なんか俺のヘイロー砕けてね?   作:つヴぁるnet

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__君は、生き延びることが出来るか??




第38話

 

 

 

では、改めて説明します。

 

この世界は【権利】の問題です。

 

子供の喧嘩で解決できる筈だった火薬と弾丸だけで【エピローグ】を崩す事は叶いません。

 

必要なのは物語の【曲解】です。

 

それはあの日に行った【宣言】と同じ。

 

成功体験者が抱える【都合】を押し付けることによってエピローグが変わる世界。

 

今はそのような【設定】が仕組まれています。

 

ではコレをどのようにして【攻略】するか?

 

 

簡単に言えば勝利者となった地下生活者を舞台から引き摺り下ろし、ETOを確立させた時のように先生がネクストタイトルの【オープニング】を宣言するのです。

 

 

 

生徒の明日を望む__結末を。

 

生徒が明日を望める__権利を。

 

生徒に明日へ望ませる__渇望を。

 

 

それは灰色に染まらない透明に彩られる物語がため、純粋な心で動かんとする【感情の根源】にして始まりの大地。

 

そこは救い主を否定せんとするベツレヘムの星の裏側に位置する渇ききった失楽園。

 

子供の砂遊び場だった約束の追憶。

 

しかし、それは大人になりきれない大人が余計な強欲を混ぜたことで子供の遊び場は油に濁った泥砂に変えられてしまった。

 

だからこそ、ベツレヘムの星に正しく導かれた救い主はその砂遊び場が彩り豊かに(はぐくみ)を約束させてくれる純粋な子供の楽園であることを告げる。

 

そうして元凶の元凶となる外敵を打ち崩す事で灰色の条件を撤回させ、蘇りを果たす。

 

 

ああ、シャーレの先生___

 

貴方はこの世界にネクストタイトルを受け入れる覚悟はありますか?

 

 

クックック、そうですね。

貴方ならそう言うでしょう。

 

ええ、愚問も愚問。

いつだって私は貴方を見てきた。

 

もちろん答えなど私もわかっています。

 

あの時と変わらない__小鳥遊ホシノさんを取り返すために先生…貴方は言った。

 

笑う子供と共に笑うこと、悲しむ子供と共に悲しむこと、悩める子供と共に悩むこと、喜ぶ子供と共に喜ぶこと、貴方の責任はそう断言した。

 

絶対無条件の愛情。

 

そのために痛みすら乗り越え、背を示す。

 

ならば、限りある意識で果たそうか。

 

主人公のために道は用意されたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コレが、アビドス自治区か…」

 

「元の世界でも来たことは無いんですか?」

 

「行ったことがないな。任務でもない」

 

「そうですか…」

 

 

 

髪の色も、眼の色も、外套も、頭に浮かび上がるヘイローも、何もかもが灰色に染まった中務キリノまたはキリノテラーの質問に俺は答えながらヘリコプターの助手席から地上を見下ろす。

 

奥に進むごとに砂塗れな街々がそこら中に広がっており、この世界が灰色に染まる前から人が住むには厳しすぎる環境であることがよくわかる。一体何が起きてこのような砂漠化が??

 

SRT特殊学園で資料を漁り、アビドス自治区を調べたことがある。

 

調べる限りだと100年ほど前はトリニティやゲヘナよりも大きな学園を持ち、その国力はキヴォトスで一二を争うほど。

 

小国なんか秒で畳めるくらいには武力もあったらしいが、謎に広がる砂漠化の問題でアビドス自治区は衰退し、今となっては砂に埋もれてしまった忘れられた過去の栄光だ。

 

 

 

そして___そんな自治区の奥にある砂漠地帯からは、とてつもない神秘を感じ取れる。

 

 

 

これが黒服の言っていた『対』をなす存在。

 

創造に対し、破滅を意味する神。

 

 

 

セトの憤怒……か」

 

 

「BULLET 1、なんか言ったか?」

 

 

「なんでもない、FOX3。ああでも、あそこに見えるビルより奥に行かないほうがいい。これ以上は分厚すぎる。君たちに重ねているヘイローもこの恐怖に対して何処まで効き目があるか正直分からん」

 

 

「みたい…だな。これ以上は危険だと毛が逆立って仕方ない…」

 

 

FOX3のコールサインを持つ彼女(クルミ)に指示を出すと大型輸送ヘリは前進を遅めて、その場で静止する。それから助手席に座っていた俺はシートベルトを解除しながら後方にいるシャーレの先生にこの辺で着陸した方が良い事を伝え、そのまま俺はヘリコプターの扉を半分だけ開けて地上を確認する。

 

 

 

「しかし嫌な空気だ。この世にない歪だな…」

 

 

元々反転して形成された俺やテラー化したキリノは特に問題ないが、それでも頬にザラつく異質な圧迫感に顔を顰める。

 

 

奥に進むほど【恐怖】が体を蝕もうとする。

 

まるで天使の羽を枯らす、病の波。

 

それは地下生活者が「まず最初に」と筆を突いたことが始まりであり、鋭利な筆によって世界に『設定(あな)』を開けたことで外から『理解されないナニカ』として扱われる【恐怖(ウイルス)】がキヴォトスに流れ込んでいる。

 

簡単に言えばこの世界にとって有毒なガス。

 

それがアビドス自治区の砂漠地帯を入り口としてキヴォトス全土に広まっている。

 

 

無論、その有毒ガスに対してワクチンも対処法もこの世界に無く、その毒を飲まないようできるだけアビドス自治区から遠のくだけ。

 

それでもキヴォトスはこのパンデミックによって半年で9割の人口が消失している。

 

まさに滅び征く最中の世界だ、ココは。

 

 

 

「皆?異常がある場合はすぐに言うんだよ?カナタに重ねられたヘイローが私達の抗体になっているけど、でも限度はある。私たちが持っている神秘は周りの生徒に比べて少ないけど、でも反転する確率がゼロになった訳じゃない。そこは皆も再認識するように」

 

 

作戦前にエイミは再警告する。

 

彼女の言う通り、生徒の秘めている神秘の量によって侵食率が変わり、そして体に内蔵している神秘量が多い生徒ほど侵食されやすい傾向にある。

 

てか、実際に起きている。

 

例えば、トリニティやゲヘナに在校していた最強クラスと恐れられていた生徒達。

 

その生徒達も軒並み堕落天使と化した。

 

そうやって堕落天使と化した彼女達は今も何処かで彷徨いながら学園の呼鈴に従っては意思関係無く学園に足を運んでいるか、既に身体が崩れてこの世から消えてしまっているか、どちらかだ。

 

 

そして…

 

 

 

「着陸待て、下に堕落天使がいる」

 

「!?」

 

 

 

 

話をすればなんとやら。

 

こんな場所に一人だ。

 

 

 

「ガァ、ァァ、ァァ…」

 

 

 

 

徘徊する堕落天使が、離陸場所に一人。

 

 

 

 

「黒い…羽…」

 

「っ……あの方…は…」

 

 

俺の呟きに医療班として本作戦に参加しているトリニティの生徒、鷲見セリナはヘリコプターの上から同じ学園の生徒だった堕落天使を視認する。そして悲しそうに顔を歪め、隣にいた先生もその姿を見て呟く。

 

 

 

「彼女、だね…」

 

「せん、せい…」

 

 

 

先生はセリナの肩に手を置いて呟く。

 

もう、どう足掻いても助からない生徒。

 

 

「…先に降りるぞ」

 

「え?」

 

 

 

俺はヘリコプターから半分だけ身を乗り出しながら、神秘を手のひらで乱回転させ、真下にいる堕落天使と狙いを定めると、飛び降りた。

 

 

 

 

螺 旋 丸 !

 

「ガァ … ⁇ ァァァァァ!!!!」

 

 

 

 

月雪カナタ特有の色彩の属性によって恐怖をこの世から浮かせ、そして一気に神秘の爆発で堕落天使を消し飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ…せんせい…待って…いた…っスよ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

 

 

初めてではないさ。

 

誰かを葬り殺したことなんて。

 

バシリカで背中を貫いて、消し飛ばした。

 

あの時の感覚は今でも忘れない。

 

 

 

でも、けれど…

 

 

 

「数多に輝かしい未来があったはずの子供の命を…よくも、この手で始末させてくれたな…」

 

 

 

堕落天使はもう助からない。

 

死んだ者が、恐怖になっているだけ。

 

テラー化した中務キリノとは違う。

 

アレは__天使を否定した、なれ果てだ。

 

 

 

 

 

「本当に、どうにもならない、のか…」

 

「先生…」

 

「キリノ……僕は己の無力さを恨むよ…」

 

「…」

 

 

着陸したヘリコプターから松葉杖を一本だけ体の支えにしながらアビドスの街中に足をつけるシャーレの先生。

 

その表情はほんの僅か優れない。

 

だが…

 

 

 

「カナタくん、ありがとうね」

 

「ああ…」

 

 

怒りと悲しみを瞳の奥に押さえ込んだ先生は俺に感謝を告げながらシッテムの箱を取り出すとアビドス自治区を見渡す。

 

 

先生の目覚めから、数日。

 

彼はまだ本調子ではない。

 

 

それでも松葉杖一本で外に出られるのはこれまで眠りついていた先生の肉体を揉んだり、ストレッチさせたりしてきた医療部の頑張りがあったから。先生が目覚めることを信じていたから今こうして松葉杖一本で済んでいる。

 

 

だから折れることは許されない。

 

松葉杖が折れても、役割は折れない。

 

 

それがシャーレの先生の責任だから。

 

 

 

『カナタさん…』

 

「カリナ。コレが一度目のために用意された二度目だろうとか関係ない。あまねく限りにある奇跡かつ軌跡は紛れもなく子供のため。だから取り戻すぞ。今残っている生徒や国民のためにもこんな独りよがりは終わらせるんだ」

 

『っ、はい…!』

 

「もちろんだよ___さぁ、始めようか」

 

 

 

先生は画面を何回か、タップする。

 

操作が終わると周りの生徒を見渡した。

 

 

 

「「「!!」」」

「「「!!」」」

 

 

 

そこにはシャーレの指揮下で戦闘経験がある生徒が集っている。

 

 

その数は……10名に満たない。

 

それほどに『当番』の生徒は消えた。

 

 

多くがキヴォトスから消え去った。

 

 

でも……

 

まだ、ここに残っている。

 

 

トリニティの医療班が、ミレニアムの特異調査部が、便利屋の社長とその幼馴染が、SRT最後の一人が、そして反転しても尚先生のために使命を尽くした元ヴァルキューレ警察官が、こうして7人の生徒が先生のために残っている。

 

 

 

「皆!どうか僕に力を貸して欲しい!このふざけたエピローグを終わらすためにも!僕達は証明しなければならない!僕達の明日を!!」

 

「「「はい!」」」

「「「先生!」」」

 

 

 

 

灰色に染まった世界の真ん中であろうと堕ち切ることはない。

 

それを証明するが如く、溢れんばかりの明日を見ようと、先生と生徒が団結する。

 

 

ああ、これで。

 

希望の星となるシャーレの復活が____

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バチ…

 

 

 

 

 

 

「?」

 

 

 

 

 

 

 

刹那___ナニカが降り注いだ。

 

 

 

 

 

「ぇ?」

 

 

 

 

 

 

 

ドゴーン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グチャッ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先生の体が吹き飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如、光と共に強い衝撃を浴びた。

 

耳を劈くような音も同時に。

 

 

けれど感覚はある。

 

なんとか起き上がれる。

 

 

___ぼくは、どう、なって??

 

 

 

 

 

せん、せいっ……ごほっ!ごほっ…」

 

 

「え?」

 

 

 

目を開ける。

 

そこには、砕け散った_____SRTのシールドを構えていた一人の生徒。

 

胴体を赤く貫かれる。

 

そして吐血しながら、地に伏せてしまう。

 

 

 

 

「クル…ミ??」

 

 

「せん、せい……ぶじ…かし…ら?」

 

 

「クルミ…!!?」

 

 

「あ、はは……あんしん、してよ…わたしはSRTのポイントマン、だから……まわり…よりは、丈夫…だから…さ……ごほっ!!」

 

 

「クルミィィ!!??」

 

 

 

 

 

 

 

_

__

___

 

 

 

『なんと!なんとなんと!なんとぉ!これはなんたることだ!まさか!まさか!セトの憤怒自ら赴いてしまうとは!?一体なんの変革を得てこうなる!?もしやセトの憤怒にとってアレは対なす存在としての扱いか?暁のホルスを殺しても尚収まりが効かない理由がある??ヒヒ、ヒヒ、なるほど、です。どうやらまだこの解に対して延長を望めるとはエンドコンテンツも捨てきれないという示しであるか。ヒヒヒッ!良いです!かなり良いキャンペーンです!イレギュラーな追加コンテンツに対して焦りましたがセトの憤怒は望んでいる!ならば小生はその先にある隠しエンドを観測してやります!ヒヒヒヒッ!ああ!コレも勝利者の報酬ですか!!』

 

 

地下生活者は歓喜する。

 

まだこの世界で遊べることを。

 

 

『しかし先生。いつの間に復活を?目覚めの気配も無かった筈だが……いえ、正直そんなのはどうでも良いこと。何故なら貴方は既に敗北者なんです。だからコレで本当に最後です。貴方は奇跡的にも【当番の生徒(プレイアブル)】として選ばれていない自立性を持ったNPCユニットに助けられましたが、しかし奇跡はそう何度も起こりません。そもそも奇跡などない。全ては苦しみに悩ませる弱さが原因。死の概念から逃れられない生き物は永遠とその痛みに引き摺り回される。だからベアトリーチェの真実は比較的正しかったのです。だから無意味です。暁のホルスは対なす神に殺され、セトの憤怒の到来が全てを意味した。結局は小生のたどり着いたエピローグを変えることなど叶わない」

 

 

誰にも触れることが叶わない世界で地下生活者は一人笑う。たどり着いた真実が現実に起こっているからと。それはもう否定することも叶わないと。

 

 

 

『ああ。先生。実のところ小生は既に貴方という敗北者に興味はありませんでした。しかし悶え苦しみながらも手のひらから零さんとする一滴の奇跡にセトの憤怒は対として認識した。なら小生も観測してあげましょう。それはリトライ画面を選択できた貴方に対する敬意です。ですがシャーレの先生。残りカスをかき集めた非環境(雑魚キャラ)な生徒を操作するだけの手札しかない貴方がセトの憤怒に何が出来ますか?それともそこにある追加コンテンツは貴方の力にならんとする到来ですか?ならばよろしい!受けてやりますとも!小生はこの追加キャンペーンを楽しんでやります。だがそれ以上の変革は求められないことを再度理解すると良い。この世界は苦しみの隣人となる死が解です。暁のホルスは理解されない苦しみの果てで死んだ。そして次は貴方と貴方達が追憶にならない死を意味知る番です』

 

 

 

 

全てはどのみち滅び征くのみ!!

 

小生の勝利条件は満たされました!!

 

あとはどのようにして朽ちるか!!

 

苦しみと同類の死を持って編み出す、解!!

 

ネクストタイトルなんて駄作は不要!!

 

この素晴らしき隠しエンディングを添えながら灰染まりなスタッフロールを!!

 

そして全ては無意味と化す!

 

何故なら死ぬことが生の終着点だから!!

 

イッヒヒヒッッ!!!

 

ヒヒヒヒッ!!!

 

 

 

 

 

セトの憤怒よ。

 

全ての意味に崩壊を。

 

全て、砕け散らせて、さしあげよ。

 

 

 

 

___

__

_

 

 

 

 

 

 

 

 

一人の生徒は倒れ。

 

一人の先生は震え。

 

一人の大人(こども)は喜ぶ。

 

そして合図もなく、事は進む。

 

 

 

 

 

「ねぇ…なに、アレ?」

 

 

 

 

一人の生徒が砂漠地帯に指を刺す。

 

そこには…

 

 

 

 

 

 

「繝繧コ縺縺溘ーーー!!!!」

 

 

 

「「「 !?!? 」」」

 

 

 

青い雷鳴が砂漠を抉る。

 

まるで【憤怒】のままに轟く。

 

 

その名は__セトの憤怒

 

存在してはならない、世界の破壊者。

 

 

それが直接、やってきた。

 

敗北者ともどもを、消し飛ばすために。

 

 

 

「うそ、何故…??何故っ、この街に奴が直接やって来て!??」

 

「え??街中に引き寄せる予定だった奴が直接この場所まで来たってこと!?」

 

「ラスボスが待ち構えずに直接くるなんてシミュレーションゲームにもならないって笑えないよ!」

 

 

「げっほっ……げほっ…!」

 

「動かないでください!傷が深すぎます!」

 

「クルミっ!クルミ!!?」

 

 

「先生っ!来るぞ!立て!前を向け!」

 

「ッー!!?」

 

 

誰よりも前に出た月雪カナタの声によって背中を叩かれたシャーレの先生は松葉杖を頼りに立ち上がり、シッテムの箱を手に持って指揮に入ろうとする…が、しかし動揺のあまり手に力が入らないでいた。

 

それは先ほどのヘリコプターから投下した月雪カナタの攻撃によって消し飛んだ堕落天使の光景と、そして先生を庇うために目の前で半殺しになった生徒を目の当たりにしたから。

 

そのため意識するよりも息が荒く、激しく体を叩く心臓も鳴り止まず、視界が歪んでいた。

 

 

 

 

___生徒 が また死ぬ ???

 

 

 

 

守るべき子供が大人の前で散る…命。

 

それは先生にとって精神を削る現実。

 

それも致命的なほどに。

 

 

 

 

しかし、もう一人の生徒(おとな)は違う。

 

 

 

「エイミ…!!一度全員をヘリコプターに乗せて予定の場所まで離脱しろ!!ターゲットが直接現れた以上は作戦を早めるしかない!」

 

「っ、カナタはどうする気!?」

 

「フェーズ2は俺一人でやる!」

 

「なっ、無茶だよ!」

 

「先生のバックアップを頼れないお前らがいても邪魔になるだけだ!!だから仕切り直せ!!コレをなんとかするためにも!!」

 

「ッ!!」

 

 

 

キヴォトスの生徒は先生の指揮下にいることで目に見えて動きが変わる。

 

常に最適解な動きが約束される。

 

それほどに大人の力はすごい。

 

実際に月雪カナタもこの作戦前に先生の指揮下にある生徒と模擬戦を行い、その力を理解していた。

 

だからこそ、先生が機能しない以上ここにいる生徒は戦力にならない。そう叫ぶ。

 

 

 

「みんな!一度ヘリに乗って!私達はフェーズ3に移るよ!」

 

「なっ、彼を置いていくの!?」

 

「アルちゃん!今の私達では彼以外どうにもならないんだよ!ここは退かないと!」

 

「ッ!」

 

 

歯痒い思いだ。

 

しかし先生の指揮前提でこの作戦に参加している以上はどうにもならない。

 

 

唯一先生の指揮関係なしに強さを発揮する月雪カナタ以外、この場に残れない。

 

なら足手纏いになる前に従うしかないのだ。

 

 

 

「絶対に死なないでよ!カナタ!!」

 

「安心しろ!SRTが死ぬものか!」

 

 

月雪カナタはミレニアム製の爆撃ドローンを使うことでセトの進軍を遅らせ、その間に彼を除いて全員を乗せたヘリコプターはエイミの操縦によって離陸した。

 

向かう先は……とある施設 だ。

 

 

 

「っ…先生!どうか皆さんをお願いします!」

 

「え…?」

 

 

軽く放心していた先生は覚悟を決めた中務キリノの声によって反応する。

 

そして、ヘリコプターから飛び出る。

 

 

 

「キリノ…!!?」

 

 

伸ばした手は届かず、灰色の外套を纏ったキリノは数十メートル離れた地上へ飛び降りる。

 

それから空気抵抗のある外套と、重ねられているカナタの神秘によって少しだけ体を浮かせてくれたため着地の際に強い衝撃は全身に伝わらない。

 

故に、ストンと軽々と着地した。

 

 

 

「なっ、キリノ!?お前っ!」

 

「月雪さん!本官も手伝います!私も戦えます!」

 

「!!………まったく!悪い子供だな!」

 

「覚悟を決めた女性は強いんですよ!」

 

「ああ、知ってるよ!元よりキヴォトスの生徒達はとても逞しい、ってことくらいな」

 

 

 

 

 

「エイミ!待ってくれ!下に二人がっ!」

 

「聞いて!先生!」

 

「!?」

 

「カナタとキリノはいまからフェーズ3のために予定地点までセトを誘い込もうとする!それで残った私達は今からフェーズ3にシフトし、カナタ達に誘い込まれるセトを予定ポイントで待ち構える!」

 

 

 

本作戦の予定として__まずフェーズ1はアビドス砂漠に居座っているセトの憤怒をアビドスの街中に誘い、次にフェーズ2としてゲリラ戦を得意とする便利屋68でセトの憤怒を削りながらとあるポイントまで誘い込み、そしてラストフェイズとなるフェーズ3でセトの憤怒を全員で仕留めに掛かる。

 

コレが当初予定されていた作戦。

 

しかし地下生活者の攻略によって作戦の準備すらも与えられず、出鼻をくじかれた。

 

コレにより予定が崩壊。

 

そのためこの中の誰よりも機動力のある月雪カナタと、カナタの神秘によって動きが軽いキリノテラーの二人で誘導(ヘイト)を買い、作戦を早める形になった。

 

エイミはそれを先生に告げる。

 

 

 

「先生!」

 

「セリナ…?」

 

「クルミさんは絶対に私が治します!だから先生は皆をお願いしますっ!これ以上誰も傷つかないように!どうか!」

 

「っ!! 僕は…っ!!」

 

 

 

子供に…また、助けられたまま。

 

目を醒めてもなお、導くことが出来ない。

 

そんなの…シャーレの先生ではない。

 

 

ああ、食いしばれっ!!

 

責任を___果たせっ!!

 

それが大人の筈!!

 

それを繰り返してきたではないか!!

 

 

 

「僕はっ!情けない!皆がこうしてまだ残ってくれているのに!」

 

 

 

病み上がりで、色々と弱っている。

 

それは無自覚に、心も弱らせていた。

 

しかし首を垂れている場合でない。

 

責任を果たし続けなけらばならない。

 

 

 

「僕は…!」

 

 

セリナがクルミを絶対に治すと言う。

 

エイミは不変なく作戦を遂行する。

 

便利屋だって仲間二人を亡くしてしまっても尚、抗おうする。

 

それは先生を信じているから。

 

先生なら!と、信じて繋いできた。

 

この日まで。

 

 

 

『先生!カナタさんは強い人です!そして先生のために覚悟を決めたキリノさんも強い人です!』

 

「カリナ…」

 

『だから信じましょう!二人を!』

 

「ッ〜!!…ああ!もちろんだとも!」

 

 

涙など流せない。

 

まだそんなことに溺れてる暇もない。

 

沈んでいた分…浮かび上がらなければ。

 

先生は意識を切り替え、深く呼吸する。

 

そしてシッテムの箱を展開した。

 

 

 

「カナタ!キリノ!聞いてくれ!」

 

 

 

__どうした!?

__せ、先生!?

 

 

 

「今から本来予定されている誘導位置で何箇所か攻撃ポイントを追加する!あとフェーズ3はまだ少し時間がかかる!マエストロは早めに取り掛かってくれたが、それでもできるだけ時間は稼ぎたい!そのため二人は大変だと思うけど__」

 

 

__キリノ、近くに格納庫があったはず。

__少し激しめに歓迎してやろうか。

 

__わかりました!

__そこで時間稼ぎですね!

 

 

多くは語らずともカナタは理解し、そして何よりキリノは逞しげにカナタの誘いに応え、爆発音と共に通信を切る。

 

 

それに対し先生は少しだけ目を見開く。

 

カナタの素性はなんとなく理解している。

 

だがその隣にいるキリノはいつの間にかこんなにも頼もしく、銃を握りしめてくれる。

 

いや、元々頼もしい生徒だ。

 

キリノは反転しようとも変わりないんだ。

 

だから、ほんの少しだけ表情が緩む。

 

 

 

「アル、ムツキ、アビドスで過去にカイザーと一悶着あったよね?その時にハルカが良く爆弾を仕掛けていたけど…」

 

「仕掛け場所?……ああ、なるほどね。ふふっ、そういうことね、先生」

 

「くっふふ、任せて。ハルカちゃんの仕掛け場所は大体覚えているよーん。とっても有効な爆破ポイントをねぇ!」

 

「ありがとうムツキ。…エイミ!今からアビドス自治区のとあるポイントまで向かって欲しい!座標はそちらに送る!カリナ!エイミのナビゲートは頼んだぞ!」

 

『任せてください!』

 

 

 

 

松葉杖は折れても、心は折れない。

 

それが責任を背負った者の役割。

 

だから確かにシャーレの先生は復活した。

 

誰もがそう思ったから。

 

 

 

 

 

「さぁ__指揮を始めようか!!」

 

 

 

 

 

子供達のために、この責任を果たそう。

 

 

 

 

 

 

つづく

 






アビドス砂漠に『入り口』あるわ。
あそこから地下生活者に接触できるわ。

でもセトが居座って邪魔だわ。
なので引き寄せて砂漠から剥がすわ。

ゲリラ戦仕掛けてセトを削るぞ!
消耗させたら仕上げに入るぞ!

え?準備してたらセト自らやってきた??
は?????うせやろ???

いまここ


セトの憤怒の攻撃は暁のホルスと同等の強さです。なのでシッテムの箱がバリアを貼っても恐らくは耐えきれずに貫通して弱々の先生は簡単に貫かれていた。なのでクルミが先生を庇わなかったら先生は死んでいました。そしてクルミにカナタのヘイローを重ねてなければ一撃死から浮けれずにクルミは死んでいました。綱渡りすぎる。


じゃあな!
またな!!
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