なんか俺のヘイロー砕けてね?   作:つヴぁるnet

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明日でこの小説も 1周年 ですね。
あっという間でしたね。へけっ。



第60話

 

 

 

雪が溶け、月に暮れ、冬を越し、年は明け、陽を感じ、春を迎え、芽が吹き、そして…

 

 

 

キヴォトスはいつも通りを約束される。

 

その引き金に、その銃口に。

 

子供の特権となる自由意志を込めて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダダダダッ!!

ドカーンッッ!!

 

 

 

 

「そっちに逃げた!」

 

「了解っ!このまま追跡します!!」

 

 

硝煙を散りばめ、火薬が頬を撫でる。

 

眩い春の陽気の中に、幾つかの発砲音。

 

普通なら穏やかとは真逆な騒ぎによってその銃撃に背を丸めてしまいそうだが、しかしキヴォトスならば日常聞こえる発砲音と爆発音は街中で囀る鳩達や雀達と変わらず、今日もキヴォトスは変わりない日々が約束されているんだと、寧ろこの銃声に安心感を抱ける。

 

 

標的から目を離さない。

 

今の自分は先駆者の誇りを着ているから。

 

それが許された身だから。果たす。

 

 

しかし……あぁ、なんて動きやすい制服か。

 

戦闘用として調整されているからか。

 

暗がりに押し込まれたあの世界で着せられた物とは段違いの着心地で、高い運動性。

 

 

そして、何より__

 

 

 

 

「閃光弾っ!投擲っ!!」

 

「「「 !? 」」」

 

 

 

もう息苦しくなんかない。

 

 

明日を知らず、昨日まで曇っていたガスマスクはもう顔に張り付いていない。

 

とある先駆者が背を示してくれたから。

 

だから、私はあの跡を追うようにいまココに立っているんだ。

 

 

 

 

ダダダダッ!!

ドカーンッッ!!

 

 

 

 

 

 

 

「「ばたんきゅぅ……」」

 

 

「制圧完了、損傷無しです」

 

 

地下世界で受けた厳しい訓練……よりも上質かつ本物の厳しい訓練を乗り越えたお陰でそこら辺の不良や雑兵にも負けず、一般の警察では対応しきれないような犯罪者が相手だろうと選ばれて着ているこの制服は今ある私に力を与えてくれる。故に悪から退くことはない。

 

しかしそれでも、まだ『あの人』のような頂きは彼方に遠いことを感じる。

 

 

 

私は、果たせているだろうか??

 

 

明日を___

 

迎えれているだろうか??

 

 

 

 

「RABBIT 1、良くやった」

 

「はい、先輩」

 

「……待て、先輩は無しだ。年齢は私の方が一つだけ上だが今は同じ学年扱いだろ?」

 

「!……し、失礼しました」

 

「あと敬語も無しだ。今はキミがこのRABBIT小隊のリーダーであり、私達の隊長なんだ。だから堂々としているんだ。頼んだぞ?期待のカルバノグの二代目」

 

「っ、わかりました、がんばります…」

 

 

それから犯罪者をヴァルキューレ警察学校の生徒に引き渡すと撤収指示を出し、私たちは日の当たる学園に戻る。

 

 

陽の当たる、学園__それは明日が真実であることを教えてくれた私達先駆者のルーツ。

 

 

その名は___SRT特殊学園

 

表世界を知った私が現在通っている学校だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「帰投しても、驕らずに訓練中?」

 

「っ、教官!!」

 

 

射撃訓練中、奥にあるダミーに対して夢中になっていたからか足音に気づけなかった。

 

私は銃口を下に向けて振り返る。

 

 

 

「すみません…!気づきませんでした!」

 

「こんな時まで敬礼はしなくて良いわよ」

 

「あ……ええと……はい、申し訳ありません」

 

「……ふふっ」

 

 

私の頭から生えた片翼なんかよりも、立派な両翼を背に生やした私達の教官は微笑む。

 

この学園のOG。訓練場の銃声を聞いて様子を見に来てくれたようだ。私は遅れて敬礼したことを謝罪すると教官は苦笑いしながら私の横に立って、ダミー奥にある月を眺める。

 

 

「肩の力抜きすぎるのはダメだけど、肩の力を入れすぎたままなのもダメ。日々の緊張感は何事も2割程度……って、あの人も言ってたわ」

 

「!……そうなんですか?」

 

 

教官の口から飛び出した『あの人』の言葉を聞いて私は頭の片翼を揺らし、反応する。

 

そんな私に教官は微笑んで話を続ける。

 

 

「ええ、当時の副隊長だったもの。だからよく聞かされた。そして、よーくその言葉通りにしてた姿を見てたわ」

 

「言葉通りの、姿?」

 

「そうね。例えばあの人のオフ中はエントランスにあるクッションにだらしなく埋もれながらお膝には看板猫を乗せ、その度に私はハーブティーを入れてあげると他の隊員も便乗するようにあの人の口元にみたらし団子やら、ロールケーキやら、寝たままでも食べやすいものを口元に差し出してあげると素直に食したりして、周りもあの人のオンオフを便乗するように楽しんでいたわ。それで機密主義であることも忘れて隊員が勝手にフォトショットに納めてはSNSに投稿したりと彼は学園の広告塔扱い。まさに文字通りのアイドルタイムだったわね、ふふっ」

 

 

思い出を楽しそうにコロコロと笑う。

 

教官の出身はトリニティ。貴族や華族で5割以上を占めている自治区の一般市民だ。

 

家名も無ければ、良血を引いてる訳でもない。

 

しかし教官は一般市民と思えないほど上品な方に見える。

 

天使のような白い翼を夜の月明かりに交えるからそれは綺麗に映るんだ。

 

しかしそんな教官も過去、副隊長としてこの学園を支え、何より低迷期を耐えてきた。

 

美しい天使の羽をボロボロにしながら、それでもSRTの冠名を崩さぬよう組織を守ってきた私の教官は、誇り高いこの学園の先人。

 

今はそれ含めて良き思い出だったと隊長は笑っている。苦楽を愛してるんだ。誇り高きこの人は。

 

 

 

「努力…してみます。あの人がそうしてきたのなら、私も…その、少しは余裕を持ってこの期待を明日に運べるように、頑張ります…」

 

「ええ、そうしてちょうだい。それ含めて学園生活を送れるのならあの人は喜んでくれる。それにまた様子見に来てくれるみたいよ。だから良い報告ができるように、貴方もこの学園で誇らしく、日々を送って欲しいわ」

 

「!!」

 

 

そう言って教官__

 

軽沢ウリエさんは手を振って去る。

 

そうしてまた一人訓練所に取り残された私は今日の終わりを示す月をしばらく眺め、それから訓練所を閉めて寮まで歩き出そうとして…

 

ふと、方向転換をする。

 

 

 

足を運んだ場所は寮の裏にある__湖。

 

先輩達の話によれば、あの人がいた頃は非常に盛んだった夜の延長線の場所。

 

しかし現在はこの場所も長く静かだ。

 

それでも当時はあの人を最初とし、続いて軽沢ウリエさんも足を運ぶと雪崩れるように次々と同期達が集まっては、この湖で訓練の延長戦だと建前にして子供らしく水遊びを楽しむ。

 

話によれば当時の総隊長だったあの人のヘイローを他者のヘイローに重ねることで水の上に浮くことが出来るようになり、その神秘を利用して訓練ができたとか、先輩達は懐かしげに話してくれる。

 

にわかに信じられないような話だ。

 

世間的にはその人の凄さを知っていても流石に水の上で二足立って浮くような話は信じられないだろう。

 

もうそれは神秘以上の話だから。

 

 

 

 

でも、私は違う。

 

 

あの神秘にどれほどの奇跡が込められているかを知っている。

 

実際にこの身に重ねられた。

 

そして宇宙の悪意から守ってくれたから。

 

その人の存在証明たらん大事な奇跡を灰にしてでも私達に明日を運んでくれた。

 

だからその神秘を誰よりも知っている。

 

私は忘れない。

 

二度と忘れない。

 

 

 

 

だから、だろうか。

 

その人と一緒の世代に生まれることが出来なかったことが悔やまれる。

 

正直、軽沢ウリエさんが羨ましい。

 

あとその他の先輩方。

 

特に___ FOX小隊の人達。

 

あの寡黙そうな七度ユキノ小隊長も普段固いその表情を緩めて思い出し楽しそうにしている。

 

恐らくコレが焼かれたという意味か。

 

 

 

けれどその人よりも後に生まれたからこそ私はその背を追える。

 

そう思えるならこれも幸せなんだろう。

 

 

 

「あと少しで、今日が終わる…」

 

 

 

真実を知らず、けれど何処かにある筈の真実を追いかけてきた。虚しに溺れず願ってきた私はその背中を追える喜びの日々を、この学園に導かれてからは良く感じている。

 

 

そして、そうしてくれた人がいる。

 

 

 

__自分の明日をたしかにしたいのなら誰かの明日を守れると、それがより素敵な奇跡かつ軌跡になる。選ばれてみるか?明日のために。

 

 

 

 

全ての騒動を終えその人はキヴォトスの救世主となり、世界の日常を取り戻するとそのまま待っている人達元の場所に帰り、明日の続きを始めるんだと思っていた。

 

 

 

けれど、その人は私達の元に来た。

 

裏返した責任だから。役割だから。

 

 

 

そして尋ねられた。

 

__明日から何がしたい?

 

 

 

私は応えた。

 

__何があるのか分からない。

 

 

 

そして問われた。

 

__なら閃光弾は好きかい?

 

 

 

私は傾げた。

 

__それは私に必要な明日ですか?

 

 

 

そして頷かれた。

 

__覚えてる限りだと君はそうだった。

 

 

 

私は問いた。

 

__それが貴方の既視感(わたし)なんですか??

 

 

 

そして答えられた。

 

__追憶(ぼく)の中で君はその後ろにいたから。

 

 

 

私は言った。

 

__その先に私の明日はありますか?

 

 

 

そして返された。

 

__望むならば箱舟が応えるよ。

 

 

 

 

質問と回答の応酬。

 

その時の私はどのような感情の中にいたか。

どのような目をしていたのか。

 

わかることは、真実を運んでくれたその人が教えてくれる言葉にこのファクターは刻まれた。

 

そうやって確立させてくれた。

 

私という存在はそうであっても、良いと。

 

だから真実を知ったばかりの弱々しい手でもその人の手を掴み、この場所に招かれた。

 

そして、今の私はRABBIT小隊の隊長。

 

先駆者の跡を追いかけている。

 

 

 

 

「……」

 

 

 

繰り返す。

 

私はここにいる。

 

もう昨日までに怯えていない。

 

明日を欲しがってたまらないから。

 

 

そして、それは……

 

 

腕章を握りしめながら消えていったリーダーのためでもあるから。

 

だから私は代わりに重ねられた明日(ヘイロー)に応えるため、またそれを確かとするために今日もこうして誰かの明日を守ってみる。

 

 

そうすれば、明日__!

明日が子供を迎えてくれるから…!

 

 

 

幾度なく響いて訴える。

 

それが当然なんだと教えてくれる。

 

これが生徒の特権なんだと示してくれる。

 

 

 

「私、頑張りたいです。貴方が選び、託し、許してくれたこの学園と部隊で。私が確かでありますようにと願ってくれた想いに応えれる。いつかはそんな貴方のように私はなりたい。そうなれるなら背を追いますから。どうか見守ってください」

 

 

 

私は跪き、奇跡を繰り返した湖に祈る。

 

 

それはある日まで、虚しさと暗がりに溺れた世界でも神々が愛したキリエのように。

 

私はアリウス自治区にいた頃を思い出しながら今あるこの奇跡と軌跡が昨日までに溺れない。

 

それが明日も確かでありますようにと。

 

 

 

 

 

 

 

ピピピッ

 

 

 

 

 

 

「?」

 

 

祈り終えたタイミングでポケットの中の携帯電話が揺れる。

 

最近やっと、使い慣れた電話機器だ。

それを取り出して、中身を確認する。

 

 

 

「!」

 

 

 

私は目を見開き、頭から生えた片翼が落ち着きを忘れて揺れている。

 

 

なにせ、そこには___

 

 

 

 

 

 

 

 

『5日後、当番として来れるか?』

 

 

 

 

 

 

 

本物の先駆者となった、先駆者(せんせい)

 

立場上ちょっとだけ意味が違うらしい。

 

でもこの学園(SRT)が存続している意味だ。

 

この人がその場所に居て、その人がその場所で子供には知らない責任を果たしてくれているからこの学園で私たちは選ばれた生徒であることを許されている。

 

 

 

「送信…」

 

 

 

当然、メッセージの答えはYESだ。

 

 

 

「……ッーーーー!!」

 

 

 

ああ、その日が待ち遠しい。

 

早く明日が繰り返されて欲しいんだ。

 

でもそれまでの明日を守り続けよう。

 

この身は、元アリウス分校の生徒。

 

そして今はSRT特殊学園の生徒。

 

 

私の名は ___ 守月スズミ

 

もう、虚しくなんかないんだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうも皆さん、お久しぶりです。

 

ご存知、月雪カナタ___

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

の、妹である 月雪ミヤコ です。

 

今年で中等部三年生になりました。

 

 

早いものですね。

時の流れというのは。

 

つい先日までキヴォトスは雪が降っていたそんな感覚ですが、もう新学期が始まり、外では桜が待っていたとばかりに咲いています。

 

私の通っている学園で飼育しているウサギさん達も春の陽気に当てられていつも眠たそうにしています。かわいいですね。

 

そして、そんなうさぎさん達を見ている私も外に出られるようになりました。

 

 

そう、あの日まで蝕んでいた苦しみ。

 

背筋に絡みつく大人の悪意。

 

宇宙から睨まれていたかのような恐怖。

 

まるで子供の存在を否定するかのようにそれは無慈悲に身体を刻む。

 

 

外が怖く、光が怖い。

 

そうやってキヴォトス全土、その20%の学園生徒達が私と同じ状態で苦しんでいた。

 

天使は恐怖し、失落を覚え始める。

 

 

しかしその元凶となる衛星砲が消滅した瞬間、それら不純物は最初からこの世に存在しなかったかのように取り払われると、苦しんでいたキヴォトス人はすっかりと気力を取り戻し、元気になりました。

 

あの日の苦しみが嘘かのように感じられる。

 

 

それからSRT特殊学園の活躍によって全てが終わり、怯えていた分を取り戻すように奇跡が到来したクリスマスから、救われた喜びのまま年が明けると今日にかけてキヴォトスの生徒達は街道に落ちた桜を踏み分けながら新学期を謳歌する。

 

ただそうして元気になり過ぎた頃には静まっていた犯罪率はまた元気な頃を取り戻し、至る所で銃声の音がよく響くようになる。

 

そうしてヤンチャが過ぎる生徒を取り締まろうとヴァルキューレ警察学校の生徒達はまた日々忙しく治安維持に勤しむ。

 

これこそが銃社会のキヴォトスだと示すように今は毎日が賑やかです。

 

 

 

「おはよう、ミヤコ」

 

「おはようございます、サキ」

 

 

通学路で挨拶を交わし、私の横に並んで歩き出すのは私と同じ学園に通う、空井サキ。

 

キヴォトスで唯一、私の兄の死を疑い、まだ生きていると信じていた人。

 

あのような光を目の当たりにしても尚、サキはキヴォトスの禁忌()を否定し続けていた。

 

そんな彼女に私は励まされ続けた。

 

 

 

「しかしミヤコも私も今年最後の三年生か。来年になったら高等部なんだよな」

 

「はい。時の流れは早いですね」

 

「はぁ…まったく。昨年は半期ほど空白にされた感じだったからな。最後くらいはちゃんとした学生生活を送りたい」

 

「そうですね。去年はあんなことが起きてしまい普通の学生生活どころでは無かったですね。サキにはご迷惑をお掛けしました」

 

「別に気にする必要は無いぞ。だってミヤコ以外にも同じような奴は何人か居たからな。これでも毎日四件ぐらいは休学中の生徒の家を回っては宿題を届けていたんだ。だからミヤコくらいついでさ。気にするなよ」

 

「そうですか。でもありがとうございます。サキが来てくれて嬉しかったです」

 

「……まぁ、なんだ。ミヤコも元気になって良かったな。あと…ミヤコの兄さんも生きててさ…」

 

「ええ……本当に…」

 

 

本当に、去年は色々とあった。

 

忘れることができないキヴォトスの歴史。

 

未だ、ニュースに取り上げられている。

 

その中でも、騒動の解決に乗り出したとある学園の話が多く取り上げられている。

 

連邦生徒会長が亡くなっても尚、己らの正義に従って悪を砕いた、今や注目を集める学園。

 

 

 

「SRT特殊学園、か…」

 

「サキ?」

 

「…なぁミヤコ、私さ。中等部を卒業したら進学先としてSRTに行こうと思うんだ」

 

「!」

 

 

 

選ばれた者達によって構成された学園。

 

それがSRT特殊学園。

 

 

と、言っても厳密には連邦生徒会長に選別されてスカウトされる。だから選ばれた者達。

 

これに関しては兄さんから聞いた。

 

しかし現在は本物の連邦生徒会長が居ない状態であり、選別はされていない。

 

ではどのようにしてSRT特殊学園は生徒を選んでいるのか?

 

 

「ミヤコも知っていると思うけど、今のSRT特殊学園は連邦生徒会の代行期間(レコンキスタ)中に応募すれば入れる事になっている。テレビでも広告されているな。ただしあのSRTだけあって進学率は極めて狭い。当然だな」

 

 

クリスマスの奇跡を終えてから呼ばれることになった代行期間(レコンキスタ)

 

レコンキスタとは【失地回復】を意味する。

 

こう呼ばれるようになったのは現在、連邦生徒会は不在の生徒会長を『代行』という形で進められているからだ。

 

次の適正者が見つかるまでの、代行。

 

 

現在の代行者は『七神リン』と言う連邦生徒会の行政官が務めている。兄さん曰く「彼女は状況把握能力が高いから傷だらけの連邦生徒会を修復するにピッタリだな」と評価していた。

 

ただ同時に「俺ならやりたくない」と苦笑いしていたが、代行者の七神リンさんは「留年しても良いから連邦生徒会長になってほしい」など無茶苦茶言ってたらしい。当然兄さんは断りました。

 

 

 

でも、その代わりにです。

 

 

多大なる成果と戦果を残してきた兄さんは連邦生徒会を支えれる特別な立場に就くと、今もキヴォトスの正常化のために連邦生徒会を手助けしている状態です。

 

なのでそう言った意味では兄さんは学生を卒業しても尚SRTのような特務的立ち位置で連邦生徒会のために力を尽くしている。

 

ただし当時の連邦生徒会長によって付与された権限のもと超法規的機関としてあらゆる場面が許され、故にフットワークが軽過ぎるため連邦生徒会からは良いように使われているらしい。前なんかSRTとゲヘナの秘境まで赴くとマグマの中にいた変形するすごくかっこいいと船と牽制し合ったとか言っていました。なんのことだろうか?ともかく今も兄さんは連邦生徒会のために尽力していますがレコンキスタ中は大変忙しく少し寝不足気味らしい。やはり大人って大変なんですね。本当にお疲れ様です。でも無理しないでほしいです。

 

 

なので。

 

 

私は兄を愛する妹として癒さないとダメですなんです。なので兄さん。また私を当番に呼んでください。眠りの質が上がるように私は喜んで抱き枕代わりになりますから。なのでまた一緒に寝ましょう。もちろん眠るまで添い寝して私が兄さんの頭をよく頑張りましたとヨシヨシしてあげます。もちろん私の頭も少しだけで良いのでヨシヨシしてください。ついでにお腹もポンポンと撫でてくれると喜びます。半年間とても寂しかったです。冷たくて苦しかった。だからまた一緒に兄妹として寝たいです。久しぶりに一緒に眠れてとても幸せでしたから。なのでケモ耳ばかりに構わないでください。ケモ耳が好きなのはわかります。私もケモ耳は素敵なモノだと思います。モフることでストレス解消になることはわかります。百鬼夜行に行った理由もケモ耳でなのを覚えています。今もケモ耳が好きなことは知ってます。だから任務のためだろうと兄さんのために喜んで駆り出される兄さんの後輩(FOX)さん達はいつもキリッとしていますがケモ耳をモフられる時はまんざらでもなか嬉しそうにしてだらしなくなっているところを何度か見ています。兄さんのケモ耳好きは中等部の頃から変わらない。変化が無いと言うのはある意味安心です。だから私は兄さんが変わりないことに喜びます。ああしかしですね兄さん。私はうさぎではないですが女性の身体は男性よりも体温が高いです。そして私はまだ小さい子供ですから柔らかくて今も抱き心地が良いんです。そして私達は兄妹同士です。なので遠慮しないでください。また当番に呼んでください。そうじゃなくても私から遊びに行ったりもしますから。そしてお仕事が終わったらまた一緒に内食でも外食どちらでも構わないのでご飯を食べに行きましょう。それで落ち着いたタイミングで兄さんのお膝に頭を置いてナデナデと兄妹としてスキンシップします。寝る時間になったら兄妹として一緒に床に転がって兄さんにギュッしてもらいます。そうやって冷える夜の中で兄さんの温度と私の温度を重ねながら私は兄さんの腕の中で抱きしめられて、私も兄さんの抱き枕代わりになって、そうやって僅かな時間でも兄妹としてまた一緒にです。そうですまた一緒に。兄さんと一緒にまた一緒に兄さんと一緒に。

 

 

 

 

 

「ミヤコ?ミヤコ??おいミヤコ???」

 

 

「_____ はい?」

 

 

「な、なんかちょっと怖いぞ、お前…」

 

 

「??」

 

 

 

偉大なる兄さんの素晴らしい話はなんぼあっても良いですが、今はサキの言ってたSRT特殊学園の話に戻します。

 

 

代行期間=失地回復を意味して『レコンキスタ』と呼ばれている連邦生徒会。その組織下にあるSRT特殊学園はどのようにして生徒会長の抜擢を無しに生徒を確保しているのか?

 

 

特に難しい話はありません。

 

純粋に応募をしているだけです。

 

ただし、とても厳しい試験を受けてそれを通過しなければなりません。

 

そのため入学希望もそう多くない。

 

あの学園はそれほどに敷居が高い。

 

 

 

「だが私は絶対にSRTに入ってみせるぞ!規律があり、正義があり、身も心も育つ素晴らしい学園なんだ。私はあの場所に憧れているからな!」

 

「サキなら入れます。頑張ってください」

 

「!!、ああ、そうか……そういや、今のミヤコは進学先の希望がSRTじゃないんだったな」

 

「はい。もちろん前までならサキと同じようにSRT特殊学園を目指していたと思います。SRTに入ることで兄さんがこれまで刻んできた軌跡をこの眼で確かめる未来もありました。ですが私はある日を得てSRTが兄さんの全てだという考えは無くなった…」

 

 

 

 

 

 

__君の兄はさ。こんな私を英雄と言ってくれたんだ。英雄はあの人なのにね。でもそれを誇らしさにしてくれた。だからあの人は私の偉大なる先駆者。しかし知ってる通りにその背は果てしなくて追いつきそうに無い。なのに一緒に頑張ろうと言ってくれてね、それで抹茶ラテで乾いた心を潤してくれた。本当に困った人だよね。あんな風に意味を差し出されたらさ、英雄と扱ってくれたあの先駆者を追いかけなければ小鳥遊ホシノは誇れなくなる。だから私は届くかわからない先駆者に憧れるんだ。うへへ。

 

 

 

血だらけになっていた私の腕に包帯を巻きながら小さな英雄はそう言った。

 

小柄な身体に対して、ずっしりと背負った大きなシールドと、反動が大きそうなショットガンは印象深い。

 

だがそれ以上に彼方先にある大きな背を追いかけようとする小さな背に私は大きさを感じた。

 

小鳥遊ホシノって先駆者を知った。

 

 

それからしばらくして、私は兄さんと共にとある自治区をこの眼で見に行った。

 

 

どこも、砂まみれなアビドス自治区。

 

インフラが生きている街は全土の9%程度。

 

生きているとは言い難い場所だった。

 

けれど…

 

 

 

__俺はこの自治区で息を吹き返した。常に冷たい砂が身体中を打ち付ける残酷な場所だけど俺は暖かな熱に拾われた。砂粒のように小さな奇跡の中で月雪カナタは明日を繋げた。だからこの場所を愛おしく感じるよ。出来るならこの学園で卒業したいと思うくらいにはね。

 

 

 

それから兄さんを助けた人達に出会った。

 

たった二人の生徒会。

たった二人だけの生命線。

 

けれどアビドスの生徒会長はとても優しく素敵な人で、そして私を助けてくれたアビドス生徒会の副会長はとても強い人だ。この二人に私の兄さんは助けられて、また兄さんもアビドスの二人を助けた。

 

 

話を聞いたんだ。

 

奇跡を起こした、と。

 

 

だから奇跡を愛しているんだと。

 

それが砂粒一つ程度の巡り合いだとしても愛おしい。

 

私にとって愛さずにいられない奇跡の出会いなんだと、生徒会長は笑っている。

 

 

それがアビドス自治区にいる生徒達。

 

兄さんと共にいた素敵な先駆者達。

 

 

 

 

ここだ。

 

ここ、なんだ。

 

私は、この場所を知りたい。

 

兄さんが織りなしてきた追憶と、その兄さんと共に夢見てきた先人の世界を私は知りたい。

 

大きな栄光に満たされたSRTではなく。

 

小さな奇跡に愛されたアビドスの場所を。

 

月雪ミヤコはこの場所を【解】として覚えた。

 

だから…

 

 

 

 

「私はアビドス高等学校に進学します」

 

 

 

サキは立ち止まって目を見開き、私は数歩だけ前を歩いた後に振り返って堂々とする。

 

今は砂によって過去の栄光にされてきた学園だけど私はそれでも構わない。

 

 

知りたいんだ。妹の私は。

 

そして追いかけたいんだ。

 

先人を、英雄を、兄さんを。

 

砂粒一つに込められた夢の跡地を。

 

 

 

 

「そっか。それがミヤコの選択か」

 

「はい」

 

 

 

サキは笑みんで尊重する。

 

私も、笑みんで頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかしどこもかしこも新店で沢山だな。やはりカイザーコーポレーションの解体が大きく響いてるみたいだな。未だそこら中がテナントだらけだ」

 

「カイザーコンビニエンスのように比較的優良な企業はセイント・ネフティス社が吸収したみたいですが、それ以外は跡形もなく抹消されてますね」

 

「ふん。残当だな。アレだけ世間を圧迫してはヤバいことやったんだ。もしまだ何処かにカイザーの企業が残っているのならそれこそ連邦生徒会のお粗末さを疑うね。悪は滅びるべきだな」

 

「ええ。全く……その通りですね」

 

 

カイザーコーポレーションという冠名はキヴォトスから完全に消滅した。

 

世間に対しての多大なる損害と、劣悪極まった侵略行為、何より連邦生徒会に対しての敵対行為かつSRTに対しての戦闘行為は紛れもなく淘汰される側にあった。当然の始末。

 

そしていつの間にカイザーコーポレーションの首脳がブラックマーケットで抹殺されていた。

 

罪すらも償わせず、その命で支払わせることがカイザーに対する世間の答えなんだろう。

 

ただ兄さんは「俺の手で始末するべきだった」と誰かに煩わせたことをやや悔やんでいた。

 

 

 

「ミヤコがアビドスに行くって話で思い出したんだけどさ、今のアビドスってたしか…」

 

「借金の事ですよね?」

 

「ああ、そうだ。基本的には企業が無くなっても借金は空中分解することはない。普通なら債権が他の者に移るだけアビドスは借金をしたままになるはず。やはり変わりないんだよな?」

 

「はい。アビドスは今も変わらず返済状態にあります。ですが兄さん曰く、今のアビドスは借金が無いに等しいらしいです」

 

「…え?それは、どういうことだ??」

 

「結論からすれば、現在の債権者はアビドス自治区と共同体にあるセイントネフティス社だからですね。しかも債務整理を行った結果として9割が免除された状態で債権が市場に売られることなく移ったので借金自体もかなり減りました」

 

「は?待て待て。そんなリスケがあり得るのか?」

 

「兄さん曰くかなりレアケースですね。でも連邦生徒会からすれば生徒会長を……殺害した組織としての扱いなのでアビドスの間に割って入って連邦生徒会が債務整理に乗り出し、結果としてカイザーに多額の損害賠償の支払いを要求した。つまり逆にカイザーコーポレーションが周りに支払う羽目になったんです」

 

「なるほど……いや。でも待てよ?アビドスはアビドスだとしてだ。その損害賠償自体はアビドスに対しての請求じゃなく連邦生徒会近周りに対する話になるよな?主にシラトリ区とかに対しての…」

 

「……兄さんが、生徒会なんですよ」

 

「?」

 

「兄さんは()()()()()()()()として登録されているんですよ」

 

「え?…はぁぁ!?待て待て!それこそ待ってくれ!お前の兄さんはSRT特殊学園の兵士だろ!?な、何故そうなるんだ!?」

 

「実は兄さん、アビドス生徒会の公式の元で生徒会として登録扱いされているんですよ。それで凡ゆる状況が重なりました。兄さんはSRT特殊学園の総隊長かつ広告塔であり、また兄さんはアビドス生徒会の関係者であり、そして兄さんは連邦生徒会長の認可の元で超法規的機関として活動するために()()()()()()()()()である。ダブルパンチところかトリプルパンチです」

 

 

 

つまり。

 

 

 

「カイザーコーポレーションは私の兄さん__

 月雪カナタを殺そうとし、

 同時に連邦生徒会長を殺した犯罪組織。

 それがキヴォトスにとってどれほどの大罪であるかはもう言わずがな、アビドスにも直接的な外傷問題を加えたことになる。アビドス関連は後出しに近い形ですが、しかし列車砲とかの話を加えれば理由は幾らでも紐付けれると兄さんは言ってました。なのでどう足掻いてもカイザーは月雪カナタに手を出した時点で終わっていたんです」

 

「……カイザー詰んでるじゃねーか」

 

 

まぁ、私も兄さんから聞いただけで詳しい内部事情はよく分かっていませんが、でもカイザーコーポレーションが絶対悪に変わりなく、制裁を喰らう側なのは確か。

 

なのでSRT特殊学園が武力介入したことでカイザーコーポレーションは連邦生徒会が主体で解体することになり、兄さんと生徒会長の人的喪失を損害額に計上した結果としてアビドス自治区に対する借金額の大幅な取り消しとして処置される。

 

またアビドスから買い取った土地などの保有権も連邦生徒会はカイザーコーポレーション解体と同時に取り上げると、月雪カナタを通してSRT特殊学園、つまり連邦生徒会と直接的な協力関係にあったセイントネフティス社に丸投げする形で譲渡した。

 

協力関係を結んでいる証拠としても兄さんが持っていた最上級クラスの金色のゴールデンクレジットカードに月雪カナタの名義が刻まれていました。いつの間にそんなカードを??

 

ちなみにそのクレジットカードは作戦終了後もそのまま貰ったみたいで、しかも常識的範囲ならカード支払いの際にセイントネフティス社が20%を負担するので是非使ってくださいと言って兄さんに渡したようです。

 

いや兄さん??

 

いつの間に大企業からそんなすごいカード貰ったんですか??調べる限りだとそのカードは発行だけで何千万と掛かるんですが……

 

 

 

「お前の兄さん、やばいな……戦後処理のための根回しも完璧というか……」

 

「兄さんは頭が良いんです。元々はトリニティ総合学院(中学校)の主席入学者として選ばれるくらいには……まぁでも、本当に凄いのはそれだけの人脈と関係の恵まれやすさですね」

 

「……人たらしはプラス要素なんだな」

 

「素敵ですよね、私の兄さん」

 

「……それでもアビドスの借金は残っているには変わりないんだよな?」

 

「はい。あと2400万ですね」

 

「ず、随分と減ったな……いや、全額の免除は流石に無かったか」

 

「違いますよ。わざと残したんです。債権を確実にセイントネフティス社に渡すために。土地の問題もあるので負債を形に変換させる流れにしたんです。私的整理にしてはかなり強引な手法で非合法だと兄さんから聞きましたが…」

 

「だろうな。無茶苦茶だもん。本来なら連邦生徒会を主体とせずもっと銀行などの金融機関の仲介が必要だ。金が関わっている訳だし。まぁでも……うん、そうだな。世間的に見ればカイザーに対する同情は微塵も無いに尽きる。結果としてハッピーエンドになったのなら私からとやかく言う事はないな。それは周りも同じだろうし」

 

「はい」

 

 

セイントネフティス社は昔からアビドス自治区に土着してきた企業。

 

そして土地の権利者となっていたカイザーコーポレーションが消滅したこと土地の適切な管理者として連邦生徒会はセイントネフティス社に保有権の確保を言い渡し、そのまま保持することになった。

 

そうなるとアビドス自治区はセイントネフティス社が借入相手として変更される。

 

 

これが後にどう影響するのか?

 

 

結論からして、アビドス自治区の復興を願っている者同士が手を結んだため実質的に借金の概念は薄れたと言える状態。

 

もちろん借金は残っている状態なので引き続き新たな債権者となったセイントネフティス社に返済することになっていますが、でも利息を高く設定して弱者から搾り取ろうとするカイザーコーポレーションが相手より全然マシな相手なんでしょう。

 

だからアビドス自治区は非常に肩の荷が軽い状態で返済に乗り出せる。

 

しかもネフティス社は利息無しでの学園に返済を求めています。なのでアビドス自治区は順調に返済が進むでしょう。

 

 

ちなみに返済目処は既に付いてるようです。

 

 

どうやら兄さんが潜伏中にアビドス生徒会と掘り起こしたレアアースが高く売れるだとか。

 

しかもそのレアアースは衛星砲を消し飛ばした列車砲シェマタと言われる要塞兵器と同じエンジンを作るために必要な鋼材のようです。

 

なのでセイントネフティス社はアビドス生徒会から採掘して頂けるなら高く買い取り、それを返済宛にするとして協力関係に。

 

 

あと列車砲シェマタの保有権はエデン条約を結ぶまでの2年間なら軍事目的としなければアビドスが保有しても問題無いとゲヘナから認められています。

 

どうやら数年後に行われるエデン条約とやらのためにゲヘナは慎重に動く必要があるからです。

 

もしゲヘナが列車砲シェマタの破壊処置のために動員し、移動要塞に接触する事は結果としてトリニティを刺激しかねない。

 

なのでエデン条約の外交問題を終えるその日まではアビドスに一時的な管理者としてワンクッション挟ませることで列車砲シェマタの問題は先送りできる。

 

なので「2年間保有してね」との事。

 

列車砲シェマタを欲しがっていたセイントネフティス社も技術だけでも吸収できるならそれは大儲けだとし、その2年間の保有を了承。そんなわけで現在はアビドス自治区が列車砲シェマタの管理者として生徒会の谷という場所に保管している状態です。

 

 

ただ、もし、列車砲シェマタの技術を用いて他自治区を脅かしかねない兵器生産を行った場合はSRT特殊学園から危険対象として武力介入を受けることになり、同時に万魔殿から非常に強力な圧力を受けることになってしまう。

 

 

それはアビドスはゲヘナとの抗争状態に発展することを意味する。

 

なので保有権が渡ったからと言ってセイントネフティス社は列車砲シェマタの扱いに気をつけなければなりません。

 

まあ、セイントネフティス社も軍事的運用目的はさらさら無いみたいなので安心ですね。

 

 

なのでアビドス生徒会は返済目的のためにレアアースの採掘を計画している状態。

 

もし順調に進めば数年後には借金も無くなっているとのこと。

 

 

 

「…」

 

 

私も来年にはアビドスに向かいます。

 

アビドスの一員として自治区を支えます。

 

そして、この身で追憶をなぞる。

 

 

琥珀色が残した証を。

奇跡があったその場所を。

そこにいる先駆者と共に明日を。

月雪カナタという偉大な先駆者の道跡を。

 

 

___月雪ミヤコが追う。

 

 

それがこの箱舟のストーリーテラー。

 

わたしだけの、IF(もしも)のアーカイブ。

 

 

 

 

 

 

ピロン。

 

 

 

 

 

「?」

 

 

ポケット中にある携帯電話が一瞬揺れる。

 

一通のメッセージが届いたようだ。

 

私は慣れた手つきで画面を開く。

 

そこには…

 

 

 

 

 

 

『ミヤコ、久しぶり。カナタだ。

 やっと仕事の目処が付いたところだ。

 今日の夕方にはシラトリ区に戻れる。

 もし時間が合えば夜一緒に外食しよう。

 あと明日の学園が休みなら、泊ま__

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 秒で返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

約束の『箱庭』と聞いて何を思い浮かべるか。

 

【箱舟】ならば分かる。

このキヴォトスのことを指す。

己ら観測者は、そう認識している。

 

 

しかし『箱庭』はこのキヴォトスではない。

 

箱庭は浮いて漂うことはないから。

 

 

なら世界を意味して箱庭はどれを指すのか?

 

例えるなら…色彩の光を観測できたことにより片道切符を覚悟で超えて来た『とある少女』の世界の事だろう。

 

灰色染まりのテラーワールド。

 

未だ覚えている。

 

三流の芸術家と跨いだもう一つの二回目の場所。

 

色を取り戻したブルアカ宣言を見ていた。

 

 

 

しかし、そこではないんだ。

 

約束の『箱庭』とはあの世界ではない。

 

 

もっと、小さなところにいる。

 

そしてそれは誰も知り得ない場所だ。

 

 

厳密にはその者が『子供』である限りは触れること叶わない資格者の果て。

 

強いて言うならば「責任の意味を知る者」のみ許された証というべきか。

 

そこは確かに『箱庭』だった。

 

 

俺は知っている。

 

それが何処にあるかを理解している。

 

何故なら、経験したことがあるから。

 

それこそ先ほど語ったテラーワールドにてそれは経験した。

 

 

そして同時にこの世界達が『リセマラ』によって生まれたよくありげな二回目で構成された数多ある世界であることを、箱庭の管理者と言葉交わしたことで再認識した。

 

 

やはり自分は「責任を知る者」なんだ。

 

 

だから観測者として扱われた。

 

黄昏の邂逅にて定められた、本質。

 

それがこの身体に投じられた役割。

 

役割の意味を知っている責任者の選択。

 

だから告げられた__この魂は色彩。

 

 

天使の恐怖を捉え、到来して裏返した。

 

砕け散った後に、成り代わった意味。

 

砕け散ったからこそ、新たなる始まり。

 

だからこの存在は幾度なくそうであることを受け入れ、それを幾度なく証明してきた。

 

 

故に__何度も紡いできた。

 

この二度目はもう砕け散らんとして。

 

 

 

___月雪カナタは健在であると。

 

 

 

 

だから。

 

 

 

 

 

「責任を果たしに来たぞ」

 

 

 

卒業証書が封筒された長筒を握りしめたまま俺はまっすぐと連邦生徒会の心臓としても扱われる、とある縦長い建物まで向かった。そこで連邦生徒会長の代行者としてレコンキスタを行っている七神リン行政官と待ち合わせた。

 

 

そのまま建物の地下施設に向かい、案内された部屋の階段を降りる。

 

するとテーブルの上に無防備に置いてある一つのタブレットが目についた。

 

それがなんなのかすぐに把握した。

 

俺は行政官の七神リンからタブレットを受け取ると画面に指を触れる。

 

 

七神リンはパスワードを知らない。

 

 

だが、俺は知っている。

 

 

そもそも、パスワードは必要無い。

 

 

必要なのは、これを扱う『資格者』のみ。

 

 

そして、それは【俺】で無条件なんだ。

 

 

それを___ 彼女が設定しているから。

 

 

 

 

 

_

__

___

__

_

 

 

 

 

 

ザァァ…

ザァァ…

 

 

 

 

意識が、吸い込まれる。

意識が、奥に誘われる。

 

 

しかし夢現に浮かない。

 

目の前ははっきりとしているから。

 

 

 

 

ザァァ…

ザァァ…

 

 

 

 

漣の音が奥から聞こえる。

 

久しい香りが歓迎するように包み込む。

 

約1年ぶりの感覚だろう。

 

あの時は知らずに招かれたが、しかし今は理解してこの場に訪れた。

 

 

そして今は学生を卒業した身。

 

もう外装に偽りなく、それすらも資格者として扱えるように月雪カナタは卒業を果たした。

 

 

足裏に水が浸る。

 

透明感溢れている。

 

ただし人をダメにするクッションは無い。

 

変わりにほんのりといちごミルクの香り。

 

だから確信する。間違いない。

 

 

 

 

「……やはり…」

 

 

 

 

やはり___ は待っていた。

 

 

 

 

 

A.R.O.N.A……待たせたな」

 

 

 

 

その小さな背中を俺は捉えた。

 

この箱庭の管理者だ。

 

こちらに背を向けたまま外を眺めている。

 

 

 

 

「待ちましたよ、先駆者(せんせい)

 

 

 

 

すると背を向けたまま俺の声に応え、浮かばせいるヘイローが緑色に変わり、丸みのあるハートマークに変形する。まるで意思を持って自由に動く俺のヘイローのようだ。

 

 

 

 

「寝て、待っていても良かったんだぞ」

 

 

 

 

なんてことなく、翌る日のままの調子で言葉を投げ入れる。例えるなら百鬼夜行の花火大会を眺めている時のように。あの時を色褪せぬように思い出して。

 

 

 

 

「寝飽きました。だから外を眺めて貴方を待っていました。もしかしたら花火が刹那に上がるかもしれないと思いましたから」

 

 

 

 

俺の思考をなぞるように応える。さてこんなところから花火は見えるとは到底思えないが。なのであの刻を思い出しながら俺はいつかした話の内容を掘り起こす。

 

 

 

 

「それは理想的な話だ。外はこんなにも明るくて眩いと言うのに。花は火に弾けないぞ」

 

 

 

 

残念ながら花火職人はこの箱庭にいない。だから思い出の中でしか弾けない。だからそれは理想でしかないと意地悪にも裏返してみた。

 

 

 

 

「でも一発だけ視れましたよ。宇宙の彼方から落ちてきた悪意に砕け散らんとする現実主義な花火職人の正当化を…」

 

 

 

 

頭の上に浮かぶ三つの錆色のヘイローがその時を思いますように揺れる。同時に重ねられた手の甲もあの瞬間を繰り返すようにほんのりと熱を灯す。奇跡はキヴォトスで起きたことを忘れさせないように。

 

 

 

 

「なら、その花火は__どんな色だった?」

 

 

 

 

ちゃぷ、ちゃぷ、と、歩み寄る。

 

近づくにつれ、頬が柔らかく撫でる。

 

教室の中に招かれる祝福の風のように。

 

 

 

 

色彩(いろどり)に満ちた、琥珀色(あなた)でした」

 

 

 

 

そう言って、管理者は振り返る。

 

 

 

 

「!」

 

 

 

 

それはもう、あの花火が愛おしくて仕方なかったかのように管理者は笑っている。

 

 

 

ああ……

 

ああ、懐かしい。

 

ほんとうに、懐かしく感じる。

 

初めて……

 

初めて、彼女と出会った日のようだ。

 

 

 

「ふふっ」

 

 

 

その表情が、目の前にある。

 

今も変わらない、あの日のままだ。

 

彼女はあの日まま、その眼で視ている。

 

今日まで案内が続いた、始発点のままだ。

 

 

 

 

「カナタくん。案内をありがとう」

 

 

 

 

百鬼夜行の池の上を思い出す。

 

あの日の案内が、俺たちの始まり。

 

 

 

そして…

 

 

__今日この瞬間までたどり着いた。

 

 

 

 

「ああ。どういたしまして、アロ__」

 

 

 

 

 

いや、ちがう。

 

少しだけ違うな。

 

俺が知っている、この彼女を表すなら。

 

与えられた【名前】を紡ぐなら、ば。

 

 

 

 

 

「また案内してやるからな、__白鳥

 

 

「!!!」

 

 

 

 

俺だって、あの日のまま、に。

 

朗らかに笑って、彼女を案内しよう。

 

あの日と変わらない。

 

それが俺たちの【あまねく始発点】ならば。

 

この軌跡は間違いないから。

 

 

 

 

「うんっ……うん!!」

 

 

 

 

そうして、今だけ管理者であると忘れた彼女は教室の水を蹴りながらこちらに飛びつく。

 

俺はそんな彼女を受け止めようとして手を広げると、教室に琥珀色の光が刺す。

 

一瞬だけ目が眩み、ほんの僅かに視界が奪われてしまう。

 

しかし、すぐに視界を取り戻す。

 

 

 

そして。

 

 

 

俺と同じくらいの身長の女性を受け止めた。

 

何故なら。

 

彼女はこの瞬間だけ、白鳥だから。

 

俺だけが知る__ 軌跡の始発点なんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 約束の箱庭にて約束は果たされる。

 

 そして新たに約束を果たそうとする。

 

 シッテムの箱は琥珀色に輝く。

 

 色褪せない、正当化の色彩として。

 

 それは子供のために……到来したから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 









とりあえず次回で"一旦"完結に扱いします。
本編の『その後』のことはまた考えます。
そういう訳でよろしく。1年間ありがとう。




Q _ つまり借金はどういう意味だってばよ??

アビドス生徒会として登録しているカナタ君に危害加えたのでカイザーのお前らはアビドス高等学校に多額の賠償金払ってね!あ、それとカナタ君はSRT特殊学園や連邦生徒会にとって重要人物なのは言わずもがな、人的損害を与えたとしてコチラにも賠償払ってもらうからね!…え??SRTと戦争後に色々ありすぎて払えない??じゃあカナタ君がアビドス生徒会の人間だからアビドス高等学校に課した負債を削る形で任意整理しようか^^

ってこと。

で、そのあとセイントネフティス社に「私達はレコンキスタで忙しいのであとはよろしく」って色々削った後に丸投げした。


本当は弁済状況や債務等の事細かな整理が必要なんだけど透明感溢れる銃社会のキヴォトスがコチラの常識で動いてる訳ないので作者は考えるのをやめた。へけっ。

※これはフィクションです。



明日(20:00)(確定)の更新を待て。
じゃあな。
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