「それじゃあこちらに来てくれるということで良いのかしら?」
「えぇ、それで構わないわ。」
「分かったわ。あ、そうそうこの館ごと転移させるから準備とかは必要無いわよ。」
それを聞いて咲斗と咲夜は安心する。
「それで?私達はそちらに行ったら何をすれば良いのかしら?」
「何かしら大きな事件を起こして欲しいの。コッチでは異変と呼んでいるわ。」
「異変…ね。さっき説明していた弾幕ごっことかいうルールに沿ってれば良いのよね?」
「えぇ。貴方達も楽しんでちょうだいな。」
そう言って目を瞑った紫。
「…っ?」
「なるほど…コレが転移の脳力ですか。」
「ふふふ…驚いたかしら?さて、ようこそ幻想郷へ。貴方達を歓迎するわ。」
驚くと言うより気持ち悪いが勝ったというのは秘密にしておこうと咲斗は思った。
「それじゃあ後は宜しくね。」
その歳でウィンクはちょっとキツイかも…と内心思っていると、今日1番の殺気を当てられてしまった。
「さて、異変とやらを考える前に朝食としましょ。」
「皆様の新しいお飲み物を用意しますね。」
「ちょっ!?なんで私のだけお水なんですか〜!?」
「何で貴女に紅茶を出さないといけないのかしら?」
咲夜と美鈴のいざこざを横目に咲斗はフランの傍へ寄る。
「フラン、お待たせ。終わったからご飯にしよう。」
「ん〜?やっと終わったの〜?」
くぁ〜と欠伸をしながら目を擦るフラン。長話に飽きてしまったようだ。咲斗はフランの手元に食器を置いていつでも食べれるようにしておく。
「パチェも終わったから本は置いといてね。」
「はいはい。ホントに貴方お母さんみたいね。」
「誰がオカンですか。」
そう言って咲斗も席に着く。
「なんやかんやあって新生活が始まるけれど、気負わず今まで通り過ごしましょう。それじゃ頂きます。」
「「頂きます!」」
レミリアの一声で食事が始まる。
「ん〜今日も美味しかったわ。」
「ありがとうございます。」
「寝坊してたのに咲夜はやっぱり凄いね。」
「あはは〜仲間ですね。アダッ!?」
美鈴の頭にナイフが刺さる。
「咲夜寝坊したの〜?」
「妹様まで…勘弁してください。」
「それで?どうするのレミィ。」
パチュリーがこの後の話を持ち出す。
「そうね…咲斗何か良い案は無い?」
「えぇ、なんとなくそう思ってたけど結局僕が考えるの?」
「こういう参謀的なのは得意でしょ?」
「はぁ〜。まあ別に凝った事しなくて良いと思うから、簡単なものにしよう。」
渋々と言った様子だが、幻想郷に行くと決まり異変を起こすとなった段階から考えていたのは内緒である。
「吸血鬼らしく太陽でも隠そうと思う。パチェかレミィの力で何とかなるでしょ?」
「良いわね。太陽を隠すことで吸血鬼が何時でも活動できるようにする…背景もしっかりしてるのもポイント高めね。」
「何のポイントだか分からないけど貰っておくよ。じゃ、向こうが来たら各々対応って感じで。」
「お姉様、フランは何すればいいの?」
「そうね。私と一緒に居てくれれば良いわ。そうすれば遊び相手が来てくれるから。」
その言葉を聞いてフランは目を輝かせる。
「やった!久しぶりに咲斗以外と遊べる!」
「分かってるでしょうけれど、あくまで遊びよ。間違っても壊しちゃダメよ。」
「はーい!」
そう言って各々が持ち場へ向かう。今回咲斗と咲夜は出迎え役なので玄関ホールにて2人で待つ事となる。
「ねぇ。」
「何?」
「何でそんなに不機嫌そうな顔してるのよ。」
「別に不機嫌じゃないよ。」
そうは言うが明らかにムスッとしており、文字通り不機嫌そうである。
「もしかして、妹様が咲斗以外と遊べるって言ったの気にしてるの?」
「…気にしてない。」
「はぁ〜別に貴方と遊ぶのが嫌とかじゃないのよ?」
「だから気にしてないって。ただ、ほんのちょっとだけムカッときただけだよ。」
「気にしてるじゃない…っと、始まったわね。」
咲夜がそう告げ、見上げると赤黒い雲が空を覆っているのを確認した。
「おーい!霊夢ー!!凄いことになってるぜ!」
「そんな大声出さなくても分かってるわよ魔理沙。間違いなく異変ね。」
とある神社の前に2人の少女が集まっていた。
「にししっ。こんだけデカいことするって事は、結構大物と見たぜ?」
「はぁ…誰であろうとコレじゃあ洗濯物が乾きにく言ったらありゃしないわ。さっさととっちめて終わりにしましょう。」
そう言って白黒の魔法使いと紅白の巫女は飛び出す。
「んで、これ何処に向かってるだ?」
「さぁ?私の勘がコッチだって言ってるから飛んでるだけよ。」
「んだそりゃ。まあ霊夢の勘は頼りになるってのは分かるけど、毎度慣れないな。」
「あと、今回の件多分紫が絡んでる。」
「うへぇ、そりゃとんだ厄ネタじゃねぇか。」
紫と言うワードを聞いて苦々しい顔になる魔理沙。
「ほんっとめんどくさい。とにかく気は抜かないようにしましょ。」
「お、角貰うよ。」
「ぐぬぬ…ちょっと強すぎるわよ。」
「フフフ、オセロで僕に勝とうだなんて100年早いよ。」
「いっその事時を止めて…。」
「ちょっとズルはダメでしょ。いや時止めてもズルは出来ないか?」
待ち時間が暇だった為2人はオセロを嗜んでいた。
「ズルしてるのは貴方でしょう。」
「おやおや人聞きの悪い。僕はズルなんてしてないよ?ほら次咲夜の番、って言っても置ける所1つしかないけど」
「ホントいい性格してるわね…!」
ドカアアアン!!
「あっ…。」
紅魔館の外から突如爆音が鳴り響き、その衝撃で机が倒れてしまった。
「ふっ、コレで勝負は有耶無耶になったわね。」
「えぇ!そんなのアリ!?」
そんなやり取りをしていると玄関の門が開く。
「……」
「「……」」
何とも微妙なタイミングで来てしまったのは紅白の巫女博麗霊夢であった。
「えーっと…。」
流石のマイペースな彼女でも次の言葉に悩んでしまったいた。それもそのはず、彼女は異変を解決しに来ていて、敵陣に乗り込んだと思いきやそこではオセロで一喜一憂していたであろう2人が居るのだから。
「「いらっしゃいませお客様。」」
「いやいや無理があるわよ。」
何とか無理矢理修正しようとしたが無理だったらしい。
「貴方が暇だからオセロしようだなんて言うから…。」
「僕のせいなの?咲夜もノリノリだったよね?しかもボコボコにされてたし。」
「さて、なんの事かしら?倒れてしまって何がどうだったか忘れてしまったわ。」
そんな2人のやり取り見ている霊夢だが、敵は敵。隙ありと見て2人に御札を放つ。
「随分と手癖が悪いのね?」
「っ!?」
御札は空を切り、気付かぬ間に移動されていた。
「アンタ随分と厄介な能力を持ってるようね…。」
「フフフ…どうかしら?試してみたら分かるかもしれないわよ?」
状況は2対1。不利であることは間違いないが何とかするしかない。
「それじゃ咲夜。頑張ってね。」
「え?」
その言葉に霊夢は驚く。
「さて、それじゃあ始めましょうか。」
「舐められたものね。泣いても知らないわよ。」
咲夜が臨戦態勢に入ったのを見て、今は気にする必要は無いと判断し霊夢も集中する事に決めた。
「幻想郷の博麗の巫女、博麗霊夢よ。」
「紅魔館のメイド、十六夜咲夜。」
お互いに名乗りを挙げだと同時に戦いの火蓋は切って落とされた。
「コレが弾幕ごっこ…ね。」
咲斗は2人の少女の戦いを見ながら呟く。
「確かに綺麗だ。でもやはり話の通り遊びの域を出ない。」
咲夜はナイフを霊夢は御札と霊力を込めた弾を使い撃ち合っている。互いに当たっても致命傷にはならない攻撃であるため命の心配は無いだろう。
「殺伐としていたあの時と比べれば、コッチの方が何倍もマシ…なのかな?」
その勝負はやはり最初は咲夜が優勢であった。彼女の能力、時を操る程度の能力に霊夢は苦戦していたのだ。だが、彼女の適応能力は凄まじく、それを凌ぎ反撃に出ている。
「ふむ、決着かな?」
決まり手は弾幕ごっこ花形である必殺技。スペルカードを使用し霊夢はトドメを指した。
「ふぅ、なかなか手強い相手だったわ。」
それを見て拍手を挙げる咲斗。
「なるほど…。良いものを見せてもらった。流石博麗の巫女と言ったところだね。」
「御託は結構。次はアンタよ。」
「やる気な所悪いけど、僕は案内人。君が勝った時に主人の元へ案内する役割なのさ。」
そう言って歩みを進める咲斗。
「何よ…それ。」
その言葉を聞いてまた困惑する霊夢であったが、咲斗について行く他ないため、霊夢もまた歩みを進める。
「ねぇ、アンタは何で戦わなかったのよ。」
「言っただろう?僕はただの案内人って。」
「それなら咲夜でも良かった筈。強さで言えば絶対にアンタの方が強い。」
それは何の確証も無いことではあったが、霊夢自身が最も信じる直感がそう告げていた。この男はヤバいと。
「フフフ…買いかぶりすぎだと思うよ。僕はしがない執事。戦いは苦手なのさ。」
「アンタのその小馬鹿にしたような言い方…ムカつくわ。」
「敵に好かれようだなんて思っていないさ。それに強いと思ってるなら尚更戦わないで良かったじゃないか。」
ひたすらに正論。だがこの飄々とした態度が霊夢は気に食わなかった。
「さて、着いたよ。」
そう言ってなんの躊躇もなく扉を開ける咲斗。
部屋に入ると玉座の様な椅子に座る2人の少女と、見知った友の姿が見えた。
「お!霊夢!」
「魔理沙も居たのね。」
お互いの安否を確認し、今回の首謀者に目を向ける。
「咲斗、ご苦労さま。」
「ご苦労さま〜!」
そこには座りながらも従者を労る主と、従者に抱きつき幸せそうな顔をするもう1人の主が居た。
「咲夜はダメだったかしら?」
「うん。思った以上だったよ博麗の巫女さん。」
自身の話をしている事に気づく霊夢。
「パチュリーも魔理沙にやられちゃったんだよ!」
「へぇ〜。まぁパチェは喘息持ちだからね。仕方ない所はあるか。」
魔理沙もそれに気づき警戒レベルを上げる。
「さて、お喋りはここまでにしましょう。」
「えぇ、そうしましょう。」
レミリアとフランは先程までの見た目相応な雰囲気から一変、威圧感に満ちた目で2人を見る。
「コッチもさっさと異変を片付けて、洗濯物の続きをしたいのよ。」
「異変解決の理由そんなんで良いのかよ…。ま、解決するってのには賛成だぜ?」
そう言ってこの異変の最終戦の火蓋が切られる。
その中レミリアは聴き逃さなさなかった、自身の従者が放つ溜息の音を。