転生したら直斗のお兄ちゃんでした 作:どけ!俺はお兄ちゃんだぞ!
修学旅行中、クラブエスカペイドにて、場酔いして王様ゲームをはじめた天城が突然
「じゃ〜あ、直斗君!おにぃさんのこと教えてよ〜!」
酔っ払ったまま、超弩級の爆弾を投下した。
途端に直斗の目つきが鋭くなる。
「……何処で兄のことを?ニュースに取り上げられたこともありましたが、あれ以降二度と話題に出ていないし、反響も少なかったはずです」
「あ、いや、そのニュースたまたま見ててさ、前に少し話題にしてて……」
「私たち、前に会ったもん!優しそうで兄弟思いなお兄さん!」
花村のフォローをりせが無に帰す。
直斗はまさに人が変わったように、声を大きくする
「兄が!?そんなはずありません!だって兄は……!僕のこと…」
直斗はそこまで言うと言葉に詰まって俯く。
「……おい?もしかして、暴力とか……?」
「なっ、兄さんがそんなことするわけないでしょう!……兄さんは、すごい人なんです」
花村の不要な心配と、場酔いとはいえ泥酔した者が二人もいる場の雰囲気が、直斗の口を緩めた
「何をさせても結果を出すし、どんな時でも冷静で、完璧なんです。……僕なんか、歯牙にもかけないほど」
「……え?」
「いつもそうだったんです、僕に必要な時だけ僕の前にいて、それ以外の時はずっと遠くで……、きっと兄さんは僕のことが嫌いだったんです。……だから、兄さんが八十稲羽になんているわけがない」
直斗はそこでふと正気に戻ったらしく、数秒黙った後
「……忘れてください。では、これで」
直斗は深く帽子を被ってその表情を隠すと、早足でその場を去ろうとする。
「お、おい!待てって!じゃあ俺らと考えようぜ?兄さんと仲直りする方法をさ!」
しかし、その曇り切った表情を無視できなかった花村がそれを呼び止める。それによって直斗が足を止めたのを見ると、花村は続けて
「ここにいる鳴上とか人付き合いめっちゃ上手だし、人に好かれるのが本職みたいなりせもいるし、絶対参考になるって!」
「──では、鳴上さんから見て、僕が兄さんとの仲を修復するためには何が必要ですか?」
「まず、直斗は人との距離を測るのが苦手だろう?そしてそれによって二人の間に距離が出来てしまった、それはおそらく侑斗さんも同じだ。それに侑斗さんは言葉が足りない。まずそれを直すところからだ」
鳴上の指摘に思い当たる節があったのか、少し目を見開くと同時に悩ましげな顔をする。
「……いや、兄さんは言葉足らずなんかじゃなくて──」
「直斗くんお兄ちゃんっ子だ〜」
「なっ!?……まぁ、そうですね。それが何か?」
「直接好き〜っていえば良いんじゃない?」
場酔いしたままのりせが直斗にお手本のようなダル絡みを見せる。
直斗はため息を吐くと
「兄さんとの仲を修復するための相談は是非させていただきたいですが、とりあえず後日にしましょう。僕は一度帰ります」
次の日にいくらか真面目な相談を行い、それ以外の部分では修学旅行は予定通りに進行し、八十神高等学校の生徒は八十稲羽へと戻った。