ガールズ&パンツァー 少年の女子高戦車生活   作:ダオダオ

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洗車

 

「いいか 明日には教官がお見えになる 失礼がないように今日中に洗車するように それでは各自取り掛れ」

 

河嶋の号令の下、各チームはそれぞれの戦車の洗車に取り掛かった

 

「あの私たちは…」

 

西住たちの乗るIV号戦車は、既に少年が洗車を終えていたため、彼女たちには特にやるべきことがなかった

 

「んー じゃあ 38の洗車よろしくー」

 

会長はそう言って、自身が率いるチームの38(t)戦車の洗車を西住たちに押し付けた

 

「えー あれ会長たちの戦車じゃないですか」

 

武部が不満の声を上げたが、小山がにこやかにフォローに入った

 

「まあまあ、私も手伝うから ねっ」

 

こうして、西住たちは渋々ながら38(t)戦車の洗車に協力することになった

 

「そういえば ジョン君は?」

 

西住はふと少年の姿が見当たらないことに気づき、生徒会に尋ねた

 

「ああ、奴には……」

 

 

 

その頃、少年は生徒会から命じられ、発見された戦車の資料収集のために姉御の元を訪れていた

 

「…こんな戦車で優勝を目指すの?」

 

彼女は、少年が提示した戦車リストを一瞥して、冷淡な口調で言った

 

「…そんなに絶望的なのか 姉御」

 

少年の問いに、彼女は容赦なく現実を突きつけた

 

「あなたが集めた戦車は大戦前の戦車よ 大戦が終結するまでの戦車が使われる戦車道では、この差は大きいわ」

 

「…具体的な差は?」

 

「大戦前の戦車は歩兵の随伴、中間地帯を自力で通過するため、そして攻撃の陣頭指揮をとりながら戦線を押しやるのが主な役割だったわ 大戦中の戦車はそれに加え、対戦車戦を想定して作られている分、火力、装甲、機動力などが大幅に強化されているわ」

 

「…大戦前の戦車の優位性は?」

 

「ないわよ、残念ながら」

 

彼女は即答した

 

「それに全国大会のルールでは、準々決勝までは10両、準決勝までは15両、決勝戦では20両まで出場できるわ」

 

「…数の少ないことの優位性…」

 

少年が言い終わる前に、彼女は首を横に振った

 

「それに、あなたの話だと経験者は店に来た西住って子だけでしょ」

 

「……」

 

どうやら、大洗女子学園が戦車道の全国大会で勝利を掴む可能性は、極めて低いと言わざるを得なかった

 

「…それで、これらの戦車の整備に必要なパーツはあるのか?」

 

「少年…あなた、本気なの?」

 

彼女は少年の言葉を驚きを隠せなかった

 

「この程度で諦める俺ではない。それで?」

 

「…これなら前送ったコンテナの資材で充分補えると思うけど、消耗品に関してはこの学園艦にあった『せんしゃ倶楽部』って店で大丈夫だと思う」

 

そう言いながら、彼女は必要なものをまとめた資料を少年に手渡した

 

「…意外だな姉御 あんたがここまでしてくれるとは… 正直、乗り気じゃなかっただろ?」

 

「別に、ただの気まぐれよ」

 

彼女の言葉はそっけなかったが、その行動は少年の予想を遥かに上回る協力的姿勢を示していた

 

「ありがとう」

 

少年はそう礼を言い、彼女から教えられた『せんしゃ倶楽部』へと向かった

 

 

 

 

店に到着した頃には、既に夕陽が西に傾き、辺りは茜色に染まり始めていた(こんなに時間が経っていたのか)と少年は心の中で呟いた

 

店内に入り、彼女から渡されたリストを頼りに必要な資材を探した 驚いたことに、彼女がリストアップしたものは全て店に在庫があった 彼女の正確さに、少年は改めて感心した

 

(たまにはご馳走でも作るか)

 

ふとそう思い立ち、少年は必要な資材と共にレジへと向かい、会計を済ませた

 

「ありがとうございます お話は伺っております こちらの資材は、店の後ろのトラックに積んでおきました」

 

店員はそう言い、少年にトラックのキーを渡した

 

「領収書は大洗生徒会で」

 

少年はそう言い、トラックに乗り込み、購入した資材を大洗女子学園へと運んだ

 

大洗女子学園の戦車倉庫前に到着すると、既に洗車を終えた戦車と、自動車部の生徒4人が出迎えてくれた 

 

「お疲れ ジョン」

 

「ああ、戦車の搬送ご苦労だったな」

 

少年は、捜索した戦車の搬送を手伝ってくれた彼女たちに感謝の言葉を述べた

 

「うん、やっぱり戦車って見た以上に重たいんだね」

 

運んできた戦車を見ながら、スズキが疲れた表情で言った

 

「まあ、材質が車とは異なるからな」

 

彼女たちにとって、戦車を運ぶのは初めての経験だったのだろう

 

「それで、そのトラックの中身は?」

 

いつの間にか、ツチヤが少年のトラックの荷台を漁っていた

 

「整備に必要なものが諸々」

 

「ありがと これで整備にかかれるよ」

 

ホシノは腕を鳴らしながら、整備の準備を始めた

 

「毎度思うんだが…今日も徹夜か?」

 

辺りは既に薄暗く、今から整備を始めれば朝までかかるだろう

 

「そうだよ」

 

ナカジマは当然のように答えた

 

「……」

 

「今回はジョンも参加する 私たちは大歓迎するけど」

 

「…悪いが、今からスペインのオリーブ祭りがあるからな」

 

「相変わらずどこにでも行くよね、ジョンは」

 

「と言うわけだ。徹夜はまた今度」

 

「うん、楽しみにしているよ」

 

少年は彼女たちに整備を任せ、再び『せんしゃ倶楽部』へと向かった

 

 

 

 

 

店に戻り、トラックを店の駐車場に停め、店を出ようとしたその時だった

 

「…あ ジョン君」

 

自動ドアが開くと、そこに西住みほたち四人の姿があった

 

「…珍しいな こんなところで会うなんて」

 

「ジョンさんはこちらで何を?」

 

彼女たちとは戦車の捜索が終わってから別行動をしていたため、少年が何をしていたのか知らなかったのだろう

 

「戦車の整備に必要な機材をここで揃えていたんだ そしてさっき学校に送ってきたところだ」

 

少年は、別れてからの自分の行動を簡単に説明した

 

「もー ジョンも手伝ってくれればよかったのにー 私たちなんてもうドロドロになったのにー」

 

武部は少し恨めしそうな表情で言った 彼女たちは38(t)戦車の洗車をしていたのだろう 少年も以前、放置されていた戦車の清掃で同じような経験をしたことがあるため、彼女たちの苦労は想像に難くなかった

 

「それはそれは。俺も先日そうなったからそれで勘弁してくれ それで、ここに何のようだ?」

 

「いえ、こちらの店には私が来たかったので、皆さんは付き添いで… よければジョン殿もご一緒していただけませんか?」

 

どうやら、彼女たちは秋山の付き添いでこの店に来たようだ

 

「…俺でよければ」

 

少年は店での用は済んでいたため帰ろうと思っていたが、せっかくの誘いを断るのは気が引けたため、彼女たちと一緒に店内を見て回ることにした

 

「それにしても、こんな店があったんだ」

 

西住は店内を見渡しながら、驚きの声を漏らした

 

「まあ確かに、戦車の専門店なんて他に見たこともないからな」

 

「凄いですね」

 

五十鈴華も、店に飾られているパンツァージャケットや履帯などを興味深そうに眺めていた

 

「でも、戦車ってみんな同じに見える」

 

武部は、戦車の模型や写真を見てそう言った

 

「ち、違います! 全然違うんです! どの子もみんな個性というか特徴があって、動かす人によっても変わりますし!」

 

秋山は武部の言葉に熱くなり、戦車について熱弁を始めた 確かに素人から見れば似たようなものだが、玄人から見れば細かい違いがよくわかるのだろう

 

「華道と同じなんですね」

 

秋山の説明を聞いて、五十鈴はそう呟いた

 

「うんうん、女の子だってみんなそれぞれの良さがあるしね! 目指せモテ道!」

 

武部は大きく頷き、グッドサインを送った どうやら三人は、それぞれの価値観の中で納得したようだ

 

「話が噛み合っているような、ないような」

 

西住は彼女たちの様子を見て、少し戸惑っていた

 

「形は違うが、趣旨は同じってことだろう 多分」

 

店内を回っていると、少年の目に一台のレトロな戦車シミュレーションゲーム機が留まった 見た目は古めかしかったが、かなり本格的な作りだった

 

「やって見せましょうか?」

 

少年がゲーム機を見ていると、秋山が申し出てきた 少年は他の三人と一緒に、秋山のプレイを見守った

 

「アクティブで楽しそうです」

 

五十鈴は、画面の中で動き回る戦車を見てそう言った どうやら、戦車に少し興味を持ってくれたようだ

 

「でも、顔は怪我したくないな」

 

武部は、戦車道に対してまだ少し躊躇いがあるようだった 確かに、普通に考えれば危険な行為であるため、彼女の心配はもっともだった

 

「大丈夫です! 試合では実弾も使いますけど、充分安全に配慮されてますから! ですよね、西住殿?」

 

「うん。戦車道では大きな事故や怪我などは今までなかった…かな?」

 

「…」

 

その点については、少年は少し懐疑的だった 確かに、調べた限りでは戦車道での大きな事故や怪我は確認できなかったが、去年の全国大会決勝戦のことを考えると、安全面はもっと改善されるべきだと感じていた

 

「よし! こんな感じです!」

 

少年が思考に耽っていると、秋山はゲームをクリアしていた スコアを見てみると、100点中92点という高得点だった

 

「ジョン殿のいかがですか? ちなみに100点だと、店から景品が貰えるそうですが」

 

「…面白そうだな」

 

少年はそう言い、ゲーム機の椅子に座り、コインを投入してゲームを始めた

 

「すごい!」

 

「嘘っ!」

 

「まあ」

 

「流石です!」

 

「まあ、ざっとこんなもんさ」

 

少年のゲームのスコアは、なんと100点、つまりパーフェクトだった

 

「すごいです ジョン殿! このゲーム初めてですよね?」

 

秋山は興奮した様子で少年に尋ねた

 

「ああ。だが、秋山さんのプレイを見て大体の要領は掴んだよ」

 

正直なところ、彼女のプレイを見ていなければ、パーフェクトを出すのは難しかっただろう

 

「やったこともないのに、初めてで出来るの?」

 

「ああ 操作はそれほど複雑じゃなかったからな」

 

このゲームでは、プレイヤーは砲撃と操縦手を同時に操作することになっており、操作自体は比較的簡単だった

 

「砲撃の精度や装填のタイミングも完璧でしたね」

 

五十鈴は、かなり的確な分析をした どうやら、彼女は何かを掴んだのかもしれない 

 

「これに関しては、俺の腕だな」

 

そう言って、少年は腕を上げて勝ち誇った

 

「おめでとう、ジョン君! 賞品ゲットだね!」

 

西住はただただ少年を称賛した

 

「ん ああ、じゃあ行ってくる」

 

少年は西住にそう言われ、景品を受け取りに店員の元へ向かった

 

 

(…なんだこの空気?)

景品を受け取って彼女たちの元に戻ると、なぜか空気がどんよりと重くなっていた 少年も店の中にいたため、もし何か揉め事があれば気づいたはずだ 険悪な雰囲気ではないものの、少年にはどうしていいのかわからなかった

 

「そうだ! この後みほの部屋に遊びに行っていい?」

 

武部が唐突にそう切り出し、西住の家に行くことを提案した

 

「私もお邪魔したいです」

 

五十鈴も武部の提案に賛成した

 

「うん!」

 

西住は嬉しそうに頷いた

 

「あの…」

 

と、秋山が恐る恐る手を挙げた どうやら彼女も西住の家に行きたいようだった

 

「秋山さんもどうですか?」

 

秋山が質問する前に、五十鈴が優しく誘った

 

「ありがとうございます!」

 

秋山は嬉しそうに返答した

 

どうやらこの後、西住の家で女子会なるものが始まるのだろう 内容は少年には想像もつかなかったが、少なくとも自分の居場所はないだろうと感じた

 

「まあ、あまり遅くなりすぎないようにした方がいいぞ それじゃ」

 

少年はそう言い残し、店を出て行こうとした

 

「「「「えっ」」」」

 

「…ん?」

 

少年が店から出ようとした瞬間、彼女たちから予想外の反応を受け、足を止めた

 

「ジョン君は来ないの?」

 

西住が、明らかに普段より低い声で尋ねてきた

 

「…今から女子会…だろ? 俺は不要だと思うが」

 

少年は自身の置かれている状況を正確には理解できなかったが、少なくともこの場でこの判断は間違っていないはずだと思った

 

「別にそんなんじゃないよ!」

 

「そうです! これは親睦会です!」

 

「私、ジョン殿ともっと話したいです!」

 

どうやら、少年はこの親睦会に参加せざるを得ない状況のようだ だが、少年は人の家に行った経験がほとんどなく、ましてや女子の家など一度も足を踏み入れたことがない そのため、強い抵抗を感じていた

 

「…悪いが、この後は店の手伝いを……」

 

少年がそう言いかけた時、彼の端末に通信が入った 相手は少年の実質的な保護者であるアイリス・ブランベール… 姉御からだった

 

「行きなさい 22時までは入れないわよ」

 

通話に出ると、第一声がそれだった。どうやら、彼女は少年の今の状況を把握しているらしい

 

「…なぜ知ってい……」

 

少年がそう問い返そうとする前に、通信は切断された どうやら、少年は夜の10時まで宿舎に帰れないようだ 

 

「お店のことは心配しなくていいようだね、ジョン君」

 

西住はにこやかに言った どうやら今の会話が聞こえていたらしい

 

「よかったねー、ジョン!」

 

武部も笑顔で同意した

 

「決まりですね、ジョンさん」

 

五十鈴は静かに微笑んだ

 

「行きましょう、ジョン殿!」

 

秋山は少しはにかみながら、言ってきた

 

(他に選択肢はないようだな)

 

少年はそう諦め、西住の家へと向かうのだった

 

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