ガールズ&パンツァー 少年の女子高戦車生活   作:ダオダオ

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聖グロリアーナ戦1

 

「早速で悪いが、作戦を修正する」

 

自軍の陣地に集合するなり、少年は生徒会員と西住にそう告げた

 

「何だ貴様!唐突に何を言い出す!」

 

河嶋が、不満をあらわにして噛み付くように反論した

 

「その必要ができたんだ」

 

少年は言葉に力を込め、その必要性を訴える

 

「……私も、そう思います」

 

少年の隣に立つ西住が静かに同意した 彼女の落ち着いた声が、場の空気を少し和らげる どうやら彼女はすでに状況を理解しているようだった

 

「どーいうことなの?ジョンちゃん、西住ちゃん」

 

会長がパイプ椅子にもたれかかりながら、説明を求めた その呑気な声に、張り詰めていた空気が少し緩む

 

「俺たちの作戦は、相手をBポイントに誘き寄せて一気に叩く 間違いないな?」

 

少年は、河嶋に確認を促した

 

「そうだ!間違いない 私の作戦だからな」

 

河嶋は胸を張り、自信満々に答えた

 

「そうだ 俺もそれがベストだと思っていた 相手がチャーチルやマチルダだけであればな」

 

「どういうことなの?」

 

小山が怪訝な表情で尋ねた

 

「だが、相手にクルセイダーがいるのであれば話は別だ。チャーチルやマチルダの巡航速度は20km前後。だが、クルセイダーの巡航速度は50km、最高速度は70km近く出る」

 

少年は淡々と事実を告げる その言葉は、じわじわと皆の間に焦りを生み出した

 

「へー、それじゃすぐに追いつかれちゃうね」

 

会長がのんびりと呟く

 

「そうです、おそらく目標地点に着くまでに、私たちの戦車は撃破されてしまいます」

 

西住は、会長とは対照的に深刻そうな表情で呟いた その言葉に、皆の顔から表情が消える

 

「ではどうする!?もう時間はないんだぞ!」

 

河嶋が焦燥感から声を荒らげる

 

「桃ちゃん、落ち着いて」

 

小山が、その肩にそっと手を置いた

 

「そうだ。するのはあくまで修正だ」

 

少年は、静かに言葉を紡ぐ

 

「どうするの?」

 

西住が少年に尋ねた

 

「要はクルセイダーさえ何とかすれば、作戦に支障はない 俺がクルセイダーを抑えてみる」

 

少年は、そう告げた

 

「貴様にできるのか?」

 

河嶋が疑わしげに少年を睨む

 

「できるできないじゃない。やるだけだ」

 

少年は、一見軽いように言い放ったようだがどこか強く、自信に満ちていた その言葉に、河嶋は言葉を失った

 

「それで、囮は……」

 

少年が次の言葉を口にしようとしたとき、西住が彼の言葉を遮った

 

「私たちAチームが引き受けます」

 

「……一発でももらえば撃破されるぞ 大丈夫か?」

 

少年は、西住が乗るIV号戦車が、決して厚い装甲を持っているわけではないことを知っていた チャーチルやマチルダの砲撃を耐えるだけの装甲はIV号戦車にはないのである

 

「大丈夫です当たらなければ、問題ないですから!」

 

西住は、少年に向けてとびきりの笑顔を見せた その笑顔は、不安を吹き飛ばすような明るさだった

 

「違いない」

 

少年もその笑顔に釣られて、小さくそう呟き、彼女の覚悟を受け入れた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、聖グロリアーナ女学院の陣営では

 

「いいかしらローズヒップ この試合、あなたはジョーカーですわ」

 

ダージリンは、ローズヒップに、紅茶を一口啜ってから告げた

 

「ジョーカー……!なんか、かっこいい響きですわ!」

 

ローズヒップは目を輝かせ、興奮気味に答える

 

「いいことローズヒップ。あなたの役目は、大洗の執事を撃破することですわ 彼の戦車はとても速い あなたも全開で応えてあげなさい」

 

ダージリンは、静かだが強い口調で指示を出した

 

「わっかりましたでございますわ!ダージリン様!リミッター全開で行かせていただきますわ!」

 

ローズヒップは、敬礼とともに元気いっぱいに答え、自身の戦車に乗り込むのであった

 

「ええ、頑張ってちょうだい」

 

ダージリンは、満足そうに頷き、ローズヒップを見送った

 

 

「よろしいんですか、ダージリン様?ローズヒップさん一人に彼の相手をさせても」

 

オレンジペコが、不安そうな表情でダージリンに尋ねた

 

「ええ、むしろ他に選択肢がございまして?オレンジペコ」

 

「それは……今の私では考えつきませんが……」

 

オレンジペコは、悔しそうに顔を伏せた

 

「アッサム 彼の戦車のデータは?」

 

ダージリンが、静かにアッサムに尋ねた

 

「ええ、調べましたがほとんど資料がありませんでした。あくまで推測値ですが、速度は80km、主砲は6ポンド砲、装甲は17mmだと思われます」

 

アッサムは手元の資料を確認しながらそう告げた

 

「6ポンド砲ですか…… それでしたらこちらも近距離になれば撃破される可能性がありますね それに速度もかなりあります なるべく近づけない方がいいですね」

 

オレンジペコは、冷静に状況を分析する

 

「もっとも、どれだけ接近しようとも、チャーチルの正面装甲は貫徹できませんわ」

 

ダージリンは得意げに答えたが、アッサムとオレンジペコは、何とも言えない表情を浮かべた

 

「……それはともかく、さっきの彼の動きを見るからに、ローズヒップさん一人には荷が重すぎるのではないかと……」

 

オレンジペコは、先ほどの少年の動きを思い出し、懸念を口にした

 

「……さっき?」

 

アッサムは、その場にいなかったため、オレンジペコの言葉の意味がわからず首を傾げた

 

「……どんな人間も、自分自身の欠点に気づくことはめったにない それが、他人の美点に気づかない理由である」

 

ダージリンは、小さく呟い

 

「……オスカー・ワイルドですね」

 

オレンジペコは、その言葉の意味を察し、小さく呟いた ダージリンが、自分たちに見えていない何かを少年が見抜いている、と示唆していることに気づいたのだ

 

「…待ってペコ私を無視しないでちょうだい…」

 

『試合開始!』

 

アッサムが困惑した声で訴えるが、しかしその声は、蝶野教官の鋭い声にかき消された

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「始まったな」

 

少年は、蝶野教官の号令を聞き、静かに呟いた 

 

『あの〜、それでどうするんでしたっけ?』

 

無線機から聞こえてきたのは、一年生チームの宇津木と思われる、少し間の抜けた声だった

 

『え!?先ほど説明した通り、今回は殲滅戦ルールが適用されますので、どちらかが全部やられたら負けになります!』

 

(そこからかよ……)

 

少年は、西住が皆にルールを説明し始めたのを聞いて、心の中で思わずツッコミを入れた

 

『まず、私たちAチームとFチームで偵察に向かいますので、各チームは100mほど前進した所で待機していて下さい』

 

今度はしっかりと具体的な指示が通ってきた どうやら、指揮能力に問題はないようだ

 

「……了解」

 

少年は、短く返事をした

 

「「「「わかりました!」」」」

 

「「「「「はーい」」」」」

 

「「「「御意」」」」」

 

他のチームからも、様々な返事が返ってくる どうやら異論はないようだ

 

『なんか、作戦名ないの?』

 

すると、会長がまた呑気な声で尋ねてきた

 

「……別に必要ないと思うが」

 

少年は素直に答えた 彼にとって重要なのは作戦名ではなく作戦内容であり、名前はさして重要ではない

 

『いーじゃん!その方がかっこいいし!』

 

会長は、作戦名がとても重要なものだと思っているようだった

 

「……何か案はあるか?西住さん」

 

少年は、作戦名があることに支障はないと判断し、西住に助言を求めた

 

『え!?……作戦名は……えーと、『こそこそ作戦』です!こそこそ隠れて相手の出方を見て、こそこそ攻撃を仕掛けたいと思います!』

 

西住からは、なんともな作戦名と作戦内容が聞こえてきた

 

「(自分から言っておいてなんだが、他に名前はなかったのか……)」

 

少年は、心の中でそう思ったが、口には出さなかった

 

『姑息な作戦だな』

 

河嶋が、不満げに悪態をついているのが聞こえた

 

『桃ちゃんが立てたんじゃない』

 

すると、いつも通り小山が河嶋に言い返しているのが聞こえてきた 彼女の言う通り、この作戦の発案者は、悪態をついた河嶋自身だった

 

『いいじゃん、西住ちゃんらしくて!それじゃ、こそこそ作戦、開始ー!』

 

会長の号令のもと、各戦車が静かに動き出した

 

 

 

 

 

 

少年、西住、そして秋山は、岩陰に身を潜めながら、あたりを偵察していた

 

「2時の方向 距離約3000メートル チャーチル一両、マチルダ4両 時速15キロで進軍中」

 

少年は、肉眼で敵戦車を確認し、西住に報告した 彼の視力は、並外れて優れていた

 

「確認しました!」

 

西住は、双眼鏡を覗き込み、岩の平原を悠然と走るチャーチルとマチルダの姿を確認した

 

「さすが、綺麗な隊列を組んでますね!」

 

秋山が、感嘆の声を漏らした

 

「うん、あれだけ速度を合わせて隊列を乱さずに動けるなんて、すごーい!」

 

西住も、その統率された動きに素直に感心していた

 

「よく発見できましたね、ジョン殿」

 

秋山が、少年を称賛した 彼女らでは双眼鏡をつかなければ発見できないほどであった

 

「五感は、並の人よりは優れているからな クルセイダーは確認できたか?」

 

少年は、得意げに答え、クルセイダーの位置を尋ねた

 

「ううん、わからない」

 

「こちらも確認できません」 

 

どうやらクルセイダーは、まだ彼らの視界には入っていないようだった

 

「こちらの射程距離内に来るまで、あと数分あるな。少し打ち合わせをしよう」

 

少年は、そう言って地図を広げ、二人を誘った

 

「俺の推測だが、クルセイダーは本体の近くにいると思われる おそらく今の俺たちのように、岩陰に潜んでいるだろう」

 

少年は、自身の考えを二人に伝えた

 

「そうですね まさか単独で行動しているとは考えづらいですからね」

 

「うん、それに、クルセイダーの速度は伏兵としては最適だしね」

 

西住も秋山も、少年の意見に深く頷いた どうやら、考えていることは同じだったようだ

 

「そこでだ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ダージリン様!まだですの!私、我慢の限界ですわ!』

 

ダージリン率いるチャーチルの車内には、ローズヒップからの無線が響き渡っていた ローズヒップが搭乗するクルセイダーは、本体から離れ、岩陰を走行していた

 

「あなたの出番はもう少しで来るわ それまで我慢なさい」

 

ダージリンは、ローズヒップを宥めるように答えた

 

「向こうは、こちらの作戦に乗ってくるでしょうか?」

 

オレンジペコが不安そうに呟く

 

「さあ、どうでしょう。こちらの動きは見られているでしょうけど、向こうの戦車では、この距離でこちらの戦車を撃破するのは難しい」

 

アッサムは、冷静に状況を分析した

 

「だから、相手にわざと先手を譲り、相手の出方を伺う。相手が距離を詰めてこようとすれば、応戦すればいいだけのこと。あるいは、こちらをどこかに誘導するのであれば、それに乗るのもまた一興、といったところかしらね」

 

ダージリンは、楽しげに笑った

 

「……しかし、あと少しでこの平原を抜けてしまいます。向こうはいつ仕掛けてくるので……」

 

 

ドォーン!

 

 

その時、巨大な砲撃音が平原に響き渡った その音に、彼女たちは臨戦態勢を整える 

 

『わー、危ないでございますわ!』

 

直後、ローズヒップの声が車内に響き渡る ダージリンはすぐにクルセイダーがいる方向を確認した そこには、砲撃が発射された後の白い煙が立ち昇っていた

 

「ローズヒップ!無事!?」

 

ダージリンは、少し焦った声で無線を送った 

 

『ダージリン様!無事でございますわー!今ちっこい戦車が急に現れて、砲弾をぶっ放してきましたわー!』

 

ローズヒップからの安否確認と、状況の報告が届く

 

「……小さい戦車……ローズヒップ!今からその戦車をぶちのめして差し上げなさい!」

 

ダージリンは、珍しく荒れた口調で指示を出した しかし、その声の裏には、彼女自身も予期していなかった展開に、楽しさを感じている様子が窺えた

 

「ダージリン様……!」

 

「ダージリン……」

 

アッサムとオレンジペコは、ダージリンの普段とは違う様子に困惑した

 

「……オホン……ローズヒップ……応戦しなさ……」

 

ダージリンが、少し冷静さを取り戻し、再び指示を出そうとしたが、既に遅かったようだ

 

『わっかりましたわ!ダージリン様!必ずぶちのめしてきますわ!いっきますわよー!』

 

ローズヒップは、その言葉を遮るように威勢のいい声で応えた。作戦にはさほど変わりがないため、ダージリンはそのままにした

 

「さて、仕掛けてきたということは……」

 

 

ドォーン!

 

 

ダージリンが冷静に状況を分析していると、今度はチャーチルの近くに砲弾が着弾した 砲弾が飛んできた方向を確認すると、そこにはIV号戦車の姿が見えた

 

「こちらにも仕掛けてきましたね」

 

オレンジペコが、冷静に呟いた

 

「こちらもお相手いたしますか……」

 

ダージリンは、重い腰を上げるように呟き、戦車の砲塔を旋回し攻撃準備に入るのであった

 

 

 

 

 

 

数分前

 

 

「そこでだ 俺は、本体が射程距離内に到達するまでにクルセイダーを発見し、応戦する」

 

少年は、西住と秋山に提案した

 

「どこにいるのか、わかるんですか?」

 

秋山が、驚いたように尋ねた

 

「いや、だが推測は容易だ。本体が攻撃を受けた際に、迅速に来ることができる場所は限られている。おそらく……」

 

少年は、地図を指差しながら、その場所を探した

 

「すると、こことこのあたり……かな」

 

西住は、少年の言葉を継ぐように、二つのポイントを言い当てた

 

「なるほど、さすが西住さんだ」

 

少年は、西住の洞察力を素直に賞賛した

 

「へへっ、そうかな」

 

西住は、嬉しそうに照れ笑いを浮かべた

 

「でも、この二箇所を捜索するのは、時間的に厳しいかと……」

 

秋山が、不安そうに指摘した 彼女の言う通り、この二つのポイントとは本体の左右どちらかであり、相手に発見されずに捜索する時間は残されていなかった

 

「クルセイダーはこっちにいる」

 

少年は、迷うことなく右のポイントを指差した。

 

「えっと、どうしてそう思うのかな?」

 

西住は、困惑したように尋ねた 彼女には、少年がそう断言した理由がわからなかった

 

「俺の勘だ」

 

少年は、きっぱりと答えた

 

「「……」」

 

予想外の答えに、二人は言葉を失った

 

「……不満か?」

 

少年は、返答のない二人を静かに見つめた

 

「わかりました 信じます」

 

西住は、少し迷った後、少年の案を飲んだ なぜかはわからないが、彼女は少年の勘を信じるようだ

 

「でも、もしいなければ……」

 

秋山は、不安そうに尋ねてきた その不安は、もっともなものだった

 

「……それはあり得ないが、発見できなかった場合は、俺が本体に突撃を仕掛ける そうすれば、嫌でも向こうから出てくるだろうからな」

 

少年は、揺るぎない自信を覗かせながら、万が一の備えも付け加えた

 

「俺が無線を送るか、砲撃音が響いたら作戦開始だ それまでに各自準備を済ませておいてくれ」

 

少年は、そう言って戦車に乗り込み、静かにエンジンをかけて発進準備をした

 

「わかりました!皆さんには、私から伝令を送らせていただきます!」

 

秋山は、そう言って皆のところに戻っていった

 

「ジョン君、気をつけてね」

 

西住も秋山に続いていたが、途中で足を止め、振り返り、少年に労いの言葉をかけた

 

「お互い様だ」

 

少年は、西住にそう返し、静かに伏兵の捜索に向かうのであった

 

 

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