ガールズ&パンツァー 少年の女子高戦車生活   作:ダオダオ

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作戦会議

「いいか!相手の聖グロリアーナ女学院は強固な装甲と連携力を生かした浸透強襲戦術を得意としている!」

 

生徒会室に河嶋桃の声が響き渡る ホワイトボードには複雑な戦術図が描かれ、ソファに座る生徒会役員たちと各戦車の車長たちが真剣な面持ちでそれを見つめている 

 

「浸透…強襲…戦術…」

 

澤梓がと呟き、理解できないというように少年の方を見やった 疑問の眼差しを受け、少年は西住以外の皆に向けて説明を始めた

 

「重装甲を生かして敵勢力の薄いところに突撃し、近接射撃で相手を叩く力押しの戦術 要するにゴリ押し戦術だ」

 

少年の簡潔かつ的確な説明に、皆は納得した顔で頷いた というより知らないほうが当然だろう

 

「そうだ とにかく相手の戦車は硬い 主力のマチルダIIに対し、こちらの攻撃は百メートル以内でないと通用しないと思え」

 

河嶋が続ける 彼女の言う通り、マチルダやチャーチルの装甲は頑丈で歴戦の戦車道を嗜むものであれば誰もが知る事実である 近距離でなければ有効な攻撃は難しい しかし、闇雲に近づけば、たちまち格好の的となってしまうだろう 

 

「そこで一両が囮となり、こちらが有利となるキルゾーンまで敵を誘い込み、高低差を利用して全員でこれを叩く!!」

 

河嶋が作戦の全容を示す その言葉に、少年は意外そうな顔をした 普段の彼女からは想像もつかない、合理的で練り込まれた作戦に、内心驚きを隠せない 

 

「…」

 

「何だ…何か不満なのか」

 

沈黙する少年に、河嶋が気づき、少し苛立ったように尋ねた

 

少年の口元に微かな笑みが浮かぶ

 

「いや、あんたにここまで合理的な戦略が立てることができることに驚嘆しているだけだ」

 

少年の皮肉に、河嶋は一瞬眉をひそめた しかし、作戦を褒められたという事実が勝り、すぐに怒りを収め、胸を張った

 

「なっ!フッ、完璧な作戦だろう」

 

少年自身も、悪い案ではないと思った 相手の戦車の種類や得意な戦術まで調べ上げているあたり、かなりの下調べをしたのだろう

 

(確かに合理的だか…流石経験者)

 

他の車長たちが河嶋の作戦に感心する中、西住だけは浮かない顔をしていた 

 

「西住ちゃーん、どうかした?」

 

その表情に、会長が気づき、優しく声をかける

 

「あ、いえ…」

 

西住は遠慮がちに答える 彼女の控えめな性格がそうさせるのか、なかなか口を開こうとしない

 

「いいから、言ってみ?」

 

会長は言葉を促す その優しい眼差しに促され、西住は渋々、河嶋に尋ねた

 

「聖グロリアーナは当然、こちらが囮を使ってくることを想定すると思います。裏をかかれて、逆に包囲される可能性もあるかと…」

 

西住の指摘に、他の車長たちも納得の声を漏らす 彼女の言う通り、経験者であればこちらの狙いは容易に想像がつくだろう シンプルな作戦は、裏を返せば読まれやすいということだ

 

「黙れ!私の作戦に口を挟むな!」

 

しかし河嶋は西住の指摘に激昂した

 

「すいません」

 

西住は驚き、申し訳なさそうに身を縮こめてしまった

 

「何言ってんだ当たり前だろう」

 

このままではまずいと感じた少年は、席を立って河嶋に反論した

 

「何!?」

 

河嶋が少年に反応する その目は怒りに燃えている

 

「確かに悪くはない作戦だ だが根本的に3つの穴がある」

 

少年の言葉に、河嶋の表情が一層険しくなる

 

「どこにあるの、ジョン君」

 

河嶋ではなく、小山柚子が冷静に尋ねてきた

 

「まずは西住さんの言った通りだ 河嶋さんの作戦は戦いにおいてはセオリーなんだ 故に経験者であれば誰でも気づく 対策は容易だ」

 

「ッ…」

 

河嶋は歯噛みしながら少年の言葉を聞いていた 彼女の顔には、反論できない悔しさが滲んでい

 

「それに陽動の一両が撃破されればその後はどうするんだ」

 

少年の指摘に、河嶋は動揺した その反応から察するに、そこまで考えていなかったようだ

彼女の立てた作戦は、あくまで初期段階の想定に過ぎず、その後の展開までは考慮されていなかったのである

 

「そもそも相手がこっちの作戦に乗ってこない可能性も大いにある その場合はどうするんだ」

 

畳み掛けるような少年の指摘に、ついに河嶋が激怒した

 

「ええい!黙れ黙れ!そんなことを言うのならお前らが隊長をやれ!」

 

「…何で隊長が2人なんだよ」

 

少年は呆れたように頭を掻きながら言った 呆れ果てた表情で、深くため息をつく

 

「まぁまぁ桃ちゃん」

 

小山がいつものように河嶋を宥める

 

「うるさい!桃ちゃんと呼ぶな!」

 

河嶋の声が生徒会室に響き渡る

 

「ん〜。でも、隊長は西住ちゃんかジョンちゃんが良いよね」

 

会長は、そんな騒ぎをよそに、西住と少年にそう提案した

 

「ええっ!?」

 

「…何で俺もなんだよ」

 

少年と西住は戸惑ったように尋ねた 

 

「だって2人ともかーしまの作戦に不満なんでしょ」

 

「…どうしよう、ジョン君」

 

西住が戸惑ったように尋ねてきた。彼女の表情には、不安と戸惑いが入り混じっている

 

「…仕方ないな。任せたぞ、西住さん」

 

少年は少し考え、観念したようにため息をついた。

 

「ええっ!私が…」

 

西住は目を丸くして驚いた

 

「生憎俺の性格は隊長向きではないんでな」

 

少年はぶっきらぼうに答える

 

「…でも」

 

西住は自信なさそうに言った 彼女の不安そうな表情を見て、少年は少し言葉を選んだ

 

「…大丈夫だ。あまり頼りにならないと思うが、サポートはする」

 

「本当に…」

 

西住は嬉しそうに尋ねた その顔には、一筋の光が差し込んだような希望が浮かんでいる

 

「ああ。だがそれほど期待はするなよ」

 

少年は自嘲気味にそう言った 西住が安心したようにしていたので、少年もようやく安堵のため息をついた

 

「それじゃよろしくね〜」

 

会長はそう言い、パチパチと拍手を送った 他の車長たちもそれに続くように拍手を送る しかし約一名、河嶋だけは不満そうにしており、拍手などはしなかった だがこの彼女は会長の決定に逆らうことはないので問題はなかった

 

「無理はしなくていいからな、西住さん あくまで練習試合だ 別に負けても…」

 

少年が西住の不安を和らげようとそう言うと会長が口を挟んだ

 

「それじゃダメなんだよね〜」

 

「なぜだ 別にただの練習試合だろ」

 

少年の疑問に、杏は首を横に振る

 

「そーだけど、勝たなきゃダメだよ〜」

 

会長の言葉を受け、西住に緊張が走った 彼女の顔色が、さっと青ざめる

 

「頑張ってよー 勝ったら素晴らしい商品あげるから」

 

「えっ?何ですか」

 

会長がそう言うと、西住が期待しているように尋ねた

 

「干し芋三日ぶーん!!」

 

「…」

 

元気に答える会長とは対照的に、西住はガクッと肩を落とし、明らかに落ち込んでしまった

少年からするといつものことなのであまり落ち込まなかったが、西住からすると期待を裏切られたと感じたのだろう その落胆ぶりは、見ていられないほどだった

 

「えと…、もし負けたら?」

 

「待て西住さん」

 

西住が恐る恐る尋ねようとしたので、少年が急いで制止した

 

「大納涼祭であんこう音頭踊ってもらおうかな」

 

少年の制止は間に合わず、会長が明るく答えた

 

「「「「「「……」」」」」」

 

その言葉を聞いて、この場のほとんどの生徒が青ざめて俯いた あんこう踊りを知らない西住は、周りの尋常ではない様子を見て戸惑っていた 彼女だけが、またその恐ろしさを知らなかった

 

「…さてと…」

 

少年はしきりに呟き、席を立ち、生徒会室を出ようとした その表情はどこか清々しかった

 

「待て、どこに行く」

 

案の定、河嶋に止められた

 

「いや、明日はムー大陸に冒険に行かなければ」

 

少年は真顔でそう言い、部屋を出て行こうとした

 

「何訳のわからんことを言っている」

 

河嶋が呆れと怒気が混じった声で言う

 

「いいの〜そのまま行方不明になっちゃうかもよ〜」

 

会長が、楽しげに少年を見つめる

 

「…」

 

少年は諦めて無言で席に戻った その背中には、諦めと絶望が滲み出ていた

 

「西住さん!」

 

少年は動揺している西住の肩に手を置いた その手は、震えている

 

「え?えと…、ジョン君、どっ、どうしたの…」

 

西住は顔を赤くし、先ほど以上に動揺してしまったが、それを気にする余裕は少年にはなかった。彼の脳裏には、「あんこう音頭」の恐ろしいイメージが去来している

 

「手段は問わない、何が何でも勝つぞ」

 

少年の言葉には、これまで聞いたことのないほどの決意が込められていた

 

「う、うん。がんばるよ」

 

西住は少年の決意に驚きながらも、その言葉に力強く頷いた

 

「じゃあよろしくね〜」

 

会長がそう言い、他の生徒はぞろぞろと解散していった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆が帰った後、少年と西住は生徒会室に残って作戦を立てていた 静寂に包まれた部屋で、二人の真剣な声だけが響く

 

「…西住さん、さっきはああ言ったが、河嶋さんの作戦でいいと思っている」

 

少年は唐突にそう切り出した

 

「…えっ、でもジョン君の言ってた通り、リスクが多いんじゃ」

 

西住の意見は、先ほどの作戦会議と同じく、あまり賛成的ではなかった

 

「その通りだ だが西住さん、俺は今のこのチームにそこまで練度の高い戦略的な作戦ができるとは思えない」

 

少年の言葉は現実的だった 急造チームである彼女たちに、複雑な連携を伴う高度な戦術は難しいだろう

 

「確かにそうだけど…」

 

西住もその事実を理解している

 

「それに、おそらく相手はこちらの誘いに乗ってくるだろう」

 

「えっ、どうしてわかるの」

 

西住が驚いたように尋ねた。 

 

「向こうからすればこっちは格下だ それでも試合を受けたんだ、こっちが提示したルールでな それに相手の性格を考えれば、こちらの狙いが分かったとしても乗ってくるだろう」

 

「相手の性格って、知ってるの」

 

西住が不思議そうに尋ねる

 

「多少はな あとは西住さんが言っていた、逆包囲されることだが、西住さんなら逆包囲される前に気づくだろ あとはその前に撤退すればいい」

 

少年の言葉には、西住への信頼が込められていた 彼女の優れた状況判断能力を見越してのことだ

 

「…うん、分かった あとはその後どこで戦うかだけど」

 

西住は納得したように頷いた

 

「資料にもある通り、相手の戦車は硬い 真っ向から撃ち合ったらこちらが不利だ」

 

少年はテーブルに広げられた地図に目を落とす

 

「開けた場所は駄目、となると…」

 

西住も地図を覗き込み、思案する

 

「…ゲリラ戦だな 試合会場は大洗だからな 地の利はこっちにある」

 

少年は、大洗の地形を頭の中でシミュレートしている

 

「うん、そうだね 遭遇戦の方が都合が良いかな なるべく死角の多い場所は…」

 

少年は地図を見てそれに当てはまる場所を探していた

 

「大洗市街地…かな」

 

西住が大洗の市街地図を指した その指が示すのは、入り組んだ路地や建物が密集するエリアだ

 

「…市街戦をやるつもりか そんなことをすれば民家や店が…」

 

少年は躊躇した そんなことをすれば一般の建物に被害が出ることは必至である

 

「大丈夫 戦車道の試合で壊れた道や建物は戦車道連盟が保障しているから」

 

西住の言葉に、少年は驚いた

 

「…何でもありなんだな なら初期は十分にあるな。まあ、こんなところだろうな」

 

少年の顔に、わずかな安堵が浮かぶ 

 

「うん、あとはどれだけできるかだね」

 

「ああ、絶対に勝つぞ、西住さん」

 

少年は何が何でも負けるわけにはいかなかった 彼の顔には、強い決意が宿っている 作戦会議が終わり、二人の間に沈黙が流れる その沈黙を破ったのは、西住の小さな声だった

 

「…ねえ、ジョン君…そんなにあんこう音頭ってあんまりな踊りなの?」

 

西住は少年に尋ねた 彼女はまだ大洗に来たばかりだから、あんこう音頭の恐ろしさを知らないのだろう その純粋な疑問に、少年は言葉を選んだ

 

「踊りもキツい だがそれより酷いのはあの悪趣味な衣装だ」

 

「…え?それって」

 

西住が何か言いかけて、ピタリとその言葉を止める その顔は、何かもう恥ずかしさで真っ赤だ 彼女の脳裏に、不穏な想像が駆け巡っているようだ 

 

「もしかして…その、露出が凄く多い、えっちな衣装…とか?」

 

西住が恥ずかしそうに聞いてきた その問いに、少年は予想外の質問に一瞬固まってしまった

 

「…露出は全くない(露出はな…)」

 

少年は微妙な言葉を選んだ 何しろ全身ピンク色のピッタリスーツであるつまり体のラインがモロに出てしまう服装なのだ それをどう思うかは個人によって異なるだろ

 

「…そうなの 変な衣装じゃなくて良かった」

 

西住は安堵したように答えた ただ、あの服装を実際に目にすれば、その安堵も吹き飛ぶことだろう 少年は、心の中でそっとため息をついた

 

「…他の連中に聞いてみるか」

 

少年は、西住の誤解を解くために、他のメンバーに協力を仰ぐことにした

 

「えっ」

 

少年と西住はチームに合流し、あんこう踊りのことを話した あんこう踊りを聞いたメンバーは、その単語を聞いただけで、羞恥と絶望の表情を浮かべた 武部は顔を青ざめさせ、五十鈴は目を閉じ、秋山は顔を覆った

 

「アンコウ踊り・・・・恥ずかし過ぎる!!あんなの踊っちゃったらもうお嫁に行けないよ!!」

 

武部が半泣きで叫んだ

 

「絶対ネットにアップされて全国的な晒し者になってしまいます」

 

五十鈴が震える声で呟く

 

「一生笑われますよね」

 

秋山も絶望的な声を出した

 

「…わかったか西住さん これがあんこう踊りを知るものの反応だ」

 

少年は、西住に現実を突きつけるように言った

 

「そんなにあんまりな踊りなの…」

 

西住は、何とも言えない表情で周りのメンバーを見回した 彼女の顔には、ようやく事の重大さに気づいたような焦りが浮かんでいる

 

「ああ、だから勝つしかないんだ それ以外にない」

 

少年の言葉に、皆の顔に決意が宿る

 

「そうよ!勝とうよ!!勝ってばいいでしょ!!」

 

武部が気丈に声を張り上げた

 

「わかりました!負けたら私もアンコウ踊りやります!西住殿一人だけに辱めは受けさせません!!」

 

秋山が勢いよく立ち上がり、胸を張って宣言する

 

「わたくしもです!」

 

五十鈴もそれに続く

 

「皆でやれば恥ずかしくないよ!!」

 

武部が笑顔で言う

 

「ありがとう」

 

皆にそう言ってもらえて、西住もずいぶん気が楽になったようだ 彼女の顔に、安堵の表情が浮かんだ

 

「それよか、私は麻子がちゃんと来るかの方が心配だよ」

 

武部が、ふと別の心配事を口にした

 

「…そういえばいないな 帰ったのか」

 

少年の言葉に、皆が周りを見回す 冷泉麻子の姿はどこにもない

 

「明日ちゃんと来るかな〜」

 

ただでさえ、早起きが苦手な遅刻常習犯の冷泉が時間通りに来る確率はほぼ0だろう

 

「明日になればわかるだろう」

 

少年はそう言い、その場は解散となった それぞれの胸に、勝利への決意と、あんこう踊りへの恐怖を抱えながら、生徒たちはそれぞれの寮へと帰路についた

 

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