なんか俺のヘイロー砕けてね?   作:つヴぁるnet

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13000文字だってよ。


第45話

 

この箱舟は、浮いている。

 

元々は、箱庭として認識していた。

 

けれどイレギュラーがあった。

 

他とは違う『二度目』としてこのファクターはあまりにも特別すぎた。

 

本来あるはずの無い【設定】はこの世界では当然のように浮き出ているから、だから私はそれに期待を寄せ、その上で案内される側になっている。

 

刹那主義に終わらず、理想主義に朽ちず、現実主義に折れず、例えられたトロッコ問題は非常識なやり方で曲がり通そうとする、その驕り高い強欲さは彼だから許されるんだとして、それは期待に満ち溢れている。

 

この世界は【解】として与えた。

私はそれを【解】として臨んだ。

 

だから、かな。

 

大丈夫じゃないのか、と。

 

この二度目はリセマラに終えない、と。

 

コレこそ、一つの【解】なんだ、と。

 

私は、それが嬉しいと想い、感じて__

 

 

 

「!」

 

 

 

 

突如、この箱舟の帆が折れようと軋む。

そんな感覚が背筋を這いずる。

 

 

 

 

 

「熱っ…!」

 

 

マグカップからこぼれるコーヒーによって手の甲は火傷し、その下にある書類は滲んでしまう。

 

斜めに立て掛けられたタブレットに映る晄輪大祭の光景だけが場違いに賑やかで、手の甲に受けた火傷と共に背筋に這い寄る悪感は特別なこの日を否定するかのようだ。

 

 

 

「何が……なにが、否定しようとするの??」

 

 

 

私は観測者だ。

 

言わば__プレイヤー目線だ。

 

だからこの箱舟を認識する。

 

認識しているからこそ『WARNING』とプレイヤーに警告する。

 

 

ガラス張りの部屋から空を見上げる。

 

いつもと変わらない透明な空。

 

 

しかし、私は空ではなく宇宙(そら)を視る。

 

この箱舟を落とさんとする、悪意。

 

 

内側の警告は誤魔化しようがない。

 

この騒がしさは気のせいなんかじゃない。

 

 

無意識に早まる心臓の音。

 

空色から赤色に警告する私のヘイロー。

 

 

時の流れがある故に狭めようとする。

 

そして、歪みの音が聞こえる。

 

 

 

 

もうすぐ__

 

間も無く__

 

 

 

この世界のイレギュラーはイレギュラーとして修正されようとする。

 

 

 

 

 


 

あの子供(おとな)は許されない。

赦されることがあってならない。

決して天使の昇天を恕されるなかれ。

 


 

 

 

 

 

「ッ!?」

 

 

 

 

 


 

見よ、その渇望は悪意を乗せる。

観よ、その極彩は箱庭を枯らす。

視よ、その存在は常世を絶える。

 


 

 

 

 

 

「ッ!?ッッ!!??」

 

 

 

 

 


 

なにせ、アレは…

されど、アレは……

正当化されてはならない、光よ。

 


 

 

 

 

 

「だめっ!! カナタくんッッ!!」

 

 

 

 

カタリと倒れるマグカップ。

 

書類に染み渡るコーヒーの跡地。

 

賑やかは大混乱に変わるタブレット画面。

 

一粒程度の泥水によって透明を否定する。

 

 

私は見えた。

私は視えてしまった。

 

 

そこに浮き出た【解】に対する【解】を。

 

悪意を乗せた支配者を。

 

この箱舟を否定する引き金を。

 

宇宙に__まだ憎悪(ソレ)が残っている事を。

 

 

 

 

 

「!」

 

 

 

 

 

その刹那___宇宙から光が到来した。

 

 

 

 

「きゃっ!!!」

 

 

 

 

キヴォトスが揺れる。

 

天に向かう箱舟が__

 

特異点と共に墜ちようとしているんだ。

 

 

 

 

 

「ダメ…ダメっ!ダメだよ!ダメぇぇ!!」

 

 

 

 

 

望まれない胸騒ぎは__現実主義に。

 

数年抱えたこの理想主義は…

 

これから刹那主義へと朽ちて征くんだ。

 

 

 

 

何せ、その トロッコ は__

 

一人を跳ね飛ばさんと迫っているから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♦︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悪い大人にとって計画は順調だ。

 

非常に順調であった。

 

元々、レッドウィンター連邦学園の工務部が請け負うはずだった晄輪大祭の会場、その改修工事は急遽変更された。それはとある思惑と悪意によって曲げられた。

 

 

 

「ははは!随分とコストが浮いたもんだ」

 

 

一人の大人は上機嫌に呟く。

 

都合の良いトカゲの尻尾を泥水から見つけ、それを計画の一部として縫い付けた。

 

これも全て、大人の都合を曲げ続けてきたとある子供を抹消するために。

 

その準備をしてきた。

 

 

経緯を繰り返して__晄輪大祭の会場の改修工事はカイザーコーポレーションが横から貰い受けた。それからカイザーは会社名を隠しながら改修工事を請け負い、会場を包み込むためのバリアを展開できるように細工した。一度起動すれば一時的ながらも会場内に人々を閉じ込めることができる。そう簡単に割れないバリアだ。

 

それからは低コストで用意された運営用のロボットやマシーンを戦闘モードに切り替え、会場内を混乱の渦に落とす。ローコストのため戦闘能力はそう高くないが、民衆をパニックに陥れるには充分な脅威として機能した。証拠としてヴァルキューレと戦闘特化のSRTは会場内で暴れるロボット達の鎮圧に手を取られている。

 

計画は非常に順調である。

 

だから、あとはか(・)の(・)者(・)を討つだけ。

 

 

「投射する座標の位置に狂いはないな?」

 

「データテスト上、問題ありません!」

 

「ふむ…まぁいい。万が一のためのセカンドプランもある。まぁしかし…くっくくく!」

 

「?」

 

 

大人は上機嫌に笑う。

 

手元にある資料は棚から牡丹餅…と、例えるに足りない程の産物を手に入れたから。

 

 

 

「まさかこのような兵器が宇宙に放置されたままとはな。砂漠の中や火山地帯のような極地にも古の兵器が隠されている情報を聞いていたが、この衛星砲もそれらと同じように宇宙という現実味に傾げたくなる場所にしっかりと奴らの遺産が残っていた。ふん。過去に居座っていた支配者達は良く考える」

 

 

 

衛星砲、その名は【ノヴァ】__

 

元はベアトリーチェがキヴォトスの表世界を支配した後のセカンドプランとしてこの衛星砲ノヴァで宇宙から牽制し、キヴォトスの兵力を縛ろうとするための抑止力として計画していた。

 

しかしとある子供__SRT特殊学園に所属する月雪カナタの武力介入によってファーストプランに行き着く前にベアトリーチェは消滅させられ、そのプランは白紙として地理に伏す計画書だったのだが、しかし都合の悪いことにとある大人が泥水から拾い上げた。

 

それ故に始まった__新たなる計画。

 

この衛星砲ノヴァの解析に成功したことでキヴォトスの世界を掌握せんとするレーザー兵器を手に入れ、そのデモンストレーションとして月雪カナタを消さんと計画した。

 

カイザーコーポレーションにとって月雪カナタという存在は厄介だ。

 

この数年、悉く邪魔を受けた。

 

SRTによる武力介入にカイザーコーポレーションは違法行為を取り締まられてきた。

 

率直に言えば__彼は邪魔である。

 

その被害はここ数年で尋常ではなかった。

 

特に海上基地は大打撃の一言だ。

 

海の上を走り、そこから直接乗り込んでくる非常識達に悉く破壊され、カイザーは屈した。

 

海上という要塞すら無意味とするこの子供にカイザーは非常に屈辱的な味を覚えた。

 

__アレは危険だ。

__我が社にとって危険因子だ。

 

ならば奴が学園を去る時を待つか??

 

 

 

そんな屈辱な事…!

許されるものかっ!!

 

あの子供が危険だから?

 

恐ろしいから大人の私達は子供を相手にヒソヒソと隠れている??

 

馬鹿な事を言うな。

そんな事あってはならない。

子供に屈し続けてたまるものか。

 

もし仮にあの者が学生時代を過ごし終え、学園を去ったとしてもだ、その後に続く後継者達がキヴォトスの違法行為を取り締まり続けるだろう。

 

それほどに月雪カナタという人間は影響力が大きすぎる。ならば奴が健在である内に淘汰しておくことに意味がある。

 

何より大人としてのプライドが許されないのだ。子供相手に恐れ慄き、時が鎮まるまで裏側に引っ込んでいるなど。

 

 

「だから奴は奴が光っている内に消す。そしてカイザーは証明する。この衛星砲ノヴァを手の内に収めていることでキヴォトスの命を握りしめていることを!!カナタの命で表してやる!!」

 

 

飽きるほどの苦渋に耐えてきた。

 

しかしそれは間も無く終わる。

 

 

「座標よし!砲口は67区!月雪カナタの神秘を56%ほど捉えています!」

 

「まだ甘い。奴の神秘をアリウスにもっと引き出せろ。カイザーの兵器を投入しても構わん。潜ませているスナイパーも動かし、月雪カナタを追い込め。そうすれば衛星砲ノヴァがその神秘をキャッチする。仮にどこか遠くに飛雷(とんだ)としても奴の神秘を捉えているならいくらでも銃口は奴を定める。ああ…絶対に逃さないぞ月雪カナタ。我がカイザーコーポレーションの被害額はその命では事足りぬからな!」

 

 

モニターに映るたった一人のSRT。

 

5つのガスマスクが囲うように戦う。

 

数的戦力さは圧倒的に見える。

 

が…

 

 

 

「ふん。やはりトカゲの尻尾では荷重か。まあわかっていた話だ。元より泥水被りな子供程度に期待などしておらぬ」

 

 

 

忘れるな。忘れてたまるか。

 

アレはSRTの兵士だ。

 

そして月雪カナタなんだ。

 

普通の子供なんかではない。

 

ああ、だから…

 

 

 

 

「その時がくればアリウス諸共も躊躇わん」

 

 

 

この大人は、どこまでも悪い大人だ。

 

その悪意は、善を食いちぎる。

 

それがキヴォトスだろうと無関係なんだ。

 

 

 

 

…

…

…

 

 

 

 

ダダダダ!!

ダンダン!!

ドゴーン!!

 

 

キン!ガキン!

パキーーン!!

 

 

 

「なっ!?弾丸を切り裂いただと!?」

「くそっ!あの男っ!強すぎるっ!!」

 

 

ガスマスクから悪態の声が溢れる。

 

アリウスにいた頃よりもマシな環境下で訓練を積んだ筈なのに、それでも変わらないその戦力差に対して。

 

 

「なっ、今スナイパーの弾を避けたか!?」

「違う!射線上に刃を置いて斬ったんだ!」

 

 

マンツーマンのオートマタは驚く。

 

アリウス兵達がヘイトを稼いでいる筈だ。

 

しかしその兵の察しの良さは異常だ。

 

遠くから狙われる場所すらも戦いながら把握し、いつでも対処できるように立ち回る。

 

しかしこれは特殊部隊の兵士となった月雪カナタにとって普通のこと。そして同時に達人技に理解のある百鬼夜行自治区からやって来た生徒でもある事。そこにSRTとしての強さも加われば一体誰がこの者を下せるだろうか?

 

少なくとも記録上としてキリノ*テラーの反則行為のみ優勢を取れた。が、この者ならそのような反則行為もいずれ攻略してしまうだろう。だから勝ち筋は最初だけ。

 

アリウス兵達は悟る。

 

この者に___勝つとは、一体??

 

 

 

「ふざけるな…」

 

 

ここの誰よりも使い古されたガスマスクをガタガタと揺らしながら怒りに震える。

 

 

 

「ふざけるなァ!!おまえが強いから私達の真実は覆されたとでも言うのか!!」

 

 

「なんだ急に…?真実…?もしやベアトリーチェの事か?そう思うならそれは間違いだな」

 

 

「黙れ!!そんな筈は無い!!」

 

 

「それはアリウスではな。だが陽の光が当たる表世界からすればその真実は強いられた不自由を誤魔化すだけの逃避主義だ。俺が言う。お前らは虚しくなんかない。ただ悪い大人に騙されているだけの子供だ。だからこんなバカなことはやめろ。もう終わった事だろ!」

 

 

「「「!」」」

 

「終わってない!!終わってなんかいない!!そんなことが信じられるか!!私達はその真実を持ってアリウスで生きてきた!!マダムはそれを教えてくれた!!だから私達はまだこうして!こうして!こうして…」

 

 

 

こうして!

 

こうやって…!!

 

こうして!……なんだろうか。

 

 

こうして、戦って、それで。

 

こうして、抗うことで、そうしたら。

 

こうして、真実にして、そうなれば。

 

…

…

…

 

そういえば。

どうしてまだ虚しさを糧にする?

 

 

 

いや、だって…

 

それはだって……マ、マダムが。

 

ベアトリーチェが、教えてくれた。

 

何も知らない子供の私達に。

 

何もかも知っている大人が示した。

 

だから、それが。

 

それが…

 

…

…

 

ああ、そうだ。

 

それが、教えの通りだ。

 

虚しいだけだから、虚しさを___

 

虚しさを___

 

虚しさで__

 

虚しさ、は…

 

 

 

 

あれ……??

 

そういえば、なんで虚しいから、真実??

 

だってこれ、は。

 

 

 

「虚しさは、虚しさは、何もかも虚しいから、それがあるから、虚しいのならば、何も無いとするならば、虚しいだけで、真実は、そうなんだから、そう、だから、何もかも、虚しいだけに尽きるとして、尽きるとして、明日なんて、無い筈で……無い、筈…だから…」

 

 

「……」

 

 

 

心に絡みついた教えが陽の光を覚える。

 

故に真実(かれ)を目の前にした。

 

だから抱えていた真実(おしえ)が痛い。

 

目の前を否定を、しなければならない。

 

 

 

「お前、これまで明日を何回得てきた?」

 

「ぅ……?」

 

「その日に朽ちず、明日を覚えた事はあるか?」

 

「明日…を……朽ちず…?」

 

 

 

子供は何も知らない。

 

大人が教えないから。

 

だから知っている所だけが在りどころ。

 

そうだから学んだソレを真実とする。

 

生きるための方法として生物はすがる。

 

けれど、目の前の【明日】はそこにいる。

 

それが訴える。

 

 

 

__ええそうですよ。全ては虚しい。だから苦しい。だから乾きが痛い。ならば求めるのをやめなさい。何故なら全ては虚しいだけだから。

 

 

 

コレを覚えた。

 

コレを覚えたから、生きてこれた。

 

なら、目の前の真実は___違う…!!

 

 

 

「うあぁァァ!!月雪カナタァァァ!!」

 

 

冷静さを失ったアリウス兵のリーダーは銃を投げ捨てると、カイザーコーポレーションから支給されたコンバットナイフを腰から引っ張り出して突貫する。その真実を否定したいがために__

 

 

 

「それでも__槌永ヒヨリは明日を求めようと虚しさに溺れなかったんだ…なら、同じアリウスのお前だって」

 

 

カナタは手元に神秘を乱回転させ、白兵戦に備える。

 

 

「!、!?」

 

 

そしてアリウス兵は目を見開く。

 

乱回転した神秘、その技を知っている。

 

いつだったか、その身に直接感じた。

 

確か、ソレは___

 

 

 

 

「螺旋丸!」

 

「ぐぁぁぁがぁぁぁっ!!!」

 

 

 

 

 

 

__明日を子供が待つんだよ…!!

 

 

 

 

 

ああ、覚えている。

 

 

この痛み。

この叫び。

この神秘。

 

 

私は___ある日まで、そうだった。

 

 

明日を欲しがったその身内を監視していた。

 

ほんの僅かしか差さないアリウスの地下牢。

 

 

裏切り者に虚しさを知らしめるために。

 

真実から目を逸らした愚か者に向けて。

 

 

その痛みを思い出さそうとしていた。

 

しかし、それは突如として。

 

 

ある日の私は後ろから食い破られた。

 

 

 

 

__サオリ姉さん!!サオリ姉さん!!

 

__ヒ、ヨリ…?

 

 

 

 

 

それから、その者達はアリウスを出た。

 

そうやって虚しさから脱した。

 

そしてアリウスも倒壊した。

 

マダムもバシリカで殺された。

 

何故なら、この者が【真実】だから。

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、ん…で…」

 

 

 

 

 

 

 

 

なら__

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なん、で……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それ、なら__

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで……わたし、達は…虚しい…の…??」

 

 

 

 

 

 

 

救われてない。

 

救われてない、じゃないか。

 

 

 

「ぐ、ぁ…ぁぅぅ!」

 

「リーダー!」

「このぉぉおお!」

 

 

 

 

リーダーが倒された事で他のアリウス兵達は攻撃し、カナタは回避する。

 

すると他のアリウス兵が手榴弾を投げ込もうとしたが、カナタはそれを視認すると腰からハンドガンを即座に取り出して、狙い撃つ。

 

カナタのハンドガンから放たれた弾丸は手榴弾に着弾し、投げ込もうとしたアリウス兵の手元で爆発した。

 

 

「ぐぁぁあ!!」

「なっ、なっ!?」

「っく!アイツっ!!」

 

 

 

「なんてガキだ…!!」

「い、移動も済んだ!次こそ狙うぞ!」

 

 

狙撃ポイントを変えるために建物から建物に移動していたスナイパー部隊のオートマタ。

 

次の射撃準備を終えるとスナイパーはスコープを覗き込み、カナタの頭を撃とうと引き金に指を引っ掛けて___カナタは建物撃つ。

 

 

パン!!

ズゴォォ!!

 

 

「ガ、ァ……な、なん、だと…」

 

「ひっ、ひィィぃ…!!??」

 

 

 

「生徒(こども)との邪魔をしないで欲しいな」

 

 

その言葉は何に対してか。

 

少なくとも、怒りを交えながらだ。

 

すると上空に気配を感じる。

 

カナタは銃口を真上に定める。

 

そしてトリガーを弾く。

 

 

バン!

パキーン!

ドカーン!!

 

 

「!」

 

 

上空に潜んでいたドローンを撃ち落とした。

 

するとカナタの足元に落ちてくる。

 

カナタは落ちてきたソレを視認する。

 

それは何度も見た___タコのマークだ。

 

 

 

「ああ…やはりか。そして、なるほどな…この状況と惨状…晄輪大祭の改修工事でミノリ達の仕事がなかったのは…まあつまり、そうだろうな…」

 

 

 

カナタは周りを一瞥する。

 

人気の全く無いゴーストタウン。

 

だから排除先として選ばれた戦地。

 

その廃街に潜むカイザーの兵士。

 

遠くから重機の音も聞こえる。

 

奴らの戦闘兵器やマシーンだろうか。

 

でも関係ない、今まで何度も倒してきた。

 

 

それよりも、目の前にいるアリウス兵。

 

ガスマスクの下はあまり見えない。

 

だが、そこに殺気を感じられない。

 

敵意はあっても、殺意は伺えない。

 

ならこの子供達は……そうなんだろう。

 

今日この日までアリウス兵のリーダーに率いられて生きてきた。

 

だがそれ以上にカイザーに利用されてしまったんだろう。

 

明日も何も知らない子供達が抱える唯一の真実で月雪カナタという敵を明らかにし、こうして降臨大祭の日まで食い物にされてきた。

 

 

「…」

 

 

この子達がもし、心無い大人に出会う事なく何処かで明日を知れる日が来ていたら、何か変わっていただろうか?

 

結果論と理想論、またはご都合主義。

 

もしも、と、たられば、に、願いたくなる。

 

でも彼女は今、この場所で対立する。

 

月雪カナタを討つことが真実にならない明日になるとしているから。

 

 

 

「確かに__虚しいと、そうなるか…」

 

 

 

足裏でドローンを踏みつけ、砕き潰す。

 

タコのマークが粉々に砕け散る。

 

悪い大人が作り上げたマークだ。

 

コレが、コレがあるから、いま目の前で子供は真実に怯えながら月雪カナタにも怯える。

 

笑えない。

 

それは非常に笑えない。

 

 

怒り……憤怒に、身体と神秘が震える。

 

月雪カナタは息を吸う。

 

そして、全身が叫んだ。

 

 

 

「カイザァァコォォポォレェェション!!!」

 

 

 

「「「「!!!????」」」」

 

 

 

刹那__月雪カナタから可視化できるほどに分厚い神秘が溢れ出る。

 

怒りの感情に比例してその量は凄まじい。

そして対面していたアリウス兵達は慄く。

 

 

__私達は何を相手にしている??

 

 

ここにいる誰もが理解する。

 

だから、アリウスは倒壊したんだ。

 

アレが到来したから、マダムは消えた。

 

そして覚えている。

 

アリウス自治区の奥地にあるバシリカから地上を貫き天高く光った柱を。

 

正当化に極まった彼の情動を。

 

 

 

「……無理だ…」

 

 

誰かが、そう言葉を溢す。

 

だがその言葉すらこの神秘に消された。

 

何せ目の前には__正当化の証がいるから。

 

 

 

「ぐぅ、ぅぅ…ぐぅぅ…!」

 

「リーダーっ!?」

 

 

アリウス兵のリーダーは起き上がる。

 

惑いの中だろうと、それでも月雪カナタに対しての怒りは繋がれたまま、ガスマスクの中で荒く息を噛む。

 

まだだ。

わたし、は…

 

 

 

 

ガコッ

 

 

 

「__ぇ」

 

 

 

一歩踏み越えて__目の前に手のひら。

 

それはガスマスクに触れられた感覚。

 

その指の隙間から奴の姿が見えている。

 

カナタが目の前に迫っていた。

 

 

 

「もう何もするな」

 

「ぁ」

 

 

 

ドゴォォッ!!!

 

 

 

「が、は…」

 

 

胴体に一寸の狂いない拳。

 

肺から空気が吹き飛ぶ。

 

意識が、視界が、真上に登る。

 

痛みを置いて、先に衝撃が届いた。

 

リーダーは膝から崩れ、地に倒れた。

 

 

「リーダーぁ!」

「ひぃぃ!!?」

「あ、あぁぁ…」

 

 

仲間の怯える声。

 

地面へと倒れた音。

 

何もかもが遅れて届く。

 

 

 

「武器を置いて投降しろ」

 

 

「と、投降…」

「あ、ぅ、ぅ…」

「けど、それ、は…」

 

 

 

駄目だ。

 

無理だ。

 

だって…

だって…

 

今の私達は、それが、できな___

 

 

 

「カイザーの事が付き纏うというのなら、気にするな。俺がなんとかする」

 

「「 !、!? 」」

 

「君達は守る。俺が。悪い大人から」

 

「「っ…!!」」

 

 

 

アリウスはカナタの敵にならない。

 

だが、カナタはアリウスの敵にならない。

 

何故なら__彼女達は何も知らない子供。

 

知らないが故に、こうなっている。

 

ならば、彼が前任者(カナタ)にそうしたように。

 

知らない子供のために彼は大人をする。

 

二度目を得てもソレをする。

 

それが、今できる【役割】なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嗚呼___だから、子供は容易い。

 

あのような者に耐えきれないから。

 

あのようなご都合主義に光を見るから。

 

何も知らないから、何も出来なくなる。

 

ならば、叱られたように怯えた子供など。

ならば、縋るべき存在を知った子供など。

 

 

もう___不要でしかない。

これは___仕方ないことなんだ。

 

 

 

 

「一度放て」

 

「なっ…!?」

 

 

悪い大人は無慈悲に下す。

 

既に月雪カナタの神秘は捉えている。

 

情動に駆けられた怒りの矛先。

 

そして衛星砲ノヴァも矛先を向けている。

 

ただし、エネルギーはまだ充分ではない。

 

だが、それでも…

 

 

 

「構わん、撃て」

 

「っ、了解!」

 

 

 

 

キヴォトスの大地から離れた宇宙。

 

そこに浮かぶ、一つの兵器。

 

それは大昔、無名の司祭が残した遺産。

 

誰の手にも届かない場所にそれは浮く。

 

 

 

___ピピピピピ。

 

 

 

地上の信号を受け、砲口が光る。

 

それは何千年ぶりと、熱を焚かせる。

 

まるで、その時を待っていたかのように。

 

天使を消し飛ばさんと望まれたならば。

 

意思を引き継いだ砲口は役割を果たす。

 

それだけの、話。

 

 

ピピピ___ピィィィ!!!!

 

 

 

地上に投射された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コロコロと、足元が ____ 光る。

 

 

 

「閃光弾…!?」

 

「!?」

「!!」

 

 

隙をついて投げ込まれた閃光弾。

それはとあるアリウス兵から。

 

 

「先輩っ!撤退を!」

 

「スズミっ!?」

 

 

カナタの後を追って駆け付けたのは、先ほどまで晄輪大祭の会場にいた一人のアリウス兵。

 

その名は守月スズミ。

彼女は閃光弾を投げ込んで足止めをする。

 

 

 

「やぁぁぁあ!!」

 

 

ダダダダッ!

ダダダダッ!

 

 

足元に乱射される銃撃。

至る所で、音が弾ける。

 

 

「(ちぃ、上手いな。直接当ててくれるならある程度は攻撃の位置が分かるんだが、それを悟らせないようにするため足元に威嚇射撃かつ行動範囲を封じるか。しかも投擲物を閃光弾にするあたりコチラを倒すのではなく味方を逃すための判断か。良くも悪くもアリウスらしくないが好判断として優れたか…)」

 

 

全員で5人と思っていたが、それを完全に悟らせないために1人は敢えて戦闘に参加しない事を選んだのか。僅かながら感心して__

 

 

「だが」

 

「!?」

 

 

 

目が見えないから、なんだ。

 

__月雪カナタは他者の神秘を視れる。

 

 

 

「時間を与えすぎたな」

 

「なっ!」

 

 

 

スズミは振り向いてきたカナタに驚く。

 

そして、一歩踏み込んで__

 

 

 

「きゃぁぁっ!ぅぅぅ!がぁ、はっ!!」

 

 

 

喉を掴まれ、後方の建物に押し付けられる。

 

 

「(攻撃が、効かなかった…!!?)」

 

 

スズミは驚く。何故ならカナタの身体から溢れ出る神秘はスズミの弾丸を弾いていたから。しかしこれはカナタの知識上として当然のことである。何故なら現在の月雪カナタの防御タイプは特殊装甲だ。故に爆発属性のスズミの攻撃は効かない。純粋に相性負けであった。

 

 

 

「眼、見えてきたな…」

 

「!」

 

 

次第に目眩しから回復。

 

カナタは押さえつけながらハンドガンを取り出して構える。

 

カチャリとスズミに銃口を向ける。

 

だが__

 

 

 

「………なに?」

 

「ぁ、ぅ?」

 

 

 

カナタは目を見開いた。

 

 

___既視感。

 

 

何故か、そう感情が駆け巡る。

 

しかしそれは勘違いでは無い。

 

月雪カナタは(・)『彼女』を知っている。

 

見たことがある。

 

でも『俺』は知らない……はず。

 

なのに何故か知ってるように感じる。

 

これは??

 

 

 

「おまえは、何処か…で……」

 

 

 

内心、動揺に駆けられる。

 

他アリウス兵もそんな彼に困惑した。

 

しかし守月スズミが一番困惑していた。

 

その目に敵意は伺える。

鎮圧するべき対象として。

 

しかし他の感情を、その眼に見る。

 

 

彼は…

 

私を__知っている??

 

 

 

「そうだ……たしか君は『彼(ぼく)』の追憶で__」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カナタくん!!

逃げてェェェェええええ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!!??」

 

 

 

カナタはその声に反応し、周りを見渡す。

 

しかしその声の主はいない。

 

だがそれが誰なのかはすぐに理解した。

 

 

 

 

「しら、とり…??」

 

 

 

 

その声を答え合わせするモノは無い。

 

その姿も見えないから。

 

けれど、それは幻聴には思えない鮮明さ。

 

確かにこの耳に届いたんだ。

 

そう感じて___空からの違和感。

 

 

「?」

 

 

背筋から、脳裏にまで駆ける冷たさ。

 

天使を否定するような重圧感が迫る。

 

その感覚に従い、見上げ__

 

 

 

 

 

「_____え?」

 

 

 

 

 

 

 

その刹那_____光が落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…

 

…

 

…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一瞬だけ、焼き切れるような感覚だ。

 

何か、が___コレらを否定してきた。

 

 

 

 

「ぁ、あ、れ…?」

 

 

 

守月スズミは閃光弾を投げた記憶はない。

 

と、言うよりも投げれない。

 

何故ならカナタに押さえつけられていた。

 

しかし、一帯が光に包まれた。

 

そんな感覚だけが最後の記憶。

 

 

 

「はぁ…はぁ……ぐっ…ぅ…!」

 

「!?」

 

 

隣を見る。

 

そこには額から血を流す月雪カナタ。

 

ところどころからも血が溢れている。

 

何故、こんなにも怪我をして…?

 

 

 

「はぁ…はぁ………今のは…なんだ?……カイザーの…なのか?…げほっ…げほっ…!…しかし…逃げろって……げほっ……そういうこと…か…はぁ…はぁ……ごほっ…ごほっ!!」

 

 

体内の神秘がズタズタに裂かれた感覚。

 

肉体も焼き焦がす如く降り注いだ。

 

喉を痛めながら吐血する。

 

呼吸がまだ定まらない。

 

 

 

「ッッ、先輩は…!?リーダーは!?」

 

 

守月スズミはカナタを警戒しながらも周りを見渡し、この場所が建物の上であることを理解すると同時に仲間を思い出して、叫ぶ。

 

 

「安心、しろ……はぁ、はぁ……俺がヘイローを重ねて、なんとか護った…から……はぁ、はぁ…」

 

「え?」

 

「言ったからな。君達を守るって…」

 

「!、!!」

 

 

額から流れる血を抑えながら月雪カナタはスズミに応える。

 

その証拠としてカナタの頭の上に浮かんでいたはずの9個のヘイローは4個に減っている。

 

それは先ほどまで地上にいた仲間の人数と同じであることが伺える。

 

 

__咄嗟の判断だった。

 

聞こえた声が「逃げて」と訴えた。

 

それが何に対してかを理解できなかった。

 

しかし宇宙から迫り来る光を観測したカナタはソレが非常に危険であることを察した。

 

だから咄嗟に周りのアリウス兵達にヘイローを飛ばして重ね、降り注ぐ光から守った。

 

 

しかし、カナタは一瞬だけ逃げ遅れた。

 

瞬間移動として用意していたヘイローにパスを繋げる前に光が降り注ぎ、カナタを襲った。

 

それでもスズミを優先して守ろうとカナタは覆い被さるようにして光を受け、なんとか瞬間移動を成功させた。しかし飛雷する前に幾分かのダメージを受けてしまった。それが今の傷。

 

片膝を着いて呼吸を整える。

 

ポーチから鎮痛剤を取り出すとそれを体に打ち込み、しばらくして幾分か落ち着く。

 

神秘も回復してきた。

 

 

 

「スズミと言ったな。君はココにいろ…」

 

「!?」

 

「さっき降り注いだ攻撃は何なのかよくわかってない…が、しかし明らかに無差別だった。そうなればアリウスとか関係ない。俺を殺すために奴らは躊躇わない。なら君は俺の近くにいると危険だ…」

 

「っ…!で、ですが……まだ、私の仲間がその場所にいるんです…!…と、言うよりも…何故ですか?敵である…私を……」

 

「俺は…君たちアリウスの敵にならないよ」

 

「え…?」

 

「俺はアリウスを苦しめようとする大人達の敵であり、その大人達に苦しめられようとする君たち子供の味方であるからな」

 

「!」

 

 

頭から生えたボロボロな片翼が__揺れる。

 

心が__ドクン、と震えて仕方ない。

 

なぜ、なぜ、こんなにも落ち着かない?

 

全身が内側の鼓動に持っていかれそうだ。

 

それは………ああそうだ、この人だからだ。

 

この人が、月雪カナタ、だからだ。

 

そして ポン と頭の上に手を置かれる。

 

 

 

「君は……どこか彼女(アズサ)に似てるな」

 

「え?」

 

「いや、なに。少し横顔がな……ああ…でも、君の方が大人びてるように見えるから、気のせいかな」

 

「……」

 

 

 

唐突になんだろうか。

 

スズミはわからなくなる。

 

しかし頭の上に置かれた手は__暖かい。

 

暖かくて、安心感がある。

 

だから冷たく心に絡みついた虚しさなんてのはまったく無意味な教えなんだとその暖かさが訴えてくれる。

 

そんな無条件が心も抱きしめてくれた。

 

 

 

「貴方は……何者、なんですか…??」

 

 

 

分かりきっている。

 

彼は月雪カナタで、SRTの兵士だ。

 

アリウスを倒壊させた、真実だ。

 

 

でも、違う。

 

聞きたいのはそうじゃなくて。

 

もっと根本的な、ナニカを知りたくて__

 

 

 

「なんてことない子供(カナタ)の先駆者さ」

 

 

 

頭から手を離してカナタは立ち上がる。

 

そして、彼は宣言した。

 

 

 

 

 

「アリウスを裏返した【責任】はこの俺が背負う!!」

 

 

 

 

聞き慣れない言葉。

 

それは【責任】という響き。

 

スズミにとってそれが何かわからない。

 

 

しかし、感じ取れる【重さ】がある。

 

建物から見下ろす彼が背中で応える。

 

それを「背負う」と言う、強固な証明。

 

 

ああ、そうなんだ…

 

これが…

 

これが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…

…

…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わからない。

 

なんで、こんなにも、温かい??

 

琥珀色の、光……だ。

 

 

 

体は……焼き切れて、どこか熱い。

 

身体の神秘がズタズタにされて辛い。

 

 

 

わかる事はナニカが降り注いだこと。

 

榴弾?砲撃?ミサイル?…わからない。

 

 

 

私達はただカナタの神秘を引き出す。

 

そうすれば討つための布石ができる。

 

 

 

そう聞かされただけで、従うしかない。

 

でもカナタが討てるならと身を投じた。

 

 

 

しかし、その結果はこれだ。

 

ああ、私達は……捨て駒にされたんだ。

 

 

 

カイザーは私達ごと滅ぼそうした。

 

月雪カナタという敵を撃つために。

 

 

 

ああ…

 

あ、ああ、ぁ…

 

 

 

虚しい……虚しい……

 

わたしは……こうやって……苦しむ…

 

 

 

また、苦しんで、苦しんで、いく…

 

陽の差さない暗がりに、沈んで、いく…

 

 

 

ああ、変わらないんだ。

 

何があっても、何も、変わらないんだ。

 

 

 

紛争が、戦争が、憎悪が。

 

地下世界で何年も続いた。

 

 

 

本物の、陽の光すらわからない世界。

 

本物の、暖かさも学ぶ事がない世界。

 

 

 

私達は生まれた時から決まっていた。

 

幼い頃から傷ついて、傷に爛れていく。

 

 

 

そうやって私達は道の外れで死を迎え。

 

何も成せず、何も得れず、死んでいく。

 

 

 

身体も、心も、光も、失われる。

 

アリウスは、そんな世界が真実。

 

 

 

ねぇ?

 

ねぇ、ってば??

 

 

 

なんのために__私達は生まれたの??

なんのために__私達は生きてるの??

 

 

 

そう問いかけても返ってこない。

 

だって何も知らないから、何も見えない。

 

 

 

けれど、ある日マダムがやってきて。

 

教えてくれた、全ては【虚しい】から。

 

 

 

だから、何も求めれない。

 

だから、何も必要としない。

 

 

 

それが世界の真実。

 

それが世界の真理。

 

 

 

それを初めての学びとして、認識する。

 

私達はそうアリウスで生きてきたんだ。

 

 

 

それしかない……

 

だって………それしか、覚えない。

 

 

 

それしかない……

 

だって………それしか、解らない。

 

 

 

そうやって、何年も…

そうやって、何年も…

 

虚しさのみがこの身体を生かしてた。

 

 

 

 

けれど…

 

何もかも、真実では無かった。

 

 

 

 

 

痛い。

 

 

 

痛い。

 

 

 

悲しい。

 

 

 

苦しい。

 

 

 

苦しい。

 

 

 

ぐるしい。

 

 

 

くるしぃっ。

 

 

 

くる、し、いぃ…

 

 

 

嫌だ…

 

嫌だ、よ…

 

 

 

なんで…

 

なんで…だ。

 

 

 

わたし…は…

 

わたし…たち…は…

 

 

 

なぜ…

 

こんなにも…

 

 

 

なぜ…っ…

 

こんなにもっ…!

 

 

 

 

「なんで……こんなにも……虚しく生きて……どうして……虚しさに……わたしたち…は……生まれてきたん…ですか………ぁ、ぁぁ…」

 

 

 

 

焼き切れそうになる、体。

 

神秘ごと千切れそうになる。

 

 

 

いや、もう……

 

いいや…

 

 

 

もう、何も…

 

苦しみたくない…

 

 

 

虚しいまま……

 

生きたくない……

 

 

 

だから、このまま…

 

もう、このまま、で、いいから…

 

 

 

 

「らく、に…なりたい……」

 

 

 

 

虚しいのは…

 

もう…

 

いや、だ、から……

 

しんで……

 

しま…い…たい……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

" それでも "

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぇ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

" それでも、明日を子供が待つんだよ "

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その声は、琥珀色に響く。

 

 

 

 

 

 

「居たぞ!カナタだ!!」

「ノヴァの次弾まで稼げ!」

「あまり遠くに逃すなよ!!」

「前衛部隊はカナタを囲え!」

「二度と無いチャンスなんだ!」

「ココで奴を叩き潰すんだ!!」

 

 

戦闘区域から様子を見ていたカイザーPMC達が次々と姿を現し、瓦礫の上に立っている一人の子供、月雪カナタに対して銃口を向ける。

 

しかし月雪カナタはまるで脅威にならないどうでも良いようにカイザーPMCの部隊を一瞥するとアリウス兵のリーダーに視線を移す。

 

ガスマスクが砕け散ったことで明かされたリーダーの素顔にカナタは少しだけ驚いたように見せながらも、少しだけホッとしたように、もしくは子供を見守る【大人】のように笑い。

 

 

 

 

「皆も、スズミも無事だ」

 

「!」

 

 

 

まだ動ける顔だけで周りを見渡す。

 

降り注いだ光に押しつぶされて地面に倒れたアリウスの仲間達だが、しかしその光に消し飛ばされず、代わりに月雪カナタの琥珀色のヘイローがアリウス兵を守るように照らす。

 

 

 

「カ……ナタ……な、ぜ…」

 

 

 

私は……この者を、殺そうとした。

 

真実を否定する、危険因子を討つために。

 

 

でも私達は、この者に救われた。

 

それは、悪い大人達の____

 

 

 

 

 

 

「ぁ」

 

 

 

 

 

 

___そう、か。

 

___ああ、そうなん、だ。

 

___わたしは、悪い大人、達に…

 

___悪い、真実と、意味を…

 

___そして、虚しさ、を…

 

 

 

 

 

パサッ

 

 

「ぁ、ぅ?」

 

 

 

手元に何かが落ちてくる。

 

それを、なんとか動く手で掴む。

 

 

とても……温かい。

 

これは、一体??

 

 

 

 

「お守りだ。皆が願ってくれた、証だ」

 

「あ、かし…」

 

 

 

ギュ、と、握りしめる。

 

握りしめて、絶対に手放せない。

 

手放したくない、温かい__真実。

 

 

 

「その腕章は明日返してもらう。だから__」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明日を求めろ!

そしたら俺が明日を!!

君の明日で!!

それを貰いに行くから!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、ぁぁ、ぁぁぁ、ぁぁ、ぅぁぁあ!!」

 

 

 

 

 

 

 

箱舟を揺るがすような神秘が【解】を生む。

 

それは子供のために許された救世主の形。

 

彼を中心に、大地は震え、時空は歪む。

 

止めどなく爆増する神秘が【解】を生む。

 

悪い大人達はその光景に慄き覚えた。

 

何故なら、それは。

 

灰色(こども)に色を彩らせる、正当化の証。

 

子供のための【色彩】と解釈されたから。

 

 

 

 

 

 

 

 

「今、この責任を果たすときっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その背中を目で追う。

 

 

 

ああ、なるほど。

 

これが、そうなんだ。

 

 

あれが本当の__大人なのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 






明日も投稿予定の錠前サオリだ。
18:00で更新だからよろしく頼む。


じゃあな!
またな!
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