こんな作品がランキング30位だって!?
作者が俗物なのがバレてしまうではないか!
百鬼夜行に来て一年半が経過した。
一年以上も「住めば都」かな。
それでも都会慣れしてる者からしたら百鬼夜行はやや過ごしづらいかもしれない。ここはミレニアムのような最先端技術は抱えておらず、周りよりも二歩か三歩ほどハイテクから置いていかれている環境だ。一応、地下鉄とかバスのような交通関連のインフラは整っているが、それ以上は求められない。
でもそれが悪いことだとは思わない。
食べ慣れた団子や、飲み慣れたお茶など、人の手で造らなければ味わえないものばかりこの百鬼夜行には存在する。だからこの風流も好きなものには心地よく、生まれも育ちも一貫してこの百鬼夜行で骨を埋める者も多い。
そう言った魅力はある。
ココはそういうところだ。
まあそれでも百鬼夜行自治区の一角には木造建築とは正反対な近代的な住まいが普通に多く建っている。防犯セキュリティはもちろん、Wi-Fiも完備されたマンションもズラリと建っているわけで、俺を『主人殿』と慕う久田イズナも学生らしいマンションに住んでいる。
ちなみに俺もそれ系のマンション住まいなのだが、なんの偶然か知らないが実はイズナと同じマンションである。そのため休日は隙あらばイズナから「忍者の修行を付けてください!」と朝から突撃してくる。朝から耳に響くわ。
「ふにゃぁぁ……うへへ、あるじぃどにょぉ…」
「相変わらず、ケモ耳で蕩けてるのね」
「モフるべき位置は大体把握したからな。秒で落とすのは簡単だよ。ナグサもやってみるか?」
「ううん、遠慮しておくわ……逆なら良かったんだけどね…」
「カナター、ゲームばかりしても暇やけんなんかで遊ばん?」
「じゃあラギアクルスごっこでもするか。たしか現在の物語は第6章だっけ?そろそろクライマックスだな」
「えー、まだそれ続編あったん?第5章辺りでナバルデウスの罪が暴かれたんだからもう終わりやないの?」
「いや甘いな。実はこの事件には第三者としてオストガロアが餌の対象であるナバルデウスを裏で操っていたとの話なんだぜ。第4章にあった不用意なエリアチェンジは第6章に対する伏線回収なんだ。あと第3章のロアルロドスの証言も交えて証拠は残っている。だからラギアクルスが許される日はまだ来ないし犯人はラギアクルスに変わりないのでナバルデウスは被害者だな」
「もうラギアクルスが獰猛化とかいうクソモンスになりそうで
「てかまだ続いてたんだ…」
「ふにゃぁぁ……ごろごろ……ありゅじどにょぉ……そこぉとてもいいでぇふぅ……ごろごろ…」
「コイツ実はキツネじゃなくてネコでは?」
「ネコかな?ネコかも……うん!ヨシ!」
「えぇ…」
エアコンで快適に涼む、俺の部屋。
ベッドに腰掛けた俺と、絶賛モフられ中のイズナもベッドに転がっており、足元のクッションにナグサがちょこんと座っていて、カーペットの上で胡座をかきながらコントローラーを握って格ゲー中のアヤメ。冷蔵庫から取り出した冷たい緑茶が四人分をテーブルに用意している。
「って!この人強くないん!?UZQueenってヤツのコンボから抜け出せんけど!?」
「ああその人フレンドだな。格ゲーに関しては俺なんかよりも強いし、それもめちゃくちゃ上手いから。なんだったら俺よりも年下らしい」
「あ!え?あ!?あっ!ああああ!!?」
「アヤメちゃんが壊れ始めてる…」
「またこうやって一人のプレイヤーが破壊されるんやな。対人ゲーの定めよ」
「むにゃ……むにゃ……すぅ…すぅ…」
「…あれ?寝ちゃった?」
「エアコン快適すぎたかもな」
「そう?出かけられなくなるね」
「外は暑いよ。今日はもう外に出たくねぇ」
「だぁぁぁあ!!負けたぁぁあ!!あと動いてないのに暑いんよ!!」
「白熱してたな。で?またコンテニューか?」
「もう一回っ!もう一回やから!」
「アヤメちゃん…」
「放っておけ。落ち着く頃には夕方になって日差しもマシになってるはずだし、そのタイミングで外に出れば良い」
「カナタ兄様はどこか行くところがあるの?」
「明後日は百鬼夜行の花火大会だろ?ココらの自治体が土手に大型のブルーシートを敷く予定なんだけど、石ころとか転がってると踏んだ時とか危ないし、あと草刈りの必要もあるんだよね。それらを撤去するためのボランティアに参加するんだよ。今日は熱中症の危険性高いから遅めの夕方に開始して、2時間ほど作業することになってる」
「そうなんだ」
「お前らも暇だろ?来いよ。参加したら終わりに団子の引換券貰えるみたいだから」
「うん。わかった」
「すぅ……すぅ……」
「じゃあそれまでに一回は勝たんとな!」
「UZQueenには勝てないから諦めてマッチし直せよ。てかそれゲストデータじゃなくて俺のデータだろアヤメ。あまり負けるとレート落ちるからランクマッチに参加しすぎるな。フリーマッチに行けフリーマッチに」
「わかったけん後一回だけやらしてぇ!次は勝てるけんさぁ!」
「アヤメちゃん…」
聞かん坊のアヤメは格ゲーの画面に釘付け。
ナグサは特に何もせず見てるだけ暇してるだろう…と、思ってたけどゲームは見てる方が楽しいタイプみたいだから気にしては無い。イズナも観察癖が強いのかゲームは見てる方が好きなタイプとして斜め後ろである。
そのため俺の家に集まっても基本俺とアヤメがゲーム操作を行なっている。しかし学生の頃を思い出して懐かしい気分だな。俺も前世の学生時代はこんな感じに集まっていた。キヴォトスでも変わらずまた繰り返せるとは想像出来なかった。ただし今回は女友達である。
いや、仕方ないやん。
キヴォトスの生徒女性しかおらんのよ。
俺が特殊すぎるだけ。
一応、人間じゃなければ犬とかロボットとか同年齢(?)の男性はいるんだけど、でもそれはまた別枠の学び所に集められているため当然人間の枠組みに当てはめられた俺は無縁である。そのため男友達なんていない。そう考えるとこぢんまりとした寺子屋は良い環境だな。
「カナタ兄様」
「んー?どした?」
「花火大会の日はカナタ兄様はどのようにお過ごしですか?」
「俺か?適当に屋台巡りしながら花火でも見るつもりだよ。ナグサは…アヤメとか?相変わらず仲良いなお前ら」
「うん。今年はアヤメちゃんのお家で花火を見る予定。そうなるとカナタ兄様は……」
「ああ、俺のことは気にするな。花火大会で屋台出してくる町の人達もいるだろうから顔でも出しながら適当に過ごすさ。それに女の子二人の間に割って入る勇気は俺に無いよ。だからいつも通り二人で楽しめ」
「そう?なら……うん、わかった…」
「………あー、ナグサ…」
「?」
「今年の秋祭りは去年みたい回ろうな」
「!!……っ、うん!」
余っている手を伸ばし、彼女の頭に手を置く。
思わず妹をあやすように彼女の頭を撫でてしまうが上機嫌になってくれたので、今回は正解にしておこう。
膝下の寝息と、目の前で繰り広げられるゲーム音を交え、しばらく寛いでいた。
♢
百鬼夜行は何かしら理由を付けては月一頻度で開催するほどにお祭り大好きな場所だ。
しかし開かれる祭りの規模は基本的にかなり大きく、開催経費の規模が度が過ぎているため俺はこれを
そして今日は花火大会。
普段祭りに参加しないであろう人も花火の音と花火の光景は強制参加。
これが夏の風物詩である。
「やはりそうなんですね!やはり貴方は外から招かれた心なんですね!」
「何その…宇宙の心はヒイロだったんですね!感は?てか百鬼夜行にいるとなんでこうも見透かせる人と出会うん?前も大和撫子に憧れる小娘に『貴方は…貴方?』って見抜かれそうになったし。いやぁ、たまげたなぁ…」
「キヴォトスとは、神秘の箱庭ですから」
「おうおう。その感じだとアンタも
「いえ。私はそんな大層な者ではないですよ。敷かれた行先にある成功と
「ならなんで俺がイレギュラーだってわかる?」
「今通っている学園もですが、そこに敷かれた意味を探り、解を求める事が私ですから」
「何それトロッコ問題か?気難しいことなら他所でやりな。なにせ今日は花火大会だ。打ち上げる以外に答えはないね」
さて、急で申し訳ないがなんか俺のファン(?)らしき人が花火大会にいた。
ぼっちな俺は適当に屋台巡ろうと歩いていただけで、焼きとうもろこしの香りと、はしゃぐケモ耳に釣られていた。
そんな煩悩塗れを払い飛ばすように後ろからチョンチョンと肩を叩かれたので正気になり、後ろに振り向いたらそこにはお目目キラッキラ女の子がいた。その女の子は傘の形をした銃剣を両手に握りしめ、こちらを覗き見る目は水色の髪で隠れているが、それでも眩しい視線が俺を突き刺していた。なんか怖かったわ…
そりゃ頭の砕け散ったヘイローは珍しいかもしれないけど、でもそうじゃない注目線。
それは『俺』を見てるようだった。
そして…
__貴方は、もしかして……歯車??
これだけで全ての意味が詰まっていたから、俺に何を告げ、何を問いてるのかすぐに理解できた。
そしたらあとはご覧通り。この女の子に対して隠し事が無駄だと分かったので色々と単純な会話と質問をほんの数分だけ交わして、いまココである。
「俺は『俺』が月雪カナタであることを隠すつもりはないが、しかしできればこんな日にソレを問われたくなかったな」
「そ、それは…!ご、ごめんなさい。その…あまりにも神秘が本当に神秘的でしたから釣られてしまいまして、えへへ…」
「……ただの不思議ちゃんでも無さそうだな。まあ良い。これも自由意志が尊重されるキヴォトスだからって理由にしておくよ。それで?俺に釣られた事が副産物なら、本来の目的は……ああ、花火大会のために百鬼夜行までやってきた観光客ってところか?ならようこそ、百鬼夜行に。歓迎しよう」
「!!、はい、ありがとうございます」
イズナみたいにコロコロとよく表情が変わる子だな。それと悪意は感じられない。
確かに月雪カナタを正当化する『俺』を暴いてくれたのはかなり驚いたけど、でもクズノハで慣れちまったからそれ以上の戸惑いはない。
これもキヴォトスだからで理由を済ませられるからだろう。やはり慣れって怖いな。
とりあえずこの娘は本当にただ不思議ちゃんが過ぎてるだけで無害なことがわかる。
え?何故分かるって?
……わかるんだよ。
子供は……まあ、よく相手してるからな。
「来客用に用意されたブルーシートはあっちの土手にある。無料だから利用してくれ。そんじゃあ俺は行くよ」
「はい」
俺は手を振って不思議ちゃんと別れる。
人混みを掻き分け、時折すれ違うケモ耳を目の保養にする。
コツコツと下駄の音、水風船の音。
まだ花火は打ち上がってない。
それでもこの賑わい。
流石お祭り好きの百鬼夜行。
「……」
「……」
後ろから着いてくる。
え?なんで?
「あ、もしかして実は宗教の方だったりする??」
「え…??……えええええ!?いやいやいやいや、違うよ!?な、な、なんでぇ!?」
「いやだって真っ直ぐコッチに来たし、あと百鬼夜行の来訪者だし、不思議ちゃんが過ぎるし」
「え、あ、えと、そりゃ、その、ひ、否定はできないけれど…」
「何より……めちゃくちゃ怪しいし」
「はう!?………ひぃん…」
急に切り返されるとは思わなかったらしくワタワタと手を慌てさせ、水色の髪で隠れた下から涙目が見える。表情コロコロ豊かだ。やっぱイズナみたいでなんか面白いな。
「…百鬼夜行の案内が必要か?」
「!」
「今年の花火大会は適当にぶらつく感じで過ごすつもりだからな。急な予定には困らない」
「そ、そうなの?…なら、お願いしようかな?しても…良い?」
「良いよ。任された。じゃあ…ココに来たのならまずは食い物を堪能しないとな」
「!」
「着いてこい。俺のお気に入りの店が出しているだろう屋台がここら辺にある筈だ」
「っ〜!うん!」
不思議ちゃんはパァと表情を明るくさせ、銃剣を握りしめながら付いてくる。
さて今から俺一人じゃなくなったので、付き添いを配慮して人混みを掻き分け過ぎない程度に足を進ませて屋台を案内するかな。
「何があるかな?」
「色々あるぞ。定番のモノから百鬼夜行でしか味わえないモノまでな。しかも学生証があるなら半額以下で売ってくれるぞ。なにせここの大人達は子供が好きだからな」
「そうなんだ、良いところなんだね」
「今の大人達も子供の頃は、当時の大人達にそうやって学生時代を応援して貰っていたらしいからな。巡り巡っての素敵な移り変わりだ」
「うん、そうだね」
俺も学生証はある。
だから安めに買っている。
たまに定価で買おうとすると「学生が遠慮なんかするんじゃねぇべさ」と逆に叱られる。
なので食関連では懐事情に優しい。
あとケモ耳もいる。
百鬼夜行はそんな場所だ。
ここ選んで正解過ぎたわ。
「そういや……君の名前、聞いてないな」
「!」
不思議ちゃんなだけで名前は聞いてない。
すると俺の質問に対して少し驚き、どこか困ったように笑っていた。
すると目隠れてた視線が何か捉えたのか一度目を閉ざし、スッと呼吸して答える。
「はい!私の名は
「嘘つけ。いまそこの屋台に飾ってある白の折鶴を見て決めただろ」
「ひぃん…!」
「不思議に不審者を重ねんな。ますます怪しいじゃねぇかよ…」
「あ、あははは……で、でも!似たような名前なので無問題です!…よ?」
「…」
まあ、キヴォトスだから?……って感じに脳死でスルーするには少し難しくなってきた。
俺は僅かに目を細めてしまう。
そんな彼女は困ったように笑い、そして悲しそうに、また申し訳なさそうに、表情が崩れようとする。
すると…
空が赤く鮮明に弾ける。花火だ。
「見て見てー!」
「おお!花火だ!」
「始まったか!」
「すげー!今年も気合い入ってんなぁ!」
色とりどりの瞬く火花の芸術。そのため周りの人達は一斉に百鬼夜行の夜空に注目する。目を奪われる。楽しい時間が始まったか。
「…君は今日、お忍びで来ているって事にする」
「え?」
「なに。百鬼夜行では良くある話だ。ここは華族が多いからな。偽名の一つや二つは対して珍しくない。だからココで語る名は『白鳥』だ。今はそれで良い」
「!」
まあ、特段深く聞く必要もない。
されど、ここはキヴォトスだ。
理解し難いことは幾らでもある。
この砕け散ったヘイローだって同じ。
多く語らなければ明かされない理由がある。
でも…
__お団子は結局、お団子だ。
そう言ってくれた人がいて、受け入れてくれた人達がいる。なら俺もそうしてくれた側として彼女の理由を受け入れる。だから彼女の名前は白鳥。それで良い。
「案内を続けよう。良い場所がある」
「あ、うん…!」
彼女__白鳥は水色の髪を揺らしながら後ろからついてくる。花火大会はまだ始まったばかりだ。少し急げば40分くらいは花火を眺めてられるだろう。目についた屋台から周り、持ち運びやすい食べ物を購入する。そしたら…
「よぉ、カナタか!お前さん一人か?」
「黒柴大将、こんばんは。てか今年は店出してたのか。あと質問に答えるなら今日は付き人として護衛してるところだ。なのでボッチじゃない」
「おおっとそうか。…ほほーん?ナグサちゃんがいるのに
「ええー??なんでそこでナグサぁ?あと後ろの彼女とは別にそうじゃないが…ああ、そっか。コレって事にしといたらオマケがあった感じの流れだったか。なるほど。惜しい事したな」
「バカやろう。そうじゃなくてもオマケしといたるよ。ほらいつものセットだ。特別に二人分だから楽しめ」
「さすが大将、イケ柴」
「てやんでー、子供が遠慮なんかするな」
団子の詰め合わせをもらう。
うん、美味しそうだ。
これだけで朝昼晩行けるわ。
ケモ耳もあったらめっちゃ進む。
「あ、ありがとうございます!」
「おう。百鬼夜行を楽しんでけよ、嬢ちゃん」
いつもご贔屓してる黒柴大将からお団子を購入すると土手から離れ、町中を歩く。
浴衣姿の住人達は花火が良く見える土手の方に向かい、下駄のコツコツとした音がよく響く。
「えへへ、私が百鬼夜行の外から来たの分かっていたみたいですね」
「俺が知ってる中で黒柴大将は大人の中の大人だよ。人も団子も良く見ている。だから美味いんだよ。口も、味もな」
そして目的地に到着。
通い慣れた場所だ。
建物の入り口には入らず、建物外を回る。
そして空けている__庭にやってきた。
「カナタくん、ココは?」
「俺が通う寺子屋だ。先生がアルバイトで庭師だったから寺子屋の庭は結構綺麗なんだよ。とりあえず倉庫から蚊取り線香持ってくるから白鳥は食べ物広げてて」
足元のレンガをひっくり返すと倉庫の鍵が顔を出す。それを拾い上げて倉庫を開け、使いかけの蚊取り線香とマッチ、寺子屋の鍵を持って白鳥の元に向かう。既にお団子を頬張っていた。
「寺子屋から緑茶淹れてくるのに、お団子は待てなかったのか?」
「実はお腹空いてまして…えへへ」
「そうかい」
「あっ、キッチンを教えてくれたら私が淹れてくるよ?」
「気にするな。それにお茶は俺が淹れると美味い。そこで待ってろ。あ、暇なら蚊取り線香点火してくれ」
「うん、わかった。あ、もし機会があったら次は私がコーヒー淹れてあげるね!私ってこう見えても美味しいコーヒー淹れるのは得意なんだよ!好きなのはいちごミルクだけど!」
へー、コーヒー淹れるの得意なのか。
それは楽しみだ。
なにせ美味しいコーヒーを淹れるってのは、20年先の人生設計図を作るのと同等のレベルで難しいと言われてるからな。
それで美味いと自慢できるなら周りから太鼓判押されてる証拠だろう。それがコーヒーなら尚更だ。ま、その日が来るかわからないが、もし有るなら普通に楽しみである。
「カナタくん。今日ありがとうね。突然声かけちゃって失敗したかなって…」
「そりゃ急なのは驚いたが、でも俺は少なからず理解できる側に居るし、コレもキヴォトスの日常なんだろうと受け入れるさ。それに…」
「?」
「わざわざ偽名を使ってまで百鬼夜行まで来てくれたんだ。案内の一つや二つくらいするさ」
「!!……えへへ〜、カナタくん優しいね」
「過去に町の人達がそうしてくれた。大人も子供も関係なくそうしてくれた。だから俺もこの百鬼夜行にいる限りは助けてくれた人達のようにそうするだけ。ここはとても良いところだ。知ってもらうに素晴らしい」
「うん。とても良い雰囲気だね。もし転校先に迷ってたら百鬼夜行でも良かったかもね」
「だろ?…そういや白鳥はどこから来たんだ?」
「私?私はそうだね……うーん…電車、かな?」
「はい?」
そしてドテカイ花火が放たれる。
耳を劈くような音、身すら震わせる。
それ程に注ぎ込まれたお祭り魂。
コレが百鬼夜行だ!とばかりに光が表す。
「今年もすげーな」
「私、初めて見たかな。コレ程なんだって」
「百鬼夜行はお祭りで手を抜かないからな。ほれライブ配信だ。視聴数は軽く7桁超えてる」
「おお?」
『すげー!』
『やばいデカさだなコレ!』
『今年もやってんねぇ!』
『やっぱ祭りは百鬼よ!』
『すげぇ!すげぇ!』
『デカくね?マジでデカくね?』
『億単位使ってそうなイベで草』
『あはは!風邪で行けないのむりむり〜』
『ほんとやばいね。綺麗だな』
『さすがだぁ(恍惚)』
『ロールケーキの食べ過ぎですよ』
『画面越しでも迫力あるなぁ』
『百鬼は一味違うよな。羨ましい』
『ゲヘナならいつでも爆発が見られるぞ!』
『ゲヘナは自重しろ。マジで』
『クックック……素晴らしい光景ですね』
『粉砕!玉砕!大喝采!』
『マジで喝采の嵐なんだよなぁ』
『あと1時間この調子ってマ?』
『めっちゃ金掛かってんな』
『やりますねぇ!』
『んあー!花火がデカすぎます!』
『やめなって!』
『キ淫恥事』
『今年もすごいな百鬼』
『いやー、行けば良かったな』
『現地民でーす!めっちゃ客いるぞー!』
『人混みやべーな』
『屋台の数半端ないわ』
『あかん、人酔いする!』
『めちゃくちゃ綺麗だな花火』
『今から行って間に合うか?』
『ブルーシート敷かれてる!超助かる!』
『ゆっくりしてねー』
『ちくわ大明神』
『これ見ると夏だなーって感じやね』
『わかる。本格的に始まった感あるわ』
『誰だ今の』
「やっぱり、いつも通りコメントが読みきれないレベルで雪崩れてくれてるな。公式のサーバー落ちないよな?」
「す、すごいね」
動画を閉じて視線を空に弾ける花火に。
土手から少し離れた場所だが静かに眺めるにはちょうど良いスポット。
ちなみに去年はナグサとアヤメと三人で綿飴をたべながら神社の石階段で座って眺めていたら寺子屋の先生もたまたまやってきて、それで焼きそばを奢って貰った思い出。しかしまたこうして学生生活を送れるなんて思わなかった。
……来年は妹のミヤコでも誘うか。
百鬼夜行は歩き慣れたからしっかりとエスコートできる筈。
「カナタくん」
「?」
「花火はさ、職人の手によって描かれた物語だって考えたことはある?」
「物語?…作品って言い方ならわかるが」
「うん。そうだよね。綺麗に打ち上げるための作品なのは間違いないよ。そして作品にも無数に存在する。でも、それを点火すれば一瞬にして全ては行先が……終着点が同じになる」
「…」
彼女の言葉に耳を傾けながら湯呑みに手をつけて喉に流し込む。
茶葉の香りと蚊取り線香の香り。
それから焼きそばの香ばしい香り。
ほんのりと隣から甘い香りもする。
多分それはみたらし団子のせいだ。
俺はお団子を手に取って口に放り込む。
花火はまだ続き、彼女も続ける。
「心に残る記憶は花火の一つ一つじゃなくて開かれた『大会』に対しての記憶です。手掛けた職人は一つ一つを覚えても、そうじゃない観測者は全てが等しいモノとして写る。でもそれは仕方ないこと。大事なのはその日味わえた光景。花火の形なんて全て覚えきれない」
「……楽しい花火大会なのに随分と悲しいことを言うんだな白鳥。もしかして悲観主義者か?」
「あははは……どうかな?あ、ううん。そうじゃないよね。ごめんね。せっかくこうして私を招いてくれたのに」
「…」
不思議ちゃん属性なのは訳ありだとしても、それでも白鳥に変なところはある。
でも、だからこそ、それ相応に揺らされて生きて来たんだと俺は理解できる。
前任者だって歪なヘイローを抱えて世間に揺らされてきた。そして選んだ先が自壊だ。
訳ありなんて言葉を超えた結末であるが、でもナニカを抱える者ほど何かに追い立てられている証拠だ。そうでなければ人は正常から外れることは早々無い。
そしてそれは今の俺のことでもあるんだ。
なら答えられるとしたら…
「花火大会も、ある意味悲しいと思うよ」
「…え?」
「楽しみに対しての終わりを感じやすいから」
「!」
団子の串を皿に置く。
花火は飛んで、弾けて、消える。
すると次が弾けて、また消えた。
刻々と、ソレは迫る。
「花火はいいイベントだ。見てる間は楽しい。でも無限には続かないことは誰も知ってる。打ち上げられる毎に刻々と迫る。そうやって時間が経つことに『まだ終わらないで欲しい』って悲観的な考えならば誰にでもある」
「…そうなのかな」
「でも花火大会の終着点はそうじゃなくて…」
「?」
「また同じモノを見るために『終える』を受け入れるんだよ。で、繰り返す」
「!!」
「終着点があるなら【始発点】もある証。さっき言った『電車』だってそうだろ?終点があっても始発はあるんだから、それで終わりだなんて人は思わない。繰り返せると知ってるからそれを当然のように受け入れてる。花火大会も同じことが言えて、参加者は『また来年』を言えるように終えるんだよ。そして年越してさ、また夏に花火見た時に『あれ?この花火前も見たな』って思い出せるかもだろ?」
「それは……」
「一発一発が全てがオンリーワンに終える打ち上げ花火がさ、まったく同じ火力で、まったく同じ造形で、まったく同じ工程で、まったく同じ閃光で、何もかも全てがまったく同じモノで打ち上げられるなんて、そんなの天文学的な確率なんだろうよ。数字が存在する限り同数を繰り返せるなんて絶対に存在しない」
「……」
「でも『アレは同じだったかも』くらいの寄り添いは可能なんだから、それを楽観主義として傾かせれば、少なくとも…痛くはない」
「!」
「何もかもを奇跡として当て嵌めるには、人間はあまりにも正直者だからそれは限りなく無理だけど、でも可能な限りを繰り返せた先で『奇跡が起きた!』と言えるなら、それは間違いなく終着点で閉じることは無いはずだ」
だって…
ああ、だって…
だって、それが…
「この『
「!!」
「俺は月雪カナタの
「ぁ……」
それが月雪カナタの始まり。
「あまねく奇跡の始発点…」
彼女は____そう呟く。
「私は、敷かれた先に『解』を求めます」
彼女は___そう紡ぐ。
「それが終着点でも、始発点になるなら…」
彼女は___そう語る。
「
彼女は『悲観主義者』じゃない。
もしそうなら彼女は花火を見ない。
彼女は『現実主義者』だ。
ここを箱舟と認識し、俺を視た。
そして『悲観主義者』にならない。
その隠れ目でしかと、花火を目で追う。
彼女は『楽観主義者』に描ける。
悲観主義に傾くことを抗うから。
「カナタくん」
「なんだい?」
「トロッコ問題を知ってますよね?」
「ああ。知ってるよ」
「貴方は、どれを『失敗』としますか?」
「…」
急な話題展開だ。
まさか中等部の口からそれが出るとは。
でも彼女は真剣そのものだ。
俺は応える。
「失敗は定義によるものとする。でも犠牲が大前提で言うなら俺は一人だけを犠牲にする」
「…」
「多く残ったと現実主義に当て嵌めよう」
「……はい。それも答えのひとつに__」
「しかし!それを月雪カナタに問うのなら…!!」
「!?」
「もしレバーを何度も引いて良いとするならば俺は前輪が出たタイミングでレバーを戻し、後輪を別のルートに流す事で強引にトロッコ止めてやるだろうな!」
「ッ!!!???」
「なぜなら月雪カナタは【
そして、特段デカイ花火が打ち上がる。
俺は思わず「おお!」と声をこぼす。
寺子屋からでも良くわかる大きさだ。
やはり百鬼夜行のお祭りは違うな。
「ああ___この人が『正解』なんですね…」
その呟きは花火にかき消されたから。
…
……
………
……
…
「コーヒーご馳走様。とても美味しかったよ」
そう言って彼は部屋を出ようとする。
今日は非番故か腕章は巻いていない。
それでもプライベートだろうと時間を作って顔を出しに来てくれる彼に、私は強い安心感を覚える。砕け散ったヘイローさえも今は彼の強力な神秘の一つとして濁らせる。むしろそれが彼にとって正常であるかのように表していた。
「RABBITの隊長さん」
「?」
「次は緑茶を淹れてくださいね」
「なら、団子が必要……ああ、もしくはニコのお稲荷でも持ってくるか」
「それは良いですね。とても美味しかったのでまた食べたいと思ってました」
「なら頼んでおくか」
アレからそれなりの時間は経過した。
彼はココに居て、私に敷かれた行先のためにその神秘で照らし続ける。
時にはレールのレバーを切り替えて成功に導こうとする。とても頼りになる人だ。
もし私があの時、白鳥の偽名を名乗らずに彼の案内を受けていなかったらコーヒーのカップは二つ分あっただろうか?
同じく湯呑みも二つあっただろうか?
恐らく彼はあのまま百鬼夜行連合学園の調停委員会の一人として先導していただろう。
そんな彼も応援できる。
あの人はどこまで彼方先まで行くから。
でも、私は少しだけ困る。
なぜなら…
「じゃあまたくるよ___白鳥」
「ええ、また来てくださいね」
未だ私は『白鳥』という偽名だからまだ彼の案内を受け続けれている。
もし偽名を晴らしてしまえば、もう白鳥を案内することもない。
故に__真名を名乗ることは、未だに無い。
「……はぁ…」
私は困ったように笑う。
規格外な神秘は常に正解を照らす。
たまに失敗を見逃して、ミスをする。
でもその度に終着点を始発点に変える。
それができるんだ、私達は。
そしてまた正解に辿り着ける。
お陰で私は『超人』として扱われる。
「白鳥か……うーん。あの時、もう少し可愛らしい名前で偽名を名乗れば、それで呼んでくれたかもしれない。そこだけは後悔かもしれませんね」
____私のミスでした。
ほんの僅かな、悲観主義。
でも良き想い出になる軌跡の一端。
いまを思い馳せる、現実主義。
この時だからこそ終着点をピリオドにしない。
だからこれは間違いなく、楽観主義。
また花火を見られるようにいつか…
本当の名前で案内される日を選ぼう。
私だけの【成功】として、電車の光景から…
いつか、きっと…
それは彼女の
つづく
とりあえず『白鳥』にした。
生徒会は鳥の名前多いから雰囲気で決めた。
しかし連邦生徒会長の名はいつ明かされるんだろうね??真名とか含めてどんなバックボーンなのかすっごい気になるけどまずはユメ先輩がお先ですね。どうせ生きてんだろ??メインストーリーのアビドス3章はよぉ!過去おじ気になって夜しか眠れねぇんだよ!
セイアセイアセイアセイアセイアセイアセイアセイア!!!
セイアセイアセイアセイアセイア……ァ(寿命)
また来週の土日更新でな!
あばよ!