俺はディオ!ジョジョの親友で、本当の紳士を目指す者さ! 作:バケギツネ
◆
この物語は、メキシコから発見された“謎の石仮面”に纏わる、2人の少年の冒険譚である!
...はずだった。
◇
『...ォ!...おい、ディオ!!』
うぉっ!?俺寝てた!?
耳に響いたのは、聞き覚えのない皺がれた声。椅子に座ったままグッスリと眠っていたらしい俺は、その声によって飛び起きる。
「あれ?」(CV○安武人)
俺は確か、大学のサークル打ち上げで飲み過ぎてぶっ倒れ...ヤッベ!それ以降の記憶がねえ!!
「ここどこ!?知らない天井!?」(CV 子安武人)
ありゃ、昨晩酒を飲みすぎたせいかな?
俺の声がやたらと低い気がするな。
いやそんな事より!
辺りを見回してみると、どうやら室内の様だが...ボロっ。部屋の白い壁は汚れだらけで、幾つもヒビが入っている。
「ん、なんだコレ?」
自分の手には、なんだか分厚くて難しそうな本が握られていた。全部英語だ。
「????????」
え、どうなってんの?
これ、夢...?
『オイ!さっきから聞こえねえのか、ディオ!!』
「!!!!」
同じ部屋のベッドには、知らないヨボヨボおじいちゃんが横たわり、めちゃめちゃ咳き込んでいた。
なんだかすげえ苦しそう!
状況はよく分からんが、とにかく助けなくては!!
「だ、大丈夫ですか!?おじいちゃん!!救急車呼びますか!?」
『ん、きゅうきゅうしゃ?ナニ寝ぼけてやがんだ、ディオ。ちょっとこっちへ来い!息子のおめえに話がある...』
どうやらこのおじいちゃんは、俺のことを自分の息子さんと勘違いしている様だ。
名前から察するに、外国の人なのかな?
“でぃお”さんって。
『俺はもう長くねえ。分かるんだよ、直に死ぬ...だから、』
「ちょ、ちょちょ、ちょっとその遺言っぽい奴ストップ!!」
何か凄く大事なことを言い遺しそうな雰囲気だったので、慌てておじいちゃんを静止する。
そう言うのは、本当の息子さんに聞かせないとでしょ!無関係の俺に聞かせてどーするよ!?
「おじいちゃん、しっかりしてください!俺は、息子さんじゃありませんよ!」
『いーかげんにしろッ!!いつまで寝ぼけてやがる!その鮮やかな金髪に、腹が立つほど整った顔立ち!間違うはずがねえ!!お前は俺の1人息子、ディオ・ブランドーだ!!』
「いや、困ります。そう言われても」
このおじいちゃんには、一体ナニが見えてるんだ?
俺、髪は黒いし、顔は良くて普通止まり。ましてやバリバリの日本人だぞ?
俺が、“でぃお・ぶらんどー”さんなんて事はありえな...ってアレ?
動き回ってみて気付いたのだが、何だかいつもより体が重いぞ。それに着ている服にも見覚えがない。
いや、まさか。まさかな。
『ディオ...?』
「ちょ、ちょっと待ってて!おじいちゃん!!」
俺は慌てて、今自分のいる部屋を見渡してみる。
「鏡、鏡...あ、アレでいいか!!」
俺は部屋の窓へと近付いて、そこに映る自分の姿を確認した。
「...誰?このイケメン」
そこにはおじいちゃんの言う通り、鮮やかな金髪に、腹が立つほど整った顔立ちをしている、知らない外国人の姿があった。
「なんてこったい...」
自分の顔を思いっきり引っ叩く。クッソ痛かった。どうやら夢ではないらしい...
俺は確かに、“ディオ・ブランドー”とか言う別人になってしまっている...!
「え、どゆこと?異世界転生、的な?」
もう、わけがわからない!!
俺はこれから、一体どうすれば...
『おい、ディオ。さっきからどうし――』
「お父さーーーーん!!助けてーーー!!!」
もうこうなれば、この世界で頼れるのは俺の父親と思われるこのおじいちゃんだけ!!
『ディオ、お前道端に生えてる汚ねえキノコでも食ったか?いつもと様子が違いすぎるぞ』
ギ、ギギギギクッ!!怪しまれてる!!
だってしょうがないじゃん!本物のディオさんがどう言う感じか、全然わからないんだもの!せめて、俺が転生する前までの記憶くらいは引き継がせて欲しかった!!
いくら何でも、転生の仕様がハード過ぎんだろうが!
「い、いつもと違う!?HAHAHA、そんなまさか〜」
転生の事を正直に話すか?
いや、ダメだ!信じて貰えるわけがない!
万が一、転生者だという理由でこのおじいちゃんに見放されでもしたら、俺はこの異世界で生きていけないだろうし!
「ご、ごめんよ。父さんが、もう長くないって聞いて、その、柄にもなく動揺してしまったんだ...」
『ディオ、おまえそこまで俺の事を...!』
ごめんなさい、おじいちゃん。
全部口から出まかせです。
『ディオ、お前は父親思いのいい奴だな...』
うっ!!
何だかおじいちゃんを騙しているみたいで、心が痛む!!
罪悪感に押しつぶされそうな俺を他所に、おじいちゃんの話はどんどんヒートアップしていった。
『思えばおまえには、苦労をかけちまったな。何度も酷え事を言っちまった。なのにお前は、金がねえのによぉ〜、チェスの賞金で毎日欠かさず俺に“薬”を買って来て...』
「そ、そうだね〜」
そうだったの!?
ディオ・ブランドー、メチャメチャいい奴じゃん!聖人かよ!!
◆
実際のところ、本物のディオ・ブランドーが毎日用意していた“薬”は、父親を徐々に弱らせて死に追い込む為の毒薬である。
しかし、この世界に転生してきたばかりの偽ディオは、そんな事を知る由もない。
◇
ディオさん、お父さんの事が大好きだったんだろうなぁ〜。自分で稼いだお金を全部、薬代に充てていたなんて。
まあ、それも当然か。
ディオさんにとっては、父親だけが唯一の家族だったみたいだし。
『ディオ、俺が死んだら...この手紙を出して、この宛名の人んとこへ行け!』
かなり呼吸が辛そうになってきたおじいちゃんは、震える手で俺に一枚の手紙を差し出した。
「と、父さん?これは...?」
俺は受け取った手紙を眺める。不思議と、そこに書かれている英語を解読する事ができた。
そういや俺、外国人であるおじいちゃんとも普通に会話できてるしな。もしかして、これが唯一の転生特典!?
どれどれ、手紙の宛名に書いてある名前は...
ジョースター?
『ソイツなら、きっとお前の面倒を見てくれる。きっと、学校にも行かせてくれるだろう』
マジっすか!?か、勝った!!!!!
俺の異世界生活に希望が見えてきたぞ!
「でも、そのジョースターって人は、何でそこまで?もしかして、父さんに何か借りでも?」
『お、おう...』
◆
ディオの父、ダリオ・ブランドー。
ジョナサンの父親、ジョージ・ジョースター。
2人が出会ったのは、12年前の雨の日だった。
実際のところは、馬車の事故で気絶したジョージが、自身から金品をせしめたダリオを、命の恩人だと勘違いしたというもの。
何ならその勘違いも、後に全ての真相が判明する事となるのだが...
『じ、実はな、ディオ。俺ぁ、その貴族の命の恩人なんだ』
「え、そうなの!?」
父親として、1人の男として、自身を想う息子()を前にダリオは見栄を張った。
彼はどこまでも、自分のちっぽけなプライドに固執する男だったのだ。その辺りは、彼の“本物”の息子に受け継がれていたのかもしれない。
「その話、詳しく聞かせて欲しい!!」
『お、おうよ!最期に教えてやらぁ、この俺の武勇伝をなあ!!』
彼が息子に語ったのは、ありもしない出鱈目な過去だった。
『ジョースター卿の馬車が崖下に転落しててな。死にかけてたソイツを、俺は命懸けで助けたってわけだぁ!』
「凄い!カッコいいよ父さん!!」
『へ、へへへッ、そうか?ま、まあ、紳士として、当然の事をしたまでよ!ハハハハッ!!』
転生者である偽ディオはそれを信じ込み、その結果...
「俺はディオ・ブランドー!父、ダリオ・ブランドーのような、本当の紳士を目指している者だッ!!」
その結果、ジョースター家の一人息子であるジョナサン・ジョースターの生活は、それまでよりも少しだけ、楽しいものになったとか、ならなかったとか。