なんか俺のヘイロー砕けてね?   作:つヴぁるnet

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 ある意味、お遊び回





第39話

 

囮になってからどれほど時間が経過した?

 

体感的には約1時間程だろうか。

 

それでも引き金は止まらない。

 

完全にゴーストタウンと化したアビドス自治区で破壊の神ことセトの憤怒を撹乱し、ゲリラ戦を得意とする便利屋68が仕掛けた爆破経路にセトを誘い込んではダメージを与え、タイミングを見て再び囮になる。絶えず、シャーレの先生の指示とシッテムの箱の管理者カリナのナビゲートが俺たちを導いてくれる。

 

ただアビドス自治区の建物は至る所で老朽化が進んでおり、俺たちの抗争によって至る所で崩壊などが起きている。

 

そのため元ヴァルキューレ警察のキリノは守っていたはずの市民達の街々が崩れる様を見て少しだけ複雑そうにしていたが、拳銃と閃光弾は手放さず、俺の指示をしっかりと聞いては狙撃するべきポイントに狙撃する。長期的な戦闘に耐えられるのは本人がヴァルキューレ時代にしっかりと鍛錬を積んでいたからだろう。

 

それでも相変わらず、銃口は本当に警察官だったのか?と疑いたくなる程に定まりのないデタラメな方向にあるが、しかし定めてないからこそ必中するという異常な性質を持ってセトを狙う。これも反転したことで得た力か。

 

俺が意味を持って浮く、浮かせられるようになったのと同じで、中務キリノも当たらないが当たるようになっている。やはりクズノハの言う通り言葉遊び上等な反則行為が俺たちの力を助長させてくれているが、それでもある程度の理解と成功体験が必要だ。

 

その中でキリノの場合は敵を認識して定めていることが前提である。いわばゲーム画面内にターゲットを収めているかどうかだ。その条件さえクリアすれば銃口が敵と重なっていなくとも弾は敵に必中するという、非常に馬鹿げたチート能力は間違いなく銃社会のキヴォトスで最強の能力に値するだろう。

 

そのため()()()体の至る所にヒビが入っているセトの体に何発もピンポイントで撃ち込んでくれたりと、フェーズ3に向けてダメージは着々と重なっている。

 

 

 

 

ドカーーン!!

ドカァァン!!

 

グラグラ!!

ゴゴゴッ!!

 

ドンガラ!!

ガッシャーン!!

 

 

 

 

「解体うまいな、あの便利屋達」

 

「うわぁ、タワーマンションが贅沢に…」

 

 

老朽化しているおかげだろうか、そう多くない火薬量でタワーマンションの下層は便利屋が仕掛けた爆発によって横に倒れる。そうやってタワーマンションはセトをを押し潰す。

 

しかしセトは潰されまいと全身から稲妻を拡散させ、仕掛けられた攻撃を押し除けようと抵抗するが、ソレがチャンスとなる。

 

 

「防壁弱まった!撃て」

 

「はいっ!!」

 

 

移動中のセトはエネルギーを防御に回しているが、便利屋の仕掛けたトラップから身を守ろうとするときはエネルギーをそちらに回すため防御力が落ちる。そうなれば狙い撃つチャンスであり、俺とキリノはアサルトライフルでセトの耐久力を削り、ヘリコプターに搭載されているマシンガンもカリナが操作してセトに追い討ちをかけている。

 

全てが円滑だ。

 

これも全て__

 

 

 

大人の力って奴か」

 

「はい!先生は私達生徒にとって必要不可欠な存在ですから!」

 

 

時に対立してきた黒服も、先生の能力を知ってたからか、この力を当てにしていた。

 

戦えないからこそ、出来ることがある。

 

それを示すように生徒の力になる。

 

 

 

「キリノ!拾ったソレは撃ちきれ!近くにミリタリーショップがある!また補給するぞ!」

 

「了解です!」

 

 

ヴァルキューレ警察だったキリノにとって不慣れなアサルトライフルで、弾が放たれる度に銃口はガタガタと揺れ動いてしまうが、しかし彼女の反則行為が全て補ってしまうためセトの胴体に全弾ヒットする。

 

やっぱりイカれてるわ、その能力。

 

 

 

 

ザザァ

 

 

 

 

『カナタ!キリノ!聞こえるかい?」

 

 

「どうした?先生?」

 

 

『次の爆発で便利屋の爆弾が無くなる。そのためフェーズ2は最終段階に入る。二人は予定されている目的地までセトを誘導して欲しい』

 

 

「了解した」

 

 

 

通信を切断し、キリノと目を合わせる。

 

先生の通信を聴いていたキリノも頷きながら空になったアサルトライフルをその場に捨て、身軽になるとカリナのナビゲートに従って先陣する俺の後ろを追いかける。

 

重ねてあるヘイローのお陰で体は軽い。

 

その気になれば自販機程度の高さを忍者のように跳ねて飛び越えることができる。

 

つまり、案外余裕を持って逃げられてい___

 

 

 

「!?」

 

「っ、カナタ!」

 

 

高圧力なエネルギーを感知した俺はキリノから差し出された手を掴むと、キヴォトスの腕力で一気に引き寄せられる。その際に腰から警棒を取り出し、それに神秘を込めて__

 

 

「キリノ!用意っ!」

 

「はい!」

 

 

同時に自販機から大きく一歩上に飛び、俺はキリノを遠心力にしながら空中で警棒を横に振り払い、セトの攻撃を弾き飛ばす。

 

 

ズガーーン!!

パキィィンッ!!

 

 

弾き飛ばした攻撃は建物の看板にぶつかり、その看板はセトの胴体に直撃し、怯む。

 

 

「そのまま捉えろ!」

 

「撃ちますっ!」

 

 

警棒を振り回した遠心力を使って俺はキリノの前に躍り出ると、キリノは俺の手を離しながらセトのいる後方に振り向き、アサルトライフルを構えて空中でポジションを取る。

 

俺は警棒を奥に放り投げながらそのキリノの肩に手を置き、空中で姿勢を固定させる。

 

そしてキリノは俺に支えられたまま空中で引き金を引き、セトに向けてアサルトライフルの弾を全弾を打ち込んだ。

 

 

「ガァァァァア!!」

 

 

こちらに攻撃を放ったと思ったら秒で特大なカウンターを受けたセトは苦しんだような声を響かせる。

 

 

「飛雷神!」

 

 

俺はカナタの神秘に意識を繋げ、キリノと共に瞬間移動を行う。

 

そして飛ばし俺のヘイローを括り付けた警棒を掴み取り、キリノを片手で腰下を抱えながら地面にズザザッと滑るように着地した。

 

 

 

「反応できるくらいにはセトの攻撃に勢いが無くなってきたな。たしかに弱っている」

 

「そのようですね」

 

 

キリノを降ろしながら分析する。

 

セトも度重なる迎撃と爆撃によって消耗しているみたいだ。元から弱っていたみたいだが。

 

とりあえず無限のエネルギーなんてモノはないらしい。削れば倒せる。

 

それを再確認しながら先生の指示とカリナのナビゲートを元にアビドス自治区を駆け、その後方では便利屋最後のトラップ攻撃。そこそこ大きなビルが横に倒壊し、セトを攻撃する。

 

 

 

「飲んでおけ、ここから更に走る」

 

「わかりました。いただきます」

 

 

便利屋が攻撃中なことを活かして俺は物陰に隠れながら残りの水を取り出し、少しだけ喉を潤すとキリノに投げ渡す。

 

実はセトとの鬼ごっこ中に何回か水分補給をしている。砂漠は空気が乾いているからな。あと砂とかも吸うし。ソレで喉の器官とか傷めたら走れなくなるからな。

 

キリノも最初は戸惑っていたが「SRT(の一期生)ならこのくらいの余裕を作るぞ」と言葉を付け加えながら水を飲ませ、キリノに一呼吸の余裕を作らせる。

 

だから今こうして心に余裕がある訳だ。

 

確かに相手は破壊の神だ。

 

しかしだからといって馬鹿みたいに焦るほどの相手じゃない。こうして相手をしてみれば憤怒のまま愚直に追いかけてくるだけの敵。攻撃を加えれば弱りもする。その程度ならSRTの俺が遅れを取るわけもないし、むしろアチラがこちらの追いかけっこに遅れを取っている。

 

これならまだCQCでロールケーキをお口にぶち込んでくるウリエの方が倍恐ろしいな。

 

 

 

「月雪さん!まもなく目的地です!」

 

「看板見たよ。あと200メートルだな」

 

「はい。しかし、マエストロさんはこの短時間で完成させられたのでしょうか…?」

 

「堕落天使との接触を避けるために学園の呼鈴に合わせて取り掛かった。時刻的には3時間以上は経過している。この短時間で本人がどこまで解釈を済ませているかわからないが、でも俺はアイツの芸術(ちから)を信じるよ。それにマエストロは大人だ。ならば責任を果たすさ」

 

 

 

空を見上げればヘリコプターの音。

 

そしてヘリコプター扉からは便利屋の一人、ムツキという生徒がコチラに手を振り、そのまま俺たちの頭上を超えていく。

 

彼方も余裕を持って役割をこなしたな。

 

本人達もこういった市街地戦はプロフェッショナルみたいだが、それ以上に先生という精神安定剤があっての成果だろう。

 

やはり「大人の力」ってのは重要か。

 

 

 

 

「さあ、砂に塗れた遊び場だ。悪ノリの過ぎる客人であろうともVIP席まで案内してやるとしようか。今日は貸切だからな」

 

 

貸切となるココは__何年も前に閉館したアビドス自治区のテーマパークだ。

 

規模はそこそこ大きく、過去賑わっていたんだと想像に容易い。

 

もう殆ど錆切ってしまった場所だが。

 

そんな寂れたテーマパークはセトを誘い込むためのフェーズ3として選ばれた施設。

 

 

何故なら、これは__

 

マエストロの提案によるものだからだ。

 

 

 

 

「マエストロ…!」

 

「来たか、カナタ」

 

 

少しだけ息を切らしながら叫ぶ俺の声にマエストロは反応すると、ギギキッと体を軋ませながらコチラに振り向く。

 

 

 

「先生から聞いている。どうやらイレギュラーが過ぎたんだとな」

 

「セトも存在意義に引き寄せられている。地下生活者の駒だとか関係無く、ただ憤怒のままに対を成そうと、再生を求める先生を殺すためにわざわざ追いかけてきた」

 

「それほどに救世主を優先するのか。ふむ…セトの憤怒にとって成功体験者である貴殿すら低位にある存在と……解せぬな…」

 

「俺としては、生産性の無い神なんかに振り向かれなくてホッとしてるよ。まあ強制的にテーマパーク行きのバスガイドとして釘付けにしてやったけど、主にキリノが」

 

「えっ、本官がですか!?」

 

「どちらかといえばバスガイドはキリノが似合ってるよ。なにせ躾のなってない客人(かみ)を相手に全弾直撃はなかなか引率に極まってたと思う。正直震えたね。是非マエストロにも見せたかった反則行為の押し売りだよ」

 

「SRTのカナタですら手を焼いた反則行為はやはりキヴォトスで最強か」

 

「えええ!?マエストロさんまで!?」

 

 

目を点にして戸惑うキリノ。

 

マエストロも「何を今更」と視線で傾げる。

 

俺も狙われた時を思い出して少し苦笑い。

 

 

…やはり、この組み合わせは落ち着くな。

 

相性って奴だろうか?

 

まあ、しばし一緒だったからな。

 

 

 

「カナタ!キリノ!」

 

「先生!!」

 

 

 

縄ハシゴがヘリから垂らされる。

 

俺たちを回収しに来たんだろう。

 

 

 

「キリノ、先に行け。俺は完成間近までマエストロの護衛に入るから」

 

「それなら!本官も最後まで!」

 

「ヘイローによる瞬間移動は俺含めて二人が限界なんだ。何かあった時はキリノまで助けられない」

 

「!……わかりました、では先に戻りますね!」

 

「ああ。……あ、それと」

 

「?」

 

「君の独断には驚いたが、でも確かに心強かった、キリノ」

 

「!!」

 

 

キリノは目を見開く。

 

するとキリノはコチラにバッと振り向き、手を頭に翳すと、警察官としての名残なのかビシッと敬礼を見せた。

 

俺は少しだけ驚くが、敬意には敬意を。

 

アサルトライフルを肩に引っ掛けてコチラもキリノに敬礼する。

 

 

SRTとヴァルキューレの共同戦線、か。

 

こんなところで叶うとはな。

 

 

それからキリノは梯子に手をかけると上昇するヘリコプターに引き上げられ、この場所から一時離脱した。

 

 

 

さて__マエストロ。

 

 

 

「生産性の無い破壊の神は三途川の六文銭どころかこのパレードに対して無銭での乱入を希望しているらしい。あの役割に囚われた世間知らず如きこの前衛芸術品は非常に贅沢なんだと思うが、お披露目は予定通りにか?」

 

「芸術は大衆を拒まない。それが憤怒に囚われた破壊の神であろうと認知と認識が備わるなら権利も等しいだろう。なに。席は余るほど空いている。今日限りVIPに相当させても遜色ない続編の幻想演出は私程度の解釈でも事足りるとして扱おう」

 

「随分とご機嫌だな」

 

「貴殿が舞台に上がる三流作家もインスピレーションとしてくれるのだ。ならば寂れた劇場で試させてもらおう。観客は数名とマナーの無い一幕だが今宵はこれで充分。なにせ…」

 

 

 

 

___既に私は贅沢を得ている。

 

 

 

 

 

そしてマエストロは後方に振り向く。

 

ここはちょっとした舞台。

 

人形劇をする程度の小さな劇場。

 

その中央に一つのテーブルが置いてある。

 

テーブルの上には小さな人形が一つ。

 

羽がつき、舌を出し、マヌケな顔。

 

世間的にはそれをモモフレンズという。

 

しかしその人形からは溢れんばかりの神秘が湧き出ている。

 

マエストロによって施された【解釈】が今か今かと答え合わせをしたく蠢いて仕方ない。

 

 

 

「カナタ、あとは貴殿の解釈(しんぴ)を」

 

「ああ」

 

 

 

俺は頭からヘイローを一つ取る。

 

この身が色彩である象徴。

 

触れられるというイレギュラーの証。

 

それを人形に投げ入れる。

 

すると人形の口の中に入る。

 

そして……神秘に光り始めた。

 

 

 

 

「この世界を解釈し、この贋作を解釈し、この追憶を解釈し、この解釈を解釈した。さぁ!今こそ!憤怒に対なす証明を!正当化がもたらす続編の限りを!子供に約束された遊具というのなら今は続きを望もうか!」

 

まるで演劇の開始を知らせるような前口上。

 

マエストロは手を広げて作品を示す。

 

そして__芸術家は【宣言】した。

 

 

 

 

「これが三流芸術家のネクストタイトルだ!」

 

 

 

 

マエストロは手を合わせる。

 

 

そして俺も同時にパン!と手を合わせる。

 

 

それを引き金として、鳴らす。

 

 

神秘は___色彩の如く【到来】した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「 穢土転生の術 !! 」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その誕生はテーマパークを揺らす。

 

まるで寂れていた続編を望むように。

 

 

なにせ、この場所は聖域だから。

 

マスコットが夢を与える神聖な世界。

 

お人形が今日と明日を演じる物語。

 

 

故に解釈する。

 

この世界が望む渇望を。

 

人形という無限大の意味に込めて。

 

 

 

だから…

 

認めたくないだろう。

 

とある視点からすれば、それは卑怯だ。

 

 

 

 

『なっ、なっ、なぁぁ!?なにぃ!?なんだとぉぉぉお!?もしやツールにない外から設定を持ち込んでインプットしただとぉ!?しかもそれが許されただとぉ!?ふ!ふざけるなぁ!ふざけるなぁ!そんなの反則も良いところじゃねぇか!!しかも堂々とこの世のエディットを無視させて正当化させてきただと!?ただのフレンド枠がやることじゃないだろぉ!!それもレベルが高いだけじゃなくバグまで込ませて貸し出しただとぉ!?インチキだ!!インチキも大概だろぉ!!クソォ!くそぉ!バージョンアップをしないから外部ツールに食われてしまうんだろうが!!匿名は何をやっていた!!こんなの聞いてねぇよ!!』

 

 

 

地下生活者は叫ぶ。

 

理解し得ないものが突如許された。

 

その原因は分かっている。

 

 

__月雪カナタだ。

 

 

地下生活者からすれば、環境キャラを持たず、雑魚キャラしか持っていない先生のために用意された『フレンド枠』の出撃ユニットだ。

 

だからあの月雪カナタという生徒はレベルの高いフレンド貸し出しキャラクターなんだろう。

 

地下生活者(プレイヤー)はそう思っていた。

 

 

 

だから、プレイヤーは見落としていた。

 

それが【色彩】であること。

 

それ以上に物事を【正当化】させてしまう人の形をした規格外な存在であること。

 

同じキヴォトス人だからとそこらにいるキャラクターと同列に表面上のデータだけをプレイヤーは見ていた。

 

 

 

 

__クックック。これは権利の問題です。銃撃で解決できない物事です。だからこそ彼の存在が強みになる。語るにせよ。綴るにせよ。刻むにせよ。そこにいるのは正当化の色彩です。場合によっては彼がルールになります。何故なら非常識を常識としてしまう規格外ですから。つまり無条件なのです。表側で起こす摩擦よりも裏側に潜む【恐怖】の方が何倍にも箱庭をひっくり返してしまう。それが月雪カナタというイレギュラーなのですよ。クックック。

 

 

 

 

黒服(リスナー)は確信する。

 

誰よりも神秘を研究していたから。

 

その眼で見た時、笑みを浮かべた。

 

ああ___「勝ち確」なんだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

ギャォオオオオオオ!!!

 

 

 

 

 

 

 

それを証明するように、芸術は叫ぶ。

 

到来したのは、とあるモモフレンズ。

 

本来の姿は、ペロロという名のマスコット。

 

愛くるしさを売りとした鳥のキャラクター。

 

そのペロロという人形に対して月雪カナタとマエストロは()()()()を頼りに施した。

 

 

それはある日、二人が出会った日。

 

 

 

確か、あの日はそう。

 

月雪カナタは『映画』を観に来ていた。

 

 

そしてマエストロは、たしか。

 

小さな『展示会』を鑑賞していた。

 

 

その過程で二人は出会った。

 

この日までの始発点(きっかけ)として。

 

 

だから『コレら』を始めとし__紐付けた。

 

 

ここは改めて、子供のテーマパーク。

 

夢を与えるための施設。

 

故にそれは適切だ。

 

人形のために、用意された場所でもある。

 

だから芸術家はこの聖域を選んだ。

 

創るには好条件に丁度良いとして。

 

 

そして先駆者(カナタ)もこの施設で望んだ。

 

可能とするなら「コレがある」として。

 

 

黒服(リスナー)の意見を拾うならば『押し付ける』ことがこの世界で武器になる。

 

 

だから選び取った。

 

マエストロと初めて出会った日に()()()出来事を。

 

より鮮明に浮かせるとしたら。

 

そして主人公(せんせい)が望む【続編】と【ネクストタイトル】に便乗するならば。

 

 

 

 

ああ__つまり。

 

これはちょっとした【予告編】である。

 

彼らの【続編】に繋げるための前衛芸術。

 

その、タイトルとは___

 

 

 

 

 

映画__ペロロジラ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやいや、そんなんじゃ甘いよ」

 

 

 

 

 

 

せっかくなら、もっと付け加えようよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンペロロジラ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この世に存在しないネクストタイトルだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ギャォオオオオオオオオオオ!!!」

 

 

(例のGODZILLAのBGM)

〜♪

〜♪

ロジラ、ロジラ、ロジラがやって来た。

ロジラ、ロジラ、ロジラがやって来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、え、な、な、なに、アレ?」

 

「ええと…もしかして、ペロロ??」

 

「だと、思いますな…いや、でも私たちが知っているペロロよりはなんというか、かなり禍々しいと言いますか…」

 

「くふふ〜、なんだか面白い事になりそう」

 

 

フォルムは比較的ペロロであるが、しかし可愛さというよりも恐ろしさが印象として先行させてしまう見た目に生徒達は困惑する。中には面白がっている者もいるが、それでも元々異質な人形が更に異質極まりない存在になり、それが大怪獣として現れれば動揺もする。

 

 

しかしその中で二人は冷静に見ていた。

 

 

 

「すごいね、アレがマエストロの秘策か…」

 

『名は【シン・ペロロジラ】みたいです』

 

「………カッコいい」

 

『え?』

 

 

シャーレの先生とシッテムの箱の管理者カリナは前情報としてマエストロから当たり障りなく知らされていたため、生徒達ほど驚きはしなかったが、しかしそれはともかくとして、ロボット系のプラモデルを購入するくらいに子供心があるシャーレの先生はシン・ペロロジラの登場に内心躍らせており、先生の素直な感想にカリナは少しだけ戸惑ってしまう。

 

 

『っ!非常に高い熱源を感知!!』

 

「エイミ!ペロロジラからもっと離れて!」

 

「う、うん!」

 

 

操縦席に座っていた和泉元エイミもシン・ペロロジラの存在に少し呆気に取られていたが、先生の声によって意識を操縦に戻し、離れようとする。

 

 

 

「せ、背中のトゲトゲが光っているわ!」

 

「くふふ!絶対にアレやばいことになるね!」

 

 

シン・ペロロジラの背中に幾つも生えている器官が紫色に輝く。あそこにエネルギーを蓄えているのか?よくわからない。けれどわかることがある。それは…

 

 

「皆、衝撃に備えろ!来るぞ!」

 

 

先生の声によって全員が壁を支えに伏せる。

 

FOX3のクルミを治療中の鷲見セリナも覆い被さるようにし、先生と中務キリノもセリナごとクルミを守るように体を抑え…そして!!

 

 

 

 

 

 

 

ガァアァァァァァァアア!!!!

 

 

 

 

 

 

 

ズガァーーーーーン!!!!

 

ドゴーーン!!!!

 

 

 

 

 

「繧ゅ§縺ー縺代r繧医�縲!!!???」

 

 

 

 

ズガァーーーーーン!!!!

 

ドゴーーン!!!!

 

 

 

 

 

 

「「「「…………う、うわぁ…」」」」

 

 

 

テーマパークの空気を揺らすような一撃。

 

実際にテーマパークの遊具やら、建物の窓やらが風圧で割れてしまい、その威力は視覚情報だけで完結させ、ヘリコプターに乗っていた全員が同じような声を漏らす。

 

 

__それほどに。

__嗚呼、それほどに。

 

 

シン・ペロロジラは凄まじかった。

 

 

 

 

「よっと」

 

 

 

すると呆気に取られていた皆の間を割り込むように二つの影が現れる。

 

 

「「「 !? 」」」

 

 

衝撃から逃げるようにヘリコプターの中に突然現れる月雪カナタとマエストロ。

 

どうやらココにいる全員に重ねてあるカナタのヘイローを頼りに瞬間移動してきたようだ。

 

そしてカナタはホッと安心したようにヘリコプター内部にある椅子に座り込む。

 

 

「ええと……おかえり、なさい?」

 

「ああ」

 

 

「月雪さん!」

 

「ただいま、キリノ」

 

 

陸八魔アルの言葉に対し、カナタは慣れたように返事する。その中でもキリノは慣れているのかカナタの帰還に喜ぶ。するとカナタは座っている席からシン・ペロロジラを見下ろし、次にマエストロとも視線を合わせる。

 

 

 

「マエストロ、もしや予告編っていう解釈が余計だったか?」

 

「あの短時間で鮮明に浮かすならばそれが手っ取り早い話だった。致し方ない」

 

 

マエストロの言葉に「そっかぁ…」とやや残念そうにカナタは言葉をこぼす。

 

予告編?解釈?

 

その単語に生徒達は首を傾げる。

 

そしてカナタは早めに情報共有を済ませようと周りを見渡し「伝えることがある」と言って注目を集める。そのタイミングでクルミも目を覚まし、カナタに耳を傾ける。

 

 

 

「結論からして、シン・ペロロジラだけでセトの憤怒を倒せる打算は…実のところない」

 

「「「ええ!?」」」

 

「そ、そうなんですか!?」

 

 

 

戻ってきて早々、カナタは結論を告げる。

 

それに対して皆は驚く。

 

するとマエストロが説明を加えた。

 

 

「あくまでアレは解釈だ。カナタとの邂逅を追憶にテーマパークを儀式の場として子供の遊び心の具現化に成功させたが、しかしアレはあくまで続編の希望的観測を押し付けたまで。言わばショートストーリーに等しい予告編。そう長くない。そのため設定付けられた強さは表面上のみで解釈され、本物の意味合いは秘めてはいない。今は【未知数】を理由してセトを押しているが、しかし、セトの憤怒が破壊できる対として扱った場合、シン・ペロロジラの虚栄は確実に剥がれ落ちていく」

 

「じゃ、じゃあ…!」

 

「想定より早めに崩れ去るだろう」

 

「「「!!」」」

 

 

アレだけの芸術を持っても長持ちせず、セトの憤怒を倒しきれない。それを証拠付けるようにシン・ペロロジラは1回目の破壊光線によって全身が薄れ、そしてセトの憤怒の攻撃によって少しずつ剥がれ落ちようとしている。マエストロの話は本当のようだ。しかし。

 

 

 

 

「ならば__」

 

 

 

その中で先生は悲壮感を見せない。

 

 

 

「予告編を繋ぐ【本編】として僕たちが物語を完結させるべきなんだろう」

 

「「「 ! 」」」

 

 

あくまでアレは『希望的観測』であり、続編として貼り付けた懇願を元に生成した未知数な『ハリボテ』の予告編。

 

 

そう、本編ではない。

 

一定の情報がセトを押し付けるだけ。

 

 

では、その予告編が終われば本編としてそこに躍り出るのは誰か?

 

そんなの___最初から決まっている。

 

 

 

 

「みんな」

 

「「「!!」」」

 

 

 

先生は生徒達に声をかける。

 

その声に、キリノが、エイミが、アルが、ムツキが、セリナが、クルミが、反応する。

 

 

 

「ネクストタイトルのための予告編はカナタとマエストロが務めてくれた。だから本編はこの世界にいる僕達がやらなければならないんだ」

 

 

 

黒服は言った。

 

この世界は如何にして__押し付けるか。

 

 

僕達の中にある【権利】を【曲解】を【宣言】を【都合】を【設定】を【攻略】を【エピローグ】を【オープニング】を__押し付ける。

 

 

この世界を身勝手に変えた地下生活者よりも意味を超える。

 

 

それが灰色に負けないための方法。

 

ならば大人として成すべきことを成す。

 

 

先生として、生徒として。

 

 

この物語に生きている存在証明を。

 

明日も続けていくために。

 

私達の「青春物語(ブルーアーカイブ)」と宣言する。

 

 

 

それは、あの時と同じ。

 

補習授業部の阿慈谷ヒフミの時のように。

 

高らかに彼ら彼女が「続ける」と宣言する。

 

 

 

 

 

「俺も手伝うぞ、先生」

 

「ありがとう、カナタ」

 

 

 

心強い生徒(こども)味方(おとな)も一緒に。

 

 

 

 

 

「ギャァァゥオオオオオオオ!!

 

「縺昴≧縺ェ繧オ繧、繝医譁!!??!?」

 

 

 

 

 

消え掛かっていくシン・ペロロジラ。

 

もうまもなく、予告編が終わるらしい。

 

 

 

「はぁ……はぁ……エイミ…操縦変わるわよ…余裕がある貴方が倒しに、向かって…」

 

「クルミさん!まだ完全に治療が…!」

 

「少し回復したから操縦くらいなら、できるわ…」

 

「!」

 

 

意識を取り戻したクルミは起き上がり、足を引き摺るように操縦席に向かう。

 

 

 

「うん、わかった、クルミ。操縦任せるね」

 

「ええ…任せてっ!」

 

 

大事な移動手段を壊させない。

 

クルミはSRT最後の一人としての意地を見せるかのように怪我で震える体を精神力で抑え込み、操縦機を握りしめるとそこからヘリコプターの高度を下げる。

 

その間に各々は銃のリロードを済ませる。

 

 

 

「行って!」

 

 

 

消えかかるシン・ペロロジラを背景にヘリコプターの扉を開けるとカナタの神秘によって身軽になった効果を活かして次々と飛び降りテーマパークに着地する。

 

 

 

 

「先生、行こうか」

 

「うん」

 

 

 

カナタは先生の肩をポンと置く。

 

そしてヘリコプターから、キリノの真横に瞬間移動した。

 

 

 

「ギャォオオオオオオオオオオオオ…

 

 

 

そのタイミングで予告編は終わり、シン・ペロロジラは消えてしまった。

 

 

しかし、ここからは続編だ。

 

何を悲観するというのだ。

 

 

 

 

「皆、最後の戦いを始めるよ」

 

 

 

 

カチャ。

 

ガチャリ。

 

ガチャコ。

 

カチン。

 

ジャラジャラ、チャキ。

 

 

テーマパークに降り立った天使(せいと)達が銃を構え、セトの憤怒と見合う。

 

シン・ペロロジラによって外装の至る所がボロボロになり、一部が消えようとしている。

 

それでもまだ憤怒で動く破壊の神。

 

簡単には倒せない敵。

 

 

けれど__明日が欲しい。

 

青春物語と高らかに叫べる日常が欲しい。

 

 

だから、この世界は願ってくれた。

 

この物語の主人公たちのアーカイブを。

 

 

 

 

 

___さぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

” 指揮を始めようか “

 

指揮を始めようか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勝利は、約束されている。

 

 

 

つづく

 






バケモノにはバケモノをぶつけんだよぉ!!
ってことやな。へけっ!


前衛芸術を【予告編】として解釈し、カナタと初めて出会った日にペロロジラが上映されていた事をベースとして、そこに先生達の望むネクストタイトルに便乗するかのようにペロロジラの続編となるだろうシン・ペロロジラを呼び起こしたマエストロのやり方ってかなりセクシーだと思うわ。しかもこれをカナタが舞台に躍り出る三流芸術家も一つのインスピレーションだろ?ってマエストロに諭したことで生み出したのがヒエロニムスとかではなく、テーマパークを基盤とした結果、人形のペロロを扱うって判断なのがエモいんよ。裏世界にひっそりと解釈するのではなくて表世界のインスピレーションを持ってセトの憤怒を追い込んだ芸術家は間違いなく表舞台に必要な大役であることは確かだった。

あとさりげなくカナタの動きに合わせれるキリノ*テラーも大概やべーと思うし、別世界だろうとブレることないカナタも安定感ぱない。

ほんまこの3人すき。好きだろ?









あ、セトの憤怒は無事に倒されました。
大人の力ってすごい!かんぺき〜

じゃあな!
またな!
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