なんか俺のヘイロー砕けてね?   作:つヴぁるnet

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第56話

 

 

 

 

監視カメラに映る一つの影。

 

センサーが神秘を捉え、管理室は鳴り響く。

 

侵入者がやって来た。

 

一体誰がこの場所にやって来たのか??

 

 

 

『そこで止まれ』

 

「…」

 

 

 

隠されたスピーカーから警告する。

 

その声に反応して侵入者は足を止める。

 

 

 

『その制服……ゲヘナの者か??』

 

「……」

 

 

 

なんだ、無法者か。

とんだ呆れた。

 

こんな治安状況でもゲヘナというのは己の要求以外に興味はないらしい。

 

宇宙から睨む威光に背筋を絡ませながら息苦しくキヴォトスは回っているというのに、この者達はこちらの事情を汲まずにちょっかいか。

 

 

 

私達は__大事な者を二つも失っている。

 

それがどれほどにこの部隊を失落へと導いてしまったか。

 

実際に運営状態は停止に近い。

 

管理主たる__連邦生徒会長が居ないから。

 

だからこの学園は宙ぶらりんな状態だ。

 

そして連邦生徒会も生徒会長を失ったことで機能不全に近しい状態にある。なのに未だ誰も生徒会長の座に着こうとせず、万が一の緊急マニュアルを頼りに運営しているだけで運営能力は著しく低下している。ヴァルキューレだけは日頃変わらず住民と治安を守ろうとしているが大元の権威が落ちてる以上動き辛そうにしている部分はある。

 

だから、いつ、このキヴォトスを支配せんと目論んでいる悪意の大衆たるカイザーコーポレーションが動き出すかわからない。

 

奴らは……私達が敬愛していたSRTの総隊長、月雪カナタを宇宙の光で葬った。栄えある一期生の大黒柱としてこの学園を精神的に支えてくれていた存在を奪い取り、その舵を失った私達は枯れ枝に染まらんとする残峰であり、カイザーから嘲笑われている。

 

更に加え、その後を追うようにこの学園管理者である連邦生徒会長が喪失してしまったことでこれまで供給されていた物資は止まり、まともな運営状態もままならず、内側からの崩壊も進んでいる。

 

そうやって弱体化が進むSRT特殊学園。

 

それに対してカイザーコーポレーションは枯れ行くこの学園の末路を待っている。キヴォトスで唯一カイザーコーポレーションと敵対状態に入れるのはSRT特殊学園だけてあり、討ち砕けるのもこの学園だけ。しかしこの学園は着々と滅びに迫る。だからもしこの学園の息が止まればそれはシラトリ区の終わりであり、連邦生徒会の終わりになり、キヴォトスの終末の始まりにもなる。

 

奴らはその時を待つだけ。

 

月雪カナタと連邦生徒会長を光にした責任追及も有耶無耶にしながらSRTが朽ちるその時まで引き延ばしながら、けれど強気に出れない連邦生徒会やメディア相手に宇宙の兵器をチラつかせながら強気な姿勢を保ち、いつでも同じ末路を辿らせてやれると奴らはキヴォトスの管理塔を嘲笑いながらその時を待っている。

 

 

そんな相手にっ…

 

そんな極悪非道な相手に…

 

この銃口を突きつければ秒で畳んでやれる力があるはずなのにっ…!!

 

今のは私達はどれほどの無力に覚えているのかッ!!

 

 

それを……それを…っ!

 

大義も!責任も!何も知らないゲヘナ生徒如きに砂をかけられようなど…っ!!

 

 

 

 

 

 

??

 

なん、だ??

 

 

 

「……」

 

 

指を3本立てている??

 

いや、2本?

 

いや、次に4本??

 

そして……2本??

 

 

いや、待て。

 

何故、あのゲヘナ生がSRTのハンドサインを知っている??

 

 

「……」

 

 

また同じハンドサイン。

 

何を、何を、して。

 

 

 

『……ら……びっ………と…??』

 

「!」

 

 

 

思わずスピーカーから声を漏らしてしまう。

 

しかし彼女はそれに頷く。

 

するとゲヘナ生はその場に屈むとポケットから何かを取り出して、次に重しを取り出してその場に置く。

 

重しの下のは……紙??

 

もしや手紙を置いたのか??

 

 

「……」

 

 

 

そしてゲヘナ生は背を向けてその場から去る。

 

っ、移動が早い!!

兵を向かわせるべきだったか??

 

いやしかしあのゲヘナ生、分かっていたかのように警告ラインまでしか踏み込まなかった。

 

こちらの情報を抜かれている??

SRTが??

そんなまさか…

 

 

 

『っ!手紙!』

 

 

 

置き土産を思い出し、兵を向かわせる。

 

そして罠に注意しながら兎と弾丸のマークが手書きで刻まれたメモ書きを回収し、副隊長に状況を知らせ、確認するタイミングで副隊長は羽を揺らしてやって来た。

 

でもその羽はあまり元気がなく、隊長が消えて以来そこに艶もない。

 

けれど表情は弱さを見せず、今は亡き隊長の代わりを努めようといつものように振る舞いながら、手紙を共に確認し…

 

 

 

『登録番号10001番 ノ 兎01

ヒトフタマルマルに宇宙(そら)を堕とす。

これをクリスマス当日に決行する。

それまでに可能な限り全てを備えろ。

文通による報告は今回で以上とする。

当日は111を固定とし暗号回線で通達ス。

オペレーションは"カルバノグのうさぎ"。

兎は、王を気取った大人と悪意を喰らう。

 

 

 

 

 

 

それと。

 

 

軽沢ウリエ、コチラはまだ生きているよ。

まだ砕け散っていない。だから諦めるな。

必ずや、この箱舟を浮かしてみせるから』

 

 

 

 

 

 

 

 

その手紙は__明日の希望。

 

灰色に被ろうとしていた天使の羽は失われた白さを取り戻し、琥珀色にも彩らせ…

 

 

 

 

 

 

 

 

「総員に、告ぐわ___」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

選ばれた者たちは大義と役割を思い出す。

 

だから飢えた兎は洞窟から赫く光らせる。

 

王様気取りの愚か者を食いちぎるため。

 

その日は、刻々と訪れを待ち望んでいる。

 

子供のための箱舟を取り戻そうと研いで…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キヴォトスに、ある青年がいた。

 

その者は、このキヴォトスで唯一の悪意に対して立ち向かえる先駆者だった。

 

 

 

 

しかし、それは無慈悲にも覆された。

 

 

太古から望まれる者たちによって。

 

名を残すことなかった信仰者によって。

 

子供を偽った天使達は失落を思い出す。

 

この箱舟は帆を折られてしまった。

 

航海を支えていた甲板すらも砕けた。

 

もう浮くことはない。望まれない。

ならば沈むだけ。それが定め。

 

 

子供を食い物として選んだ悪意が舵を切る。

 

このキヴォトスは大人が掌握した、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

___が、それこそ覆されたのだ。

 

 

 

 

 

 

雪雲を貫いた地上からの一等星。

 

その一筋は宇宙(そら)に浮かんで穿つ。

 

 

宇宙が震える。

 

宇宙が割れる。

 

宇宙が砕ける。

 

 

 

大人は高らかに笑っていた。

 

泥水から拾い上げた遺物は己らの支配欲を崇高に満たすと勘違いし、忌々しき青年を排除することで果たされようとされていたから。

 

 

確かに、それはそのようにはなった。

 

しかと、この目で消滅を見送った。

 

 

忌々しき存在は亡き者として屈した。

 

大人達は大手を挙げて歓喜に満ちた。

 

 

ならば天下はこの手に約束されるだろう。

 

もう誰もこの野暮を止めること叶わない。

 

 

これからは!!

我らが時代を築き上げる時が___

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

___ドンッッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「??」

 

 

大音が響き渡るその数秒前まで__嗚呼、今日は記念日だというのに寒さを裏返すほどの熱量を感じられないクリスマスだ…と、人々は恐怖と共に身体を引きずる。

 

特別な日を楽しみ、はしゃぎたい筈の子供達は飾られたクリスマスツリーに想い一つも馳せれずに、また純粋に楽しめない子供達の姿に嘆かわしく思う大人達は無力感を噛み締める。

 

このままキヴォトスの命運を握るだろうカイザーコーポレーションに全て食いちぎられる。

 

 

しかし、それは抗えない。

 

重力に縛られたこのキヴォトスで誰もが手の届かない彼方ある宇宙の光に今日も怯えながら明日のことにも同時に怯えているから。

 

 

デモンストレーション代わりに消し飛ばされた英雄の姿は人々に【死】を突きつけた。

 

 

絡みつく嘆きと惨劇は喜びを摘み取る。

 

恐怖のみが残り、灰色に染め上げる。

 

無力者は搾取されるだけに成り下がった。

 

 

 

 

 

しかしそんな中、一人の生徒は空を見た。

 

ふと、何かを宇宙(そら)から感じ取ったから。

 

 

 

「あれ…は?」

 

 

 

クリスマスに出展されたグルメ巡りの最中、一瞬だけ打ち上がった一筋を偶然見た。

 

 

それに対して何だが、懐かしさを覚えた。

 

 

何故だろう??

 

まだ出会った事もないのに…

 

けれど、そこにある力強さを秘めた柔からかな温かみはまだ見ぬ願いの果てで知っているような気がして落ち着かない。

 

その背中に何もかもを預けたくなるんだ。

 

灰色染まりだったこの身体に、己が三流であることすら誇る芸術家が、琥珀色を一滴だけ落としてくれたような何も知らない私は白いキャンパス扱いだ。

 

そうやって、裏返った先にある懐かしさは今日が特別なクリスマスの日であることを再確認させ、口から漏れる白い吐息は私はまだ裏返ってないことを教えてくれる。

 

 

 

「___ほん……かん……は…

 

 

 

記憶に無い追憶(メモリー)が重なり、そしては恐らく未来で紡ぐことになるだろう言葉が宇宙に想い馳せた。

 

故に、それが確信にもなった。

 

恐らくあの輝きは__到来する奇跡だ。

 

 

 

だって…

 

 

だって……!

 

 

だって……!!

 

 

 

 

 

 

 

中務キリノというプレイアブルキャラクターはその奇跡に重ねられた事があるから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パキィィィィーーーーンッッ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

刹那__

 

キヴォトスは明日の音を鳴り響かせる。

 

恐怖は__正当化されて砕け散った。

 

子供のための色彩が、反撃の証として。

 

やってくる__その【責任】を果たしに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♦︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「首尾はどうだ?ジェネラル」

 

「プレジデント!?唐突だな……いえ失礼」

 

「なに、今日は()()()()らしいからな」

 

「特別…ふっ、随分と冗談がおキツい」

 

「だな。表の売上は悪くも落ちてる所だ」

 

「ですか。対してこちらは比較的順調です」

 

「でなければ困るな。して、アレはどうだ?」

 

「アレ、ですか…」

 

 

二人の大人は今日、たまたま集う。

 

別に今日が特別な日だとか関係なく。

 

ただの経過確認のため。

 

ビジネスに綻びが無いかを確認するため。

 

 

 

「解析班、改めて報告しろ」

 

「はい!今ところ解析は順調です!」

「進行率は80%。特に問題は無しです!」

「翌年にはアクセスも完了するでしょう」

 

 

「…との、ことになります」

 

「ふむ、なるほど」

 

「…何か、他にご質問は?」

 

「無いな。軍拡も順調なのは見て分かる」

 

「並行して勤しむ所存、ご心配なく」

 

「私が認めた男だ。無論、信じているとも」

 

 

 

ここはシラトリ区の外区にある駐屯地。

 

中央区に比べて治安維持が甘いとされる67区より奥に作られた、違法基地が拡げられている。

 

 

67区は元々連邦生徒会の手が届きづらいこの外区であるが、現在は目に見えて弱体化してしまった連邦生徒会の状況を良いことにカイザーPMCは外部の声を無視すると着々と軍拡を進め、戦力の回復を行う。

 

 

夏の始まり頃、とある一人の超兵に対してカイザーPMCが保有する全軍の40%近くを差し向けて、それがほぼ全て壊滅したから。

 

 

 

それでもまだ半分の60%は残っている。

 

 

なんて__能天気な考えは非常に危険だ。

 

 

言い方を変えれば現在のカイザーPMCは当時の半分の軍力しか無いという事実。

 

 

この状態では非常に心許無い。

 

もし敵対状態にあるSRT特殊学園が攻めてきた場合、負けるのは間違いなくカイザーPMC側である。それはシミュレータでも98%敗北すると叩き出されていた。

 

 

しかし、そのSRT特殊学園も動けずにいる。

 

理由としては連邦生徒会の会長と、その組織を支えていた大黒柱を失ってしまった事で機能不全に陥ってしまったから。それでも辛うじて動いているが、治安を悪化させる輩を細々と取り締まるだけで後はただ腐るのみ。

 

だから飼い主のいないよく躾けられた飼い犬は指示を貰えず、そのリールに縛られたまま。

 

まともに動けずいた。

 

そうしてSRTという最大の敵が動けない今がチャンスと捉えたカイザーPMCは減らした軍力の回復を急がせるため軍拡を勤しみ、その過程でシラトリ中央区に寄せた外区で軍事基地を展開し、また民間軍事会社の首脳部も外区に移動させるなど着々と中央区に圧力を掛けながら迫っている。

 

今日が特別な日だろうとやる事は変わらない。

 

 

「今の連邦生徒会は衛星砲ノヴァの脅威に恐れて動けない状態にある。しかし軍拡に手を抜かずにことを進めろ。無論ノヴァの解析もだ。コントロール権を再度得るためにもこれまで通りにだ。良いな?」

 

「「「はっ!!」」」

 

 

カイザーPMCを管理する総指揮官のジェネラルはプレジデントの信頼に答えるためにも現場に緊張感を与え、気を緩ませない。

 

 

連邦生徒会、その他は手を出せない。

 

それは衛星砲ノヴァに恐れているから。

 

半年前の『効果』は今も健在だ。

 

 

その効果とは__それはシラトリ外区の67区で行った、一人の超兵を犠牲に見せしめたデモンストレーションによるもの。

 

宇宙の彼方にある衛星砲ノヴァの光線でSRT特殊学園の超兵こと月雪カナタを跡形もなく消し飛ばし、カイザーコーポレーションがそれを保有していることを知らしめた。

 

 

最初はアリウス分校の残党がSRT特殊学園の月雪カナタを恨み、晄輪大祭を強襲して混乱させたのが始まりとしたが、ミレニアムサイエンススクール所属のハッカー達が映像をハッキングしたことで真実を広め、また嫌に嗅覚の鋭かったクロノス報道陣がカイザーコーポレーションがアリウス分校の残党を利用し、月雪カナタを抹殺するために計画した情報を手に入れると世間はカイザーコーポレーションを批難。

 

これに対してカイザーコーポレーションは衛星砲ノヴァのコントロール権再獲得するために時間稼ぎとして肯定と否定を混ぜながらしらばくれる状態を繰り返し、最終的には衛星砲を保有していることをキヴォトス中に広め、しかしここは敢えて月雪カナタに対して発言はせずに対応を取る。しかし世間は理解する。奴らが月雪カナタを葬った。それも計画的に。

 

だがこの悪行に対して誰もカイザーコーポレーションを取り締まれず、また制裁を喰らわせれずにいた。

 

無論、首脳たる生徒会長を失った連邦生徒会もカイザーコーポレーションを睨むなどして牽制するが、しかしそれ以上は動けずにいる。

 

当然、このような相手にカイザーコーポレーションは敵として見做さずにいる。

 

しかし時間稼ぎのためにわざわざ敵を嘲笑うように世間の批難と付き合う事で、同時に世間に向けてこのキヴォトスを後に掌握するのは権威も力も失われた連邦生徒会ではない、カイザーコーポレーションであることを仄めかせるなど行い、シラトリ区から弱体化させていくことを計画している。

 

 

まぁ、だからか。

 

 

今日はクリスマスという特別な日なのにそこに活力はない。その中でもシラトリ区は非常に静かだ。キヴォトスの未来を気にしない場所は能天気にクリスマスで祝い事を行なっているがそうなっている場所は実のところ僅か。

 

シラトリ区から漂う暗さに飲まれまいと、なんとかこの記念日を賑やかに過ごそうとするのは神聖に溢れたトリニティか、他自治区を気にしない無法地帯のゲヘナくらいだろう。

 

 

しかし去年に比べて勢いも規模も無い。

 

誰もが、宇宙にある光に怯えている。

 

怯えて、恐怖し、精神的に病む者もいる。

 

 

月雪カナタをデモンストレーション代わりに葬り去った衛星砲ノヴァとはそのくらいに影響を齎してしまう。

 

 

 

「しかしジェネラル、衛星砲ノヴァが再び起動したとして、また不具合が起きる可能性は考慮しているのか?」

 

「その辺りの問題ありません。劣化しているとはいえ砲撃時の出力を抑えればキャパオーバーを起こさず何発でも可能です。それは月雪カナタを消し飛ばした際にデータ収集済み。解析も並行し、軍拡も順調と言えます。その時がくれば必要な引き金はいつでも殺傷力を保証し、温められている事になる。だから今は…」

 

「こちらは任せておけ。光に怯えた愚民共は(こうべ)を垂れることに精一杯だ。そうしている間にも着々と企業の買収と吸収は行えている現状、ブラックマーケットの営業域も30%以上を掌握した。抜け殻と化した連邦生徒会も時間の問題だろう。そして何より…」

 

 

 

 

__最大の敵となるSRTが朽ち逝けばもう我が勢力に牙を向ける者はいない。

 

 

 

 

 

カイザー以外の世間は知らない。

 

カイザーPMCはまだ衛星砲ノヴァはコントロール権を得ていない事を。

 

衛星砲ノヴァは月雪カナタを消し飛ばした直後暴走状態へ入りそうになり、それを解除するために初期化を行った。

 

これによって一度コントロール権を失い、カイザーPMCは再度獲得のために暗号を解析している。

 

 

アクセスはできる。

ただ、動かすことは叶わない。

 

 

そのためジェネラルは解析を急がせる。

 

この冷戦状態もいつかまた発熱する。

 

その発熱は__間違いなくSRTから。

 

強さなら彼方の方が上になる。

 

でも、奴らが動くことはないだろう。

 

主人を失い、宇宙の彼方にある衛星砲ノヴァを意識して手を出せないから。

 

 

だが、それでも、万が一にもある。

 

この冷戦状態はいつかは終わる。

 

その時に衛星砲ノヴァは必要になる。

 

ならばいつでも放てる兵器としてキヴォトスの喉元に突き立てれる一方的な抑止、または破壊兵器として恐怖を刻み、それを支配として繋げるために宇宙の兵器は必要不可欠となる。

 

それ込みの、未来図。

 

 

 

「衛星砲ノヴァが動けばもう誰も我らカイザーコーポレーションに対して牙を剥けないだろう」

 

 

 

衛星砲ノヴァの起動はゴールでは無い。

 

むしろスタート地点である。

 

軍力はあくまで目を摘むための抑止。

 

本来の目的はキヴォトスの支配である。

 

カイザーコーポレーションは大企業だ。

 

キヴォトスの全てを独占し、キヴォトスの全てを掌握し、キヴォトスの全てを支配が目的。

 

 

タコはそのためのマーク。

 

全てを掴み、絡め取り、喰らう。

 

それが我ら、カイザーコーポレーション。

 

 

 

ああ、子供如きが帆を張れるものか。

 

この世界を箱舟と勘違いした箱庭は大人が管理することで真実の箱となる。

 

ある日まで存在した無名の司祭___刻の敗北者に変わって大人が新たな時代を築き上げる。

 

それがこの先に訪れる新たな時代だ。

 

 

 

「では引き続き頼んだぞ、ジェネラルよ」

 

「はっ!」

 

 

 

特別な日だから足を運んだと皮肉めいたカイザーコーポレーションの重鎮は杖をつきながらクツクツと笑い、軍事施設を去ろうとする。

 

 

ジェネラルはその後ろ姿を見送りながら思う。

 

 

今日は、クリスマス。

たしかトリニティでは救世主を祝う日だ。

 

 

まぁ…だから、なんだ??

 

 

 

「(クリスマス……ふんっ、随分と笑えるな)」

 

 

 

子供の喜ばせるための延長線を嘲笑う。

 

 

 

「(見えもしない夢物語に、存在したかも不確かな救い主に想い馳せているなど笑える。もし本当に救世主とやらが存在するのならそれこそ迷い人は光というものに怯えやしない。だが今ある現実はどうだ?宇宙にある銃口に怯えて救われやしない。ああ、本当に弱者というのは容易くて、容易くて、愚かだな)」

 

 

 

コツ、コツと、杖の音が鳴る。

 

プレジデントの愛杖。

 

オペレータールームに響く、現実の音。

 

大人が扱うビジネスアイテム。

 

この場に夢物語なんてのは存在しない。

 

全ては…

 

嗚呼__全てこそは。

 

 

この眼で見えるものだけが真実だ__

 

 

 

 

 

 

「待て…なんだ?この反応は…」

「んん…?オイ、どうした??」

「いや、待て……まさ……か…」

「なんだよ?どうしたんだ??」

 

 

 

 

奥から二つの困惑の声が聞こえる。

 

それに対してジェネラルは反応する。

 

 

 

「解析班、何があった??」

 

「??」

 

 

一変した空気を感知したプレジデントは完全に去ろうとした足を止め、振り向く。

 

 

 

「そんな……いや、そんなこと…はっ!!」

 

「だから何が起きた?」

 

「指揮官っ!!…そ、それがっ!!」

 

「だからなんだ!…言え!何が起きた!」

 

 

 

ただ事ではない様子だ。

 

ジェネラルは直ぐに情報共有しろと促す。

 

しかし、その部下は解析班の一人。

 

衛星砲ノヴァに関して何か不具合でも起きたのか?と、やや気が気ではない。

 

プレジデントも足を止めて耳を傾ける。

 

 

そして、解析班の部下は伝える。

 

 

 

「と、とある神秘を再度キャッチしました…」

 

()()()()()…だと??」

 

 

 

なんのことだろうか?

何を言ってるのか?

 

しかし解析班の部下は信じたくないモノを見てしまった故に声を震わせている。

 

オペレータールームもその部下の只事ではなさそうな様子に注目が集まり手が止まる

 

 

そして___現実は突きつけた。

 

 

 

 

「タ、ターゲットが出ています!!それも過去に衛星砲ノヴァが補足したターゲットが表示されています!!それと濃度率99.7%とも表記されています!!」

 

「な、に??」

 

 

 

特定の神秘のキャッチ。

 

衛星砲ノヴァのターゲット。

 

 

それはつまり…

 

過去、狙い打とうとした敵のことだろう。

 

 

 

 

 

 

待て、いま己は何を言った??

 

 

 

 

 

 

 

__敵??

 

衛星砲ノヴァの『敵』??

 

過去狙い撃った__敵とな??

 

 

なんだ??

なんだ??

 

 

衛星砲ノヴァが狙うべき相手か??

 

なら___その『相手』とは??

 

なんだ?

 

 

たしか…

たしか…

 

 

それは…

それは…

 

 

 

それは、たしか…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

___いや………そんな筈はない……

___そんなことは、あり得る訳が……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パキィィィィーーーーンッッ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

「「「「 !!?? 」」」」

 

 

 

 

 

 

 

その刹那__ナニカが、響いた。

 

オペレータールームにも届いた。

 

 

しかしそれはこのキヴォトスの大地からではない何処か遠くからの音だ。

 

 

そう感じてならない。

 

一体……何が、起きている??

 

 

 

 

「……おい、嘘だろ?そんな、ばかな!」

「どうした?…なっ!?なんだとぉ!?」

「何を見て……コレは!?そんな事は!」

 

 

一人が手元のモニターを見て驚き、またその隣も釣られるように手元のモニターを確認して同じように驚き、それは連鎖的になる。

 

 

 

「オイ!?なんだ!?次はなんだァ!?」

 

 

 

ジェネラルは叫ぶ。

 

驚きすくむ部下に、怒り露わする。

 

何かミスでも起こしたのか??

 

そう思いジェネラルは近くにいる解析班の押し除けてモニターに喰らいつく。

 

 

そして、己の目で確認する。

 

そこには…

 

 

 

 

 

「__ LOST……???」

 

 

 

 

 

ロスト……つまり、失う。

 

 

ジェネラルが見ている画面は衛星砲ノヴァの解析画面である。

 

それを解読するために多くの数字や英文などが刻まれている。

 

しかし、今見ている画面はどうだ??

 

画面中央には【LOST】の大きな四文字。

 

それだけしか刻まれていない。

 

 

「ジェ、ジェネラル、指揮官…」

 

 

 

恐る恐る、部下が口を開く。

 

ジェネラルはその言葉に備え…

 

 

 

「衛星砲ノヴァのアクセス権を喪失しました…」

 

 

「ッッッ!!???」

「!?」

 

 

ジェネラルとプレジデントは驚く。

 

いま、部下は何を言った?

何をほざいた??

 

衛星砲ノヴァのアクセス権が消えた??

コントロールを弾かれたのではなく??

 

そもそもの権利を失った??

 

ロストした…と、言うことか??

 

 

 

「ふ、復元しろ!!急げッッ!!」

 

「「「 !!! 」」」

 

 

 

ジェネラルの叫びに解析班は慌てふためきながらキーボードを叩き、アクセス権を復活させようとし、何度も何度も繋げ、時にはアナログにも電波を飛ばして拾おうとしてする。

 

 

 

 

しかし…

 

 

 

 

「繋がりませんっ!!」

「ダ、ダメです!!応答ありません!!」

「衛星砲ノヴァとの回線を捉えれません!」

 

 

「!!???」

 

「なんだ?これは、どう言う事だ??」

 

 

 

プロフェッショナル達は答える。

 

何一つ、繋がらないと。

 

そして更に、情報が舞い込んだ。

 

 

 

 

「指揮官っ!! コレを見てください!」

 

「ッ!?」

 

 

 

ああ、次はなんだ??

次は何が起きたんだ??

先程から一体なんだと言うんだ??!!

 

ジェネラルは苛立ちと焦りに挟まれる。

 

 

すると中央の大型モニターに映像流れる。

 

 

しばらくのノイズから、宇宙の映像。

 

それを拡大し、解像度を上げる。

 

そうして、とあるモノが映し出される。

 

 

それは……カイザーがよく知る兵器。

 

しかし、それは一見して…

 

 

 

「がら、くた?」

 

 

 

何か、砕けた後だ。

 

バラバラになっている。

 

 

すると一部の破片に『___VA』と刻まれた装甲らしきモノが映り込んだ。

 

 

ぶい、えー ??

 

それとも、ヴァー??

 

 

いや、ちがう。

 

これは何かの、綴りだ。

 

 

 

言うならば…

 

 

 

 

 

 

「__NOVA(ノヴァ)??」

 

 

 

 

 

 

 

 

アクセス権がロスト。

 

それからNOVAの破片。

 

また映し出されたのは何かの残骸。

 

 

それは一体なんなのか?

 

それは…

それは…

 

 

 

 

 

 

「衛星砲ノヴァ、なのか??」

 

 

 

 

 

ウィーーン!!

ウィーーン!!

 

 

▽▲▽▲WARNING▽▲▽▲

▽▲▽▲WARNING▽▲▽▲

 

 

 

 

 

 

「「「 !!??」」」

 

 

 

 

 

 

ウィーーン!!

ウィーーン!!

 

 

▽▲▽▲WARNING▽▲▽▲

▽▲▽▲WARNING▽▲▽▲

 

 

 

 

「!?」

「!?」

 

 

 

 

新たに入り込む情報。

 

それは鳴り響く警告音。

 

しかも最大レベルだ。

 

もう既にまとめ切れない量の情報がオペレータールームに襲いかかる。

 

 

 

「72区の駐屯地から入電!!」

 

 

 

オペレーターが騒がしく叫ぶ。

 

 

 

「シラトリ区の75区にある駐屯地にて突如現れた敵によって強襲に遭ったとの報告が!!更に半分が既に制圧されている、と…!!」

 

 

「な、なにッ!?」

「このタイミングで敵だと…??」

 

 

唐突な強襲者にジェネラルは驚き、またプレジデントはカイザーコーポレーションそのものに牙を剥く奴らがいることに驚く。

 

 

 

「オイ!?ど、どこの奴らだ!!」

 

 

「そ、それがっ!!」

 

 

 

入電を読み上げたオペレーターの声に全てのオートマタの視線が集まる。

 

 

もう、衛星砲だとか、LOSTだとか、アクセス権の喪失だとか、過去の神秘をキャッチしただとか、話はそれどころではない。

 

 

急な敵襲に意識が注がれている。

 

 

そしてオペレーターは入ってきた情報に対して信じられなさそうに震える。

 

それでも送られてきた情報を周りに共有しようと口を開き__その、敵は。

 

 

 

SRT特殊学園、です」

 

「「「 !!??? 」」」

 

 

と、答えた。

 

___今、何を言った??

 

報告として何を送られてきた??

 

敵襲??

 

それもSRT特殊学園??

 

飼い主を失った者達が自主的に動いた??

 

衛星砲ノヴァの存在を恐れずに??

 

奴らが、己らの判断で??

 

 

 

「ジェネラル指揮官!外部から謎の通信が!それも一般回線からです!」

 

 

「なに??」

 

 

 

畳み掛けるよう更に放り込まれる。

 

 

もう、なんだ??

一体、なんなのだ??

 

 

捌ききれない情報の数々。

 

だが、目に見える現実が全てである。

 

それを大人達は真実としてきた。

 

 

ジェネラルは「繋げろ…」と指示をする。

 

通信兵は指示通りに通信を繋げる。

 

 

 

そして…

 

とある声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『久しぶりだな、カイザー共』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

消えたはずの声が聞こえた。

 

 

正当化の色彩は__未だ健在である。

 

 

それは大人にとって裏返った現実だった。

 

 

 

 

 

 

つづく

 







オイオイオイオイ。
アイツら死んだわ。



それと明日(18:00)も更新する事にした
錠前サオリだ、よろしく頼む。
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