なんか俺のヘイロー砕けてね?   作:つヴぁるnet

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☆ 仲良し三人組 の 巻 ☆



第35話

 

 

 

 

 

 

そこは__

 

あまりにも 色抜け ているから__

 

 

 

 

 

 

 

 

「目に悪いな、この世界…」

 

「全て…恐怖に飲まれたんです。どこもかしこも色を無くし、灰色に染まってしまった…」

 

 

 

目を開ければそこはビルの上。

 

周りを見渡し、俺は驚く。

 

そこは彼女の言う通り灰色に染まった世界。

中務キリノがいた元の世界で間違いない。

 

道も、建物も、空も、堕ち切った。

 

まるで流星のロックマン2のクリア後に足を運べる滅び去った世界のようだ。

 

 

 

「キリノ、要塞都市とやらはどの方向だ?」

 

「ミレニアムの方角です」

 

 

中務キリノが手錠に嵌めて飛ばしたヘイローの元に瞬間移動する計画だったのだが、やや神秘に乱れがあったのか、外から到来する色彩として中務キリノの世界に飛ぶことは成功しても正確な位置までは飛べていなかった。

 

まあ、原因はわかっている。

 

 

 

「いつまで拗ねてんだ、行くぞ…マエストロ」

 

 

「成功体験を……成功体験の証に触れたと思い上がった……私のミスだ……私のミスでした……なんてことをしてしまった……ここまで自制心が足りない三流以下だとは……なんてことだ……」

 

 

「あの、ええと…」

 

 

本来マエストロは送る側であり、俺たちに着いてくる予定は無かったのだが、カナタの神秘に引っ張られ過ぎたせいかマエストロまで一緒に飛んで来てしまった。まあ着いてきてしまったことに関しては事故とする。一緒に戻れば良いだけの話だし。

 

ただマエストロがこうやってひどく落ち込んでいるのは、無事に送る側としての責任を果たせなかった事と、カナタの神秘に興奮するあまり本来ピンポイントで飛べるはずだった位置をマエストロの必要以上の操作によって誤差を起こさせてしまい、無事に到達できなかったから。

 

それは一人の芸術家として弁えることを忘れてしまい、また狂いなき成功を目指す芸術家として己の責任で余計な失敗を引き起こした結果はマエストロにとって心の傷になった。そのため自責にとらわれてブツブツと己の失敗に悔やみ落ち込んでいる。

 

うん、中々に面倒くさいな。

 

 

 

「月雪さん、もう一度飛べないんですか?」

 

「それなんだが………今は無理っぽいな」

 

「え?」

 

「俺自身に不具合はない。むしろ調子が良すぎるくらいだ。しかし飛ばしたヘイローの方に異常があってだな…と、言うか、飛ばしたヘイローが感じ取れない。それも一番大きなヘイローで神秘を捉えやすい筈なんだが。何かに遮断されたような感覚だ。方角はミレニアムだって薄っすら分かるんだけどな」

 

「……もしかして、エリドゥの方で色彩を漏らさないように隔離している可能性が…?」

 

「あり得るな。色彩を持ち込むとはいえ何が飛んでくるかわからないわけだ。届いたソレが漏れ出すことでの被害を恐れてる可能性もある訳だし、俺達以外のナニカがエリドゥまで届いた色彩を感知して余計な危険分子を呼び込んでしまうリスクもある。遮断されてるのはその可能性か」

 

「申し訳ありません……私の配慮不足でした」

 

「いや、気にするな。そもそも片道切符覚悟で持ち込む色彩だったんだ。まさか送った色彩を頼りにキリノが戻ってくるなんて普通なら考えられない事だ。ならこの状況は仕方ない。しかし君の世界に飛んで来れたことはこれで確か。なら想定していた展開よりは足りずとも移動自体は成功という形に収めておこう。だからマエストロもそろそろ顔上げろ。今からこの無法地帯を進むんだ。悔いてる場合じゃない」

 

「……了解した」

 

「マ、マエストロさん、そのっ!貴方のお陰で本官は確実に戻って来れたんです!だから本官は非常に感謝しています!本心です!」

 

「子供に慰められたままの大人が芸術家としてこの先馳せれるものか。この程度の失敗は乗り越えろ。俺もキリノもこの失敗に悔まずこの結末を成功に収めるために今から要塞都市エリドゥに向かう。無事に帰還を成し遂げられるならそれは成功体験なんだろう。だから後にこの月雪カナタの後ろをしっかりと見ておけマエストロ。足踏みなんてのは踏み絵だけで充分だ」

 

「……承知した。この失敗を糧にし、今は貴殿の後ろをついて行こう…世話をかける」

 

 

多少なり気持ちを持ち直したマエストロを後方に俺とキリノはハンドガンを構え、屋上から下に降りていく。

 

一応エレベーターが作動するか確認してみたが動かない。

 

試しに蛇口を捻ったが水道も他システムも止まっている。

 

ほぼ全てのインフラは要塞都市エリドゥ以外は止まったと認識するべきか。

 

 

 

「左、良しです」

 

「右も敵影無しだ。近辺の神秘も皆無」

 

 

20階近くあった階段を降りたあと一呼吸つきながら入り口を目指し、キリノは先頭を切って外を確認、俺は頭のヘイローをクルクルと回しながら俺たち以外の神秘を感知しようと索敵を開始する。

 

マエストロは体を軋ませないように注意を払いながら移動していた。

 

先ほど体幹をあまり揺るがさない歩き方は教えたところだ。

 

早速実践してくれている。

 

向上心ヨシ。

 

 

 

「しかし、どこもかしこも灰色だな……カイザーコーポレーションの建物も色落ちてやがる…」

 

「カイザーですか……本官にとってあまり良い記憶は無いですね…」

 

「俺もだよ。アイツらの不正極まった悪行には本当に手を焼く。なんならキリノに襲撃される数日前なんか子ウサギ駅下にあったサイロを発見しては禁止されている兵器を見つけたし。格納物全部まとめて爆破してやろうかと思ったわ」

 

「いくら正当性があったとしてもそれテロ活動になりませんか…?」

 

「流石にやらなかったよ。でもその後は監査入れて不正物は取っ払ってやったわ。そんなアイツらは不正物を取り締まりるため一時的に格納してると言い訳してたけど、改造したセンチュリオンを格納してたのはマジで苦しい言い分だわ。しかも雷帝が試作してたらしい8-8(アハト)までカイザーが保有してたとかで、しばらくゲヘナは大パニックだったぞ。カヨコもゲッソリだったし。ほんまカイザーは…」

 

「欲しいものは欲しいがままに搾取するのがカイザーのやり方ですから。しかし今回の件でカイザーコーポレーションはなし崩しに滅び去ってしまいました。力無き者に振りかざす力はあってもそれ以上の敵に対しては虚栄心すら意味をなさない。それに…」

 

「?」

 

「最大の抑止力であったシャーレの先生が倒れた状況を良いことにカイザーはアビドス自治区で活発に動き出したんです。元々アビドスでは何かを目的としていたみたいですが先生の介入に恐れる必要が無くなると自治区に散りばめた勢力を集めてアビドスに武力介入。しかしそれとは別で始まった今回の騒動によって先立っていたカイザーはアビドスで壊滅。そして核心を失ったカイザーの企業系列は軒並み崩壊しました。アレだけ弱者から吸い上げておいて彼らはあっけない終わり方だったんです…」

 

 

カイザーコーポレーション。

 

キヴォトスで様々な企業を展開する会社。

 

正直、悪名の高さで有名。

 

俺もあまりこの会社を語りたく無い。

 

鬱陶しいから。

 

 

てか過去に一回だけ、SRTはカイザーと争っている。

 

 

シラトリ区には一部埋立地がある。

 

その一部をカイザーが担っているのだが、それを意図的に破壊し、他の埋立地を連鎖的に破壊してカイザーが吸収しようと計画していた。

 

しかもその埋立地をカイザー側の権利にすると次はその埋立地から数十キロ離れた海域に許可も無く勝手に海上基地を作ろうと企てていた… てか埋立地に意識を向けさせて既に開発途中だった。

 

海上基地に関しては作り切ってしまえば連邦生徒会以外は何も言い出せないと目論んでの強行なんだろう。

 

これには流石に白鳥も好きにさせまいとSRTに出動命令。カイザーも最初はヴァルキューレ程度の雑兵がと思っていたらしいが、戦闘特化のSRT特殊部隊が来たことにカイザー側は焦りだしSRTに迎撃を開始。

 

そんな俺は仲間にヘイローを重ねてカナタの神秘が発動。何百回もやってきた水上戦の成果を発揮するが如くSRTは海の上を走り回り、それは文字通りの人海戦術として強襲上陸を完了させると1時間程度で制圧を終了した。にしてもカイザー弱すぎぃ!

 

SRT側としては海上で数日粘られた場合のパターンを考えてたのに、ただ正面から来ただけの強襲上陸から1時間程度で基地が落とされるって、あのさぁ…

 

そしていつも通りカイザーの上層部は知らんぷりして雲隠れ。尻尾切りの速さだけはキヴォトス顔負けだと呆れた。子供相手に恥ずかしくねえのかよ。

 

その後、海上基地はレッドウィンターによって解体された。

 

ただ解体作業の途中に「労働者に権利を!更なる保証を!」と配給のプリンを強請って叫ぶ中等部集団がいた。仕事中にデモ活動も兼ねるとかやっぱレッドウィンターってなんか違うんだと再確認する。でも仕事速度は段違いだった。つまりプロフェッショナルってこと。やっぱアイツら色々おかしいわ。

 

ちなみにプリンはトリニティ産の美味いやつを配給してみた。めっちゃ喜んでた。

 

 

 

「しかし本当に敵1人いないな?神秘一つ捉えられんぞ…」

 

「恐怖に染まり切ったキヴォトス人は灰色に色落ちると異形に姿を変え、恐怖から逃げ行く市民達を襲いながら内側にある神秘を燃料にゆっくりと溶け落ち…最後は消えます。ヘイローを持つ生徒はヘイローを少しずつ砕きながらその場で苦しみ、そしてヘイローが砕け散ってしまうと反転してしまい【堕落天使】として新たに姿を変える。こうなると…もう、どうしようもなくなります。ヘイローが砕け散った死人として彷徨うんです。恐怖から逃げるように。もしくは恐怖を追いかけるようにキヴォトスを徘徊する」

 

「……じゃあたまたま、この付近には居ないということか?普通のキヴォトス人は溶け落ちてしまうにしても、キヴォトスに住まう生徒はとんでもない数で多い。普通ならそこらで見かけてもおかしく無いほどの密度のはずだが…」

 

「いえ、居ないのにも理由があります」

 

「理由?」

 

「はい。これは()()()()()()()規則性があるんです」

 

「…と、言うと?」

 

「彼女達は…」

 

 

 

 

キーン、コーン。

カーン、コーン。

 

 

 

 

「!?」

 

 

俺は思わずトリガーに力を入れてしまう。

 

 

 

「学園の…呼び鈴??」

 

「はい。学園によってはまだ予備電力で動くところもあります。そのため時刻を知らせる呼び鈴が鳴り響く。賑わいを無くしたキヴォトスだからこそよく聞こえるんです」

 

「呼び鈴……なぁ、それって、もしかしてだけど」

 

「はい。堕落天使となった彼女達はまだ己が生徒であることを覚えているのか昼間の時間帯は学園に向かうんです。それは不良やスケバンも同じです。呼び鈴がなると学園に足を運ぶ。たとえ堕落天使として死に裏返ようとも生徒であったことを証明するように…」

 

 

 

いや漫画の『がっこうぐらし』かよ。

てかもう状況がまさにそれじゃねぇか。

 

 

 

「ちょっと待て。そうなるとこの音は…」

 

「太陽の位置からすればおそらく四時限目の呼鈴ですね。学園によっては四時限で放課後になりますから…」

 

「……急いだ方が良いな」

 

「はいっ」

 

 

俺は適当にヘイローを一つ掴むと真上に飛ばして瞬間移動し、そのままビルの壁に張り付いてミレニアムの方角を見渡す。

 

堕落天使と称される生徒や、無差別に襲いかかってしまうだろうオートマタや防衛機などを上から索敵し、また瓦礫などで封鎖されてない道を見極めながらペンライトをキリノにチカチカと放つことで進むようにサインを送る。

 

そして俺は再び頭のヘイローを飛ばしては、ビルからビルに移り、時には建物の壁に引き下げられた看板などに着地し、上から索敵とナビゲートを続け、キリノを先頭にマエストロをミレニアムの方まで誘導する。

 

 

「すごい……アレがSRTの力…」

 

「もしくはカナタだからこそ可能とする御技だろう」

 

「!……はい、そうですね。彼が存在しているからこそ私はこの場所に帰って来れた。間違いなくカナタさんだからこそ…」

 

………堕落天使…か…

 

 

 

急がせ過ぎず、しかしペースは落とさずにシラトリ区から外れ、とある場所に到着した。

 

 

 

「話をすれば、子ウサギ駅か」

 

「はい。ここから地下を使ってミレニアムまで向かいます。この場所なら堕落天使に出会わず進めます。ただし…」

 

「オートマタや防衛システムは彷徨ってる可能性があるんだろ?」

 

「はい。その時は……押し通ります」

 

「キヴォトスらしくてわかりやすいな」

 

「ええ、行きましよう」

 

 

子ウサギ駅の管理室にある懐中電灯を引っ張り出し、電車が通らなくなった路線に土足で踏み入れる。普通ならハイランダー駅員がご立腹な所業であるが、それを咎める駅員はこのキヴォトスに一人もいない。居たとしても要塞都市に逃げてるか、堕落天使とな___

 

 

 

「いや待て、それこそハイランダー鉄道学園の生徒はこの路線とかにいるんじゃ無いのか?」

 

「この路線には居ませんよ。それは生き残っているSRT隊員が既に調査済みです。なのでこのルートは大丈夫です」

 

「なるほど。SRTが調査したというなら間違いない。信用しよう」

 

「はい。とても優秀な兵士たちです」

 

 

 

懐中電灯の電源を入れて進む。

 

さて、長い道のりになりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すぅ………すぅ……

 

 

 

あれから数時間ほど進んだか。

 

 

始発点となる子ウサギ駅から陽が落ちるまで進み、現在はシラトリ区内から外れた全く知らない駅に到着した。つまり田舎駅。

 

そのため区内に比べてココにはあまり敵もおらず、堕落天使も徘徊していない。

 

無論、途中オートマタなどとの戦闘が数回あったが「本官にお任せを」と銃口から放たれるキリノの必中攻撃が全て沈黙させた。なので俺はマエストロに攻撃が行かないように気にかけるだけで済んだ。やっぱりチートやろあの能力。

 

よくキリノに勝てたよな、俺。

マエストロいなかったらどうなってたか。

 

 

 

「食べるか?ゼリー」

 

「本来は食を必要としない身…気持ちだけ頂こう」

 

 

元の世界から数食分だけ持ち込んだ10秒チャージの有名なゼリーだ。一応この田舎駅の売店にも放置されたままの保存食はあったが、それすらも灰色に染まっており、手をつけるのは躊躇った。

 

なので持ち込んだ携帯食料で腹を満たす。

 

ちなみにキリノは既に頂いた。

 

そして先に眠りついた。

 

そんですぐに寝落ちた。

 

相当疲れていたらしい。

 

 

 

「失礼…」

 

 

するとその少女を労わるように、フワリと一枚の布が覆い被る。

 

それはマエストロによるもの。

 

 

 

「紳士だな」

 

「このような私すらも守るべき市民の一人として征く道の安全を確保しようと…子供が前進した。ならばこの程度の振る舞いでその尽力に報いれるなら紳士紛いすらも喜んで投じよう」

 

「キリノは恩を返してほしいとか打算で動くような生徒じゃない。ただ一途に出来る限りを全うするだけ。彼女は本物の警察官だよ」

 

「……だとしたら、残酷を強いるな…」

 

 

段ボールから引っ張り出してきたのか、マエストロは薄めの掛け布団を丁寧にキリノの寝姿に被せ、夜を凍えないようにする。人は眠ると体温が下がるからな。風邪を引きやすい状態だ。

 

 

 

「なぁ、これは自然に起こった終末なのか?」

 

「…何を問いたい?」

 

「SRTで保護中のキリノは言ってたよ。恐怖に呑まれようとする世界はゲマトリアの者が始めたんだって。名は聞けなかったが…でもその者がこの日常を破壊し、そしてこの世界をオモチャにした。コレって【悪意】だよな?」

 

「この結末が手掛けたモノとして扱われるならばそれは【作賓】になる。そこに備わる感情と根源はその者のみの中にある答えであるが、しかし貴殿がそう感じ取るのならそれは観測者として吐き出される答えなのだろう」

 

「つまりベアトリーチェ(クソヤロウ)のパターンか。なるほどね。理解した」

 

「……貴殿は()()を役割とするのか?」

 

「この世界にまで正当化を促すのなら驕り高ぶり過ぎだろ。やってること二次小説かよ。あくまで俺は色彩として願われた形に健在として佇むだけで、それは前任者(カナタ)にそうしてきた追憶を基に、キリノにも応えただけ。俺はキリノを要塞都市エリドゥに送り届けたらそれで終わりとする。それにこの世界は【救世主(しゅじんこう)】が存在するらしいんだ。なら子供に紛いた程度のセカンドヒロイックは不要だよ」

 

「……私は芸術家だ。こうしているのも普通なら御法度だ。作賓よりも目立とうと役者に乗り出した芸術家など三流も良いところだ」

 

「なら今はその三流を楽しめば?中務キリノと俺を加えた旅路。SNSを眺めるだけに終えない承認欲求は巡りに限りある経験だぞ。ほら、マエストロは何かしらのインスピレーションが欲しいとか言ってたじゃん?不謹慎だけどこうなったストーリーテラーを間近で眺められる唯一の観客だ。ならば三流芸術家も悪くないはず」

 

「大人として弁えを忘れた時、崇高に至れないと私は考える。可能ならスポットライトは生み出した芸術のみを照らして欲しい。でなければ私は己を芸術家(マエストロ)と語らん」

 

「わかるよ。俺も月雪カナタを語っている二度目の魂。あらゆる解釈を生みながらもキヴォトスで健在に生きる。それすらも月雪カナタと正当化させるためにな…」

 

「……私は星を眺め、眠りを必要としない。貴殿はしばし休むと良い」

 

「ああ。ならお言葉に甘えて眠るよ」

 

 

俺はハンドガンをいつでも腰から引き出せるようにポジションを整えると床に伸ばした段ボールに横たわり、目を閉じる。

 

 

この部屋は田舎駅の駅員室。

 

窓はガムテープを張り巡らし、外から見えないように遮断してある。

 

それでもほんのわずかに差し込む月明かり。

 

灰色の光だ。

 

けれど星々は白色としてキヴォトスに浮く。

 

 

 

 

 

 

それでも、貴殿がココにいる理由はそうであるんだろう……ならば、観測者を観測する私は…

 

 

 

ギギギィと軋ませながらほんのわずかに見える灰色の夜空を眺める芸術家。

 

俺とキリノの寝息を環境音に夜はしばし静寂を歓迎していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キリノっ!キリノッッ!!本当にキリノなんだねっ!!??本当に!本当にっ!!」

 

「和泉元さんっ、あはははっ、苦しいですよ、えへへっ…」

 

「ぅぅ、帰ってきた…!帰って来てくれたっ!自己犠牲を正当化せずに済んだ…っ!あああっ…部長っ、部長っッッ…これは…これは…奇跡なんですか…っ??数値に表せない奇跡のたもとなんですか?ああっ…でもッッ…よかった…本当に…」

 

「はい、奇跡だと思います。本官はこうして戻って来れたことは、あまねく奇跡の一つだって思います」

 

 

キリノよりも二回りほど大きな生徒が締めるように抱きしめ、あり得るはずが無かった彼女の帰還と再会を喜んでいる。あかん。涙出そう。

 

 

 

「ふむ…なるほど、そちらの世界のマエストロと言うことになるみたいですね。クックック、ここはようこそと言うべきでしょうか」

 

「普通なら招かれざる観客だ。そのため無き者として扱われたいところだが、一途な子供の使命によって今型取られた。情けないことだがコレも私が未熟故に招いた結末だろう」

 

「クックック、なるほど。確かに彼女程の混じり気の無い健気さが根源となるならそこに芸術家も型なしということですか。まあだからこそ正しく裏返るに充分な器だったと言う…」

 

「黒服も認識するか。裏側に染み渡らない一枚絵がどれほどに価値あるかを…」

 

「全てに染まり切れる暁のホルスとは真逆なのですよ彼女は。いやはや。まさかこのような神秘の解釈もあるとは思いませんでした。だからこそ生徒の可能性を信じ続ける先生の堅さに参るものですね…」

 

 

別世界の人物とはいえ、それでも言葉を交わせるのは同じ大人だからか。

 

それにしても黒服、また奇妙な形を。

 

顔に稲妻っぽいのも走ってるし。

………ちょっとカッコいいな。

 

 

「しかし、それ以上に!ああ!個人的非常に残念なこと極まりない!まさか【色彩】が人の子として健在に練り歩いているとは!ああ!このような状況でなければ是非貴方で研究し!追求し!神秘の可能性を暴き解きたい限りだった!クックック!クックック!!!」

 

「うわっ、コイツやべーな」

 

「クックック…失礼。しかし許して欲しい。まさかこのような成功体験が子供のまま健在に可能とは思いもしない。そしてそのヘイローはあまりにも規格外が過ぎる。それすらも色彩と解釈すればそれ相応に染まり切れるなど、いやはや貴方は本当に何者だ?あまりにも度が過ぎたご都合主義者の他ならない。それとも私の常識すら上回る神秘か?ああしかしそんなのはどちらでも構わない。得るべきはここに色彩が訪れたと言うこと!クックック!」

 

「ええと……和泉元さん?」

 

「発作に近いから放っておいて良いよ」

 

「おけまる」

 

 

数刻前、田舎駅を出てそのまま要塞都市エリドゥを目指し続け、再び地下鉄に潜った。

 

何度かオートマタとの戦闘はあったものの、キリノのチートエイムのお陰で容易く突破し、無事に到着するとキリノが要塞都市エリドゥのゲートにパスワードを入力する。

 

すると外部から入力されたパスワードに管理室は驚き、確認するためゲート上にある監視カメラを作動させると、片道切符故に二度と出会えるはずが無いと思われていた中務キリノの姿を捉えて……

 

 

 

そして、今ここである。

 

とりあえず黒服がうるさい。

 

 

 

「クックック、非常に喜ばしい再会と邂逅になりますが、一刻も早くクラフトチェンバーの修復作業を勤しみ、先生を目覚めさせるための鍵にしなければなりませんね」

 

「あー、それなんだけど。俺のヘイローはアレで良いのか?一応一番大きなサイズにして送ったけど微調整が必要なら取り替えるぞ?」

 

「クックック、それは助かります。オーバースペックほど恐ろしいモノはありませんから」

 

「そうだね。それでクラフトチェンバーが壊れちゃ困るもんね。うん。だから協力してくれると助かるよ、月雪カナタくん」

 

「カナタで良いぞ、和泉元さん」

 

「私もエイミで良いよ。あっ、コイツは黒服で良いから」

 

「クックック、少しの間ですがよろしくお願いしますね、月雪さん」

 

 

まだ少しだけ目元が赤い和泉元エイミと、まだどこか興奮気味な黒服。

 

めちゃくちゃ個性的なこの二人が要塞都市エリドゥの知能(?)担当らしい。

 

それにしても、和泉元エイミさん?

その格好……え?マジで??

乳房にジッパーって……えええ????

コレがミレニアムぅ???すげーな。

 

 

 

あのっ、月雪さん!

 

 

「?」

 

 

 

ブルーアーカイブな格好にキャパシティーが喰われそうになってたところにキリノが横から話しかけてくる。俺はエイミと黒服の後ろを追いかける前にキリノに振り向いた。するとキリノは数歩小さく後ろに下がり。

 

 

 

 

「ありがとう…ございます!!!」

 

「!」

 

 

 

頭をガバッと下げて礼を言う。

 

 

 

「ほ、本官はっ!っ、月雪さんのお陰でこうして戻ってくることができました!」

 

 

 

管理室で声が響き渡る。

 

 

 

「焦燥感に駆られたまま本官は貴方の大事な証を奪い取ろうと襲撃した!なのに貴方は永久までに助けてくれました!しかも大事なヘイローまで譲ってくれました!そしてこの世界まで送ってくれました!貴方の力があったからこそ本官はまたっ…!本官はっ、またっ…!ほん、かんはっ、またっっ!はぁ…はぁ…せ、せ!先生に会えますっ…会えるんです……もう会えないと思ってたのに……もう、にどと、ないと、おもっていて…かくご、決めてたのに、でも、心細くて、くるしくて、さみしくて、ほんどうは、せんせ、いどぉ、はなれ、だぐなぐでぇ…怖くでぇ、こわかったぁ…つらかったぁ…ぅぅ、つきゆぎざぁん…わたし、は…わたしは…!!!!」

 

 

 

 

 

うああああああああああん!!!!!

 

 

 

 

 

膝から崩れ落ち、大粒の涙を溢す。

 

 

全てが解かれたことで。

 

 

全ての覚悟が報われたことで。

 

 

今こうして戻るべき場所に戻れた。

 

 

叶わない結末が、叶えられた。

 

 

だから少女は忘れて、子供に戻る。

 

 

なんてことない、生徒の一人として。

 

 

今はただひたすらに、泣き枯れようと。

 

 

押し込め続けていた、灰色の感情は。

 

 

心優しい中務キリノを思い出させたから。

 

 

 

 

「キリノ、ああ…よく頑張った…」

 

「うあああああああああん!!!」

 

 

 

 

目の前で泣いている子供がいるんだ。

 

俺はその場に腰を下ろし、両膝をつき。

 

目の前の少女の涙を拭い、頭を撫でる。

 

 

 

 

そして___涙を共にする。

 

いつぞやの『(かれ)』の時のように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なぜ__貴方は私が見えるのですか?

 

白鳥??………いや、違う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

君は_____ 連邦ちゃん ???

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金色に輝き、そして靡く髪。

 

この世界達はどうやら。

 

あまねく限りに【解】があるらしい。

 

 

 

 

 

 

つづく

 






この三人めっちゃええなぁ…(満足)


てかバランスええんよねこのトリオ。カナタはSRT最強格の強さを持つスパダリな色彩だし、キリノはチートエイムを秘めた真面目で健気は生徒だし、マエストロは専門的な知識を備えた大人の紳士だし、この3人は戦闘面でもそれ以外でも隙がない。恐らく世界が滅びを迎えようともこの3人なら死ぬその時まで抗い続けそう。





まあでも先に死ぬのはマエストロだと思う。

やはりキヴォトスで戦えない能力って致命的で、実際にエデン条約編のサオリの弾丸や、地下生活者によるビル爆破で純粋な肉体故に大怪我負うし、そもそもシッテムの箱があってなんとか取り留めてたからマエストロのように壊れやすい木偶の体だと何かのミスで簡単に砕けてしまいそう。でもゲマトリアの中では情に強いタイプだし、仮にそうじゃなくてもカナタとの歩みはマエストロにとって色とりどりなお菓子袋から選ばせてくれる貴重な存在かつ理解者だったから「貴殿のストーリーテラーを私はもっと見たい…」と悔やみながら朽ちて行き「だからまた…会おう…この彼方で…先で…」と最後に彼の名前を文字って反応を失い、それで涙を流さないカナタの代わりに涙を流してくれるキリノを横に、カナタは神秘を酷使し過ぎたせいで錆切ったヘイローを朽ちたマエストロの木偶手に握らせて「彼方出会えると願うなら俺の証に正当化を施せ…マエストロ」と残し、その後はマエストロ抜きの果たしない旅路が続く。そしてとうとう迎える箱舟の終わりは神秘の終わりを告げるように残された生徒達を天使の昇天と迎えることになるんだけど、カナタとキリノは反転したイレギュラーなので中々死なないし、いつしか散らばった神秘を吸収するだけで腹を満たせる状態になったりと人離れが加速する。でもキリノはどんどん精神的にも限界を迎えていき、今は亡き先生の幻覚を見るようになる。カナタはまだ耐えれそうだけど、一人朽ちていくキリノを見ることで前任者を思い出す。それで子供が一人寂しく無いようにするべきと結論つけた先駆者はこの子供と共に朽ちることを選び、キリノにヘイローを重ねると最後は身を寄せると、二人の終わりを理解した箱舟は天使の昇天を受け入れさせて…ここで共に二人の生命反応が止まった。





なんだけど、彼方先に願った正当化の色彩が生徒の願いとして働いたのかなんとカナタくんはニ週目が開始。しかもヘイローを握らせたマエストロと、重ねられたキリノまでもが記憶持ちの二周目を開始。しかもまた始まりが中等部じゃないか!それぞれ示し合わせたようにとある場所で向かい、そして滅びを迎えるキヴォトスを知った者同士で集う。そこにはまだ中等部に差し掛かる寸前のカナタ、しかしヘイローは琥珀色かつ砕け散っていない。そして初等部の中務キリノ、チートエイムはそのまま反転せずに色付きとして健在にあり。そしてマエストロは木偶の体…ではなく人間の体で姿を現し、着こなしたタキシードはそのままブラックハットと錆色の石を嵌めた杖をコツコツと鳴らす。この状況に納得するカナタ、再会にボロボロに泣き出すキリノ、そんな二人にコレまでの礼をと頭を下げるマエストロ。そうして再び集えたこの3人は終末を迎えようとするキヴォトスの結末に対してどのように立ち向かうかを考え、各々が答えを出しながら新たな旅路を生み出さんとするこのストーリーテラーはもう月雪カナタだけの物ではない。これは3人のあまねく奇跡の始発点。そんなブルーアーカイブ・ゼロツーとかきうタイトルの作品があるとか無いとかするんだけどまあ間違いなく無いよな。へけっ!



じゃあな!
またな!
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