天嶺視点
学園生活も二日目となった。しかし、授業初日なこともあり、大体が授業方針の説明であった。特に何事もなく、昼休みとなった。クラス内では、各々がご飯を食べに行くために教室から出たり、友達同士で机を固めたりしていた。さて、俺も食いに行こう。昨日は色々あって誘えなかった隆二や、途中でどこか行ってしまった有栖など一応知り合いはいるし、別にDクラスに喋れる人がいないとかじゃないし、昔からの親友との交流を大切にしたいだけだし(泣)
さて、早速連絡してみるか……
ん?
ん?
……そういえば二人と連絡先を交換するの忘れてた。
仕方ない、取り敢えず一回食堂に行ってみるか。
食堂に着く。食堂には多くの生徒がおり、それぞれがグループで食事を取っていた。うちのクラスの平田も女子たちと一緒に食事を取っていた。いいなぁ~青春してるな~。一人で食事を取るのも忍びないし、席も空いていない。あきらめて帰ろうとすると、一人の生徒を見つける。
「……確か同じクラスの綾小路か」
「そうだ、そっちは落合だったか?」
うちのクラスの男子であり、俺がはっきりと自己紹介を覚えている数少ない生徒の一人である。どうやら彼も俺のことは覚えていてくれたようだ、嬉しい。
「あぁ落合で合ってる。食事に来たのか?」
「そのつもりだったが……どうやら空いてないな」
「あぁ、この様子だと今日は無理そうだな」
「……だな、オレはコンビニで何かを買ってくつもりだがお前はどうするんだ?」
「俺もそうしよう」
弁当などは勿論持ってきてないので何かしら買わなくてはならない。そうして俺は綾小路と一緒にコンビニへと向かう。そのとき軽い雑談をしながら歩いていく。
「それにしても一人でなのか、意外だな」
「そこまで意外か?」
「君は隣の席の女子と仲が良いイメージがあったからな、今回も一緒で来ていると思っていた」
「堀北が聞いたら怒りそうだな」
「そうか、彼女は堀北っていうのか」
「ん……そういえばアイツは自己紹介に参加してなかったからな」
(ん、なら何で櫛田は堀北のことを知っていたんだ?……いや、座席表を見ればわかることか)
俺達はコンビニに着いて、飯を買っていき教室へと戻る。教室には何人かの生徒がいて、友達同士で話しながら食べたり。一人で黙々と食べたりしていた。だとしたら乗るしかない、このビックウェーブに!!
「綾小路、もしよければ一緒にご飯を食べないか?」
「……オレとか?」
「君とだ」
ようやくできた、クラスメイトととの始めての交流だ。これを機に仲を深めてやる。
「……構わない、こちらとしても願ってもない話だ」
よし!!第一のアピール成功だ。教室に着き、綾小路は自分の席へと座り、俺はその前の席へと座る。そうして互いが買ったパンを貪る。
「………」
「………」
……話す話題が無い。
「貴方達、向かい合っているのなら、せめて会話くらいしたらどうなの?」
突如として、こちらから話しかけてかる女子の声。それは綾小路の隣の席の堀北からであった。ここは俺から話題を……
「本日はお日柄もよく……」
「祝辞でも始めるつもりなの?」
ダメだった。ならば次だ。
「残暑が続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか」
「時候の挨拶じゃないのそれ、しかも今の季節は春よ」
……意外だ、堀北は案外と俺のボケに突っ込みを入れてくれている。案外ユニークな子なのだろうか?
「意外だな堀北、オレ達の会話に参加してくるなんて、寂しかったのか?」
「そんな訳が無いでしょ、隣であまりにもひどい光景が広がっていたからつい口を挟んだだけよ。そもそも貴方は喋ってすらいないじゃない」
「ひどいって……確かに喋ってはいなが、頭の中では色々と考えていた」
「なら、口に出しなさい。二人揃って黙って見つめ合っていても迷惑だわ」
どうやら違ったようだ。それにしても堀北は随分と綾小路に対して辛辣だな。綾小路もなんやかんやで受け入れて、遠慮のない会話が成立している……なんか
「いいな」
「「は?」」
綾小路と堀北の二人から『何を言っているんだこいつ』という目で見られる。どうやら声に出てたようだな。
「いや、会って1日しか経っていないのにそうも言いあえる関係が出来ているのがすごくてな、仲が良いのが伝わっていいなと思えた」
俺は
「聞いたか堀北、オレ達はどうやら仲がいいらしい」
「私の人生においても最も屈辱的よ」
あれ?なんか思ってたのと違った?ただ単に堀北が綾小路をディスってるだけな気がしてきたぞ。
なんやかんやでその後も堀北が綾小路をディスって昼休みは終わった。
茶柱佐枝視点
今年のDクラスはハズレだな。私は生徒の名簿を見ながらそう考えていた。もちろん、まだ会ってそう時間も経っていないし、そう結論づけるのはいささか速すぎるとは思っていた。しかし、そう思わずにはいられない。随所、随所で優秀な生徒はいる。平田・櫛田・堀北・高円寺など、この学校の歴史においてもDクラスにこれ程までの優秀な生徒がいるのはいることはなかった。ただ、問題なのは周りだ。周りの生徒はDクラスもDクラス……歴代でも最も最悪と言っていいだろう。授業の説明の際に行ったが、ほとんど生徒が真面目に話を聞いておらず、周りと喋ったり、端末を弄っていたりしていた。どうやら、これは他の授業でもそうだったらしい。小声ではあるものの他の教師からも私と同じように今年のDクラスはハズレであるとの声が聞こえてくる。平田や櫛田も始めの方はちゃんと注意をしていたが、どうやら誰にも注意されなかったからと周りに流されてしまったらしい。『腐ったみかんの方程式』とはまさにこのことだな。堀北は真面目に聞いてはいたものの周りを見下し、特に何も言ってはいなかった。高円寺はそもそも興味があるのかすらわからない。
「………」
資料を捲っている中で、最後の二枚になる。この二人は期限ギリギリに理事長が独自にDクラスへと配属させた二人だ。
一人が綾小路清隆、全テストで50点ピッタリの点数をとったという異例の生徒。どうやら、父親の意見を無視してここに入学してきたらしい。理事長からそのような話を聞いている。もし、綾小路の実力が本物であるのなら、私のクラスをAクラスへと上げる鍵となる人物であるだろう。
もう一人が……
「失礼します、一年D組落合天嶺です。茶柱先生はいらっしゃいますか」
職員室の扉が開き一人の生徒が入ってくる。落合天嶺、こちらも理事長の判断でDクラス入りとなった生徒の一人であり、私が現状最も期待している生徒である。
「何の用だ落合?」
「茶柱先生に聞きたいことがあります」
「聞きたいことだと?」
落合はとても優秀な生徒であり、協調性の低さを除けば学年はおろか、学校内でも上位に立てる生徒だ。その低い協調性も周りが彼を避けているだけでそう判断されただけであり、彼を昔から知っているBクラスの神崎やAクラスの坂柳とは普通に会話をしていたり、坂柳にいたっては彼女の荷物運びを手伝っていたという事実さえある。このこと踏まえて落合はAクラスへと配属される予定であったが、理事長の判断によりDクラスへと配属が決まった。まぁ情報はここまでにしておいて教師としての役目は果たさないとな。それに落合がする質問に気にならないわけでもない。もしかしたらこの学校の核心をついてくるかもしれないからな
「答えられる範囲であれば答えてやる言ってみろ」
「では……この学校の学校長の銅像はどこにありますか?」
ほう、なるほど学校長の銅像か……
「………は?」
何を言っているんだこいつは?真嶋や知恵、坂上ですら訳のわからない顔をしている。落合はそんなことも気にせず、返答を今か、今かと待ちわびている。
「……落合、答える前に私から質問をいいか?」
「はい、構いません」
「なんだ、その銅像の在処を知ってどうする気だ?」
「購入を検討する予定です」
本当に何を言っているんだこいつは!?
落合の言葉を聞いてから知恵は吹き出して、机に突っ伏している。真嶋や坂上はこちらとは反対向きを見ている。しかしその肩が微かに揺れている。こいつら、笑いを堪えてやがる。正直私もあちらの立場であったら笑いを堪えるのに必死になっているのだが、生憎私は聞かれている側なので呑気に笑うことなどできはしない。
「……落合、そもそもこの学校には銅像は存在しない」
「やっぱり、そうでしたか」
やっぱりって……確認してたのなら聞くな!!これではただ笑い者にされただけじゃないか!!この様子をみて知恵は机を叩きながら笑いだす。本当にこいつは優秀な生徒なのか疑問に思えてきたぞ!!
「……あぁ、お腹痛いwwwそれで、落合くんは何でそんな突拍子もないこと聞いてきたの?」
ひとしきり、笑い終えた後知恵が質問する。
「念のための確認です、一つは本当にこの学校に銅像は無いのかと」
ん、今こいつは一つと言ったか?まるでもう一つあるかのように……
「もう一つは……本当にこの学校では
「「「「!?」」」」
私は落合の発言に思わず絶句してしまう。おそらく三人もそうであろう。さっきまでふざけた問答をしていたのによもや学校の核心をついた発言をしてきたのだから。
「……どうしてそう考えたんだ?」
この質問も、恐らく無駄なことではあるが形式上は聞いておかなければならない。私の質問に対して落合は、首を傾げながら言ってくる。
「考えるも何も言ってたじゃないですか、『学校内においてこのポイントで買えないものはない。学校の敷地内にあるものなら、何でも購入可能だ』って」
「!?」
私の発言だ。一言一句として違わなかった。
「あり……Aクラスの生徒からも似たような説明を受けたと聞いています。ならこれは全クラスで共通で受ける大事な説明であり、言葉のままの意味と捉えました」
Aクラスの生徒とは間違いなく坂柳有栖のことであろう。
「まぁ、これだけでは根拠が薄かったので、今日わざわざここに来て質問させていただきました。さっきの反応を見て、仮説が本当であったようなので満足です」
では失礼しましたと言い残して落合は職員室から去っていった。
「……あ~あ、どうやら私たち全員、彼の作戦にはまっちゃった訳かぁ」
「……その様だな」
知恵が溜め息をつきながら呟き、真嶋がそれを拾う。
「もしかして、銅像のくだりも私たちを油断させるための作戦だったのかな」
作戦……作戦だったのだろうか?本当に残念そうな顔をしていた気もしなくはないが……いや、おそらく作戦なんだろう、入学して二日目でこの学校を核心をついてくる発言をしてきた生徒だ。そもそも銅像があったとして何のために購入するのだろうか、常識的に考えてありえない。そうして私は落合の資料を取る。本当に優秀なのか疑問に思ったりもしたが、やはり落合は優秀な生徒であった。彼には役に立って貰うとしよう。
天嶺視点
職員室を後にした俺は体育館へと来ていた。ここでは今日放課後に部活動の説明会が行われることになっていたが、既に終わっており何人かの生徒が片付けのために残っているだけであった。元々部活動にはさほど興味はなかったので、別に構わない。
「こんなところでどうかしたのか?」
声がしたのでそちらの方向を見る。そこには眼鏡をかけた体格のいい男子生徒とその隣に小柄な女子生徒がいた。たしか……男子の方はこの学校の生徒会長だ。
「部活動の説明会なら既に終わっている」
「みたいですね……職員室に用事があったからそれを済ませてから来てみましたが、無駄足だったようです」
「職員室に用事か……聞いても構わないのなら用事とは何だったのか聞いてもいいか?」
「構いませんよ。聞きたかったことは銅像のこととプライベートポイントについてです」
「……銅像?」
俺の発言に女子生徒の方は首を傾げる。
「はい、この学園には銅像があるのか……そしてそれはいくらで買えるのかって質問を」
「!?」
「ほう…」
少女は驚いた顔して、生徒会長はこちら感心したように見てくる。
「銅像を買おうだなんて……ゆ、ユニークな子ですね」
「確かに発想は豊かであるな……しかし橘、この会話において注目するべき点はそこではない」
「え、なんですか注目するべき点って?」
「
「……あ!!」
「この学校のシステムを理解しているからこそ引っ掛かる罠だな。普通の学校であれば生徒が学校の備品、ましてや銅像などは絶対に購入などはできない。しかしこの学校は違う、本来ならありえないものも購入できる。そうだろう落合天嶺」
……別に罠を張ってなどはいなく純粋に質問をしただけなのだが、ん?それよりも
「俺の名前、知っているんですね」
「生徒会の権限だ。そういえば名を名乗っていなかったな三年A組の
「三年A組の
二人はそう名乗りをあげる。堀北……雰囲気と似てるし兄であろうか。まぁいいか今は、それよりここは俺も一応名乗っておくか
「では俺も、一年D組の落合天嶺です。ところで具体的には俺の何を知っていると?」
「試験の点数などだな……正直驚いた、4教科満点で国語も漢字のミスさえなければ満点だったそうであったからな」
「4教科満点!?」
……4教科満点だと!?しかも漢字のミスさえなければ全部満点だった。
「……参考程度に聞いていいですか、漢字のミスって何でしたか?」
「犬が大になっていた」
小学生か俺はァァ!?
「ひぃ!?」
「……落合、圧を抑えろ」
「……ん?はい」
堀北先輩が何かよくわからないことを言っている。何だ圧って?するといつの間にか堀北先輩の後ろにいた橘先輩がぴょこっと出てきて安心したようにため息をついた。あなたいつ移動してたんですか?
「そういえば……もう一つ質問をいいですか?」
「内容によるが、言ってみろ」
「この学校の
「!?なるほどな……それについては
「いえ、十分です。ただどうにかしてプライベートポイントを稼がないといけなくなっただけです」
何処かに賭け事をしている場所などはないだろうか?
「落合、お前の連絡先を貰えるか?」
「構いませんよ」
「なら、私も」
むしろ、バッチ来いである。今のところ俺の連絡先には綾小路の連絡先しかない。隆二と有栖とはまだ交換してない。そうして俺は堀北先輩と連絡先を交換する。その後に堀北先輩に触発された橘先輩とも連絡先を交換する。連絡先を交換したらもはや、友達といっても過言では無いだろうか!?……過言か。そんなことを考えていると急に10万プライベートポイントが振り込まれる。え、何?
「堀北先輩……このポイントは?」
「俺からの餞別だ。お前には期待しているという意味でのな。それでは俺達はもう行く」
そうして堀北先輩と橘先輩は体育館を去っていった。俺感謝すら言えなかったんですが?
あ、堀北先輩にうちのクラス堀北との関係を聞くの忘れてた。
「……まぁいいか」
そうして俺も体育館から出ていった。
堀北学視点
「珍しいですね会長」
生徒会室へと戻っている際に橘が不意に声をかけてくる。
「珍しい?何のことだ」
「落合くんのことですよ。新入生に注目するのはわかりますが……10万プライベートポイントも渡すなんて」
橘の言うことも最もであろう。俺も本来ならポイントは渡す気はなかった。しかし、アイツを一目見た際に気が変わった。
「橘、落合を見た際に何を思った」
「落合くんを見た際に?ん~怖い子だなと思いました。キレイな顔なのに表情とか全く変わりませんし、でも話とかを聞いてると賢い子だなと思いましたよ」
怖いか……落合は整った容姿をしている。その分表情が全然変わらないと人に恐怖を与えているのだろう。
「俺は
「どういうことですか?」
「俺はこの学校で様々な人を見てきた。しかしそのどれにも落合は該当しなかった」
ただ頭の良い人間というだけではない。話している最中に発していた圧も俺がそう考えた一因と言えるであろう。あの圧には正直驚いた。
「だからこそ期待している。あいつが南雲を、いずれは学校を変えるそんな人間になることを」
俺の懸念事項の一つは南雲である。今の二年生はあまりにも退学者の数が多い。まるで意図的にそうさせられたかのように。俺は
もう一つ落合には期待している。妹の鈴音の成長へのきっかけだ。今日の説明会の際に俺は鈴音を見かけて失望した。鈴音は未だに俺をなぞっている。それでは何も意味が無いのだ。アイツが自分自身の意思で成長しなくてはなにも意味が無い。そういう意味で落合は鈴音にとって良い刺激となるだろう。落合は学年において最も総合力が高い生徒であり、他とは一線を画している。鈴音は負けず嫌いでもある、同じクラスの落合に負けることを良しとはしない。……もしもの話である。もし、鈴音が俺をなぞるのをやめて、落合に勝とうとするのであれば、きっとアイツは俺を超えて、誰もが無視できないそんな存在になるであろう。俺はそう確信している。
今回はここまでです。ほぼタイトル関係なくねという発言は置いといて、Dクラスと関わりましたね(綾小路と堀北のみ)。というか他の人の視点だとボケをしにくいです。堀北先輩とか全くボケれなかった。ボケるキャラじゃないけど。後書きは以上です、では最後まで観覧していただきありがとうございました。