なんか俺のヘイロー砕けてね?   作:つヴぁるnet

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第44話

 

 

「君に決めた!こっちに来てくれ!」

 

「ふぇ?あ、あ、わ、私?え、ええと…わかったわ…!すぐ行くわ…!」

 

 

お題として渡された紙に書かれている「ツノのある生徒」の内容を確認し、周りを見渡す。

 

すると観客席の前にいたとあるゲヘナ生徒を発見したのだが、非常に分厚い質量を秘めたその神秘に内心驚いてしまう。さりげなくとんでもないのを見つけちまったか?まあ良い。

 

今は学園に貢献する事が優先、俺は見つけたゲヘナ生に指さすと「来てくれ!」と頼む。

 

その少女は指名されたことにワタワタと慌てながらも翼をバッと広げて観客席から俺の元までひと足で降りてきた。

 

それから彼女の手を引いてゴールインする。

 

こうして借り物競走は一番だ。

 

 

 

「ありがとう、協力感謝するよ」

 

「ううん、気にしないで…お陰でちょっと楽しかったから………あと…手が大きかった…

 

 

白モップでも頭に被っているのかと勘違いさせるほどの長髪を靡かせる少女(後なんか手をワキワキさせている)にお礼を言いながら会場の大型モニターに視線を向ける。

 

その大型モニターは晄輪大祭の学園別順位表が掲載されており、SRT特殊学園が一位になっている。

 

よしよし。

俺達めちゃくちゃ優秀だな。

 

まあココまで身体能力でモノを言わせる競技ばかりだったからな、良く訓練されたSRT特殊学園が上位争いに食い込むのは当然として、さらに運も良いときた。これもエボンの賜物だな。

 

ちなみに最下位はミレニアムサイエンススクールである。キヴォトスだろうと理系は体育会系に難ありか。それでもめげずに挑んでいる。お前の苦労をずっと見てたぞ。

 

 

 

「リーダー、お見事です。流石ですわね」

 

「ありがとうウリエ。そんで、その運動着の格好って事は」

 

「ええ、警備は午前中組と交代です。リーダーも次の競技で交代ですわね」

 

「ああ。楽しませてもらったよ。まあ参加したと言っても借り物競走くらいだけどな。ほとんど後ろで応援していた」

 

「次の障害物リレーは総合力の勝負。私とリーダーが組めば間違いなく一位になりますわね。交代前にどうです?」

 

「おお?ならやっちまうか?SRTここにありって示しちまうか?」

 

「ふふっ、それはそれは……ふふっ!」

 

 

俺の言葉にウリエは好戦的な笑みを見せ、他の仲間と話し合い参加登録を済ませる。

 

それから障害物リレーが始まった。

 

まあ結果は言わずもがな、純粋な体力勝負なら皆が特殊部隊のエリート兵士として鍛えているSRT特殊学園が一番強いので、今回の競技も差をつけての一位である。

 

ただしその後のジェスチャーゲームに仲間が苦戦して、代わりに芸術に長けた学園がぶっちぎりの一位になった。

 

向き不向きはちゃんとあるってわけだ。

 

 

 

「そんじゃ俺はここまでだ。シャワー浴びたら午前組と交代してくる。てな訳であとは頼んだぞお前ら。このままリード保って晄輪大祭を優勝してくれ」

 

「ええ、もちろんよ!」

「後は任せてよリーダー!」

「「「SRT!ファイトー!オー!」」」

 

士気もやる気も充分な仲間達に後を任せ、あまり使われていない男性更衣室まで向かう。

 

それからシャワーを浴びて汗を流し、琥珀色と錆色のヘイローもゴシゴシ洗ってピカピカにする。今日は警備のため特に目立つからな。身だしなみはちゃんとしておこう。

 

恐らくテレビでは妹のミヤコも見てるだろうから兄がカッコ悪くないように、寧ろかっこ良くて強くなった兄に成長したところを見せておこうか。ミヤコー!お兄ちゃん頑張ってるぞー!

 

 

 

ドカーン!!

 

 

 

「ふぁ!?」

 

 

更衣室から出るタイミングで会場の外から爆発音が聞こえる。爆音からしてそこまで大きくない寧ろ小さな規模の爆発だと思うが。

 

 

 

「ココがキヴォトスなのは理解するが晄輪大祭の時くらい大人しくしてろっての!」

 

 

一体どこのバカだろうか。

 

ヘルメット団か??

 

とりあえずココから近いためアサルトライフルを肩に担ぎながらインカムをオンにし、爆発から近い俺が増援に向かうことを知らせる。

 

 

 

「あれか」

 

 

もくもくと上がる黒煙を視認。

 

そう分厚くない煙なのでそこまで大きな爆発でないことがわかる。

 

それでも被害が起きたのは確か。

 

相変わらずなキヴォトスの治安に内心溜息を吐きながら駆け込むと…

 

 

「けっほ、けっほ……ふぅ…ヴァルキューレだけが警備を構えてると思ったらSRTまで居るとは思いませんでしたわ」

 

 

ロープに縛られて拘束されている生徒が一人。

 

白い肌に銀色の髪、トカゲのようにしなやかな尻尾とコウモリのような方翼、そして赤い瞳は犯罪の色を伺わせず、ロープを縛り上げているSRTの一人に世間話をする如く話しかける。

 

 

「リーダー!」

 

「爆発が近かったから来た。で?コイツか?」

 

「あら?もしかして貴方が月雪カナタさん?」

 

「そうだよ。俺がカナタ。爆破テロのお前は?」

 

「黒舘ハルナですわ。以後お見知り置きを」

 

「お見知り置きの必要は無いなぁこの頭ゲヘナ娘がよぉ。何があったか知らんがあまり騒ぎ起こさないでくれる?てか何したんや?」

 

「あの、リーダー、このゲヘナ生は…」

 

「気に入らない屋台がありましたの!もう全く何なんですの!あのたこ焼きは!中にタコではなくチョコレートを入れて誤魔化すなど!うどんをおかずにするようなものですわ!ミスマッチに対してお金を支払わせるなどお客様に提供するに値しませんわ!だから爆発ですの!!」

 

 

うーん、これはゲヘナ。

 

まごうことなきゲヘナ。

 

 

「ヴァルキューレが来てくれてるから到着したら引き渡す。そしたらゲヘナが回収してくれるだろう。とりあえず…迅速な鎮圧、よくやった」

 

「いえ!リーダー自らの増援を感謝します!」

 

「何もしてないって。じゃあ、よろしくな」

 

「了解です!」

 

 

その後、ヴァルキューレの生徒が現場に到着したのでこの頭ゲヘナを引き渡すと「月雪様、また何処かでお会いましょう」とロープに縛られながらも気品よく別れを告げる黒舘ハルナ。

 

俵のように担がれているのに優雅な雰囲気はそのままだ。逞しすぎるだろ。

 

 

 

「さて、俺の配置は、と…」

 

 

端末で地図を開きながら決められた持ち場まで戻る。

 

途中、行先でサインをせがまれたりとしたが今回は興行活動として表に立ってない。

 

…が、写真くらいなら構わないとして少しだけ立ち止まっては手元だけピースしてあげたりと軽めのファンサービスはした。

 

お陰で先ほどの黒舘ハルナと同じゲヘナからやってきたギャル二人がやたら喜んで___

 

 

 

 

テンテン、テッケテケ ♪ ♪ ♪

トントン、タッカタカ ♪ ♪ ♪

 

 

〜 例の革命のBGM 〜

 

 

な、な、なんだ!?

急に脳内に流れるな曲は!?

 

 

 

 

「労働者よ!立ち上がれー!」

 

「「「立ち上がれー!」」」

 

 

「キヴォトス全土に配給されるプリンの質に満足するなー!」

 

「「「するなー!」」」

 

 

「私達の舌はプリンのようにそう甘く無いことを訴えろー!」

 

「「「そうだそうだー!!」」」

 

 

 

うわっ、でた。

 

夏だろうと構わないあの厚着。

 

そしてヘルメットなどに刻まれた校章。

 

レッドウィンターやん。

 

うへぇぇ…

 

ただでさえゲヘナでお腹いっぱいなのにこの学園まで加わるとかカロリー高すぎなんだが??

 

てか…

 

 

 

「お前、もしかしてミノリか?」

 

「おお?…おお!もしや月雪オーナーか!?久しぶりだな!たしか海上基地の解体作業の時以来だな!」

 

「オーナーじゃねーよ。ちげーよ。差し入れにプリン持ってきただけだろ。なんでそうなるし」

 

「はっはは!これは失礼!いやいやー、あまりにも良人で間違えてしまったんだ。あ、でも月雪先輩が悪いぞ?何せ福利厚生こそ労働者の根幹だ。それを重視し、トリニティの良質なプリンを持ってきてくれた月雪先輩の心遣い!私は感謝感激しているんだからな!」

 

「そんなにかい…」

 

「ああ!何せ差し入れがプリンだからな!久しぶりにブルジョワの味を楽しめた!」

 

 

この生徒は、安守ミノリ。

 

去年起こったキリノテラーの襲撃前にカイザーと一悶着あったのだが、違法に作られた海上基地の解体処理のためにレッドウィンター連邦学園の工務部という部活に解体作業を頼んだ。

 

その工務部には社会経験のために中等部も混ざって作業していたのだが、そこで一人出会ったのが安守ミノリという去年まで中等部だった生徒である。

 

こうして顔見知りなのは俺が状況確認のために海上基地まで向かい、そのついでとしてトリニティのプリンを差し入れにしたから。

 

ちなみにそのプリンに関してはスーパーで売ってあるものよりもそこそこ良さげなプリンなのだが、レッドウィンターの生徒からしたら普段配給されるプリンの10倍は素晴らしいプリンとして喜ばれ、その中でもプリン好きのミノリがめちゃくちゃ喜んでおり、被っていたヘルメットをブンブン飛び跳ねさせて可愛かった。

 

でも今は高等部になり、そのまま工務部に所属し、メガホンを持って先頭で元気にデモ活動。

 

時の流れって残酷やなぁ…

 

 

「あの時はまだ私は中等部だったがこうして進学したことでメガホンを片手にもっと主張できるようになった!だからもう大丈夫だ!これからは私達労働の改革改善を訴え!更なる補償を約束させる側になるからな!!」

 

「いやそれレッドウィンターでやれよ!?」

 

「それなら昨日やったぞ。今日はココの方がよく届くだろうからな。だからココだ!」

 

「良い迷惑すぎる…」

 

「何を言うか!そもそも社会労働の訴えは建前であって、本命は前日まで我がレッドウィンターの工務部が請け負うはずだった晄輪大祭の会場の改修工事を横取りされたことに対するデモだぞ!横領だ!!」

 

「はい?改修工事の…横取り?」

 

「む?連邦生徒会の管理下にある組織が知らないのか?まあいい。実は5日前まで私達がこの会場の改修工事を行う予定だったんだ。なのに直近になってどこかの会社が案件を横取りして私達は働けずしまいだぞ!労働意欲のある労働者の契約を無下にした行い!私達は連邦生徒会に説明を求める!」

 

 

そうだったのか?

 

てか工務部に案件を予定してたのか。

まあ無作業に終わったみたいだが。

 

そのため労働者の権利主張をすべく晄輪大祭の人口密度を利用している流れか。

 

この厄介さ、敵に回したくねぇ。

 

 

 

「あと本日のデモは月雪先輩に向けてのもあるからな!」

 

「はぁ?」

 

 

 

ミノリはそう言うとフゥゥと息を吸い。

 

 

 

「無自覚なクソボケはやめろー!」

 

「「「やめろー!!」」」

 

「年頃の女の子に強火は控えろー!」

 

「「「控えろー!!」」」

 

「そう言うのはゲヘナだけにしろー!」

 

「「「だけにしろー!!」」」

 

 

 

 

いや、意味がわからん…

 

 

 

 

 

 

 

 

それから俺に対するデモ活動は会場の外で響くだけで、それ以外は特に大事は起きず、晄輪大祭も後半に差し掛かる。

 

あとレッドウィンター達から離れたら赤色の脳内BGMが止まった。

 

カロリー高すぎだろあの学園。

 

 

それから昼も過ぎて一度それぞれ休憩を取ることになった。

 

俺も休憩の出番が来たのでSRTの控え室…では無く、男性用の更衣室に戻る。

 

控え室は……ほら、女性達が着替えにも使うから男性の俺が居座るのはちょっとな?

 

まぁ中には「気にしないよー!」とか言ってる仲間もいて「ハレンチな!」とまた頭メジロし始めたユキノをニコが宥めたりと賑やかで大変よろしかったが、まあそれはともかく男女同室なのはよろしく無いので、あまり使われていない男性用の更衣室に足を運んで椅子に腰掛ける。

 

すると仲間が配給のお弁当を持ってきてくれたのか机の上に『リーダーの』と紙も添えて置いてある。これはありがてえ。

 

30分ほどの休憩なので、とっとと食べて一眠りしようかなと考えながらだし巻き卵から口の中に放り込み、疲れた体に甘い味が広がる。

 

それからお茶を飲み、もう一口何かを食べようと考えて……

 

 

 

 

 

ザザッァー

 

 

 

 

「!?」

 

ロッカーから一つのノイズ音を拾う。

 

 

 

「……」

 

 

俺はお口の中に放り込む予定だった白米を割り箸と共に音を立てず弁当へ戻し、壁に建てていたアサルトライフルの位置を視認しながら腰に引っ掛けているハンドガンを構え、静かに椅子と机から離れる。

 

ノイズ音のしたロッカーに耳を澄ませる。

扉の開閉によるトリガーは無いと判断。

 

それからヘイローに神秘を纏わせ、どのような展開が起ころうとも即座に対応できるように備えて、ロッカーに手をかける。

 

ギィィと開けた。

 

 

 

「トランシーバー?見覚えのない形状だ…」

 

 

俺は手に取り、それを振ったり、指で小突いたり、嗅ぎ分けたりして中身の状態を確認。

 

火薬の香りはしない。

 

普通のトランシーバーだ。

 

しかしスイッチは入ったまま。

 

 

 

「誰かのイタズラか?」

 

 

緊張感を纏わせながらも通信をオープンに切り替える。そして…

 

 

 

 

ザザッァー

ザザッァー

 

 

 

『聞こえるか?月雪カナタ』

 

 

 

女性の声。

 

その声は……どこか重たい。

 

イタズラで済ませるような声色じゃない。

 

 

 

『私達は君の大事なモノを奪った。返して欲しければシラトリ区の外区67-41の場所まで一人で来い。余計なことをせずにな。でなければその会場にある大事なモノ達の安全は保証しないだろう。時刻はこのメッセージから15分後だ』

 

 

 

随分と的確な指示だ。

 

そして俺一人で来る事を望まれている。

 

 

 

「(この声色…全く遊びに聞こえないな。経験上としてホンモノだと判断する。ならSRTの兵士を脅迫する意味はなんだ?それとも俺個人に対する恨みか?)」

 

 

キヴォトスのそこら中にいるヘルメット団のようなチンピラとは思えない重圧感がトランシーバーから伝わる。

 

そして冗談事では済まされないような緊張感も伝わる。

 

この声の主は一体??

 

そう思考を巡らしながら対応策を考え…

 

 

 

__貴様にも忘れさせない。

__この虚しさの限りを。

 

 

 

 

!!??

 

 

 

強調された『虚しさ』という言葉。

 

それは数年前に馴染み深かった呪いの単語。

 

もう終わったと思われていた追憶。

 

 

だが、しかし…

 

まだ絶え行かないとする憎悪だ。

 

背筋に冷たさが走る。

 

そして脳裏によぎる、不安要素。

 

そのピースは、すぐに当てはまった。

 

 

 

「いや、まさか……いや、まさか…!!」

 

 

するとトランシーバーが引火する。

 

 

 

「!?」

 

 

急いでそれを手放す。

 

するとトランシーバーが爆発した。

 

 

ガタガタ!

ガチャ!!

 

 

 

「リーダー!」

 

 

更衣室の扉が開く。

 

体操着のウリエだ。

 

爆発音を聞いて駆けつけたようだ。

 

さすがSRTの兵士、速いな。

 

 

 

「ウリエ、仲間を会場に集めろ。この大会そのものを人質に取られている可能性が高い」

 

「え?……え!?」

 

「犯行予告だ。このトランシーバーから俺宛に脅迫してきた。声色からしてイタズラとか優しいレベルじゃない。本格的に狙っているものとして考えた方が良い」

 

「っ!だ、誰からですか!?」

 

 

俺は弁当の蓋を閉めながら壁に立てかけていたアサルトライフルを回収し、本格的に装備を整えながらウリエに向けて真実を告げる。

 

 

 

「アリウスだ」

 

「!?」

 

「奴らはまだ虚しさの中に縛られている。そして月雪カナタはその真実を取り上げた敵として今もまだ認識されているらしい」

 

「なっ、そんな!バカな事は!」

 

「いや、()()()()()()()()()()

 

「!、!!」

 

「アリウスは__それほどに根深いんだ」

 

「っ!」

 

 

 

脳内に過るのは……あの大人。

 

子供のための大人をしない大人。

 

 

__ベアトリーチェ

 

あの者から植え付けられた遺伝子(アリウス)はどうやら俺に報いたいレベルで今も尚縛り付けるらしい。

 

 

 

「あの時の__責任を取らねばならない」

 

「で、でも!リーダーは!ただ…!!」

 

「分かってるよ。でも俺が真実を裏返した。ならソレを真実としていた者からしたら侵された救いなんだろう。元凶はあのクソ野郎だが、でもその後の責任は俺から。例え俺じゃなかろうともここで誰かが拭おうとしなければ何処でソレが潰えてくれるだろうか」

 

「リーダー…」

 

「時間が無い。知っている俺が向かう」

 

 

アサルトライフルを肩に担ぐ。

 

久しぶりに、この銃が重たく感じられる。

 

 

 

「指揮権は副リーダーのウリエに任せる。あと通信する時は暗号回線で頼む。要求として俺一人で向かわれることが望まれている。どこでSRTの無線を拾っているかわからないからな。そのためしばらくアナログでいく」

 

「リーダー…」

 

「SRTの務めを果たせ……任せたぞ!」

 

「っ!!」

 

 

ウリエの真横を通り、更衣室を出る。

 

時間が無い。少し駆け足気味に。

 

ただし周りには不安を思わせないようにするため、通行人にはファンサービスとして軽く手を振りながら会場の廊下を駆け行き、速やかに外へ出る。それから端末を開いて指定されたポイントを検索。そこは…

 

 

 

「なるほど、ゴーストタウンか…」

 

 

キヴォトスで特に栄えているはずの都内街シラトリ区から……一変して廃れた地区がある。

 

それは67区から先の地域。

 

D.U.シラトリ区は、1区1区が大きい。

 

その中で都内から離れすぎた故に街を作っても開拓地として発展せず、時代を経て少しずつ廃れてしまい、人手の関係もあって結果的に治安が行き届かなくなった区域がある。

 

ソレが67から先の区。

 

管理が行き届かない故にその治安の悪さも加速させ、またその縮図として完成したのがブラックマーケットである。てかブラックマーケットを出入りしやすい理由ってのがこれ。キヴォトスの中央にあるシラトリ区から簡単に行けるからな。違法品もよく流れる。

 

そのためヴァルキューレから脱走した犯罪者がブラックマーケットに駆け込みやすい。

 

そして俺はその治安の行き届かない区域に一人で行くことになる。かなり面倒だ…

 

 

 

「アリウス…」

 

 

途中まで地下鉄に乗り込んで指定されたポイントまで向かっていたが、これから向かう先は路線によって電車が通っていないため、途中下車するとショートカットのためにビルからビルを飛んで移動する。

 

キヴォトス人の身体能力と神秘、また良く鍛えられたSRTの兵士として息切れもなく、目的地に向かう。

 

すると段々と街の活気が失われ、街と言えるかも怪しいほどに雰囲気が重くなる。

 

それなりに建物は並んでいる。

しかし9割が使われていない。

 

使われたとしても主に違法な会社とか……まあ、例を挙げるならカイザーコーポレーションとかだろうか。

 

トカゲの尻尾切りが得意な企業だ。

 

そうやって事務所を移したりするのに適した場所だろうか、この辺の空箱は。

 

 

 

「到着した……なっ!?」

 

 

中央道の真ん中に誰か立っている??

いや、何者かが道路に縛られている。

 

 

 

「もしや人質か?おいおい。良くもまぁあんな目立つ所に。どうやら誘いたくて、誘いたくて堪らないらしいな…!」

 

 

俺は建物に移りながら途中、瞬間移動のためのヘイローを落とし、いつでも離脱できるように備える。

 

そして荒れたコンクリート道路の上に降り立って、斜めに傾けたアサルトライフルを口元に構えながら、中央道に縛られた人質の元まで歩み寄る。

 

対象とは残り20メートル。

 

 

そして___

 

 

俺はその位置で、立ち止まる。

ガスマスクの一人が姿を現したから。

 

 

 

「待ってたぞ、月雪カナ__」

 

「別に待たなくて良い」

 

 

 

アサルトライフルの影に隠れるようにサブウェポンとして用意していたヘイロー付きのクナイを投擲、アリウス兵の真横を鋭く通り過ぎる。

 

そして投擲されたヘイロー付きのクナイは人質の真上を通過し、俺はその元に飛雷神する。

 

 

「!?」

 

 

驚くアリウス兵を他所に、俺はその人質のロープをクナイで切り裂き、解放する。

 

そして、人質の胴体に手を触れ__

 

 

 

「今だ!起爆しろ!」

 

「!?」

 

 

 

それは__なんてことない爆弾(ダミー)だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なによ!?このバリア!!?」

 

「あ、あまり触れないで!何がギミックになっているか見当が付かないわ!!」

 

「くそっ!弾丸でバリアの破壊が出来ない!」

 

「なら爆弾で集中して破るか!?」

 

「ヴァルキューレは非武装の観客を優先して避難場所に誘導してくれ!」

 

 

「嘘だろ!?なんで掃除ロボから銃が飛び出しているんだよ!?」

 

「一体どこの会社だよ!?当日にこんなのを用意したのは!!」

 

「ミレニアムの奇人共じゃねぇのかよ!」

 

「なっ!勝手なこと言うな!」

 

「撃ってきた!!鎮圧しろ!!」

 

「ライブ用のドローンも上から狙ってくるぞ!撃ち落とせ!!」

 

 

 

会場は大騒ぎだ。

 

突如、晄輪大祭の状況を写している会場の大型モニターが真っ黒な画面になった。

 

何かのトラブルだろうか?

いや、これは仕組まれた出来事だ。

 

 

私は数分前に仲間へ伝達し、集結させ、会場内でいつでも対応が取れるように指示を出す。

 

競技に参加中のSRTも周りを警戒しながら現在行われているパン食い競争を挑んでいた。

 

 

私達のリーダー、月雪カナタに対する脅迫が本当ならこの会場で何か起こる。

 

安易に爆破テロか??

 

いや、それは既に仲間が調べてある。

 

怪しいポイントを確認し、会場の地下も隈なく調べ、ヴァルキューレにも警戒状態を促した。

 

ヴァルキューレも最初は信じられなさそうにしていたが、月雪カナタが単独で犯人確保のために向かったことを告げ、また月雪カナタが会場を出て街の奥に消えたことを他ヴァルキューレが視認したこともあって信憑性が一気に増し、会場は警戒状態に。

 

この騒がしさに対して、勘の良い学園はこの異様な雰囲気を察したりと緊張感が膨れ上がる。

 

 

そして、真っ暗になった大型モニター。

 

カウントされる、謎の数字。

 

それがなんなのかわからない。

 

そして……何かが、画面中央に映る。

 

それは横向きのドクロのマークだ。

 

 

 

「「なっ!?」」

 

 

トリニティの一部が驚き立ち上がる。

 

その一部とは恐らくシスターフッドだろう。

 

そして元トリニティの私も察する。

 

アレは___アリウスのマークだ。

 

次の瞬間、会場はバリアに包まれた。

 

 

 

ダダダダ!!

 

ダンダン!!

 

ドカーン!!

 

 

 

お掃除ロボットが、ゴミ回収のロボットが、ライブ配信のためにカメラを担いだドローンのロボットが、胴体から銃を引き出すと私達を狙ってくる。しかし…

 

 

 

「なんだ、この散発的な攻撃は…」

 

「この会場の混乱が目的だろうな。ならば制圧は二の次ってことだ」

 

「まあバリアの時点である程度制圧されたようなものだけどね」

 

「暴走したロボットの鎮圧を優先しろ!バリアの破壊はその後でいい!」

 

「それより月雪リーダーはどこにいるの!?」

 

「都合よくこの場にいないって事は犯人確保のために一人出向いたって事だろ!そして不自然にもバリア張り巡らされたこのタイミング!つまりこの会場はどデカい人質って事だろうな!」

 

 

リーダーの事は簡単に伝えている。

 

__単独で行動中、だと。

 

私たちからすればリーダーの単独行動はそう珍しくない。元々フットワークの軽さも相まって連邦生徒会長が便利に使うから。

 

だから今回の単独行動も犯人確保のために一人向かわれたと皆は理解する。なら任されたこの持ち場をSRTは尽力するまで。

 

 

「キャッチした。真上にあるワイヤーに吊るされたカメラから異質な信号を確認。アレを狙撃するべきです」

 

「なに?それは本当かい?」

 

「コレでもミレニアムの生徒です。盗聴等はお手のものです。それよりも狙えますか?」

 

「…ああ、狙えるよ!」

 

 

スナイパーライフルを持ったSRT。彼女は確かリーダーが教育のため担当していたFOX隊のメンバーの一人だったか。するとその新人は数秒合わせるとワイヤーに繋がれたカメラを狙撃する。カメラは会場を真上から生中継するものとしてワイヤーを伝って移動するが、SRTの早業から逃れることもなく一つが破壊された。

 

とても良い腕だ。

 

 

 

「次は屋根付けにある大型の照明です。あの二番目を狙ってください」

 

「アレだなー?よしっ!」

 

 

またFOX隊のスナイパーが破壊する。

 

するとバリアの濃度が薄れていく。

 

それからもミレニアム生徒の指示によってスナイパーは指定のものを破壊し、とうとうバリアが薄くなって…

 

 

 

「あ、もしかしていけるかな?えーい⭐︎」

「ちょっと、ミカさん!?」

 

 

ドカーン!!

パリーン!!

 

どうやら殴り壊せる程まで弱まったようだ。

 

 

 

 

「おおー、やったねぇ!ミレニアムのきみー!協力感謝するよー!」

 

「君ではありません。音瀬コタマです。過去に貴方達のリーダーさんから盗聴をげふんげふん…失礼、少しばかし良いものを頂きましたので。そのためお礼は不要です。あとこのロボット達はミレニアム製ではありません。外装からして外注だと判断します。それも非常に悪質な量産型です」

 

「え?悪質な量産型?」

 

「はい。それもかなりお粗末です。しかし戦闘モードに入った瞬間、非常に単調かつ脅威のない動きでした。恐らく急遽導入されたロボットかと」

 

 

確かに、言うほどの強さもない。

 

ただ銃口を胴体から引き出して、近くの敵を撃つだけのシステム。

 

そこそこ数が多いだけで脅威的には感じられなかった。

 

すると、ザザッ!と無線が入る。

 

 

 

『副リーダー!報告です!ヴァルキューレと共に地下の捜索を続けたところ、また別個体らしきロボットが乱雑に積まれています!これも破壊するべきでしょうか!?』

 

「いえ、それは破壊しなくて大丈夫です。動いてないのなら大丈夫。それよりも地下の方は大丈夫でしょうか?そちらにもドローンが動いていた筈です。あとバリアも…」

 

『ヴァルキューレが制圧しました!バリアも爆弾で破壊できます!』

 

「了解しました。そのまま引き続きヴァルキューレと連携しながら道の確保をお願いします」

 

 

飛び交う通信を裁きながら残りのロボット達を破壊する。

 

もう既に晄輪大祭は続行不可能なレベルで混乱を起こした。

 

銃を持っている生徒達は対抗手段があるからともかくとして、非武装の民間人はパニックになり、ヴァルキューレの者達が必死に落ち着かせている。

 

状況が収まるにかなりの時間が掛かるだろう。

 

 

 

「リーダー…」

 

 

 

こちらは何とかなる。

 

戦闘の気配が落ち着けば何人か増援に迎える。

 

オペレーターの方でもリーダーの不在を認知してるだろうから、端末の生命反応を追跡してくれている筈。

 

仮にジャマーで反応をかき消されたとしても更衣室ですれ違う際にもハンドサインで『67』と数字を貰ったため、ある程度の情報は確保してある。

 

そして向かった先は恐らく。

 

 

 

「迎え打つには持ってこいの、場所ね…」

 

 

 

コレほど本格的な足止めだ。

 

そこらのヘルメット団のような遊びじゃない。

 

 

またリーダーにのみ届いた脅迫状。

 

そして___アリウス。

 

 

ああ、嫌な予感しかしない。

 

何か、が…

 

 

何かが、暗躍しているんだ。

 

月雪カナタって存在を討つために。

 

 

 

 

「リーダー、どうか無事でいて…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その刹那___キヴォトスに光が落ちた。

 

 

 

 

 

つづく

 

 





ヒナとハルナとミノリとコタマ。
あとFOX隊のおキツネ達。
まだピカピカの一年生です。
いやー、可愛いでちゅねぇ。

あ、もちろん脳はしっかり焼いたカナタくん。
ほんまコイツ…


あとウリエちゃん!ウリエちゃん!
(SRTとして)カナタくんとは今回が最後の会話だからいっぱい噛み締めてね!遠慮はいらないよ!SRT!ファイトー!オー!


じゃあな!
またな!
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