俺はディオ!ジョジョの親友で、本当の紳士を目指す者さ! 作:バケギツネ
◇
「ハッ!!」
見慣れない室内で、毛布に包まった俺は目を覚ます。
「あれ、俺は確か...」
そうだ!突然現れた“金色の人型悪霊”に追い詰められた俺は、川へと転落して、溺れて....
『よかった!!気が付いたんだね!!』
俺の目の前には、水に濡れた上等なスーツを身に纏う好青年の姿があった。
元はといえば、ゴロツキに絡まれていたこの好青年を助けようと、飛び出してきたのが騒動の始まりだったっけ。
逆に助けられてしまうとは、情けない。
「キミが助けてくれたんだね。ありがとう、心から礼を言わせてくれ。」
『っ!!よしてくれ。』
起き上がって礼を述べようとする俺を、好青年は押しとどめる。
『僕はなにも、礼を言ってほしくてキミを助けたわけじゃあない。それに、最初に助けられたのは僕の方だろう?』
好青年は、そう言って爽やかに微笑んだ。
な、なんだよコイツッ!!イケメンかよッ!!
なんて紳士的な男なんだッ!!!
男として、なにもかも負けている気がしてならない...俺もこの人を見習わなくてはッ!!
「あ、そうだ!貴方と一緒にいた女の子と、あのゴロツキたちは...」
ゴロツキ達に絡まれていた、金髪の可愛い女の子もいたはずだ。俺を襲ったあの悪霊が、彼女を次の標的にしたり、ゴロツキ達に追撃を加えたりしていたら、えらい事だッ!!
今すぐ助けに、
『ああ、その娘は無事だよ。そもそもここは、彼女のお父さんがやっている病院なんだ。あのゴロツキ達も、先程ここに担ぎ込まれたよ。気絶しているようだけど、命に別状はない。』
よかった〜、ひとまず安心だ。
『そうだ!あの女の子から、これを預かってるんだ。』
そう言って好青年は、ブドウが一杯につまったカゴを引っ張り出す。
『僕とキミへのお礼らしい。ほら、一口食べてみなよ。結構いけるよ!』
気にしないでいいのにな〜。まあ、ありがたく受け取っておこう。俺はカゴに入ったブドウをひとつまみして咀嚼する。
ウンまああ〜〜〜いっ!!!
この時代じゃあ、農薬なんてのも無いだろうからな〜。果実本来の優しい甘味が口の中に広がっていく。
『あの娘本人は、黙ってたったの一言も言わなかったんだけどね。今度、2人でブドウのお礼を言いに行こう!』
「うん、そうだね!!」
それにしてもあの女の子、改めて思い出すに、抜群に可愛かったッ!!!
また会えるといいな〜。
一応、この作品世界の主人公であると思われるのが、この俺ディオ・ブランドーだ。
となると俺にも、可愛いヒロインがいたり...
ま、まさかあの娘がッ、俺のヒロインッ!?
た、確かに出会い方としては割とベタベタにベタな感じだったが...
ハッ!!!!!
感じるッ!!俺に“春”が来るッ!!!
彼女と出会った時に、ラブコメの波動を僅かに感じたッ!!(ような気がしないでもない。)
俺をリア充へと押し上げるのは、主人公補正だったッ!!!
前世では叶わず、故に痺れる憧れるぅ!!していた、恋人とのき、き、キス...ッッッ!!!
今ならば、それを平然とやってのける事だってッ...
いや、
無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理ぃ!!!
俺にそんな度胸はないッ!!
そもそもの話、いくら外見がイケメンのディオさんでも、中身が俺じゃあ彼女を作ること自体不可能だろう。
はい、解散解散。
『しかし、一体何があったんだい?あのゴロツキ達はキミが?それに、何がどうして川で溺れたりなんか?』
「いや〜、えっと、ハハハハ。」
まあ、そりゃあ色々と不審に思われるよな〜。
突然現れた悪霊がゴロツキ達をやっつけて、俺の命を狙って追いかけてきたんだッ!!
なんて言い辛いな。
頭おかしい奴だと思われるだけだろう。あの悪霊、俺にしか見えてないみたいだし。
っていうかあの悪霊、どこにいったんだ!?もし奴がどこかに潜んでいて、俺の命を狙っているとしたら...
「あ、あの、俺、そろそろ行かないと...」
『何を言っているんだ。安静にしていなくちゃあ。』
立ち上がりかけた俺は、青年に押しとどめられる。
彼の気持ちは本当に嬉しい.。だがッ、
「悪いがッ、離れてくれ!!俺は悪霊に取り憑かれているんだ!!」
その姿を一瞥した時、俺は何故だか直感的に理解したのだ。あの悪霊の真の力は、恐らく“世界”を支配できるだけのものッ!!
そんな恐ろしい敵との衝突に、他の人を巻き込むわけにはいかない!!
「俺は今すぐに、ここを出て行かなくてはならないッ!!無関係の人間を危険に晒すわけには...」
『無関係なもんかッ!!!』
俺の両肩に置かれた青年の手に、力が入る。
『キミとはまだ出会ったばかりで、お互いによく知りあっているわけじゃあない。だが僕は既にッ、キミに対して奇妙な友情を感じているんだッ!!』
彼の綺麗な瞳は、俺を真っ直ぐに射抜いていた。
『約束しようッ!!もしキミが何かに巻き込まれているのならッ、僕が力になってやるッ!!』
「な、なんでそこまで...」
『僕もキミと同じで、本当の紳士を目指しているからだッ!!困っているキミを、見過ごすわけにはいかないッ!!』
ま、眩しすぎるッ!!この青年、光属性すぎん!?
まるで主人公みたいだッ!!
『それに、今日から同じ家で暮らすんだ。僕たちは、ほとんど家族のようなものじゃないか!』
ん?同じ家で暮らす?えーーっと、それはどういう...
『ああ、まだ名乗っていなかったね。僕の名前は、ジョナサン・ジョースターっていうんだ。』
「キ、キミがジョナサン・ジョースターなのぉぉぉぉ!?」
これはビックリ!!
いやまあ、メインキャラっぽいキャラデザだとは思っていたのだが、まさか彼がそうだとはッ!!
「え、えっと、あの、俺は、」
『ディオ・ブランドーだろう?あの時、自分で名乗っていたじゃないか。』
あ、そういえば...
ゴロツキ達に啖呵を切った時、この青年・ジョナサンもそのばにいたんだっけか。
何か、色々恥ずかしくなってきた。
『さて、ディオ。ゆっくりでいい。キミの抱えている問題を、僕にも話してくれないか?』
ジョナサン、めちゃめちゃいい奴じゃないかッ!!
引き取り先の貴族の息子、しかも同い年というポジションの都合上、勝手に敵キャラだと疑っててごめんなさいッ!!
もしかしたら彼はこの世界の“原作”においても、主人公である俺の親友兼ライバル兼相棒ポジションだったのかもしれないッ!!
この人になら、全てを打ち明けてもいいのでは?
「...俺はディオ・ブランドー!父、ダリオ・ブランドーのような、本当の紳士を目指している者だッ!!」
俺は未来の親友兼ライバル兼相棒(仮)を前にして、改めて名乗る。
「今から俺の言うことを、信じてくれるか?」
『ああ。たとえ世界中がキミを疑っても、僕だけはキミを信じ抜いてみせるッ!!ジョースター家の名誉にかけてッ、誓ってもいいッ!!』
不思議だ。彼のまっすぐな目を見ていると、心が落ち着く。
やはり彼は信用に足る人物だッ!!
きっと原作の俺たちも2人で1つとなって、強大な敵に立ち向かっていたのだろうッ!!
ならばこの世界に転生した俺も、それと同じ道を歩むまで!!
「もしもの時は、俺と一緒に戦ってくれるか?」
『ああ!!勿論だともッ!!!』
彼となら、あの悪霊を倒すことだってッ...
「実は俺、別の世界から転生してきた人間...」
『ディオ様!!ご無事でしょうか!?』
俺が横になっていた診療室のドアが開き、俺をジョースター邸の途中まで送ってくれていた、御者さんが入ってくる。
そういえば、彼を置いてきぼりにして飛び出してしまったんだったな。
『ああ、爺やじゃないか!!』
『おや、ジョジョ坊っちゃまもご一緒でしたか。』
入ってきた御者さんに、ジョナサンが反応する。まあ、ジョースター卿からの遣いで来た人だし、ジョナサンと面識があるのは当然か。
っていうか、ジョジョ?
ああ、“ジョ“ナサン”ジョ“ースターだから、ジョジョっていうあだ名なのか。
なんかそれいいな〜。俺もそういうの考えてみるか!
”デ“ィオ・”ブ“ランドーで、誰が”デブ“だぁ!!!
いや、そんな事より!
「あのぉ、御者さん。すみません!ご迷惑をおかけしました!」
『いえいえ。ひとまず、ディオ様のお命が無事で、何よりです。』
御者さんは白い髭の生えた顔を綻ばせ、穏やかな笑みを浮かべる。
ああ、いい人ッ!!
ジョースター卿周りの人間は、基本全員いい人なんだろうな〜。
『容態の方は、いかがでしょうか?川で溺れてしまったと聞いていたのですが、』
「ああ、平気です。ジョナサンさんが、助けてくれたので!!」
俺がそう言うと、ジョナサンは少し照れ臭そうに鼻の頭をかきながら、話を続ける。
『ディオの呼吸が一瞬止まってしまった時は、かなり焦ったけどね。人工呼吸を繰り返したおかげで、なんとか息を吹き返してくれたんだ。』
「本当にありがとう、ジョナサン。キミは命の恩人だ。人工呼吸まで...え、人工呼吸?」
人工呼吸ッ!?
いやまあ、それが医療行為である事は理解しているし、自分の命を救ってくれた事には感謝しかない。
だが、どうしても想像してしまう。
俺とジョナサンの唇が、ズキュウウウンと重なり合う瞬間をッ!!
「ジョ、ジョナサン。もう、ガールフレンドとかとは、キスをしたのかい?」
『いきなり何を言ってるんだい?まだだけど...』
ジョナサン、ごめんッ!!!!!!
キミの初めての相手は、女の子じゃあないッ!!!
このディオだッ!!!!!!!
いや、マジでごめんッ!!!!
『とにかくディオ。爺やも来たことだし、早く僕達の家へ帰ろう!!キミの話は、その道中に聞かせてくれ!』
「ああ、うん!」
俺はジョジョに手を引かれて、御者さんもとい爺やの操る馬車に乗り込んだ。
『改めて、これからよろしく!ディオ!』
「あ、ああ。これから、お世話になります!ジョナサン!!」
『そういう堅苦しいのはよしてくれ!向こうでも、自分の家だと思って楽にするといい!あと、僕のことはジョジョって呼んでくれ!』
「うん!!よろしくね、ジョジョ!!仲良くしようね〜!!」
今日1日で本当に色々な事が起こったが、何はともあれ。
俺は自らのファーストキスと引き換えに一命を取り留め、生涯の友を得るのだった。
「実は、転生がどーのこーの、」
『な、なんだってッ!!!』
「実は、悪霊がどーのこーの、」
『なんてことだッ!!ディオ、よく話してくれたッ!!』
ちなみに移動中、俺の知ってること全部をジョジョに話したのだが、彼は驚くほどあっさりと信じてくれた。
マジでいい奴ッ!!!