姫野side
『付き合ってほしい』
「は?」
放課後になってすぐのことだった。私は届いたメッセージを見て思わず大きな声をあげてしまった。周りはまだたくさん生徒が残っており、急に大きな声をあげた私はとても目立ってしまっている。いたたまれなくなった私は教室から早足で出ていき、メールを送った人の教室へと向かう。すぐに教室にたどり着き、その人物を問い詰める。
「落合くん……このメッセージどういうこと?」
メール送ってきたのは落合くん。神崎の紹介によって知り合いになった。それなりに信頼してるし、他のクラスの生徒だったら一番交流している。
「姫野か早かったな。どういう意味ってそのままの意味だが」
「そのままの意味って……付き合うってこと?」
告白なんて一度たりともされたことが無かった。別に落合くんが嫌ってわけじゃない……いや、むしろ……って違う違う。そんなこと言ってる場合じゃない。……どうしよう、私今変なとこないかな。そんなことを考えていると落合くんが真剣な眼差しでこちらを見てくる。くっ!!そんな顔で見られると。
「その通りだ、付き合ってほしい」
『!?』
な!?まさかあの落合くんがクラスメイトがまだたくさんいるなかで言ってくるとは思わなかった。大胆すぎないか!?
いや、それも彼のいいことだけど。すごい恥ずかしい。物凄く見られている。
「カフェに」
「……わかったいいよ……ん?カフェ?」
彼の勇気に応えて、私も思いきって返事をしたが、待ってなんか付け足されたぞ。
「ありがとう姫野。じゃあさっそ」
「待って」
私は思わず彼を止める。すごいウキウキとした雰囲気をしているがそんなのは関係ない。まずは事実確認が先だ。
「付き合うって……もしかしてカフェのこと?」
「あぁ、今日カフェに新作が出たそうだからな。一緒に行ってくれる人を探していた」
フー、そうかそうか。
「……痛い」
「自業自得だよ」
「確かに落合のせいかもしれないが、姫野お前も自重すべきだぞ」
私はカフェの四人席で落合くんと対面に座っていた。彼の足はどうやらまだ痛いそうだ。やりすぎとは一切思っていない。むしろ必要な処置であろう。なんたって乙女の純情をもて遊んだのだから。痛い痛いと言いながらも、新作のドリンクを美味しそう飲んでいる。表情は全く変わらないのに、そうなんだろうなというとがわかるから本当に不思議な人である。
「それ美味しいの?」
あまりにも落合くんが美味しそうに飲むものだから聞いてみた。
「あぁ、美味しいぞ。バニラクリームに生クリームをトッピングして、そこにバニラアイスをのせ、その上にさらに生クリームをかけたんだから」
「いや、限りなくクリームじゃん」
この男には胸焼けという概念はないのだろうか?見てるこっちが体調を崩しそうだ。もはや、あれだクリームの魔物だ。
「落合はあまり、家の都合上、俗世に触れてこなかったからな。ここに来て一気に解放されたのだろう。親友の嬉しそうな姿を見れて俺は嬉しい」
はぁーと溜め息をたいていと落合くんがこちらにむかってクリーム魔物を差し出してくる。
「何?」
「飲んでみたいんじゃないのか?ほら」
「な!?」
またこの朴念仁は無自覚にこういうことをやってのける。これだと私が落合くんと間接キスをしてしまう。正直に言うとそのシチュエーションにはちょっと憧れがある。……しかしなんだろう、このクリームの魔物でやりたくはない。でも、このチャンスを逃すわけには……
「ん、飲まないか姫野?なら俺が丁度味も気になっていたところだしな」
「ちょっと待って」
そうして私は落合くんと
「どうしたんだ姫野?」
「こっちのセリフなんだけど!!何でいるの!?」
神崎くんが不思議そうな顔をしてこちらを向いてくる。「どうしたんだ」はこちらのセリフだ。確かにカフェで神崎くん……というか一之瀬さんたちとは会った。だから私と落合くんは彼女らとは少し離れた席に座ったはずだ。しかし、注文が届いている頃には何故か神崎は私の隣にいたのである。
「姫野さんに落合くん。ごめんね、目を離していたらいつの間にか神崎くんがそっちに行っちゃてた」
一之瀬さんたちが申し訳なさそうにこちらにやってきて、隣のテーブルに座った。「目を離していたらいつの間にか」って何だ?神崎くんは三歳児か何かなのだろうか?
「折角だしさ、一緒に喋ろうよその方が楽しいし」
網倉さんが名案だと言わんばかりに提案してくる。それが嫌だから離れた席にしたのに。思わず溜め息をつく。この
「それにしてもよく美味そうに食べるな落合。俺だったら無理だぜそんなの」
「そうなのか、美味しいのに」
「美味しいって、もはや生クリームそのまま飲んでるようなもんだろ」
「知らないのか渡辺、砂糖は接種したら幸せになれる白い粉なんだぞ」
「いや、言い方ァ!?まるでマジもんのヤバい粉みたいに聞こえるですけど!!」
「わかる、わかるよ落合くん。あれは一度ヤったらやめれない」
「一之瀬!?お前も言い方ァ!?本当にヤバい粉みたいに聞こえるから!!本当にお前たちのに入ってるのって砂糖だよね」
「渡辺。カフェという公共の場で何度もヤバい粉、ヤバい粉と叫ぶな」
「あ、悪ぃ神崎。そうだよな、配慮に欠けてたわ」
「そうだぞ。全く、落合の教育に悪影響だ」
「お前は何に配慮してるんだよ神崎!?」
息を切らしながらツッコミをしていく渡辺くん。確かにツッコミどころは満載であった。だから、あえて触れないようにしていたというのに。
「あぁ、なんか疲れた」
溜め息をこぼしながら渡辺くんが呟く。
「渡辺、体調不良か?」
「そうなの、渡辺くん」
「体調管理はしっかりしろよ」
「いや、この疲れの原因はお前らだよ!?」
落合くん、一之瀬さん、神崎くんがそんな渡辺くんに反応する。しかし、皮肉かな原因はこの三人である。
「もういいや、それよりせっかくいるんだからさ落合の話でも聞こうぜ」
「俺の話?」
「そうそう、昔のこととかさ」
「ふむ、特におもしろい話はないな」
「そんなこともないだろ、だったら簡単な話でいいぜ」
「そうだなぁ、例えば一番好きな給食は?とかな」
渡辺くんが主導で話が進んでいった。給食とは懐かしい。一之瀬さんたちも給食とか懐かしとかそんな声が上がっている。
「給食か……」
「そうだ、何が好きだったとかあっただろ。お前のことだからな、給食のデザートおかわりじゃんけんとかも参戦してそうだしな」
本当に懐かしい。私は目立つのが嫌いだったから好きなものでも参加したりはしなかったかな。でも落合くんのことだ我先にと参加して、そして「じゃんけんなんて相手を見れば何を出すくらいわかる」とか言って戦利品をかっさらっていきそうだ。果たして何が好きなのだろうか、個人的には揚げパンとかが濃厚だ。最初は少し下らない質問だと思ったが彼が何を答えるのかワクワクしている自分がいる。
「……すまない、俺は給食を食べたことがないんだ」
「え」
『ええええええええええええ!?』
衝撃の事実である。給食を食べことがないというのは本当なのだろうか。そう思い、彼の過去にやたらと詳しい神崎くんのほうを見る。すると神崎くんは申し訳なさそうな顔をしていた。
「……実は、落合のこれには理由があるんだ」
「……理由」
思わず息を飲む。給食を食べたことがないといのははっきり言って異常である。恐らくそこにはとんでもない家庭の事情があるにちがいない。
「実は落合の親御さんがだな……」
……親御さん、もしかしたら落合くんの家庭はものすごい貧乏だったのかもしれない。甘いものもあんまり食べてこなかったそうだし。今度、彼に飴かなにかあげよう。
「光る竹を見つけて、切ってみるとそこに落合がいたというわけだ」
「は?」
神崎くんは明後日の方向を向いて、そんなことを言ってきた。なにを言ってるのだこいつは頭がおかしくなったか?
「もともとは三寸ばかりなる人であったがすぐに成長して、今の落合に至るというわけだ」
「いや、何もわからないし!?そもそも絶対嘘だよね。竹取物語になっちゃってるし!!」
「そ、そ、そ、そうだ。俺の父親は竹取りの翁と呼ばれていたとかいないとか」
「絶対嘘でしょ!?めっちゃ声震えてるよ!!」
「つまり、落合くんは箱入り娘ならぬ、竹入り息子っていうことだね(ドヤッ)」
『………』
「つまり、落合くんは箱入り娘ならぬ、竹入り息子っていうことだね(ドヤッ)」
「反応されなかったからって二回も言わないでよ一之瀬さん!?」
家のクラスのリーダーはこんな人だっただろうか。そんなことを考えていると。新しくカフェの扉が開きこちらに近づいてくる人の影。また面倒事がやって来そうだ。
「ククク、邪魔するぜ」
こちらに近づいてきたのはCクラスの暴君、そしてカケルくん人形*1こと龍園くんとその手下である石崎くんとアルベルトくんであった。これまた厄介なのがやって来たと一人溜め息をついた。
「邪魔するなら帰ってくれ」
「そうか、行くぞ、石崎、アルベルト」
え?
そうして龍園くんは一人でカフェから出ていった。すごい素直に出ていったんだけど。というか石崎くんとアルベルトくんは着いて行かなくていいのだろうか。石崎くんなんて未だに「え?」みたいな顔のまま止まっている。するとすごい勢いで龍園くんが帰ってきた。
「止めろよ!!何でそのまま帰らせるんだよ!?というか石崎、アルベルト、何でお前ら着いてこないんだよ!?」
「いや、急に漫才が始まったから反応できませんでした」
「バカやろう!!お前はそれでも関西育ちかアルベルト!?」
「いや、絶対聞くのそっちじゃないでしょ!?」
「あ?何言ってやがるアルベルトはゴリゴリの関西育ちだろ見た目も口調からしても」
「YES」
「YESって言ったじゃん。全然口調も見た目も関西人じゃないじゃん。どっちかと言うと外国人観光客だよ!!」
「いいツッコミだな姫野、君と一緒ならトップになれる気がする」
「落合くんは今ので何を見いだしてるのさ!?」
思わず息を切らす、さっきの渡部くんの気持ちがすごいわかる。そういえばなんかノリでツッコミをしているが今私がツッコミをしている人物ってあのCクラスの暴君である龍園くんである。なんかそう考えると怖くなってきた。どうしよう私大丈夫かな?
「クラスも違うのに随分と仲良しじゃねぇか落合。本当にお笑いでトップでも目指すつもりか?」
「あぁ目指すはK-1チャンピオンだ」
「それ格闘技!!あと二人で出れるやつじゃないし!!」
「……本当に仲がいいな。もしかして付き合ってるのか?」
「付き合っているというか、付き合ってもらっている」
『え?』
《b》「お、お、落合くん!?」
な、何を言っているんだこの朴念仁は!?
いや、別に彼と付き合うのが嫌というわけじゃないしむしろ\\\…いや何を考えているだろ私はこれはさっきのあれだ付き合う(カフェに)ということだそうだみんな勘違いをしている筈だそうだそうに決まっている早く勘違いをとかなくてはそれにしても暑いこのお店暖房利きすぎじゃないか
「姫野さん、後で
「ひぃっ!?」
今、殺気がきた。クラスの頼れるリーダーの一之瀬さんがものすごい笑顔でこっちを見てる。笑っているはずなのに目が笑ってないもん。ここは落合くんに任せよう、そもそも原因は落合くんにあるんだから。
「ククク………まじかよ、もしかして姫野って結構ヤバい奴なのか?こんな狂人と付き合うなんて。もしかして一之瀬のクラスで一番ヤバいのはコイツか?そういえばあの
なんか龍園くんからの警戒度が上がったんですけど!?誰がクラスで一番ヤバイ奴だって!!
「おぉ、それはめでたいな。なぁアルベルト」
石崎くんがアルベルトくんに話しかけていて、それにアルベルトくんが頷く。だから違うんだって。
「こんな日には飲まねえとな。店員さん生一杯」
ねぇよ!!居酒屋じゃねえんだよここは、あと未成年だろ
「アルベルトはどうする……すいませーんアルベルトにはカシオレを」
だからねぇよ!!というかカシオレってOLか!?
「ほら龍園さんも注文を」
「ん、あぁオレンジジュースで」
ねぇ……あれ?龍園くんが一番マトモだと!?
「落合考え直せ!!こんな似非初音ミ○もどきなんてお母さん認めませんからね!!」
「誰が似非初音○クもとぎだ!?意味がかぶってるし、そもそも初音ミ○じゃねぇよ」
私は神崎くんの脛に思いっきり蹴りを入れる。
「ぐっ!?」
そうして彼は机に沈んだ。
「まじでK-1目指してるのか?」
目指してねぇよ!?
<三十分後>
疲れたぁぁ!!
なんで誤解をとくのに三十分もかかるんだよ。おかげでリラックスできるカフェのはずなのに全然リラックスできてないし。
「落合、お前専属の通訳を雇ったほうがいいぞ」
まじで渡辺くんの言うとおりである……いや駄目だ、この男の翻訳をできる人間なんぞいるかどうか怪しい。
「にしてもただカフェで雑談してただけかよ。俺は落合が一之瀬たちと組んで悪巧みでも考えてるかと思ったぜ」
「悪巧みなんて一度もしたことないぞ」
「……そうだよな、お前はそういう奴だよ。……ってか何をそんなに真剣に話してたんだよ」
「そうそう、そうなんだよ龍園くん。実は落合くんは箱入り娘ならぬ、竹入息子だったんだよ(ドヤッ)」
「……一之瀬、ついに頭がおかしくなったか」
「は?」
「なんだよ一之瀬事実だ……ちょっと待て一之瀬なんで連れて、おい一之瀬、離しやが……力強ッ!?テメェゴリラかよ!?待てなんで握る力が強くなって!?痛い痛い!!石崎、アルベルト、このゴリラ女をどうにかって、おいどこ向いてやがる!!おいBクラス共、テメェらの大将を止めやがれ!!無視してんじゃねぇよ!!お、落合てめぇのゴリラパワーで俺を助けろ!!」
「手を繋ぐ(一之瀬が龍園の手を掴み引きずっていく様子)なんて龍園と一之瀬は仲が良いんだな」
「お前の目には本当に眼球がついてんのか!?」
「みんなごめんね、私はちょっと龍園くんとお話があるからさ」
そうして、龍園くんはそのまま一之瀬さんに引きずられてカフェの外へと出ていった。そこに彼の王としての威厳はなかった。おそらくここにいる全員がドン引きだろう
「仲良しだな」
「ゴリラみたいな力で般若のような笑顔をしている帆波ちゃんも素敵」
訂正、二人ほど例外がいた。状況を判断できていない
「それって褒めてるのか?」
渡辺くんが白波さんの発言に対してひっそり呟く。私もそう思う。ゴリラみたいと呼ばれて喜ぶ女子も般若のようなと呼ばれて喜ぶ女子も恐らくこの世にはいないであろうから。
「はぁ、なんか帆波ちゃんも大分変わっちゃったな」
網倉さんが溜め息をしながら嘆いてる。
「昔はさ、もっと女の子らしかったのに、今じゃあクラスの誰よりも逞しくなっちゃったし」
本当にそうである。入学当初に誰が予想していただろうかあの一之瀬帆波が龍園翔を引きずっていく様子が。
「何々、なんの話?」
「帆波ちゃん!?いつからそこに?」
いつの間にか一之瀬さんがさっきいた場所に座っていた。
「そんな味方陣営の会議中に急に現れた敵陣営の幹部みたいに大袈裟に言わないでよ」
「えらく具体的かつ微妙にわかりにくい例えだね」
「それにほら、私だけじゃないよ。ちゃんと龍園くんもいるよ」
ほらと言い彼女が指を差すと、そこにはボロボロになった龍園くんがいた。そこへ石崎くんとアルベルトくんが歩み寄っていた。
「帆波ちゃん……本当に逞しくなってしまったね」
「ちょっと麻子ちゃん急に褒めないでよ、恥ずかしいじゃん」
網倉さんが遠い目をしながら呟く。それは変な方向へと進化してしまった友人を嘆くものであった。良くか悪くか彼女の真意は一之瀬さんへと届いてはいなかった。
「そ、それで結局一之瀬たちと落合は何を話してたんだよ」
「そういえば、そんな話だったか」
「最初からその話だったんだけどな」
龍園くんが一之瀬さんのほうを見る。首を傾げる一之瀬さん。
「給食の話だ。俺は給食というものを食べたことがなくては」
「まじかよ落合!?信じらねぇぜ!!俺は授業は受けなくても給食だけは毎日食ってたぜ」
石崎くんがこたえる。おい不良、授業を受けないのになに律儀に給食だけは食ってるんだ。
「給食を食ったことないだと。ククク、それを『
なんだ『鬼の給食委員』ってクソダサい異名は、そもそもこの人、不良なのに委員会に入っていたのか?
「おい、落合。それとBクラスども明日の昼うちのクラスに来いの、いいものを見せてやるよ」
そうして龍園くんたちは去っていった。……本当に何をしに来たのだろう。
「ところで落合、龍園の誘いにのるつもりか?」
「あぁ、いいものを見せてくれるそうだからな」
「用心はしろよ、あと変なことされたら大声で俺を呼ぶんだぞ、それから防犯ブザーはちゃんと持ったか、それにしらない人にお菓子を貰ったからって着いていくじゃないぞ、あとは……」
「神崎くんは落合くんのお母さんか何かなの!?」
こうして私たちは解散になっ「まだだよね、姫野さん」
「え?」
「言ったじゃん後で
「あ」
「じゃあ続きは私の部屋でやろっか。じゃあね、みんな。行こうか姫野さん」
私は視線で助けを送ったが、大半から剃らされる。
「帆波ちゃんと二人きり!?……妬ましい」
なんか別方向で恨みを買ってる!?
お、落合くんは?
「姫野も一之瀬と仲良しなんだな」
違うわ、この朴念仁が!?
そうして私は結局一之瀬さんと夜を過ごした。とても怖かったです。
次の日の昼、私は文句を言おうと落合くんのクラスに向かっていた。そうして私は教室の扉を開ける。
「いいかしら落合くん、あなたはこのクラスを代表する立場にあるのだから節度のある行動を心掛けて貰えるかしら」
「……はい、すみません」
落合くんが床に正座して、堀北さんに怒られていた。どういう状況?
「たしか……一之瀬のクラスの姫野だったよな」
そうして私に話しかけてきたのは綾小路くん。落合くんが友人であると話していた人だ。
「うん合ってる、綾小路くんだよね。これはどういう状況?」
「昨日のカフェの件についてだ。元を辿れば落合が全て悪いということでクラスの代表である堀北にクレームがきたそうだ」
「そうなんだ」
折角だから、なにか言ってやろうと思ったが説教されている姿を見ると気が引ける。
「なんだ、まだここにいたのか落合、それに姫野」
教室の扉から給食着を着た龍園くんが姿を現した。
ん?給食着?
「なんの用かしら龍園くん、私は今落合くんに説教………あなた、なぜそんな格好をしているの?」
それはまぁ……誰だってそうなる。
「見てわからないのか鈴音、お昼の時間だぜ給食着を着るのは当然だろ」
「そうなった経緯がわからないから聞いてるのよ。そもそも給食着を着るならそのロン毛をしまいなさいよ、髪の毛がご飯に入るでしょう」
「おいおい、この『鬼の給食委員』と呼ばれたこの俺に指図か?」
「あら奇遇ね、私は『氷の給食委員』と呼ばれていたのよ。だからあなたのその態度は見過ごせないわ」
なんかクラスの代表が言い合いをしている。しかも物凄く下らないことで。
「まぁいいやめだ、お前と言い争ってたら折角の給食が冷めちまうからな。さっさと来い、落合と姫野。お前らに本当の給食というのを見せてやるよ。それから雑魚どもお前らも来てもいいぜ、お前たちにも恵んでやるからよ」
本当の給食ってなんだ?というかなんで私まで名指しに。
「行こう、姫野」
落合くんが目に期待を宿して、こちらを見てくる。うッ!!さすがにこれは断わりずらい。溜め息をつきながら私は彼に着いていった。
「なぁ、俺も給食を」
「駄目よ清隆!?あんなロン毛の給食なんて何が入ってるかわからないんだから!!」
龍園くんのクラスに着くとそこにはとても懐かしい給食の用意がしてあった。というかこれを全部用意したのだろうか?彼のクラスメイトも机をグループで固めて座っている。
「おら、さっさとよそってもらってその辺に適当に座りやがれ」
そうして私たちはトレーを持って給食を貰う。献立はカレー、ご飯、サラダに牛乳、そしてプリンとありふれたものであった。
「おーい、落合たちこっちに座れよ」
石崎くんが私たちを手招きする、そこには石崎くん、アルベルトくん、伊吹さん、椎名さんがグループを作って座っており、いまアルベルトくんが2人分机を用意してくれた。
だから私たち二人は用意された椅子に座る。
「ククク、全員座ったようだな。それじゃあ全員手を合わせろ……いただきます」
「いただきます!!」
返事をしたのは石崎くんだけであったが、その合図に合わせて全員が給食を食べ始めた。私もカレーを食べる。美味しい、そして何より何処か懐かしい味だ。そういえば私もカレーの日は楽しみにしてたっけ。そんなことを考えながら私は正面の落合くんを見る。彼はゆっくりとカレーを噛み締めていた。
「何ちんたら食ってるのよ落合。それより勝負よ!!どっちがカレーを多くおかわりできるか!!」
「お!面白そうだな俺も混ぜろよ」
「……受けてたつ」
伊吹さんが落合くんに勝負を申し込み、それに石崎くんが便乗している。落合くんもどうやらやる気のようだ。こんなことをしている人たちいたなぁと懐かしい気持ちになる。周りのグループも見てみるとほとんどが談笑をしたりしながら楽しんで給食を食べている。
「フフフ、たまにはこんな形の昼食も悪くありませんね」
「YES」
本当にそうである。たまにはこんなのもいいかな、そんなことを考えているとカレーを食べ終わったのか三人がおかわりに並びに行っている。……私もおかわりしようかな?
「手を合わせろ、ごちそうさまでした」
『ごちそうさまでした』
今回は何人かの男子が返事をした。そうしていま、私と落合くんは教室を出て、廊下を歩いている。
「思ったより本格的でびっくりしたよ」
「そうか、あれが給食というものなんだな」
そっか、落合くんは給食を食べたことがないんだった。だから彼にとってこれが初めて給食。
「どうだった、初めての給食は?」
「……とても良かった。あんな大勢でご飯を食べる機会は一度もなかったからな」
「そっか……」
きっとそこには大きな理由があるんだろう。彼と深く関わったことのある人間しか知らないようか理由が。
「……俺は知らないことばかりだ」
「ん?」
「竹から生まれたわけじゃないが、俺の世界はとある場所で完結していた。だからいろんなことを知らない」
「うん」
「だからこれからも付き合ってほしい、俺はもっといろんなことを知りたい」
「……いいよ、付き合ってあげる」
彼は嬉しそうにする。表情には全然出てないがわかるようになってきた。それにしても変わったな。昔の私なら断っていただろう。こんな人間と関わるのは嫌すぎると。けど今は違う。私は彼、落合くんと一緒に過ごす時間を楽しい感じている。さっき落合くんはいろんなことを知りたいから付き合ってほしいと言っていた。確かに彼はいろんなことを知っていってるのかもしれない。でも、知っていくのは君だけじゃないんだよ。
友達と一緒に喋るのは楽しい、運動は疲れるけど勝ったときはとても嬉しい、友達と一緒に食べる食事はいつもより美味しく感じる、自分の思うことをやりたいことを応援してくれる人がいる、人間はいつだって変われる、そして……大切な人との別れは寂しい。この全てが君と会って、過ごして、私が初めて知ったことなんだよ。こんなのさ、私には似合ってないだろうけどさ私はこう考えてる。
君がいろんなことを知っていくんじゃない、
最早、誰が誰なのかわからなくなってきました。私個人の解釈……解釈?解釈なのかな?とりあえず解釈といたします。なのでご指摘やここはこうした方がいいのではないかなどの意見やアドバイスがありましたら是非感想をください。ここまで見ていただいてありがとうございました。それではまた次回の投稿でお会いしましょう。