!!

 

 

 

「どうしたミヤコ?そんな…ええと、恍惚?としたような表情を見せて。もしかして熱か?」

 

「サキ、邪魔しないでください。私は兄さんの追憶に細胞をフル稼働させているんです」

 

「意味がわからん…」

 

「分からなくて大丈夫です。私はただ兄の活躍に喜んでいるだけ。普通ですから」

 

 

満足な答えを得れずに不満な表情を隠さない空井サキを他所に、私はテレビ画面を眺める。

 

鎮圧も完了したのか、ヴァルキューレにテロリストを引き渡す。その際に兄は敬礼をビシッと行い、そのままSRTの仲間達と合流する。

 

インカムに手を当てながら何かを報告し、同時に合流した仲間へ指示を出すと、仲間達は兄に対してビシッと敬礼を行う。

 

 

組織の隊長か、またはリーダーか。

 

連邦生徒会長とたこ焼きパーティーをしているツーショットをSNSで上げるくらいだ。

 

おそらくそれ相応の立ち位置だろう。

 

 

ああ……すごい。

 

いつの間にか兄はあんなにも先を征き。

 

そして今もまだ進み続けるんだ。

 

 

 

「…」

 

 

 

嬉しい。

 

喜ばしい。

 

誇らしい。

 

頼もしい。

 

雄々しい。

 

 

私はウサギではありませんが、キューと声が漏れてしまいそうなほどにお腹の底が熱いです。

 

 

 

「このブラコンめ…」

 

「兄弟愛の何が変でしょうか、サキ」

 

「家族と親しいのは良いことだが、ミヤコのそれはなんというか、それ以上の感情として伺えるのは気のせいだと私は思いたいところだな」

 

「尊敬すべき兄の活躍を心の底から喜んでいるだけです。特に異常ありません」

 

「……あとついでに目が怖い」

 

「尊敬する兄に対する色眼鏡の一つや二つ、普通と異なっても然程おかしくありません」

 

 

月雪カナタという人間に周りの人達が喉を鳴らすのは仕方ないことです。

 

だってそれほどであることを今や正しく認識している世の中。

 

ええ、そうです。

そうなんです。

 

私や兄はトリニティなんてお高く止まった狭い世界で収まるような器じゃないんです。

 

だって兄は努力家で、頭も良くて、なにより家族思いな人格者。

 

そんな豊かさは、然るべき場所で評価されるべき人。それが今やSRT特殊学園という選ばれた者のみ立ち入れる世界で兄は輝いている。

 

こんなに嬉しいことはそう有りません。

 

 

 

「だから安心しているんですよ、サキ」

 

「何をだ?」

 

「言っても信じてくれるか分かりませんし、兄のためにあまり語るべきではない追憶。でも兄は辛さを乗り越えて今がある。正当化の果てで有言実行を成した兄に妹の私が喜ばしく思うのは間違いではないと、そう思いますから」

 

「……それが本当なら、カナタって人間は本当にすごいんだな。ミヤコにとっては」

 

 

私は頷く。

 

兄の過去を語ることは許されないから、どれほどに成り上がったのかを周りの人達に説明できない。

 

 

でもそれで良いんです。

 

語る必要なんかありません。

 

 

兄は家族である私に誓ってくれたから。

 

ならその誓いは私の胸の中に収める。

 

 

 

 

「兄さん、どうかそのまま健在に…」

 

 

 

心配をしてないと言ったら嘘になる。

 

その肩に無慈悲な弾丸を受けて砕けたから。

 

だから無理をしてほしくない、痛みとは無関係な世界にいてほしい。

 

それこそ百鬼夜行自治区のような人混み暖かな場所で健やかであってほしい。

 

案内を受けた私はそれを知っている。

 

 

けれど兄を知る妹としてその決意と誓いが叶えられてほしいと応援したくなる。

 

だから私は兄を止めない。

 

信じている。

 

それがミヤコにできること。

 

兄を慕う妹の特権であること。

 

 

 

 

__ピロン。

 

 

 

 

「?」

 

 

 

 

ポケットのモモトークが鳴る。

 

私はそれを手に取り、確認する。

 

 

 

 

 

 

 

『カナタだ。任務中なので短く。

次の休日だが、非番になった。

なので久しぶりに会わないか?

一緒にご飯でも行こう、ミヤコ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

秒で返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♦︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベツレヘムの光とは__いずれ現れる救いを信じた者が目指すことになった印。

 

それは救世主たらん存在証明。

 

しかし落ち切った後のその星はどうしてしまうでしょうか?

 

天変地異が宇宙に現れるのなら流れ星のように落ち切ってしまう終幕。

 

だが何もなければ浮くまま、ただそうだった光だと浮かれた過去の栄光に、地上を見守るのみ。

 

 

クックック。

 

 

けれどその救世主も今となってはいつ目覚めるかもわからない混沌の中か。

 

試された果てにある肉体の限界はまるで星々が嘲笑うかのように朽ちることを従い、ベツレヘムの光だった役割もその他同様に重力に縛られた箱庭の天使達を嘲笑うか。

 

 

しかし重要なのはそこではありません。

 

 

ベツレヘムの光はあくまでそうだった証。

 

証とすらならば蛍光灯、街灯でも構いません。

 

 

光を印にするなら夜闇も震えに収まらない。

 

それが生き物の心理。

 

心に揺れた迷い人か、子羊のようです。

 

 

ええ。

 

だからこそ、憤りの裏側は怖いのです。

 

役割を背負うことした一人の天使は裏返ったままベツレヘムの光を求めずに背を向けました。

 

なぜなら光はもう一つ、反対にあったから。

 

 

クックック。

 

 

ああ___世界を超えたことで観測を認めてしまったイレギュラーな、光よ。

 

その独りよがりは観測させた上でどのようなご都合主義を齎すのか?

 

 

扉を叩いただけの希望観測か。

 

それとも幻覚に終えた理想主義か。

 

 

それは片道切符として飲み込んだ一人の堕落天使が文字通りに堕ちて目指す、はず。

 

だがそれすらも裏返ればベツレヘムの光か。

 

 

その【解】を見られることを私は望みましょう。

 

クックック。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少しずつ崩れ逝く、箱庭。

 

天使の昇天を待つのみである。

 

 

 

つづく






カナタんに脳を焼かれた二期生達。
男性観が見事に破壊されちゃった!
もう普通の男性と結婚できないね♡


あと今回は3話(後半)のヤツ。
いやー、とうとうここまで来たね。

あ、でもカナタくぅん??
それまでの功績がデカ過ぎるんよ。
これも全部ヒヨリとかいう娘が悪い(断言)


ちなみにミヤコが兄に対して強火なのでこれが平常運転です。なんなら前任者も妹のミヤコを「天使か?いや天使だったわ」って言ってしまう程に家族愛強め。やっぱ血の繋がった兄妹なんすね。まあミヤコが天使可愛いのは当然としても水着ミヤコ卑しうさぎ過ぎんだろ。は?復刻ガチャ?ふざけんな。こちとら3周年目で始めた先生やぞ?こんな引くしかないだろッ!!引いた。


じゃあな!
またの更新でな!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。