ガールズ&パンツァー 少年の女子高戦車生活   作:ダオダオ

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聖グロリアーナ戦開始

 

「久しぶりの陸だ!アウトレットで買い物したいなぁ」

 

港に着岸したフェリーから、武部が目を輝かせて陸地を見つめる

 

「アウトレット……ショッピングモールのことか」

 

その言葉に、少年はぽつりと呟いた

 

「試合が終わってからですね」

 

五十鈴が武部に優しくフォローを入れる

 

「えぇ〜、昔は学校がみんな陸にあったんでしょ?いいなぁ、私その時代に生まれたかったよ」

 

武部は不満げに口を尖らせる

 

「そうか むしろ俺は海に学校がある方に驚いたが……」

 

少年は驚いたように聞き返した

 

「そうなんですか?」

 

秋山が意外そうに尋ねてきた

 

「ああ、転校してくるまで知らなかった」

 

少年は淡々と答えた

 

「それまではどこにいたんですか?」

 

 

「……数年ぐらいは施設で暮らしていたが、基本は世界中をのらりくらりしていたな 西住さんは学園艦か」

 

少年は西住の問いに過去のことを思い出しながら応え、西住に問い返した

 

「うん、学校は学園艦だったけど家は熊本にあるんだ」

 

「熊本……」

 

少年は、西住が言った熊本ということに何かが引っ掛か立たような感じがした

 

「私は、海の上が良いです!気持ちいいし、星もよく見えるし」

 

秋山が元気よく答えた

 

「西住さんは、まだ大洗の街歩いたこと無いですよね?

 

「うん ジョン君はあるの?」

 

「ん… ああ、数回程度なら」 

 

少年は考えている最中に話をふられたので、一瞬おどろいてしまった

 

「そうですか 後で、案内します」

 

五十鈴は笑顔で提案した

 

「ありがとう」

 

「……よろしく頼む」

 

と、どこか不器用ながらも感謝の意を示した

 

そんな会話を交わしているうちに、陸地がはっきりと見えてきた。

 

「よし、それでは各自車両に乗り込め!」

 

河嶋の凛とした号令が響き渡った そしてそれぞれが慣れた手つきで戦車に乗り込み、下船の準備を始める 学園艦は大洗の港に静かに着岸し、乗員たちは次々と艦を降りていく 戦車だけでなく、他の乗員や住民の車も多数下船し、少年たち戦車隊はその中に埋もれていくようだった

 

その時、大洗の学園艦の隣に、大洗よりも一回り大きな学園艦が寄港する それは先日、少年が訪問した、聖グロリアーナ女学院の学園艦だった

 

「……こうして見比べると倍はあるな」

 

少年は思わず呟いた

 

(……マチルダにチャーチルに……クルセイダー……想定外だ)

 

聖グロリアーナの学園艦から次々と下船してくる戦車を見て、少年の表情が強張った

 

(……まさか)

 

少年の予想ではチャーチルとマチルダだけだと思っていたが、そこにクルセイダーが加わっていた 少年はクルセイダーの様子を注意深く観察すると、明らかに落ち着きのない運転をしており、乗っている人物は確認できないが、少年にはおおよその推測がついていた

 

「面倒だな。作戦の修正が必要かもな」

 

少年は小さく呟き、試合会場へと向かった

 

 

 

久しぶりの大洗の戦車道の練習試合でアウトレットのあたりなどに出店や警備員などがいた そして広場には試合観戦用の巨大ディスプレイなどもあり多くの人が集まっていた

 

(…何だ揉め事か …ってあれは)

 

少年は試合まで時間があるのでアウトレットをうろうろしていると、とある一角で柄の悪そうな男たちと品の良さそうな女性たちが何やら口論をしているのを確認した そしてその品の良さそうな女性たちには見覚えがあった

 

「だから先程から申している通りですわ」

 

「私たちは今から戦車道の試合があるのであなた方と遊んでいる時間はございません」

 

「そんな釣れないこと言うなよ」

 

「そうそう、何ならその後でもいいから」

 

どうやら男たちに取り囲まれているのはダージリンとオレンジペコであった ダージリンは凛としているように見えるがオレンジペコは明らかに怯えていた 

 

「………」

 

このままここで揉め事が起きれば練習試合が中止になる恐れもある それだけはななければならないと思い少年は彼女らに近づいた

 

「いーじゃん、行こうぜ」

 

「そーそー 悪くはしないから」

 

「申し訳ございませんが急いでおりますので」

 

「それにあなた方はタイプではございませんわ」

 

「なっ」

 

「このアマ」

 

「つけあがりあかって」

 

「何やってんだ こんなところで」

 

男たちがダージリンの言葉に癇癪を起きる寸前に少年は間に入った 突然の出来事に男たちは動きを止め、少年の方に振り向いた

 

「ジョンさん」

 

「あらジャック ごきげんよう」

 

オレンジペコは少年が間に入ったことに安堵しているようだった ダージリンは普段と同じようにだがどことなく安堵したように感じた

 

「わざわざ通りところご苦労様だったな」

 

「なーに無視してんだ」

 

「今取り込み中」

 

「何、知り合い」

 

少年が構わず彼女らと会話しようとすると男たちが割り込んできた 近くで見ると男たちは少年よりも少し上背があった だから彼女らからするともっと大きく見えただろう

 

「何だ人の言葉がわかるのか」

 

「あ、何だと」

 

「なら話が早い、今から彼女らと試合なんだ ナンパは他を当たるんだな」

 

「テメーに言われる筋合いはないな」

 

「とっととうせろ」

 

そう言いながら1人の男が蹴りを放ってきた 少年は軽くスウェーで交わした

 

(素人の蹴りだな)

 

「何だ テメー見かけによらず 喧嘩慣れしてんのか」

 

「あの程度は造作もないが」

 

「いいぜ おらっ ってあら」

 

そう言いながら1人の男が拳を振り上げ少年の顔に叩き込もうとしたが少年はすり抜けるようにかわし、男は勢い余ってつまづいた

 

「やろー ってえっ」

 

「このー って何」

 

残りの2人も少年に向かって襲いかかってきたが先と同様に少年はすり抜けるようにかわし、彼女らの前に立った

 

「あんたら扇風機か」

 

少年は振り返り、男たちを挑発した

 

「すばしっこい野郎だ」

 

「あんまりいい気になんなよ」

 

男たちは再び少年に飛びかかろうと構えた

 

「あんたらがトロイだけだろ それに、いい気になっているのは俺か、それともあんたらか」

 

そういい少年は、握っていたボタンをジャグリングし始めた

 

「なっ いつの間に」

 

男たちは少年が持っているボタンを見て自身の服のボタンを確認すると、ボタンが全て取れていたのと確認した

 

「何だ 気づかなかったのか」

 

そう言いながら少年はボタンを男たちに投げ返した しかし、男たちは動揺しておりボタンを受け取る余裕はなく、ボタンが男たちの前に散らばった

 

「なっ、何かこいつやべぇよ」

 

「いっ、行こうぜ」

 

「おっ、覚えてやがれ」

 

男たちはボタンを拾うことなく逃げ出した

 

「覚えて欲しけりゃ名前ぐらい名乗れよ 全くっと 大丈夫だったか」

 

「あっ はい 大丈夫です」

 

「ええ、問題ありませんわ」

 

「それは何よりだ」

 

「ありがとうございました 私このままではどうなるかとても不安で…」

 

「そうね あなたが来なければどうなっていたことか」

 

「…そうかそのわりには、なかなか強気な発言をしていたが」

 

「ええ、あなたならきてくれると思っていましたから」

 

「随分と高く見られたものだ」

 

「…それよりジョンさん先程のはどうされたのですか」

 

「先程って」

 

「相手のボタンを瞬時に取った方法です」

 

「…方法はただ素早く相手のボタンを取っただけだか…」

 

「ふふっ 相変わらず面白い方ですわ」

 

「それはそれはっと… そろそろ時間だな それでは試合会場で…」

 

 

 

 

集合場所に行くと皆が待っていた どうやら少年が最後のようだった

 

「遅い、何をしていた」

 

河嶋がそのように言ってきた 時間を確認すると少し遅れていた

 

「…風紀活動を少々」

 

そういい試合会場に向かうのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「久しぶりね、ジョン君」

 

試合会場に着くと、蝶野教官が凛とした姿勢のままで彼らを待っていた

 

「蝶野教官……あなたが審判を?」

 

少年はそんな蝶野教官を見て、驚いたように尋ねた

「ええ、私は日本戦車道連盟の公認審判員よ」

 

彼女は自身の胸にあるバッジに手を当て、誇らしげに答えた

 

「公認ねえ……いいのか、男が戦車道の試合に参加して?」

 

少年は疑わしげな視線を向ける。 

 

「ええ、練習試合は問題なかったわ」

 

「つまり公式試合は参加できないと」

 

「そうなの ごめんなさいね 私もあなたが公式試合に出場できるように色々やってるのだけど……」

 

蝶野教官は申し訳なさそうに言った

 

「いや、結構なんだが」

 

少年は遠慮などなしに答えた

 

「いえ、私またあなたの試合を見てみたいもの 幼いとは島田流のお嬢様相手に圧勝したあなたの戦車道を」

 

蝶野教官の言葉に、少年の顔色が僅かに変わる

 

「だからそれは前も言った通りあんたの勘違い……」

 

少年が言い返そうとした瞬間、蝶野教官は彼の肩を強く叩いた

 

「誤魔化さなくてもいいわよ 別に言いふらしたりはしないわ」

 

「痛い痛い……全く、あんたには叶いそうにないな……あっ、この前の件は感謝する」

 

少年は痛そうな顔で呟き、すぐに感謝の言葉を口にした

 

「この前って、ああ、あなたの戦車の登録のことね。気にしないでいいわ。これからもどんどん相談してね」

 

「その時はお手柔らかに」

 

蝶野教官は優しく微笑んだ

 

 

 

 

 

 

 

しばらく待っていると、チャーチル歩兵戦車とマチルダ歩兵戦車がこちらに向かってきた 合計5両の戦車が、大洗の戦車の前に停止する チャーチルのハッチが開き、中からダージリンが出てきた

 

「ごきげんよう、ジャック」

 

ダージリンは少年の方に向かってきて挨拶をした

 

「どうも、ダージリンさん 少し見ない間に随分変わったな」

 

先程会った時とは違い、彼女は赤のジャケットと黒色のスカートが特徴の、見慣れない服装をしていた

 

「ええ、これは我が校伝統のパンツァージャケットですわ。どうかしら?」

 

ダージリンは誇らしげに尋ねた 少年はパンツァージャケットが何かは分からなかったが、彼女に似合っているのは確かだったので、素直に称賛した

 

「パンツァージャケット……なかなか似合ってるな」

 

「あら、どうも」

 

ダージリンは軽く返した 少年はふと、相手の戦車の数に違和感を覚える

 

「……一両少ない気がするが」

 

「いえ、もう時期……」

 

ダージリンの言葉を遮るように、遠くから弾けるような声が聞こえてきた

 

「ダージリン様ー!」

 

一台のクルセイダーが猛スピードで近づいてくる どうやら少年のの予想は当たっていたようだ

 

「お待たせいたしましたわ、ダージリン様!」

 

クルセイダーが急停止し、ハッチから飛び出してきたのは、ローズヒップであった

 

「ええ、おかえりなさい、ローズヒップ どうだったかしら、かっ飛ばした気分は?」

 

(この人も大概だな)

 

「それはもう気分爽快でございますわ!あれ、あなたはええっと確か……」

 

ローズヒップは少年を見て、首を傾げていた どうやら見覚えはあるようだ

 

「相変わらずだな、元気だなローズヒップさん」

 

少年は呆れたように尋ねた

 

「あー、そうですわ!執事さんですわね!今日はよろしくお願いしますわ!」

 

「こちらこそ それよりどうだ、淑女にはなれたのか?」

 

少年が冗談交じりに尋ねると、ローズヒップは胸を張って答えた

 

「いえ、まだまだでございますわ!でも一歩一歩精進しておりますわ!」

 

「殊勝なことだ」

 

「今日はぶちのめさせてもらいますわ!覚悟するでございますわ!」

 

ローズヒップは闘志を漲らせて叫んだ

 

「……前途多難だな」

 

少年はそう呟いた どうやら彼女の淑女への道のりは長く険しいようだ

 

 

 

 

試合開始時刻になり、お互いのチームは向き合うように整列した

 

「本日は急な申し出にも関わらず、試合を受けて頂き、感謝する」

 

河嶋が、相手に礼を述べた

 

「構いません事よ、それにしても……個性的な戦車ですのね」

 

彼女はこちらの戦車を見ながら口を手で隠していた 

 

(ははっ、いっそのこと変と言ってくれ)

 

少年は自傷気味にそう思った

 

「ですが……私達はどんな相手にも全力を尽くしますの。サンダースやプラウダみたいな下品な戦い方はいたしませんわ。お互い、騎士道精神で頑張りましょう」

 

(……騎士道精神ねぇ 生憎とそんなもん持ち合わせていないんだが…)

 

少年はダージリンの言葉に、内心で冷ややかな笑みを浮かべた

 

「それでは試合を始めます。一同、礼!」

 

蝶野教官の号令で、両校の選手たちが一斉に頭を下げた

 

「「「「よろしくお願いします!」」」」

 

 

 

 

 

 

「ジョン君」

 

少年が自身の戦車に乗り込もうとすると西住が腕の袖を掴んできた 振り返って見てみるとaチームのメンバーもいた

 

「どうした、西住さん……」

 

「さっきは随分と親しそうだったね」

 

「さっき?」

 

「聖グロリアーナの方とです」

 

「そうだったか」

 

「……ジョン殿」

 

「? !? 」

 

 

 

 

 

 

 

「ダージリン様、よろしいのでしょうか」

 

オレンジペコが心配そうに尋ねる ダージリンは優雅に紅茶を傾け、涼しい顔で答えた

 

「どうかされまして?」

 

「それは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日前 聖グロリアーナの一室にて

 

 

「ローズヒップ」

 

「何でございましょうダージリン様!」

 

ローズヒップは元気よく返事をした

 

「今回の大洗との練習試合、あなたも参加しなさい」

 

ダージリンの言葉に、その場にいた全員が驚きの声を上げた

 

「「ええっ!?」」

 

「やったでございますわ!ダージリン様の期待に応えられるように頑張りますわ!」

 

ローズヒップは目を輝かせながら答えた

 

「ええ、頑張って頂戴」

 

ダージリンは満足そうに微笑んだ

 

「それでは失礼します!」

 

ローズヒップは弾けるように走り去っていく

 

「ダージリン、あなたは何を考えているのですか!」

 

アッサムは信じられないといった表情で、ダージリンを問い詰めた

 

「あら、どうかしまして?」

 

「どうしたもありません!なぜローズヒップさんなのですか!クルセイダーではチャーチルとマチルダと巡航速度も装甲もまるで違います!まともな連携が取れません!」

 

オレンジペコの必死な訴えに、ダージリンはにやりと笑った

 

「ふっ、そうかもね」

 

アッサムとオレンジペコは、ダージリンの意図が掴めず、沈黙した

 

「未来について、私たちは一つだけ確かなことを知っている。それは、それが違うものになるだろう、ということだ」

 

ダージリンは静かに語り始めた

 

「……チャーチルですね」

 

オレンジペコはそう呟いた

 

「我が校の主な戦術は重装甲を活かして浸透強襲戦術」

 

「それが我が校の伝統です」

 

「その通り しかし読まれやすい」

 

ダージリンの言葉に、アッサムは反論しようとするが、言葉に詰まる

 

「それは……そうかもしれませんが……」

 

「だけどローズヒップなら向こうも読めない。今のあなたたちのように。わかったかしら?」

 

「「………」」

 

アッサムとオレンジペコは、ダージリンの深謀遠慮にただただ圧倒され、沈黙するしかなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

「もちろんですわ さあ、どう出てくるかしら」

 

彼女は大洗のいる方を見ながらそう呟いた

 

 

 

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