東方執事録   作:ゆず1252

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見切り発進でござんす。



第1話

 

「起きてくださいお嬢様。朝食の準備が出来ました。」

 

「ん〜…後5分。」

 

「はぁ…それを言って起きた試しは無いでしょう。日光浴びせますよ?」

 

そう言いながら執事は主であろう者を抱き上げようとする。

 

「ちょちょ!溶けちゃう!溶けちゃうから!!」

 

それを見て本気という事を理解し止めに入る主。

 

「い、一応私は主よね?主をいきなり殺そうとする執事が何処にいるのよ!?」

 

「ふむ…ここにおりますが?」

 

「知ってるわよ!!」

 

「そう朝から荒れないで下さい。疲れちゃいますよ?」

 

「ぐぬぬ…!誰のせいだと…!」

 

「フフフ…冗談です。お召し物はこちらにございますので…お一人で出来ますか?」

 

「貴方そろそろ怒るわよ。まぁもし貴方が淑女たる私の身体を見たいと言うのであれば、それに乗ってあげなくも無いわよ?」

 

その言葉に「ふむ」と考え込む執事。

 

「い、いや冗談よ?そんな考え込まないで欲しいのだけれど?」

 

「あ、そうなんですね。即答でYESと言うつもりだったんですが、後で咲夜に怒られるかな?と思って悩んでたんですよ。」

 

「即答すんな!!」

 

そう言って執事に向かって枕を投げつけるが、ひらりと避けられる。

 

「フフフ、すいません。朝から調子に乗り過ぎましたね。」

 

「ホントよ、もう。何もしてないのにどっと疲れたわ。」

 

「では朝食の後に疲労回復に聞くというハーブティをお出ししましょう。」

 

「何でそういう所の気遣いは完璧なのよ…。」

 

そう言いながら執事は主の部屋から退出しようと歩みを進める。そして入口手前で踵を返す。

 

「ではお嬢様、失礼いたします。」

 

「ちょっと…さっきから気になってたけど、何でそんなに堅苦しい感じなのよ。」

 

「気分…ですかね。変でした?」

 

「違和感が凄いわ…。止めてちょうだい。」

 

「一応執事と主って立場なんだけどね…。コレでいいかな?」

 

「ええ、そうじゃないと困るもの。」

 

その言葉を聞いて執事は何の事だか分からない顔をする。

 

「まぁいいわ。改めておはよう咲斗。」

 

「何がいいのか分からないけど、とりあえずおはようレミィ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、お嬢様は起きたの?」

 

「ん、何とかね。」

 

皆が集まる食堂に向かう咲斗の前に、メイド服を着た銀髪の少女が居た。

 

「それにしても珍しいね。咲夜が寝坊だなんて。」

 

「う、うるさいわね。間に合ったんだから良いじゃない。」

 

「ははは、今日の朝は気温も丁度良かったからね。寝るには最高のコンディションだった訳だ。」

 

「あんまり茶化すと刺すわよ…。」

 

「ご、ごめんなさい。」

 

メイド長の咲夜を茶化していると、我慢の限界だったのか顔を赤くしながらナイフを突きつけてきた。

 

「お!お2人共おはようございます!って何やってるんですか…?」

 

その空気をぶち壊すかのように明るい声で挨拶しに来た人物がいた。

 

「や、おはよう美鈴。良い所に来てくれた!」

 

「咲斗さん…あんまり咲夜さんをイジメちゃダメですよ?」

 

「ホントよ。すぐ人を小馬鹿にしてくるんだから。」

 

「何で僕が普段からイジメてる前提で話を進めてるのかな?」

 

そう談笑しながら食堂へ向かう3人。食堂前まで来たところで咲斗が口を開く。

 

「さて、僕は飲み物を準備して来るよ。皆には先に食べてて良いよって伝えといてくれる?」

 

そう言ってキッチンの方へ向かう咲斗。

 

「パチェとレミィ、咲夜、美鈴は紅茶、小悪魔はコーヒー、フランはオレンジジュースで良いか。僕のは…フランと同じのにしよ。」

 

そう言って慣れた手際で準備を終わらせる咲斗だが、ピタリと手が止まる。

 

「ん…誰か知らない奴がいる。けど敵意は無いのかな?とりあえず紅茶を多めに持って行くか。」

 

そう言って恐らく重い空気が漂っているであろう食堂に歩みを進める咲斗。

 

 

 

 

 

 

 

「失礼いたします。」

 

「あら、執事さんも居たのね。」

 

「いらっしゃいませ、お客様。突然の御来訪だった為準備が出来ておらず申し訳ございません。」

 

「ふふふ、不思議ね。ここの人達は私を見た瞬間殺意で出迎えてくれたと言うのに…貴方は随分と丁寧な対応をしてくれるのね?」

 

そこに居たのは女性。恐らく妖怪の中でも上位の存在。だが咲斗は自身の役割を理解しているため、敵対の対応を取らなかった。

 

「アポ無しというのは少々礼儀知らずな所がある様ですが…それでもお客様ですから、それ相応の対応をさせていただきます。どうぞお掛けください。」

 

そう言ってテーブル上にそれぞれ飲み物を用意する。

 

「ホント不思議執事さんだこと。ねぇ、良かったら私の下に来てくれないかしら?」

 

その言葉を聞いた瞬間、食堂は殺意に満ちた。

 

「聞き間違いである事を願うわ。今、なんて言ったのかしら?」

 

レミリアがそう告げるが、言葉の節々に重みを感じる。

その状況に妖怪の後ろに控えていた、恐らく従者が主人を守ろうと前へ出る。

 

「ハイハイストップ。」

 

手をパンパンと叩きながら止めに入る咲斗。

 

「皆の反応は嬉しいけど、すぐカッとならない。お客様も余り悪ふざけはなさらないでください。」

 

そう言って場を収める咲斗だが、皆それぞれ次同じ事があれば即座に殺す事が出来るように準備していた。

 

「フランも…そんな怖い顔しないの。」

 

「でも、アイツお兄様の事…。」

 

「ありがとう。でも今は抑えてね?後で遊んであげるから。」

 

その言葉を聞いて少しばかり怒りを収めるフランドール・スカーレット。

 

「はぁ…それでお前は何の用だ?断りもなく土足で入り込み、私の従者が作ってくれた朝食も冷めてしまった。余程の理由出ない限り死ぬと思え。」

 

そう話を始めるレミリア。言葉じりで察する通り、かなりご機嫌斜めの様子。それを見て何が起こっても対処できるように咲夜と咲斗は主人の後ろに着く。

 

「今回の用件は1つ。貴方達をある世界に招待したいの。」

「ある世界?」

 

「その前に改めて自己紹介をしておくわね。私は八雲紫、そしてコレは藍、私の式神よ。」

 

「紅魔館の主レミリア・スカーレット。で八雲紫とやら、ある世界とは何だ?」

 

「それは…」

 

そうしてある世界について話を始める八雲紫。

要約すると

1.そこは妖怪と人間が共存する世界

2.そこは結界で隔離された別世界である

 

「ま、長くなったけどコレが大まかな説明ね。」

 

「まったくだ。咲夜紅茶のおかわりを持ってきて貰えるかしら?」

 

「承知いたしました。」

 

そう言って一瞬で暖かい紅茶の入ったティーカップが現れる。

 

「ありがとう。さて、いくつか質問だ。」

 

「好きなだけどうぞ。」

 

「大前提何故私達を招待しようと考えた?」

 

「簡単よ。ここでは人間と妖怪が共存している。私の理想を小さな世界で体現していたから…コレが回答ね。」

 

即答する八雲紫。

 

「なるほど。では2つ目、私達を招待して何をさせたい?」

 

「目敏いのね。妖怪と人間の共存、それには互いの力関係を均一にする必要がある。その為にルールを作ったのよ。貴方達にはそれの実験台になってもらいたいのよ。」

 

また細かく説明を始める八雲紫。

 

「ねぇお兄様〜。お話長くて飽きてきちゃった。」

 

「しーっ、今真面目な感じで話してるから静かにね。」

 

どうやら長ったらしい話を聞いてフランはつまらなくなってしまったようだ。

 

「私も途中からあんまり理解出来なかったんですが…。」

 

「そりゃ途中から目を開けて寝てたら、理解とかの前の問題だよ。」

 

その言葉を聞いてたはは〜と苦笑いを浮かべる美鈴

 

「咲斗、今回の件どう考えてるのかしら?」

 

「ん〜、僕は一応乗っても良いと思うよ。」

 

「成程…理由を聞いても?」

 

「その方が面白いでしょ?」

 

その言葉を聞いてその場にいる全員が笑みを浮かべる。

 

「やっぱり貴方良いわね。貴方のような人間は稀有よ。」

 

「フフフ…ありがとうございます。でも八雲紫様。1つご忠告を。」

 

「あら、何かしら?」

 

「我々は、面白そうだから…という理由でそちらの世界に行きます。もしつまらなかった時は、どうなるか覚悟は出来ておられますか?」

 

その言葉を聞いてゾッとする。長年生きてきた紫でさえ見抜けなかった。

 

「その時は私が全身全霊を賭けて世界を壊しましょう。そして我が主の為の世界を作り上げる。」

 

この人間は壊れている。

 

「是非そうならないことを願っております。」

 

「驚いたわ。正面切って私に喧嘩を売ってくる人間は初めてよ。」

 

紫は確信があった。この人間は爆弾だ。もしレミリア・スカーレットが1つ命令するだけで、躊躇することなく実行する壊れた人間。

 

「フフフ、お初を頂き光栄です。」

 

「一応名前を聞いても良いかしら?」

 

「紅魔館の主に仕える執事、十六夜咲斗と申します。以後お見知りおきを。」

 




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