【完結】黄昏の輪舞   作:扇架

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十七話

「高等魔法試験の君の成績は最高だった……闇祓いになる資格は十分満たしている」

 誇らしいよ、と口にしてスラグホーンは寂しげに微笑んだ。

「ホグワーツの教員になる路もあるのだよ?」

「今は、席が空いていないはずですが」

 彼がゆるく首を振った。

「今年で、ホグワーツを去ろうと思う」

 眼を見開いた。

「教師をお辞めになると?」

「そろそろ潮時かと思ってね……心配な生徒は卒業してしまうし……」

 『心配な生徒』というのがリーンであることは明らかで、らしくもなく涙ぐみそうになった。

「ご心配ばかり、おかけして……」

「いいんだ。君が悪かったことなどない。君はいつだって被害を受ける側だった……だからこそ、これからはホグワーツで安心して暮らしてほしいのだよ。ダンブルドアの元でなら、それが叶うだろう」

 君に死んでほしくない、と言外に言われていた。気にかけてくれているのだ、と思えば首を振ることは躊躇われたが、結局うなずくことはしなかった。

――私がこの城に留まれば

 畢竟、敵に理由を与えることになる。ダンブルドアがいてもなお、城を襲撃する理由を。それは嫌だった。リアイス姓の者であるのなら、この闇の時代、それなりの覚悟はできている。

「ダンブルドアの庇護下に入り、ただ震えているだけという選択は、私たちにはできません。リアイスはいつだって戦ってきました。今回もそうするだけです……流された血と涙に、狂わされた運命のためにも」

「君たちだって普通の魔法使いと魔女の一族だ……戦いに背を向けても、誰も責めない。いいや、私は責めない。それを覚えておいてくれ」

 リーンは淡く笑みを刷いた。

「その言葉が、私たちにとっての救いです」

 

――卒業の式典が終わり、人混みのなか彼を捜した。

 おそらく、卒業してしまえば会えないだろうと予感して。

「……セブ!!」

 ローブを纏い、緑の絹布を肩に掛けた友人が振り返った。

「リアイス……」

「もう行ってしまったのかと思ったわ」

 袖を掴んだ。逃げられたらたまらない。式典のためのそれは、布がたっぷり使ってあって、引っ張るのに便利だった。

 困ったように彼がリーンを見下ろしているのを感じた。

「黙っていこうとするなんて」

「今更交わす言葉もないだろう」

「酷いわ、セブ」

 やんわりと掴んだ袖から手が引きはがされた。彼は暗い目でリーンを見つめる。

「お前と僕とは路が分かれる。それぐらい、分かってるはずだろう」

「……一緒に来て、と言っても駄目なのね」

「ああ。僕は約束を果たさなければならない」

 誰との、とは彼は言わなかった。

「お前に幸運を、リアイス。それに、できたら考え直せよ」

 ふわりとローブの裾がふくらみ、彼は去っていった。

――側で守るのが僕の役目じゃない

 小さな呟きは、リーンに届かなかった。

 そして卒業の日が、リーン・リアイスとセブルス・スネイプが親友として会った、最後の日となる。

 

「あいつとなにを話してた?」

「ただの立ち話よ、シリウス」

 灰色の眼には疑念がありありと浮かんでいた。ぐっと腕を掴もうとして、思い直したかのように手を掴まれる。

 彼がつけているのは深紅の絹布。リーンの緑の絹布をちらと見たものの、何も言わなかった。

――なんだか妙な成り行きだわ

 入学当初なら考えもしなかったのに。

 手を引かれるまま、ジェームズたちが待つ場所へと向かった。

「二人ともアツアツ……ッ!」

 シリウスの怒りのこもった無言呪文を危ういところでかわし、盛大にすっころぶ。

「ねえ酷くない!? 酷くないかい?」

「お前がいっちいちからかってくるからだろうがクソ眼鏡!!」

「ねえリーン、やっぱこんなの止めたほうがいいよ。レギュラスのほうが……ぎゃぁぁ!!」

「てめえ今度言ったらこんぐらいじゃすまねえぞ」

 容赦なくジェームズを地に沈めたシリウスがうなった。リーンは彼の肩をぽんぽん叩く。

「落ち着いて。ジェームズがバカなのはいつものことじゃない」

「ああ……そうだな」

 やっとシリウスが杖を仕舞った。リリーが呆れ顔で埋まったジェームズを救出する。

「まったく、別に二人がつきあったっていいでしょう、ジェームズ!」

「だってさあ……大事な僕の親友なんだよ? なんでこんなちゃらちゃらした男に」

「娘を取られて怒る父親族じゃないんだから」

 二人のバカげたやりとりに、リーンとシリウスはそろってため息をついた。やりとりがいちいちコミカルで、怒る気力すら無くなる。

「……とにかく、行きましょうか……不死鳥の騎士団本部へ」

 集まった有志たちは、一斉に頷いた。

 

 

 不死鳥の騎士団本部はありとあらゆる防護、位置発見不可などの魔法がかけられた邸だった。リアイス本家が所有するものの一つだ。

「……情報を整理しよう」

 エドガー・ボーンズが机を指で叩く。席についているのは、リーン、シリウス、ジェームズ、リリー、アリス、フランク、ギデオン、フェービアンだった。

「今のところ死喰いと確定しているのは、ルシウス・マルフォイ、ベラトリックス・レストレンジ、ロドルファス・レストレンジ、フェンリール・グレイバック、カロー兄妹……ノット、クラッブ……」

「イゴール・カルカロフが死喰い人だと情報が入ったわ」

 リーンが口を挟めば、一気に注目が集まった。

「確か、君たちより何学年か上だったが……リーン、そいつはどんな奴だ」

 スリザリン出身はリーンだけだ。なので、自然と質問されることが多かった。

 カルカロフとあまり話したことはない。接点はないといってもいいぐらいだった。

『あの男は……』

 ふっと、軽蔑したような眼をしていた、魔女の姿が脳裏に浮かんだ。

――彼女はなんと言っていた?

「臆病者、自己保身に走る……戦闘力はそれなりだけど、人の上に立つ器ではない、と」

 エドガーが軽く頷いた。宙を睨むようにする。

「注意すべきは?」

「ルシウス・マルフォイとベラトリックス・レストレンジ。前者は大量のガリオンを所有してるし、後者は……強いわ」

 確かに、とフランクが頷いた。

「一番闇祓いを多く殺しているのはベラトリックスだって噂だ」

「違わないでしょうね」

 闇の帝王の副官ともあだなされる彼女は、警戒すべき敵だった。

「レストレンジどもは夫婦ともども死喰い人なわけだが……マルフォイ家はどうなんだ」

「ナルシッサ・マルフォイのこと?」

 問いかけてきたギデオンに返した。首を横に振る。

「彼女は直接的に参加していないと思うわ……。純血主義ではあっても、戦いや殺人を好むことはない。なんというか、ごく平均的なスリザリンよ」

 シリウスが鼻を鳴らす。彼を軽く睨んでから続けた。

「むしろレストレンジたちのほうが珍しいわ。そんな危険の多いこと、したいはずがないもの……そして死喰い人より危険なのが……」

「服従の呪文かい?」

「ええ、そうよ、リーマス」

「誰が敵だか味方だか分からないもんねえ」

 ジェームズが頭をくしゃくしゃにした。

「使ったら殺して亡者にして再利用だしな」

 シリウスの遠慮ない言葉に、リリーが顔をしかめた。

「うちの一族も頭を悩ませているわ。まさか、こちらも亡者をつくるわけにもいかないし」

 続きを口にしかけて、止めた。亡者を追い込み魔法生物に喰い殺させているなんて話は誰も聞きたくないだろう。彼らは放てばそれだけでいい。獰猛に亡者の群れにつっこんでいく。

「リーン、また情報が入ったら教えてくれ。さあ、闇祓い志望者諸君は、勉強に励むんだな。試験が近いだろう?」

「僕らはマッド・アイにしごいてもらってるから受かるよ、エドガー」

「慢心はいけない」

 ハッフルパフらしいもの言いで、とおどけつつ、ジェームズが席を立つ。皆も彼にならった。

 

「ヤツらの手持ちの亡者はほぼ消したわ」

 本家、執務室で書き物をしていた手を止め、入室してきたネメシスを眺めやった。服はしめり、腐臭が鼻を突く。

「そのようね……こちらの損害は」

「グリフィンが二頭。第六分家クーラントの魔法使いが二名死亡」

「少なくとも、亡者はしばらく増えないでしょう……手間がかかりすぎる」

 そうね、とだけネメシスは答えた。リーンより二学年上の魔女は、近寄りがたい何かを纏っているような女だった。だが、今はその淡々とした態度がありがたい。

――彼女たちは成果を求められている

 かつてリーンを殺そうとしていた魔法使いたちを輩出した分家は必死だった。相応の働きがなければ、他の分家と――本家の顰蹙を買うと肌で感じているからだ。

「人狼は」

「拮抗している。こちらは亡者と違って手間はいらない。噛めば済む」

「保護した者は聖マンゴに収容しているわね?」

「もちろん……今のところ家族からの殺害依頼もない」

 ネメシスが顔をしかめていた。リーンも同じような顔をしているのだろう。ぽつりと呟いた。

「あなたが人狼を哀れむなんてね、ネメシス」

 彼女がいびつに笑う。

「私たちは役目として人狼殺しをしているだけで、好んでいるわけではない……あなたの父親や先代を襲った人狼は別だけれど」

「手出しは許さないわよ……フェンリールは私の獲物」

「でしょうね。第七分家ドーマントもそうだろうけど」

 今のところ、ネメシスが所属するクーラントと、リーンの公的な父、ミスラが所属していたドーマントが共同で人狼狩りに参加していた。ドーマントは本来戦闘が専門ではないものの、ミスラの兄であったドーマント当主が出撃を命じたのだ。

 不意に、ネメシスがため息を落とした。

「ランパント。あなたは矛盾に満ちているわね。人狼殺しを命じながら、人狼を治す薬をつくろうとしている」

「向かってくる相手とは戦わなければならない。けれど、そうじゃない人狼だっている……保護された人たちみたいにね。それに、矛盾のない人なんているかしら?」

「そうかもしれない」

 ネメシスが一礼して扉に向かおうとする、刹那、リーンが広げていた本を見た。

「随分古いもののようね……」

「手間がかかって大変よ」

 扉がぱたりと閉まる。リーンは、本を閉じた。表紙を撫でる。

 題は『死の書』。

 それは、ある一族の歴史を綴った書だった。一族の名はユスティヌ。追放されたリアイスと、スリザリンの末裔が出会い、生まれた家系だった、

――彼女は私にこれを残したのだ

 普通の者には読めない。あまりに強い魔力が込められているからであり、読める者を限定しているからでもあった。

 書の主、その人だけである。前の主であるウラニア・ユスティヌはどうやらリーンを指名していたようで、なんとか読みとることができた。

 見つけたのは、本家に帰還し、仕舞込んでいた彼女の遺品を慎重に――一族に見つからないように整理していた時。

 眼を惹いた。そうして手に取った。それが宿命であるかのように。

 冒頭の一節はこうだ。

『我らの愚かなる罪を、ここに記す。すべてが終わったその時、この世から消え去ることを願って』

 魔力を帯びた字は、揺れ、渦巻き、解読するのは容易ではない。ましてや古代語であればなおさらだった。

「……ユスティヌ一族がかつて、分霊を試み、成功したのは間違いないようです」

「彼女が最期に言っていたのは、そのことだったか……」

 深夜の校長室、そこには歴代の校長たちの肖像画と、ダンブルドア、リーン、不死鳥のフォークスだけだ。

「つまり、ヴォルデモートは魂を裂いている」

「そうです」

「伝承としてはあったが、ただのおとぎ話かと思っておった」

 ダンブルドアが髭をそよがせる。ある一片の事実が含まれていたわけじゃ、と一人ごちた。

「あの男はそういった伝承を拾い集めたんでしょう……かつて、世界中を飛び回っていたようだ、と以前先生がおっしゃっていましたから」

「うむ。消息不明の期間が長かった。わしがヴォルデモートでない、優秀な魔法使いの仮面をつけたあの男と会ったのはホグワーツに教員として志願してきたときが最後じゃな」

「ホグワーツの、教員に?」

 思わず口を挟んだ。ダンブルドアが険しい顔のまま肯定する。

「影響を与え、支配することを好んでいたからの。不思議はない」

 スラグホーンに感化された側面もあるかもしれん、と続けられ、リーンの顔がこわばった。

――影響を与えることは好きな先生だけども

 間違っても支配や破壊を選ぶ人ではない。

「無論、ホラスは善良だとも。だが、ある一事が思わぬ風に作用することはままあるのじゃ」

「……はい」

 気を取り直してそれかけた話を元に戻した。

「解読はあまり進んでいませんが……わかったことがあります」

 分霊とはなにか、とリーンは指を振った。

「その名の通り魂を裂きます。それには『死』……もしくは『生け贄』が必要です」

 ダンブルドアが嫌悪も露わに続きを促した。

「裂いた魂を納めるのには、器がいります」

「何か特別なものなのかの?」

「そうです。強度がなければなりません。強度というのは、硬度ではなく……」

「魔力か」

「あるいは……魂の保持者に縁の深いもの」

 話しながらも吐き気がこみ上げてくる。『死の書』の記述を思い返した。

「ユスティヌは……その分霊に成功した者は」

 震えを抑え、声を絞り出した。

「己の夫の遺体を、分霊の器にした、と」

 部屋の空気が凍り付いた。そのように、感じられた。歴代の校長たちが驚愕も露わに悲鳴をあげる。

「条件を満たしていれば、なんでも器にできるというわけか」

 たとえそれが、遺体でも。

「そのよう、です」

 口の中が乾いて、巧く声を出せなかった。

 ダンブルドアは瞑目していたが、顔を上げた。

「ウラニアの言葉からして……器の可能性としては、四強の品――」

 言葉を切る。彼の眼には、強い光が灯っていた。

「器の探索はわしに任せるがよい。君は君のすべきことを、リーン」

「ええ……黄金のグリフィンの名にかけて」

 

 

 某日、魔法省、闇祓い本部訓練施設。

「僕らの努力の成果がわかるわけだ」

 ジェームズが杖を抜く。リーンも彼に習った。闇祓い試験の当日で、アリスとフランクも一緒だ。

――今すぐベッドに入って眠りたい

 切実に思った。『死の書』を懸命に解読していたのと、当主としての仕事で寝不足だった。筆記試験は満点の自信があるが、これから始まる実技は心許ない。

――あれだけ頑張ってもほんの少ししか解読できないなんて

 費用対効果が恐ろしく低い。解読は下手をすれば年単位の作業になるだろう。ほかにやることも多いのだから。

 試験官がやってくる。徽章だけがついていて、階級は不明だった。

「実技は君たちと現役の闇祓いによる対戦だ」

 場所は、と試験官が壁の地図を示す。

「第三演習場にて行う」

 移動せよ、と指示され受験者たちは素直に従った。演習場と名がついてはいるが、実体は森だ。

「現役の闇祓いと対決なんて、ぶっ飛んだ試験だ」

 フランクが朗らかに言った。口調こそ軽いが目つきは真剣そのものだ。

「あらゆる呪文を使い、戦え。ただし死の呪文、磔刑の呪文は禁ずる」

――服従の呪文は許可する、というわけ

 かつての局長であった先代ランパントを呪った。とんでもない試験内容を設定してくれたものだ。

「受験生と闇祓いは同数とする。制限時間は一時間……花火を打ち上げれば開始だ。また、終了時も花火を打ち上げる。色は、黄金。合図を見逃さないように!」

 試験官が杖を振り上げ、構える間もなく花火が打ち上がった。

 とたんに呪文が飛んできて、アリス、フランク、リーン、ジェームズは一斉に跳び退いた。地に穴が空いていく。

「あらあら……本当に、なんて荒っぽいのかしら――失神せよ!」

 アリスはふわふわした容姿とは対照的な、鋭い一撃を打ち込んだ。敵の闇祓いが障壁を展開する。リーンは腕を振る。四人は二組に別れて広場から樹々の間に飛び込んだ。

 緑の影が落ちる。

――動物もどきになれれば楽なんだけど

 森は獣たちの場だ。切り抜けられる。しかし、非合法の動物もどきだと露見するわけにはいかない。

 ジェームズが次々に罠を埋め込んでいく。本職相手にどこまで通用するか分からないが、ないよりマシだ。

「浮遊せよ」

 小さく唱え、自らとジェームズを数センチだけ地面から浮かせた。枯葉に覆われたこの戦場は、追跡するに易く、逃げるに難い。

 そのまま、走り続けた。背後から何の気配もしない。

――不安だけがせり上がる

 すぐそばまで来ているのではないかと。ちらと時計を確認しようとして、受験前に預けたことを思い出した。時間の感覚を麻痺させる一環だったのだ、と今更気づく。

「服従せよ!」

 どこからともなく呪文が響く。影が降ってきた。ジェームズがよろめく。

――二人

 闇祓いが杖を向けている。ジェームズは使い物になるか分からない。一人が杖を振り上げようとした刹那、リーンはしなるように杖を動かした。

 発射された呪文を跳ね返す。ジェームズの腕を取った。

「起きなさい!! ジェームズ・チャールズ・ポッター!!」

 二人に間を裂こうとするかのように呪文が襲いかかってきて、跳ねるように避けた。

「杖よ去れ!」

 ほんの一瞬の油断。杖がすっ飛んでいく。じり、と闇祓いが間合いを詰める。だが、リーンが距離を縮めるほうが早かった。地を蹴る。闇祓いの腕を取り、ぐいと引く。よろめいた男に膝を叩き込んだ。

「くそ!」

 相棒が倒れたのを見て取って、片割れが呪文を放った。すれすれで避ける。杖を拾い上げた。呪文の応戦が続き、樹に焼け焦げがいくつもできた。あちこちに傷ができるのがわかったが構っていられない。背後に気配がわいて、身をかがめた。後ろからの攻撃が外れる。

――操られているなんて厄介ね

「このバカ!」

 汗みずくになりながら、闇祓いとジェームズの攻撃をかわし続けた。

「蛇よ!」

 呼び出された蛇が、闇祓いに飛びかかる。その隙だけでよかった。単純な命令しか受けていないのだろうジェームズの動きは普段と比べて遅い。足をひっかけ転がす。

「解除せよ!」

 ジェームズの眼に光がともる。乱暴に肩を叩けば、今自分がどこにいて、何をするべきかを思い出したようだった。

「悪いね」

「いいえ」

 リーンに撃ち込まれた呪文を跳ね返し、敵に損傷を与えた。ジェームズは短距離姿くらましを使い、闇祓いの背後を取った。呪文を唱えようした次の瞬間、花火が打ち上げられた。

 

 

 実技及び面接を経て、再び彼らは集まっていた。監督官が彼ら四人を順繰りに眺めた後、読み上げる。

「アリス・プルウェット、フランク・ロングボトム、ジェームズ・ポッター、リーン・リアイス。合格である」

 ジェームズがへなへなと崩れた。彼は実技試験で服従の呪文を食らったことで落とされるのではないかと気に病んでいたのだ。

「君達四人は座学において好成績であった。アリス・プルウェットは実技試験において見事な失神呪文を放った。フランク・ロングボトムは隠遁術において優れていたことが確認された。ジェームズ・ポッターは服従の呪文にかけられたものの、その後短距離姿くらましを使っての、敵に背後に出ることに成功。リーン・リアイス、君は体術と呪文速度にいて特にすぐれていた」

 彼は何事かを呟いた。姿が溶けるように変わっていく。リーンは眼を見開いた。一度だけ、見かけたことがある。数年前、マルフォイ家で――。

「ル、ルーファスさん!?」

 闇祓いはにやりと笑う。

「マッド・アイが眼をつけただけある。見物していたが、なかなか面白い実技試験だったよ」

 彼は杖を振る。四人それぞれの前に、何かが浮かんだ。

「闇祓いの徽章だ」

 "鷹の翼持つ死神"そして小さな星が一つ。

「君達は今日から第一階位の闇祓いだ。その翼にて敵を追い、刃にて屠らんことを!」

 彼の敬礼に合わせ、リーンたちも敬礼した。

 ちかりと徽章が光を弾いた。

 

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