転生したら直斗のお兄ちゃんでした 作:どけ!俺はお兄ちゃんだぞ!
《なんでいつも置いていくの?》
そう言った少女の顔は直斗と瓜二つ。
そこにいるのは白鐘直斗のシャドウだった。
「……っ」
「……帰りましょう、兄さん」
直斗のシャドウが発した言葉に狼狽える侑斗と、この場所を立ち去ることを促す直斗。
《八十稲羽に来てくれたって聞いて嬉しかったのに、もう行っちゃうの?僕をまた一人にして……》
「……」
侑斗はその言葉に眉一つ動かさない。
しかし、動きを止めてその瞳を直斗のシャドウに向ける。
《兄さんは、結果が全てなんでしょう?だから結果を出さない僕なんかには構ってくれない。だから、僕はここで偉大な成果を見せるよ》
「……ゲノムプロジェクト、というヤツか?」
《そうだよ!見ていて兄さん!僕は、あなたの隣に立つにふさわしい立派な男の人に──》
シャドウの言葉を遮るように、直斗は呟く。
「……違う」
《何が違うんだよ?振り向いて欲しかったんだろ?構って欲しかったんだろ?誰もが羨む理想の兄の足を引っ張って、それでもそばにいて欲しかったんだろ?》
「違う違う!僕は、兄さんの足を引っ張ろうなんて──」
《素直になれよ……そばにいて欲しかったんだろ?足を引っ張ってでもさ》
その一言に、直斗は目を見開く。
シャドウはさらに言葉を続ける。
《男になりたい、でもそれよりももっと大切なのは兄さんの隣にいること。男になって兄さんの隣にいたい、それができないなら、自分の隣まで兄さんを──》
「違う!そんな……そんなの、僕じゃない!」
直斗が吐き出したのは、目を逸らし続けた愚かな自分への自己否定。
薄々気がついていた、自分の醜い願望への否定の言葉。
その言葉が、自らのシャドウを暴走させるとも知らずに。
シャドウが急速に人の形を失っていく。
機械のアームで白鐘直斗本人を拘束したシャドウは、その武器を自らの兄へと向ける。
《そこで黙って見ていろ。僕は、兄さんを僕の隣まで引き摺り下ろす》
「……そうか、出来るものならやってみると良い」
「ちょっ!?お兄さん!?」
直斗のシャドウへと目線を向け、大剣を構えた侑斗に陽介が驚愕の声を上げるが、しかし侑斗はそれに目も向けずに直斗のシャドウを見つめる。
《我は影……真なる我。ごめんね…少し痛い目に合ってもらうよ、兄さん》
「……構わん。俺は兄としてすべき事をするだけだ」
《……そう、なら僕が何もできなくしてあげるよ!……そうすれば、きっと今までよりも長く僕の隣にいてくれる》
特撮の光線銃のような形状になった腕を侑斗へと向けるシャドウ。
侑斗はそれを見ると、炎と共にシャドウへと駆け出した。