なんか俺のヘイロー砕けてね?   作:つヴぁるnet

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※1/13 月雪カナタを上方修正しました。


第54話

 

 

 

「動いてないから寒いよぉ~」

 

 

 

図書館まで聞こえる砂嵐の音。

 

入り口を保護しているブルーシートが砂嵐で叩かれて校内によく響く。

 

外が見えていた窓もいつのまにか砂で埋もれてしまい、外の状態は入り口からしか視認不可。

 

 

これ、かなり危険なのでは?

生埋めの危険性ある??

 

少し弱まったタイミングでジープまで滑り込んだ方が良いか?

 

いや、その前にジープは強風でひっくり返ったりはしてないよな?

 

丈夫な車だからそう簡単に壊れやしないと思うが代わりに運転席は砂まみれだろうなぁ…

 

洒落にならねぇ。

 

 

 

「水はまだある。ビスケットもある。三ヶ月前の列車砲(きょてん)よりは食料事情で心配ないが寝心地はランクダウンだな」

 

 

レジャー用のシートを持ってきたので適当な本をマットレス代わりに敷き、その上にシートを広げて寝床代わりにしている。

 

そのため硬い床で寝過ごす事はないが、列車砲内にある休憩室の無駄に寝心地の良いマットレスには劣る。あれは普通に寝心地良かった。まあ昔のアビドスって体育用のマットレスとかに羽毛使ってたらしいし、当時の資産背景を考えると金は相当あった事が窺える。

 

しかし今となっては借金まみれの自治区かつ現在の人口は全盛期に比べて8%以下。

 

何が起こるかわからないもんだな。

 

でもそんなこと言ったら俺もこんな風になるとは思わなかった。まさか生身で衛星砲受けるとは思わなかったし。やっぱこの世界何が起こるかわからないな。今後も月雪カナタのストーリーテラーは何を強いてくるのか。

 

早く約束の箱庭に辿り着きたい。

 

白鳥(アロナ)が信じて待っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

動けないのでもう一眠りしたり、目が覚めたら図書館や記録室を行ったり来たりしては資料を漁ったり。あと埋められないように入り口の砂を撤去したりと色々やって2日目が終わりそうになってた。マジで??こんなに籠るとは思わなんだ。

 

 

 

「でも少しだけ勢いが収まってきたな…」

 

 

それでも完全に収まったわけで訳ではなく、また荒れる可能性もある。

 

そうなると次はどの程度砂嵐が続くか。

 

それならジープを動かせる時に動かして砂漠地帯から離れる方が賢明な気もする。

 

街に近づけば砂嵐も収まるだろうし、それなら望みあり。ああでも…

 

 

 

「外が寒いっ!校内も寒いけどっ!」

 

 

季節は秋真っ只中。

 

日中は灼熱って感じだけど夜の砂漠は冷える。

 

それが秋の季節になると更に冷える。

 

ホットドリンク無しで夜の砂漠を移動するなど自殺行為だ。やっぱモンスターのハンターって頭おかしいわ。なんで凍死しないん??

 

 

「ああーでも、完全に暮れたら3日目持ち越しになっちまうだろこれ…ぐぬぬ、いい加減移動決めるかなぁぁ……」

 

 

もし俺のヘイローが琥珀色に生きてアビドス高等学校に置けたら砂嵐飛び越えて瞬間移動できるのになぁ!カイザーしね。

 

 

 

「そうと決めたらいつでも出れるように荷物はまとめて___」

 

 

 

 

 

 

 

___ホシノちゃん、カナタくん…

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?」

 

 

 

 

 

何か____声が届いた。

 

 

なにか、が……

 

 

誰かが昨日に消えてしまいそうな喪失感。

 

 

そして、その声を知っている。

 

 

たしか、彼女は…

 

 

 

 

 

「ユ…メ?」

 

 

 

その名を口から言葉に出した瞬間、俺は旧校舎から飛び出していた。砂嵐に消えていく声を逃さないようにこの足は情動がまま。しかし姿一つ見えない。砂嵐のイタズラだろうか。だが何か嫌な予感がして胸の内が騒がしい。

 

 

 

「気のせいか?いや、でも……何かが」

 

 

ほんの少しだけ弱くなってきた砂嵐。

 

しかし以前と嵐であることに変わりない。

 

吹き荒れる砂が頬を叩く。

 

早く旧校舎に戻れと災害が訴える。

 

だが…

だけど…

 

 

 

「ユメ??…何処かにいるのか??」

 

 

 

__届いたあの声は本物か?

 

それとも……まだ寝ぼけているのか??

 

いや、でも確かに届いたんだ。

彼女が求める声が。

 

もしそうなら何故?

このような場所に??

 

 

ま、まさか俺を探しに来たのか??

 

こんな悪天候の中で?

 

方角もわからなくなるような砂漠地帯を?

 

それもこんな嵐の中で??

 

 

 

「うぉっ…!!?くっ…!砂で前がっ…!!」

 

 

 

目を開けられない。

 

音が聞こえない。

 

足元を奪われる。

 

方向感覚を奪い取る。

 

 

このままだと旧校舎どころかアビドス自治区の中央区の方角すら分からなくなってしまう。

 

 

今なら間に合う。

 

引き返せば大丈夫だ。

 

 

だから…

だから…

 

 

 

 

「ユメっ!!何処にいるんだ!!?」

 

 

 

 

けれどこの身体は訴えて収まらない。

 

 

 

 

「ユメっ!?何処だ!!教えてくれ!!」

 

 

 

 

見えない嵐の中で叫ぶ。

 

しかし……その声は届かない。

 

アビドスには無慈悲な嵐が襲うから。

 

弱り果てた身体では彼方にすら届かない。

 

それが……羽の折れた天使の末路。

 

 

 

 

「ユメェェェェ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

__ごめん……ね……ふたり…と、も…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

太陽のような熱は夜に冷たくなり、灯火が消えようとする。それが何処かで終わろうとする。砂塵に叩きつけられる終着点の音。

 

 

それを月雪カナタに訴える。知らせる。

 

子供の明日が亡くなってしまう。探せ。

 

間に合え、届け…!!!

 

 

 

 

 

 

 

しかし…

 

 

 

 

 

 

「ああ…… どこ だ よ ……」

 

 

 

 

砂に囚われたその身は果たせない。

 

なにせ…

 

 

 

光に否定されたオマエは失落者だから。

存在しない記憶の果ての欠陥者だから。

悪意に抗いきれなかった敗北者だから。

砕け散って意味失われた半端者だから。

 

 

 

腕に巻かれた約束すら果たせないお前は。

 

失楽園に砕け散るべき裏側の真実である。

 

天使如きが理解するな。___驕るな。

 

果たせずに____絶望がまま灰に滅べ。

 

そこが終着点に至る貴様の【解】だから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

違うよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 声が聞こえた。

 その音色は覚えている。

 昨日の真実しか知らなかった子供。

 

 

 

 

 

 

 

アリウスに到来した真実…!

例え…砕け散ったとしても!

まだ果たせる約束のために!

 

 

 

 

 

 

 

 昨日に曇っていたガスマスクはもう無い。

 握りしめた約束は最後の時まで熱を灯す。

 そうして少女は明日の存在を知ったから。

 

 

 

 

 

無力だった手に失われてた神秘が纏う。

 

その感触は身に着けていた腕章(やくそく)だ。

 

見えないけど…でも分かる。

 

この手のひらで握りしめていたから。

 

 

 

 

 

 

 

 

行って!!

カナタ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2" 応える "2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

果たされた 腕章(やくそく) に引っ張られる。

身体に失われていたが灯される。

 

 

 

 

どこかでブランコが揺れた。

 

 

 

 

 

 

 

___

____

______ ()えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ユメェェェェッッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひび割れた証が【解】を思い出す。

 

身体の内側にある色彩(ねがい)が弾ける。

 

悪意に正当化された神秘が【正当化】する。

 

この特権こそがその身に秘めた色彩(ねがい)

 

 

 

 

箱舟に浮かせろ___子供のために。

 

それが到来した【責任】なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぅぅ、ど、どっち……なの?」

 

 

 

少し遠出した先で用事を一つ終わらせ、私はアビドス高等学校に戻ろうと砂漠地帯を横断していた。本当なら迂回すれば少しだけ砂漠地帯を通る必要は無いのだが、夜に暮れてしまうためやや強行気味に砂漠地帯を横断した。

 

しかしそれが間違いだった。

 

急な天変地異だ。

 

その日、砂漠地帯が一気に拡大し、過去最大記録だと思われる大型の砂嵐が起きた。

 

そして私はその天変地異に巻き込まれた。

 

迂回を選ばず、安全を怠った。

 

何より__コンパスを忘れた。

 

私の悪い癖。

 

何よりお粗末な危機管理能力は無法地帯と化すアビドス自治区で命取りだ。

 

これのせいで私はホシノちゃんによく怒られては、何度もホシノちゃんに助けられて来た。

 

 

 

__その両肩に乗せられた責任を果たせないのなら勝手にしてください!もう知りません!

 

 

とある用事の出発前。

 

私はトラブルに巻き込まれてしまい、ホシノちゃんに助けられ、そして沢山怒られた。

 

生徒会長としての危機感と責任感が足りないとホシノちゃんは私に苛立っていた。

 

そうして引っ張り出して来たアビドスのお祭りポスターはホシノちゃんの怒りによって引き裂かれた。でも私はそれを咎める権利を持ってない。テープでポスターを修復するだけ。

 

 

そして、遅れて学校を出発した。

 

用事はなんとか終えられた。

 

でも帰り道、私は天変地異に巻き込まれた。

 

 

 

「はぁ……はぁ……ぅぅ!」

 

 

 

 

 

__あの人のがまだ責任を知ってますよ!!

 

 

あの人ってのは誰だかわかる。

 

ここに来たカナタ君のことを言っている。

 

もちろん知っている。

 

だってあの人はSRT特殊学園の選ばれた超兵で組織を束ねてきた大黒柱。そして悪意に極まった大人を相手に一人で立ち向かった人だ。

 

同い年の私でも絶対に真似できない。

 

それほどの【責任】と【役割】を果たせるほどの力は私になんかに備わってないから。ホシノちゃんが求める相応の先駆者として梔子ユメという人間は人の前を歩けない。

 

私はダメな生徒会長。

 

 

 

 

「げっほ……げっほ……く、ぅ、ぅ」

 

 

 

うん、もちろん知ってる。

 

分かっているよ。

 

私は夢と希望だけ一丁前に願っている。

 

現実よりも理想を求めている。

 

いつかこのアビドスが息を吹き返すそんな奇跡のような明日が訪れるならと夢を見る。

 

だから生徒会長になって、そしてホシノちゃんもアビドスのために生徒会に入ってくれた。

 

だけど私は理想のための力が無い。

 

ホシノちゃんの言葉通りの強さも現実性もこの身体に何一つ秘めていないんだ。

 

灰色に染まった学生生活で、砂まみれに汚れた人生行路で、砂漠に乾いた青春物語。

 

梔子ユメは笑って明日を待つしかできない。

 

 

 

 

「………わた、し…は……」

 

 

 

__君はそれで良い。

 

カナタ君は肯定してくれた。

それが梔子ユメなんだと。

とても嬉しかった。

両肩を押してくれたブランコはアビドスの明日に向けてご機嫌に揺れた。

 

 

でも、この両肩は『らしい』ことを示せない。

 

ホシノちゃんを困らせてばかりだ。

 

大事な、大事で、大好きな後輩のために先輩をできてないんだ。

 

それでもホシノちゃんは私のために怒って、私の心配をして、何よりその眼はまだ私とアビドスを諦めてない、そんな奇跡をまだ繋ぎ止めてくれる。

 

いつも本当にありがとう、ホシノちゃん。

こんなダメ先輩のために必死になってくれて。

 

 

 

だから、ごめんね。

 

わたし、わたし…

 

 

 

「っ!!??」

 

 

大地を貫くような竜巻がコチラに来る。

 

私は盾を展開して砂嵐を受け止める。

 

しかし体一つで耐えれるほど強く無い。

 

 

 

「うぁぁぁぁぁあ!!!!」

 

 

 

頬に、肌に、眼に、突き刺さる砂が痛い。

 

顔を守るようにして、耐える。

 

早くこの場から去らないと危険だっ。

 

なのに…っ!

 

 

 

「ァァッ!!痛いっ!!痛いっ!!痛いよぉ!!ぐぁぁぁぁあ!!!うううぁぁぁあああ!!ゲホッ!ゲホッ!!はぁ…はぁ……かはっ!!ごほっ!!

 

 

 

命を簡単に刈り取りそうな嵐だ。

 

こんなの生まれて初めてだ。

 

砂嵐とはコレほどに身体を削るのか。

 

 

それもそうだ。

 

 

小粒の砂とはいえ弾丸のような速度を得て身体に打ちつけてくる。

 

それも数秒程度じゃ無い。

 

何分、何十分、何時間と砂が襲いかかる。

 

神秘で防護しているがいずれ全て削られてしまい、最終的にはこの砂嵐に耐えきれなくなる。

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……ぁ、ぁ、ぁ…ぁぁぁ!」

 

 

 

私はいつのまにか盾を手放していた。

 

 

 

「ぅぅぅぅ…!!!!」

 

 

頭を抑えて砂の上で体を縮こまらせ、どうにか耐えようとする。

 

しかし子供程度の身体はその場で耐えれずに何度も嵐に吹き飛ばされては、砂漠に打ち付けられてしまう。そしてまた飛ばされる。その繰り返し。私は何も抗えない。

 

 

 

「ぁ、ぁ、ぃ、ぁ、ぃゃ…ぅぁ…ぁ」

 

 

 

方向感覚は既に分からない。

 

コンパスは無い。

 

避難先も見当たらない。

 

街はどこ?

 

ここは砂漠地帯のどこら辺??

 

風を凌ぐゴーストタウンすら見当たらない。

 

 

 

 

私はまだ、生きてるの??

 

 

一向に収まらない砂嵐。

 

意識は半分が失われている。

 

それでも防衛本能が働き、頭を守ろうと所々血が滲む腕で頭を守り、この砂嵐が静まればと待ち続ける。現実の痛みと戦う。理想に逃げる事は叶わない。梔子ユメは愚かにも背負いきれない責任を考えて迷ったから。砂嵐がお前は間違ったと訴える。痛い。苦しい。痛い。何で。何で。嫌だ。嫌だ。助けて。

 

 

 

何時間とそれを繰り返した。

 

 

 

「ホシノ…ちゃ、ん…」

 

 

 

朧げな意識の中。

 

私は携帯電話を取り出し、助けを求め__

 

 

 

 

 

『先輩のお前はまた助けを求めるのか??』

『責任を果たせずして助けを乞うのか??』

 

 

 

 

 

 

チカチカとする携帯電話の画面に触れようとする指が…その場で止まってしまう。

 

私はまた、ホシノちゃんを困らせようとするのか??

 

別にまた怒られる事が怖いとか、嫌だとかそんな訳じゃないんだ。

 

ただ、私は……

 

 

 

 

__このままでは死んでしまう。

 

 

 

 

 

「ホシノ……ちゃん……私……砂漠に……ごめん……コンパス……忘れ……ちゃって……」

 

 

 

朧げな意識の中で文字を打つ。

 

しかし携帯電話の電波が砂嵐に消される。

 

何より携帯電話がチカチカとバチバチと異常を起こしている。

 

恐らく砂嵐のせい。

 

電子的な害を与えているのだろう。

 

急いで送信する。

 

けれど電波があまりにも悪い。

 

もしかしたらタイムラグで届くか。

 

それでも、この嵐の中で私は一人で何もできないそんな生徒会長だから、誰かがこの両肩を支えてくれるような、そんな奇跡が無いと…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さむい……くるしい……いたい……」

 

 

 

 

 

夜から朝に駆けて砂嵐が無慈悲に追い込む。

 

朝から昼になると灼熱の日差しが突き刺す。

 

昼から夜になると冷たい砂塵が身体を刻む。

 

 

 

 

 

「ぅ……………………………ぁ……」

 

 

 

 

体が、痛い。

 

 

目が、霞む。

 

 

喉が、渇く。

 

 

声が、枯る。

 

 

息が、辛い。

 

 

 

メッセージは届いたのか?

 

 

そしてココはどの辺なのか??

 

 

まだ砂嵐は起きているのか?

 

 

何より私はまだ生きているのか??

 

 

水も、コンパスも、テントも持ち歩かずに砂漠地帯を踏み入れた愚か者の末路だ。

 

 

それが今日、このようにして失楽園へと枯れていくアビドスが現実を教えてくれる。

 

 

借金まみれや私達に高い授業料として更に追い込んでくるんだ。とても笑えない。

 

 

いくら丈夫なキヴォトス人でも心と共に追い込まれれば死を理解する。

 

 

 

 

 

 

 

 

ごめんなさい。

 

 

 

 

 

ごめんなさい。

 

 

 

 

 

ごめんなさい。

 

 

 

 

 

ごめんなさい。

 

 

 

 

 

ダメな、生徒会長でごめんなさい。

 

 

 

 

 

わたし、何もできない先輩でごめんね。

 

 

 

 

 

ホシノちゃん、ごめんね。

 

 

 

 

 

カナタくん、ごめんね。

 

 

 

 

 

 

勝手に一人で空回って、それで勝手に一人で消えてしまうことになって。

 

何も先輩らしいことも出来ず、何も会長らしいことも成せず、何もしてあげれない。

 

 

 

 

私は__月雪カナタのように強くない。

 

 

ホシノちゃんの言う通りだよ。

 

 

ごめんね……こんな、ひとで……

 

 

ごめんね、ごめんね…

 

 

ほんとうに…

 

ほんとうに…

 

 

ごめんね…

 

二人とも……ごめんね……

 

 

 

 

 

 

 

「ホシノちゃん、カナタくん……」

 

 

 

 

 

消えかかる____命の灯火だ。

 

 

最後に、二人の名をその声で刻む。

 

 

アビドス生徒会に入ってくれた二つの奇跡。

 

 

思い出が冷えた心を仄かに温める。

 

 

それだけを愛して、愛しながら…

 

 

この命は砂漠にゆっくりと朽ちる…

 

 

 

 

 

ごめんね……ふたり……とも……

 

 

ほんとうに……こんな……わた、し…

 

 

で……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トンっ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冷たい身体に、暖かな明日が肩に触れる。

 

それは彼方から到来した願いの証だから。

 

 

 

 

 

 

 

「___届いた……ぞッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

奇跡が聞こえる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「この手で二度と溢してたまるものかっ…!」

 

 

 

 

 

 

 

声が堕ち行く意識と渇きを潤す。

 

 

 

 

 

 

 

「ぁ…ぅ、ぁ……」

 

 

 

 

 

 

その両腕で身体を拾い上げられる。

 

砂嵐から守ってくれるその腕は大きい。

 

私は虚ろな眼を開け__奇跡を視る。

 

そこには…

 

 

 

 

か、なた…く……ん…??

 

 

「ああ、俺だ ___ ユメ」

 

 

 

 

 

 

奇跡だ。

 

私が愛してやまない、奇跡だ。

 

それが到来した。

 

こんな私の明日に。

 

 

 

 

「___視えた、一気に飛雷(飛ぶ)ぞ!」

 

 

 

 

とても安心する、力強い声だ。

 

すると身体は一瞬の浮遊感に包まれる。

 

琥珀色に彩る暖かな陽気。

 

その熱に護られながら私は気を失う。

 

でも最後に見えた。

 

琥珀色に浮かび上がる3つの証だった。

 

それはとても綺麗なヘイローだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生存報告として届いたメッセージを受けてからあまり記憶がない。

 

ただひたすらに待つ場所へ走り、街の砂を巻き上げながら神秘を最大にして必死に。

 

そうして辿り着いた。

 

二人の姿。

 

 

 

__ユメっ、先輩!!

__カナタ先輩ッ!!

 

 

__早いな、ホシノ!

__久しいところ悪いが手を貸せ!

 

 

 

カナタ先輩から数日間のことを聞きながら私は傷だらけのユメ先輩を見て青ざめる。

 

しかし罪悪感に囚われる暇はカナタ先輩から与えられず、私はカナタ先輩と共にユメ先輩の怪我の治療をした。

 

何時間も鋭く吹き付けた砂嵐に打ち付けられたことで制服の至る所が裂け、全身は神秘では守りきれないほどの量の擦り傷と打身。

 

特に腕の損傷は激しく、代わりに顔は大体守られていた。カナタ先輩曰く頭を守ってその場にうずくまり、いつ止むかもわからない場所で何時間も耐えていたことを語る。

 

 

 

「!」

 

 

すると途中、ユメ先輩は目を開ける。

 

朧げな意識の中、コチラを見る。

 

 

 

 

__あっ、ホシノちゃん……えへへ……

 

 

 

 

傷だらけで苦しい筈なのに…

 

そして危うく死ぬところだったのに…

 

けれど大事な後輩が側に居てくれる。

 

そんな目で笑み浮かべ、嬉しさをこぼす。

 

脱水症状であまり動かない頬と目線。

 

でも充分に__伝わる。

 

ユメ先輩の……偽りないその気持ちが。

 

 

 

「悪いユメ、服を裂くぞ」

 

 

 

制服にまとわりついた砂がこれ以上傷口をえぐらない様にするためカナタ先輩はユメ先輩の衣類をハサミで裂いて処置を始める。その慣れた手つきは軍組織にいたからこその手腕であり、そしてその横顔はあの日と同じ…私を英雄としてくれたSRTの超兵と変わりなかった。

 

 

 

 

 

 

使い切った包帯やガーゼ。

 

消毒液や傷薬、飲みかけの水。

 

砂の汚れや出血を拭った数枚のタオル。

 

分解されたユメ先輩の制服や下着、あと絆創膏。

 

温水が入っていた洗面器具はすっかり冷えてしまい、そして外は真っ暗になっていた。

 

カナタ先輩はSRTの経験が生きたな、と…ホッとしたように呟きながら片付けをする。

 

ユメ先輩は清潔な服で眠っている。

 

 

 

「…」

 

 

結果的にユメ先輩の治療は無事に終えた。

 

しかしこの心は晴れないまま、夜に凍える。

 

 

 

「カナタ先輩……ユメ先輩は…」

 

「もう大丈夫だろう。必要な治療も終えた。水分も何とか必要分を取ってもらった。あとは安静にするだけ。本当なら病院に駆け込みたいけど夜は閉まってる上に衰退したアビドスは夜間病院が無いからな……あと俺の身分が許さないし」

 

 

 

沸騰させるポットの前で立場上の無力さを溢すカナタ先輩に私は何も言えない。

 

けれど最善を尽くした。

 

SRTの経験を活かして。

 

 

 

「飲むか?」

 

「…」

 

 

緑茶を淹れたカナタ先輩。

 

ソファーに座っていた私に緑茶を渡すとカナタ先輩は隣に座り、一息つく。

 

時計を見る。

 

日にちが変わろうとしている。

 

 

 

「わたしの……せい__」

 

「いや、アレはユメが悪い」

 

 

 

私の自責は寸のところで止められる。

 

 

 

「君達がいつも通りの日々を送ったとしても、しかしそれはそれとして、ユメが砂漠横断のために必要な物を忘れたのが悪い。最低限コンパスは持ち込むべきなのにうっかりさんで死にそうになるのは流石にアビドス自治区出身の生徒にしてはお粗末だ。SRT視点でもあり得ない。起きたら後でバチくそ説教してやることにする」

 

 

 

てか、砂漠化が進むの街に住む奴がコンパス常備しないのはどうなんだ??…と、ユメ先輩の危機管理能力の低さに対して呆れ気味に怒るカナタ先輩は緑茶をガバ飲みして感情を湯呑みに埋める。

 

でも…

 

 

 

「俺がジープ使ってるのも悪いよな。ユメは構わないと言って使わせてくれたけど……はぁ」

 

 

アビドス高等学校からアビドス旧校舎は数キロ離れているが別に歩けない距離ではない。

 

カナタ先輩はその程度ならリハビリ代わりに歩くと言っていたが、まだ万全ではないカナタ先輩に対して過保護なユメ先輩は使うように勧めてジープの利用をカナタ先輩に譲った。

 

それで利用していた訳だが、もしユメ先輩が砂漠横断のためにジープを利用できていたのなら結果は変わっていたのか?

 

結果論でしかない。

 

でもそこに責任の追求。

 

今回の原因を探るとしたら…

 

 

 

「やっぱり…私なんですよ。怒りのまま身を任せてユメ先輩を一人にさせてしまった……危うく、そのまま死んでしまうところでした……カナタ先輩がいなかったら最悪なことになっていた……」

 

 

 

 

__私は無力だ。

 

 

苛立ちも怒りに身を任せ、しかしそれが力になるならと、それで全てを守ってみせると言いながらも結果はこれだ。

 

しかし苛立ちに任せユメ先輩を責め、勝手にカナタ先輩と比較しては責任を突きつけ、挙げ句の果ては夢が込められていたポスターを引き裂き、最後は勝手にしろと一方的にぶつける。

 

 

こんな奴が誰かを守る???

 

ただ戦闘力があるだけで、肝心な理性や感情は全くコントロールできない酷くお粗末な子供。

 

 

強いだけなら誰でも出来る。

 

 

しかし心に強さを秘めない。

 

そうして思い上がった結果がこれだ。

 

私は__

私は__

 

 

 

小鳥遊ホシノは梔子ユメになれない。

__奇跡を愛する心を用意できない。

 

小鳥遊ホシノは月雪カナタにもなれない。

__軌跡を背負う強さを用意できない。

 

 

そして__こんな私に『英雄』と言ってくれた彼に憧れる資格も無いんだ。

 

 

 

「わたしは……こんな、わたしは……も、もう……っ、生徒会を……生徒会を…っ」

 

 

 

また、感情が私をコントロールしない。

 

だからその先を言葉にして吐こうとする。

 

強くないから。本当は弱いから。

 

でも……

 

 

 

「その必要は無い」

 

 

 

その先を否定する。彼が。

 

 

 

「さっきも言ったけどアビドス砂漠で死にそうになったのはユメ本人の責任だ。それに関してはホシノは悪く無い」

 

「で、でもっ!!わたしはっ!!」

 

「……ホシノ、あまりユメを侮らない方が良い」

 

「!」

 

 

わたしは否定することを否定した。

 

しかし、それすらも否定されてしまった。

 

カナタ先輩は真面目な表情で続ける。

 

 

 

「アイツは一人だろうと進む。そりゃ確かにホシノが来てくれたことはユメにとって大きな力にっている。君を誰よりも頼りにしている。でも生徒会長としての責務を果たそうとアビドスの未来を追いかけるアイツの事を侮るな。梔子ユメのやりたい事はホシノが前提じゃない」

 

「っ!なら!それならっ!元から私なんて居なくても!!」

 

「いや、違う。そうじゃ無い」

 

「ならどういうことなんですかっ!!」

 

「そこにホシノも居て欲しいから!だからユメは毎日ホシノと頑張っているんだ。それだけなんだよ」

 

「!!!」

 

 

 

言葉にされて、届く。

 

慌ただしく、舵の取れない心が収まる。

 

 

 

「梔子ユメは生徒会長としての力はない。でも生徒会長としての強さはある。もちろん現実を強いる前者に対して理想が遠くてたまらない後者は優しくないさ。俺もそれは痛いほど知っている。だが同じ明日を見てくれる誰か側に居てくれるって本当に本当に心強くて堪らないんだ。ユメはホシノがいる毎日(きせき)を愛している!」

 

「ぁ…」

 

 

 

この言葉は、カナタ先輩が語るときの今まで聞いてきた中で重たかった。

 

恐らく…いや、間違いなく。

 

私の知らない経験をしてきた。

 

SRTにいる頃から。

 

もしくはSRTよりも前から。

 

それこそ百鬼夜行自治区にいた頃からか。

 

それとも……もっとそれ以上前か。

 

 

 

「梔子ユメは小鳥遊ホシノと明日と奇跡を欲しがっている。君はアビドス生徒会に必要不可欠な小鳥遊ホシノである。だから己の自責を理由に否定するんじゃなくて、自責として感じてしまうほどに自分は彼女の明日を信じたい。夢物語だろうとそれを誰かの真実にしたいから溢れんばかりの情動に収まりが効かない。今はそれだけ」

 

「こ、こんな……っ、イライラばかり…を、している、わたしなんかでも……で、ですか…?」

 

「好きの反対は無関心である。しかし好きのために揺れるのは嫌いである。それは誰かに心を配っている証拠だ。だから『心配』って言葉が存在する。ホシノはされどユメのために心を配る優しい生徒だ。ならばこんなホシノなんかでも梔子ユメのために必要とされるべき生徒会である事は間違いない。ならば明日も梔子ユメに小鳥遊ホシノをしてやれ。君は必要なんだから」

 

「…っ……っっ……っ!!」

 

 

強いと勘違いしていた。

 

この感情が正しいと思っていた。

 

しかし本当の私は弱くてたまらない。

 

だから、耐えきれない。

 

怒りと苛立ちに任せていた心は尽き果て、己がそうだった事実を受け止める。

 

先駆者が言っている。

 

小鳥遊ホシノは__梔子ユメに必要だ。

 

 

 

「でも努力はしよう。理想に並ぶための努力。その人ために身も心も強くなってあげる。そうすれば現実主義も理想主義、どちらも正当化できるようになるさ。発展途上中な俺も頑張るからさ。ホシノも一緒に頑張らないか?この3人で」

 

「!!」

 

 

提案されて、ポンっと頭を置かれる。

 

私は震える手と唇、そして彼を見る。

 

3つだけ浮かんでいる錆色のヘイローだ。

 

全盛期から離れてしまった失落の証。

 

けれど月雪カナタは未だ健在を目指す。

 

現実主義も、理想主義も、どちらも欲した上でその眼に宿している。

 

 

ああ__だから私はあの日この背中に。

 

 

 

…この……

 

「んん?」

 

「この砂漠地帯で……道連れは大変ですよ…」

 

「ならカナタが浮かせるさ。足が砂に囚われないとして、俺は成功体験者として目指す」

 

 

 

涙を誤魔化すよう意地悪に問いてみる。

でも迷いなく彼は言って、笑う。

 

 

 

「このアビドスで……夢物語は大変なんですよ…」

 

「でもカナタが浮かせるさ。明日に乾かない朝露として、俺はこの二度目を成してみせる」

 

 

 

涙を誤魔化し終えたから問いてみる。

やはり迷いなく彼は笑って、紡ぐ。

 

 

 

 

「……ユメ先輩が起きたら謝ります。そしてちゃんと話したいです。アビドス生徒会としてアビドスの明日のために出来ることを……」

 

 

 

 

彼は満足したのか私の頭から手を離す。

 

そして彼は残りの緑茶を飲む。

 

私も釣られるように手に持っていた緑茶を口につけて、ほんのり甘く広がる。

 

 

「美味しい…」

 

「茶葉と粉末で濃いめにして、少量のガムシロップにチョコレートを一つ入れたラテ風だ」

 

 

乾いた心に優しさが届く。

 

甘くて、苦味が、舌を触る。

 

 

「とても…美味しいです」

 

「だろ?多分泣くと思ったからな。だから泪の跡を考えて美味しくしておいた」

 

「?!……っ、余計なお世話ですよ」

 

「そうかい」

 

 

やはりイラっとするし、この意地悪な先輩に対して苛立ちが芽生える。

 

でもそれは心に注がれた栄養だ。

そして、それが小鳥遊ホシノだ。

 

今はそうである。

 

けれど、甘さの奥にある苦味にすらも笑えるようなそんな人に…

 

出来るなら隣にいる彼のように強くなりたい。

 

ただ強いんじゃなくて、その背に理想も現実も欲張れる……私もそんな先駆者に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして…

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう!ユメ先輩っ!!だから何度も言ってるじゃ無いですか!!せめて私に相談してください!!」

 

「ひぃん!……ご、ごめんね……」

 

「これだとどっちが生徒会長で、どっちが副会長か分からないな?ホシノ()()()

 

 

ただの生徒会から、それ以上の責務に。

 

まずはそこから。

 

そうでなければカラカラと私達二人に笑っている彼のように憧れない。英雄として誇れない。

 

そして、ユメ先輩のために小鳥遊ホシノである私が明日のために夢物語を愛せない。

 

そう思ったから。

 

私は償いも含めて、ユメ先輩にお願いした。

 

アビドスの明日のために、こんな私でも出来ることをしたいと。

 

 

 

 

 

ピンポーン!!

 

 

 

 

「「!!」」

 

「来たか…」

 

 

 

いつものような日常と、賑やかさ。

 

そこにインターホンの音だ。

 

その音に生徒会室は静まり、ユメ先輩が受話器を取って対応する。

 

そして…

 

 

 

 

 

「お世話になっています。本日はセイントネフティスから担当としてやって来ました」

 

 

 

スーツを着こなした幹部が一人。

 

今日、この学校にやって来た。

 

カナタ先輩があるモノをチラつかせて呼んだから。

 

 

 

だが、一つのイレギュラーが訪れた。

 

それは__

 

 

「??」

 

 

もう一人、訪問者が居たこと。

 

たまたま、タイミングが合ったらしい。

 

ユメ先輩はとりあえず招く。

 

そして…

 

 

 

 

「どうやら被ってしまったみたいね。突然で申し訳ないわ。でも急ぎで確認したいことが…」

 

 

 

「それは俺のことか?

 ツノの付いた借り物競走の生徒さん」

 

「!!!」

 

 

 

それはアビドス自治区の外やって来たキヴォトス三大と言われる自治区の生徒。

 

その者は……私と同レベルの神秘。

 

 

 

「やはり……そうだったのね……」

 

「ああ。ゲヘナは優秀だな」

 

 

 

彼は季節外れの麦わら帽子を外す。

 

そうして姿を見せ、セイントネフティスからやって来た担当人も目を見開かせて驚く。

 

何故なら、彼の素顔を見たから。

 

そしてツノ付きの少女は姿勢を正して…

 

 

 

「ゲヘナの諜報部からやって来た…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

___空崎ヒナよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

傷を修復した物語は__反撃の時へ。

 

 

 

 

つづく

 

 

 







誰かこのエスアールティーニダイメモドキを止めてくれへん??完全に卑劣様の飛雷神の術ができるようになっちまった。ちゃんとヘイロー無しで。神秘を刻むか流すかすれば大体オーケー。ユメの時はブランコで押したときにカナタの神秘が刻まれていた感じ。キミ凄いね。手加減しろ。作者が扱いきれないだるるぉぉぉお??

これも全部ッ忍者研究部に連れ込んだ久田イズナってケモ耳が原因ですね。あと神秘関連はクズノハ。ほんま百鬼夜行のケモ耳はさぁ…



とか思ってたらブルアカハーメルン界隈に本物の二代目火影様が現れたからカナタくん程度ならセーフだな!流石安心と信頼の卑劣様だぁ。へけっ!





さて。
そろそろ巨悪に王手(加速スキル)を掛けるかな。

正当化の色彩に喧嘩売った落とし前。
責任を持って受けてもらおうか。


じゃあな!
またな!!
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