ガールズ&パンツァー 少年の女子高戦車生活   作:ダオダオ

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再編成

西住たちとの初めての練習試合を終え、IV号戦車で倉庫へ帰還する最中、五十鈴は「うぅ…ん、その生け方は違います…!?」と謎のうめき声を上げて意識を取り戻した

 

「…あれ、私?」

 

五十鈴が周囲を見渡し状況を把握しようとしていると、西住が「気がついた」と応じ、武部も「華、大丈夫?」と五十鈴の安否を気遣った

 

「ここは……試合はどうなったんですか?」

 

意識を失っていた間の記憶がない五十鈴は、試合結果が気になっているようだった

 

「はい、わたしどもの勝ちです!」

 

秋山が嬉しそうに告げると、五十鈴は対照的に元気のない声で「…そうですか」と答えた

 

少年はそんな五十鈴の様子を見て、「どうかしたのか?どこか具合悪いのか?」と心配そうに尋ねた

 

「いえ、そう言うわけでは… 私がもっとうまくやれていれば…」

 

どうやら五十鈴は、途中で行動不能になったことを悔いているようだった

 

「そうか 俺から言わせれば、初めてであれだけできていれば十分だと思うが… それに、このポジションはくじ引きで決まったものだからそれほど気にしなくてもいいんじゃないか」

 

少年の言葉に、五十鈴は「でも…」と言いながら、IV号戦車を操縦する冷泉の方を見た 彼女が感じている通り、冷泉の運転技術は驚くほど高かった

 

「誰にでも向き不向きはある もし操縦が苦手だと感じるなら、他のポジションもやってみてはどうだ?」

 

少年は五十鈴にアドバイスを送った

 

「私に向いていること…」

 

五十鈴は考え込んだ

 

「今日乗ってみて何か感じたこととか…、やってみたかったこととか?」

 

少年が尋ねると、五十鈴は戸惑いながら皆に問いかけた

 

「あ、あの私、砲手をやってもいいですか?」

 

「え、なんで?」

 

武部が尋ねると、五十鈴は答えた

 

「…ジンジン痺れた感じが忘れられなくて、それに強い自分になれそうなんです」

 

(強い自分…か)

 

少年は五十鈴の「強い自分」という言葉に引っかかった

 

「ダメでしょうか?」

 

考え込んでいる少年に、五十鈴は尋ねた

 

「…いいんじゃないか 何事もやってみなければ始まらないからな」

 

否定する理由もなかった少年はそう答え、五十鈴は「はい、がんばります!」と嬉しそうに言った

 

「では、私が装填手をやります」

 

秋山がそう提言すると、少年は「いいのか?装填手は思っているより大変だぞ」と秋山に尋ねた

 

「えっ、そうなの?」

 

武部が不思議そうに尋ねてきた

 

「……西住さん、砲弾を」

 

口で説明するより体感してもらった方が良いと判断した少年は、西住から砲弾を一つ受け取った

 

「あっ、うん」

 

「…持ってみな ただし慎重にな」

 

そう言いながら少年は武部に丁重に砲弾を預けた

 

「えっ、何これ、重ッ!」 

 

武部は砲弾を受け取ると、持ち上げるだけで精一杯だった

 

「どうだ?大変だろ?」

 

そう言いながら少年は武部が持ち上げている砲弾を返してもらい、西住に渡した

 

「…はあーっ、みほこんな重たいの持ち上げてたの?」

 

武部は砲弾をしまっている西住に尋ねた

 

「うん、慣れるまでは結構大変だけど」

 

西住はそう答えた

 

「それに、今はただ移動しているだけだが、激しい戦闘中に装填することになる そんな中でこれだけ重たいものを持ち上げて装填するのは、思ったよりも大変なんだ だから…」

 

少年が装填手の厳しさを説いていると、秋山がそれを遮り、「いえ、私に任せてください!」と主張した 彼女も装填手が過酷なポジションであることは理解しただろう しかし、彼女の目には確かな決意が宿っていた これ以上言うのは野暮だろう

 

「じゃあ、秋山さん、よろしくお願いします」

 

少年の代わりに西住が秋山に装填手を頼むと、秋山は「はい、お任せください!」と嬉しそうに答えた

 

「ねぇねぇ、私は何が向いているかな?」

 

次は武部が自身のポジションを尋ねてきた 残っているのは車長、操縦士、通信手の3つだった

 

「えっと…誰とでも仲良く話せるから、通信手はどうでしょう?」

 

少年が悩んでいると、西住が先に案を出した

正直、少年も同じ意見だった

 

「いいかも!メール打つの早いし!」

 

武部もそれで納得したようだ

 

「運転は麻子がするとして、みほは…」

 

「ちょっと待て。私はもう書道を選択している」

 

武部がそう言うと、冷泉がそれを突き返した

 

「え〜!」

 

武部は予想外の答えに落ち込んでしまった

 

「冷泉さんが居てくれると助かります」

 

「あ、あの、冷泉さん、お願いします!」

 

「あの運転はお見事でした!」

 

五十鈴、西住、秋山も冷泉に頼み込んだ

 

「悪いが無理だ…」

 

しかし、冷泉はそれらを一蹴した

 

(仕方ないな)

 

少年はそう判断し、自身が装着している端末でファイルを開いた

 

「ちょっと、ジョン!ジョンも説得してよ!」

 

少年がファイルを調べていると、武部から叱責を受けた

 

「…本人がそう言っているんだ 仕方ないだろう」

 

少年は淡々と答えた

 

「そんな…」

 

西住が残念そうな声を上げた どうやら悪い印象を与えてしまったようだ だが、少年も彼女らと同じで、冷泉には操縦士になってもらいたいと思っているのだ しかし、冷泉は感情論で動くタイプではないと少年は知っているので、別の方向から行くことにした

 

「ちょっとした世間話だが、冷泉さん あんた今日のサボりを入れて何度目なんだ?」

 

少年は急に別の話題をふっかけた

 

「ギクッ!なっ、なんのことだ!」

 

冷泉は少年の質問に明らかに動揺していた

 

「…なるほど 授業欠席312回、遅刻に至っては214回か」

 

「「「「えっ!?」」」」

 

冷泉のあまりの記録に、他の四名も驚きを隠せなかった

 

「…なぜ知っている?」

 

冷泉が怪訝そうに言ってきた

 

「何、生徒会のデータを見ただけだ しかし、まぁ、よくこれだけ遅刻や無断欠席ができるもんだ」

 

少年はあまりの記録に呆れを通り越して、ある種の凄みを感じた

 

「…君も人のことは言えないだろう」

 

冷泉は負けじと言い返してきた

 

「そうだよ、ジョンもでしょう?」

 

「確かに」

 

「そうだよね」

 

「えっ、そうなんですかジョン殿?」

 

他の4人も冷泉に同調しているようだ

 

「…心外だな 俺の記録は授業欠席0回、遅刻0回だぞ」

 

そう言い、少年は自身の記録を皆に告げた

 

「馬鹿な!そんな訳がないだろう!」

 

冷泉は授業中に少年と会うことが多々あるので、そんなことはないと確信していた。 

 

「本当だ ちなみに公欠は96回だがな」

 

「「「「えっ!?」」」」

 

少年の答えに皆が驚いた ちなみにこの公欠は生徒会や学園長との取引で得たものであるが、言うと面倒なので言わないことにした

 

「まぁそれはいいとして、冷泉さん このままでは留年は確実だな」

 

「ぐぬぬ…」

 

少年の発言に冷泉は歯噛みした

 

「だが、戦車道で好成績を出せば、これらは免除される」

 

少年はそう条件を提示した

 

「だが、私はもう書道を…」

 

「ちなみに必修選択科目の変更に関しては何も問題ない 俺から生徒会に伝えておく それに、今もこうやってサボっているようではな…」

 

「ぐぬぬ…」

 

冷泉はさらに歯噛みした

 

「簡単だろ 戦車道で好成績を出すか、書道を選択して留年するか。どちらかだよ」

 

少年は2つの選択肢を提示した

 

「……わかった… ……やろう、戦車道…」

 

冷泉は観念したように戦車道を選択した

 

「それはよかった」

 

少年は安堵したように胸をなでおろした

 

「…西住さんや君に借りがあるからな…」

 

冷泉がそう付け加えた

 

「つか、単位欲しいんでしょ?」

 

冷泉のことをよく知っている武部がそう答えた

 

「借りを返すだけだ」

 

「まぁなんでもいい。あとは西住さんが車長で…」

 

「えっ、私がですか!?」

 

少年がそう言うと、西住が驚いた声を上げた

 

「そうだよ〜!やっぱり車長はみほがやってよ〜!」

 

「わたくし達では、やはり戦車の事よく分かりませんし」

 

「西住殿は、頼りになりますし!」

 

武部や五十鈴、秋山も西住が戦車長になることに賛成だった むしろ今回の練習試合を通して、彼女以外に車長が務まるとは誰も思わなかった

 

「え!え!私が!?そんな私なんて全然頼りになんか…」

 

彼女は自信がないようだった

 

「何言ってんだ 今の西住さん以上に頼りになる人はいない」

 

少年は西住にそう言った

 

「そっ、そうかな…」

 

少年がそう言うと、西住は嬉しそうに言ってきた

 

「よろしくお願いします!」

 

「よろしく!」

 

「よろしくお願いたします!」

 

「…よろしく頼む」

 

他の三人だけでなく、冷泉も頼んできた そして西住は覚悟を決めた表情をした

 

「…は、はい!こちらこそよろしくお願いします!」

 

西住は、皆に頭を下げて承諾した

 

「とりあえず決まったな」

 

少年がそれぞれのポジションが決まったことに安堵していると、武部が突然何かを思い出したようで、少年に手を向けてきた

 

「…何だ?」

 

少年は武部の意図を全く汲み取ることができず、ただ呆然としていた

 

「携帯!ジョンが遅かったから心配したんだよ でもジョンの連絡先がわからなかったから確かめようもないし… だから今後そう言うこともあるかもしれないから、番号教えてよ」

 

どうやら、先の練習試合で時間になっても連絡がなかったため、何かあったのか心配してくれたようだ

 

「…それもそうか だが生憎そんなものは持ち合わせていなくてな 代わりにこれで我慢してくれ」

 

そう言い、自身の身につけているデバイスを開いた

 

「…ずっと気になってたんだけど、それ何?」

 

武部は先ほどから少年が使用している腕時計型端末が気になったようだ

 

「これか これはウェアラブルコンピューターの一種だ 通話も可能にしている」

 

少年は自慢げに見せびらかした

 

「ウェア…アブル…?」

 

どうやら武部にとっては難しい言葉を使ってしまったようだ

 

「ウェアラブルコンピューターは、パソコンや携帯など持ち運べるコンピューターとは違い、装着して扱う出来るコンピューターのことだ」

 

少年の代わりに冷泉が答えてくれた

 

「すごい!これはまだどこの市販でも販売されていませんが、ジョン殿、なぜこのようなものを?」

 

秋山はそのように尋ねてきた どうやら彼女は兵器や軍などの他にも、その手のことにも詳しいようだ

 

「知り合いにこの手のことに精通している奴がいてな。実験も兼ねて使用させてもらっている」

 

そう言い、自身の番号を示した数字を提示した すると冷泉を除く皆が少年の通話番号を記録し出した

 

そして少年のデバイスに通信が入ってきた 確認すると未登録の番号だった 少年は専用の小型イヤホンを取り出して耳に当てて応答した

 

「ジョン君、聞こえる?」

 

どうやら通話してきたのは西住のようだった 振り返り西住の方を見ていると、嬉しそうに電話を耳に当てていた 

 

「ああ、良好だ。こちらの声は?」

 

少年は西住の声が聞こえていることを知らせて、デバイスに話しかけて西住にこちらの声が聞こえているのかを確かめた

 

「うん、大丈夫」

 

どうやら問題ないようだった すると他にも3つの未登録番号から着信が来た 少年は何となく察しがついていたので、かかってきた3つの通信を開いた

 

「あれ〜、繋がった!」

 

「本当ですね!」

 

「ジョン殿の携帯は同時通話も可能なのですね!」 

 

やはり彼女らの着信であった 彼女らの番号もわかったので、少年は通信を終了した

 

「ぶー!なんで切るのよ!」

 

武部は少年が突然通話を切ったことにご立腹のようだ

 

「番号も通話ができることもわかればいいだろう

それに会話をするのであれば、通話は必要ないと思うが」

 

少年の言う通り、皆車内(正確には少年は外からハッチの中を覗く感じ)にいるので、通話を必要はないのだ

 

「ぶー!なんか納得いかない ああ、麻子は私から番号送っておくから」

 

運転中の冷泉に武部はそう言った

 

「はぁ〜」

 

「おいおい、そう邪気にするなよ 傷つくぞ」

 

不満げな冷泉に少年はそう言った そしてしばらく他愛もない会話をして、倉庫の前に戻るのであった

 

 

 

 

 

 

 

「みんなグッジョブベリーナイス!初めてでこれだけガンガン動かせれば上出来よ!」

 

戦車道選択者は格納庫の前に整列し、蝶野教官の話を聞いた どうやら初めての戦車道はなかなか良いものであったようだ

 

「特にAチームのみんな、良くやったわね」

 

そして今回の練習試合で4輌(一輌は自滅)を撃破したAチームが評価された Aチームのみんなは喜んでいた

 

「でも一つだけ ジョン君、前へ」

 

「…?」

 

突然、蝶野教官に指名されて驚いたが、言われた通りに蝶野教官の前に出た

 

「あなたの身体能力が高いのはわかったけど、今後はあんな無茶はしないでね」

 

おそらく、大木から飛び降りたことに対して言っているのだろう

 

「ご心配なく あんなのは日常茶飯事…」

 

しかし、少年にとっては先の行動は日常的であり、今更危険だとも思わなかった しかし、蝶野教官はそれ以上の発言を静止した

 

「…いいわね?」

 

その声はとても強く厳しかった しかしそれ以上に優しさを持っていた 少年はその言葉に返す言葉がなかった

 

「…以後気をつける」

 

少年はそれだけ言い、元の位置に戻った

 

「後は日々走行訓練と砲撃訓練に励む様に 分からない事があったらいつでも連絡してね 一同礼!」

 

『ありがとうございました!』「「「「ありがとうございました」」」」

 

河嶋の号令で一同礼をして解散となった

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、ジョン君、さっきの何だったの?」

 

少年が事後処理をしようとしたところ、西住が駆けつけて来て、先ほどの蝶野教官とのやり取りについて聞いてきた

 

「…別に少し無茶をしただけだ」

 

少年は多くを語る必要はないと感じ、端的に言った

 

「そう…。でももう無茶はしないでね」

 

西住も蝶野教官と同じことを言ってきた 彼女の場合は蝶野教官とは少し違い、悲しそうに言ってきた

 

「…ああ、お互いにな」

 

少年は苦笑いしながら西住にそう言い返した

去年の決勝戦を見たものとしては、人のことを言えた立場ではないだろう

 

「…フフ」

 

少年にそう言われると、彼女も苦笑いした

 

「じゃあね」

 

そう言い、西住はAチームの元に帰るのであった

 

「ああ、気をつけて」

 

そう言い、彼女を見送り、事後処理を始めるのであった

 

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