伏黒「クソみてぇな術式」   作:悲しいなぁ@silvie

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なんで前回のクソみてぇなヒントでそこそこ正解者が出るんですか?


特級呪物を回収しに来た一般通過特級術師with後方腕組み師匠面クレマンティーヌ

「……げ…」

 

ウニのようなツンツン頭が特徴的な少年、伏黒恵は苦々しい表情で百葉箱の中身を見て呟く。

はー…とクソデカため息をつきながらポケットからケータイを取り出し連絡先から目的の人物へと電話をかける。

 

『もしもーし!みんな大好き五条先生でーす!!』

 

「………夏油先生のケータイにかけた筈なんですけど」

 

眉間にガッツリとシワを寄せながら恵は再びため息をつく。

 

『傑は今ピザ焼いてるから出れなくてさ〜

で?なんかあった〜?』

 

「なんかあったじゃありませんよ…()()()()()()()()()()()

どこにもありませんよ…特級呪物」

 

『マジで?ウケんだけど』

 

噴き出すような笑い声と共にそう返される。

 

「ウケませんよ…どうしますか?特級呪物が行方不明なんて、上が黙ってませんよ」

 

『ダイジョーブでしょ、上も不測の事態があった時用に恵に任務回してんだし』

 

ケータイから返ってくるテキトーな返答に、遂に恵は眉間を抑え天を仰ぐ。

帰ったらアミバに頼んで生姜焼きでも作ってもらおう…そう決心しながら恵は式神達を召喚していく。

 

『じゃ!俺は傑とピザパしてるから…頑張ってね〜!』

 

そう言うとブツッ、と通話が打ち切られる。

恵は知っている…夏油傑の作る料理にはすべからく呪霊が使われていることを。

恵は知っている…夏油傑はそんな料理を笑顔で周りに振る舞うことを。

恵は知っている…周りが死ぬから止めておけといくら制止しても五条悟だけはそのポイズンクッキングを笑顔で食べることを。

おそらく、現代最強の術師が死ぬとしたら…老衰か夏油傑かのどちらかだろう。

五条悟は今から『謎の食中毒』により三日三晩生死の境を彷徨う事が確定したので、応援が来ない事も確定してしまった。

 

「はぁ………っし、やるか…出ろ、八番、七番、六番!」

 

夜闇に紛れて、複数の人影が浮かび上がる。

伏黒恵の生得術式、【十種影法術】は十種の式神を使役する。

この術式の優れた点は…何と言ってもその『燃費』の良さにある。

基本的に、術者である恵は召喚時とその維持程度しか呪力を消費せず、更に番号が若くなればなる程に呪力消費が大きくなるものの…十番と九番に至っては出しっぱなしでも自然回復する呪力の方が多い程の好燃費、おまけに式神達は自律思考し戦闘や偵察はもちろんのこと家事まで出来るというのだからどこかがおかしい。

 

「デカい呪力を放ってる呪物がある筈だ…探してくれ」

 

術者である恵の言葉に、人影達が一斉に散開する。

 

「めぐっちゃんさぁ〜、私は待機で良かったんじゃなぁ〜い?」

 

……訂正しよう。人影達は一つを残して散開した。

恵の直ぐ側で面倒くさそうにスティレットを弄るクレマンティーヌを除いて。

 

「うるさい…九番(お前)より上になると戦闘痕の処理が面倒になるんだよ」

 

「めぐっちゃんってばヤバくなったら私に助けてもらう気マンマンじゃ〜ん!

オンナの子に助けてもらおうなんて…恥ずかしくないの〜?」

 

クスクスと意地の悪い笑みと共に恵の周りをくるくると廻るクレマンティーヌ。

恵はそろそろ眉間のしわが標準装備になりつつあった。

 

「うるせぇ…いいからとっとと行くぞ、もし呪霊が特級呪物を喰ってたら厄介だ」

 

「はいはーい、人使いの荒いゴシュジンサマを持つと苦労するよねー、ホント」

 

恵とクレマンティーヌが軽口を叩きながら夜の校舎へと足を踏み入れる。

 

これは、不幸な行き違いだった。

 

もし、伏黒恵があと1日でも早く現着していたならば未然に防げたろう。

もし、()()()()()()()()の命日が昨日でなければ起こり得なかったろう。

もし、とある少年が祖父の遺言を果たそうと動かなければ──

全ては過ぎた事であり、起こり得なかったもしもである。

禍福は糾える縄の如し…人の幸福とは天秤に似る。

誰かが幸福の錘を乗せれば、誰かの天秤が不幸にも吊り上がる。

 

だからこそ、コレは──誰かの幸福の対価であった。

 

「先輩ッ!逃げて…!頼むから!!」

 

オレンジ色の髪をした少年、虎杖悠仁が自身の所属する部活の先輩二人の前に立ち構えていた。

額は割れて血が絶えず流れ、右腕は(ひしゃ)げ、鼻は潰れ、片目は既にえぐり出されていた。

 

少年は二人の先輩が這う這うの体で逃げ出すのを横目に、眼の前の化け物を睨みつける。

一見人間のような身体…しかし、四つの目と死人のような白い肌が強烈にソレを否定する。

化け物はケタケタと笑いながら少年へ手を伸ばす。

虎杖は歯を食いしばり、左拳を放つも化け物に苦も無く受け止められ…ゆっくりと握られる。

 

「ふっ、ぐ…ぐぅ…ッ!!や、やめ───」

 

ミシミシと軋むような音が握られている拳から響く。

虎杖は涙が流れないように、必死に歯を食いしばりながらソレを見るしか出来ない。

バタバタと足で蹴ったり、噛みついたり…しかし、化け物はそれらを無視してゆっくりと、ゆっくりと少しずつ握る力を強めていく。

少年の手に、伝わる…骨の砕ける感覚。

肉が潰れていく感覚。

吐き気を伴う程の、激痛。

胃を押し上げられるような痛みと、自分の身体が壊されていく恐怖に虎杖は遂に…涙を流した。

屈しないようにと、思っていた。

泣けば、先輩達を恨んでしまう気がした。

助けなければ、あの時自分だけでも逃げていれば、こんな所に来なければ、痛い、嫌だ、嫌だ!逃げたい!!死にたくない!!!

 

「かんっがえるなぁっ!!!!」

 

呪いは呪いでしか祓えない。

純然たる事実…虎杖少年がいかに身体能力に優れようとも、呪力の無い彼には何の抵抗も出来ない。

少年の咆哮も、呪霊にはなんら痛痒を(もたら)さない。

そう、呪霊には───

 

「ふぅん…中々()()()声だったよ、君」

 

状況に不釣り合いな程に間延びした、甘ったるい声が少年の耳に届いた。

それと同時、化け物の顔から…二本の(きっさき)が生えてきた。

……否、生えたのではない。

化け物の…呪霊の後頭部から、二本のスティレットが貫通していた。

 

「めぐっちゃんも言ってたし…助けてあげる、逃げてイイよぉ?」

 

呪霊が振り向くよりも疾く、スティレットを抜き去り少年の手を掴んでいた腕ごと斬り飛ばしたクレマンティーヌは猫のように虎杖の襟を掴んで距離をとっていた。

 

クレマンティーヌは呪霊の等級に当て嵌めるならば2級呪霊として扱われる。

そして、眼の前の化け物は──特級。

本来ならば比べるべくもない格差…

しかし、呪霊の等級には一つだけルールがある。

その呪霊の呪力量や強さのみで到達し得るのは()()()()

曰く──術式を持つ呪霊は『最低でも』準1級として扱われる。

クレマンティーヌは恵が幼児だった頃ですら自然回復で間に合う程の僅かな呪力しか持たず、術式も所持していない。

しかし、その戦闘能力は─────

 

「キ、キイイィィ!!!」

 

「なぁにぃ?そのトロい攻撃は!!」

 

───並の特級を凌駕する。

 

呪霊の飛ばしてきた呪力の塊を悠々と回避し、腹と顔に二回ずつスティレットを突き立てる。

殴り掛かってきた右腕の肘関節と手首、肩も念入りに刺す。

瞬時に穴だらけになった呪霊が悲鳴ともつかぬ声を上げながら飛び退く。

 

「攻撃ってのはこうやんだよ〜?

解ったぁ…?ム・シ・ケ・ラ・君」

 

「………すっげぇ…」

 

呆然と戦闘を眺める少年。

まだ、身体中が燃えるように痛むが…虎杖少年はそれすらも気にならぬ程に…魅せられていた。

クレマンティーヌの洗練された強さ、人間が届きうる限界点に。

 

「まだまだ死なせてやんないよぉ〜?

最近遊べてなかったからさぁ…グッチャグチャになるまで刺してから、ゆっくり祓ってアゲル」

 

蠱惑的な…しかし、虫を引き裂いて遊ぶ子供のような残虐さを秘めた笑みを浮かべると両手のスティレットをくるくると回す。

呪霊が、ようやく彼我の戦力差を悟り…ゆっくりと後退る。

それを見て…クレマンティーヌは更に、笑みを深めた。

 

「おいおい…!逃がすワケねぇだろ!!

てめえは今から死ぬんだよ!!私に殺されるんだ!!!

このクレマンティーヌ様に殺されるんだから…地獄で自慢しても良いよぉ?」

 

爛々と目を輝かせるクレマンティーヌ。

こうなれば、彼女は誰にも止められない……

 

「おい、クレマンティーヌ…ソイツ連れて逃げてろ」

 

そう、伏黒恵を除いて。

 

「………あーあ、めぐっちゃんに見つかっちゃった…

遊び過ぎたねぇ〜…さっさとドスッとヤっちゃえば良かった」

 

クレマンティーヌは先程の態度が嘘のように軽く言うと虎杖少年を抱え上げる。

 

「う、うおっ!?」

 

「こらこら、あんまり暴れると落とすよ?」

 

まるで山賊が村娘を攫うかのようにヒョイと少年を肩に担ぐと邪魔にならないよう恵の背後へ歩いていく。

 

「……おい、逃げてろって言ってんだよ」

 

「え〜?大丈夫でしょ、それとも〜めぐっちゃんはこんなザコ相手に後ろも庇えないのかにゃ〜?」

 

あからさまに挑発するような声音でそう言うとクレマンティーヌは少年を降ろして自分も座り込む。

 

「此処で見学してるからぁ…頑張ってねぇ〜」

 

ひらひらと手を振るクレマンティーヌに恵は舌打ちしながら特級呪霊の方へ向き直る。

 

「…もういい、さっさと済ませて帰んぞ」

 

「お、おい…!お前、大丈夫なのか…?ソイツ、目茶苦茶強いから二人掛かりの方が──」

「うっせぇな、黙って見とけ…

ウチのめぐっちゃんがあんなザコ相手に負けるわけないじゃ〜ん!」

 

少年の声を遮るように、クレマンティーヌが胸を張る。

恵は大きくため息をつくと…口笛でも吹いているような、特徴的な音と共に『呼吸』を始める。

一呼吸毎に、恵の全身に力が漲っていく。

一呼吸毎に、呪力と生命力とが総身を巡る。

 

「『能力向上』『回避』『流水加速』」

 

恵がそう呟くと、瞬時にその姿が消え…呪霊が吹き飛ぶ。

目にも止まらぬ速度で、スーパーボールのように壁や天井を足場に跳ね回り加速していく。

呪力と武技による二重の身体強化に特殊な呼吸法による駄目押し…先の階級で言うならば、伏黒恵は───

 

「キャアァァァ!!!」

 

呪霊が自身を囲むように呪力の塊を創り出し、恵へ放つ。

しかし…恵はその全てを難無く回避しきると呪霊の頭に手をかける。

 

「遅ぇよ」

 

そのまま力任せに呪霊の頭を、()()()()()

 

呪術高専東京校一年、伏黒恵。

階級───特級。

 

「ほら…大丈夫だったでしょ?」

 

呆然と…呪霊が消えた事で気が抜けたせいもあり正に呆けたように座る虎杖。

その隣では、ニヤニヤと嬉しそうに笑うクレマンティーヌが我が事のように胸を張っていた。

 

「はぁ……とりあえず、お前も来い

運が良けりゃ、その怪我治せるかもしれねぇ」

 

消滅した呪霊から目的の呪物を発見した恵は虎杖へそう手を差し伸べる。

歪みに歪んだ物語は、かくして始まるのであった。

 

 

 

 


 

 

伏黒恵 特級術師

調伏した式神達から様々な技術を教えられていった結果、式神遣いのくせに近接でも1級相当の怪物が完成した。

現在三番目までは調伏している。

 

アミバ

今回はお留守番。

 

クレマンティーヌ

呪霊基準でなら2級、術師基準だと文句なしの1級という大地雷。

 

八番目:【春の訪れ】

勿論色々教えている。 

 

七番目:【お兄ちゃんと妹】

呼吸を教えるが、なんか違うな?と首を傾げている。 

 

六番目:【風使い】

呼吸を教えるが、やっぱりなんか違う気がしている。 

 

五番目:八握剣異戒神将魔虚羅

まこーらいつもありがとう 

 

四番目:【全宇宙の覇者】

調伏直後に特級認定された。

 

三番目:『人気投票1位』

調伏されて以来一度も呼び出されていない。

 

二番目:【三男】

 

一番目:【カードの裏側】

 

五条悟

全治一週間

 

夏油傑

おい、ピザ食わねぇか?

 

虎杖悠仁

ピザを喰わされた結果、呪力を獲得し高専の生徒になった。

目は治らなかったので眼帯装備中。

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