ドキドキの初登校!!裏
綾小路清隆視点
4月入学式、オレは学校へと向かうバスの中で座席に座りゆらゆらと揺れていた。車内は大変混雑している。その途中でまたバスが止まって、一人の老婆が入ってきた。足はプルプルと震えており、とてもずっと立ってられそうには思えない。しかし、座席はどこも空いておらず、老婆は立っているしかない。
「ねぇ、席を譲ってあげようとは思わないの?」
OL風の女性が優先席を我が物顔で居座っているガタイのいい金髪の男に言っていた。格好をみるにどうやらオレと同じ高育の生徒らしい。
「そこの君、お婆さんが困っているのが見えないの?」
「実にクレイジーな質問だね、レディー。なぜ私がこの老婆に席を譲らなければならないんだい?どこにも理由はないが」
「あなたが座っているのは優先席よ。お年寄りに譲るのは当然でしょ?」
「理解できないねぇ。優先席はあくまで優先席であって、譲らなければならないという法的な義務は存在しない。この場所を譲るかどうかは私が判断することだ。若者だから席を譲る?ハハハ、実にナンセンスな考え方だ」
どうやら二人は優先席について言い合いをしているようだ。まぁそれも気になるが、オレにはそれよりも気になることがある。優先席を座ってる金髪の男の隣だ。そこは普通席ではあるが、そこに座っている奴。そいつは二人が言い争いをしている隣で腕を組んで目を閉じながら座っている。オレの予想が間違っていなければそいつは今、熟睡している。あんなに大きな声で論争をしているというのに一切反応しない……というかさっきから全然動いていない。寝てるのかアイツ?死んでるといっても納得なぐらい動かないんだが。しかもそいつは美人な顔立ちをした男であり、寝ている姿も絵になる。正直、ズボンと喉仏を確認するまではそいつが男であるとは気づかなかった。
「あの……私も、お姉さんの言う通りだと思うな」
おっとここで金髪の男とOL風の女の二人の口論に乱入者が現れた。オレ達と同じ制服をきた女子であった。どうやら騒ぎの最中に少し離れたところからここまでやってきたようだ。ところで寝ている彼はどうだろうか?
「………」
全く微動だにしない。もしかしたらこのバスで最も肝が座っているのは金髪の男ではなく隣で寝ているあいつなのではないだろうか?
「皆さん、少しだけ話を聞いてください。誰でもいいんです、誰かこのお婆さんに席を譲って貰えませんか?」
下らないことを考えているうちに、ターゲットは金髪の男ではなくオレ達、席に座っている他の客へと移された。しかし少女の声を聞いても誰も立ち上がろうとしない。少女は辺りをしばらく見渡して、一人の男にターゲットを移す。さっきからオレが注目している寝ているやつだ。
「ねぇ、そこの君」
少女は寝ている男を揺さぶって起こそうとする。結構大胆だな。すると少年の瞼はゆっくりと開かれる。
「ぁぁん」
その声を聞いた瞬間、バス内の室温が下がった気がする。目を開いた男、目を瞑っている姿でも絵になった男であったが、さらに絵になる。思わずずっと眺めていたくなるような顔ではあるがそれよりも気になることがある。さっきからその男からとんでもない圧を感じており、声をかけた少女もその隣にいるOLの女性も怯えている。
「……なんだ?」
「え!?……えっと、その……」
目を擦りながら男は自分を揺さぶってきた少女に問う。少女はしどろもどろになりながらも質問に答えようとする。煮え切らない態度の少女ではあるが誰もそれを責めることはできない。誰だってあんな圧を放っている男相手ではあんな態度になってしまう。いや訂正、隣の金髪の男は全く変わらなそうだ。すると男は辺りを見渡して、最後に老婆に焦点を合わせる……というかもはや睨んでいる気がする。睨まれている老婆は顔を青くして震えている。その姿を見てか、男は立ち上がり、手で自分の座っていた席を老婆へと示す。おそらく、どうぞという意味であろう。しかし老婆は震えて動こうとしない。
「……ん?どうぞ」
それを見かねてか目を細めて、老婆に向かってそう言う。やめて差し上げろ、老婆がさらに震えている。
「ひっ!?座ります、座らせていただきます」
老婆は凄まじい速度で男の座っていた席に座る。席には座ったが、むしろ老婆は立ってたときよりも震えていた。それを見て席を譲った男は満足そうに頷き。少し離れたところへといった。彼は一体何に満足したのだろうか?そうしてバスには静寂が戻った。しばらくしてバスは高育へと到着した。それまでに何度か反対側の席の女と目があったがまぁいいだろう。
しばらくして教室に着く。教室では既に何人かのグループができており、既に談笑をしている。不味い乗り遅れた。何事もスタートが大事だというのにそのスタートから乗り遅れてしまう。何人か談笑をしてない生徒がおり、その生徒にオレが話しかけようかなと決心した瞬間にそいつは別のやつに話しかけられて、そいつと談笑している。タイミングが遅かったか。
「滑稽ね」
突如として隣から話しかけられる。そこにいたのはバスで何度か目があった反対側の席の女であった。バスから出たあともなにかと因縁?まぁそんな感じなものがありそうだ。もしかしたら運命とかいうやつだろうか。
「……同じクラスで隣の席だったとはな運命ってやつか?」
「やめてくれないかしら、あなたと運命だなんて非常に不愉快だわ」
「流石に酷くないか?」
「あなたには妥当なところよ」
ちょっとした冗談のつもりがこんなにマジレスをされるとは思わなかった。少しへこみそうだ。
「……俺の名前は綾小路清隆だ」
「なに、運命の次は自己紹介?新手のナンパかなにか?」
「断じて違う。ただ会うのは二回目だからな、別にいいだろそれぐらい」
「拒否しても構わないかしら?」
「1年間互いの名前も知らずに隣の席で過ごすのは居心地が悪いとは思わないか」
「私はそうは思わないわ」
どうやら相手のガードは固く、名前すら教えて貰えないようだ。それでもオレは諦めない、何せ一人で座っているのは居心地が悪いからな
「友達は別のクラスにいるのか?それともここに進学したのは一人で?」
「……物好きね、あなたも。私に話しかけても面白くないわよ」
「これ以上は迷惑って言うならやめとく」
流石に隣の席の奴を怒らせてまで自己紹介を強制させるつもりはない。これで会話は終了だなと思っていたが、彼女はため息をつきながら俺の瞳を真っ直ぐとこちらに向けてきた。
「私は
教えて貰えないと思っていたが、彼女……堀北はそう名乗った。
「一応オレがどんな人間か教えておくと、特に趣味はないが何にでも興味はある。友人は沢山はいらないがある程度いればいいと思っている。まぁ、そんな人間だ」
「本当に事なかれ主義らしい回答ね。私は好きになれそうにもない考え方ね」
「何だろう、オレの全てが一秒で否定された気がする……」
「これ以上不運が重ならないことを祈りたいものね」
「心中察するが、それは叶わないようだぞ」
そうしてオレは堀北に指でそいつを示す。堀北はオレの示した先を見て、あきれた顔をする。そこにいたのは優先席を譲らなかった金髪の男であり、男は自分の席につくと、机に足をかけて爪の手入れをしている。
「……なるほど。確かに不運ね」
そんな話をしていると、教室の後ろの扉から音がする。そこから現れたのは老婆に席を譲った男であった。そいつは鋭い視線で辺りを見た後に自分の席へと座っていった。
「……本当に不運ね」
堀北がため息をつきながら、片手で頭を押さえる。
「別にあいつはいいんじゃないか?あいつは席を譲っただけだろう」
「あなたはあれが席を譲っただけに見えたのかしら」
「……とてもそれだけには見えないな」
あれは完全に目と圧がヤバかった。あんなやつがクラスにいるとは面倒なことにならないといいが。
始業を告げるチャイムが鳴り、しばらくしてスーツを着た一人の女性が入ってきた。
「えー新入生諸君。私はDクラスを担当することになった
そうして、茶柱は資料を人数分、先頭のやつに配っていく。大体の内容は、入学案内に書かれたものと同じであった。この学校は他の学校と違うところが多い。特にその代表ともいえるのは、Sシステムである。
「今から配る学生証カード。それを使い、敷地内にある全ての施設で利用したり、売店などで商品を購入できるようになっている。クレジットカードのようなものだ。ただし、ポイントを消費することになるので注意が必要だ。学校内においてこのポイントで買えないものはない。学校の敷地内にあるものなら、何でも購入可能だ」
代表例の一つとして、このポイントである。ここでは紙幣や硬貨などは一切使わず、ポイントだけでのみ取引を行う。恐らくは妙なトラブルを避けるためであろう。
「施設ではこの機械に学生証を通すか、提示することで使用可能だ。使い方はシンプルだから迷うことはないだろう。それからポイントは毎月1日に自動的に振り込まれるようになっている。お前たち全員、平等に10万ポイントが既に支給されているはずだ。なお、1ポイントにつき一円の価値がある」
茶柱の言葉に教室の中がざわついた。当然だ、入学してまもない俺達にいきなり10万円のお小遣いが貰えたのだから。
「ポイントの支給額が多いことに驚いたか?この学校は実力で生徒を測る。入学を果たしたお前たちには、それだけの価値と可能性がある。そのことに対する評価みたいなものだ。卒業して現金にすることは出来ないから思う存分に使え。仮にポイントを使う必要が無いと思ったものは誰かに譲渡しても構わない。だが、無理やりカツアゲをするような真似をするなよ?学校はいじめ問題にだけは敏感だからな」
戸惑いの広がる教室内で茶柱はぐるりと生徒たちを見渡して、ある生徒を見て一瞬止まるが、すぐに何事もなかったように振る舞う。
「質問は無いようだな。では良い学生ライフを送ってくれたまえ」
そうして、茶柱は教室を去っていった。その後に教室内では浮き足立った生徒たちが今日のことついて話し合っていた。大体がドコドコでこれを買おうというものだった。
「皆、少し話を聞いて貰ってもいいかな?」
そんな中でもいかにも好青年といった雰囲気の生徒が手を上げて話始めた。
「僕らは今日から同じクラスで過ごすことになる。だから今から自発的に自己紹介を行って、一日でも早く皆が友達なれたらと思うんだ。入学式まで時間もあるし、どうかな?」
「賛成~!!私たち、まだみんなの名前とか、全然わかんないし」
その言葉を区切りにそれぞれが賛成の意思を示す。
「じゃあまずは、発案をした僕から。僕の名前は
模範解答とも言うべき自己紹介であろう。現に平田は拍手喝采(主に女子)である。きっとこういう奴がクラスを仕切っていくのだろう。
「もし良ければ、端から自己紹介を始めて貰いたいんだけど……いいかな?」
平田が確認を取り、端の生徒から自己紹介を始めていった。自己紹介……クラス内でのカーストを決める制度であり、ここを失敗すれば俺の求める学園生活からは遠のいてしまう。
「俺は
自己紹介も進んでいき、おちゃらけた様子で山内は話した。野球の背番号が4番のことには意味はないと思うんだが……そもそもインターハイは高校の体育大会では?……まぁきっとウケを狙っているんだろう。
「じゃあ次は私だねっ」
元気良く立ち上がったのは今朝のバスで、老婆を手助けしようとして至近距離であの圧をくらっていたあの女の子であった。さっきの自己紹介のときも詰まっている子にアドバイスをしたりと面倒見がいいんだろう。
「私は
平田に続きまたしても、模範解答のような自己紹介が行われた。こちらも拍手喝采(主に男子)である。きっとこいういやつが平田とともにクラスのリーダーとなっていくのだろう。というか人の自己紹介よりも、自分の自己紹介を考えなくては。どうする?ここはウケを狙うか?それとも真面目に……
「じゃあ次……」
「俺らはガキかよ。自己紹介なんて必要ねぇよ、やりたい奴だけでやれ」
赤髪のいかにも不良という生徒が平田を遮り、発言をする。
「僕に強制することはできない。でも、クラスで仲良くしていこうとすることは悪いことじゃないと思うんだ。不愉快にさせたのなら、謝りたい」
「自己紹介くらいいいじゃない」
「そうよそうよ」
平田はあくまで謝罪の意思を見せたが、一部の女子が赤髪に対して敵意を向けた。流石イケメン、既に彼を守るグループが出来ている。
「うっせぇ。こっちは別に仲良しごっこをするためにココに入っ……ッ!?」
赤髪の顔が青くなり、少し室温が下がったように感じる。理由は明白だ、今朝のバスのときと同じで、あの生徒だった。彼は赤髪を睨むように目を細めて見ていた。朝のバスのときと同じような圧とともに。
「な、何なんだよ!?」
「………」
「……チッ!!」
赤髪が怯えた様子で、そいつに聞いたが、何もせずにただ、赤髪を見つめていた。やがて赤髪は舌打ちをして逃げるように席を立って教室から出ていった。それから何人かが教室を出ていった。堀北もその内の一人である。
「……じゃあ、いろいろあったけれど残った人達で自己紹介を続けようか」
あんなアクシデントがあったが、平田は気持ちを切り替えて、自己紹介を続けようとする。しかし、その原因となる生徒は未だに座っているんだがな。
「俺は
あんなことがあった後で、よくもまぁふざけれたものである。あるいみこいつには才能があるのかもしれない。
「あの、自己紹介をお願いできるかな?」
「フッ。いいだろう」
次の生徒はバスでの金髪の生徒であった。こいつはさっきも、バスでも全然態度が変わっていなかった。
「私の名前は
高円寺の自己紹介はクラスの女子と、あの生徒に向けてのものだった。いい加減あの生徒とか例の生徒とかで疲れてきた、早く名前を知りたいものである。
「それから私が不愉快と感じる行為を行った者には、容赦なく制裁を加えていくことになるだろう。その点は十分配慮したまえ」
「ええっと高円寺くん。不愉快に感じる行為って?」
「言葉通りの意味だよ。しかし私が一つ例を出すなら、私は醜いものが嫌いだ。そのようなものを目にしたら、果たしてどうなってしまうやら……そういう点で言えば、あのレッドヘアーくんは危なかったね、彼がいなかったら私が何かしていたかもね」
どうやら高円寺はあの生徒について興味があるようだ。とうの本人は真顔で一切反応していないがな。
「あ、ありがとう。気をつけるようにするよ。じゃあ次をお願いできるかな」
そうして平田は次の人へと移る。次の生徒は今話題の彼であった。彼は首肯をして立ち上がる。
「……
クラス全員が思ったであろう。『気軽に話しかけれるか!?』と。醸し出される雰囲気はまさしく魔王である。
「なるほどね、落合……よろしく頼むよ落合ボーイ」
訂正、クラス全員ではなく、クラスのほとんどがである。
「えーっと、次の人……そこの君、お願いできるかな?」
「え?」
しまった色々な感想に浸っているうちに自分の番が来てしまった。どうしようなにも考えていない。
「えー……えっと
数秒の沈黙。……仕方ないだろ、あんな魔王みたいな奴の自己紹介の後なんて誰だって霞んでしまう。
「よろしくね綾小路くん。仲良くなりたいのは僕らも同じだ、一緒に頑張ろう」
パラパラと拍手が起こる。同情が少し痛い。こうなった原因の落合は……こちらもを向いて拍手をしてくれている。意外と優しいのかもしれない。
こうして波乱まみれの自己紹介が終わったのであった、もしかしたらこれが本当の
はい、原作主人公からみた、オリ主くんでした。後はほとんど原作と綾小路くんは変わりません。次回はこれをオリ主くん視点で投稿して、少し進めたいと考えています。それでは最後まで見ていただいてありがとうございました。