なんか俺のヘイロー砕けてね?   作:つヴぁるnet

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だいたい百鬼夜行のケモ耳達が悪い ノ 巻


第55話

 

 

 

 

「こ、これがっ!?列車砲シェマタ!!?」

 

「これは……話以上に盛大ね…」

 

 

スーツとネクタイを着こなしたセイントネフティス幹部ロボットは人間らしく驚き、またその隣にいるゲヘナからやって来た諜報員の空崎ヒナもリアクションを抑えきれず素直に驚いて羽がパタ付いている。

 

 

 

「その反応、やはり名前だけしか知らなかったみたいだな」

 

「そ、それはそうですよ!?列車砲シェマタに関する資料や情報はまったくと言って良いほど存在せず、ただ過去にあった不確かな造兵記録と空論上のデータのみが残っているだけで存在自体は半信半疑だったんですよ!?」

 

「それはわたしも同じね。雷帝が残した遺産の中に遠近感を狂わすほどの巨大兵器があるとは思わなかったわ。いや本当に何なのこれ…それほどに昔のアビドスってのはこのような兵器を作れるほどの財力を秘めたってことなの?だとしたらとんでもないわね…」

 

 

驚愕と圧巻を交えながらそれぞれが持ち合わせていた微なデータと照らし合わす。しかし実物を前にすれば想像以上だった雷帝の遺産に慄くことしかできない。無論、俺も同じだった。

 

 

 

さて、どうしてこの場にアビドス自治区外のゲヘナ生徒とセイントネフティスの幹部ロボットが生徒会の谷の奥地にある列車砲シェマタの格納庫にいるのか?

 

 

こうなったのはいまから10日前のこと。

 

アビドス砂漠で遭難していたユメを救出した俺はユメに何故、アビドス砂漠を横断していたのか尋ねた。

 

話を聞く限りだと、ユメはアビドスとネフティスが自治区を蘇らせようとした証を一つでも残したいため、砂漠横断鉄道の関連施設の使用権利を得るためにセイントネフティスと商談していた。そしてそれ稼得するため銀行に赴いて振り込む必要があった。

 

しかし、その際に指定された金融機関がアビドス砂漠を横断せざるを得ない場所に店舗があったため、その時に横断したのだが…まぁ、コンパスを忘れてしまいあの有様である。

 

これに関してはガチ説教しといた。

 

 

でだ、それとは別で俺もセイントネフティスとコンタクトを取りたい状況だったためユメからセイントネフティスとの連絡手段を貰い、ユメとやり取りを行った責任者に電子メールを送ると今年中にコンタクトを取りたいと要求した。

 

送信後、セイントネフティスと直接コンタクトを取れるそれまでユメを治療しながらアビドス生徒会の副会長となったホシノと共に今後の計画を立て、また復活したカナタの神秘の具合を確かめながら本格的にリハビリを行い、来たるその日まで待った。

 

そしてユメが復活したその日にセイントネフティスがアビドス高等学校まで訪問する。

 

だが、そのタイミングで…

 

 

 

__学園に多数生徒が在校していたらわからなかったわ。しかし数が少ないのなら状況把握は可能。そこに減ったはずの生徒が増えたのならそれが過去の栄光のアビドスだろうとゲヘナ諜報部として探らない訳にはいかない。

 

 

そう語るのはゲヘナ高等学校の空崎ヒナ。

 

彼女はゲヘナ風紀委員の諜報員。

 

しかし空崎ヒナはまだ諜報員として入ったばかりの新人なため簡単な仕事として割り振られたその内容が、他自治区に対して影響力の低いアビドス自治区やその近辺にある小さな学園の調査の担当として頼まれていた。

 

しかし本来の目的としては空崎ヒナと同等のレベルか、それ以上の神秘をその身に秘めている小鳥遊ホシノの存在をマークしておくことがメインの仕事なのだが、たまたまアビドス自治区に人員が一人増えていたことを知った空崎ヒナはこれは一度探るべきと勘を頼りに確かめた。

 

それが、丁度あの砂嵐の時だ。

 

 

__私は観測したわ。絶望的な砂嵐の中には到来するが如くその奥地で瞬いた琥珀色。そして握りしめられたこの手のひらを伝わる感覚は晄輪大祭の時から覚えていた。だから確かめることにした。そして私は理解した。貴方はこの地にいた事を知った。

 

 

手のひらに伝わる数ヶ月前の感覚と持ち合わせの勘を頼りにアビドス生徒会まで足を運びやって来た。まあセイントネフティス社と会合する日と重なるとは思わなかったが。

 

 

しかし、まさか晄輪大祭の借り物競走で協力してくれた生徒とアビドス自治区で出会えるとは思わなかった。

 

そんな空崎ヒナは俺が生きていたことを喜んでくれた。それで流れで握手したんだけどしばらくニギニギされた。

 

俺が本物か確かめたつもりかな?

 

それにしてもあんな小さな手で身の丈以上にでかい銃を握りしめてるのを見るとなんだがヒヨリを思い出すな。

 

それから俺はちょうど良いと思い、空崎ヒナも交え、予定通りセイントネフティス幹部に列車砲シェマタの存在を明かし、対カイザーコーポレーションの兵器としてこれを起動する手段を得るためにも同伴して欲しいと頼んだ。

 

ただ列車砲シェマタの存在に関しては信じられなさそうにしていた二人。まあこれは当然の反応だろう。この時は名前を出しただけだし。

 

なので俺は「ちょっとついて来い」とセイントネフティス幹部と空崎ヒナの肩にトンッと触れるとリハビリで使い慣れた飛雷神を使って列車砲シェマタの元まで飛んだ。

 

 

で、今ココである。

 

 

ちなみに列車砲シェマタの格納庫地のマーキングはユメの療養期間中に神秘復活後のリハビリ代わりとして一度生徒会の谷に潜り込んで格納庫に刻んできた。もちろん徒歩で。

 

途中砂地に倒れてる電車で夜過ごすためのキャンプ地にしながら横断した。

 

なんだか慣れて来たもんだ。

 

ただホシノからはコンビニ感覚で危険なはずの砂漠を横断してきた俺の姿に呆れていた。

 

いやー、今のところ体の調子良いんだわ。

 

動ける内に出来事はしておきたいし。てか神秘は戻ってもまだ眠りは深いままだからな。なので眠らないようにするためにも目的は持ち続けておきたい。なので横断。ホシノ呆れ顔。

 

 

 

「おお、これが列車砲内の内部構造…!今と遜色ない造りだ。コ、コレが本当に100年前の造兵物とでもいうのですか…??」

 

「座席後ろにマニュアルもあるわね。すぐに動かせるように完備されてると言うことかしら」

 

 

ネフティス幹部はやや興奮気味に列車砲シェマタ操縦室をパシャパシャと携帯電話で撮り、空崎ヒナが引っ張り出したマニュアルにも写真を撮って情報をまとめる。やはり幹部だけあって仕事が早い。

 

 

 

「む?この膝下にある差し込み口は……」

 

 

するとネフティス幹部は写真を撮ってる際に何かを見つける。なにやら凹んだ部分を見つけたらしく指を引っ掛けてガコンと動かす。

 

すると何か差し込み口が開封された。

 

それに対してネフティス幹部は何かに気づいたのか目を見開いて驚く。

 

 

 

「いや、まさか……いや、だが、しかし」

 

「どうしたんだ?」

 

「……失礼、すこし試したい事があります」

 

「??」

 

 

ネフティス幹部は持ち込んだスーツケースから何かを取り出す。

 

それは新品の箱。

 

更に箱を開封すると、何かを取り出した。

 

それは手のひらサイズの板状のモノだ。

 

 

「本来ならお嬢様にお渡しする予定の代物でしたが、まあそれに関してはまた新しく発行するとしましょう」

 

「それはもしかして…大人カードかしら?」

 

「(大人の……ああ、クレジットカードか)」

 

「ええそうです。コレはまだ一般のカードですが限度額は最大限まで設定されたモノです。それで月雪さん。こちらの差し込み口に一度読み込んでみてもよろしいでしょうか?」

 

「ああ、もちろんだ」

 

 

ネフティス幹部は白色のクレジットカードを差し込み口に滑り込ませる。

 

読み込むためのICチップが全て隠れた。

 

 

 

 

そして…

 

 

 

 

 

 

     ガコン

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「!?」」」

 

 

 

 

 

音が鳴る。

 

 

 

 

 

 

ピピピッ。

 

ピー。

 

 

 

『アクセス__承認』

『システム__起動』

『コントロール、レベル1』

 

 

 

「まさか…動いた??」

「ええ、動いたわね……電子音も聞こえた」

「が、画面に我が社のマークだと!?」

 

 

 

『内部の設定のみ権限があります。それ以上の権限はコントロールレベルを上げてください』

 

 

 

システムが段々と設定状況を知らせる。

確かに、動いてることがわかる。

 

 

 

「この差し込み口。やはり薄らと淵に彫られている三角形のマークはセイントネフティス社を表すものでしたか。今とはやや形状が違うマークですが、しかしクレジットカードのタイプが過去と変わりないなら間違いない。ならこれは過去にセイントネフティスも携わっていたと言うことになるということ!っ、いやはや。我が社を立ち上げた先人はこんなところにまで手を出していたとは。ならば過去のデータは真実という事ですか」

 

「それよりも『コントロールレベル1』となっているわね。もしかして動かすことは出来ないのかしら?」

 

「動かしてみる。ヒナ、マニュアル貸して」

 

 

 

マニュアルを開きながら操縦席に座り、手元にあるボタンを押して操作する。

 

画面内の設定カーソルは動く。

 

しかし、機体を動かすための操作レバーはロックされたまま動かない。

 

やはりコントロールレベルとやらが関わっているのか。

 

 

 

「なるほど…限度額は関係ない。ならばカード自体のグレードの問題ですか…」

 

「これはなんでも良いのか?」

 

「いえ、そうとは限りません。このネフティスのクレジットカードはグレードが一番低いタイプですが、しかしセイントネフティスが発行するカードはどれも特注です。例えば中に埋め込まれているICチップはセイントネフティス専用の特別仕様として発行され、そうなると今回の列車砲のようにセイントネフティス社のカードのみ起動できるような… まぁ、いわゆる専用のキーと扱いになると言うわけですね」

 

「それならこの兵器は昔からそのように組み込まれていたってことなのかしら?」

 

「ええ。そう考えるのが普通でしょう。そしてこの兵器はセイントネフティス社の管理元アビドスのみがこの移動要塞を永劫に動かせる。それをずっと前から計画し、そう仕組んでいると考えるのが普通でしょう」

 

 

移動要塞のために計画した鉄道計画。

 

度重なる砂漠化のせいでそれは実現しなかったが、しかしこうして起動できた。

 

 

それは大昔のアビドスが。

 

そこを古城とするセイントネフティスが。

 

何より入れ知恵をした雷帝が。

 

こんなとんでも兵器を作り上げた。

 

 

 

 

故に___当時のアビドスって。

 

 

 

 

「(控えめに言って頭おかしいな)」

「(控えめに言って頭おかしいわね)」

「(控えめに言って頭おかしいですね)」

 

 

 

言葉にせずとも俺達は気持ちが同じだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっと、到着だ」

 

「「!!」」

 

「「!?」」

 

 

 

あれから小1時間ほど列車砲シェマタを調べると喉も渇いたので一度切り上げる形で格納庫から飛雷神すればアビドス高等学校のアビドス生徒会に戻って来た。

 

それで急に生徒会室に現れた俺たちにユメとホシノの二人は驚き、また戻るためにもう一度飛んだ空崎ヒナとネフティス幹部も驚いている。

 

まあ今回で慣れてくれや。

 

ネフティス幹部さんに関してまた後日に飛ぶからな。次はカードのグレードあげて試すことを話してるし。

 

 

「やはりこの瞬間移動はすごいわね…」ニギニギ

 

「ユメと奇跡起こしたら使えるようになった」

 

「えへへ…」

 

「先輩、そこはあまり誇らしげにする所じゃないですから…」

 

「そう、色々あったみたいね」ニギニギ

 

「まぁ、この四か月で色々とな?」

 

「色々ですか……ふぅ、確かに…私も今日は色々と驚かされますね。追加の商談と思ったらアビドス自治区でSRTの月雪カナタ様が生存なさってる事を知り、しかもその潜伏期間中に列車砲シェマタを見つけていたようで。私もこうして実際にこの目でその存在を知りました。そしてあの兵器でカイザーに対して反撃を計画しているともきた。いやはや。とんでもない事に巻き込まれましたね」

 

「あー、騙して悪いな。でも列車砲シェマタと関連があると思ったセイントネフティス社から力を借りたくてな?てか列車砲の起動手段がネフティスで合ってた事にホッとしてる。動いて良かったわ…」

 

「良くお気づきになりましたね。しかし貴方も良くカイザーが起こしたあの騒動から生きていました。誰もが貴方は消されたと。そしてキヴォトスでは【死人】を出したと扱われて…」

 

「ええ、私も消えたと思ってたわ。どこのニュースも月雪カナタの消失で話持ちきり。対してカイザーコーポレーションは過去に月雪カナタによって滅ぼされたアリウス自治区の残党が原因だと抜かしいたけれど、ミレニアムがハッキングした映像や戦場跡地の兵器残骸で証拠を突きつけたら開き直りに近い姿勢で否定と肯定の繰り返し。それでも変わらず強気の姿勢で責任追及から逃れているわ…」ニギニギ

 

「でも奴らは俺を抹殺した罪に問おうが問われなかろうが関係ない。何せ宇宙に衛星砲があるからな。一方的にキヴォトスを焼け野原にできる引き金を奴らは握っている。重力に縛られた俺たち相手に敵は無しって考えた上での驕り高ぶった姿勢だろう」

 

「まったく!!腹立たしい奴らだ!!恐怖政治で生産性を奪うつもりですか!!大企業の隅にも置け無い輩どもめ!!許せませんよ!!」

 

「ゲヘナも対策を立てるべきかしら…」ニギニギ

 

「いや、空崎には別用を頼みたいんだ」

 

「私?」ニギニギ

 

「ああ、君個人に………あー、それと移動は済んだからもう手は放しても良いぞ?」

 

「ふぇ?……ぁっ!ご、ごめんなさい…」

 

「(じー)」

 

 

そう言ってパッと手を離す空崎ヒナ。

まだ飛雷神に慣れないのかな?分かる。

俺も最初は瞬間移動に慣れなかったし。

後なんかホシノの視線が強め。どしたん。

 

 

 

「ねぇカナタくん。話聞く限りだと列車砲は無事に動かせたって事なんだよね?」

 

「ああ。ネフティスさんがばっちりと」

 

「私もこの目で見ました。しかしコントロールレベルを上げるためにもう一度向かう必要があります。ですがあの感じでしたら起動自体は問題ないでしょう」

 

「そ、そうなんだ!それなら、じゃあ!」

 

「あとは俺の神秘が安定すれば年が変わる前に反撃の狼煙を上げることはできる。まあその前に仕込みもしないとだけど。とりあえず今は協力者が必要だな」

 

「で、ネフティス社は協力してくれるの?」

 

「協力ですか…ええ、もちろんですよ。私も月雪様から事の発端とその先の計画をお伺い致しました。無論キヴォトスのためにセイントネフティスもご協力しますよ、アビドス副会長様」

 

「そうなんだ」

 

「はい。なので月雪カナタ様。私達はキヴォトスの未来のため協力します。ですが、その…あの移動要塞が元々は私達セイントネフティス社の所有物であるのでしたら…ですね」

 

「あー、おけおけ。言わんことはわかるぞ?まあ俺はあくまでSRTとして雷帝の遺産を風紀委員会に存在を伝えるだけだ。そしてここにはゲヘナ風紀委員の空崎ヒナがいる。なのでもう伝えた。なのであのデカブツは後の者達で取り決めてくれ……と、本来なら言うところだが…」

 

「いまは権利主張をしてる場合ではないわね」

 

「そうなりますね……と、言うよりは…」

 

「SRTが敵地の兵器に対しての鹵獲対象としての取り扱いだから、今のところはSRTの保管対象かつ同時に俺こと月雪カナタがアビドス生徒会の人間なのでアビドス生徒会の押収物になるんだよな。そんな訳だから列車砲シェマタの所有権に関しては事の全て終わってからにしてくれ。どのみちカイザーが消えなければ誰も手を出せないし」

 

「そう……なりますね。ええわかりました。後の話は後にしましょう。今はSRTの月雪カナタ様に協力する事でカイザーコーポレーションのふざけた恐怖政治の制裁とキヴォトスの安定を守るためにもここは一度力を合わせるべきでしょう。なので私から今一度、この場で協力する事を約束します」

 

「ありがとう!ネフティスさん!」

「ありがとう、心強いよ」

 

「いえ、私程度で力になれれば。貴方を通してアビドスも息を吹き返せるならばこの件は未来投資にもなりますから。もしダメでしたら私達は大人しくこのアビドスを去るだけですから」

 

「ふぇ!?…ええと、ネフティスさんはアビドスを去ってしまうんですか?」

 

「生徒会長様……ええ、そうです。元より来年の春頃には殆どを撤退させる予定でした。でもご安心ください。砂漠横断鉄道の関連施設はネフティスの管理下にあります。もし全てお支払いできるのでしたら貴方の使用権は来年もその後も無事です」

 

「そっか…」

 

「……すみません。我が社はここ何十年とアビドスのために何もお力になれず……」

 

「っ、違うよ!!誰も悪くなんかないよっ!!」

 

「!」

 

「この砂漠化は仕方ないことだよ。だから皆がずっと立ち向かって来た。アビドスの借金だってなんとかしようとした証。ネフティスさんだって大事なアビドスのために力を尽くしてくれたでしょ?何も力になれずなんて思ってないよ」

 

「生徒会長、様…」

 

 

そうとも、この砂漠化は誰のせいでもない。

 

最初だってアビドスのこの状況をなんとかしようとしていた。

 

けれど金の解決は追いつかず、結果的にこうなってしまった。

 

これは、それほどだった。

 

でもアビドスはそうなってでもこのアビドスをどうにかしようとしていた。

 

誰も責めれない。

 

 

 

 

「空崎ヒナ、建前上として『伝える』をした。でも状況が状況だから雷帝の遺産に関してはしばし待ってくれないか?」

 

「ええ、わかったわ。もちろんそのつもりよ」

 

「……聞いててなんだけど、良いのか?」

 

「私はあくまで小鳥遊ホシノをマークしてるだけの諜報員よ。それに新人風紀委員は雷帝の遺産の取り締まりを聞かされてないわ。だから存在してる事を知っただけ。これ以上は管轄外ね」

 

「おおー??おぉぉ…うん。そっかそっかー。なるほど。じゃあそれは仕方ないな!うん。俺はゲヘナ風紀委員会に伝えた。それだけ。なら以上だ。うむっ」

 

「ええ、私は聞いたわ。それだけ。以上ね」

 

「おう。それじゃあ、なら個人的な頼みは構わないだろうか?」

 

「構わないわよ」

 

「即答だな」

 

「キヴォトスの未来が関わっているんでしょ?なら風紀委員会とか関係なく…私が、空崎ヒナが月雪カナタ先輩のために協力するわ」

 

 

 

そう言ってふわりと彼女は笑う。

 

頼もしい人だ…

 

俺はお礼を言いいながら、とある紙を渡す。

 

 

 

「兎と…弾丸の絵??」

 

「おう。なかなか絵心あるだろ?まあそれは良いとして…とりあえず」

 

「これを()()()()に届けるのね?」

 

「その前にハンドサインをな。場合によっては警告射撃が直撃するかも」

 

「それは大変ね。せっかくの橋渡しが運悪く抜かれてしまうわ」

 

「おいおい。まるで自分は効かないみたいな言い草だな」

 

「コレでもかなり丈夫なつもりよ」

 

「なるほど。昔の(ぼく)に欲しかったな」

 

「?」

 

「いや…気にするな。こっちの話だ」

 

 

強固な神秘か……羨ましいな。

 

いまはもう月雪カナタ(二度目)としての正当化も完了させたし、脆さも克服もしたし、これからも変わらずに健在であろうとしている月雪カナタだけど、でももしホシノやヒナ程の神秘が前任者にもあったのなら……いや、違うな。

 

そうじゃないな。

 

ただ純粋に世界が月雪カナタというイレギュラーにも優しければ彼だって濁りなくこの箱舟で生きていた。

 

それが色彩(ねがい)の中でみた【解】だ。

 

 

 

そう考えると!!

やはりトリニティってカスだな!!

 

ウリエも連邦ちゃんも言ってたし!!

へけっ(道連れ)

 

 

 

「セイントネフティスさんは次回の訪問日が決まりましたらメールください。確認次第すぐに返事します」

 

「わかりました。こちらも列車砲に合わせて専用のカードを幾つか用意します。本日はこれで」

 

 

入り口まで見送ったセイントネフティス幹部ロボットはスーツケースを手に持つと営業マンの角度で頭を下げ、アビドス高等学校から姿を消す。今日からもう取り掛かるらしい。

 

 

 

「私も今回の件を除いて定時報告に戻るわ。先ほどの紙も指定の日に持ち込むから任せて」

 

「ありがとう。心強いよ」

 

「ふふっ、今回は私が借り物競争みたいね」

 

「おっと?これはもしや中々にでかい借りを作っちまったか?」

 

「そうなるの?…ふふっ、それなら何で返して貰おうかしらね」

 

「ちなみに和菓子作りは得意だ」

 

「そうなの?…ええ、考えておくわ」

 

 

そう言って空崎ヒナもアビドスから姿を消す。

そうして俺とユメとホシノだけになった。

 

急に静かに……ほどでもないな。

 

怪我から復活したユメは元気有り余って今日も騒がしいし。昨年のマエストロとキリノテラーの3人の時とは随分と大違いな出力だな。まあ子供が元気なのは良い事だけど。

 

 

「カナタ先輩…」

 

「?」

 

「私も、その…できることありますか?」

 

「あるよ。かなり個人的な内容だけど」

 

「手伝います。先輩の力になりたいです」

 

「ありがとう。時が来たら伝える。これは…月雪の兄として一番重要な事になるからな」

 

 

 

 

アビドスの砂が空に舞う。

 

反撃の時は近づいている。

 

そう騒ぎ立てるように…

 

 

 

 

 

「じゃあ、ラーメンでも食べ行くか」

 

「それは良いね!ええと…タナカちゃん!」

 

「まだその設定続くんですね…」

 

 

 

 

 

その前に腹ごしらえだ。

 

しっかり備えて___挑むとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

台所から湯煙が漂う。

 

それは私の家に住まう同居人から。

 

 

「ほれ、カフェインレスの緑茶だ」

「ありがとう、カナタくん」

 

 

寝る前だからカフェインを摂らないように緑茶を淹れてくれた彼。あと百鬼夜行の出だからお茶の淹れ方はとても上手でいつも美味しい。

 

湯呑みも暑すぎず、飲みやすい温度で歓迎してくれる。寒い夜にとてもありがたい。

 

 

「今日は色々あったね……と、言っても殆どはカナタくんが進めて私は生徒会室で待っていただけだけどね、えへへ」

 

「でもこの日まで辿り着いたのはあの日、ユメがアビドスにいることを許してくれたからだ。これも底抜けに優しい君のお陰だ」

 

「そんなこと言ったら、カナタくんは私が砂漠で遭難したところを助けてくれたよ。絶対に見つからないと言っても過言じゃないあの砂漠地帯で砂粒一つを拾い上げてくれた。これは間違いなく貴方が居てくれたから…」

 

 

そう、彼が居たから私はこの場所にいる。

 

私はあの砂漠でかき消されようとした。

 

本当にそうなるところだった。

 

身体を削るような砂嵐に吹き飛ばされてしまいもう誰も見つけれないような…

 

そんな絶望的な場所まで流された。

 

 

今でも覚えている。

 

朧げな意識の中で周りを見渡してみるも、しかし何もない砂漠は完全に孤独を突きつけた。

 

嵐を凌ぐための建物も列車もなく、携帯電話から飛ばしたメッセージは誰にも届かないと思えるほどに果てしなく遠くなる場所だった。

 

奇跡を忘れて絶望を思い出した。

 

 

 

「…」

 

 

こうして安全な家でお茶を飲めることは間違いなく奇跡だ。私は死んでいた。

 

しかしそれは裏返った。

隣にいる彼によって。

 

 

だから___この日は奇跡によるもの。

 

 

月雪カナタが存在して、覆った。

 

梔子ユメは朽ちる事を許さないとして。

 

 

 

 

ストンっ…

 

 

 

「うぉっ……っと、お茶持っているだろ」

 

「えへへ……ごめんね」

 

 

隣に座った彼の肩に__寄りかかる。

 

もちろん手元にあるお茶溢さないように優しく頭だけ寄りかかったつもり。

 

でも…あの時の寂しさは誤魔化せなかったみたいだから、思ったよりも寂しさが倒れ掛かる身体を強く後押しした。

 

 

 

「…」

「…」

 

 

 

暖かい。砂漠のように冷たくない。

柔らかい。砂嵐のように痛くない。

 

 

「……」

「……」

 

 

 

夜の寂しさもあるし、冬の寒さもある。

 

節約のためにエアコンは消した。

だからこのリビングは私と彼だけが熱源。

 

女性の私は、男性の彼よりも体温が高いからこの寒さに少しだけ優れている……なんてことは少しも思わない。

 

思い出せば出すほど冷たさを思い出す。

 

昼間の元気も夜に引っ込んでしまう。

 

今は隣にこの温もりだけが頼り。

 

夜に凍えないで済む事をこうして知った。

 

 

 

「ありがとう……貴方のお陰で私はまだ奇跡を愛せる事を許されているよ」

 

 

 

沢山を込めて彼に伝える。

 

 

 

「……許すも許さないも無い。子供に与えられた特権だろ。好きなだけ好きにすれば良い」

 

 

 

そして彼は応える。

それが当然の権利かのように。

 

 

 

「でも…それを尊重する大人がいないから、わからないものだよな……ああ、まったく…本当に良くない事だ…」

 

 

 

けれど彼は嘆かわしく呟く。

それが当然であって欲しいと願うから。

 

 

 

「カナタくんは優しいね…」

 

「ユメには負けるさ」

 

「そんなこと…ないよ。私はただそれだけしか出来ない、不器用な生徒会長だから…」

 

「いや、不器用じゃない。君の優しさは不器用なんかで言い崩せれるほど柔じゃない。君の持ち合わせる取り柄はとても硬く、そしてとても柔らかな優しさなんだ」

 

「そうかな?……ふふっ、でもなんか矛盾してるよ」

 

「かもな。でも不器用じゃない証明だ。どちらも兼ね備えた梔子ユメはアビドスの生徒会長として器たらしめれる証だ。なにより俺はそれに救われたのだから。確かだ」

 

「そっか…………えへへ」

 

 

彼がいる限りマイナス思考なんて許されない。

 

必ずや裏返される。

 

仮に自身の不出来を肯定されても、受け止め方を変えれば素敵な一部として、または明日の糧として教えてくれる。

 

ホシノちゃんにもそう寄り添っていた。

 

それが月雪カナタ。

 

心に優しく触れてくれる私達の先駆者。

 

同い年なのに、でもそこに寄りかかりたい大樹である事に変わりない。

 

だから私はこうして身体を預ける。

物理的にも、精神的にも、今だけを…

 

 

「…」

 

 

手を伸ばして湯呑みをテーブルに置く。

 

その時に前のめりになった私は、彼の肩から頭をズラすとそのまま深く横に倒れ込む。

 

僅かに恐る恐るだけど、でも彼は抵抗も何もせずに、私の甘えを受け止めてくれる。

 

底抜けに優しいのは私よりも……彼だ。

 

この人は『子供』に優しい。

 

そう感じて彼の膝の上に私は頭を置いた。

 

 

 

「ふふっ、膝にクジラのマークだね」

 

「この部屋着、ホシノが選んだらしいな」

 

「知ってたんだ」

 

「旧校舎で探してる時に聞いた」

 

「そうなんだね。ふふっ…ホシノちゃんと仲良くしてくれているみたいだね」

 

「可愛い奴だよな。是非SRTに欲しかった」

 

「だーめ。私の大事なホシノちゃんだよ」

 

「そうだな。彼女はココに必要不可欠だ」

 

「…………わたしは…」

 

「?」

 

「わたしも、その……ホシノちゃんみたいに…」

 

「何度も言ってるだろ、ユメも必要不可欠」

 

「…………うん」

 

「…………まぁもし、ユメが後輩だったらホシノのように可愛がってたと思うよ」

 

「!……えへへ、じゃあ、それで良いかな…」

 

「何がだよ。まったく…」

 

 

欲しい答えよりはやや遠目な位置。

でも欲しい言葉はたらればで貰えた。

だから今はそれで満足と私は微笑む。

 

 

「なんか……ぅん…ねむたく…なってきた…」

 

「こんなところで寝ると冷えるぞ」

 

「ぅぅん、ちょっとだけ……だから…」

 

「……」

 

 

この心地よさが、段々と眠気を誘う。

 

砂漠に冷め堕ちることない。

もう二度と溢さないと拾い上げられた。

 

頬に伝わる仄かな熱は本物。

もう、痛くも寂しくもない。

 

怖くも…

恐ろししくもなくて…

 

琥珀色に受け止める陽だまりのように…

 

 

 

「すぅ……すぅ……」

 

 

 

湯呑みに半分だけ残っている緑茶も忘れて私は寝息を立てると、そのまま夢の中に。

 

安心を心に包み込んで、穏やかな寝息。

 

 

「……大した生徒会長だよ、君は…」

 

 

ふわりと、髪をかき分けられる。

一つ一つに力強さを感じさせる彼の指。

でも優しく、伸びる髪に沿って、撫でる。

 

 

 

「おやすみ…どうか暖かな__(ユメ)を」

 

 

 

 

 

うん、おやすみなさい。

 

カナタくん。

 

___奇跡と夢をありがとう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「子供たちに、明日を届けに行くぞ」

 

 

 

 

 

 

 

それは12月の終日。

 

クリスマスと言われる特別な日。

 

だが、この年のクリスマスは昨年と比べて静かで活力が感じられず、それは夏から続く緊張感が入り混じってとても不気味であった。

 

この数ヶ月間、キヴォトスの空に怯えながら過ごす人達で多かったから。

 

どんな環境でも揺るぎない強かさで有名なレッドウィンターですら火を焚けない真冬のように大人しく、また無法地帯のゲヘナでさえ暴れることを自重してしまうなど、まるで痛みを知った赤子が大人の顔色を伺いながらいつ降り注ぐかわからない怒りに怯えて過ごしているみたいでこの楽園は沈みつつある。

 

 

 

しかし、クリスマスは特別な日だ。

 

それは___

 

____救世主復活を祝う日でもあるから。

 

 

 

 

 

 ____()えた

 

 

 

 

移動要塞の上で宇宙に手を伸ばした彼はそう言って標的を定める。

 

砲塔に詰め込まれた、その砲弾に刻んだカナタの神秘は今すぐにでもその役割を果たそうと慄える。

 

悪意に沈もうとする箱舟を浮かさんと、今か今かと奮えて、待ち侘びている。

 

 

 

「カナタくん」

 

「ああ___放て、ユメ」

 

 

 

インカムから聞こえた彼の声。

 

私は従ってトリガーを引く。

 

 

そして___彼は叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

神羅天征ッッッ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

その日、キヴォトスは空を震わせた。

 

大人の悪意を裏返す色彩の一撃として。

 

 

 

クリスマスに訪れた救世主の復活。

 

身体に打ち込まれた釘を引きずりながら。

 

それでも砕け散らなかった先駆者の到来。

 

キヴォトスの歴史に刻まれるある日の追憶。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

" さぁ、子供達を助けようか "

 

 

 

 

 

 

 

 

 

責任の意味を知る者は再び目指す。

 

この体に秘められた__正当化のために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく






セイントネフティスさんは経営難だから何事にも利益を上げれるよう打算的に動かなければならないけど、キヴォトスの未来がなければ運営どころではないのでカナタくんに勝算を見出して力貸してくれることになったりと、やはりカナタくんは人望ありますねぇ。後方で腕組んだ白鳥ちゃんのドヤ顔が見える見える。


あとひなひなのヒナちゃんは小さなおててをカナタくんの大きなお手手でニギニギされてこんがりと焼かれちゃったみたいだけどまあ大丈夫だろう。良くある良くある。へけっ。


じゃあ、反撃開始という事で。
次回の更新を待て。



じゃぁな!
またなぁ!!
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