転生したら直斗のお兄ちゃんでした 作:どけ!俺はお兄ちゃんだぞ!
侑斗とそのシャドウが睨み合い、殺し合うその場に出会った鳴上たちは、あまりの熱気と様々な何かの残骸が飛び散るその光景に息を呑む。
侑斗のシャドウはまるで社会人のような黒いスーツにネクタイを締めた格好でその場に立っていた、
《ゴミが紛れ込んだな。……片付けるか》
「見逃すと思うか?」
侑斗のシャドウの背後にいくつもの剣が出現し、独りでに浮かび上がって侑斗の背後にいる鳴上達へと迫る。
しかし、それらは全て彼らに届くよりも前に発火し、溶け落ちる。
「おい、どうなってんだよコレ!?これもペルソナか!?」
「そんな気配はしないクマ……!」
「じゃあアレ…、生身!?」
「おいマジかよ…?マンガじゃねぇんだぞ!?」
すると、侑斗のシャドウは高らかに笑う。
まるで、これ以上に面白いものはないと言うような様子だ。
《──っハハハ!昔はお前は同じように思ってたよなぁ?結局、使う機会なんて今の今までなかった……、お前は主人公なんかじゃなかった。そうだろ?》
「……そうだな。それがどうした?」
《前回の35年間と一緒だな。真面目を気取って上司にも部下にも嫌われて、終いには横断歩道の信号待ちで背後からドン!だもんなぁ?……これ、覚えてるか?お前が大好きだった銘柄だぜ?》
侑斗のシャドウはポケットから取り出したタバコに火をつけると、侑斗の方を見据えて愉快そうに笑っている。
対する侑斗は笑みの一つも浮かべず、背後の鳴上へ問いかける
「……お前は、少なくとも今のところは直斗の敵ではないと考えていいのか?」
「そのつもりです」
「ならば、お前たちに直斗を……、俺の兄妹を託したい。コイツは俺がカタをつける。頼めるか?」
「いや、俺たちもあなたに力を貸します」
「──だが、」
「お節介かも知んないけど、アンタとアンタのシャドウじゃ千日手でしょ」
「……重ねて礼を言う。すまないが作戦を立てている時間はない、合わせてくれ」
侑斗は鳴上と里中の説得にそう言うと、凄まじい速度で自らのシャドウへと肉薄する。鳴上たちもそれぞれペルソナを召喚しそれに続く。
侑斗が生成し、振り下ろした大剣をシャドウは大袈裟なほど後ろへと回避する。
《おいおい、しっかり狙えよな?お前は結局前例と経験だけだ、経験がなきゃ今外したみたいに何もできないんだよ、妹一人だって笑顔にしてやれないんだ》
「……その通りだな、それを今更俺自身に吐き捨てて何になる?」
《はははっ!気づいてるか?お前、すげぇ怖い顔してるぜ?遠縁の親戚に言われた“気味が悪い鉄仮面”って渾名がそんなに気に入ったか?》
侑斗のシャドウは本人からは想像もできないほどの挑発的な口調と仕草で挑発しながら攻撃、後退を繰り返す。
その巧みな言葉に、それが誘導だと勘付く者はいなかった。
一つの曲がり角と扉の向こうに消えたシャドウを追って、侑斗がドアをその能力で破壊して中へと入る。
すると
「……兄さんが、二人?」
《っハハハ!そうだよ、俺がお前の兄さんだ》
そう言ってニンマリと笑ったシャドウはスーツの内側から拳銃を─────直斗に手渡したソレと同じ形状の実銃を──取り出し、直斗に向けた。
「──直斗!」
銃声が響き、やけに静まり返ったその場に血の流れる音が反響する。
「…………あ──え?」
銃弾を受けたのは、直斗ではなく侑斗だった。
侑斗は立ち上がり、手に持つ剣を半ば引き摺るようにしてシャドウへと肉薄し、壁まで突き刺さるほどの勢いでそれを自らのシャドウへと突き立てた。
《……ハハっ、いいのかよ?俺はお前だぜ?殺したらどうなるか……》
「違うだろう。おそらく、一つ前の俺と、今の俺の表面上の情報を組み合わせた手駒だ。…………おそらく、俺に力を与えた存在の戯れと見て良いだろうな」
《チッ、わかってんのかよ、遊び甲斐がねぇな。もういい、飽きた……勝手にしろ》
侑斗のシャドウと思わしきナニカはそう言って消滅した。
「……直斗、帰るぞ」
「その傷──」
「そんなことはどうでもいい。この場から立ち去るべきだ」
《やだ、行かないでよ……、なんでいつも置いていくの?》
その時初めて、直斗のそばにいた、袖で顔を隠していた少女が顔を見せる。
それは直斗と瓜二つの、直斗のシャドウだった。