始まりは大抵くだらない
天嶺視点
小さい頃からずっと聞かされ続けられた言葉だ。その言葉に幼いながらに俺は目の前の男に疑問を呈した。
「
「言葉の通りさ、
「……よくわかんない」
「まぁ、いずれわかるさ。君には全てがあるからね……才能も実力も機会も時間も。さぁ、休憩はここまでだ、
そうして俺は再び机へと向かった。ここではありとあらゆる教育が行われた。学力、スポーツ、芸術、武術などを中心とし、その他色々なものをそれぞれのエキスパートから教わる。父親曰く俺には才能があるらしい。才あるものを活かし、導くのが自分の役目であると。だから父親は金を惜しまず俺にありとあらゆる教育を行う。知識、技術は身につくが、
「天嶺、少し話がある」
「何?」
父親に呼び出され、現在は父に部屋で対面しながら話していた。父親の隣には母親もいる。
「天嶺、学校に通ってみないか?」
「学校?」
父親からの話は意外なものであった。なにせ今まで学校に通わせず自分たちの手で育ててきたのに急に学校に通わせると言いだしたからだ。
「あぁ、お前にも社会経験が必要であると昔から考えていてな、お前も今年で16歳になるだろう」
「通わせるといっても、何処に?」
俺は小学校も中学校も通ったことがない。そんな奴を受け入れる学校などあるのだろうか?
「ここだ」
そうして父親はとあるパンフレットを俺へと渡す。そこには【
「ここの理事長とは旧知の仲でな」
「ほら、前にも会ったことがあるでしょ有栖ちゃん。この学校の理事長はね有栖ちゃんのお父様なの」
父の言葉の後に母も口を開く。有栖ちゃんとは、【
「どうだ、入学する気はあるか?」
「学校には興味がある」
「そうか、ならこちらで手続きをしておこう。それと、明日入学のためのテストと面接に行ってもらう」
「明日!?」
「「!?」」
いくらなんでも急すぎないだろうか。もうちょっと早く伝えることとかできなかったのだろうか。
「……急な話ではあったがお前なら大丈夫だと信じている」
額の汗を拭いながら父親が告げる。よくよく見たら母親も汗をかいていた。この部屋はそんなに暑いのか?まぁいいか夢にまで学園生活だ。
「わかった、期待通りになるかは知らないが、善処はする」
そうして俺は父親の部屋から出ていく。
「……目指せ友達100人♪」
鼻歌を歌いながら俺は自分の部屋へと戻っていった。
父親視点
私には一人の息子がいた。その息子は容姿は妻に似て、才能は私に似た自慢の息子であった。私は妻と相談をして息子に最高の教育を施した。息子は教育を新品のスポンジのようにあらゆる知識、技術を吸収していった。それが嬉しく、教育をする人も私達もついつい『何にでもなれる』なれると言ってしまった。
……いつからだろう息子が笑っている姿を見なくなったのは?いや昔から家では褒めて伸ばす方針であった。息子も初めの方は嬉しそうな顔……してったけ?あれ?そもそも息子が笑った顔を見たことがないような。その日のうちに私は妻との【第212回天嶺会議】を行った。そうして出た結論はある程度笑えるようになってから学校などの教育機関に送ろうと。
……そうして……そうして……そうして…
天嶺は義務教育の過程を終えた歳になっていた。
「成守、私は教育を間違えたかもしれない」
「君らしくもなく弱気だね」
私と今話しているのは、長年の友人である坂柳成守だ。成守には天嶺と同じ歳の有栖という娘がいる。彼女は父親想いであり、非常に優れた優秀な娘である。
「君が真剣に悩むということは、天嶺くんのことで悩みかい?」
私は天嶺について成守に話した。
「なるほど、でも有栖から聞いた話とは違うね。有栖からは愉快で面白い子だと聞いているけれど…」
愉快?面白い?あの天嶺がか?
「もしかしたら、思春期なのかもしれないね?」
「思春期?」
思春期、あの天嶺がか。
「天嶺くんぐらいの頃の歳の子には今は多感な時期でもあるからね、親との関わりについてもよくわからないかもしれない」
「なるほど」
「そこで提案があるんだ、天嶺くんを私の学校に通わせてみないかい?」
「お前の学校……高度育生高等学校か」
成守は彼の父親から高度育成高等学校の理事を引き継いでいる。
「あぁ、今思えば天嶺くんは同年代との関わりがあまりないんじゃないかな」
確かに天嶺は自分の歳に近い子との関わりは坂柳の娘の有栖ちゃん含め僅かな人間としか関わりがない。
「もしかしたら、彼に必要な同年代との関わりなのかもしれない」
「……なるほど」
一理ある。そうして手続きはスムーズに進んでいった。あとは、本人の了承だけであった。正確にはテストやら面接をやらなければならないものはあるが、そんなものはあいつは難なく突破できるであろう。そうして私は妻と一緒に天嶺を待った。
そうして私は天嶺に高育の話をした。天嶺も興味深そうにパンフレットを見ていた。どうやら掴みはいい。早速入学の手続きをしようと準備をした。
「明日!?」
「「!?」」
天嶺から発せられるプレッシャーのようなものを感じ、思わず汗が流れた。
いつかのことだった、武術の指導者が訴えてきたことがあった。
『彼には得体の知れない何かがある』と。
一人であったら、別に気にすることはなかったが、それが何人もとなるとさすがに専門の機関で調査を行った。しかし結果は異常なし。私も妻も実際に見たわけではないので、この件は特に気にしないことにした。
現在、こうして眼の前で見ていると本当に得体の知れない何かがそこにはいた。約16年、息子と一緒にいた。しかしこんな息子の姿は初めてであった。しかし、私は父親だここで息子に恐怖を抱いてはならない。
「……急な話ではあったがお前なら大丈夫だと信じている」
これは紛れのない本心だ。それを聞いた後に天嶺は部屋を出る。
「……あなた」
「……信じるだけ、あとは私達の息子を」
願わくば、あの学園での生活が息子にとってよいものであるように。
坂柳成守視点
「やれやれ、こちらも一苦労だよ」
僕はさっき、親友の息子である天嶺くんの面接を僕自らが行っていた。本来なら、私が面接に関わることはないが、彼の場合は特別であり、実際に興味があったからでもある。一癖も二癖もある人物であったが、流石は彼の息子、実力は既に父親を超えている。コミュニケーションには少し問題はあるものの実力は申し分はない。
「今年の1年生は荒れそうだね」
そうして僕は二人へ合格通知を送った。
今回は導入なのであんまりボケれなかった。