なんか俺のヘイロー砕けてね?   作:つヴぁるnet

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11/10 月雪カナタを下方修正しました。


第48話

 

 

 

「ぐぅ……ぅぇ……げほっ…ごほっ……!」

 

 

 

急に襲いかかる、身体中の痛み。

 

それは鉄道に揺らされた時よりも鮮明で、次第に呼び起こされる身体の感覚から与えられる情報によって冷たい床の上にいることが分かる。

 

 

 

「ぅ、ぁ…? ココ……は??」

 

 

しかし目が見えな__いや、違う。

 

ちゃんと見えてるし、目も動く。

 

別に何かを欠損した訳でもない。

 

ただ単に暗くて何も見えないだけ。

 

そして改め、ココは……何処だ?

 

ゆっくりと身体を起こし、見えない空間を手探りでこの場所がなんなのかを突き止める。

 

手を伸ばしては何かに触れ、それを手の甲で叩いてみればコツン、ガコンと響き渡るその音は記憶の限りだと鉄の音だろうか。SRTに居たからこそ分かる。あと鉄の香りもする。そうなるとココは格納庫だろうか?

 

 

 

「音の響きからしてかなり広いな…」

 

 

見えない代わりに反響音が頼りになる。

 

やれやれ。

中々に厳しめなリハビリを強いてくれる。

 

こちとら半分死んでたと言うのに。

 

正直、身体も神秘もズタボロでしんどい。

 

このまま倒れてしまいたいくらい。

 

しかしこの真っ暗闇の中で身体を休めるのはかなりリスキーだ。それに常に真っ暗闇の中なんて気が狂う。時間も感覚も失われるからな。

 

とっとと入り口を探すか、もしくはこの箱の中を照らしてくれる電気を探すかして状況を進展させる方がまだ良い。

 

それで途中気絶した時は知らん。

 

SRTの兵士として俺の精神力はその程度だったと言うことだろう、その時は。

 

 

 

「これは……隙間風か?聞こえる…」

 

 

新たな音に反応し、その音の方に近づくよう壁を手の甲でコンコンと叩きながら壁を沿うように動き、ゴールを探す。

 

扉の一つでも構わない、何か___

 

 

 

「!!」

 

 

ガコンガコンと揺れる音。

 

これは扉か!?

外の光も隙間から見える。

 

俺は僅かに差し込む光を頼りに、格納庫の外につながる扉と思わしきその近辺を探る。

 

すると何かがカチっと音が鳴る。

扉のスイッチか?

 

そして___ギィィィと開いた。

 

 

 

 

「____!!!!」

 

 

 

 

 

 

そして、広がる外は___

 

 

砂漠一面だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふざけんなぁぁぁぁぁ!!!

アロナァァァァァァァ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁ…SRTの制服ボロボロやん。いやでもあの衛星砲を受けても40%ほど布が生き残ってるのは流石と言うべきか?まあ色んなところが裂けたり穴空いたりしてるせいでワイルドな制服になっちまってるけど」

 

 

外に出たことで太陽の光を受け、開放感に包まれながら状況把握も進む。

 

現在の俺はボロボロの制服。

 

銃も、短刀も、万力鎖も、爆弾も無い。

 

つまり装備品が一つもない。

 

全て消し飛んだ。

 

いわゆるニューゲーム状態。

 

しかもリスポーン地点が砂漠。

 

プラスして人気(ひとけ)一つ無い。

 

マインクラフトかよ。

 

 

 

「その上、ヘイローも3つだけか…」

 

 

格納庫の鉄板に反射する現在の俺の姿を視認するまで気づかなかったが、見たところ頭の上に浮かんでいたカナタのヘイローの数が大幅に減っており、それで残されているのが大、中、小の一つずつである。

 

とんでもない大幅弱体化。

それほどの代償だったのか、あの瞬間は。

 

 

「ぉぇ……あかん、眩暈がしてきた…」

 

 

格納庫を出てから既に1時間は散策。

 

安全に休める場所を探しながらこの格納庫近辺を歩き回って、状況把握に勤しんだ。

 

とりあえず夜風を凌ぐならあの格納庫の中になると思うが、しかし…

 

 

 

「てか、コレ___乗り込めないかな?」

 

 

俺の目の前に信じられないモノがある。

 

それは___列車砲だ。

 

格納庫を出て先に目が入ったのは砂漠だけど衝撃を受けたのは列車砲である。

 

普通に威圧感を受けたね。

だってすごいもん、コレ。

 

だが、装甲にゲヘナのマークだ。

めちゃくちゃ嫌な予感がして堪らない。

 

なので軽く調べてみると先ほどいた格納庫に図解らしきものが壁に飾られていた。

 

で、名前が二つ確認できた。

 

その名は__列車砲シェマタ

そして開発者は___雷帝

 

列車砲シェマタは聞いたことないが雷帝に関しては何処かで聞いたことあるような気がするんだが…気のせいか?

 

ダメだ、まだ寝ぼけてて思い出せねぇ。

 

それでも分かることがあるとすれば、俺はとんでもないところにリスポーンしちまったということか。

 

 

「白鳥の2回目(ルーツ)なるハイランダー鉄道学園を解釈した結果として鉄道と路線のワードに引かれての二度目なんだろうけど、でもだからといって砂漠スタートはエグいって…」

 

 

相変わらずこの箱舟ってのは言葉遊びがお好きなようだ。

 

てか前任者(カナタ)に関しても似たような状況だったし。てかなんだよ。俺の元が【田中(タナカ)】だから苗字の読み方を反転して【カナタ】に当て嵌めるって流れは。クズノハと出会うまで気づかなかったぞ。こんなの。

 

 

 

「まあ言葉遊び云々は今更としてだ。とりあえず早めに休めるところを確立させないと夕が暮れて凍えてしまう。何処か扉とかないか?」

 

 

俺は痛む身体に鞭打って列車砲の鉄梯子に手を掛けて、カンカンと音を鳴らしながら登る。

 

それで人が通れる場所を重点的に探し、ついでに隠し扉もないか探すと、一つだけわかりやすい鉄扉を見つける。

 

装甲車ってこともありとても頑丈そうだ。

 

そう簡単に開く___

 

 

 

ギィィィィ…

 

 

 

「開いたァァァ!?」

 

 

うせやろ??

なんで開くん????

セキュリティーとかないんですか??

 

 

 

「誰かいますー?」

 

 

反応なし。気配もない。

 

それから身体半分だけ入ってみる。

 

すると内部のセンサーが人に反応したのか列車砲内はパッ!パッ!と足元を照らしてくれるオレンジ色の電光が次々と点火する。

 

てか電気あるのか。

 

するとビュゥゥ!!ゴォォォ!!と砂漠の嵐がこの辺りを吹き付けてきた。

 

俺は中に砂が入らないように扉を閉めてそのまま列車砲の中に避難する。

 

 

「マジで気配ないな…」

 

 

とりあえず奥に進み、列車砲を散策する。

 

内装の作りも立派だ。

 

すると途中開けた場所を見つける。

 

それで中を覗いてみると…

 

 

「これ……もしかして休憩室か??」

 

 

外から見た列車砲はかなり大きく、そのため内装も動きやすいようにそれなりの広さはあるのだろうと思っていた。壁のスイッチを押して電気をつける。二人くらいなら過ごせるスペースの広さだ。

 

 

「この壁に埋まってるやつはテーブルか?あ、椅子も一緒に引き出せるな。あと後ろにあるのはもしやシンクか?足元には冷蔵庫もあるか。となると…ああやはりか。端のコイツは電気コンロだな。なら調理も可能か。上にフライパンと小鍋も収納してあるし。で、こっち側に折り畳まれた奴を下すと…おお、寝台か。親切にもマットレス付き。何もかもあるな」

 

 

休憩室として寛ぐには一通り揃っている。流石に天井は低いが言うほど窮屈しないし、体を休めるには充分と言った感じ。

 

あと休憩室の隣にはシャワー付きのトイレも置いてある。かなりこぢんまりとしているが衛生面で困らないのは助かる。

 

 

ふーん、なるほどなぁ。

 

恐らくだが列車砲で長期的な任務にも対応できるように休憩室も完備しているようだ。

 

あと床下には非常食や水も置いてあった。

まあどっちも期限が切れているが。

 

一応、開封して試飲食してみる。

 

……ギリギリ食えそうだな。

あまり腹に入れたいとは思わないが。

 

水に関しては熱を通せば何とかなる。

電気コンロも作動するし。

 

 

「普通に住めるな、この休憩室…」

 

 

飲食は心配だが、体を休めれる場所があるのは大変ながらありがたい。

 

 

……よし。

 

 

勝手ながらだが、使わせてもらおう。

 

見たところ誰も使ってないみたいだし。

 

足跡も、痕跡も、何も見当たらない。

 

むしろ怖いほどだ。

 

 

「操縦室まで確認するか…」

 

 

休憩室があるのは魅力的だがそれは全てが安全だと理解するまで。

 

俺は途中倉庫から見つけたバールを手に取って奥に進む。

 

足元を照らすオレンジの電光。

 

痛む体を押さえ込みながら呼吸と息遣いも最小限に抑え、目視確認を怠らない。

 

いつでも白兵戦を行えるように構えながら奥に進み、そして操縦室までやってきた。

 

 

「…ふむ」

 

 

ここまで気配は無しだ。

 

やはりこの列車砲には誰も居ない。

 

 

 

「おお、すげーな。もしかして操縦席一つで移動攻撃が全部できるのか??ヒルドルブかよ」

 

 

ジオン脅威のメカニズムもにっこりな列車砲に心躍らせつつ中を見渡す。

 

一応SRTの訓練で鉄道の操縦を(何故か)教わっているため何となくどれで動かすとかはわかるんだけど、それ以上の装置はわからない。

 

あ、でも座席後ろにマニュアルあるな。

興味半分少しだけ開いてみる。

 

すると…

 

 

 

「え、何これ……すごい簡単やん」

 

 

砲塔とかも戦車のようにアナログで照準を合わせるかと思ったら、中にあるシステムがある程度砲口を補助してくれるみたいで、あとは狙いたい対象を狙うだけでほぼ何とかなるらしい。しかも500kmの射程距離。まじ??

 

マジですごい移動要塞だな。

 

てかゲヘナってこんなの作れるのか。

 

やっぱあの自治区って頭おかしい。

 

 

「俺、とんでもないモノに触れてんのな…」

 

 

操作マニュアルを座席後ろに仕舞い、休憩室に戻りながら途中廊下にある電気系統の操縦板を操作して電気供給をコントロールし、可能な限り節電できるように設定。

 

しかし、こうして初めて利用する人にも非常に安心な設計ってのは、寧ろ…

 

 

「何も知らないペーペーを乗せたとしても最恐の兵器になるってことだろ?これだけ簡単親切に動かせるんだ。そうなれば人員の練度にも困らないことになる訳だし。改めてとんでもない兵器だなコイツは…」

 

 

マットレス付きの寝台に転がる。

 

疲弊し切った身体が休みを求める。

 

瞼さえ閉じれば堕ちれそうだ。

 

 

 

「はぁ…本当になんだよ、このニューゲーム?」

 

 

目を覚ましたら格納庫の中で、なんとか外に出たら砂漠が広がり、唯一インフラ整備されている線路だけが荒地の奥まで続き、そのど真ん中に居座っているのがゲヘナの雷帝が造ったとされる列車砲シェマタ。情報量が多い。

 

 

「……んぁ?……雷帝??」

 

 

 

あー、やはり、何処かで…?

 

聞いたことあるよう…な??

 

 

…あ。

 

 

「ああー!そうだ!思い出したぁ!!子ウサギ駅下のサイロにあったアハトだよ!カイザーコーポレーションがサイロの中に違法の武器を格納したのを取り締まった時のだ!ああ!思い出した!完全に思い出したわ!!*1

 

 

思い出した俺は飛び上がり、しかし天井に頭を打ち、再び寝台に崩れ落ちてしまう。

 

身体がいてェェ……

 

大人しくしろよぉ、俺ぇ。

 

 

 

「ああ、でもそうだ。確かにゲヘナの雷帝の話はそことなく取り締まりに来たゲヘナ風紀委員から聞いてたわ。それでカイザーが回収していたアハト砲も雷帝の産物だったな。ただそれ以来雷帝とは特に関わりなかったから今まで忘れてたけど…いやでも、そっか。この列車砲ってあの同じ雷帝のか。ならこのヤバめな感じも納得だわ…」

 

 

目が覚めたことを理由に体を起こし、小鍋を引っ張り出して保存水を投入、火をつけて沸騰させている間にシャワーを浴びることにする。

 

ついでにボロボロの制服を除いてシャツや下着もバチャバチャと温水で洗ってしまう。

 

それからリハビリがてらに神秘を手元に集めて濡れた衣類を叩く。

 

すると衣類に含まれていた水が神秘で叩かれたことで浮き上がり乾いた。

 

しかし身体がビリビリとする。

 

 

 

「ぐぅおぉぉ、この程度の神秘もダメか…」

 

 

休めば多少はマシになるだろうが、しかし神秘を使うと身体の内側が軋む感覚に襲われて意識が飛びそうになる。本当に弱ったな。俺。

 

 

「はぁぁ、ゆっくり回復するしかないか……まあ良くも悪くも今はこの状態が好ましいのかもしれないが……しかし、嫌になるなぁ…」

 

 

お湯で沸騰させて熱消毒した保存水を再びペットボトルの中に戻し、冷蔵庫に放り込む。

 

それからシャツ一枚に短パンの姿のまま寝台に転がると電気を落として目を閉ざす。

 

マットレスしか敷かれてない寝台だが、コンクリートや鉄板に転がされるよりは何十倍もマシだ。充分に休めれる。

 

 

 

「……」

 

 

白鳥が言ってたことを思い出す。

 

衛星砲が月雪カナタを狙う。

アレはどうやって狙っているのか。

 

宇宙という場所から、そんな遠くから標的をピンポイントで狙い当てれるというのか?

 

正直、撃たれた瞬間に飛雷して避けようと思えばいくらでも回避できる。

 

だが、違和感。

 

俺はシラトリ区の街区に誘い込まれた。

 

そして人気のない場所でアリウス兵をぶつけて攻撃してきたのだが戦力差は絶大。

 

自分で言うのもなんだけど俺ってSRTの兵士としてかなり強い部類だ。相手がキリノ*テラーのような反則行為持ちでなければ俺は純粋な戦力を相手にそう負けないし、数が100倍だろうと負ける気はしない。実際に200倍は居たけど。

 

そしてそれはカイザー側も知ってるはず。

 

それで一人誘い込んだ程度で俺を倒せる算段など持ってない。相手はクズな大人連中だけど単純バカではないし、寧ろ賢い側に位置する。

 

なのに200倍揃えた程度であとはクソ真面目に攻撃してきた。それが違和感。

 

 

「間違いなく衛星砲で俺を消し飛ばすため…」

 

 

でもそれなら__何故、わざわざ誘い込んで俺を消すことにしたのか??

 

月雪カナタを滅ぼせるほどの兵器を持っているとキヴォトス中に知らしめるデモンストレーションのつもりか?理解はまあ出来る。

 

だがそれは正直セカンドプランだ。

 

まず奴らの本命は俺を消すことだ。

 

そもそも俺を消すなら誘い込まずとも不意をついて撃てばいい。そうなれば俺は反応できずに消し飛ばされるかもしれないし、仮に倒せなくても二発目を撃つか兵士で追い討ちをかけて畳み掛ければ倒せるはず。そのくらいは考えれるだろう。

 

でもアイツらはクソ真面目に戦いやすい街区に誘い込み、積み上げた戦力も多く投入して俺を討ち滅ぼそうとしてきた。

 

もし俺相手に総力戦で挑むにしても、あまりにも散発的な攻撃だった。アリウス兵を先陣に置いて攻撃するのはわかるがそれにしては援護の量も浅かったし、俺を倒すにはあまりにも打撃量が少なく、無意味な戦力投入と考えれる。

 

アレだけの数を揃えたのなら最初から一斉に攻撃した方がまだ勝機はある。だが奴らはアリウス兵を一段構えにし、自軍を二段構えとしてこちらに猶予を持たせる間伸びた攻撃だった。ドクトリンとしては悪くないけど月雪カナタを倒すには弱すぎる。

 

じゃあ、愚策のまま無意味な攻撃で月雪カナタを討てると算段つけたのか?

 

 

それは____ 否。

 

あのやり方は…

 

 

 

「長期戦を望んでの攻撃。それは衛星砲のために何か理由があって時間をかけたかったから…」

 

 

結論を言う。

 

あの衛星砲は___

 

 

 

「俺の神秘を捉えさせるため。白鳥の発言でもカナタを否定するモノと述べていたからな…」

 

 

できるならもっと白鳥から情報を聞きたかったが、しかしあの焦りようからして彼女もそこまで分かってなかったと思う。

 

恐らくプレイヤー視点としての危険性をその眼で視たことで「ともかく!」と訴えていた。

 

多分そんな感じだろう。

 

 

 

「良くも悪くも……この状態に救われたか」

 

 

今現在の俺の神秘は……全盛期から離れた。

 

身体ごと、神秘もズタズタにされた。

 

ここまで弱っているのが証拠。

 

ヘイローも錆色が三つだけ。

 

過去に正当化させた琥珀色はひとつもない。

 

全部、アリウスの子供達を助けるために砕いてしまった。

 

この場にあるのは3つだけ。

大、中、小。

 

小サイズは穴あきだからまたワイヤーでも通せば括り付けて悪さできそうだけど、その悪さをするまでの回復が必要。

 

それもかなりの時間を要するだろう。

 

 

 

「………」

 

 

色々な、人を、物を、証を、置いてきた。

 

できるなら__今すぐあの場所に戻りたい。

 

仲間を、友達を、隣人を。

 

何より__妹のミヤコに俺の無事を知らせて安心させたい。その身体を強く抱きしめて俺がまだ健在であることを教えたい。月雪カナタに与えられた、たった一人の妹だ。だが連絡ひとつ与えることは叶わない。何より許されない。

 

俺が生きていると気づけば、月雪カナタという人物に敵意や悪意を抱えている奴ら、特にカイザーコーポレーションは逃さないだろう。

 

そうなればミヤコにも被害が被る。

だからダメだ。何も告げれない。

 

 

それに今の俺に反撃するほどの力はない。

 

無論、仲間に頼れば仲間達は喜んで俺に力を貸してくれるだろう。

 

 

しかし奴らには衛星砲がある。

 

下手に打てないし、下手に動けない。

 

存在そのものを、知らせてはならない。

 

 

今は月雪カナタを滅ぼせたその成果によってカイザーコーポレーションは大人しい筈。

 

軍隊も俺に軒並み削られたし、その戦力補給のため暫しの冷却期間はアイツらも強いられている現状、まだ活発には動かない。

 

……カイザーはあの後どう事後処理を行なっただろうか。

 

どうせアリウスか何者かが全てやったなど嘘を報道して、操作して、それで月雪カナタが命を引き換えに止めたなどシナリオを作るか。

 

ともかくカイザーコーポレーションが罪に問われない出来事として扱うのは間違いない。

 

もし仮にカイザーの罪が暴かれたとしても衛星砲をチラつかせれば抑止になる。

 

そうなると誰も手を出せないし、治安を取り締まる連邦生徒会も組織制裁に乗り出せない。

 

まあ、そもそもとして__連邦生徒会長の白鳥も光に飲まれて消えてしまったことで連邦生徒会の組織力は大幅に低下しているだろう。そうなればSRTも動かせない。あの学園は連邦生徒会長の私兵だ。その主人が消えたのでは命令を聞く兵士も動けやしない。

 

ああ……今頃、連邦生徒会は生徒会長の消失に大パニックになっているだろう。

 

長が消えた万が一のための計画は多分残していると思うが、それでも唐突なリーダーの消失は組織の安定性を崩す。

 

 

 

連邦生徒会 と SRT特殊学園。

 

リーダーがその日、同時に消えた。

 

キヴォトスの混迷期は間違いなく来る。

 

 

 

「___絶対に許してたまるものか」

 

 

 

寝台の上に沈んだヘイローがカタカタと情動に震えて、慄える。

 

世間は月雪カナタが死んだのだろうと思っている。

 

だが俺はまだ生きている。

 

ならばこの身は正当化に投じれる。

 

だから…

 

 

 

 

「寝よう」

 

 

 

寝て、休んで、傷を治して…

 

それで……

そして…

 

いつか必ず落とし前をつける。

 

子供のために大人をしない大人を討つ。

 

バシリカのベアトリーチェの時のように。

灰色の世界の地下生活者の時のように。

 

この月雪カナタが到来しよう。

 

必ず…

 

必ずだ……

 

 

 

 

 

 

「ミ……ヤ……コ………ごめ…ん………」

 

 

 

 

頬に流れ落ちる一滴の雫が寝台に溢れる。

 

 

 

ああ、苦しい……

 

悔しい………

 

虚しい……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダメだ、まったく起動しないな。やはり何かしらのキーが必要なんだろう。しかしそれも見当がつかない。何が必要なんだ??」

 

 

おはよう、寝てスッキリした。

 

神秘もそこそこ回復した。

体の調子も少し良くなった。

 

あと外の砂嵐も収まっていたし、気づいたら夕方になっていた。

 

かなりの時間を寝てたことになる。

 

とりあえず外での活動は諦めると冷蔵庫で冷やしていた水を片手に列車砲シェマタの操縦席に座ってガチャガチャしているが一向に起動しないし、反応もしない。

 

そもそも動力は生きてるのか?

 

電気が動いてるのなら動力も無事だと考えるけど俺はエンジニアではないからな、内部を調査する勇気はない。まあ電気が動いてそれで温水が出るだけありがたいが。

 

 

「はぁぁ……そうなるとやっぱり歩いてこの砂漠地帯を抜けるしかないか」

 

 

一応線路はご丁寧に引いてあるから何処かしらにたどり着けると思うけど。

 

ちなみに列車はこれしかない。

 

もし他に普通の列車があるのなら移動手段として使いたかったが、残念ながらこの場所には無いので、列車砲シェマタで移動を考えてみようと操作を試してるところ。

 

しかし起動できないので既に詰み。

 

そのため列車砲シェマタは現在都合の良い避難先として使っている。

 

しかし飲み水はともかくとして期限切れの非常食はあまり宛にできないので完全に体を壊す前に移動したほうが良いだろう。

 

こんなところで朽ちてたまるか。

 

なので明日はこの近辺を調査。

 

それで物資を整えて、砂漠地帯を横断できるように準備をしておこう。

 

 

 

「お、医療セットに針と縫い糸あるじゃん。ガーゼを使えばこの制服も少しは修復できるか?」

 

 

実は起きて散策後、列車砲内に医療セットが置いてあるのを見つけた。やはり長期的な稼動も可能とする移動要塞なのか色々と必要なモノがある。流石に服は無かったが、未開封のガーゼがあったのでそれを使ってSRTの制服を修復中。

 

一応SRTのロゴマークは切り取ろうか考えたが都合よく穴抜けて消えてたのでそのまま真っ白なガーゼで穴を縫ってしまう。

 

え?

 

それより裁縫は出来るのかって??

 

うん、できるよ。

 

てか武芸に長けた百鬼夜行に居たんだぞ?

 

このくらい出来る。

 

何処ぞの死に戻りをする少年に伴って俺も『Re.ゼロから始まる列車砲生活』してる身だからな。裁縫スキルはお手のものだ。多分あまり関係ないけど。へけっ。

 

 

 

「百鬼夜行かぁ…」

 

 

たまに思い出す。

 

あの自治区にいた頃を。

 

己が月雪カナタを育てるために紅葉彩る優しい空気を肺いっぱいに詰め込み、子供のために大人をしてくれる心優しい人達に包まれながら武芸武道を嗜み、心踊るお祭りに青春を彩らせてくれる素晴らしい自治区を。

 

これは何度も言う。

 

もしSRT特殊学園という進学先が無ければ俺はあのまま百鬼夜行で骨を埋めてもよかったと思っている。それほどに心を寄せていた。あとケモ耳沢山いるし。運良くクズノハの元に黄昏れることが出来たら最高級のケモ耳を味わえる訳だし。あの自治区は素敵なものいっぱいだ。

 

 

それから…

 

 

 

「ナグサとアヤメ。元気だろうか」

 

 

俺の大事な後輩二人。

 

あと学舎となった小さな寺子屋。

 

入校から学舎を変えることなく中等部時代の3年間最後まであの寺子屋でナグサとアヤメの3人で過ごしてきた。

 

もういまの彼女達は高等部一年生か。

 

あの後、寺子屋を出たのか?

 

もしくはチラリと聞いていた百花繚乱紛争調停委員会にでも進学したのだろうか?

 

実は当時の二人は携帯機に疎かったため連絡先とかは交換しておらず、近況報告とかも全くしていない。いつか百鬼夜行に帰ってみようとか考えてもSRTが楽しすぎて全く戻ることがなかった。だから今年になって高等部になっただろうナグサとアヤメに顔を出そうかと計画していた。久しぶりに会いたかった。

 

 

まあ今現在このザマですが。

カイザーしね。

 

 

 

「まあナグサはアヤメと頑張ると言ってたし。あとなんだかんだで当時の俺よりもナグサは強かったし。そこまで心配はしてないさ」

 

 

非常食では賄えないだろう心の栄養は過去の思い出で補給しながら、医療セットに針を仕舞う。

 

ちなみにガーゼは使い切った。

 

開封したヤツは使わないと悪くなる一方なので半端に残すくらいなら、ってことだ。

 

お陰でSRTの制服も大体修復できた。

 

まあガーゼの部分に頑丈性は無いに等しいが砂風を防げるならこれで充分だ。それと襟元にSRTのロゴが付いてたがそれもガーゼで隠した。あと万が一怪我してもガーゼの部分をちぎり取って応急処置の代わりに出来るよう服裏に仕込んであったりと少し改造を施してある。かんぺき〜。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でっかい砲弾はそこら中にあるのに銃は一つもねぇのかよ。はーつっかえ」

 

 

悪態を吐きながら荷物袋を背負う。

 

制服の修復から2日経過した。

 

それまで散策と物資の収集に勤しんだ。

 

で、結局のところここは列車砲シェマタのためだけに用意された格納施設だ。

 

他にも小さな格納庫はあったが、列車砲シェマタ関連だけが放置されていて、残りはとっぱられたか回収されたかで大きな収穫は無し。そして銃も無かった。なので銃を所持してない現在の俺は裸でいるより恥ずかしい存在らしい。ワロタ。

 

それでも荷物袋の一つは作れそうな素材やら物資やらは砂埃被って放置されてたので裁縫スキル活かして簡易的な荷物袋を作り、列車砲シェマタの中にあったバールを武器代わりに拝借して準備完了。まあ即横断する目的なので荷物は多くない方が良い。でもテントの一つは欲しかったなぁ。夜の砂漠は凍える。モンハンで知った。あとラギアクルスが犯人なのも知った。絶対に許すな。

 

 

 

「お世話になりました」

 

 

列車砲シェマタに頭を下げる。

 

電気系統は元に戻し、あと廃水も処理した。

 

全部元通り、綺麗にしてある。

 

 

 

「……」

 

 

上を見る。天を貫く様な砲塔だ。

あれならどこまでも届いてくれるか。

 

知識上として地上から大気圏は100kmだ。

人口衛星とかも200kmから先にある。

 

そしてこの列車砲の射程距離は500km。

ただ重力圏の関係でそれ以下になる。

 

しかしそれでもかなり長い。

大気圏は余裕で突破できる。

 

 

 

「…もしも、だ……」

 

 

もし、この数字が本物で…

 

もし、この性能が真実ならば…

 

 

 

 

いや、今の俺にはその力も無いし、何より動かすことは叶わない。

 

空論上にとどまった考えだ。

 

だから当てにし過ぎない。

 

いまは避難先として使えただけ充分だ。

 

 

 

「さぁ、あとは一気に抜けるだけだ」

 

 

線路が続いているなら何処かしらにたどり着くだろう。

 

最悪ゴーストタウンでも構わない。

 

 

ちなみに何処かに辿り着く根拠はある。

 

なぜなら…

 

 

 

「よし、リハビリも兼ねて一気に進むぞ」

 

 

線路を進むために背にした列車砲シェマタの装甲には『アビドス』のマーク。

 

キヴォトスには何千と学園があるため校章も何千とある。しかし灰色のテラーワールドの件を切っ掛けにアビドスの事は少し調べたため校章は覚えていた。だからココは…

 

 

 

「アビドス自治区……何処まで人の手が残っているか未知数だが、街さえ見えるなら…」

 

 

 

希望を抱く。

 

そしてスタートを切る。

 

ココから___ココからだ。

 

あまねく砕け散った始発点として。

 

俺はこの二度目を得て到来する。

 

 

 

「白鳥…!」

 

 

 

 

そして____アロナ、待っていろ!

 

必ず俺はたどり着いて見せる!!

 

夢抱く学生から、夢を守れる大人に!!

 

いつか、その箱庭に…!!

 

この指が触れれるように…!!

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 

*1
35話でも話してる






まあ弱くなってもSRTだったし。
へーきやろ、この人なら。


じゃぁな!
またな!
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