伏黒「クソみてぇな術式」   作:悲しいなぁ@silvie

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少年院で全ての元凶と対峙する一般通過特級術師withお兄ちゃん頂上決戦に参戦する妓夫太郎

「すまない恵…悟が食中毒(いつもの)で倒れてしまってね

悟の代わりにこの任務に行ってくれるかな?」

 

そう言って任務の詳細が書かれた機密書類を恵に渡す夏油。

この間捕まえた蛸みたいな呪霊(特級)でのタコパが盛り上がり過ぎてつい数時間前に五条を生死の境にまで追い込んだ男である。

 

「…はぁ、まぁ良いですけど……?

コレ、どういう意味ですか…?釘崎と虎杖の名前まで書いてますけど」

 

またいつものかと半ば諦めのため息をつきながら書類に目を通していた恵が首を傾げる。

派遣人員の欄に書かれていたのは、自身のものともう二つ…最近になって増えた二人の同級生の名前だった。

 

「今は呪胎だけど、じきに成長する筈だ…推定特級呪霊、自分より格上を見るのは二人にとって良い経験になる筈だよ」

 

夏油は言いながら踵を返し立ち去って行く。

 

「格上って…んなもん態々危険を冒さないでもアンタ等で十分見れるでしょ」

 

「この場合、人同士よりも呪霊である事が重要なのさ

それに…信頼してるからね、恵が居るなら万に一つも危険は無いよ」

 

簡単に言ってくれる…恵はそう思いながら手早く準備を整えていく。

この後家入さんにしこたま怒られるんだろうな…と特徴的な前髪をした恩師の背を見送り、そうぼんやり考えながら。

 

 


 

 

「つー訳で、俺が先導する…お前ら二人はあくまでも補助だ

自分の身が最優先、間違っても戦闘なんかするなよ」

 

十数分後、準備が終わった三人は補助監督の運転する車内にて任務のすり合わせを行っていた。

 

「なぁ伏黒、特級って……なに?」

 

「アンタねぇ、そんなんも知らないで術師になった訳?」

 

「仕方ねーじゃん!俺まだ視えるようになって一月経って無いんだぜ!?」

 

やいやいと騒ぐ二人に恵は耳を手で抑えながら眉間のシワを増やす。

 

「うるせぇ…特級ってのは今回の任務で遭遇するかもしれねぇ呪霊の強さの目安だ

基本的に呪霊も術師もその実力で1〜4級のどれかに分類されんだよ」

 

「1〜4って…特級はドコになんの?」

 

「最後まで聞け、階級は若くなる程に強くなる…んで、1級の更に上──1級の枠に収まらねぇのを全部一纏めに特級って呼んでる」

 

呪霊はな、と補足しつつ虎杖を見る恵。

その顔にはありありと『全然わかりません』と書いてあった。

 

「はぁ……俺の式神で言うと、アミバさんが大体4級から3級呪霊相当だ

あの人はまぁ……対〝人〟に特化してるから正確には何とも言えねぇけどな」

 

恵の言葉におー、と得心いったとばかりに手鼓をうつ。

 

「ちなみに…クレマンティーヌは呪霊で言うと2級だ──特級がどれぐらい危険か、理解できたか?」

 

恵のその言葉に虎杖は静かに…しかし鉛のように重い汗をじっとりとインナーシャツが湿る程に流す。

この数週間、恵の式神達からの様々なコーチングを受けながら戦い続けた相手──幾度となく虎杖をボコボコにしてケラケラと笑っていた──ある意味で最も強さをイメージしやすいそのクレマンティーヌが2級、特級どころかその下の1級ですらないというのは虎杖にとってどこか楽観的に構えていた事を霧散させる程の衝撃だった。

 

……一応の補足として、クレマンティーヌは『術式』を持たない故に『呪霊として』の階級が2級で留まるだけであり『術師として』であれば1級相当ではあるが…恵は警戒し過ぎるぐらいで丁度良いと判断しあえて全ては伝えずに黙った。

 

 

「着いたな…都合良く屋内、相手も特級なら様子見で出すか」

 

恵は建物の影まで近付くと片手を開き、もう片方の手の指を2本だけ立てて呟く。

 

「出ろ…7番」

 

ズズッ、と地面から影だけが盛り上がり2つの人影を象る。

ボコボコと歪に蠢いていたソレはゆっくりと落ち着いていき…見目麗しい白髪の女と猫背で蟷螂のようなシルエットの男の二人を生み出した。

 

「なんだなんだあ…?まだ昼間じゃねぇかあ

恵、お前は本当に式神遣いが荒ぇなあ…」

「あっ!野薔薇じゃない!!おーい!」

 

蟷螂のような男はぶつぶつと文句を言おうとしたが…妹の嬉しそうな声に顰めていた顔を一気に弛緩させていた。

 

「梅じゃない!どうしたの?」

「うおっ…妓夫太郎さん……」

 

釘崎は思わぬ所で会ったと梅に近寄り、虎杖は地獄のシゴキを想いながら若干頬を引き攣らせて妓夫太郎に近寄る。

昼間はともかくとして、日の沈んだ後は自分の意思で勝手に顕現しては遊び回っている梅は自然と高専の女子メンバー全員と付き合いがあり、当然釘崎とも既に女子会と称してカロリー爆弾のパンケーキを食べに行くような仲なのだ。

 

「さっきの話の続きだ…妓夫太郎と梅が大体1級相当、今回はこの二人で片付ける」

 

「1級…っ!?……アレ?でも、呪霊は特級なんだよな…?」

 

あれ程の人外染みた強さだった妓夫太郎ですら1級だという事に驚きつつも、虎杖は首を傾げる。

 

「虎杖ぃ、お前本当に学がねぇなあ…俺と梅は呪霊じゃなくて術師の基準で1級なんだよなあ」

 

えっへん!と胸を張る梅の頭を優しく撫でながら妓夫太郎が嗤う。

しかし、とうの虎杖は更に首を傾げていた。

 

「術師基準……??」

 

「アンタ…マジで何にも知らないのね」

 

「だ、だって夏油先生は美味い炒飯の作り方とかそんなんばっかだし!五条先生に至っては基本的に昏睡状態(ねてる)か任務行ってて授業どころじゃねぇんだもん!!」

 

釘崎からのじとーっとした視線に虎杖は唇を尖らせて抗議する。

恵はソレを聞いて大きくため息をつくと共に眉間を押さえた。

 

「術師の1級と呪霊の1級じゃ全然違うんだよ

1級術師ってのは1級呪霊と同じぐらい強い術師じゃねぇ…1級呪霊を難なく祓える術師を言うんだよ」

 

つまり、1級呪霊より特級呪霊寄りって事だ…そう言いながら恵は任務の詳細を妓夫太郎に伝えていく。

 

「成程なあ、推定特級呪霊か…梅、お前は危ないから兄ちゃんの後ろに居てろなあ」

「はーい!」

 

元気に手を挙げて返事をするや否や、梅は妓夫太郎の背中に文字通り入り込んで行く。

 

「よし…入るぞ」

 

妓夫太郎を先頭に、4人は少年院へと足を踏み入れた。

 

 


 

 

「でも、なんで7番な訳?特級相手なんだからもっと上の式神出したって良くない?」

 

釘崎は周囲を警戒しながら前を歩く恵へ声を掛ける。

 

「別に相手を甘く見てる訳じゃない、むしろ妓夫太郎は初見の相手に出すには最適な式神なんだよ」

 

低級呪霊を何体も祓いながら妓夫太郎の数歩後ろを歩く恵。

既に臨戦態勢…特殊な呼吸法により口笛を吹いているような音が周囲に響いていた。

 

「悪かったなあ…弱っちい7番目で

だが…俺より上は良くも悪くも強過ぎるからなあ、本気でやるとお前等ごと死体の山が出来ちまうだろうなあ」

 

くっくっく、と嗤う妓夫太郎。

恵は顔をひくつかせている級友達にそれと…とさり気なく補足する。

 

「5番からは呪力消費がデカ過ぎるんだよ…今回の任務もどんなにヤバくなったって出すのは5番までだ」

 

「5番って……誰になんの?」

 

「お前は会ったことねぇよ…つーか、5番は他と違ってマトモな式神だから喋らねぇんだよ」

 

「アレがマトモって言うのはちょっと無理がある気がするけどなあ」

 

緊張の糸は緩めずに、さりとて会話が途切れぬように話し続ける。

一つは緊張し過ぎて身体を硬直させてはいざという時に死ぬから、そしてもう一つは誰かが連れ去られた時にすぐに気付けるように…4人は話し続けている。

 

「なによ、じゃあアンタの都合で4番から上は出さないっての?」

 

「まぁ、俺の都合も勿論あるが…4番より上は総監部の許可が降りないと召喚出来ねぇんだよ」

 

「総監部の許可ぁ〜?なんでそんなんが要るのよ」

 

「お前も察しが悪いなあ…俺で1級相当だって言ってたろ

4番から上は全員特級相当なんだよなあ…勿論、術師基準でな」

 

「……そういう事だ」

 

「特級…アンタ、実は結構ヤバいのね……」

 

「伏黒も特級術師なんだよな?」

 

「一応だ…5番までしか呼べないなら1級扱いになるしな」

 

と、会話の終わりを狙った訳でもないだろうに…恵が言い切った瞬間、妓夫太郎が両手に持っていた鎌を重ねてソレを弾いた。

 

「敵だ…特級相当のな」

 

恵の言葉に二人が遅れて臨戦態勢に入る。

 

「アレ〜?防がれちゃってんじゃん、脹相」

 

「穿血の初速を見切るとは…結構やるみたいだね」

 

継ぎ接ぎだらけの男と頭に縫い目のある女はそう言うと恵達を品定めするように観察する。

 

「ふん、良く見ろ…見切れてなどいるものか」

 

ツインテールの男は憮然とした態度で妓夫太郎を指差す。

 

「…チッ」

 

忌々しげに舌打ちをする妓夫太郎…その右腕は前腕の中ほどからちぎれかけぶらぶらと揺れていた。

 

「なんだアレ!赤いビーム!?」

 

「穿血…っ!赤血操術か!!」

 

困惑する虎杖達を背に恵と妓夫太郎が構える。

 

「はじめまして、伏黒恵君」

 

一歩、頭に縫い目のある女が歩み出る。

痛々しく残るその傷跡が、艶かしく扇情的な女だった。

 

「何者だ…」

 

「何者か…そうだね、強いて言うなら───君のファンってところかな」

 

「………は?」

 

この場に似つかわしくない恵の間の抜けた返事、しかし誰もソレを叱咤する事は出来なかった。

それ程に、女の顔は真剣そのものだった。

 

「史上最速…僅か2歳で特級術師に認定された天才術師、伏黒恵

これは本来、有り得べからざる事態だ…遅い速いの話じゃあない、生得術式というのは本来3〜5歳頃に自覚し理解するものだ

これは才能の有無に左右されるものじゃない、脳の発達…特に術式が刻まれる前頭前野の発達がその頃になるという話だ」

 

女はどこか遠くを見るように、何かを……面白い何かを期待するように話し続ける。

 

「現代最強との呼び声高い五条悟と夏油傑にも、史上最悪の術師と恐れられる両面宿儺にも見られなかった現象だ…君は、脳がまだ未発達の状態にも関わらず術式を使用していた

巧遅は拙速に如かず…ふふ、君の場合は拙速という訳でもないけどね」

 

女は妓夫太郎の腕を見て、更に笑みを深める。

傷一つ無く再生し終えた右腕を見て。

 

「真人、脹相…烏合は任せるよ」

 

「ん〜、虎杖悠仁は器にするんじゃ無かった?殺しちゃって良いの??」

 

「構わないよ…()()()()()よりも、ずっと面白いものが眼の前にあるんだから」

 

酷薄な笑み、その矛先に…恵は叫ぶ。

 

「虎杖、釘崎!逃げろ!!」

 

振り返った恵の視線の先には、既に継ぎ接ぎ呪霊が二人と対峙していた。

 

「あ~あ、そんな事言って…後で裏梅に殺されても知らないよ?」

 

「じゃあ殺すな…なんて言っても聞かないだろう?」

 

「そりゃそうだよ、俺は呪いなんだから」

 

「…ッ!クソ!!」

 

二人のもとへ向かおうとした恵に突如として襲い掛かる、不可視の重圧。

呼吸と武技、更に呪力で肉体を強化していなければまともに立つ事もままならない程の力に恵は忌々しげに影から呪具を取り出す。

 

「こらこら、女性からの誘いをそう無碍にするものじゃないよ」

 

「……やってやるよ…!」

 

 

「血鬼術」

「赤血操術」

「飛び血鎌」「苅祓」

 

互いに放たれた血の斬撃が悍ましく戦場を彩り爆ぜる。

妓夫太郎は不服そうに、不機嫌そうにツインテールの男を見ながら鎌を振り上げる。

 

「みっともねぇみっともねぇ、みっともねぇなあ…」

 

「なんだ、何が言いたい」

 

「兄貴なら……弟ぐらい守ってやれよなあ

本当に───みっともねぇなあ……!!!」

 

バリバリと、不機嫌そうに首を掻き毟りながら…妓夫太郎は脹相に敵対する。

兄貴として…妹に誇れるお兄ちゃんとして。

 

「やるしかないわね…」

 

釘崎は覚悟を決め、デコハンマーを構える。

 

「……しッ!!」

 

ピシャリ、と両頬を自ら叩き虎杖が構える。

祖父の呪いを胸に、人を助ける為に。

 

 

 

 

 




Q.何故お兄ちゃんが受肉してるんですか?
A.メンタル最高の五条悟、同じくメンタル最高の夏油傑に加えクソみてぇな術式持ちの恵がいるのにメロンパンナちゃんが原作通りにちまちま戦力増強なんてする筈がないから
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