なんか俺のヘイロー砕けてね?   作:つヴぁるnet

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コレが本当の1話の続きですね。

10カ月で50話。
ここまで長かったっスねぇ。


第52話

 

「ンフー!おいひぃー!」

 

「美味しい…」

 

「チャーシュー最高、うますぎ…」

 

 

ピッケルやシャベルを使った肉体労働から大きなチャーシューがガツンと空きっ腹の胃袋にボディーブローを入れてくれるココはアビドス自治区の柴関ラーメン。来店した学生には3割引にしてくれたりと百鬼夜行自治区にいた団子屋の黒柴大将の店を思い出す。道場破り後の打ち上げに宇沢レイサ達と食べたあの店だ。とても懐かしい。イズナも元気だろうか?

 

 

「カナ……じゃなくて、タナカちゃん!ラーメン美味しいね!」

 

「ああ」

 

「……」

 

 

ホシノが呆れたように視線を突き刺す。

 

いや仕方ねぇだろ。

 

ここで月雪カナタとか言ってみろ。

 

もし聞かれたら人口が少ないアビドスでも大騒ぎやぞ。

 

そのため表に出る時は前世の苗字から【タナカ】の名で呼んでもらっている。

 

ちなみに外出中の身なりは麦わら帽子とサングラスで顔バレを防止しており、制服は旧アビドスをベースに少しだけ改造してある。

 

 

……スカートじゃないぞ?

普通にズボンだ。チノパンって奴。

 

俺としてはSRT式変装技術でアビドスのタナカちゃんの解像度(?)を上げるためにスカートの手段も考えたけどホシノの目が厳しかったのでスカート等の女装は断念することにした。やれやれですわ。仕方ないですわ。あとラーメンがうめぇですわ。パクパクですわ。毎日これですわ。

 

 

 

「それよりも今日の反省会をしよ!」

 

「普通にダメだった。以上」

「そうですね。普通にダメでした」

 

「え、ええー!?も、もうちょっと何かこう…手心とか込めて言える事とかないのかなぁ!?」

 

「…なんかある?」

「無いです」

「じゃあ無いな。終わり、閉廷!」

 

「うぇぇええぇ!!?………ひぃん…」

 

 

俺的には今回の掘削(?)作業がリハビリ代わりになってるので悪くなかったが、しかしホシノはユメの不確かな情報に釣られては今回も無事に空回りで終えてしまったため、やや不機嫌気味なご様子。

 

なのでラーメンを胃袋にぶち込む事で中和している。だがホシノも宝探しに乗り気だった事を忘れてはならない。可愛い奴め。

 

そして今回も振り回してくれたユメは俺達の厳しめな判定に項垂れながらも『バナナとり』と書かれた手帳を取り出すと表情は一変、今回の活動は失敗に終えたがそれでも宝探しが楽しかったのか微笑みながら記録を刻んでいる。

 

相変わらず切り替えが早い娘だ。それだけこの毎日が楽しくて堪らないのだろう。

 

 

 

「あ、ところで…身体は平気なの?秋とはいえ砂漠方面はまだ真夏みたいに暑いから急な温度の変化で体調崩したりとかしてない?」

 

「そこまで貧弱じゃないさ。大丈夫。むしろ明日の筋肉痛に怯えてる所だな」

 

「なら健康体ですね」

 

「お陰様でな。神秘はまだまだ万全とは言い難いが肉体面は順調に回復している」

 

 

と、言っても目的を持たなくなると脳が「オラァ堕ちろ!」と簡単に意識を眠りへと持っていくのはまだまだ回復が足りてない証拠だろう。

 

なのでラーメン食べ終えてユメの家に着くと一気に眠気が襲ってくる筈だ。食べてすぐ寝るのは勘弁したい。何か作業していようか。

 

 

「明日は何時に起きれるか分からねぇな」

 

「ゆっくりの登校で良いからね?」

 

「ありがとう」

 

「言葉だけ聞くとダメ人間ですね」

 

「マジそれな」

 

「もうホシノちゃん!」

 

 

そう、俺は基本的に起きるのが遅い。

 

ただこれは別にだらしなさとかではなく回復のために起きる事ができない。

 

何か目的を持てれば意識が覚醒して全然起きれるのだが、オブザーバーのような遠間からアビドスの現状をなんとかしようとする立ち位置だと表活動より回復を優先しようと脳が促すため、不可抗力ながらも寝てしまう時間が多くなっている。

 

この状態、なかなかに厄介だ。

 

いつになったら脱せるのか。

 

それとも後遺症として一生このままか…

 

 

 

「で、でも、回復が優先だからね?だからあまり無理して起きなくても大丈夫だからね?」

 

「起きてる方が健康的なんだけどねぇ」

 

「無理して倒れられるよりはマシなので寧ろ寝ててください」

 

「…と、ホシノが優しいからな!だから無理はしないことにするよ」

 

「そうだね!」

 

「なっ!……私は関係ないですよ」

 

「えー?でもホシノちゃんって登校したら毎日聞いてくるよね?彼の状態はどうですか?って!」

 

「ユ、ユメ先輩…!」

 

「ホシノが優しいのは俺も知ってるよ。なんだったらユメよりも先に知ってるつもりだ。コイツはシラトリ区の英雄だからな」

 

「えへへ、そうだったね!流石ホシノちゃん!」

 

「っ〜!……先に出ます。お疲れ様でした」

 

 

ラーメンを食べ切っていたホシノは氷入りの水をガバガバと飲んでしまうと席を立ち、さっさと店を出る。少し揶揄いすぎたか?

 

でも仕方ない。なんだかんだでホシノは中々可愛がり甲斐あるし。ユメも気持ちは同じ。

 

 

それから良心的な価格でお勘定を済ませると柴大将に「また来いよー!」と見送られながら俺達は店を出てユメと帰り道を共にする。

 

 

季節は秋。

暮れるのも早くなってきた。

 

 

 

「今日はもう夜ご飯いらないね」

 

「ならヨーグルトだけ食べるか」

 

「寝る前にヨーグルト?」

 

「習慣にすると良い。眠りの質が上がる」

 

 

俺は未だユメの家でお世話になっている。

 

神秘関連はまだ万全ではないが、肉体面はシャベルやピッケルで採掘作業が出来るくらいに回復してるため、実のところもうそこまで介抱される必要はない。動ける。

 

なのでこれ以上の居候は彼女に迷惑だろう……なんて思っていたが、底抜けに優しいユメは迷惑などまったく感じておらず、むしろ「完全回復するまで家に居て良いからね!」と太陽のように深く何処までも受け入れる。

 

逆に出て行こうとする度に悲しんでは涙目になって「行っちゃうの?」と訴えてくる。

 

これがなかなかに効く。

 

そうやって案外涙に弱い事が分かった俺はユメの家から拠点を動かす事なく、そのご厚意を受けたままいまもユメの家に居座っており、そして恐らく何もかも全快するまではこれからもお世話になるのだろう。

 

一応、アビドス高等学校の空き教室とか次なる拠点を考えていたんだけどね。

 

しかしインフラも生活環境も整っているユメの家が最良かつ本人の強い要望もある。

 

そんなわけでこの三ヶ月間、俺は変わらずあの部屋を使っている。彼女には頭が上がらない。

 

 

 

まぁだから__アビドス生徒会に入った。

 

何か恩を返したくて。

 

もちろんSRTの名目元に彼女達を守るためでもあるんだけど、同時に学生生活を脅かす借金をどうにかできないか?と考えての行動であり、その結果がオブザーバーという決定権はないが距離感を調節できる間合いで関わることにした。しばらくアビドスが拠点だからな。

 

 

 

__他校の生徒が生徒会に入れるの??

 

__新しく書類を作成し、ルールを変える。

 

__なるほど!じゃあ、大丈夫だね!!

 

__えぇ…(困惑)

 

 

 

と、突発的な俺のアビドス生徒会の加入に困惑するホシノの反応は至って普通。

 

しかし現在の生徒会長は梔子ユメだ。

 

アビドス高等学校の規約やルールを変更できる権限は全面的にユメが持っている。

 

なので俺が提案という形で新しく書類作成を行い、その作成案は生徒会所属のホシノの名義として扱い、それを生徒会の梔子ユメ会長がサインして変更を認可する。

 

アビドス高等学校のルールを変えた。

 

その結果、他校の生徒もアビドスの生徒会(ぶかつ)に入れるようになった。

 

もちろん入るための条件は幾つか設けられているが、基本的に現生徒会長が了承すれば即加入できるようにしてある。

 

それから俺はSRT特殊学園所属扱いの元でアビドス生徒会にオブザーバーとしての加入申請を行い、生徒会長のユメが「いいよー」と公言したことで()()()()加入が完了した。

 

二人しかいないアビドス高等学校だからこそルール変更が即可能だった。

 

今のところ止めれる奴はいない。

 

 

 

「ねぇ、カナタくん」

 

「?」

 

「その…ちょっとだけ寄り道しない?」

 

「あまり人が集まるところは控えたいな」

 

「大丈夫だよ。ちょっと上の公園だから」

 

「わかった」

 

 

少しだけ方向転換。

 

俺とユメは石階段を登る。

 

そして、頂上にたどり着いた。

 

ユメと上から町を見渡す。

 

もう半分以上機能してない街だ。

 

夜に暮れているのに家の明かりが少ない。

 

それだけ人が居なくなった証拠だ。

 

使われてないコンビニなどが目立つ。

 

ココはそれほどに……失われている。

 

 

 

「……涼しいね」

 

「町から吐息一つ届かないからな」

 

 

一通り見渡したユメはブランコに腰掛ける。

 

すると秋風が自然とユメの背中を押した。

 

こんな公園でも歓迎してくれるようだ。

 

 

 

「なんだか大変なことになっちゃったね。まさかアビドスの土地がどんどん無くなってるとは思わなかった……何も、知らなかった」

 

「あんな莫大な数字が両肩に乗っていたら気付けないもんだよ。普通は余裕ないって」

 

「でもカナタくんが調べてくれて、それで教えてくれたから良かったよ。ありがとうね」

 

「気にするな…暇してただけだ。俺こそ感謝している。こんな大変な状態で受け入れてくれて」

 

「ううん、借金とかは関係ないよ。私はただ誰かを助けることが大事だって思っているから」

 

「……助けてくれたのがユメ達で良かったよ」

 

「えへへ、どういたしまして」

 

 

少しだけブランコがご機嫌に揺れる。

 

……純粋かつ真っ白な娘だ。

 

そんな子供が10億近い借金を相手にしながらアビドスの未来のために奔走する。

 

能力が無くても、夢見ることをやめない、そんな一途が最後の良心、そして砦。

 

ああ__どうしてこんな素晴らしき子供が大人の悪意に苦しまなければならないのか。

 

 

 

「土地の問題は考えなくて良い。自分たちは何も知らなかったと気付かされるまでは意識する必要は無い」

 

「それって良いのかな…」

 

「そんなこと言ったら今日の宝探しもカイザーの領地で許可なく勝手に活動してることになるんだぞ?なんならその前だってそう。やってること既に手遅れだよ」

 

「ぅぅ…そうだよね…」

 

「だが自治区の管理は未だアビドス生徒会にあるから、アビドス自治区の治安維持のために活動していると名目打てば問題ない。だから野外活動に関してはこれまで通りで良いんだよ」

 

「う、うん。わかったよ、カナタくん」

 

「……悪いな、こんな状態で現れてしまって」

 

「え?」

 

「前にホシノから聞いたんだよ。今までアビドスはこの状況を何とかするため連邦生徒会に救援を求めていたのに反応一つ無くずっと無視されてきた。だがある日、連邦生徒会の関係者がアビドスに現れた。しかしソイツはとある組織を相手に敗走してきた人間。今更現れた連邦生徒会の人間はアビドスの何も解決させられない役立たずであることを知った」

 

「!」

 

「俺はSRT特殊学園の生徒だけど、でもそこに在部する部活(そしき)は連邦生徒会の運営元、ならば俺はアビドスから求められていた連邦生徒会の関係者なんだ。それがやっと現れたのにズタボロな状態。むしろアビドス側に助けられる始末。今はホシノも事情も知っているからそれなりに受け入れてくれている。しかし彼女が待ち合わせた当時の怒りや苛立ちは至極当然だと思う。俺は彼女を責めれないし、否定もできない」

 

「ホシノちゃん…」

 

「でもそれだけアビドスの未来を思っている証拠なんだ。真剣なんだ。日頃から見せる苛立ちも必死なだけ。アイツは優しい奴だからな。ユメはとても良い後輩を持ったと思うよ」

 

「…うん!うんっ!そうだよ!カナタくんの言う通りだよ!ホシノちゃんはとても優しくて!とても強くて!とても良い子なんだよ!私は情けない会長さんだからいつも怒られてばかりだけどね、でもホシノちゃんは私のことをいつも気にしてくれる心優しい子。もう両手で数えきれないほど助けてくれた。前も大人に騙された時にホシノちゃんがビルの窓ガラスを割って助けに来てくれたんだ」

 

「知ってるよ。おかゆ食べさせてくれた時に何度も聞いたさ、君の後輩自慢は」

 

「えへへ、そうだっけ?でも私はそれだけホシノちゃんがアビドスに居てくれる奇跡に感謝してるの。私はね…間違いなく一人じゃなにも出来なかった。もし私がアビドスで一人だったらどこかで彷徨って、取り返しのつかない事をしてしまって、絶対何も出来なかった…」

 

「…」

 

「夢見るだけは一丁前だってホシノちゃんに何度も言われて、もっと現実を見ろと怒られて、先輩らしいことをホシノちゃんに何一つしてあげられなくて、このどうしようもない未熟さが何度も誰かを困らせる。えへへ…たまに辛くなっちゃうな……」

 

 

底抜けに優しく、明るい少女だ。

 

けれど誰だって傷つくし、痛みを知る。

 

苦しみを溜め込むことなどできない。

 

ユメはブランコに揺られながら苦笑いする。

 

 

 

「……箱舟にとある生徒(こども)がいた」

 

「?」

 

「その生徒(こども)は、とある先駆者の背中を見てその道を辿ったが、しかしその先駆者は途中までしか道しるべを見せることがなかった。けれどその生徒(こども)は前に進むことを選んだ。そうでありたい。そうなれるなら。そう【夢】を見続けて投じてきた。だから彩の中でソレを見た先駆者はその生徒(こども)を称えた。よく諦めなかった。よく進み続けた。燃える炎の中で砕け散ろうとも彼方ある未来を視続けた」

 

「……その子供は、どうなったの?」

 

「さて、どうなったかな。あくまで夢を見続けた子供の話だ。ピリオドはその先駆者にすらわからない。けれど…」

 

「?」

 

 

俺はユメの後ろに回り込み、手を伸ばす。

 

グッとブランコを押した。

 

 

「__嬉しい。そう思ったんだ。夢見る子供の姿は琥珀色のように眩くて、だから自分のように嬉しかったんだよ__そらよ!!」

 

「わわわ!? ちょっと!!…あははは!!」

 

「子供は明日(ゆめ)を見ないと!昨日じゃなくて明日を見ないと!俺はそれを望む!」

 

「わー!?あははは!!あははは!!もぉー!カナタくーん!ブランコ押しすぎだよ!!」

 

「何を言うか。このくらい押さないとブランコも寂しいぞ?もういっちょいけー!!」

 

「わーい!!わーい!!あははははは!!」

 

 

子供過ぎるといえば、その通りだろう。

 

でも……それはそれで良いんだ。

 

子供であることを忘れる必要はない。

子供でありながら成長を知る。

 

梔子ユメは未熟な生徒会長だ。

優しさだけが取り柄な子供だ。

 

けれど俺はそうしてくれる彼女が嬉しい。

 

 

乾き切ったこの自治区はSRTの俺とは無関係な場所であり、部外者だ。

 

でもそこで明日(ゆめ)に笑える子供がいることが見ている者として嬉しくて仕方ないんだ。

 

 

俺の腕に__失われた部分がある。

 

明日、ソレを渡しに来て欲しいと願った証。

 

KANATAと刻まれた、特別な腕章。

 

しかしその子供(アリウス)は真実を握りしめたまま悪意の光に消えてしまった。

 

俺が唯一このキヴォトスで救うことができなかった子供だ。

 

 

 

「……」

 

「……??」

 

 

 

昨日のまま、置いてきた。

 

その子供は明日(ゆめ)に笑えたはずなんだ。

 

できた……筈なんだ。

 

 

 

「きみは明日を変わらずに夢見てくれ」

 

「え?」

 

「君はそれで良い…ユメはそれで良いから」

 

「カナタくん…………っ、いや、違うよ!」

 

 

ユメはブランコから立ち上がる。

 

すると俺の後ろに回り込むと両肩を掴んでグッと押して促し、ブランコに座らせた。

 

 

 

「カナタくんも!」

 

「え?」

 

「カナタくんだって明日を見て!!それ!!」

 

「っ!?うぉぉお!?ちょちょ!!」

 

「そーれ!!」

 

「うおおお!?勢いやばいって!!」

 

 

俺が押した時の倍以上の勢いで押す。

 

ブランコはガコンと大きく揺れる。

 

こ、壊れないよな??大丈夫か??

 

 

 

「カナタくんもね!ホシノちゃんもね!そして私もね!沢山を笑って!沢山の奇跡を愛して!沢山の明日を楽しむの!」

 

「!」

 

「皆それをして良いんだよ!!私はこの小さな積み重ねが大好きなんだから!!」

 

「!!」

 

 

大きく揺れるブランコから、町が見える。

 

冷たい風が頬を撫でる。

 

けれど押される背中は__暖かい。

 

秋風に凍えない太陽のように熱がある。

 

 

 

「っ!ああ!言われなくてもさ!この俺が明日に怯えてると思うかよ!ココにいる誰よりも今日が終わった後を楽しみにしている人間だぞ?いつだって明日が待ち遠しい!つぎの明日が楽しみだ!その次の明日も楽しみで仕方ない!!」

 

「うん!うんっ!!」

 

「ユメ!もっとブランコを押せ!」

 

「うん!こんなんじゃ明日に届かないよね!」

 

 

 

鎖を掴む。

 

嵐のように揺れる今日に振り落とされない。

 

俺だって子供の明日が___欲しいから。

 

もう掴んで離さない。この二度目だって。

 

 

 

「てか押しすぎだ!!流石に壊れるぞ!!」

 

「あはははは!!」

 

 

 

アビドス自治区の丘にある小さな公園。

 

もう誰も足を運ばない公園。

 

しかしそこに子供が二人いる。

 

その両肩に印を刻みながら。

 

砂漠に冷たく乾かない温度を秘めて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……何かありましたか?」

 

「今読んでいる……この記録書もハズレか」

 

 

 

私と__あと、ここ最近アビドス生徒会のオブザーバーとして加入した彼、それぞれ持ち込んだランタンをテーブルに置いて砂埃の記録書を開く。ほのかな光が文字を照らす。

 

 

「うーん、あの場所が生徒会の谷って名称で呼ばれてるの分かったが、しかし列車砲シェマタに関する内容が一切出てこないな。もしかしてココではない更に前の校舎に埋もれてる可能性があるのか?」

 

「……もしかしてここよりも更に前の旧校舎で探す気ですか?流石に何年も前に放棄された学校ですよ?何メートルも下に埋もれてます…」

 

「学園内部も砂でぎっしりだろうな。でも場合によっては掘り起こしてその校舎を探す必要がある。ま、列車砲に関しては俺がなんとかするからホシノは今後アビドスの財源となる資料を集めとくと良い。なんか見つかったんだろ?」

 

「まあ、一応。でも信憑性は皆無ですが…」

 

「ふーん??…でも、それさぁ」

 

「い、言わないでください」

 

 

彼、カナタが指を刺すのは私が先ほど確認したアビドスの記録書。

 

それは過去アビドス生徒会が残した記述。

 

クリップして止めてあるのだが。

 

 

 

「先週のお宝探し。大オアシス駅の北側にあるお宝情報。しかしユメが座標読み間違えたまま採掘作業を行った結果、終わるその時まで俺たちは知らずに何もない場所を永遠と永遠と__」

 

「うああああ!!言わないでください!!」

 

「いいや!言うね!つまり俺たちは見当違いな場所を何時間も掘っては砕いては日照りの下で探していたァ!!しかも君達二人はスクール水着まで用意してなァ!!」

 

「だぁぁぁああ!もう!!それはもう言わないでください!!もう知りませんからぁぁあ!!」

 

 

私は顔を赤くして怒る。

 

だって私もあんなにも浮かれていたんだ。

 

しかも場違いなスクール水着に関しても最初は砂堀中に汚れても良い姿としてユメ先輩が考えていたんだと感心していたが、実際のところは「オアシスが湧いて出るのでは!?」なんて妄言からあの格好だ。

 

しかもカナタ先輩に見られていた始末。

 

わ、私達の…

ス、スクール水着姿を……

 

 

っ!!

 

それと私は分かっていますからね!

 

時折ユメ先輩の胸を盗み見てた事は!!

 

 

そ、そりゃ、確かにアレは女性でも思わず見てしまう破壊力だと思いますけれど。

 

いや本当。何なんですかユメ先輩のあのバカでかい胸は??まさか頭の栄養が胸に行く話って強ち嘘ではない??まさかですけどそう言う事ですか??そうなんですか??

 

 

 

「……………」

 

「……どうした?急に手元を凝視して?」

 

別に良いですよ……動きやすいですから

 

「はい??…なんて??」

 

「っ…!なんでもないです…!それよりも。そろそろ時間です。今日は終わりますよ」

 

「そうか。もう夕方か。なら早く帰らないと凍えたペンギンになっちまう」

 

「ペンギンは凍えませんよ」

 

「お、詳しいな。もしかして動物がすきか?」

 

「…どちらかと言えば魚ですけど…まぁクジラとかは好きですが」

 

「……もしかして俺の部屋着がクジラなのはホシノのチョイス?」

 

「!?…は、早く行きますよ!」

 

 

誤魔化すように持ち帰るべき記録書や資料をクリアファイルやバッグに詰め込み、ランタンを拾い上げて出口に向かう。

 

ココは旧校舎。

 

カナタ先輩が来る数日前に私とユメ先輩で必要な荷物をまとめて放棄した校舎だ。

 

理由としては砂に埋もれてしまったから。

 

もう80%が埋もれている。校内も砂でしか詰まっていないし、実際に何メートルかシャベルで掘り進んで資料室を開通させている。

 

引越しの際はアナログな教本や教材用のディスクなど学舎として大事なものは持ち込んだ。

 

しかし大量の記録書や資料はどれが必要でどれが不必要かが不明であったため、最近まとめた物だけをダンボールに詰め込んで後は放棄することにした。いまとなってはちゃんと全部移動させれば良かったと後悔している。

 

今からでも移動させようか…?

使える資料は確かにあったから。

 

 

「しかし本当にお宝の情報が記録として残っているとは…厳密には生徒会が埋めたモノですが」

 

「衝撃を与えたらプラズマが発生する金属とかめちゃくちゃ使えそうだな。軍用とかにも活かせそうだ。採掘して持っておけばいずれ高騰するんじゃないか?調べる限りだとアビドスにしかなかった金属だとか。後に希少価値になり得るぞソレ」

 

「!…な、なら砂漠が冷えてない日中の内に行くしかありませんね。あ、でも!スクール水着は不必要ですから…」

 

「あー、スク水…まあ、安全面を考えたら危ないからスクール水着はやめといた方が良いな。色々と危ない。うん、危なっかしい」

 

「へぇー…そうですか。そんなにユメ先輩のがデカかったんですか。…ふーん?」

 

「……眩し過ぎてよくわからんかったとする」

 

「先輩のスケベ」

 

「うへぇ…」

 

 

肩身狭そうに肩を落とすカナタ先輩を置いて私は先に旧校舎の出口を目指す。

 

砂を踏みしめて掘り進んだ道を進む。

 

少しだけ上り道、もしくは入り口から入った場合は下り坂、それほどに砂が侵食した。

 

 

そして外を出る。

 

夕方5時前とはいえもう既に寒い。

 

次回もココに来た時は更に1時間早めに切り上げないと最悪野宿コースだ。

 

 

 

「「すぅぅ………じゃんけん、ぽん!」」

 

 

今回はカナタ先輩が負けたのでジープの運転席に座り、ハンドルを握ってエンジンを入れる。

 

ここから片道数十分程度の移動時間。

 

消えかかるタイヤの跡を辿り、私はその間に回収した資料を開いて再確認する。その他物価と比べるとやはり希少な金属扱いのようだ。

 

も、もしコレをたくさん集めれたら……!

 

 

 

「そんなに目をキラキラさせてるなら明日にでも探しに行くか?天気は良いらしい」

 

「!?」

 

 

サイドミラーに映る私の表情。

 

こちらからもカナタ先輩の顔が見えた。

 

さっきの仕返しか、ニヤニヤしている。

 

 

 

「っ、こっち見んな!あとニヤニヤすんな!」

 

「ほむぅ、それは困りましたねぇ…」

 

「っ…なんですかっ!その口癖は!」

 

「コレ?とある犯罪コンサルタント」

 

「は、はぁ?」

 

「実はホシノと出会ったあの騒動、このほむほむ口調の犯罪コンサルタントがひと噛み締みしてたらしくな。終わり側に無線越しであるが少し会話した」

 

「…それで?どうなったんですか?」

 

「会話を長引かせた事で逆探知に成功。でも最終的には捕まえられなかった。あと筋肉モリモリマッチョウーマンもヴァルキューレの拘束から逃れて消えてしまったし。いやー、ヴァルキューレの質の低さは問題だな。かと言ってSRTが全てやる訳にも行かないしなぁ。まったく…」

 

 

サイドミラーに映る彼の表情はやれやれ気味。

 

そして部隊に想い馳せる……隊長の顔だ。

 

私なんかにはできそうにない。

 

この小さな体は苛立ちだけで精一杯だから。

 

 

 

「まあでも、あのヘルメット団同士の抗争に関してはホシノのお陰だよ。避難民は全て無事だったし。俺たちも鎮圧に集中できた」

 

「別に……私は腕試しのためにいただけ。最終的には貴方に救われましたし。ただ私は…私自身が情けなくて許せません…」

 

「情けなくはない。あの場にいた俺はそう言う」

 

「……」

 

「そりゃあ多勢相手に盾一つ持たず中央に居座ってたのは流石に無謀だと思う。でも退かずに食いしばってたホシノは確かに英雄的だった。俺からしたら是非SRTに欲しいな」

 

「え?」

 

「ポジションは場面によってアタックとタンクを使い分けれる市街地戦特化として磨かせたいところだな。そのくらいSRTに欲しい」

 

「私がSRT……っ、いや!誰が連邦生徒会の組織なんかに所属するんです!それと勝手に決めないでください!」

 

「だろうな。だってホシノはアビドスに必要だ」

 

「!」

 

「だから欲しく思ってもスカウトはしない。何故なら君はユメとその後に来る後輩を守る先輩になるべきだからな」

 

「……後輩?」

 

「ああ。だって来年で二年生だろ?なら一年生の先輩になるじゃん」

 

「無いですね。こんな廃れるだけの学校に入りたい生徒なんか来ませんよ」

 

「それはどうかな。もしかしたらユメのようにアビドスを救いたいと願う優しい子が来るかもしれないだろ?」

 

「……来ませんよ」

 

「でも本当に来たら?」

 

「…」

 

「それでもしアビドスであの時みたいな出来事が起きたら、俺が助けに来るのを待つのか?重ねれるヘイローが生きてたら構わないが、でもどうせならアビドスのホシノが全部守ってやるべきだろ。見た目簡単に折れそうな小さな体。でも自分より大きな先輩を守って来た。後続にそう思わせられるそんな偉大な先人。いやこの場合は先駆者ってのが響き良いな」

 

 

適当に言葉を吐いてるようには思えない。

 

だから苛立ちが強まる。

 

彼の言ったそれが本当に起きたら、情けなくて許せないホシノのまま、アビドスの砂漠に乾いていくのか??

 

 

 

「経験者……だからですか」

 

「?」

 

 

 

足りない言葉を投げてみる。

 

彼は目線だけサイドミラーに向けた。

 

けれどすぐに正面に戻し。

 

 

 

 

「____ああ、そうだよ」

 

 

 

大きく空いた間から、重たくのしかかる。

 

でもそれはおかしくない。

SRTという組織でこの人は3年目。

 

それも一期生という形で立ち上げて来た。

故に誰もがこの者は『大黒柱』だと言う。

 

 

ああ、そうだ。

 

この人は………本当はそうなんだ。

 

今はこうして砂に汚れた傷だらけの敗走兵として身を隠しているけど。

 

でも、背負って背負って、その背負うだけのモノに応えるがために、あんなにも…

 

あんなにも…

 

あんなにも…

 

 

 

「貴方は…」

 

「?」

 

「どうやって先駆者として誇れたんですか?」

 

「……そうだな」

 

 

 

私の質問が嬉しかったのか彼の声色は嬉しそうに私の耳に届く。

 

 

 

 

「その誇りはまだ発展途上中だから答えれないなぁ!」

 

「なっ!」

 

 

 

 

彼はカラカラと笑い、私はぐぬぬ!と唸る。

 

 

 

 

 

___「まぁ、でも」と声が届く。

 

彼は笑いながらコチラに横顔で。

 

 

 

 

 

「人として【責任】を背負う事。その繰り返し」

 

「!」

 

 

 

 

___それだけは知っているんだ、と。

 

そう彼は綻ばせて答えてくれた。

 

 

「責任……」

 

 

 

子供の私にはあまりにも重たい道標。

 

まだ、そこに行き着くに遠いのだろう。

 

 

 

「…」

 

 

 

明日、分かる日が来るのかもしれない。

 

だから、明日を待ってみる。

 

 

 

ジープに揺られながら砂漠を眺める。

 

落ちそうになる日をその目で追いながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

けれど…

 

 

 

 

 

「何が夢と希望のアビドスですか!!会長としてその両肩に乗っている責任も果たせないで!!カナタ先輩の方がまだ生徒会長を向いてますよ!!」

 

「ホ、ホシノちゃん、ご、ごめんね…」

 

「ッーー!!もう知りません!!生徒会は終わりです!!勝手にすれば良いです!!」

 

「!」

 

 

 

この憤りは未熟だから尽きない。

 

私はソレを振りまくしか脳がないから。

 

 

だから砂漠に朽ちるその選択。

 

言葉の責任__後悔を得て、理解する。

 

 

この小さな手で守りたいものを守れない。

 

私は___月雪カナタのように強くない。

 

 

 

 

 

 

つづく

 

 









おや?ホシノの様子がおかしいぞ▽



デンデン。
デンデン。
デンデン。
デンデン。

デンッッ!!
テレレレー!!

おめでとう!!
ホシノはアビドスユメモドキになったぞ!!










は、この小説ではキャンセルだ。
BBBB BBBB!!
ホシノにはユメモドキを諦めて貰う!


じゃぁな!
また明日(18:00)な!
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