ガールズ&パンツァー 少年の女子高戦車生活   作:ダオダオ

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試合準備

まだ空が薄明に包まれる早朝、冷たい空気が肌を撫でる中、少年は、微睡みからゆっくりと覚醒した 今日は練習試合だがとても清々しく朝を迎えたのは久しぶりだと感じた 少年はいつも朝食をとっているカフェに行き、目覚ましの紅茶を入れて朝食を取った

 

「おはよ 少年、よく眠れた?」

 

どこか疲労感のある声が少年の耳に届く 声の主は少年の保護者であるアイリスであった 彼女はバスタオル一枚でシャワー上がりの姿であった 姿に関しては少年も上裸なので人のことは言える状態ではなかった その表情には、徹夜明け特有の疲労感が滲んでいる

 

「ああ姉御、これほど清々しく起きられたのは久しぶりだ そっちは…今からお眠の時間か?」

 

少年の言葉に、彼女は欠伸と背伸びを同時にしながら答えた

 

「ええ、最終調整は済ませて倉庫に移しておいたわ」

 

「感謝する」

 

「礼には及ばないわ それより、試乗なしで大丈夫か、少年? いきなりぶっつけ本番なんて…」

 

「問題ない 感覚は操縦していれば掴めてくる 伊達にバイクやらヘリコプターを操縦していない」

 

少年がそう言い切ると、彼女は呆れたように肩をすくめた

 

「…そう。じゃあ頑張ってね。何の関係があるのかわかんないけど」

 

彼女はそう言って、大きなあくびを噛み殺し、部屋に向かおうとした

 

「ああ、まあとりあえず…」

 

「あの、すいません、ジョンく… きゃあ!」

 

少年が学校に向かおうと準備をしようと思った矢先、店の扉が開く音がした 振り返ると、西住が立っていた 彼女は少年を見るなり、顔を真っ赤にして叫び、扉を閉めた

 

西住の悲鳴に、少年は眉をひそめる

 

「……何だ?」

 

少年は突然の出来事に困惑した 西住が来るなど予想もしていなかったからだ

 

「さあ…目の前に上裸の男がいたからじゃない?」

 

アイリスが肩をすくめて答える

 

「…バスタオル一枚の女がいたの間違いだろ」

 

少年は皮肉げに言い返した

 

「いえ、どっちもです! 服を着てください!」

 

西住の言葉に、少年はため息をついてアイリスを見た

 

「…だとよ」

 

「…私はいいのよ 部屋に戻って寝るだけだからあんたはさっさと着替えなさい」

 

彼女は少年にそういい自身の部屋に戻って行こうとした

 

「…姉御、ありがとう」

 

少年は彼女に感謝の言葉を述べた 彼女は一瞬止まって少年と目を合わせた 彼女は少し微笑み視線から目をそらし、疲れた表情で呟いた

 

「…だったら私の努力を無駄にしないことね」

 

彼女はそう言い残し、部屋の奥へと姿を消した 

 

数分後、少年は服を着て店から出てくると西住が不安そうに少年を待っていた 

 

「待たせたな」

 

「いえ、こっちこそこんな早くに来てごめんね、ジョン君」

 

西住は申し訳なさそうに言ってきた 

 

「それで、こんな朝っぱらからどうしたんだ?」

 

少女は、少し言い淀んでから、震える声で告げた

 

「それが、沙織さんから、やっぱり冷泉さんが起きないって連絡があって…」

 

少年は西住からそう聞き、頭を掻いて不満そうな態度を取った

 

「やはりか… 目覚ましを喰らわせる必要があるみたいだな」

 

西住は、少年の言葉に驚き、目を見開いた

 

「えっ、それって…」

 

少年は、真剣な表情で言った

 

「空砲で叩き起こしてやる」

 

西住は、少年の言葉に戦慄する

 

「…空砲って…まさか戦車で!?」

 

「そうだ IV号戦車の整備はもう済んでいるはずだ 他のメンバーは?」

 

「うん、冷泉さん以外はもう学校に…」

 

西住の言葉に、ジョンは力強く頷いた

 

「了解だ 急ごう 乗ってくれ」

 

少年はそう言って、倉庫の中に停車していた一台の戦車を指差した 西住は、その車の姿に目を奪われた

 

「えっ、乗るって…これって…モーリスファイヤフライ!?」

 

西住は、興奮と驚きの入り混じった声で叫んだ 

少年は、その反応に満足げな表情を浮かべる

 

「知っているとは、流石だな」

 

「いえ、私も見るのは初めてです…!」

 

「さあ、あまり時間がない。乗ってくれ」

 

少年は、少女に手を差し伸べた 西住、戸惑いながらも、その手を取り、モーリスファイヤフライの助手席に乗り込んだ エンジンがけたたましい音を立てて始動し、モーリスファイヤフライは滑るように走り出した

 

 

 

 

 

 

 

「速いね…!」

 

西住は、ハッチにから流れる景色を見つめながら、感嘆の声を上げた。少年は操縦桿を握りながら、静かに答える

 

「ああ、最大時速は80kmに達する…」

 

少年は得意げに答えた しかし西住は、先ほどの出来事が脳裏をよぎり、少年に問いかけた

 

「うん、それでジョン君、聞きたいことがあるんだけど…」

 

少年は、少しだけ視線を西住に移す

 

「聞きたいこと…何だ?」

 

西住は、少し躊躇しながらも、尋ねた

 

「何でさっきはあんな姿だったの…?」

 

少年は、少し困惑したような表情を浮かべた

 

「…ダメなのか?」

 

「ええっと、そういうわけじゃないんだけど…いつもあんな格好なの…?」

 

西住の問いに、少年はあっさりと答えた

 

「ああ、別に誰の迷惑になるわけでもないからな」

 

「…アイリスさんも?」

 

西住の言葉に、少年は歯切れが悪そうに答えた

 

「…まあな」

 

「…そうなんだ…」

 

西住は、頬を赤らめながら納得した

 

「まあ、来ると分かっていれば服ぐらいは着ていたんだがな」

 

「…それは…ごめん…」

 

西住は、まだ何か言いたげな様子だったが、言葉を続けるのをためらった 

 

「…どうかしたのか?」

 

西住は、少し視線をそらし、訥々と話し始めた

 

「ううん…ジョン君って、何を鍛えているの…?」

 

少年は、西住の問いに、少し驚いたような表情を浮かべた

 

「…いや、数年前は多少鍛えていたが、今はほとんど… どうしてそう思うんだ?」

 

「いや、この前の訓練の時の動きや、さっきの体つきを見て、明らかに普通の人とは違うと思って…」

 

少年は、少女の言葉に、少し遠い目をしながら答えた

 

「…普通の定義はよくわからないが、ガキの頃は山籠りやサバイバル、喧嘩なんか色々やっていたからな」

 

少年の言葉に、少女は一瞬驚き、苦笑いをした

 

「…思ってたより壮絶な人生を歩んできたんだね…」

 

少年は、ふっと自嘲気味に笑った

 

「全くだ。我ながらよく生きていると思っているよ 着いたな」

 

そう言うと、モーリスファイヤフライは、あっという間に学校に到着した。そのまま戦車倉庫に向かうと、戦車道のメンバーたちがすでに集まっていた

 

「ジョンさん…この戦車は」

 

「まさか、モーリスファイヤフライ」

 

戦車倉庫に着くと、Aチームのメンバーである五十鈴と秋山が、目を輝かせながら近づいてきた。特に秋山の興奮ぶりは尋常ではなかった

 

「ああ、知っていたのか、秋山さん」

 

「はい、こんなレアな戦車を見れるなんて感激です!」

 

秋山の言葉に、少年は満足げに答えた

 

「それは何よりだ」

 

少年はそう言い、西住とモーリスファイヤフライから降りた

 

「あの、それが先輩の戦車ですか」

 

澤が、少し遠慮がちに尋ねてきた

 

「その通りだが…」

 

「なんかちっちゃくないですか」

 

「そーですよ この中じゃ1番ちっちゃいですよ」

 

一年生チームの大野と坂口が、遠慮なく指摘した その言葉に、少年はバツが悪そうな表情をした

 

「…せめてコンパクトと言って欲しいな それで…いないのは武部さんと冷泉さんだけか」

 

「沙織さんは冷泉を起こしに行っています」

 

「どうしましょう このままでは」

 

秋山が心配そうに呟く 少年は、会長の表情を見て、察した

 

「分かっている 会長、IV号戦車借りるぞ」

 

「ん〜、いってら〜」

 

会長は、いつも通りの口調で答えた 

 

「じゃあ行ってくる」

 

少年がIV号戦車に向かおうとすると、Aチームの面々が慌てて声を上げた

 

「待ってください!私たちも行きます!」

 

「そうです!IV号戦車は私たちの戦車です!」

 

「置いていくなんてあんまりです!」

 

少年は彼女たちの訴えに一瞬考えたが、すぐに頷いた。 

 

「…まあいい 急ぐぞ」

 

少年はIV号戦車のハッチを開け、乗り込んだ 西住たちも続いて乗り込む。エンジンの始動音と共に、IV号戦車は冷泉の家へと向かって走り出した

 

「うーん、もう麻子起きてよ!!試合なんだから!!」

 

冷泉の家の中から武部が必死に呼びかけていたのが外からもわかった

 

「・・・眠い」

 

冷泉の微かな声が聞こえた

 

「単位はいいの!!」

 

「よくない・・・」

 

「だったら起きてよ!!」

 

「不可能なものは不可能・・・」

 

武部は、もはや半泣きになりながら冷泉を起こそうとしていたが、その気配は一向になかった

 

「……ダメだな。秋山さん頼む」

 

少年はその状況を確認し、諦めたように秋山優花里に合図を出した 秋山はにこやかに敬礼し、ラッパを取り出した

 

「わかりました!」

 

すると、秋山は高らかに自衛隊の起床ラッパを吹き鳴らした そのけたたましい音に、何事かと驚いた武部が、ベランダの窓を勢いよく開けて顔を出した

 

「おはようございます。武部殿!」

 

「おっ、おはよう 何やってんの」

 

武部が呆れたような顔で問いかける 少年は、部屋の中の様子を確認した

 

「起きたか」

 

「ううん、布団から出てこないの」

 

武部の言葉に、少年は深いため息をついた

 

「仕方ない。西住さん、五十鈴さん、頼む」

 

少年が合図を送ると、西住と五十鈴は砲撃の準備をした そして――

 

 

ドカーン!

 

 

IV号戦車の主砲が火を噴き、空砲が轟いた その爆音に、近隣の住民たちが驚いて窓を開け、何事かと外に出てきた

 

「なんだ!?」 

 

「どうしたの!?」

 

キューポラから顔を出した西住が、慌てて住民たちに頭を下げる

 

「すみません!空砲です!」

 

そりゃ、確かに朝っぱらから戦車の砲撃音なんて聞かされれば、近所迷惑も甚だしい だが、その甲斐あってか、冷泉が部屋のベランダから顔を出した

 

「…何だ」

 

少年は、迷惑そうな冷泉の声に、悪びれる様子もなく答えた

 

「あんた専用の目覚ましだ どうだ気分は」

 

「最悪だ 私は寝る」

 

冷泉は布団の中から、不機嫌そうな声で返した 

 

「いいのか あんこう踊りを踊ることになるが」

 

少年のその言葉に、冷泉の声色が一変した 布団の中から、驚きと焦りが入り混じった声が聞こえてくる

 

「なっ、何だと!」

 

「どうする。最も選択肢はないと思うが…」

 

少年の言葉に、麻子は観念したように布団から身を起こした

 

「仕方ない。やろう」

 

冷泉は渋々身支度をして、よろよろと戦車に乗り込んだ その表情には、まだ眠気が残っていたが、不承不承ながらも試合への参加を決めたようだった

 

「ジョン君、乗らないの」

 

西住が少年に尋ねた

 

「何を言う、乗っているだろ 戦車の上に」

 

少年はそう答えた。彼はIV号戦車の天板に腰掛けていた

 

「そうじゃないよ。何で戦車の中に入らないの」

 

武部が呆れたようにそう言った

 

「店員オーバーだろ それに…まあいい とにかく急ごう。あまり時間がない」

ジョンがそう言うと、IV号戦車は再びエンジンを唸らせ、学校へと向かうのであった

 

 

 

「なになに?」

 

「どうしたの?」  

 

学校に向かう途中、商店街の住人たちが、戦車の振動と騒音が気になって外に出てきた

 

「別になんてことはない 大型特殊自動車が通ってるだけだ」

 

少年は出てきた住人に、ぶっきらぼうにそう言った

 

「す、すみません」

 

西住は、住民の肩に謝罪した この場合、戦車の騒音に対しての謝罪なのか、謝罪の態度に対しての謝罪なのかわからなかった 少年は目線で西住に尋ねたが、返答はなかった

 

「あら、4号、久しぶりに動いているの見たわね~」

 

近所のおばあちゃんが、懐かしそうに目を細めてそう言った おそらく20年前の大洗の戦車道を知っているのだろう

 

「うわぁ~戦車だ~」

 

「戦車道復活させたの本当だったのね~」

 

小さな子供と母親が、戦車を見て物珍しそうに反応していた 子供の目は輝かせ、母親は微笑んでいた

 

「試合か頑張れよ~!」

 

漁港のおやっさんが、大きな声で応援してくれた

 

「はい、ありがとうございます!頑張ります!」

 

西住は、元気よく返事をして通り過ぎていった 彼女の表情は、期待されたことに喜びを感じているようだった

 

「…意外と寛容だったな」

 

少年は、近所の住人が戦車に好印象だったことに驚きを隠せなかった 

 

「うん、私も正直意外だった みんなのためにも頑張らないとね」

 

西住は嬉しそうに言った その言葉には、街の人々の応援に応えたいという純粋な気持ちが込められていた

 

「…そうだな(負けたらあんこう踊りだしな)」

 

そんな西住とは対照的に少年は真剣な表情で呟いた そう、この練習試合で負ければ商店街の住人にあられも無い格好と踊りをしなければならないのだ 少年の闘志は静かに燃えるのであった

 

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