なんか俺のヘイロー砕けてね?   作:つヴぁるnet

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メインストーリーのアビドス編やばくね?
1週目は強制BADENDとかほんま…


第32話

 

 

「ごきげんよう、先駆者(カナタ)

 

「うわっ、出た」

 

 

ギギキッと軋ませながら現れたのは自らを芸術家として自称する男、名はマエストロ。

 

 

ここはとある帰り道の途中。

 

一息つくために自販機から飲み物を購入すると適当なベンチに座り、携帯を眺める。

 

携帯画面には数時間前にゲームセンターで叩き出したハイスコアの内容。それをSNSに投稿したのだが、今一度見返すとかなりの数のgoodが付いている。

 

コメントを見る限りだと「すげー!」や「うますぎだろ」と、ありきたりなものから「普通に上手くて笑った」など月雪カナタというアイドル性だけに引っ張られて人も含め、純粋なハイスコア動画に感心している。

 

そんなコメントの様子を眺めながら承認欲求も満たし、飲み物を流し込んでいると横からギギキッ、カタカタと音を鳴らす不審者。

 

これには「うわでた」と言う他あるまい。

 

てか、決まったように月一ペースで会ってくるのなんなん?そんなに俺のこと好きか?

 

まあ好きじゃなかったら俺のアカウントをフォローしてないよなぁー、コイツ。

 

 

 

「今回はどうした?」

 

「貴殿に改めて、今現状のすり合わせを」

 

 

自身を芸術家として名乗る男、マエストロは日々何かを創り出そうと模索し続けている。

 

些細なことでも、それが一つのインスピレーションに繋がるんだと考えてはキヴォトスの至る所を練り歩き、特に月雪カナタというイレギュラーに対しては今までにないインスピレーションやインスパイアを受ける事ができたと感銘を打ち、それからも定期的に会話をしようと会いに来る。

 

最初は対応に困っていたが、芸術家というなら和芸の一つや二つ関心はあるだろうな?と挑発してみれば次からは福笑いや折り紙などの完成品を見せてきては「貴殿からしてこの作品をどう思う?」と感想を貰いにくる。

 

小学生のお勉強かよ。

俺はお前の『先生』じゃないっつーの。

 

 

 

「すり合わせねぇ」

 

「ああ。手土産が無くて申し訳なく思う」

 

「いや、別に欲してる訳じゃないんだけど…」

 

「次は用意しよう」

 

「あ、はい」

 

 

お披露目したい芸術品はその手にない。

 

ならば今回は、言葉を重ねることでまたなんかしらのインスパイアを受けたい気分らしい。

 

まるで『会話コマンド』だな。

 

……仕方ない。

 

俺は携帯を閉じて、耳を傾ける。

 

 

 

「この身体にある理由を改め___私が求める作賓の中には根源の感情が重要なパーツとして彩る。まだはっきりと答えは出ておらぬが、恐らくこれらは基本的に複雑化された集合体、共存が不可欠となること前提とした。しかし私の考察が正しいものならどれも人の営みで生み出された有象無象と欲望に塗れた成れの果てか。だとするとこの解釈は時間をかけなければ成功体験すら目の当たりに叶わないと、もどかしさを覚える頃だ」

 

「ならこんな会話してる暇はマエストロには無いんじゃないのか?時間を要するというならいまもその芸術に費やすべき熱量の筈。それとも寄り道したいほどに作品作りは飽きたのか?」

 

「ある種の行き詰まりって奴だ。ただ悲観的には受け止めてはいない。作品の追求は未だに残されてると言うのならそれは手がけることが命となる芸術家にとって喜ばしい事だ。あまり長引くのも良くないが、そこに対して生き急いでるつもりは無い」

 

「なら息抜きの最中か。それならSNSでも眺めてコーヒーでも嗜めば?そのタキシード似合っているんだし、自撮りして投稿でも試してみれ良い。右の顔はブラックで、左の顔はミルク入りを好んでいる。だから後味はカフェオレなんだと洒落てみれば少しは人目に入るかもな」

 

「この体で写すなど好ましくない。内側にある欲求だけが私の存在証明だ。SNSは受けるだけに留めさせて貰おう」

 

「ああ、それが良い。正直インフルエンサーなんてのは哀れな化け物になった者の末路だ。俺だってゲームセンターでハイスコアを叩き出すための化け物になってるが、ハイスコアを叩き出したところでじゃあ何かある?と問われたら承認欲求という外側の快楽をこの身に欲していると答えるしかないからな。あーあ、やっぱり俺も哀れな化け物かー、やれやれ」

 

「正当化の色彩として"成功体験"を得た貴殿にとっては易しめに映る姿だな」

 

「月雪カナタは非番中に出来るゲームが好きなだけだ。正当化が取り柄の色彩君にはしばしお眠りに頂いている。既に俺の中で解釈はしてるから」

 

「どちらも貴殿の証だろう」

 

「月雪カナタに成り代わった憑依者と、月雪カナタの健在を望む先駆者は、また違うことを今一度知っておけ。今の俺は憑依者(カナタ)だ」

 

「ふむ…」

 

 

似たような会話は過去にマエストロとした事がある。それでも同じような会話を繰り返すのは彼の中にある価値観が毎秒変化を続け、その度に擦り合わせを行い、今も健在であるかを確かめていたいだけ。

 

そして、それに関しては俺も理解がある。

 

今だって定期的に水の上に浮き立ってはカナタの神秘を体に巡回させ、水面に映る己の姿と答え合わせを行い続けているから。鍛錬を続けているから。

 

だからマエストロにとって俺は水面に映る貴重な鏡なんだろう。故に俺はマエストロの理解者として近しい位置にある。求めているベクトルは違くとも根源はどことなく似ていたから。

 

 

 

芸術家として探究を繰り返すマエストロ。

 

先駆者として健在を繰り返す月雪カナタ。

 

 

 

歪に軋ませる、木偶の体。

 

砕け散った、ヘイロー。

 

 

 

色彩のスタート地点を目指す者。

 

色彩のゴール地点を理解した者。

 

 

 

そして【大人】を知っている者同士。

 

味方にはならないが、交わす事は出来る。

 

言葉を、理解を、認識を、解釈を。

 

そして、いずれかは___色彩すらも。

 

 

 

 

まったく…面倒なことになりそうだ。

 

耳を傾けている時点で手遅れだけど。

 

でもマエストロとエンカウントした時点で俺はコイツの探究から逃れられないのだろう。

 

 

 

……その気になれば、コイツもベアトリーチェのように消し飛ばせると思う。でもそれを月雪カナタのやり方として生みたくはない。組織上の危険分子なのは確かであるが言葉を交わせるのならまだそうしていたい。それに…

 

 

 

「やはり月雪カナタというイレギュラーすらも正常として扱うストーリーテラーは私にとって強めの幻覚にもなり得るか…」

 

「急に何言ってんだお前?誰がインターネットだオイ」

 

 

会話する分にはまあ面白いんだよな、コイツ。

 

何だったら前なんて会話しながら抹茶ラテを試してもらったからな。

 

この飲み物は和風か?それとも洋風か?

 

因みにマエストロは洋風と決定つけた。

 

和を司る抹茶味だろうと飲むスイーツには変わりないと真面目な分析してくれた。

 

少しだけ感心したわ。

 

 

 

「強めの幻覚にしろ、俺以外にいないの?」

 

「貴重な成功体験を、月雪カナタである姿を崩すことなく【責任】の形で収めた意味を、それらを成し得た者は文字通りの先駆者としてこのキヴォトスに貴殿だけである。もし他に解を得た者がいるのなら是非教えて頂きたい。インスパイアは多く飾れるほど良い」

 

(せわ)しい奴だな」

 

「なるほど…これは失礼した。しばし落ち着きのない大人であったか。見苦しいところを見せた」

 

「子供心を忘れない大人は素敵だぞ?持論だけど」

 

「だが私は毅然と在りたいものだ」

 

「半分同意。でも窮屈を美徳にはしたくない」

 

「品性による格式は社会の公器だ。これをなくしては理を語れまい」

 

 

 

時刻は間も無く21:00だ。

 

充分に夜と言える時間帯。

 

なのでこの通りに人気は無い。

 

俺とマエストロだけ。

 

……そろそろSRTに戻るか。

 

 

 

「ファンサービスはここまでだ。俺もそろそろ帰らなければならない。これも有名税だからと甘んじられては流石に困る」

 

「貴重な時間を感謝する。また一つこのようにして貴殿のストーリーテラーからすり合わせを行えた。いつかお礼をしたい」

 

約束さえ守ればそれで良い」

 

「約束か…」

 

 

マエストロとの約束。

 

いや、脅迫に近いか。

 

でもベアトリーチェがそうだったことを考えて俺はマエストロを通してゲマトリア全体に警告している。それは…

 

 

先駆者(おとな)との口約束___それは犠牲を付きものとして生徒(こども)を食い物にしないことだ。もし約束を違えた場合は俺がこの手でベアトリーチェの後を追わせてやる。必ずだ」

 

「ふむ……貴殿の正当化によって光にされる事で何かを得れるのなら、それも破滅願望の一つの中にある興味深い選択になるだろう。しかし私はまだピリオドを見ていない。惜しい事はできないな。わかった。改めて覚えておこう」

 

 

俺を観測するだけなら別に構わない。

 

好きにすれば良い。

 

SNSでも俺を公表している。

 

ならば月雪カナタを刻めば良い。

 

それで、いくらでも脳を焼いてろ。

 

それがキヴォトスで健在に生きている存在証明にもなるから。

 

 

だが、もし…

 

俺の目の前で子供の犠牲によって成り立つ『解』がある場合は絶対に許さないと誓う。

 

もう二度と槌永ヒヨリのように悪い大人に騙されて生きてきた子供を…

 

そして何も知らずして砕け散ることになった前任者のような子供を…

 

そうなることを俺が許さな___

 

 

 

 

 

 

「……なんだ?」

「……む、これは?」

 

 

 

突如、頬にザラつきを感じた。

 

同じく、マエストロも何かを感じ取った。

 

お互いに、周りを警戒する。

 

 

なんだ?

 

なんだ?

 

この異質な___

 

 

 

 

 

 

「失礼___お体に触りますよ」

 

 

 

 

 

思考の中、突如横から伸ばされた芸術家の手に反応が遅れてしまい、そのまま左肩を触れさせてしまう。

 

っ!何をする気だ?

 

 

 

そして___

 

トンっ、その場から左肩を押された。

 

 

 

 

 

 

 

パァン!

 

 

 

 

 

 

___目の前を何かが鋭く通りすぎた。

 

 

 

 

 

 

「(ッ!?まさかッ、弾丸…!!?)」

 

 

俺とマエストロの間を割き分けるように通り過ぎた弾丸が一つ。

 

静かな夜だからこそ弾の音は良く聞こえ、街灯に照らされた一瞬の影が証明する。

 

__俺はいま、ナニカに狙われていた。

 

 

 

 

「ああもう!やはり治安がキヴォトスだな!」

 

 

 

透明感溢れすぎた銃社会に再度呆れながら体制を整え、腰からハンドガンを取り出す。

 

 

 

「マエストロ!ベンチの後ろに下がってろ!」

 

「ふむ」

 

 

 

頭にあるヘイローを琥珀色に瞬かせながらハンドガンを片手に臨戦体制に入り、マエストロよりも前に出るとハンドガンの銃口を上に向けながら口元に構える。目を凝らせ。どこだ?

 

 

 

「どこからの銃撃だ…?」

 

 

目の前に見えるのは茂み。

 

あと木々。

 

この通り道の横幅は8メートル。

 

昼間は人通りの多い場所だが夜の20時を越えれば途端に少なくなる。

 

故にここにいるのは俺とマエストロのみ。

 

つまり、この時間ではブラインドアタックとして奇襲には持ってこいの場所だ。

 

 

 

「やれやれ…とうとう俺も身代金代わりとして扱われる対象になったのか?嬉しくないな…」

 

 

「偉人とは常に評価される」

 

 

「この場合『俺なんかやっちゃいました?』とよくありげにとぼけるべきか?」

 

 

「認識の甘さは罪だ」

 

 

 

おっと、痛いところを突かれたな。

 

いやマエストロの発言はそんなつもりはないかもしれないが、しかし今の俺からしたらその言葉は中々に効くことになる。

 

 

理由?簡単だ。

 

 

 

弾丸___ちっとも気づかなかった。

 

SRTの兵士なのに。

 

 

 

「(いつもなら『狙われている』と敵意やら殺意やらを感じ取れるはずなのに何も反応出来なかったのは一体どう言う事だ?)」

 

 

キヴォトスという銃社会だからこそ得る事ができた危険察知能力。

 

しかも中等部の頃はオワタ式という状態で銃社会の中にいた。

 

それ故に発達した危険察知能力。

 

またそれと同時に習得した神秘の察知力。

 

攻撃の際に放たれる神秘エネルギーを肌身で感じ取れる俺の特技。

 

これも水の上で鍛錬を続けた結果誰よりも神秘を感じ取りやすいようになった。

 

これもクズノハの教えの賜物だな。

 

 

だが…

 

 

その賜物も今回、活かせなかった。

 

その上、マエストロに助けられた。

 

そしてマエストロは気づいていた。

 

どういう事だ??

 

 

 

「(殺意や敵意は訓練すれば隠せるようになるから理解はできる。しかし神秘により凶弾として放たれるだろう攻撃に気づかなかったのは流石に異常だ。それとも俺が捉えきれないほどに衰えたか?いや、そんな事ない。だって昨日も一期生集めて水上戦で涼んでいるんだ。なら怠ってなんか絶対にない。在り得ない)」

 

 

 

受け入れ難い現実だ。

 

何も捉えきれない……

 

いや、今微かに捉えた。

 

確かに奥の方に何者かがいる。

 

けれど……狙って、いるのか?

 

俺を?

 

それともマエストロを??

 

 

何故だ。

 

何故こんなにもあやふやな___

 

 

 

「右だ」

 

「!」

 

 

 

マエストロの声に反応すると俺は腰を低く落とすことで右から飛んできた弾丸を掠めるように回避する。頬の横を通り過ぎた。そして俺は反撃とばかりにハンドガンを放たれた方に向けて撃ち放つ。

 

 

タン!タン!タン!

 

 

 

「手応えなしか…?」

 

 

 

暗くてヒット確認もできない。

 

そんでもってヒット音はしなかった。

 

つまり当たっていない。

 

でも射線は見えていたんだ。

 

だからそこに従って撃ち込めた。

 

普通なら当たっているはずだ。

 

反撃も早くできたんだ。

 

なら敵の回避前に当てているはず。

 

しかし当たった気配なし。

 

それとも想像しているより的が小さい?

 

なら小型ドローンによる攻撃か?

 

いや、それなら音でわかる筈。

 

なら敵は腕だけを出して狙っている?

 

こんな暗い中で?

 

街頭の光だけを頼りに腕だけ出して?

 

そんな巧妙なことできるのか?

 

と、いうより…

 

 

 

「なんだ?なんだこれは??俺は本当に敵から狙われてるのか?この違和感は一体なんだ??」

 

 

殺意が全く感じられない。

 

敵意は……微か…と、言えるのか、微妙だ。

 

でも狙われてるように感じ取れない。

 

いや、でも俺を狙っている。

 

なら狙われていると認識ができる。

 

だが攻撃が全くわからない。

 

俺を狙っているはずなのに、狙われたという風に捉えきれないほど。

 

ならば、やはり機械から放たれる攻撃?

 

だが微かに奥から神秘を感じ取れる。

 

その位置は定まりが付かないがでも何者かに狙われていることは分かる。

 

でも攻撃のため狙われたと、思えない。

 

そんな矛盾がぐるぐるとしている。

 

するとマエストロが後ろから語りかける。

 

 

 

「貴殿を一つの作品として見れば、外傷を与えようとする悪意は芸術家として伝わる。何処を傷つけ、価値を落としたいと、いったようにな」

 

「そうは言うが、俺は俺とでしか感じ取れないぞ?」

 

 

 

どうやらマエストロは月雪カナタを一つの芸術品として見ている芸術家(プレイヤー)視点だから、それを傷つけようとする他者の攻撃が分かるらしく、その芸術品(カナタ)を傷つけようとする悪意を感じ取って傷物を扱い避けてるようだ。故に月雪カナタに向けられる攻撃は手に取るように分かるらしい。

 

 

なるほど。

 

観測者にもこんなやり方があるのか。

 

少し勉強になったよ。

 

 

 

 

ああ、でも…!

 

 

 

 

「勝手に俺を芸術扱いしてんじゃねぇよ!」

 

 

 

夜目に慣れてきた俺は時間が経つことに感じ取れつつある神秘の方向に弾丸を放つ。

 

すると…

 

 

 

「ぐぅ!?」

 

 

弾丸は何者かにぶつかった。

 

時間かけて探った甲斐があった!

 

 

 

「そこかぁ!!」

 

 

手のひらに神秘をかき集め、回転させる。

 

それは紛い物の一撃。

 

 

 

「螺旋丸っ!!」

 

「!?」

 

 

 

接近することで視認できた敵に螺旋丸を振り下ろす。一度横に回避されるが、俺はグルッと体を捻ることで腕を伸ばし、敵ぶつけた。

 

 

「が、ぐ、ぅぅ!!」

 

 

腕をクロスさせて吹き飛ぶ敵。

 

思ったよりも軽い。

 

すると敵はひらけた場所に飛び出た。

 

俺とマエストロがいた通り道だ。

 

 

 

「知ってて狙ってるのか、それとも物珍しいだけで狙ったのか、お前はどっちだ?」

 

 

ハンドガンをリロードしながら俺も木々から広げた場所に身を乗り出し、問いかける。

 

するとその者はボロボロな帽子を深く被り、ハンドガンを構えて戦闘状態を継続する。

 

 

 

「…」

 

 

答える気もないし、諦める気もない。

 

俺は軽くため息をつきながらハンドガンを左手に構え、そして主に非番用として携帯してある伸縮可能な警棒を腰から取り出し、白兵戦も可能な状態に切り替える。すると…

 

 

「!、!!」

 

 

敵は取り出した警棒に対して何処か動揺したように見せた。警察道具に対して警戒を生むということはあいつは犯罪者か?目元も帽子で深く隠してるし、あとあからさまに身体つきを見せないための深々しい外套。

 

いかにも正体を明かせませんとしている。

 

ならアウトローのタイプか?

 

いや、しかし。

 

 

 

「……」

 

 

マエストロに対しては何も興味を持たない。

 

俺としては人質にでもするのかと思って後ろに下がらせたし、万が一のためこっそりマエストロにヘイローを渡しているが、敵の視線は俺のみとする。もしや義賊?

 

 

いや。

 

なら俺を狙った理由はなんだよ。

 

 

明らかに俺のナニカを欲している。

 

やはり身代金が目的か?

 

 

でも……たったの一人で捕まえに来るか。

 

妙だな。

 

自分で言ってて何だが月雪カナタってキヴォトス人はSRTの兵士だぞ?そんで持ってキヴォトスでめちゃくちゃ強い兵士だぞ?そんな標的に対してサシで勝てる算段でもあるのか?それとも無知故の挑戦か?

 

だとしたら随分と舐められたものだな。

 

 

 

「お前、裏社会の者か?」

 

「……」

 

 

反応なし。

 

答える気はない。

 

 

 

「そういうことかい。なら遠慮は無しだ!」

 

「!」

 

 

裏社会の者であるなら修羅場に慣れている。

 

なら手加減なんかしてられない。

 

ハンドガンを数発。

 

逃げ場を奪うように足元に威嚇射撃を行い、敵の行動を制限する。

 

それから警棒で一気に仕留めようと大きく踏み出そうと足に神秘を圧縮。

 

 

すると敵は破れかぶれに銃口を向ける。

 

しかし当たらない方向だ。

 

俺はトドメを刺そうと警棒に力を込め__

 

 

 

 

 

「右目だ」

 

 

 

 

 

ガキン!!と音を立てる。

 

警棒を右目の位置に構えて、弾丸を弾いた。

 

 

 

 

「!!?」

 

 

 

 

敵は驚く。

 

まさか弾丸を弾くとは思わなかったからだ。

 

 

 

 

だが、驚いたのは俺も同じ。

 

 

 

「(おいおいおい!!?敵の銃口は全く意味のない方向だったろ!?なのに何故俺の方に真っ直ぐ飛んできた!?異常だろッ!)」

 

 

敵が向けていた銃口は俺の真上。

 

ある程度は軸が合わさっていたが、姿勢を低くして突っ込もうとする俺に当たることはないと見ていた。何よりSRTで訓練を受け続けている身として射線上が分かる。なので当たらないと確信して俺は踏み込んだ。

 

なのに気づいたら弾丸は俺の右目を捉えようと飛んできた。

 

それも避けきれないコースだ。

 

 

 

__あり得ない。

 

 

 

なんのカラクリだ?

 

もしや、傍にもう一つハンドガンを?

 

いや、そのような様子はない。

 

奴が握っている武器は一つだ。

 

それとも他に敵が?

 

いや、それなら飛んできた方向がおかしい。

 

敵と重なる弾道だ。

 

真後ろにいることも視認できないし、そこから神秘も感じ取れない。

 

だから敵はコイツ一人だけ。

 

今回でそれが答え合わせできた。

 

 

 

「!」

 

 

敵は驚きながら再度ハンドガンをコチラに向ける。だが銃口は俺に定まっていない。

 

なら、当たるはずもない。

 

だって射線上が被ってないから。

 

 

 

__なのに。

 

 

 

 

「!!??」

 

 

直撃コースを察知すると俺は警棒を鋭く振るって敵の弾丸を弾いた。

 

くっそ!

明らかに出鱈目な狙いだったろ!?

 

 

すると敵は再び構える。

 

だが銃口はメチャクチャな方向。

 

 

このままでは俺に当たらない。

 

何処かを通り過ぎる。

 

 

しかし__

 

 

 

 

「がぁっ!!?」

 

 

 

左肩に直撃、痛みが走る。

 

そして頭のヘイローがダメージを浮かせた。

 

月雪カナタがダメージで沈まないように。

 

そのため代わりにヘイローが濁って沈み、沈みそうになる月雪カナタを浮かせる。

 

しかし、当たりどころが悪すぎる故に受けたダメージ判定は大きい。

 

ヘイローの肩代わりが大きいな…

 

そして、もうやばいな。

 

もう一発今のように当たりどころ悪く受けたら次はヘイローで浮かせきれないぞ??

 

最悪___体が血肉で弾け飛ぶ。

 

 

 

「コイツっ…!」

 

 

攻撃される前にコチラから潰す。

 

そう判断して引き金を引く。

 

銃口はピッタリ合っている。

 

敵の額に一撃だ。

 

 

 

しかし___

 

 

 

タン!

タン!

 

カキン!

カキン!

 

 

 

 

「はぁぁああ!!?バカすぎだろ!!?」

 

 

 

俺の弾丸が、敵の弾丸にぶつかる。

 

つまり空中で相殺された。

 

出鱈目な銃口が、俺の攻撃を防いだ。

 

 

 

「(あり得ないっ!あり得ない!あまりにもあり得なさすぎる!?なんだよそれ!!?)」

 

 

 

あり得ない。リアルじゃない。

 

まるで映画やアニメのような非現実的。

 

 

 

「ぐぅ!?」

 

 

ガキン!と再び警棒で弾く。

 

危ないッ!

ギリギリだった!!

 

てか心臓を狙ってきたぞコイツ!?

 

銃口はそう正しくなかったのに!!

 

 

 

「はぁ…はぁ…!」

 

 

 

人間の弱点となる部位だ。

 

それをピンポイントで定める。

 

 

__定められてい、る?

 

 

 

 

「いや、でも、まさか…」

 

 

 

非番中に良くゲーセンで遊びに行く俺はこんな用語が頭によぎった。

 

それはガンシューティングにある【オートエイム】ってシステムだ。

 

自動的に銃口を敵に重ねてくれるシステム。

 

四文字熟語なら___必中攻撃。

 

つまりチート。

 

もし、この考察がアタリなら。

 

そのオートエイムをまさに俺が敵として受けている状態である。

 

つまりクソゲーを強いられている。

 

 

 

「っ、これで、最後に!」

 

 

 

やっと聞こえた、敵の声。

 

やはり、女性の声だ。

 

まあそれもそうか。

 

ヘイローが浮かび上がっている。

 

だから決まってキヴォトス人。

 

 

 

「っ!」

 

 

 

そして俺は出鱈目な銃口から放たれる必中攻撃に対してどの部分を狙われているのか?

 

何も分からない状態で警棒を構える。

 

ああ___どこを狙われる?

 

右目を終えたから、次は左目か?

 

それとも機動力を奪うための足?

 

もしくは肩?

 

いや喉元か??

 

それともまた心臓をか??

 

ならヘイローで瞬間移動をして回避??

 

先ほどの木々に一つ置いてきた。

 

飛ぼうと思えばいつでも飛べる。

 

いやでも、あのオートエイムだ。

 

避けた程度で何とかなるのか?

 

仮に避けれたとしてもその後はどうする?

 

アレは俺を確実に定める。

 

恐らく暗がりの中にいても必中する。

 

ならばどのみちジリ貧を強いられる。

 

じゃあどうするか?

 

やはり警棒で防ぐ事にするか?

 

っ、アレは次に何処を狙ってくる!?

 

俺は今から何処を狙われてしまう!?

 

 

 

 

 

 

「反則行為に対して反則行為か。なるほど。確かに有効な対象だ」

 

 

 

 

ギギキッ、と軋む音。

 

___すると。

 

 

俺は左肩から引っ張られるように動かされる。

 

そして、右目を狙っていたオートエイムを回避した。

 

 

 

「なっ!!??」

 

 

 

敵は驚く。

 

それほどに必中攻撃に信頼があったようだ。

 

でも外した。

 

 

 

 

「マエストロ!?」

 

 

「らしくないな___正当化の色彩」

 

 

「!」

 

 

「それとも貴殿は月雪カナタのままで彩らせるか?」

 

 

 

 

 

 

貴殿ではなく__正当化の色彩。

 

奴はそう呼んで、促した。

 

 

何より反則行為。

 

それはどのような意味かを知る。

 

 

ならば。

 

ああ___ならば。

 

 

 

 

 

「驕るな!!マエストロ!!

 そのくらいの選択は入れてある!!」

 

 

 

 

左肩から引っ張られた勢いを左足で踏ん張る。

 

そして___神秘を全身に伝わせた。

 

 

 

バチバチバチバチ!!!!

ゴオオオオオオオオ!!!!

 

 

 

 

「!!!???」

 

 

 

 

踏み込んだ左足から神秘が溢れる。

 

すると俺たちが立っている場所はバキバキと地割れを起こし、レンガブロックは踏み出した左足を中心に円形に砕けて広がる。

 

 

 

 

「おぉ…!コレが…成功体験の証!!」

 

 

 

 

マエストロの体がギギキッ!と激しく軋む。

 

俺の神秘によって揺れてるわけではないみたいだが、そう勘違いさせるほどマエストロも体から木偶を音を鳴らして興奮している。

 

 

 

 

「さっき【反則行為】と言ったな!」

 

 

「ああ。アレはそれに近しい者だ」

 

 

 

 

 

 

そうか。

 

ならば____話は別になるな。

 

 

 

 

 

 

本気で行くぞ

 

 

「!」

 

 

 

 

 

 

頭のヘイローを琥珀色に瞬かせる。

 

 

そこに錆色はひとつもない。

 

 

全て、正当化を完了させた証として。

 

 

今だけは月雪カナタする『俺』として。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♦︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

裏側にある光を目指した。

 

そして降り立った。

 

まだ色がある、生きている世界。

 

ああ…D.U.シラトリ区だ。

 

この賑やかさに懐かしさを感じる。

 

 

それから、真っ先にとあるものを観た。

 

まだ色のあるテレビの報道には私の目的とする対象がいた。

 

お陰ですぐに見つけれた。

 

 

だが、同時に驚いた。

 

イレギュラーに佇む男性キヴォトス人の姿。

 

ヘイローらしきものも浮かんでいる。

 

男性もいるんだ___ココには。

 

 

だからこそ、分かりやすかった。

 

あのようなイレギュラーだからこそ。

 

他にないナニカを秘めているんだと。

 

 

 

そして今日、人気の少ない中で狙えた。

 

同行人が一人いるが、でも関係ない。

 

 

一発か二発を撃つだけで終わる。

 

それが許される__裏返った私だから。

 

なので出来る限りをいつも通り。

 

後はこの銃口に全てを任せるだけだ。

 

 

それで良い。

 

 

 

 

だから__ごめんね。

 

ごめんなさい。

 

申し訳ありません。

 

 

 

 

深く被った帽子の中で謝る。

 

急に狙うことを。

 

平和なひとときに奇襲を仕掛けたこと。

 

犠牲の上に成り立たせることに。

 

それしか方法がないと甘んじる己に。

 

また反則行為に身を任せていることに。

 

戦えもしない己の弱さを誤魔化すことに。

 

 

 

 

ごめんなさい。

 

申し訳ありません。

 

 

 

でも、それが必要なんですっ。

 

それがなければ終わってしまう。

 

世界が色付きのない灰色に溺れてしまう。

 

 

だから…

 

だから…

 

ッッ!!

 

その色彩を!!!

 

どうか私達にッッ!!!

 

 

 

 

 

「飛雷神廻し!!」

 

「!?」

 

 

 

 

私の周りに漂う琥珀色のヘイローの数々。

 

そのヘイローを頼りに瞬間移動する。

 

銃口は定まりを効かない。

 

 

 

「な、なに、これっ!!?」

 

 

 

ターゲットの予備知識はある。

 

テレビの報道を通して映るその人は屋上に瞬間移動するとテロリストを蹴り飛ばして鎮圧した瞬間をわたしは見ていた。

 

目を疑うような特技だ。

 

でもその人は瞬間移動を可能とするという情報を手に入れた。

 

だから不意打ちを行い、一撃で刈り取ろうとして、でもイレギュラーに阻まれた。

 

けれど私は反則行為で追い込んだ。

 

何度か防がれて、表に叩き出されるけど、しかし幾度なく襲いかかる反則行為に彼はとうとう怯み、わたしはトドメを刺そうと引き金を引くが、しかし回避されてしまう。

 

 

 

そして……色彩が本気になった。

 

 

 

 

「捉えきれない…っ!?」

 

 

 

反則行為に対して、反則行為で対する。

 

私の銃口は彼を捉えきれないでいる。

 

それでも引き金を引く。

 

しかし敵を()()()()()ため弾は従わない。

 

だから彼には当たらず、通り過ぎる。

 

そして…

 

 

 

 

「飛雷神斬り!!」

 

「がぁぁ、ぁ…!!」

 

 

 

 

一太刀で斬り抜かれる。

 

神秘で強化した、一撃だ。

 

ならば、耐えれるわけがない。

 

 

 

「ぐぅ、ぅぅ…ぁ…」

 

 

 

意識を保てずに膝から崩れ落ちる。

 

すると外套から、ジャラリと落ちる。

 

 

輪っかが二つが鎖に繋がれた道具。

 

それは私がそうだった頃の証。

 

あまり使ったことないけど、大事な証。

 

あと子供の前で醜態を晒した、思い出。

 

 

今となっては、とある改造品。

 

あの者から…

 

黒服から渡された絶対確保のアイテム。

 

 

私の職業柄を考慮した道具だ。

 

 

 

 

 

「私は………わたし、は……」

 

 

 

 

 

 

意識が、薄れゆく。

 

 

 

もう、保てない。

 

 

 

ああ…

 

 

 

ごめんなさい。

 

 

 

本当に、すみません。

 

 

 

なにもできなくて、申し訳ありません。

 

 

 

何処までもダメダメで、ごめんなさい。

 

 

 

弱くて、弱くて…

 

 

 

結局、弱くて…

 

 

 

市民も…

 

 

 

約束も…

 

 

 

先生すらも…

 

 

 

守ることができなかった…

 

 

 

何も成せない、そんな生徒で…

 

 

 

ごめんなさい…

 

 

 

 

 

わたしは…

 

 

 

 

 

 

わたしは…

 

 

 

 

 

 

わたし、は…

 

 

 

 

 

 

 

わた、し……は……

 

 

 

 

 

 

 

本官、は……何も、果たせず…に……せん…せぇ…

 

 

 

 

 

 

 

冷たい地面に崩れ落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 





SNSで即フォローするレベルで最推しなカナタくんが話を付き合ってくれた上に後ろに下がっていろと気に掛けられるもさりげなく共闘が出来てしかも近くで正当化の色彩として神秘を解放した月雪カナタの姿を間近くで眺めることができ内心ウッキウキのマエストロくんかわいいですねぇ。このままだと木偶が焼けて炭になっちまうな!


じゃあな!
またな!
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