伏黒「クソみてぇな術式」   作:悲しいなぁ@silvie

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夏油傑のメンタルケアをしつつ五条悟を爆殺する一般通過フィジカルギフテッドwithアミバ

「その脚を治す秘孔は…ここだぁ!!」

 

「うぐっ!!ぐあぁ!!」

 

とある繁華街の一角にあるマッサージ店の中。

そこでは滅多にお目にかかれない程に筋骨隆々な男二人が施術用の白いユニフォームを身に纏い客の身体を次から次へと突いていた。

……勿論、式神であるアミバの姿は一般人には視えないので甚爾はともかくアミバが制服を着る意味はまるで無い。

 

甚爾の考え出した秘策、それはマッサージ店で働く事でアミバ北斗神拳を有効活用しつつちゃっかり自分は甘い汁だけを吸うというものだった。

呪術を扱えない一般人(非術師)には視えないアミバが秘孔を突くだけでは不自然なので甚爾が間に入り適当にツボを突くフリをするだけ…たったそれだけで甚爾は綺麗な金が手に入り客は不治の病すらも完治させる施術が受けられる。

誰も悲しまない八方よしというヤツだ。

 

「甚爾!客が次から次へと来ているぞ!?

少しでも早く施術を終わらせろ!!」

 

「うるせぇ!!こちとら見たこともねぇ拳法を急にやれって言われてんだぞ!余分に時間がかかるぐらい当たり前だろうが!!」

 

そう、甚爾の秘策は間違ってはいない。

いなかったが……甚爾は舐めていた、北斗神拳を。

不治の病どころか、失明していた眼に光を取り戻させ、車椅子に乗ってきた者は歩いて帰り、杖をついていた老人はその場で杖を圧し折り走り去った。

不可能を可能にする北斗神拳…否、いくら北斗神拳といえど限界がある。

故に───甚爾は舐めていた、北斗神拳を…アミバ流北斗神拳を。

 

もはや、その店の元の名前など誰も知らない。

ヌーの群れが如く殺到する客達が店の看板を踏み潰したからだ。

口コミで広まったウワサが更に客を呼び、そこから更にウワサが広がる。

倍々ゲームで増える客…いつしか『奇跡の店』などと呼ばれるようになったそこではアミバが死にそうになりながらあくせく働いている。

……というか、アミバ一人では到底手が足りずアミバとのマンツーマンレッスンである程度の秘孔を突けるようになった甚爾もまた客の秘孔を突いていた。

 

「よ、よし…昼休憩だ……」

 

「クソッ…やっとか……」

 

へとへとになった二人がその場に座り込む。

かれこれもう一月程秘孔を突きまくってきた甲斐あってか、甚爾はアミバのサポート無しに施術が出来る程にまで成長していた。

それはつまり甚爾の負担が増える事を意味するのだが…言わぬが花というヤツである。

…………ちなみに、甚爾の負担が増えるのとアミバの負担が減る事は決してイコールではない事だけはわかっていて欲しい。

客はもはやひとりでに秘孔を突かれても気にしないのだ。

 

「どーもー!お邪魔しま〜す!」

 

「へぇ…中は意外にちゃんとしてるんだね」

 

極度の疲労で昼食を摂るよりも睡眠を優先しようと甚爾が施術台に寝転がった瞬間、その二人組が入ってきた。

 

「誰だ貴様ら…?甚爾、知り合いか?」

 

「お前、五条家の…」

 

かつて見た五条家の秘蔵っ子、現呪術界の頂点を前に流石の甚爾にも緊張が走る。

…と、同時に

 

「……なんで、こんなとこに居んだ…?」

 

無数の疑問に首を傾げた。

 

「社会科見学に来ました〜!高専二年の五条悟でーす!」

 

「ふむ…式神にマッサージをやらせるとはね

農家だったりマッサージ師だったり、最近の呪詛師は手に職をつけるのが流行りだったりするのかな?」

 

疑問に答えることもなくケラケラと笑う五条とアミバを興味深そうにしげしげと見つめる夏油。

 

「まっ、この程度の式神じゃマッサージやらせんのが関の山っつートコなんじゃね?

本体のオッサンもほとんど呪力視えねーし」

 

かけていたサングラスをずらして甚爾とアミバを一瞥した五条はつまらなさ気にサングラスを戻す。

呪術に関するありとあらゆるものを見通す魔眼、名を『六眼(りくがん)』。

五条悟を最強たらしめんとする要因の一つであるソレ越しに視た二人は、片や術式も持たず呪力もスカスカな式神。

片や非術師と言われれば信じてしまいそうな程に呪力の薄い男。

これでは警戒しろと言う方が無理筋だろう。

 

……実際にはアミバは術式ではなく技術として北斗神拳を持つ上に甚爾ではなくその息子である伏黒恵の式神で、甚爾は全く呪力を持たない完全なるフィジカルギフテッドである…が、五条は呪力を持たない人間など居る筈がないという先入観から甚爾の持つ緊急用の呪具から漏れ出た呪力を甚爾の呪力と勘違いしていた。

 

「うーん…噂通りなら反転術式の使い手かもと思ったんだけど、どうも違いそうだね」

 

「ったく紛らわしいんだよ!セコい商売してんならもっと目立たねーようにしろよなぁ〜!」

 

自分達から勝手に不法侵入をしておいてこの言い様…これが、二人が最強でありながら上層部より鼻つまみ者扱いされる所以である。

 

「………待て!この天才をつかまえて何を言うかと思えば…!

その言葉、オレの北斗神拳を受けてから言ってもらおうか!」

 

二人がガヤガヤと騒ぎながら店を後にしようと背を向けたその時、アミバが待ったをかける。

 

「北斗神拳〜?あー、ハイハイ、わかったわかった…オリジナル必殺技ね

ダメじゃなぁ〜い、そーいうのは中学校で卒業しなきゃ…結構いい歳してんだろ?」

 

「クッ…ププ…!い、言ってやるなよ悟…可哀想じゃないか

真実とは時として何よりも人を傷つけるものだよ」

 

ぷるぷると肩を震わせながら夏油がゆっくりとアミバの前に歩み出る。

 

「でも、確かに体験せずにとやかく言うのも悪いし…折角だから受けてみたいな、その…なんとか神拳」

 

「北斗神拳…アミバ流北斗神拳だ!」

 

珍しくマジ顔で構えるアミバ…既に甚爾は逃走経路を確保し何時でも逃げ切れる準備を終えている事をアミバはまだ知らない。

 

「そこで横になれ…おっと、そのデカイ上着は脱いでもらうぞ」

 

「はいはい、これで良いかな?」

 

圧倒的実力差があるからか…夏油は無警戒に施術台に寝そべる。

アミバは夏油の前に立つと、咳払いを一つし…深く息を吸う。

 

「お客様〜!本日はどういった御用向きでしょうか!」

 

揉み手をしながらにこやかな営業スマイルを浮かべるアミバ。

一般人には視えないくせに、接客態度は甚爾と比べ物にならない程に様になっていた。

夏油はその変わりように再び笑いをかみ殺しながらぷるぷると震えるも少し考える。

 

(そうだな…別に今は身体に不調は無いし……せっかくだ、無茶振りだけど()()にするか)

 

「実は…私の術式は呪霊操術と言って調伏した呪霊を操る術式なんだけれど、その調伏の仕方が一癖あってね

呪霊を食べないといけないんだけど、言葉に出来ない程に不味いんだ…どうにかならないかな?」

 

無論、夏油とて本気でどうにか出来るとは毛ほども思っていない。

全ては眼の前のワカメみたいな髪型をした式神に一杯食わせてやろうという意地の悪さから出た言葉である。

 

…………だが、心のどこかではどうにか出来たら良いのにな…と思っているが。

 

「なるほど!かしこまりました…では味覚を変化させる施術を行います!!」

 

「…………へ?」

 

アミバから返ってきた応えは、快諾。

アミバは何でもないと言うように夏油の首元を触りながら秘孔に狙いを定める。

 

「ちょ、ちょっと待っ───」

「ここだぁ!!!」

 

状況が飲み込めず、とりあえず待ってくれと声を掛ける夏油を無視してアミバの指が首筋にめり込んだ。

 

「う、うぐぅっ!?」

 

ピキーン!と夏油の全身に電撃が走ったかのような刺激が巡る。

しかし、それも一瞬のこと…アミバが指を抜いた瞬間に収まった。

 

「お客様、施術は終了いたしましたので…どうぞお確かめ下さい」

 

恭しく一礼するアミバ。

 

「お、終わった……?ちょっと首のツボ…?を押しただけで……?」

 

ワケもわからず呆然と施術台に座り込む夏油。

しかし、半信半疑ながら……確かな期待と共に目に入った蝿頭を捕まえて───飲み込んだ。

 

「……マジかよ、それって不味い……ってか味あったんだ…

なんで教えてこなかったんだよ傑………傑?」

 

一連の告白に少なからずショックを受け、無言になっていた五条がようやく口を開くも夏油は座り込んだまま硬直していた。

 

「おいおい…結局不味いままだったとか?

あんま落ち込むなって傑…そうだ!なんだったらこの後天内達も連れてたけー寿司でも──」

 

「美食を司るという小神を信仰してきました…」

 

「──傑?」

 

スッと立ち上がり、アミバの前に立つ夏油。

その目は、バチバチにキマっていた。

 

「ですが、それが貴方でないというならば…私の信仰心は今搔き消えました

伏してお願い申し上げます!どうか、私にその御業を授けていただきたい!!

私は、美食の深淵を覗きたいのです!!!!」

 

「えぇ……」

 

ガンギマリフェイスでアミバに詰め寄る夏油。

五条はひたすらに困惑しながらただ眺める事しかできなかった。

 

「えぇ………」

 

勿論、アミバも困惑しながらユッサユッサと揺すぶられる事しかできない。

 

「…………………なんだこれ」

 

いつでも逃げ切れるよう準備をし、安全マージンを確保した甚爾が呟く。

………いや、本当になんだこれ。

 

「………はっ!待て傑!!

クソ……洗脳かなんかの術式か…?六眼で視たってのに…

おいお前!その北斗神拳っての、俺にもやってみろ!」

 

遠くに行きかけている親友の為、五条が声を張り上げて甚爾に詰め寄る。

 

「はぁ…?なんで俺に……アミバの方に言えよ」

 

「うっせぇ!!お前もその北斗神拳…?とか言うの使えんだろ!

クソ…!ツボ押しするフリして術式使ってたのか…?」

 

ブツブツと言いながら甚爾の前の施術台に座る五条。

アミバは今夏油からの懇願ブンブンタイムの為、物理的に施術できないというのもあるが…五条的には(一応)式神であるアミバの術式を疑っている為、同じ技術を持つと思われる眼の前の男で検証しようという訳である。

これで何もなければあの式神を始末すれば良いし、何かあればこのトンデモ拳法がヤバいという確証が持てる。

どちらに転ぶにせよ、一旦の指針ができるという判断からである。

 

「………ちなみに、お前はどっか悪いのか?」

 

「は…?あー…………」

 

言われて、固まってしまう。

そう、別にマッサージしてもらう程にどこかが悪い訳ではない。

 

「と、とりあえず……適当に……」

 

苦し紛れにそう言うと甚爾が渋い顔をしながら五条のこめかみ辺りを突く。

 

(まぁ…とりあえず疲労回復の秘孔でも押せば気が済むだろ)

 

ズブズブと指が差し込まれていき……

 

「ハックション!!あっ、やべ…」

 

「は?なに…?なんかミスった?」

 

完全に根本まで突き刺さった。

サーッと、甚爾の顔から血の気が引く。

甚爾は知っている、アミバから北斗神拳を教わる際に北斗神拳の()()()使()()()を教わったからだ。

 

「お、おいアミバ…コレ……」

 

ギギギ…と油の切れた玩具のように首を回すとアミバにヘルプを求める。

 

「ん…?………ッ!?

これは頭維(四合)といってな…その指を抜いてから3秒後にそのガキは───死ぬ」

 

ダラダラと汗を流しながらそういうアミバ。

勿論甚爾も汗だくである。

 

「ま、まぁ待て甚爾!北斗神拳には秘孔封じという技があってだな──」

 

「指抜いて3秒後に死ぬだぁ?ふざけんじゃねぇよ!!」

 

アミバが自身の死の寸前の記憶を回想しながら絞り出した救いの一手…それは他ならぬ五条自身によって泡と消えた。

怒りに任せ立ち上がった…否、立ち上がってしまった五条を蒼白の面持ちで見る二人。

 

「はっ!なんだ…なんともな───」

 

ピキーン!と五条の全身に電撃が走る。

そして…

 

「うわらばっ!?」

 

五条は頭から真っ二つに引き裂け、血飛沫と臓物を撒き散らしながら爆裂した。

 

「…………スゥーッ……

………なんて酷い事を、許せねぇ!なぁ!アミバ!!」

 

「えっ!?い、いや……どう見ても甚爾、お前が殺し…」

 

「おそらくは既に上層部の誰かに秘孔を突かれていたんだろう…!!

許せねぇ…!!許せねぇよな!アミバ!!!な!!!!!」

 

「いや、お前が残悔拳で殺し…」

 

「腐ってやがるぜ…!御三家めぇ!!!!!」

 

 

 

 


 

五条悟

この後反転術式を習得し復活、甚爾を抹殺すべく探し回るが見つけられず吠えた。

 

伏黒甚爾

タダ働きはごめんなので速攻で逃げた。

結果としてとんでもない相手から狙われ続けるという特大の厄ネタを抱える事となった。

 

夏油傑

ゲロ雑巾が高級フレンチレベルになったので大変満足。

五条を諌めつつもアミバを探している。

 

アミバ

甚爾に速攻で見捨てられたがなんとか逃げ切れた。

こちらもとんでもない相手から狙われ続けるという特大の厄ネタを抱える事となった。

甚爾に任せると碌なことにならないと学習したので人手確保の為にも現在、十種影法術の九番目の式神を調伏中。

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