転生したら直斗のお兄ちゃんでした 作:どけ!俺はお兄ちゃんだぞ!
はっきりと言おう、テンプレである。
のうのうと生きていたらトラックに跳ね飛ばされ、神(?)に
『能力あげゆ!頑張ってねw』
と言われて目が覚めたら赤ん坊である。
現在は中学1年生程度で能力については確認済みで、軽く物を動かせる程度のテレキネシスとマッチくらいの火を出せるパイロキネシス、そしてある程度(自分の身長と同じくらいかつ、自分が持つことのできる質量)のものを作り出せる物質生成。
これらは俺の成長とともに強くなっているため、おそらく高校生くらいには超能力バトル漫画で戦えるくらいの能力になるだろう。
調子に乗ったようになってしまうが、俺は前世の記憶(勉強だけしてた灰色の記憶)があるため、勉強面では無敵であり、日常生活でも同じ理由でなんでもこなせる天才児である。
しかし、そんな俺にも弱点がある。
「お兄ちゃん!」
それは、前世にはいなかった、二歳年の離れた妹である。
「なんだ?」
「あっちいこ!」
「あぁ」
全てが経験済みだったはずの二週目の人生で、唯一妹だけは初体験で、最高にかわいい妹だが接し方に困ってしまう。
何事も経験と前例が大事だ。
これからは妹について日記をつけることにしよう。
─────────────
(数年後、直斗視点)
六月六日、今日は兄の日らしい。
僕の兄さんはいつでも冷静だ。
どんな時でも、どんなことがあっても。
僕がわからないことも兄さんはなんでも知っている。
ずっと昔から兄さんは僕の憧れだった。
でも、
「兄さん」
「……なんだ?」
兄さんはきっと僕のことが苦手だ。
僕が話しかけると、兄さんは少し困ったような顔をする。
僕といる時だけ、兄さんは冷静じゃなくなる。
それはきっと兄さんが僕のことを嫌っているからなんだと、そう思う。
「……少し遅いですけど、日頃の感謝です」
「そうか、ありがとう。直斗」
僕の顔を見て、笑みを浮かべて名前を呼んでくれた。
それだけで嬉しかった。
でも、兄はすぐに手帳に視線を戻して何かを書き込み始めてしまう。
僕からは興味がなくなったのだと思って、後ろ髪を引かれる思いで兄の部屋から出ようと思ったその時
「直斗」
静かに呼び止められて振り返る。
「今度、少し散歩に行かないか?最近、あまり話せてないだろ」
「……っ!はい、いつでも誘ってください。待ってますね!」
思わず声が弾んでしまった。
でもいつか、できるだけ早く僕は兄さんから離れないといけない。
きっとそれが兄さんの望むことだ。
────────────
(そこからさらに数年後)
僕は八十稲羽に向かうことになった。
きっと兄さんは喜ぶだろう。
嫌われているのは悲しいけれど、最後に喜んだ顔を見たくて、引っ越す二日前の今日に報告をしに行った。
「兄さん」
「……なんだ」
兄さんはこの頃、前より深く考え込むようになった。
部屋から出ることは少なく、部屋の中でトレーニングをしているか勉強をしているかと言った具合だ。
「僕、しばらくこの家から離れることになりました」
「…………なんだと?いつ?どこに?」
帰ってきたのは、予想していたような嬉しそうな声ではなく、背筋が凍るような聞いたことのなかった低い声。
兄さんはいつもよりも眉間に皺を寄せ、細めた目で射殺すようにこちらを見つめている。
「ふ、二日後、八十稲羽に向かいます」
「…………はぁ、そうか。わかった。少し待ってろ」
兄さんは机を漁ったかと思うと、そこから取り出したのは……一丁の拳銃だった。
そこまで恨まれた覚えはなかったし、兄がそんなことをするとも思えなかった。
それでも、背筋に冷や汗が流れる
「に、兄さん?それは?」
「そこまで驚かなくてもいい、模造品だ。また捜査だろう?離れるなら俺は見守ってやれないからな、お守りだ。もしもの時、相手に突き付ければ少しは隙ができるだろう」
兄さんがこちらに差し出してきたそれを、大事に両手で受け取る。
兄さんからのお守りとして渡されたそれは、本体の冷たい温度とは裏腹に、僕の内側に温かさを運んでくるものだった。
嫌っていたはずの僕が離れると言ったのに、何故兄さんはあそこまで不快そうな表情をしたのか?それだけが不可解なまま、僕は八十稲羽に向かった。