伏黒「クソみてぇな術式」   作:悲しいなぁ@silvie

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まこーらいつもありがとう

「はっきり言おうか、私は正直に言って…君を脅威とは見なしていない」

 

「ああ…?」

 

一刻も早く眼の前の女を倒そうと斬り掛かる恵の攻撃をのらりくらりと躱しながらあえて耳元で囁くように話す。

 

「友達が多くてね、君の術式【十種影法術】──と言っても良いか怪しいけれど──のスペックは知ってるのさ」

 

勿論、君自身の事もね…そう言いながら女は振り抜かれた呪具の柄を掴み、自身の腕を恵の腕に蛇のように這わせてテコの原理で奪い盗った。

 

「クソッ!」

 

「特殊な呼吸法に、北斗神拳や武技と呼ばれる未知の技術体系…更には魔法ときた

頭の固い老人達にとって、君はさぞかし目障りだろうね」

 

クスクスと笑いながら奪い盗った呪具を撫でる。

 

「十番の式神はそもそも戦闘用じゃない、九番と八番も強力ではあるけれど一級品と判を押すには首をひねらざるを得ない」

 

徒手空拳に切り替え、秘孔を狙う恵の指先をことごとく避けながら女は教え子を諭す教師のように丁寧に…優しく話す。

 

「七番と六番は流石に一級品だろうね…でも、日光に弱いという致命的な欠点もある

そして、五番…本来の【十種影法術】における最強の式神『八握剣異戒神将魔虚羅』

あらゆる事象への適応、こんな式神が五番なんだから本当に脱帽だけれど───伏黒君、君の魔虚羅はあまり脅威じゃない」

 

恵の手が女の薄皮1枚すら掠る事なく空を切る。

 

「弱体化している訳じゃないよ…むしろその逆、君の魔虚羅は()()()()()()()()んだ

本来、十種影法術の式神のみでは決して調伏出来ない式神を十種影法術の式神のみで調伏しなければならないという無理難題の縛りによってのみ存在を許された最強の式神…しかし、君の術式ではその前提が──縛りが破られている」

 

距離をとった恵は、他の式神とは違う…片手をもう片腕に押し付ける特異な構えをとる。

 

「布瑠部由良由良」

 

伏黒恵の持つ術式の中で、唯一クソみてぇな影絵で出現しない式神。

何故かはわからないが五番目という中途半端な番号のくせに唯一召喚に呪詞の詠唱を要求するイレギュラー。

 

術師である恵の影が伸び、黒い…影を映したように黒い犬が遠吠えを響かせる。

現れたるは、人間などよりも遥かに巨大にして魁偉なる怪物。

その殆どが人型の式神を召喚する恵の術式の中で異様と言っても良い程に人のカタチから外れたその御姿は白く、神々しさすら漂わせていた。

 

『■■■■■■■■───!!!』

 

八握剣異戒神将魔虚羅、恵が出せる式神の中で最も強力な駒である。

 

「まぁ、縛りが破られたお陰で消費呪力も減ってる訳だし君からすれば都合が良かったりするのかもね」

 

「魔虚羅!」

 

魔虚羅は腕に備えられたブレードで女を斬りつける。

しかし、その速度は…その威力は──決して、女の想定を超えてはいない。

 

「能力自体は変わらない…けど、アジリティやパワー…決定的に馬力が足りないんだよね」

 

斬撃を躱し、大きく姿勢が崩れた魔虚羅の脚を掬い上げるように掴み引き摺り倒す。

 

「だからまぁ…こんな非力でか弱い私でも、どうにかするぐらい訳ないのさ」

 

呪力を込めた踏み付けが、容易く魔虚羅の脚を踏み潰し…文字通り裁断する。

 

「4番でも呼ぶかい?やめた方が良い…アレなら確かに私を殺せるが万全の君でも3秒か4秒召喚するのでやっとなんだろう?

消耗した今なら1秒維持出来れば拍手喝采と言ったところかな

断言しよう…君が4番を呼ぼうとした瞬間、私は領域を展開する

私が死んでも…1秒やそこらでは領域は崩壊しない、私の始末と領域の破壊──その二つがもし仮に出来たとしても呪力が切れた君を確実に真人か脹相が仕留めるだろう」

 

笑みが、不気味に歪んでいく。

嬉しそうな、楽しそうな、年頃の乙女のような、肉食動物のそれのように。

 

「さぁ…どうする?さぁ…さぁ、さぁさぁさぁさあ!!!」

 

魔虚羅と恵の攻撃を悠々と避け続け…心底愉しそうに女は叫ぶ。

 

(特級相当の呪霊二体に特級相当の呪詛師一人…コイツらを倒せるんなら、やる()()はある)

 

恵は右手の人差し指を立て、呪力を巡らせる。

 

(この距離なら…虎杖や釘崎も巻き込んじまうな

………考えるな、俺が負けた時点であいつ等も遅かれ早かれ…)

 

チラと伺うように二人の級友へ視線を走らせ…後悔したように頭を振る。

伏黒恵には、一つだけこの状況を覆す切り札がある。

この場の全員…どころか、地図を書き直す必要が生じる程の破壊を振り撒く切り札────すなわち、二番の調伏が。

 

(調伏の儀は周囲の人間を巻き込んで開始される…これは、俺の意思に関係ない調伏の儀そのもののルールだ)

 

恵の右手が、ゆっくりと中指をもたげていく。

 

(二番は、現状どうやっても調伏出来ない

五条先生と夏油先生に俺と親父の四人でも…勝負にすらならなかった

七番や三番みたいに特殊なギミックがある訳でもない…純粋な強さ、シンプルに強大過ぎて勝てない

仮に眼の前のコイツに奥の手があったとしても…まず間違いなく殺し切れる)

 

二本目の指が立てられる直前、恵は強く…目が潰れる程に強く瞼を引き絞る。

恵が虎杖悠仁や釘崎野薔薇と過ごしたのは、一ヶ月にも満たないだろう。

特級術師である故に任務で飛び回っていた時間も考えれば、半月程かもしれない。

それでも……二人が善人である事ぐらい、わかっている。

わかって…しまっている。

 

 

 

『努力が成功を生むなんて、とんでもない誤解だよ』

 

三番は、恵の意思に関係なく時たま勝手に出てきては一方的に構ってくる。

 

『僕なんかは敬虔なるジャンプファンだけど、あの友情・努力・勝利の三本柱にはいつだって首を傾げるよ

大昔には僕もモットーとして取り入れたアレだけど…ジャンプ読んでて努力がどうだのなんて寡聞にして聞いた事がないぜ

友情が芽生えるだのはただの幻覚で、努力が実るだなんてのはただの錯覚で、それで勝利なんて甚だ失格だよ

だからこそ、我らが週刊少年ジャンプもそろそろ御為ごかしなんてやめて本音を言うべきなのさ…そもそも昭和だの平成だのから続く伝統だなんて僕から言わせりゃただのホコリ被った骨董品だね

才能・血統・勝利、これが令和の三本柱さ』

 

立て板に水、といったふうに一息に言い切るとゴロンと寝転がりながら漫画本を読み始める。

 

『友情が芽生えたんじゃなく、最初から相手はその人の事が気になって気に入っていただけで

努力が実ったんじゃなく、元々備わっていた力が使えるように仕えるようになっただけで

だからこそ勝利なんてのは予定調和なのさ』

 

バリバリとスナック菓子をつまみながら話す。

……その漫画本は五条のなので後でとんでもない事になる気がするが、恵は特に何も言わず三番の方を眺めていた。

 

「…で?急に出てきたと思えば何が言いたいんだお前」

 

『おいおい、友達の話にオチを要求するもんじゃあないぜ恵ちゃん大阪府民じゃないんだからさ』

 

いつの間に友達になったんだ…という言葉が喉まで出かけたが、本当に言うと確実に拗ねて面倒くさいので我慢する。

 

『でもそうだね…今回のオチ、と言うよりは後日談だろうけど

才能・血統・勝利って言うんなら…恵ちゃんは本当はもっと強い筈だぜ』

 

「………はぁ?急に何言ってんだ」

 

『確かに恵ちゃんは北斗神拳を覚えて、武技を身に着けて、魔法を習い、全集中の呼吸と波紋疾走を掛け合わせた特殊な呼吸法を使うけど…そんな程度じゃない筈なんだよ

才能ってのは、もっと理不尽で理解不能で理外なものなんだ』

 

バサリ、と漫画本で顔を隠すように覆い隠すと…どこか懐かしむように語る。

 

「ふざけんな、俺だって全力で──」

「嘘だね」

 

それは、いつだったか聞いた…彼の括弧付けない本音。

新たに出来た友への不器用な男からの飾らぬ言葉。

そう、何時だって──彼は仲間思いの男なのだ。

 

『僕や三虎ちゃん、ボロスちゃんを見たからかな…恵ちゃんは自分の事を過小評価し過ぎてる

どうせこんな程度だとか、ここまでやったから上出来だとか…確かに僕はそういう〝マイナス〟思考が好きだけど──友達が不幸になるのは嫌いなんだ」

 

「さぁ恵ちゃん、格好つけずに──括弧つけずに言ってごらんよ

少し欲張るぐらいが、最近のトレンドだぜ』

 

「才能だの血統だのは…恵まれてる人間の話だろ、俺は……」

 

『何言ってんのさ…()()()()、そういう意味でしょ?』

 

あの時、自分はなんと答えたか…

ただ、なんとなく……その答えが、出る気がした。

 

 

 

 

恵は両手を思い切り開き、女に見せつけるように掲げる。

その顔は───憑き物が落ちたように晴れ晴れと、全てを欲するように貪欲な笑みが浮かんでいた。

 

「やめだ」

 

呪術師の成長曲線は、必ずしも緩やかではない。

 

「江戸時代?慶長?…忘れたけど、そん時の当主同士が御前試合でマジに殺り合って両方死んだんだって

いい迷惑だよな~ホント…で、こっからが面白いんだけどさその当主の術式──俺と同じ六眼持ちの無下限使いなんだと

しかも、相手は恵と同じ十種影法術──まぁ、恵のソレは十種影法術って呼んで良いか知らんケド」

 

何時だったか、東京高専のマゼラン(硝子命名)との呼び声高い現代最強の術師である五条が漏らした言葉。

それはずっと、恵の心に棘のように刺さったままだった。

 

「だからって、アンタに勝てる術師になれるかよ」

 

普段なら、そう言って流した筈だ。

だが、今回は…今回だけは──違った。

 

「なれるかじゃねぇ──なるんだよ!」

 

恵は、開いた手を再び握り締め自らの式神の名前を叫ぶ。

 

「来いッ!魔虚羅ぁ!!!」

 

瞬間、弾かれたように術師である恵のもとへ魔虚羅が駆け寄る。

 

「何を…っ!?」

 

女は見た、少年の身体が影に包まれていく異様な光景を。

しかし、それすらも…女にとって予想外では無かった。

 

「……ソレが、報告書にあった式神術の応用──十種影法術の拡張術式か」

 

恵の背に、巨大な法陣が追従するように浮かぶ。

これこそが特級術師伏黒恵の奥の手、影ではなく自らの肉体そのものを媒介とした式神の召喚。

自身と式神との融合である。

 

「──素晴らしい!最早式神術ではなく降霊術の域だろう、術式の範囲の拡張…いやこの場合は術式の再解釈とでも言うべきかな

どちらにせよ、素晴らしいよ…ただ、悲しいかなそれでも現状を打破するには力不足だね」

 

魔虚羅の馬力を得た少年はそれを更に武技や呼吸により強化する。音すらも超える拳撃…しかし、その全てが見切られあまつさえ反撃を喰らってしまう。

法陣は回転しない…それは即ち、呪力による単純な肉体強化と体術のみで──純然たる実力差で圧倒されているという動かぬ証左であった。

 

「確か、召喚する部位を限定する縛りで馬力を底上げして消費呪力を減らしてるんだったかな?

それでも残念ながら、君が扱えるのは五番まで…四番より上は君の身体自体がもたない」

 

残念だったね、そう言いながら女はブレードを蹴り折り少年の顔を殴り飛ばす。

だが───伏黒恵は、笑った。

 

「俺が魔虚羅に求めたのは、戦闘能力じゃない」

 

「…?何を──」

 

瞬間、女の全身を焦燥感にも似た何かが駆け巡った。

千年以上を生きる呪術師の直感が、眼の前の少年を始末しろと叫ぶ。

 

しかし、それ以上に声高に女の──羂索の知的好奇心が眼の前の少年から眼を離させない。

 

「俺が魔虚羅に求めたのは〝手本〟だ」

 

最強の式神、八握剣異戒神将魔虚羅が持つブレード…退魔の剣は常に呪霊を滅殺する()()()()を纏っている。

 

「反転か──ッ!!」

 

本来、人の負の感情より齎される呪力というエネルギー同士を掛け合わせる事で生まれるそのエネルギーは治療に使われる他…生得術式に流し込む事で新たな力を目覚めさせる。

術式反転──その出力は実に、最低でも順転の倍以上である。

 

「来いッ!拾番!!」

 

 

 

 


 

術式反転により呼び出せる式神紹介コーナー

 

順転の式神達は

1.作中最強ではない

2.作中で敵として登場した

3.作中にCV子安武◯氏のキャラクターが登場する

という法則があった

反転では1と2の制約が消滅する

更に、式神達はもう一つ「作品終了時点で死んでいないキャラクターは術式への理解が深い」という法則がある(マカロンや球磨川、一番がこれに該当する)

 

拾番︰【大魔導師】

 

玖番︰【蛹を破り蝶は舞う】

 

捌番:【カピバラが苦手】

 

漆番:【オギャりたい】

 

陸番:【オカマ魔女】

 

伍番:【実質魔虚羅】

 

肆番:【宇宙の帝王】

 

参番:【人理焼却式】

 

弐番:【無垢なる刃】

 

壱番:【運び屋】

 

 

 




参番以下は人によって違うだろ!!となるかと思いますので順不同とさせていただきます
壱と弐は固定です
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