なんか俺のヘイロー砕けてね?   作:つヴぁるnet

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前日間違えたので再投稿でーす。
投稿予定日が1日ズレてた。てっへ☆




第40話

 

 

 

慌しかった砂嵐は憤怒を司る神を倒したことで心なしか鎮まったが、しかし天使達の神秘を蝕もうとする灰色は変わらず、奥に進めば進むほど息苦しさが増す。

 

そのため建物がまだ並ぶ市街地にヘリコプターを降ろすと、そこから先はとある生徒2名を除いて他生徒は待機させ、影響の無い四人だけがアビドス砂漠へと足を進める。

 

砂地に足跡を残しながら前進。

 

ザラついた瘴気は気のせいでは無い。

 

神秘を秘めないシャーレの先生ですらこの不愉快さに顔を顰め、そして…

 

 

 

 

 

__先生。

 

__せん、せいっ!

 

__先生っ!

 

__せんせーいっ!

 

__ししょぉ…っ!

 

__先生!

 

__あるじ!

 

__ぁぁ、せんせい…

 

__先生ッッ!

 

__せん…せ、い…

 

_____嗚呼……先生。

 

 

 

 

 

エンディングに流れるスタッフロールを潜り抜けるが如く、もう出会うことも、もう語ることも、もう背を見せることも、そして大人として助けることが二度と叶わない生徒達の声が砂嵐と共に流れつき、救世主の帰りを喜ぶ。

 

 

これが幻聴なのかどうなのかもわからない。

 

だが聞こえてしまう。

 

先生を待っていた生徒達の声が。

 

 

 

「っ、ッッ……!!」

 

 

 

シャーレの先生は食いしばる。

 

無力な自分が情けないから。

 

何もできず、何も救えず。

 

到来したご都合主義に救われた。

 

 

 

「見つけたぞ、入り口を」

 

 

木偶の体であろうと芸術を愛するゲマトリアの芸術家マエストロは立ち止まる。

 

たどり着いた砂丘の上で灰色の空に向かって手を伸ばす。すると後始末のできなかった未熟者の痕跡に指先が触れ、何もなかった空間が千切れた。それも簡単に切り裂かれる。

 

見えなかった入り口もほんの少し触れればこうも簡単に正体を見せる、その呆気なさに悔しさすら覚えてしまう。

 

 

 

『アクセスします』

 

 

シッテムの箱から声がする。

 

容量とネットワークの関係で【混沌の領域】に干渉一つできなかったシッテムの箱の管理者カリナだったが、マエストロがアクセス先を切り開いたお陰で干渉可能になった。

 

カリナは混沌の領域を逃すまいと瞬きする間も与えずに潜り込む。すると啜り泣くような声の聞こえる子供部屋を捉えた。もう逃がさない。

 

そうしてカリナは子供部屋を捉えたままタブレットの画面に指を伸ばし、先生もカリナの伸ばされた指に触れ、アクセスを完了させる。

 

 

 

 

 

 

 

そして…

 

そして…

 

 

 

 

 

____ エピローグが訪れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

_

__

___

 

 

 

 

 

 

 

 

先生!ありがとう!

先生!おかえりなさい!

 

 

天使のような、私の生徒達が出迎える。

 

透明感溢れるこの空の下で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

違う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先生!さすがね!

先生!よくやったわ!

 

 

 

これまでの地獄は、何一つ存在しない。

 

全てが嘘だったかのように、彩る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

___違う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先生!素敵でしたわ!

先生!かっこよかったよ!

 

 

 

笑顔で私を迎えてくれる。

 

いつもの日常が戻ってきた事を知らせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

___違う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先生!お見事です!

先生!感謝しています!

 

 

 

皆がこの場所にいる。

 

堕落から帰ってきた、愛しい子供達。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

___違う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先生!よくやりました!

先生!やっぱり先生なんですね!

 

 

もう聞けないと思った、声だった。

 

でもこうして再び皆の声が聞こえる。

 

 

 

 

 

 

 

 

___違う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先生!

 

 

 

 

 

 

 

 

___違う。

 

 

 

 

 

 

 

 

先生!

 

 

 

 

 

 

 

 

___違う…。

 

 

 

 

 

 

 

先生!

 

 

 

 

 

 

 

___違う…!!

 

 

 

 

 

 

 

 

先生!

 

先生っ!

 

せんせい!

 

せんせいっ!!

 

 

 

 

 

 

 

___違う!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ、違うんだ。

 

こんなのは。

 

 

こんなわけない。

 

都合が良すぎるんだ。

 

 

だって君達は。

 

私の大事な生徒たちは…

 

 

羽が折れて、堕落して、消え去った。

 

もう居ないんだよ、君達は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

__先生、また会えたッスね。

 

 

 

 

 

イチカ…

 

うん……久しぶりだね。

 

 

 

 

 

__えへへ……あ、もう終わったッスか?

 

 

 

 

 

大丈夫、もうすぐ終わるよ。

 

でも……そうなると…

 

 

 

 

 

__そっか!なら良かったッス。

 

 

 

 

 

っ、イチカ、僕は大人失格だ。

 

皆を助けることはできなかった。

 

 

 

 

 

__そんなことないッス。先生はよくやったッスよ。こうして戻ってきて、キヴォトスを救おうと目覚めた。なら先生は皆の先生。だから変わりないッスよ、せんせい。

 

 

 

 

 

……イチカ、ありがとうね。

 

当番として、僕のために、来てくれて。

 

 

 

 

 

__気にしないでいいッスよ!これは自分のためでもありますから。まあ一番最初の当番はキリノちゃんに取られてしまったッスから、ウチは二番目の女ってことになるっスけど!あ、でもシャーレの活動はとても楽しかったッスから!間違いなく素敵な思い出ッス!だから…

 

 

 

 

 

あまり見せない目の奥を魅せ、彼女は笑う。

 

 

 

 

 

__灰色の先にある【ネクストタイトル】を迎えても、先生は皆に背中を見せてくれた素敵な先生としてっ、どうか、どうか!先生のままでいて欲しいっス。それは私にとっても。キヴォトス皆の願いでもありますから。

 

 

 

 

 

黒い翼を羽ばたかせ、強風が起こる。

 

甘い夢は数多の黒い羽根に包まれた。

 

理想は、もう現実に戻して。

 

 

 

 

 

__先生!

 

 

 

 

 

その背に生徒達の声を背負って。

 

 

 

 

 

 

__ありがとう、ッス!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は顔を上げて物語(アーカイブ)に踏み出した。

 

 

 

 

 

 

____

___

__

_

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕の意識はここにある。だから偽れない」

 

 

 

 

 

 

飾りのない真っ暗な世界だ。

 

まるで黒染めのエピローグ。

 

 

 

 

なのに__貴様はまた生徒を利用したな??

 

 

「ひ、ひぃっ!!?」

 

 

 

目の前の未熟者に怒りを突きつける。

 

大人になりきれない青二歳は怯える。

 

本物の大人を目の前にして、後ずさる。

 

子供を愛した大人の怒りを初めて知るから。

 

 

 

 

「生徒達を使い、僕を惑わせ、都合の良い幻聴に傾け、死人となって消えた彼女達を大人になりきれない貴様の解釈で!僕が愛した子供達をまたお前は玩具代わりに!またっ!またお前は飽き足らずにッ!!」

 

 

「な、な、何が不満じゃ!!これはお前が望んでいた事だろう!?この灰色になる前の楽園を!!だ、だから小生は勝利者の先生にもう一度と!!」

 

 

ふざけるなァァァ!!!

 

 

「!!??」

 

 

 

松葉杖が必要な体に鞭を打ち、先生は叫びながら地下生活者を寝首を掴み、怒りに任せて地面に押し付ける。

 

 

 

何が勝利者だ!!何が敗北者だ!!

 

 

がぁ!ごはっ!

 

 

何が権利だ!!何が証明だ!!

 

 

ぐえっ!がぁっ!

 

 

何がエピローグだ!!何がタイトルだ!!

 

 

がぁ!がはっ!ぐえっぇ!!

 

 

お前は!お前は!!お前はっ!!!

 

 

ごふっ!ごはっ!うがぁ!!

 

 

 

先生は地下生活者に馬乗りになり、拳を振り下ろしてその顔を殴る。

 

鉄の仮面が拳を抉り込ませる。

 

ガン!ガツン!と、弾ける音。

 

痛覚があるのかは分からない。

 

けれど地下生活者は悲痛を上げる。

 

だが鉄を打ち明ける拳も悲鳴を上げる。

 

それでも病み上がりの体だろうと止まらない。

 

怒りが、悲しみが、愛し続けた痛みが。

 

このような未熟者に。

 

大人の責任すら果たせない大人に。

 

身勝手な独りよがりで消えた。

 

 

 

「子供を!!子供を!!僕の大事な生徒達を!お前程度の青二歳が!よくも!!よくも!!命を遊び道具にしやがって!!」

 

 

「ァァァ!!ぐぁあ!うぎぎっ!」

 

 

地下生活者は振り下ろされる拳を掴み、もう片方の手は仮面を守る。

 

慣れない怒りと病み上がりの体に追いつかない呼吸が先生の動きを少しずつ鈍らせる。

 

拳の勢いが止まりはじめると地下生活者は荒げながら叫ぶ。

 

 

 

ごっほ!!ごほ!!う、ぐぐぅ!?何を…言っているぅ!!あ、あんなのが子供なモノかぁ!あんなのはただの都合の良いテクスチャだろ!?ポーンだろ!?ユニットだろ!?積み重ねた代償から排出されたテクストだ!それを先生の前に添えて!都合の良いメッセージと声と設定を落とし込んだ!アレはそんなご都合主義なテクスチャだろっ!?なのに何故そんなに憤る!?何を怒る!!?あんなのは設定付けられてそこにいるだけの、ぐぇ!!がぁっは!!」

 

 

「それでも子供達は僕の生徒なんだァ!!」

 

 

 

荒げる声に、焼け切れそうになる喉。

 

殴り投げはない手から血が流れる。

 

手入れの足りない荒れた肌。

 

握り締めすぎて裂ける手のひら。

 

鉄に打ち付けて割れる爪。

 

それでも感情が加速させ、早くなる心臓と体に流れる血が、先生の全てを苦しめる。

 

 

 

 

ああああァァァァァァァ!!!!

 

ひぃぃぃぃい!!?

 

 

 

腕を大きく振り下ろす。

 

その拳は地下生活者を砕かんとする勢い。

 

けれど先生自身も粉砕の代償か。

 

だが、構わず振り下ろそうとして…

 

 

 

「そこまでにしとけ」

 

 

 

パッ、っと、誰かに拳を支えられる。

 

その拳が振り下ろされることはなかった。

 

 

 

「カナ、タ…」

 

「充分だ。もう良い。先生の怒りは止めどなく伝わっている」

 

 

琥珀色と錆色の砕け散ったヘイローを頭に浮かばせている生徒、それは月雪カナタ。

 

彼もまた、シッテムの箱に触れ、その先の空間に意識を繋ぐことが許された【大人】である。

 

だからこの場にいる。

 

カリナに、止めてもらうように頼まれて。

 

 

 

そして…

 

 

 

「先生…」

 

「!!?」

 

 

やや強引ながら地下生活者から剥がされた先生は数歩後ろに立ち上がると、その後ろからは何度も聞いた声を拾う。先生は振り向く。そこにはボロボロになった外套を身に纏っている一人の生徒、月雪カナタのヘイローを重ねられた中務キリノが立っていた。

 

 

 

「キリノ…」

 

「先生」

 

 

キリノは先生の元に駆け寄り__抱きしめる。

 

 

 

「せん…せいっ!本官は…!先生の!痛みも、怒りも、悲しみも、苦しみも!!全てが!全て伝わりましたから!だからもうその手を痛めないでくださいっ!もう大丈夫ですから!充分に伝わりましたから!皆はわかってくれますから!もう!大丈夫ですから!」

 

「ぁ、ぁ、キリノ……ぼく、は………ぼく……は…」

 

 

そして先生は膝から崩れ落ちる。

 

病み上がりによる体の限界もあるが、慣れない感情に身を任せた反動は膝から先生を襲う。

 

そんな先生をキリノは受け止め、それから頭を抱きしめるように支え、その感情と少しずつ湧き上がる震えを腕の中に留める。

 

 

もう、痛まないでほしい。

 

 

そう強く告げるようにしながら、けれど優しく先生を抱きしめる。

 

もし悲しいなら私も一緒にいると。

 

一番最初に来た当番の生徒として。シャーレ設立から苦楽を共にしてきた者同士として。今だって貴方と遠くない。これまで通り私はここにいる。一番最初の頃から。いまこの瞬間まで。

 

中務キリノはただただ先生を抱きしめる。

 

 

 

「ぅぅ、ぅぅ、ぁぁ、ぁぁぁあっ…!!

 

「せんせい、っ…」

 

 

腕の中で漏れる声は、大人を忘れて幼い。

 

大人の役割を放棄した、涙の痕。

 

いまは、ただ、哀しくて、仕方ないから。

 

だから誰も先生の涙を止めない。

 

止める権利など、存在しない。

 

 

 

「はぁ…はぁ…ごほっ!ごほっ…、く、く、くそっ!クソガァ!!神聖なゲーム盤の上でオーバキルが堂々と許されるかぁ!!敗北者に敗北を加速させるべくダイレクトアタックなどプレイヤーとして恥を知れ!!このクソ野郎が!!」

 

 

顔を支えながら地下生活者は叫ぶ。

 

鉄の仮面とはいえ、何度も殴られればどこかしら凹む。

 

地下生活者はそれを手のひらで隠すようにして先生を睨み、その視線に対して中務キリノも地下生活者を睨み返す。目を離さない。

 

 

 

 

「お前らはチートをした!フレンド枠にこの世界設定に存在しないキャラを持ち込んだ横暴を行なっていたが…っ、ああ!だが小生も同じようにチートをした!条件は同じだった!!だから今回のこのゲームはお前らの勝ちにしておいてやる!!だが!だがっ!次のキャンペーンこそは小生は苦痛に並行した死の解釈を__!!」

 

 

 

お前のネクストタイトルはねぇよ

 

 

 

振り下ろされる、百鬼夜行の短刀。

 

要塞都市エリドゥに保管されていた武器。

 

カナタは間合いを詰めると負けず嫌いなおしゃべりに振り下ろして追い討ちする。

 

 

 

「ぎぃぃあぁ!?」

 

 

___仮面を抑えていた、腕が宙を舞った。

 

 

 

 

「お前はゲーム感覚かもしれないが、こっちは世界を賭けた生存競争だ。元からジャッジが存在しないことを知れ!」

 

「ひぃぃぃ!!?」

 

 

地下生活者は悲鳴を上げながら混沌の領域から姿を一瞬にして消す。

 

 

 

「ちっ、刃が短すぎたか…」

 

 

腕を斬り落とせるほどの切れ味はあったが、喉元まで届く程の刀身は無く、地下生活者の腕だけを削いで逃してしまった事に月雪カナタは舌打ちをする。それから短刀を腰にしまい、先生達の方にカナタは振り向く。

 

だが声をかける対象はまた別だ。

 

 

 

「カリナ、権利はどうなった?」

 

「奪い取りました。アーカイブはリアルタイムで残っています」

 

「よし、ならタイトルの書き換えだ」

 

「はい。行います」

 

 

カリナは地下生活者からこの世界の権利を取り戻し、タイトルを書き換える。

 

 

 

「先生」

 

 

準備を終えたカリナは先生に語りかける。

 

すると先生はゆらりと立ち上がる。

 

キリノは先生を解放し、数歩下がった。

 

 

 

「先生」

 

「せんせい…」

 

「先生!」

 

 

 

カナタ、キリノ、カリナ。

 

それぞれが声をかける。

 

先生は震えていた呼吸を落ち着かせる。

 

流れ落ちる血を手で握りしめた。

 

 

 

「…」

 

 

真っ暗な空間を見上げる。

 

何もない、黒だ。

 

少しだけ灰色も混じっているか。

 

でもここで宣言する。

 

何故ならこの場所がエピローグの場所。

 

そう解釈されて、この場所は認識される。

 

ならば勝利者となった先生が告げるべき。

 

 

 

「っ…!!!」

 

 

 

震える手を上げ、割れた爪のまま人差し指を立てる。

 

それは、あの時のように。

 

エデン条約で彼女が、補習授業部として存在していた阿慈谷ヒフミがそうした時ように。

 

補習授業部の顧問として先生が前身となる。

 

シャーレの先生がそれを正当化するんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

"ここに…! 再び、宣言する…!"

 

 

 

 

 

 

 

ありったけの想いを!

 

ありったけの願いを!

 

 

__ネクストタイトルを!

 

__ブルーアーカイブの新たな始まりを!

 

 

 

 

 

 

 

"捩れたこのアーカイブに!新たな始発点を!"

 

 

 

 

 

 

 

その【責任】に、無条件の役割を秘めて。

 

彼は____いま、成し得たから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

くそぉ……ちくしょぉぉ……こんなのっ、小生にふさわしくない…っ!

 

 

 

青二歳は悔しがる。

 

ゲームに負けた事を。

 

何よりリトライをしてきたプレイヤーに逆転されてしまった事に歯軋りする。

 

 

 

「くそぉ……クソガァ…くそぉぉ…く、くそぉぉぉ!…くそ!くそ!…クソォ!くそ!くっそ!マジでくそ!クソだろ!ああくそ!本当にクソすぎる!くそだ!くそ野郎!くそ!くっそ!クソウゼェ!くそ!マジクソ!クソすぎる!くそ!くそ!くそぉ!くそが!くぞがぉ!くそっ!クソォォ!くそっ!クソォぉぉおオオオオ!!」

 

 

 

大人のふりをできない青二歳は語彙力を失うほどにこの敗北を悔しがる。

 

薄暗い牢屋の中で、仮面を掻きむしる。

 

しかし片腕は無い。

 

ルール外から。コンテンツ外から。何よりこのタイトルに存在しないご都合主義なキャラクターに奪われてしまったから、青二歳は自身の行為を棚に上げながらも卑怯だと、ズルだと、チートだと、卑怯者だと、仮面の中で歯軋りを行う。そうやって怒りが感情の処理を邪魔する。

 

その姿はまるでオンラインプレイに負けてしまった子供のようだ。

 

 

 

「ああああ!イライラするっ!これも全部っ!匿名が相手の情報をちゃんと言わないからだ!ちゃんと共有されていれば幾らでも対策できた!したんだ!間違いなく!なんなら肉体の限界を試す以上の事を行って徹底的にマジレスもした!なのに!このキャンペーンは相手のチートで全部台無しにされた!それで小生のエピローグすら撤回されてしまった!ああ!今ごろ小生が得たはずの解は無条件の透明に満たされているではないか!?これでは振り出しだ!無意味に振り出しになった!あああ!今頃勝利者はご都合主義に満たされたウィナーサークルだ!はぁぁあ!?こんなのありかよ!?なんだよ!意味わかんねぇよ!苦しみと並行した死すら勝利者に乗り越えられているではないかァ!ああああ!つーか黒服っ!お前は傍観者じゃねぇのかよ!?なにアシストキルを決めて満足してんだよ!?小生と同じゲマトリアだろ!?利敵行為だろ!お前なんか通報してやる!くそぉ!くそっ!こっちは必死に必死に一人で戦っているのにさぁ!この頑張りがこれか!成果がこれか!ああああ!ああああ!胸糞にイライラする!!ああああ!うがぁあああああああ!!」

 

 

 

苦しむ頭を掻きむしりたい。

 

なのに片腕は奪い取られた。

 

それも外付けのチーターに。

 

更にプレイヤーのデータを壊された。

 

復元すらできない。

 

戻すにはやり直す。

 

文字通り、全部やり直すしかない。

 

 

 

え?やり直す?

 

それはリトライ?

 

もしや……それを小生が?

 

 

これを私が?

 

これを俺が?

 

それを己が?

 

 

 

「そんな事したら死ぬだろうガァ!!死んだら終わるだろうがぁ!!」

 

 

 

青二歳は叫ぶ。

 

苦しみに対して並列する概念は死である事を己が証明したのに、自身の言い訳を棚に上げて怒り狂う。もう既にシャーレの先生を爆発で消し飛ばした下郎な行為すらも忘れている。なのに自身の可愛さを盾に否定する。リトライ画面に触れる事すら愚行だと。

 

 

 

ああ__だから、お前は青二歳(あほ)なのだ。

 

大人になりきれないまま育った大人(ばか)だ。

 

 

 

 

「…………許さない」

 

 

 

感情は無限じゃない。

 

いずれ底を突き、落ち着きを取り戻す。

 

だから頭も冷えてくる。

 

 

 

「………ああ、そうだ。そうです。小生もあっち側と同じ事をすれば良いんだ。ひひっ。ええそうです。そうともです。キャンペーンを終えたのならまた始めれば良いのです。先ほどのキャンペーンは小生にとって相応しくなかった。だから無意味だったのです。ただイタズラに苦しんだだけです。ひひっ、そうなんです。なのでこれはつまりノーカウントなのです。それにこの結末を解釈するなら小生は回線落ちした。チーターを相手に容量を取られすぎでシャットダウンされた。小生は被害者です。ですのでこれはノーゲームになります。なら権利はまだコチラにあるんです。復興作業に時間は多少なり掛かりますが再挑戦できる体はあります。だからもう一度…だ。もう一度オンラインにマッチングを行なってリトライするんです。どうせ相手は先生だけ。あのチート紛いなフレンドも一回限り。次はありません。もし仮に訪れても対策だってします。攻略法は幾らでもある。それは小生の権利です。私だけです。ひひっ。ならなんら問題ない。

その時の敵は先生のみ。

何せ。ええ、何せ。

この世界に【プレイヤー】は一人だけです!!

私と先生しか認識する者が存在しない!!

ひ、ひひっ!…再戦です!!

もう一度です!!

次もマッチングする!!

限られたこのオンラインに繋がるのは!!

どうあがいても先生たった一人で___!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは奇遇だな。

実はも【プレイヤー】なんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へ?」

 

 

 

 

 

 

ザクッッ!!!

 

 

 

 

 

 

がぁっ、ぁがぁっ、はぁっ!!?

 

 

 

見えない場所から、ナニカが飛んできた。

 

それは琥珀色に輝く、前任者の片鱗。

 

先駆者に託された、新たなる証。

 

それが青二歳の背中にクナイが突き刺さる。

 

 

 

 

「特別にマッチングしてやったぞ地下生活者。

シャーレの先生以外にもプレイヤーが存在して嬉しいと思わないか?」

 

 

「な、っな、なっ、な、ぜ…?ここまで、追跡、を??」

 

 

 

青二歳の背中にクナイを突き刺すのは到来した異世界の先駆者。

 

薄暗かった牢屋は琥珀色の降臨によって淡く照らされる。

 

しかしその淡さは、分厚く肌を焼くほどだ。

 

 

 

「お前はキリノに睨まれていた。対象としてロックオンしていた。それだけで条件は充分だ」

 

 

「狙われっ!?何を言うっ!?お、俺は回線落ちしたはずだろ!?あのゲームから切断したはずだぁ…!なのに何故このアカウントはまだ狙われているんだぁ!?」

 

 

「俺が正当化した。あの世界は【権利】に塗れたエディッターワールドだから」

 

 

「!?…ま、まさか……いや、嘘だ……もしそうならば、縛られない魂を……外からの到来も……だとするならば……お前も…先生と、同じ???」

 

 

「よくわかったな?ああ___俺も先駆者(おとな)だ。大人になりきれない青二歳。だから権利申立としてお前のアカウントを警察官であるキリノに対処を願った。そうすれば犯罪者は追うべき対象としてキリノの中で正当化され、見えなくとも狙うべき敵として扱う。この背中に突き刺すクナイはつまりそういうことだ」

 

 

「あああ!!…り、利用っ、されたぁ!!あの世界を…!リザルト画面に進まずそのまま残した、故にっ!」

 

 

「やはりマエストロが言った通り後始末ができない子供のようだな、お前は。でも既に大人として言い訳の付かない刻をその身に刻んでいる。だからそろそろ【責任】を取ろうか?」

 

 

「せ、責任…だと…??」

 

 

「そうとも__責任。これは子供部屋から響いた近所迷惑の代償。言うならば荒らし行為。その被害は到来したんだ。痛みの連鎖によって。まあつまり…正当化の色彩に喧嘩を売ったという落とし前をな!!

 

 

ぐきゃぁぁぁあァァァ!!!

 

 

 

クナイを引き抜き、その背首を掴む。

 

すると地下生活者の周りを琥珀色のヘイローが浮遊し、ゆっくりと回り始める。

 

暴力的な神秘が、中央に収縮を始めた。

 

 

 

ひ、ひぃ、ひぃぃ!ひぃぃぃい!!?この神秘は何故だぁ!!?何故フレンド枠がこんなのを秘めているぅ!!??それともやはり外付けを正当化したというのか!?あ、あ、あああ!いやぁああ!嫌だァァ!!死ぬぅぅぅ!!死んでしまう!!死んじゃうよぉおおお!!やめ!やめろぉお!やめろよぉお!!やめてくれぇ!!あああ!嫌だァァ!やめろ!やめろ!!やめろ!!こんなの嫌だぁぁあ!死に近づくのは嫌だァァ!あああ!いやだ!なんでだぁ!なんで色彩が俺を殺すんだよぉおお!!?お前はなんで人の形で健在なんだよぉおお!?暁のホルスは反転したというのにお前は何故保たれているんだぁ!!?それは紛れもなく色彩だろうがよぉおお!!何故だ!何故だ何故だぁ!!理解できない!!ああああ!!いやぁぁああああ!!死にたくなァい!!たすけてぇぇええくれぇぇえええ!!

 

 

 

死を理解する地下生活者だからこそ、この神秘を目にして理解する。

 

より近くに。

 

より鮮明に。

 

より色黒に。

 

わかりやすく証明する。

 

 

 

 

 

色彩を招いたのはお前だ!!

 お前が引き起こした始末だ!!

 しかし、それでも、されど!!

 無責任を吐き切るというのなら!!

 

責任を果たせない大人は…!!

この俺が責任を持って殺してやる!!!

 

 

 

「ギィィイァァアアァァァアァァァ!!!」

 

 

 

 

 

 

集約した膨大な神秘が光となった。

 

 

牢を突き破り、光の柱が立ち上がる。

 

 

灰色の空を突き破り、彼方(かなた)まで届く。

 

 

跡形もなく消し飛ぶ、血肉。

 

 

人の形をした色彩は躊躇わない。

 

 

大人を果たせない、この大人に対して。

 

 

この世から消し去るために。

 

 

責任を持って____正当化、を施した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ……ココにも…明日が来たんだな…」

 

 

 

 

 

見上げた空は色付きの透明感に満たされている。

 

それは正に__ブルーアーカイブのようだ。

 

 

 

 

 

つづく

 







はい、地下生活者は死にました。
まぁ誰も心痛まんし、ええやろ。


因みに仲正イチカは先生初の【虹色封筒】って設定であり、キリノの続いて二人目の募集生徒さんです。古参です。なので声が聞こえた(絆レベル90)

大事なのは環境キャラであることじゃない。
「自分にとってそれ程に」っと誇れる理由ですね。
〈l〉愛です…愛ですよナナチ



じゃあな!
またな!!
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