インフィニット・ストラトス ~その拳で護る者~    作:不知火 丙

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第十話

― ヴィータ ―

 

 あたしは燃える町の中に立っていた。

 ビルが崩れて瓦礫となって、車はひしゃげて燃え上がって、水道管が破裂したのか地面からは水が噴出していた。

 あたしはその中を飛んで、ある場所に向かっていた。ミッドチルダの中心にある公園だ。

 

(急がなきゃ)

 

 何故急がないといけないのか? そう思いながら全力で目的地に向かう。

 程なくして公園に着くと既に戦闘が始まっていた。管理局員と全身真っ黒の装備をつけた連中が戦っている。

 それはある点を中心に円形になっている。円の中心を守るように戦う黒い装備の連中と、中心を目指して突破しようとする管理局員達。

 

(そうだ、フィンリルを止めないと!)

 

 フィンリル……ロストロギアを使用した次元効果爆弾だ。ひとたび起動すれば止める術は無く、封印魔法でも止めることはできない。

 今、黒い装備の連中がそれを起動しようとしている。もしそんな事になれば、ミッドチルダは壊滅。最悪星そのものが

 破壊される。それだけは絶対に避けなきゃいけない。

 あたしは中心に向かって突っ込んでいく。黒い装備の連中は強くは無い。が、どれだけ倒しても何処からとも無く湧き出てくる。いくら前に進んでもフィンリルに近づくことすらできない。

 

(急がないと!!)

 

 相棒のアイゼンで黒い装備の連中をどんどん薙ぎ倒していく。が、やはり一向に距離が縮まらない。

 

(何でだ! 何で近づけないんだ!!)

 

 何度も何度も倒しても出てくる黒い装備の連中、全力でフィンリルに向かっているのに全く近づくことができない。

 

(急がないと! 急がないとまた! また一樹が!!)

 

 そう思いながらアイゼンを力の限り振り続ける。

 しかしそんな状態がいつまでも続けることができるはずが無く、魔力が尽き、体力が尽き、ついに膝を付いてしまう。

 まだフィンリルに到達していない、しかし身体は限界を超えていて手足を動かすことはおろか、指一本動かせない。すると目の前でまたフィンリルが起動してしまった。

 

(あ……ああああぁぁぁぁぁぁ!!!)

 

 それを見たあたしは力の限り叫ぶ。

 まただ! また止められなかった!! 自然と目から涙が溢れ、力の限り拳を握る。皮膚を突き破って拳から血が流れ地面に落ちる。

 一方フィンリルはゆっくりと上昇していって、百メートルほど上空に到達すると上昇をやめその場で光りだす。爆発前の前兆だ。その場にいた管理局員は全員が膝をつき、諦めたように空を見る。

 フィンリルはどんどん光を強くして、世界を白一色に染めるように強くひかり、誰もが爆発すると思った瞬間、一つの影がフィンリルに向かって飛んでいく。

 その影はフィンリルを片手で掴むと封印魔法をかけ時間を稼ぎ、もう一方の手で青い宝石に魔力を送る。

 すると青い宝石が光だし、地面に亀裂を作り、その亀裂から虚数空間が現れる。その影はフィンリルと青い宝石を持って虚数空間に向かっていく。

 

(やめろ……いくな! イクナ!! 行くな!!! 逝くな!!!!)

 

 そしてその影は虚数空間に落ちて逝く。

 しばらくすると虚数空間は閉じ、あたりには静寂が戻っていた。

 呆然とするあたしと局員達に黒い装備の連中。そんな中あたしは静寂を吹き飛ばすように力の限り叫んだ。

 

「一樹イイイイィィィィィィーーーーーーー!!!!!」

 

ガバッ!

 

 と、勢いよく起き上がる。あたしは周りを見渡す。

 そこはさっきまでいた公園ではなく、すずかに案内された客室のベッドの上だった。

 

「はあ、はあ、はあ、……夢?」

 

 息を整えて呟く。全身に汗をかいてベトベトだ。額にはまだ汗が浮かんでいる。

 すずかから借りたパジャマも汗を吸っていて気持ちが悪い。ふう、とため息をつく。もう何度目になるだろうか?

 あの日、一樹が大規模テロからミッドを救ってから毎日のように見て、毎日のように魘(うな)された。それは一樹を助けられなかった罪悪感からか、あの日フィンリルを前に諦めた自分の無力感からなのか、あたしはその日を境に死に物狂いで訓練をした。

 あたし達ヴォルケンリッターは、既にその成長が止まっていた。にも関わらず、あたしは我武者羅に訓練した。

 それこそ自分を痛めつけるように。シャマルに止められてもお構い無しに。そうしないと心が潰れてしまいそうだったから。

 はやてが言っても聞かなかった。思えばはやてに面と向かって逆らったのはこれが最初かもしれない。

 そんな無茶をしていると亜夜がやってきて問答無用で叩きのめされた。あたしを叩きのめした亜夜はこう言った。

 

「ウジウジするな!! そんな事したってお兄ちゃんは帰ってこないし、喜びだってしない!!」

 

 あたしはその場で泣き崩れてしまった。亜夜にしがみ付き、亜夜に謝り続け、みっともなく泣き続けた。そんなあたしを亜夜は優しく抱きしめてくれた。

 

「居なくなって初めて分かるもんだね。居なくなった人の大切さが」

 

 亜夜もそう呟いて泣き始めて、二人で涙が枯れるまで泣いた。

 その後、今回のテロ事件の合同葬儀が行われた。一樹の葬儀はミッドを救った英雄として大々的に行われた。参列した人は数多くいた。

 あのテロ事件で助けられた者、それ以前の事件や、事故で助けられた者、先輩、後輩、同僚、部下、上司、様々な人が参列し涙した。こんなにも慕われていたのかと私達は驚いた。

 そしてあたしはそのとき誓った。一樹が生きていたら助けた命を私が代わりに助けると。その日を境に次第にその夢を見る回数は減っていき、ここ数十年全く見なくなっていた。

 言い方は変かも知れないが油断していた。この夢はあたしにとってのトラウマだ。そう何回も見たいもんじゃない。そう思っていると部屋のドアがノックされ、すずかとザフィーラが顔を出す。

 

「ヴィータちゃん、どうしたの? 叫びが聞こえたけど?」

 

「ん、ああ、ちょっと昔の夢をな……」

 

「……一樹さんの夢まだ見てるの?」

 

「ん? いや、ここ数十年全く見てなかったから久しぶりに見てこのざまだよ」

 

 そう言ってあたしはパジャマをつまんですずかに見せる。パジャマが張り付いて気持ち悪い。

 

「うわ、酷い汗だね。シャワー浴びてきたほうが良いよ」

 

「ああ、そうする」

 

「着替え用意してくるね」

 

「すまねー」

 

「気にしないで……これは早く会いに行かせた方がいいかも(ボソ」

 

 そう言ってすずかは部屋から出て行った。後半は声が小さく何を言っているのか聞こえなかったけど。

 

「全く、吹っ切れたと思ってたんだけどな」

 

「……ヴィータ大丈夫か?」

 

 あたしを心配してザフィーラが聞いてきた。

 

「ん、ああ久しぶりに見ちまったからな……。ま、大丈夫だ」

 

 そう言ってベットから出て風呂に向かう。が、ザフィーラはあたしに違和感を感じた様で、

 

「あの時、一樹を助けられなかったのはヴィータの所為ではない」

 

 と、言って来た。

 

「……でも」

 

「でもではない。あの時、特務六課にいた全員に力が無かったから、一樹を死なせてしまったのだ。お前一人の所為ではない。あの時、主はやてと戦っている時、俺も主はやてもミッドに一樹が向かったと聞いてほっとしていたよ。もうミッドは大丈夫だとな。一樹なら大丈夫と……。そしてその結果が一樹の死だ」

 

「……」

 

「あの時、何故俺は死に物狂いで目の前の敵を倒さなかったのか……、そうすればミッドに援軍として駆けつけて、一樹を死なせずに済んだのではないかと、考えなかった日は無かった」

 

「ザフィーラ……」

 

 初めて聞く内容だった。確かにあの時あたしは自分の事で精一杯だったからな。

 

「主はやても泣いていた。どうして私はあの時大丈夫だと決め付けてしまったのか、とな」

 

「……そっか」

 

「他の連中も少なからずそういう思いをしている。そしてそれを乗り越えてきている。ヴィータが乗り越えてないとは言わないが、お前もその日を境に新たに決意をしたのだろう? なら胸を張らなければ一樹に笑われて、からかい倒されるぞ?」

 

「うっ…………ふう、分かった。ちょっと感傷的になっちまってたみたいだ。あんがとなザフィーラ。もう大丈夫だ」

 

「そうか、なら良い。……明日はアリサ嬢の墓参りでもしよう。幸い次元震の原因は既に分かっているんだ。調査期間内であれば多少休息をとっても問題ないだろう」

 

「そうだな、葬式は参加できなかったけど墓参りぐらいしなきゃだな」

 

「決まりだな。皆には悪いが明日一日ゆっくりさせてもらうとしよう。主アーチェには私から言っておこう」

 

「すまねー、じゃああたしはすずかから墓の場所聞いとく」

 

「分かった。では明日」

 

「ああ」

 

 ザフィーラはそう言って部屋から出て行った。

 部屋のドアが閉まったのを確認してから、あたしはシャワーを浴びに行った。

 

― 一樹・S・バニングス ―

 

 クラス対抗戦を三日後に控えた日、すずかから連絡が入った。

 

『クラス対抗戦を、バニングス社から見に行く人がいるので、マリアちゃんと一緒に挨拶しておいてくださいね』

 

「ふ~ん、どんな奴が来るんだ?」

 

『美人な女性ですよ』

 

「まあ、そこで美人な男性だったら全力で断らせてもらうが」

 

『……その発想はありませんでした。それは兎も角、私の代わりに見に行ってもらう人なので、変な事しないで下さいね? 絶対ですよ?』

 

「それはフリか?」

 

『違います!!』

 

「ん、まあ了解した。挨拶くらいしておくよ」

 

『お願いしますね』

 

「おう、じゃあな」

 

『はい』

 

ピッ!

 

 そう言って俺は電話を切る。そして振り返って地面に倒れている一夏に近づいていく。

 

「おい、一夏もうへばったのか?」

 

「はあ……はあ……はあ……ま、まだまだいけます」

 

「そうか、じゃあさっさと立て。そんなざまじゃ三日後の結果は見え見えだぞ?」

 

「ぐううぅぅぅ……」

 

 うめき声を上げながら立ち上がる一夏。一夏は白式を装着し、雪片弐型を構える。

 対して俺は打鉄を装着して右腕を突き出しているだけだ。俺は一夏が構えたのを確認して、拳を作り、親指を人差し指に引っ掛けて、親指を思いっきりはじく。

 

ビシッ!

 

 と音がして空気の塊が一夏に向かっていく。

 

「ぐっ!」

 

 辛うじて避ける一夏。が、そんな一夏に対して俺は、

 

「おら! 一発避けただけで安心すんな!」

 

ビビビビビビビビビビビシッ!

 

 同じ攻撃を連続して繰り出す。

 

指弾

 

 親指をはじくことで空気の塊を相手にぶつける技だ。TO☆GU☆RO☆な弟の技だ。技の前に力と入るが……。

 氣を込めて威力、速度を高めることは出来るが、今はそれをしていない。単純に危険だからだ。

 そんなことしなくてもそこそこ威力はあるので今はこれで十分だ。

 

「くっそぉぉぉぉ!!!」

 

 一夏が雪片弐型で指弾をはじき、避けていく。初日に比べれば随分と被弾が少なくなった。

 

「だいぶ避けられるようになったじゃないか」

 

「そりゃあここ最近毎日やってますからね!……うお!」

 

「そうか、じゃあもう少し増やしてみるか」

 

「え゛?」

 

 俺はそう言って左手も同じように構え、両手で親指を弾き、指弾を量産する。

 

「ぎゃあぁぁぁぁ!!!」

 

ズドドドドドドドーーーーン…………。

 

 流石に避けきれず全弾被弾する一夏だった。

 

「「…………」」

 

 そしてそれを見て沈黙する二人。モッピーにオルコットの二人だ。

というかこんな状況を見れば誰だってそうなるだろう。

 素手対刀、これだけを見れば近接戦になることは容易に予想できるだろう。が、現実は素手の方が親指を弾くという動作のみで中距離戦を仕掛けてくるという出鱈目さだ。

 ISの関係者が見たら現実逃避をしてもおかしくない光景だ。

 

「一夏、凰のISはこれと同じような攻撃をしてくる。これを避けつつ間合いを詰めて攻撃しねーと勝てないぞ?」

 

 俺は倒れたまま動かない一夏に声をかける。

 指弾自体は氣と魔力さえ込めなければ、さほど強力な攻撃ではないが、シールドエネルギーを削るくらいは造作もない。

 

「イチチチチ、でも一樹さん。正直溜め無し、弾切れ無しって酷すぎませんか?」

 

「これくらいでそんな事言ってたら上にはいけないぞ? この位目を瞑っても避けられるくらいにならないと」

 

「「「いや、それはいくらなんでも……」」」

 

「いや、いや、殺気も何もこもってない攻撃なんてどうって事無いぞ?」

 

 実際に士郎さんや恭也さんの本気攻撃に比べたら……。

 

「殺気って言われても……」

 

「分からなくも無いですが……」

 

「そんな事ができるのですか?」

 

 三人の意見ももっともである。

 

「まあ、そうだよな。じゃあ受けてみるか?」

 

「「「へ?」」」

 

 三人がキョトンとする。

 

「だから殺気を受けてみるかって話だ。その代わり千冬さんが来たら説明宜しく」

 

「いやいやいくらなんでも来ないでしょ?」

 

「やればわかるって……。二人もついでに受けてみるか?」

 

「「分かりましたわ(はい)」」

 

 二人は頷いて一夏をはさむように並ぶ。

 ……両手に花とか……べ、別に羨ましく何か無いんだからね!

 と、そんなことを思いつつ指弾を打つ構えをとって注意事項を告げる。

 

「いいか、五秒間だ。だけど絶対に無理するなよ?無理だと思ったら直ぐに離れろよ?」

 

「「「はい」」」

 

 そう言って俺は目を閉じて、一度深呼吸をする。そして、ゆっくりと目を開けて三人を見る。

 

「「「ッ!!!」」」

 

 たったそれだけの動作で三人は動けなくなる。

 さっきまで普通に呼吸していたのに長距離を走ったように肩で息をして、冷や汗をかき始める。

 そして俺は徐々に殺気を強めていく。すると三人はそれぞれ反応する。

 セシリアは膝を突きながらもライフルを構え、モッピーは打鉄の刀を、一夏は雪片弐型を構える。

 

(お?)

 

 三人が戦意を喪失せず、構えをとってきた事に感心する。

 

(やるじゃねーか)

 

 三人を少し見直しつつ、更に殺気を強めていく。

 

「「っぐ!」」

 

 するとモッピーと一夏も膝を突いてしまう。

 

「くっくっく、もう終わりか? 所詮その程度か……」

 

 何となく悪役っぽく言ってみる。が、

 

「そこまでだ一樹」

 

 ジャキッ! と音がして、後ろから首筋に刀が突きつけられた。いつの間にか千冬さんが背後にいた。

 

「イエス! マム! すんません! 一夏が思った以上に頑張るので、調子に乗ってしまいました!」

 

 すぐさま殺気を放つのを止め、ジャンピング(二回宙返り一回半捻り)土下座を千冬さんにする。

 

「「「ぶはぁ!!」」」

 

 すると三人は同時に息を吐き出して、肩で息をし始める。

 

「何故こんなことをした?」

 

 ちょっとキレ気味に千冬さんが聞いてくる。こ、怖ぇ……。

 助けるようにチラっと一夏を見るが、一夏はまだ息が整っておらず、そこから動けない。

 あれ? 俺が訓練だって言っても信じてもらえないんじゃね? 詰んだんじゃね? これ?

 

「答えられないのか?」

 

「あ~、なんと言いま「ち、千冬姉! 違うんだ。訓練なんだ」……説明しろ」

 

 一夏が輝いて見えた瞬間だった。一夏が千冬さんに説明をする。

 

「馬鹿者、三人には早すぎる」

 

 そう言って三人を軽く小突く。俺と違い寛大な処置だ。

 因みに全員正座をしていて、俺の頭にはやたらと大きなタンコブができていた。

 千冬さんから説教を受け、痺れた足を庇いつつ立ち上がり三人に軽く説明する。

 

「まあ、アレが殺気だ。力の差が大きければ今以上の効果がある」

 

 それだけで意識を飛ばすことも出来る。まあ、慣れてる人間には効果が薄れるけどな。

 

「い、今以上ですか……」

 

「ああ、でもまあ正直な所、こんなもん覚えて欲しくないけどな」

 

「な、何故ですの? 覚えることが出来れば優位に立てますのに」

 

 セシリアが聞いてくる。

 

「そりゃあだって、殺気だぞ? 相手を「殺す」んだぞ? 出来んのか?」

 

「「「…………」」」

 

 その問いに答えられない三人。

 当然だ、いきなりそんな事聞かれて答えられる筈がない。

 殺せるなんて答えたら強制的に修正するが。

 

「ま、殺気についてはこんなとこだ。こんな状態で攻撃を避けることがいかに難しいか分かったろ?」

 

「「「はい」」」

 

「じゃあ、今日はこの位にするか。疲れたろ? 簡単な甘いもん作ってあるからシャワーでも軽く浴びて来い。モッピーと一夏は緑茶、オルコットは紅茶でいいか?」

 

「「「はい!!」」」

 

 三人は元気よく返事をしてドドドドと着替えに向かう。

 因みにセシリアはあの後ケーキに謝るついでに俺にも謝り和解し、ケーキで餌付けは完了してある。

 そんな三人を見ていると、残った千冬さんが声をかけてきた。

 

「一樹は……いや、なんでもない」

 

 千冬さんは途中で質問をやめる。そんな千冬さんに俺は、

 

「ありますよ。人を護るため、仲間を護るためにね」

 

 そう答える。

 

「そうか……後悔はしているのか?」

 

「い~やこれっぽっちも。人を殺そうとしている奴に慈悲をかけるほど俺は優しくないですよ」

 

「ふっ……強いなお前は」

 

「まあ、あんまり弱音を吐いてると、心配してくる奴らが周りに多すぎたんでね、うっかり強がっちまうんですよ」

 

 少しでも暗い顔をしようものならこぞって心配して来るんだもんなぁ。

 そう思っていると千冬さんは

 

「私は心配等しない。が、愚痴くらいなら聞いてやる」

 

 そんなことを言ってきた。

 

「へ?」

 

 そういわれるとは思わなかったので純粋に驚いてしまった。

 

「む、何だその反応は?」

 

「あ~、いや、てっきり強制的に立ち直らされるかと思ったので……でもありがとう」

 

「気にするな」

 

 そう言って俺と千冬さんはアリーナを後にした。

 そしてあっという間に三日が過ぎ、クラス対抗戦の日になった。

 

― ヴィータ ―

 

 ここがそうか……。

 あたしは今、IS学園の正門にいる。ザフィーラも一緒だ。

 すずかから場所を聞き、公共機関を使いここまで来た。

 すずかから車を借りて移動しようとしたが、こっちの免許が無いという事なのであっさり却下された。ちぇー。

 こっちの車は好きなんだけどな。どっかの豆腐店みたいに攻めてみたかったのに。

 この身体になってからできることも増えたから、色々としている。運転もその一つだ。

 

「どうしたヴィータ?」

 

「ん?ちょっと車を運転できなかったのが残念でな」

 

「……そうか」

 

 ザフィーラが苦笑しつつそう言う。

 

「ま、ISってのがどんなもんか見せてもらおうじゃねーか」

 

 わくわくしながら正門で手続きをして、簡単な説明を受け学園内に入って行く。

 すずかから簡単な説明を受けているが、実際には見れなかったのでこの対抗戦が楽しみだった。

 

「それはいいが、本来の目的を忘れるな」

 

「わぁーってるって、「ベクターキャノン」を使った本人からデータを受け取るだけだろ? ガキにだって出来るぜ?」

 

「それについては同意するが、油断はするな。万が一という事もあるだろう」

 

「おい、ザフィーラ。フラグ立てんじゃ「ドガァァーーン!!」……ほら見ろ!」

 

 そう言ってあたしは爆発のあったほうを指差す。そこはさっき説明そこに行くように説明されたアリーナだった。

 

「……俺の所為ではない。それに俺達が出来ることはない」

 

「まあ、そうだけどよ」

 

 地球は未だ管理外世界、魔法を堂々と使う訳にはいかない。

 

「とりあえず、行くだけ行ってみ……なっ! 魔力反応だと!? ヴィータ!!」

 

「分かってるっての!!」

 

 あたしは既に駆け出している。

 

「俺は結界を張る! 先に行け!!」

 

「分かった!アイゼン!」

 

《了解!》

 

 アイゼンが答えると同時に、ザフィーラの結界が発動して、それを確認してあたしはバリアジャケット姿になる。

 ゴスロリ風なロングスカートだが、正面の部分が開いていて、シグナムと同じような感じになっている。

 上はぴっちりとしたインナーの上に、ハイネックのベストを着て、その上に一樹の着ていたミリタリージャケットを着る。

 首には十字架の入ったプロテクター、頭にはベレー帽に似た帽子をかぶっている。その帽子にははやてが作ってくれた兎の人形が今でも付いている。

 手には、いつものようにアイゼンを握る。バリアジャケットに身を包んだあたしはすぐさま飛行を開始、アリーナ上空に到達する。

 そしてあたしが見たものは、真っ黒い何かと対峙する白い服を着た男だ。

 真っ黒い奴は結構強めの魔力を放っている。魔力を持っていない奴が対応できる相手ではない。

 白服の男の後ろには二人、白いアーマーを装備している男と、紫色のマーマーに両肩にソルディオスみたいなもんをつけた女がいる。

 どうやら真っ黒の奴と対峙している白服の男は、後ろの二人を庇っているようだった。

 あたしは真っ黒いのと、白服の男の間に入るとり、

 

「援護する」

 

 と、後ろの白服男に簡潔に告げる。すると、

 

「おりょ? ヴィータか?」

 

 懐かしい声で、ありえない答えが返ってきた。

 慌てて振り返ると、

 

「よ!」

 

 と、片手を上げて一樹が挨拶してきた。

 

「か、一……樹?」

 

「おう、久しぶりだな」

 

「そ、そんな……だって、あたしの目の前で……虚数空間に落ちて、し、死んだはずじゃ……」

 

 あたしは目の前の一樹を信じられず、混乱するが、

 

「残念だったな……トリックだよ」

 

その言葉を聞いて本物だと確信するのだった。

 

 

 

 

 

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