それは、唐突に【到来】した。
この表現は間違いではない。
侵入したと言うよりも相応しく響くんだ。
何せ、そこにいるのは同じ子供とは思えない。
___そこを退け、俺が全て終わらせる。
手元に握ったアサルトライフルは震えながらも突如現れた侵入者に向いていた。
しかし定まりの悪い銃口は迷わせる。
もしかしたら。
もしかしたら。
もしかしたら、この真実は偽りとして生え替わってくれるのではないのか、と。
__通してくれ、成すべきことを成すために。
長い事刻んできた恐怖と、真実として受け入れるほか無かった『虚しさ』で押し込んでいた本当の痛覚はそこにいる侵入者を目の当たりにすることで疑いをもたらす。
もしかしたら。もしかしたら。
もしかしたら、この世界を偽りとして砕け散らせてくれるのかもしれないと。
「…もう、嫌だ……」
痛いのは…
「…もう、嫌だっ……」
苦しいのは…
「…もう、嫌です……」
虚しいのは…
「…もう、嫌なんだ……」
こんな場所は…
根の底に張り付いていたはずの大人の教えはいとも容易く枯らされてしまい、その下にあった芽が光を知ったんだ。
震えが治まらない。
怖いよりも、今すぐに逃れたい。
この闇から。
到来したその者に向けていたはずの銃口は次々と下ろされてしまう。中には膝を折り曲げて泣き崩れてしまう者まで現れ、その場にいた小隊長ですら周りと同じように何も出来ずにいる。
マスク越しに啜り泣く声を聞き受けるだけ。
___ならば、後は俺に任せておけ。
バシリカに続く街道を最終防衛ラインとして集っていたアリウス兵達が、その男の進む足を止めることはない。琥珀色に光輝くヘイローがアリウス兵の間をすり抜ける。
聞こえるのは踏みしめる軍靴の音だけ。
しかし、同じ子供のはずのその男はあまりにも大きく見えた。
多分、これが真実だ。
マダムとは違うのに__同じ大人だった。
そして…
琥珀色の神秘はバシリカの天を突き破った。
__全てが、終わったんだ。
…
…
…
___私達は終わらない。
何が光だ。
何が救いだ。
何が明日なんだ。
私達は虚しさを忘れない。
それを忘れさせないためにマダムがいる。
マダムの【教え】が私達を生かした。
全ては虚しい。
虚しいからこそ、憎い。
憎いからこそ、苦しい。
だから__その苦しみは忘れてはならない。
この【真実】を。
この【世界】を。
この【事実】を。
嗚呼___それを奪ったのは『誰』だ?
アイツだ。
___月雪カナタ だ。
バシリカから天を貫く青白い光と、そこに織り重なる琥珀色の光を背にして私達はカタコンベを走り、アリウス自治区を放棄する。
幾つかの物資を乱雑に持ち込み、同時にこの虚しさと憎しみも荷に詰め込んでカタコンベを走る。
「おい!新人!遅いぞ!急いで走れっ!!」
「っ!」
焦りを含めた苛立ちと共に駆ける。
この小隊は両手で数える程度しかいない。
事実上の敗走兵。
それをたった一人の兵士に斬り崩された。
この信じられないような結果があのバシリカを貫く光の柱なんだろう。
「守月!足を止めるなと言ってる!!」
「ご、ごめんなさい…!」
後ろの光に惹かれそうになる新人を恐喝し、私達はカタコンベを出て、そしてトリニティ自治区を脱する。もうアリウス自治区はダメだ。
あの場所は終わった。
光が差し込もうとするから。
「た、隊長、これから…何処に?」
「っ!うるさい!!黙れ!黙れ!!」
アリウスらしくない新人を銃で殴りつけてその声を黙らせる。
何を不安に思うか。
私達はこんなにも憎いと言うのに。
真実を否定されてこんなにも明日がうるさくて堪らないというのに。
それでもアリウスしか世界を知らない私達は表の世界を忍んで歩く。
ああ、虚しい…
そして。
気づけばブラックマーケットというはみ出し者が集う街に着いた。
雰囲気からしてアリウス自治区を思い出す。
過ごしやすいと思った。
そうして敗走した私達は生きるためにブラックマーケットに身を置いて………ひとつ失敗した。
「はぁっ…はぁっ…」
「ごほっ…ごほっ…」
「うぐっ…ぐぅぅ…」
「なんだなんだぁ?ボロボロでこの見窄らしいガキどもは?痩せこけてやがる」
「明日の食事も拾えない世間知らずはカイザーという大企業の恐ろしさを知らずして反抗してきたかぁ?ははっ!残念だがここにはヴァルキューレも何もいねぇぞ?ああん??」
奴らの領地に間違えて足を踏み入れ、それで勝手に踏み入れた上に無断で拠点として扱った罰則金を支払えと銃を突きつけられ、私達は全員で反抗したが、まともな食も睡眠も取れてないこの体と、満足に補給できてない武器は何もかもが揃っている大人達によって捻り潰された。
マスク越しに頭を踏みつけられる。
オートマタの鉄が重たい。
泥水がマスクの中に浸水する。
「がはっ!ごほっ!ゴホッ!」
「ぎゃはははは!!身寄りのない子供というのはどうしてこんなにも
虚しい…
虚しいっ…
ああ、そうだ。
これも、全部…
ああっ、こうなったのも、全部…!
「カナタ、ァァ…ッ、つき、ゆき…カナタぁ!アイツが…っ!!私達…のっ!」
「ああん??」
私を踏みつけるコイツが憎い。
だが、それ以上に。
アリウスを否定したアイツが憎い。
その結果が、この虚しさと、痛みだ。
「ほぉ…月雪カナタ、か。あのSRTの小僧か」
「なっ!?プレジデント!!?」
新たに現れたオートマタ。
その中でも位が高そうな大人だ。
するとそいつは泥水に沈む私に語りかける。
「月雪カナタが憎いか?」
「!」
「憎いか!あの忌々しい男が!?」
「!!」
「憎くて堪らないか!あの存在が!?」
「!!!」
この身体にある真実がぐつぐつと煮えたぎる。
ああ、そうとも。
月雪カナタが……憎くて堪らない。
あの光が__私達をそうした。
真実を否定するから、こんなにも苦しい。
「わたし、たち、は…っ!」
「……ふむ。まあ良い、連れて行け」
それから私達はカイザーという名の組織に捕まり、雑に荷台に詰め込まれると搬送される。
それから武装を解除させられ、荷物も奪われてしまい、しばらく牢屋に押し込まれた。
私達は……どうなる。
この虚しさのまま……朽ち果てるのか?
「おい、小娘。これはなんだ??」
「ぁ、ぅ?」
途切れる意識を繋ぎ止められる。
私は顔を上げ、その大人に視線を合わせる。
するとその手元には何かの紙。
よく見ると__計画書だ。
それは、確か…
「マダム…の、計画、書……」
「計画書?これが??」
アリウス自治区を放棄する際、マダムの真実を少しでもアリウスから持ち去ろうと乱雑ながらもかき集めた。それはその一部だろう。
そして計画書。
実際のところ私もそれがなんなのかはよく知らない。
何せ、読めないんだ。
学が足りないから。
「何も知らない顔のようだな」
「それ…は……なん、だ…?」
「無名の司祭が残した暗号記述だ。ふむ…どうやら私達の知らない組織が裏で暗躍してたみたいだが、しかしこのような産物を子供程度が抱えていたということは差し詰め、君達はそこから敗走したという……名はアリウスか」
「!」
「くっくっく!しかしこの状況、そして先ほど泥水の中でも溺れない憎しみからして。何もかも奪われた故にブラックマーケットにたどり着いてしまったか。同情はする…が、人の領地で勝手な事をした落とし前も必要だな」
「っ、なにを、する気…だ!」
「そう怯えるな。これも一つの運命とやらだ。むしろ君たちは喜ばしく思うが良い」
「っ??」
「この物珍しい暗号記述。まだ全ての解読は進んでいないが何かは大方理解した。アリウスから敗走した君たちの現状を読み解く限り、このマダムとやらは計画成功後のセカンドプランとして用意した
大人は喜ぶ。
子供の私は何も話が見えない。
マダムは一体何を残そうとした?
支配した後に必要とされる宇宙の銃口??
それは、なんだ??
「さて、ここで君達に選択がある」
「な、に??」
「私達カイザーの領地を勝手に使用した。その無断で使用した料金を払わなければならない。だがボロボロに逃げ惑う君たちにそんなモノは用意できない。だから何か別な形で支払う必要がある」
「っ…」
ああ、元から選択がないようなモノだ。
私達は、大人相手に__間違えた。
「そこで提案だ。まあ提案といっても拒否権のない働きだが、しかし君達にとってもこれはある意味メリットになる対価だ」
「メリ、ット?」
「くくくっ、君達が抱えるその憎しみ…」
___私に支払わないか?
悪魔のような契約。
だが、頷くほかあるまい。
しかし、これでも良かったとも言える。
ああ、何せ…
「月雪カナタ…我が社にとって最大の敵。これまで幾度なくカイザーの障害となり、SRTの名の下で武力介入を受けてきた。全くもって恐ろしい子供だ…いや、アレは子供か?私からすればそれ以上の存在として捉えられる。率直に言えば気味が悪くて仕方ない。アレがキヴォトスに存在しなければと幾度なく思ったことか…」
ああ、わかる。
私にもわかる。
同じ__子供のように思えなかった。
「小娘、その憎しみはナニがあるからだ?」
「……月雪……カナタ」
「そうとも。私達も同じ。だからその対価は尽きない憎しみとして我が社に支払え。そうすれば解放してやる。その憎しみも同時に。約束は守ろう。私たちは【大人】だからな」
「…………わかった…」
私は知らない。
大人の口車に乗せられる子供の愚かさを。
けれど、関係ない。
何故ならわたしはただ、あの男が憎い。
この虚しさを裏返そうとする、あの存在が。
ああ__やはりそうだ。
全てはただ虚しいだけ。
これだけが世界の真実なんだ。
…
…
…
♢
…
…
…
「え?俺が晄輪大祭の選手宣誓?」
「そうよ。リーダーが候補に上がってるわ」
今年入った新入生達のデータが刻まれたタブレットを操作しながら人をダメにするクッションに背中を預け、その膝に看板猫を乗せている一人の青年が反応する。
2年に1度開催されるキヴォトスの催し。
__それは晄輪大祭。
またの名は、キヴォトス大運動会。
しかしこれは単なる体育祭ではなく、連邦生徒会運営の下で開催される、学園の垣根を越えたキヴォトス最大級の合同体育祭。
参加する各校は実力をアピールする機会でもあり、それと同時に敵対関係にある学校同士でも武器を置いて(なんとか)協力し合うことが不文律となっている。
それでも古くから開かれてきた晄輪大祭はキヴォトスの平和維持に貢献しているため、キヴォトスの治安を管理する連邦生徒会としてはこの催しに価値を見出していた。
そして今年の晄輪大祭はD.U.シラトリ区で開かれることが決定されており、また同時に学園が存続してなかった故に今日この日まで不参加だったSRT特殊学園も今年から十数年ぶりに参加することが決まった。
と、言っても彼ら彼女はSRTの兵士たち。
そして本大会の参加者、月雪カナタは現在その班分けを行っているところだ。膝の上の看板猫がゴロゴロと喉を鳴らす。学園生徒に可愛がられているお陰で毛並みは健康的だ。
「それにしても俺が選手宣誓か。十中八九、連邦生徒会長の指名だと思うけど。で?なんか台本的なのある?」
「あるにはあるけど、リーダー自ら考えても構わないと思うわ」
「なるほど。ま、ギリギリまで考えとくよ」
「そうしてちょうだい」
SRT特殊学園副リーダーとしての立ち位置に当たる元トリニティ生徒の
ウリエは__このひと時が、好きである。
表舞台でも、裏方でも、リーダーとして組織のために尽力する彼に紅茶を淹れる。
入学当時は男性生徒の彼をまあ珍しいと思いながらも内心その異色な存在を警戒していたが、この3年目ですっかりと焼かれていた。
それは他SRT隊員も同じ。
男子生徒という珍しさは客寄せパンダだけで終えることなく、SRTの文字が刻まれた手作りの腕章を部隊の先人としてその腕に巻いてもらいたいと、皆から願われたほど。
そしてそれは今も尚、健在である。軽沢ウリエはそんなリーダーを支える。紅茶は友好の証かつ親愛の表し。この2年間変わりなく紅茶を淹れ続けてきたウリエは僅かに優越感がある。
ただし彼女を勘違いしてはならない。
女子生徒ばかりのキヴォトスで脳焼き特化な男子生徒の月雪カナタに対し、親愛の感情を持ち合わせてもそれはLOVEに近いLIKEの感情であること。
言葉にするなら【尊敬】また【敬愛】として表現した方が比較的正しいだろう。
まあそれでも、周りからすれば絵になるほど非常にお似合いな二人として見ている。
率直に言えば___推せる。
天使の羽を付けた美しき女性と、看板猫を撫でながら笑談する男性。2年間という信頼を築いてきた関係だからこそ穏やかなその雰囲気に濁りはなく、たわいもない会話は談笑となり、香りの良い紅茶に口をつけて嗜む彼に彼女は微笑みながらお盆を膝下に持つ。
__この学園にはあの二人がいる。
その言葉にあらゆる意味が込められて。
「それにしても今年の入学生、ケモ耳多いな。良いことだ」
「注目するべきところはそこ…?」
「百鬼夜行の出としてはケモ耳要素は無視してはならない。これ絶対に」
「そういえばトリニティを見限って百鬼夜行に向かったのはケモ耳が多いからだったわね…」
「せやで」
「躊躇いひとつない肯定……」
タブレットの中には一期生、二期生、そして今年入ってきた三期生と、在校学生のデータが刻まれている。この生徒達は主に連邦生徒会長の厳選の下スカウトされ、入学してきた。
一期生と二期生はそう遜色ないメンバーが加入してきたが、三期生は何かとケモノ耳を付けたキヴォトスの生徒達が多かった。それ故に今年は部隊分けで動物の名前を飾った隊が多く作られた。キツネ。ネコ。イヌ。ウマ。なかなかのケモ耳率。
「月雪リーダー!お聞きしたいことが!」
自語りすればなんとやら、ハーブティー片手にケモ耳のことを考えながらタブレットを眺めていると横から一人のケモ耳が話しかけてきた。
「どうした?___ ユキノ」
名前は七度ユキノ。
今年入ってきた新人だ。
カナタに対して尊敬の意を込めながらもその赤い目はどこか非難的だった。
「ど、どうしたではありません!先輩から聞きました!リーダーは夜な夜な学園の裏に女性を連れ込んでは夜遊びしているとはどう言うことですか!?」
ハーブティーを口に含んでいたら絶対に咽せていただろう新人の爆弾発言。もし噴き出していたら膝上の看板猫にかかっていた所だ。もうこれ以上の猫ミーム素材は不要である。
そして同じエントランスにいた何名かのSRT隊員の視線がバッとカナタの元に集まる。
しかし、その視線は批難に包まれた雰囲気ではなく、これは誤解を招いてるなぁ〜と、さまざまだ。
特に一期生と二期生はその意味を理解しているのでユキノの誤解を理解している。でもそれはそれとして、助け舟は出さずにこの状況をニヤニヤ、クスクスと笑っている。
ただし、ユキノと同じ新人の3期生達は「女性を連れ込んで夜遊びした」の言葉にギョッとしたりとまあ表情がやかましい。
それでも三期生の中で何人かはその意味を理解していみたいたが、誤解を招く言葉がエントランス内に響いてのは紛れもない事実。
>ヒソヒソ……英雄、色を好むだわ…
>ヒソヒソ……爛れているわね…
ウマ耳の新人達からだ。
作品が違う。スレ板に帰ってどうぞ。
「あれ?もしかしてユキノは知らないの?」
「ニコ!知らないとは何がだ!?」
「リーダーとの特別訓練」
「なっ……特別訓練??夜に、か??」
「うん」
「夜の訓練……それは、つまり……」
しばらく何かを考え、ハッとなるユキノ。
そして彼女はカナタの方を振り向く。
意味を理解してくれたか。
カナタはそう安心してニコの誤解に感謝しようと、し___
「そ、それは!つまり!リーダーと夜の稽古と言うことですか!?ハ、ハレンチです…!!」
残念、覇王世代ではなく97年世代だった。
どこぞのメジロだろうか(風評被害)
「ユ、ユキノ?それは色々と勘違いだわ。別にそういうのじゃないわよ?」
「な、何を言うんですか!?話によるとウリエさんが一番最初の女性と私は聞きましたよ!?」
ずるっと崩れ落ちるウリエ。
微かに耳をピコピコするユキノ。
想像多感に勘違いする同期に対して呆れ顔のニコ。
そして一期生は大爆笑である。
ああもうむちゃくちゃだよ。
「あのなぁ?ユキノ。そりゃ夜何かやってるのは否定はしないが、夜な夜な女性を連れ込むってのは違うからな?」
「ナニカ!?それはつまり!夜のナニカってことですか!?ハレンチです!!ダメです!!」
嗚呼__この頭メジロ(風評被害)なアホォックスはどうしたら良いだろうか。
カナタは天井を見上げる。コメ食いてーのポーズをするキリノ*テラーの姿を幻視する。
膝の上の看板猫は知らず顔。にゃおー
活きの良い新人ってのは中々好きなカナタであるが、思考回路のイきが良すぎてしまうのは扱いに困ると、頭の上に浮かぶ琥珀色と錆色のヘイローをクルクルと回す。
まるで Now Loading のように回転。同時に思考する。
それから再びウリエとニコが、勘違いしているユキノの誤解を説明する。
そんなカナタはポケットから携帯を取り出してとある相手に連絡を繋げる。
数秒後、つながった。
『にぁ?リーダー?どうしたか、にゃ?』
「お前を殺す」
デデン!? と携帯の奥から愉快なSEが響く。
後でウリエ直伝のツインバスターロールケーキライフルの刑が襲いかかるだろう。
それからカナタは通話を切断すると頭の上に浮かんでいるヘイローを一つ摘み取り、新人のユキノにヘイローを投げ渡した。
「ユキノ、それを今夜になったら学園裏にある湖まで持って来い。これはリーダーとしての命令だ。返しに来い」
「め、命令ですか!?」
「ああ。答え合わせしてやるから」
「こ、答え合わせ………はっ!?合わせ!?」
「うーんコイツほんま…」
まだまだ精神的に未熟なアホォックスな新入に呆れながらカナタは膝から看板猫をクッションの上に降ろすと「ハーブティーご馳走様」とウリエに一言伝えてエントランスを出る。
そして。
「ネコ耳のバカはどこだァァ!!」
「ぶ、部長ぉぉぉオオオ!!?」
部の
意味としては恐らく間違っては無いだろう。
まあそれはともかくとして、誤解を招いた同期のバカネコに対してカナタはお口にロールケーキをぶち込むことでレッドウィンターよろしく粛清してやった。
__任務完了。
…
…
…
「ぶくぶくぶくぶくぶくぶく…」
「メッタメタにされちゃってるわね…」
琥珀色のヘイローを重ねられたまま水上でうつ伏せに撃沈しているのは、約束通りに学園裏の湖までヘイローを返しにやって来た新人の七度ユキノ。
その付き添いとして同期のニコ、更にニコと同じ同期かつFOX小隊の隊員であるオトギとクルミも湖まで足を運びやって来た。
夜の8時過ぎだよ!
FOX小隊!全員集合!
それから他3人を除いて特別訓練の意味を知らないユキノはカナタに尋ねと、漫画やアニメで良く見られる忍者のようにカナタは水の上に立ち、そのままニコを手招きするとヘイローを投げ渡す。ニコは手のひらサイズのカナタのヘイローを自身のヘイローに重ねるとカナタの神秘が備わり、そしてニコも同じように水の上に足をつけて忍者のように浮いた。
残されたオトギも「はいはいわたしもー!」と手を振って強請ったのでカナタはクルミの分も含めて二つ投げ渡し、二人は手慣れたように自身のヘイローを重ねるとバチャバチャと水上を踏み鳴らしてユキノを陸に置き去る。
連続で起こる神秘的な光景にユキノはケモ耳をピーンとさせて驚いたまま固まってしまい、そんな彼女にクスクスと3人は笑う。
ちなみ、この中で一番最初に知ったのはクルミである。ある夜に寮を抜け出す先輩達を連日見て気になったクルミは好奇心を優先して跡をつけると水上で水飛沫を交えて訓練する先人達。
一期生のみ与えられる藍色のSRTのジャージを着こなした一期生と、その後は水色で統一されることになったジャージで参加している二期生、それから既にこの特別訓練を知って参加している三期生達の姿も交え、クルミは目を見開いて眺めていた。
それに気づいた周りは「お、今日は新たに一人来たようだ」と、よくぞ見つけに参った!とばかりに笑う一期生達。
また「私も最初はあの顔をしてたよねー」と当時一期生だった二期生は今のクルミのリアクションを懐かしみ、そしてクルミと同じ三期生は「クルミちゃんが四人目だね!」と歓迎する。
それからはニコ、オトギと参加し、そして入学から2ヶ月目にしてやっとこの特別訓練の存在に気づいたユキノである。
「リーダー!次は私と稽古してよね!」
「待って、先に私がやるからダメー」
「もう二人とも、困らせないの」
「げっほ、げっほ……」
ケモ耳を揺らしながら順番を競うクルミとオトギに嗜めるニコ、不慣れな水上でCQCによってひっくり返されたユキノ、そして目の保養としてケモ耳を視界に入れながらも見守るように四人を眺めるカナタ。
七度ユキノは昼間に勘違いしては暴走気味にカナタを問い詰めていたが、しかしカナタは尊敬の対象である。何故なら月雪カナタはFOX小隊の教育係だから。入学から適性検査を済ませた後にFOX小隊として組むことになった四人の教官となったカナタ。四人は大変喜んだ。
ある日のニュースからSRTの存在はシラトリ区を中心に広まり、その中で月雪カナタは有名になった。またシラトリ区のゲームセンターではスコアを荒らし回ってはSNSで投稿するなどプライベートの顔でも有名になり、その名を知ってるものはよく知っている。故に彼の活躍は世間的にも良く耳に届くようになった。
そのため入学前から月雪カナタの存在を知っていた四人。実際に学園で出会い、また入学時のスピーチとして表立ち、それからは歓迎の証としてSRTの顔と言っても過言でない彼から善哉を振る舞われ、組織下に於いて精神的大黒柱となっている先人であることを再認識した。
既にこの時点でニコは焼かれた。少なからず自身は抱擁感があり、また仲間のことを数歩後ろから見守ることが好きだったりと、それは自身の性分として認識し、それは大人になるにつれて目指すべき姿だとニコは思っている。
しかしカナタの振る舞いはニコの理想でもあった。なにせSRTはあらゆる自治区から混合させ集った特殊学園。だが彼は自治区の垣根など気にしない。気にさせない。犬猿と言われたトリニティとゲヘナの生徒が一緒だろうがそれをしっかり取り持ち、組織を強固に繋ぐ。
それは数歩後ろから見守る姿勢と同時に手本となる先駆者として数歩前を行く姿でもある。
それでいて、とてつもなく強い。
言葉に力を持たせる実力者。
誰もが疑えない。故に完璧だ。
それから二ヶ月目。
ニコはすっかりと焼かれていた。
オラ落ちろォ!落ちたな(確信)
「決まらないなら二人同時にかかって来い」
「よしっ、なら行くぞ!うりゃぁ!」
「ちょっと!待ちなさいよ!」
オトギがニヤつきながらカナタに突貫し、出遅れたクルミが怒りながら追いかけ、ニコがやれやれと苦笑い、ユキノは頬に垂れ落ちる水滴を手の甲で拭いながら二人を眺める。
踏み込み具合によって足場が揺れる水上。
しかしその場からあまり動かずにCQCで二人を捌き、先にオトギを転がしたカナタ。
一人残ったクルミは両手両足で必死に食らいつき、カナタは余裕気に片手でその猛攻を弾く。
時折、足元にある水を蹴り払っては相手の手鼻を挫いたり、視界を奪ってはその背中をポンっと押し、立ち上がったオトギの不意打ちを避けては足払い、クルミの手を引いてオトギの背中にぶつけて二人を水上に転がす。
なんてことないように捌き切る彼の白兵戦は演舞の如く、百鬼夜行自治区からやって来た猛者であることがよく分かる。そしてカナタはチラリとニコを見る。その挑戦的な視線にキツネ耳をピクりと動かしてしまう。すると数歩後ろで仲間を見守っていた笑みは闘争心を含んだ笑みに切り替わった。やはり彼女もSRTの兵士である。尊敬する先人の胸を借りれるなら無駄にするわけがない。それでも秒で転がされてしまった。やはり彼は強い。
「さ、そろそろ帰るぞ」
「え?…あっ、もうこんな時間…」
「ええー!?嘘っ!もうなの!?」
「あははー、時の流れが早いねー」
「あっという間だった、な…」
水上に慣れた頃に時間を告げられてキツネ耳が少しだけしゅんとなるユキノ。
それを見逃さなかったニコは「また来ようね」と慰めながら陸に上がり、そんな二人にケラケラと笑いながらオトギも陸に上がる。
対してクルミは物足りなさそうに周りより少し遅い足取り。するとカナタは指先でクルミのキツネ耳の先をツンと弾きながら「また今度な」と次回も機会を設けることを約束する。
耳先を触れられたクルミはキツネ耳をピーンと反応させて「もう!いきなりはやめてよね!」とカナタに怒る。しかしそれはともかくリーダーのスキンシップは内心とても嬉しい。
何せ、この中でカナタに一番可愛がられているのはクルミである。
運命的と___言うべきか。
何故かは、わからない。
でもこの先人から目を離せない。
一方的に知っているだけで、彼とは会ったことないのに…でも何故か既視感がある。
それは彼女が知らない、とある追憶。
これは月雪カナタのみが、知っている。
ココではない別世界のクルミとはコールサインを交換し、共に信頼を預け合った仲だ。
それはわずかな時間であったが、同じSRTの兵士として共に信頼を置いていた関係。
ココにいる彼女はその頃よりも前の彼女。
まだまだ新兵である。
片手で捌かれる程度のヒヨッコ。
けれどカナタはこの四人の中で少なくともクルミを特別視していた。別に贔屓しているわけではない。ただクルミと出会った時にカナタは少しだけ驚いた。時系列的に考えればこの出会いはそこまでおかしくない。
実際にカナタはあの騒動後この世界にいる中務キリノをシラトリ区で見かけた。彼女であることはすぐにわかった。それほど濃く、隣り合わせをしていたから。そしてこの世界の中務キリノはまだ中等部であることを確認した。その判断材料からして時系列的にクルミがSRTに来てもおかしくないと知り、そして実際にこうして出会い、そんな彼女が未来先でシールドを持ったタンクとして花を飾る。
クルミは__あの灰色に染まった世界でSRT最後の兵士だった。堕落天使に襲われながらもクルミはタンクとして市民を守り、それでいてエリドゥまで撤退する。それでいて遠隔で狙って来たセトの憤怒の攻撃をいち早く察知して先生を守った。その後も血塗れになりながら意識を取り戻すとヘリコプターの操縦を代わり、最後までSRTとしての指名を果たす。
ココにいる彼女は新兵であるが、カナタからすればクルミという兵士は敬意を表するべき対象であり、そして同じSRTとして誇りだった。
だからカナタは思う。
彼女を__クルミを育てる。
尊敬されるべきSRTの兵士として。
自身はFOX小隊の教官役といえど半年程度の期間だけで、地固めを手伝う程度の役割。
それから先は己らが小隊を築き上げる。
もちろん信じている。
彼女を、彼女達を、胸を張れる兵士として。
「……」
月雪カナタは今年で最後である。
次世代に残すべき重要な学年だ。
だからカナタは任されたこの四人を育てる。
そしていつしか、彼女達も今の月雪カナタのように三年生となった時、SRT特殊学園の先人として後続に胸を張れれる素晴らしい先駆者となれるようにと、カナタは望むから。
「FOX小隊」
「「「「 !! 」」」」
その大きなキツネ耳は飾りじゃない。
尊敬する先輩の言葉を逃さない。
既に兵士として備わる四人はカナタの声色に反応してバッと横に整列する。
カナタはその整列に少し驚き、少し声色が真面目すぎたか?と軽く笑んでは勤勉な彼女達に関心しながらも、コチラもその勤勉さに応えるべきだろうとカナタは指をパチンと鳴らし、四人からヘイローを回収する。
「君達はどの小隊よりも伸び代があるんだと俺は思っている。そして数年後の君達が今の俺のように先駆者であることを望んでいる。だから明日から訓練を増やす。ちゃんと着いて来いよ?良いな?」
「「「「はいッ!!」」」」
その声は期待を込めて、またその期待に応えようと透明に響く。
そしてその期待は応えられるだろう。
誰もが、それを疑わない。
この先駆者がそう望むから。
…
…
…
…
…
…
だから、ソレを奪うなどあり得たくない。
「リー、ダー…?」
シラトリ区の中央区からやや外れた、街区にて一つのクレーターが跡地として物語る。
たまたま、機動隊としてスタジアムの外に残っていたからこそ、動けたFOX小隊。
「なに、これ…」
破壊された戦車やロボット。
倒壊し尽くした電信柱や自販機。
ビルや建物も所々半壊している。
そして、何故かいるガスマスクの生徒。
その生徒の頭部には琥珀色の光を失った片鱗がコンクリート道路の上で少しずつ崩れ、砂になろうとしている。
もう、色は輝かない。
無慈悲な風と共に神秘は消えて行く。
「うそ、だ…」
向かう最中に響き渡った、衝撃波。
目指す先に降り注いだ一つの光線が、目の前の惨状を産んだのだと、彼女達たちは理解する。
そして、なによりも…
腕に巻かれたレーダー端末に点滅していた筈の
震えるアサルトライフル。
膝をついてしまう仲間。
手元から落ちて倒れるシールド音。
この静寂が…恐ろしすぎるんだ。
「どう、して…???」
しかし、されど、見ている光景が全て。
そこには__
敬愛すべき
つづく
やっぱケモ耳ってのは最高だよなぁ!!
どこかの
でも本当にケモ耳って素晴らしい文化だと思うんですよね。
なんでだと思います?
理由は結構簡単なんですよ。
僕が考える限りだと社会の荒波に疲れた歯車達が癒しを求めようとモフモフのフサフサに心を溶け込ませてしまうよ。そこらへんブルアカ開発陣もよく理解してらっしゃる。
長いケモ耳。本当に最高だよなぁ?
好き好き大好き発表ドラゴン!!
特にSRTのニコの長耳とか本当に本当に素晴らしいんですよ。本当に素晴らしい。抱擁感を全面的に出してるのはもちろん、あの優しそうな桃色の長耳はコチラの身長差をリードするけど、まあでもそれはソレでお姉さん気質を引き立たせる最高の要素だし、ある意味としては通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃のお母さんのような魅力たっぷりのこのキャラクターはケモ耳が長耳で包容力全開のお姉さんはお好きですか?としてブルアカ界隈を揺るがしてくれるハイスペックの持ち主。ケモ耳最高。
でもそんなニコもこの小説ではまだ高等部一年生で先輩の背を追いかける年齢であるんですよね。本人は自身が包容力に満ちているんだろうとある程度の自覚を持っていますが。実際に数歩後ろから友人や仲間を見守る姿勢が見合っているんだと相応の適性力また性格分析が済んでいるような状態で、いわば精神面は大人に近しいためお姉さんタイプとしてある程度の完成はしているのは確かだけど、でもやはりまだ自分は高等部一年生の新人として知らないことや、これから知る必要がある様々な未来に不安を感じている状態だから、ちゃんと導いてくれる先輩ってのはやはりニコにも必要なんだよね。
でも大丈夫!
この世界にはカナタくんがいるよ!
カナタってやっぱり読者先生達が存じている通りにキヴォトス人(女子生徒)の脳に特攻なネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲の完成タケーなくらいにスーパーハイパーウルトラアルティメットグレートマックスなオレと超次元に吠えれるスパダリくんだからさ、お姉さんタイプのニコであろうと脳がこんがりとさせてくれる男性キヴォトス人なんよね。
フフッ…FOX‼︎
だからニコはこれまで経験のないカナタとかいう異性から伝わる安心感に困惑しながらもそれが心地よいと知るんだよね。でも良くも悪くもプラスしてニコの知らない感情を芽生えさせてしまい、それがLIKEかLOVEなのかは定まり付かない答えが心に渦巻くんだ。でもこの人がこの学園の先人として前を立ってくれるなら私は大丈夫なんだと、無条件に与えてくれる心強さは精神的安定に繋がるし、学園生活にも身が入るし、何より今回は教育係なんだよね。
だからニコにも少女らしい感情はあるんだよ。お姉さんと言ってもまだまだ子狐。そりゃFOX小隊の中では精神面で強く自制心が効く方の生徒さんなんだろうけど、やっぱり優劣というのにも敏感になってくる年頃だからそこに優越感という感情が芽生えてしまうんだよねニコ。
そりゃ同じ学園にスパダリ太郎なカナタくんが在校してるってだけでとんでもないレベルでの幸運な出会いだし、なんだったら同じ時代に生まれられたことも奇跡だし、それでいて同じ学園の空気と時間を共にしているってだけでも勝ち組として疑いようがないのに数ヶ月限定とはいえ小隊の指導者として誰よりも近くで視線を合わせてくれることはどれだけの徳を積んだらこんな展開に出会えるだろうって話よ。もう脳はキツネ色にこんがりよ。
でも脳焼かれてるだけではダメだよニコ。ちゃんと素晴らしきこの機会を活かしてしっかりとカナタから色々と吸収し、先人の期待に応えられる素晴らしい後釜として存在証明することは先輩に対する最大の恩返しだからね。だからふわふわアヤベさんなケモ耳も凛とさせてしっかりとSRTの名を背負うんだよね。それでいてちゃんと部隊のために金スキルの精神的支柱としてチームの打率を支えれる立ち位置になるのは原作と同じ展開か、もしくはカナタくん補正によってもっとそれ以上になるかもしれないね。
だってカナタくんが期待してくれるんだよ?今回の話で『軽沢』とかいう名字貰った元トリニティのウリエちゃんだってカナタくんのおかげで日頃とても充実してるし、それでいて皆のリーダーを支えようとすることは自分が思っている以上の成果が出てるし、やはり誰かに期待されているってのは普段の成長具合が違うんだよ。
それはニコ自身もカナタとか同じ先輩であるウリエを見て理解してるだろうから自分ももっとこの先駆者からインスピレーションを得るべきだろうと向上心に当てるんだ。でもごめんねニコちゃん。インスピレーションバカはマエストロくんが全一なんだよ♡今回は残念だったね。
けれど大丈夫だよニコ!!
カナタくんはちゃんと君を見てる!!
後輩を置いて行ったりなんかしないよ!!
まあ、後輩を置いていくんですけどね。
てかカナタくんってさぁ。あのさぁ。それはもうっ非常ッッに残念なんだけどォよぉ。この作品の視点として受け持つ主人公の立ち位置なんだよね。荒波立たないと思った??
やっぱり常に平和ってのは訪れないやん?
原作でも何かしら騒動は起きるんだよね。
絶対に許さんぞ!!陸八魔アル!!
でも一番許されないのは主人公定期。やはり主人公くんであるカナタくんもニコの側達でいつまでも平和とは限らないんよ。それもSRTとかいうただでさえ銃社会のキヴォトスで一番危険な場所で引き金を引く必要のある役割持ち。それも色んなやつから認知されてしまう戦闘特化の組織のリーダーなんよ。やはり力を持っているとそれ相応の責任が伴ってしまう。
ほら出た!__責任!!
この言葉が彼から平和を奪う!!
もう大体ネタバラシに近い状態だけどカナタくんってとてもとてもわるーい大人達によって消し飛ばされるんだよね。いくら色彩扱いでも肉体は物理感情可能な人間さん。弱弱のザーコザコ♡なクソ雑魚なめくじの先生ほどじゃないにしろでもカナタくんは完全無敵のアイドル様の言葉通りに無敵じゃないからお腹に包丁だって時々刺さる。あ、でもスパダリたらし野郎だから女の子に後ろから刺される場合もあるかもしれないね。なら今更前から刺されちゃう程度どうってことないね!ほら皆でカナタくんを仲良く分け合おうよ!カナタくんも皆のために体張ってえらいぞ!好きなところをもぎもーぎ。もう一度してる方の先生を見習って頑張ろうね♡
はー、こんな時に人間アピールはいらんて。
そんなことしても、もう遅いってばよ。
あはは!無理無理ー☆
あーあ。ほれみなさいよー。そんな中途半端するからニコが絶望に歪み始めたじゃないか!ダメじゃないか!死んだ奴が出て来ちゃあ!やっぱ貴族主義とアナハイムってクソだわ。でも残念かなぁ。現実を切り離せるのは裸エプロン先輩だけって決まっているの。やはり奪われる時はどう足掻いても奪われるんだよね。それが世界の理。安易な曇らせもお断り。でもニコは曇っちゃったね。雨が降ったらいつか晴れるけどその逆も然りかぁ。これも晴れ男になれないカナタが情けないからだよ。ちぇぇ。
だからニコは目の前にして知るんだよ。そして理解しちゃうんだ。理想的な都合なんてない存在しないことを。定まらない呼吸が嘘だと言う鼓動を訴えるんだよ。はあーあ。まったく。カナタが無敵じゃないからニコが膝から崩れ落ちゃったやん。せっかくの凛としたふわふわのケモ耳が萎れたよぉ。
だってカナタを敬愛して病まないニコはこのスパダリくんどれだけすごい人なのかはこの数ヶ月程度でも200%は理解しているんだよ?なんだったら入学前からカナタのことは知ってるので既にこの時点で120%は理解してると見ても良いね。まあマエストロは810%くらいだけどな。コイツは本物さ。ギコギコはしません。
でもどんなにカナタを理解していても現実ってのは急にそのパーセンテージってのを無意味なモノとして奪い取るんだ。だからニコはカナタが消えたことを視覚的情報と、そして記憶として残っているはずの温度が冷えていく感覚をその身に知ってしまう。もう無いものは無いんだって。だからもうカナタの記憶と追憶がニコの底に残るだけでその声も温度もないよ。でも季節的に夏だからひんやりだね。カナタは消えてもなお親切さ。やはり素晴らしい先輩だね!よかったね!ニコ!
ああもちろんその隣には同じFOX小隊の仲間がいるんだけど、やはり皆カナタが消滅した事実に放心しているよ。まあそうだよね。カナタのことを知ってるのは別にニコだけじゃないもんね。キツネ耳の彼女達は知ってる。カナタという唯一無二の存在を。掛け替えのない先人であることを。だからいつか胸張ってカナタくんの卒業を祝えるようにと積み重ねてきた。
でも忘れちゃだめだよ??
まだ彼女は高等部一年生なんだ。
原作のスチルのようにキリリとした顔立ちはまだしてないんだ。もちろんその片鱗はカナタくんとの訓練によってある程度は備わったかもしれないけどまだまだ先人の背中を見てSRTとしての誇りをその身に刻もうと奮闘する大事な時期。言っちゃえばまだ甘えてたいという時期でもあるんだよ。仕方ないよ。キツネってのは甘えん坊で独り立ちが遅いもん。知らんけど。
でもカナタくんは消えた。亡くなった。無いなったんだ。はあーあ。キミって本当に最低はお人だよ。なんでこんな素晴らしいモフモフのキツネ耳を置いていくのかなぁ?そりゃニコニコとしてるキャラの絶望に染まった顔は人によっては好物だし、ブルアカハーメルン界隈でも曇らせを主食としている人もいるよ。えへへ!ホシノちゃん!君の出番だよ!いっぱいいっぱいお昼寝しようね!
つまりカナタの消失は無駄でないんだよ。
喜ぶ人だっているさ。
けれどっ!!
ああ!!けれどぉ!!!
失ったモノは戻らない!!
それが現実なんです!!虚しいですねぇ。
えへへ、その点ヒヨリちゃんは偉いね。
ちゃんとわかっているみたいだねぇ。
でもホシノおじさんはユメ先輩じゃないようにニコもヒヨリじゃないからさ、受け入れるのにひどく時間が必要になるんだよね。それでもSRTとして焼き刻まれた魂がわずかに訴えるのかなぁ。このまま首を垂れ続けるのは兵士として愚策なんだってね。ニコだって兵士さ。
けれど現実から振るい落とされた失意はそう簡単に肉体を拾い上げてくれないよね。持ち直すにもそれ相応のナニカが必要なんだ。故に本能と意識が訴えるんだ。カナタくんを失ったニコはそう簡単に起き上がれない。敬愛して病まない先駆者はどう足掻いても彼のみ。まったくカナタは困ったお人だ。
でも奇跡も魔法もあるんだよ!!
首が垂れていたことが功を奏したのかな?ニコの目の前には風に攫われようとする光を無くした琥珀色を見つけたんだ!ニコは本能的にそれがカナタなんだって知ったんだ。やはりニコも肉食のおキツネだもね。嗅覚と本能は誤魔化せないんだわ。それほどにカナタの香りを舌で味わってしまっているから。はしたないのは知ってたけどそれでもニコも女の子。スパダリくん相手には勝てなかったよ。負けちゃえ♡負けちゃえ。
だからニコは無意識に粉々になったヘイローを見て手を伸ばすんだ。カナタをこの身に失いたくないって訴えてしまう。共に刻んだ時間は消えないけど、それでもこの体に確かな証としてカナタを残したいってさ。だからニコは粉々になったカナタのヘイローを鷲掴みして飲み込むんだ。わぁ!カナタくんの一部を身体に入れちゃった!やっぱりニコも肉食かぁ。全然良いと思いますよ!え?お腹も熱いって?そりゃここまで必死に走ってきたもん。熱くもなるさ。
でも喉に流れ込むザラつきはコンクリートの塵や砂なんだろうね。ちょっと不快かな。でも後から伝わる知っているその温かさはニコも覚えている。これもケモ耳付けたキツネとしての帰巣本能なんだろうか?それが本当ならニコはカナタの温かさをを欲しがっているんだね。ふふふっ。やはりニコもまだまだ子狐子供ってことなんだね。うさぎじゃないもんね。キツネだからコンコンしてるところだもんね。
でもニコわかってるかい??それってカナタの神秘なんだよ??つまりカナタの証。それは言わばカナタの血肉ってことだ。だからニコはカナタを食ったと言うことになるね。ならばその解釈は様々だよ。目的としては満たすためだけど過程はどのようになるのか?やはり飢えていたから??
ううん。違うよね!!
ニコはカナタが欲しいだけだもんね!!
ならニコ!君はこの瞬間カナタと一つになったということだよ!体の中に落としたのはヘイローだけどカナタはそれすらもカナタとしての存在証明として意識してきた証!つまりそのヘイローもカナタ!だからニコはカナタを己の一部として飲んだことになるんだよ!あはっ!よかったね!消えたと思ったカナタはニコの中にまだあるんだよ!消えてなんかない!新しい命さぁ!!
ああ!!本当によかったねカナタ!
念願のケモ耳だよ!!好きでしょ?
君はこれからニコと一緒になるんだ!!
ほら見てよカナタ!!もつ居ない君はこの光景を見れないかもしれないけどニコは涙を流すほど嬉しいみたいだよ!!隣にいる仲間はニコの行動に驚いているけどニコはこの温かさに心の底から安心感を覚えたんだって表情を見せてるよ!!いつもは自分が振りまく母性だけど今はカナタに包まれている安心感!!カナタでお腹に満たしている解釈にもなるよね!!だからニコは嬉しいんだ!!敬愛して病まない先駆者がまだこの体に残っていることにね!!
あー!!でもでも!!薬は飲み過ぎると危険なようにカナタの神秘は色彩扱いだよ!!重ねるだけならまだしも体に入れるってのはつまりカナタになるって事だよ!!ああ!!待ってよニコ!!そんな!!それは大変よ!まだ梅雨明けなのに衣替えにしてはあまりにも早いよ!!そんな体を灰色に染めちゃって!!君はキリノテラー程じゃないんだよ!!いくらカナタをその身に刻んでも服用する時は量を守って少しずつ飲まないと!!そりゃ小狐として寂しさ相まって全部飲んでしまったのは理解するよ!!でも自制心持たないと!!ああーでもでも!!その恍惚と言っても過言ではない笑みは幸せの証なんだね!!うんうん!!そりゃそうだよね!!だってニコも憧れのカナタになれるんだもんね!!もしくはカナタを秘めた?まあどっちでもいいか!!ニコの体にカナタは存在証明されているんだから!!
え??ヒンメルもいなければカナタはもういないじゃない??ううん。そんなことないよ。カナタは皆の心にいる。どこぞのクソボケだって皆の心に居るもん。それは証明されたでしょ?あと代わりに確定申告しろアウラ。
それにカナタが居ないのならニコがカナタになれば良いんだ!!そしたらその身にすっぽりと空いた穴は彼方先まで満たしを得れたことになるんだよ!!だから何故か体が灰色になっちゃって何故か世界をそのまま滅ぼしちゃっても全然構わないもんね!!一途な女の子はこの世で最強なんだよ!!だってこうなったのは全部カナタが脳を焼きすぎたのが悪い!!
あーあ、やっちゃたねカナタ。
君が責任を果たせないから。
だから世界を滅ぼしちゃうんだ。
でも仕方ないよカナタくん。
ブルアカって都合良くないから。
もう一度の方でそれを知ったでしょ?
でも後悔なんてしないでカナタくん!!
この記録はハーメルンにちゃんと残るよ!
君の活躍が皆の笑顔になってる!!
それって素晴らしいことだよね??
ニコの事だって最後は笑顔にした!!
笑顔でバイバイ出来るって素晴らしい!!
ぴーすぴーす。
だから次も機会があるなら頑張ろうね!!
君の存在によって脳を焼きすぎた天使達はこの楽園にまだまだ沢山いるだよ!!
だからその責任を取ろうね♡カナタくん。
もちろん!大人の責任を、ね!!
期待してるよ!!へけっ!!
やっぱ本家の方が圧倒的だわ。
無理。もう二度と書かない。
じゃぁな!
またな!!