インフィニット・ストラトス ~その拳で護る者~ 作:不知火 丙
― 一樹・S・バニングス ―
ヴィータの一撃により戦闘が終了し、そこには所属不明ISの残骸と、アイゼンを振りぬいた状態で止まっているヴィータの姿があった。
そんなヴィータに声をかける。
「お疲れさん」
「……一樹」
ヴィータは振り返って俺の名前を呟く。
アイゼンを待機状態にして、早足から駆け足になり俺に向かってきた。
「一樹!」
ヴィータはそう言って両手を広げて抱きつこうと跳んできたので、こうマト○ックスの主人公のように思いっきり身体を反らして避けてみた。
きっと360度全方向から、スローで避けてるシーンが再現されていることだろう。
チラッと一夏達を見てみると「エーーーッ!?」って感じにの顔になっていた。
ヴィータは避けられると思ってなかったのか、そのままヘッドスライディング宜しくズザーっと地面を滑り、止まる。
辺りが静寂に包まれ、気まずい空気が流れる。
「か、一樹さん! そこ避けちゃ不味いんじゃ……」
「感動の再会じゃなかったの?!」
「ひ、酷いですわね……」
「いや、なんて言うかつい?」
「「「ついって……」」」
三人があっけにとられているとヴィータが起き上がる。
パンパン、とバリアジャケットに付いた砂を払うと、俯きながら近づいてくる。
ヴィータから出るなんともいえないオーラにビビリつつも声をかけてみる。
「よ、よう……」
そう声をかけるが返事は無し。
その代わり今度こそガッチリ抱きつかれた。
ほんのり香る甘い匂いに、柔らかい感触、暖かい体温。それを感じる……
「言い訳があるなら聞いてやる(怒)」
暇も無く、かなりドスの聞いた声でそう言われ冷や汗がだらだらと流れる。
しかも次第に抱きしめる力が強くなっていき、肋骨が悲鳴を上げている。
ギシギシギシッ!!
「ごめん! ゴメン! 御免! つい! つい出来心で!」
「つい出来心で避けるんじゃねーよ!!」
そう言って更に抱きしめる力を強めるヴィータ。
メリメリメリッ!
「イダダダダ!! それ以上は駄目! 逝く! 俺の肋骨が逝っちゃうから!!」
畜生! 柔らかいやら痛いやらで天国と地獄を味わってるようだ!
「逝っちまえ!」
バキンッ!
「アッーーーーー!!!」
骨の逝った音と俺の悲鳴がアリーナに響き渡る。
どうやら左右の肋骨を一本ずつもっていかれたようだ。
その場に蹲る。呼吸をするたびズキズキと痛みが走る。
「おら、起きろ」
そう言ってゲシゲシ蹴ってくるヴィータ。
「骨折させられて倒れてる所を足蹴にするとかドSすぐる」
「人間には215本の骨があるんだよ。たった二本くらい何だよ」
「サラ・コナー乙、つうか今なら骨を折られた人の気持ちが分かる気がする」
痛む脇腹を押えながら立ち上がる。
多少痛むが動けないほどではない。
「で? 何で管理局がこんなタイミングよく出てくるんだ?」
いつも事件が起きてから駆けつけるのに珍しい。
「偶然だよ。ちょっと前に地球で次元震を観測したからそれを調べに来たんだよ。まあ、そっちの犯人は私の目の前に居るけどな」
ヴィータにそういわれて思い当たるものがある。
「もしかしてベクターキャノン?」
「もしかしなくてもベクターキャノンだ! ジュエルシードのエネルギーを弾代わりにすれば次元震が起きる事くらいわかるだろうが!」
「マジでか? あれでも威力はセーブしたんだぞ?」
セーブして撃たなきゃセシリアは今頃あぼんである。
「あ、あれでまだ全力ではないのですか……」
会話を聞いていたセシリアが顔を青くする。
まあ、あのごんぶとビームに飲まれたらそうなるだろうな。
きっと、なのちゃんのSLBとはまた別の絶望感を味わったに違いない。
「何であれ色々聞かせてもらうぞ? 大事にはならなかったとはいえ次元震が起きちまってんだからな」
「まあ、仕方ないか……」
個人で次元震を起こしてしまったのだその辺りは協力しよう。
「で、他の連中はどうすんだ?」
俺の後ろで困惑している一夏、鈴、セシリアの三人。事情もさっぱり飲み込めていないようだ。
「あ~、今回の件も聞いておきたいから一緒に来てもらおう」
「そっか、じゃあ一旦結界を解除してもらって良いか? とりあえず千冬さんに話して「ドガァーーーン!!」何だ?!」
爆音がアリーナに響きわたり三つの影が入ってきて、一夏達が構え警戒する。
三つの内の一つはヴィータの近くに、二つは一夏達の近くに降り立った。
「やれやれ、敵では無いと言っているのに」
そう言ってヴィータの近くに降り立った男はそう呟く。っていうかザッフィーだった。
「ふん、IS学園に侵入しこのタイミングでこの異様な空間にいる貴様の言葉を信じられると思うか?」
「そうです。ISの異常、他の生徒の消失した空間、素手で私達の相手をする異常性、そんな存在は一樹大御爺様だけで十分です!」
「一夏! 無事か!」
他の二つは千冬さんとマリアで、モッピーはマリアに抱えられてた。マリアはイザナギを展開し、千冬さんは打鉄の標準装備の刀だけを部分展開して、モッピーは一夏の元に駆けつける。つうか何気に酷い事言ってねーかマリアの奴。
「待て、今何と言った?」
ザッフィーがマリアの言った事に反応する。
「? 素手で私達の相手をする異常性ですか?」
「その後だ」
「そんな存在は一樹大御爺様だけで十分です。 ですか?」
「そいつは、「斎藤一樹」という人物か?」
「……旧姓はそうだと聞いています」
「一樹は生きているのか?」
「生きているも何もそこにいますが?」
そう言ってマリアが俺を指差す。その方向をザッフィーが追っていくと俺と目が合った。
「よ、ザッフィー。久しぶり」
シュタ! という感じに手を挙げ挨拶をする。
するとザッフィーは目をごしごしとこすって一言呟く。
「……一樹?」
ザッフィーは呆然としてその場に立ち尽くす。
俺の横ではヴィータが笑いをこらえている。
「おう、元気にしてたか?」
「……生きていたのだな」
「勝手に殺すな。 俺が死んだと決め付けたオメーが悪いんだよ」
ニヤリと笑いながら言う。
「虚数空間に落ちて無事だったと言う例はなかったのでな」
「確かに無傷とはいかなかったけどな」
千冬さんに聞いた話じゃそこそこ危ない状況だったらしいからな。何かしらの影響は受けていたんだろう。
「主はやてにもお前の無事を知らせたかった」
目じりに涙を浮かべそう呟く。
「すまなかった。帰ってくるのが遅れちまって」
「いや、今はまた会えたことを祝おう」
ザッフィーが近づいて手を出してきた。俺はその手をとる。
握手する感じではなく、腕相撲をするような形になった。
そう言って感動の再会を果たしていると、
「……何かあたしん時と反応が随分ちがくねーか?」
ヴィータがジト目で見てきた。
「え? そうか? 一緒だろ?」
「全然ちげーよ!!」
そう言って頬を膨らますヴィータ。
そんな様子をぽかんと見ている千冬さんとマリア。
「一樹、そのコスプレ男はお前の知り合いか?」
ザッフィーのバリアジャケット姿を見た千冬さんが言い放った。
「コスプレ?!」
「ぼふっ!!」
ザッフィーが反応し、ヴィータが噴出す。
まあ、事情を知らない人から見たらそんな感じになっちまうんだろうなぁ。
「そうそう、「魔法少女リリカルなのは」のファンでな、年二回ある祭典にもよく一緒に行ったん「ちがうだろう!」あべし!」
ザッフィーに突っ込まれる。
でも年二回ある祭典に行った事があるのは事実だったりする。
「リリカルなのはって……言いえて妙だけど、あいつが聞いたら怒るぞ?」
「全く変わってないな、お前は」
「まあ、お前らからすれば百年は経ってるだろうけど、俺からしたら一年しか経ってねーからな」
「そうか……」
そういいつつ俺は二人のことをみんなに紹介する。
「みんな紹介するよ。俺の戦友で犬耳のほうがザフィーラ、赤いのがヴィータだ。マリアには少し話した事があったっけかな?」
それを聞いてピンときたのかマリアが聞いてくる。
「一樹大御爺様、ひょっとしてその方達はヴォルケンリッターの方々ですか?」
「ああ、その通りだ。ザフィーラ、ヴィータ紹介するよ。俺の玄孫のマリアだ」
そう言うとマリアはペコリと頭を下げる。
「それと、俺を助けてくれた織斑千冬さんで、その弟の一夏、さらに一夏の同級生の篠ノ之箒、凰鈴音、セシリア・オルコットだ」
ヴィータとザッフィーに紹介していく。
が、それを聞いていた一夏が待ったをかける。
「ちょ、ちょっと待ってください一樹さん! 戦友ってどういう事ですか!? それをそのまま受け取ると百年前の知り合いって事ですよね?!」
「「「あっ!」」」
そう言われて気がつく一夏ラヴァーズ。
年齢的にもおかしいが、他にザッフィーの犬耳とか、尻尾とかは突っ込まないんだな。
あ、コスプレ判定くらってんのか。
「ん、それは後で話すとして、ヴィータこの後どうすんだ? とりあえず当事者はこれで全員だと思うが」
「それじゃあ月村邸にでも行くか? 今すずかんとこに世話になってるし」
ヴィータが提案してくる。
「ん~、あそこはちょっとな~。色々と制約もあるし。俺の部屋で良いか?」
多分学園内だと一番クリーンだと思うんだよな。盗聴とかされないって意味で。
「仕方ない。それでいいだろう。私はあのISを片付けてくる」
そう言ってISを指差す。
「そしたら俺達も行くよ。ちょっと気になる事もあるし。あ、ザッフィー結界解除していいぞ」
「わかった」
そう言ってザッフィーが結界を解く。すると普段の風景にゆっくり戻って行った。
セシリアの攻撃を受けた後、再起動したISは間違いなく魔力を放っていたしな。
「では事後処理が終わったら連絡する。他の者は寮室で「織斑先生! 今まで何処行ってたんですか~~~!!」……すまない山田君。色々とあってな。とりあえずISは無力化した。搬送準備を頼む。それが済んだらそちらの報告を聞こう」
涙目で千冬さんを呼ぶ山田先生。色々と大変だったのだろう。
そんな二人を尻目に俺は一夏達に声をかける。
「はい、じゃあ一夏達は寮室に戻れ。結果が出たら教えられる範囲で教えてやるから」
「本当ですか?」
「ああ、流石機密とかがあったりやばそうな情報は無理だけどな」
「それは……教えてもらえる情報はありますの?」
「……」
そうセシリアに聞かれて考えてみる。
467機しかないISの未登録のコア、原因不明の暴走、魔力に関する情報、どれもこれも教えれば巻き込まれ必須の情報ばかりだ。しかも教えればまず間違いなくその国にも知られる事になる。
うん、無理だな。おいそれと教えていい情報じゃねーや。
「ま、まあ、それはこれからの調査しだいって事で」
(((((ないんだな~)))))
一夏達の心が一つになった瞬間だった。
「何をしている、さっさと行くぞ」
一夏達の相手をしていた俺に千冬さんが声をかけてきた。
「じゃ、そういう訳だから。部屋で大人しくしててくれ」
そう言って俺とヴィータとザッフィーは千冬さんについていく。
一夏達はしばらくこちらを見ていたが、言ったとおりにアリーナから出て行った。それを確認して、再び足元に目を向ける。そこにはヴィータによって破壊されたISが転がっている。
動くような気配は無い。千冬さんは通信で山田先生に指示を出していた。
「おい一樹」
「ん?」
ヴィータが声をかけてきた。
「調べたい事ってのはなんだ?」
「ん~、無人のISを調査するってのもありっちゃありだけど今はそっちじゃなくて……」
「この「IS」とやらが何故魔力を発していたかか?」
ザッフィーが聞いてくる。
「ご明察だザッフィー。人が乗っているってんならまだしも、無人機で魔法とは全く関係の無い地球産の物が魔力を帯びていた原因を調査する。まずは残留魔力だな。人為的なのか事故なのか似たような魔力が過去にあったかどうかそっからだ」
「ま、妥当なとこだな」
ミッドチルダとほぼ同じ手法の捜査だ。特に変わった捜査の必要も無い。
「と、言うわけでスサノオ」
『残留魔力の解析終了しました』
「「早っ!?」」
スサノオの一言に吃驚する二人。
『基本ですので。言われる前から解析を開始していました』
「「相変らず一樹より優秀だな」」
「酷い!?」
『事実ですから』
「フォローしろよ!?」
酷い事を言う一人と一匹と一機に突っ込みを入れる。
『しかしこの解析結果は予想外でした』
「予想外?」
ソフトバ○クネタはもう古いぞ?
『いえ、ネタではありません』
「じゃあ、何だってんだ?」
『解析の結果非常に良く似た魔力波長がヒットしました』
「では、問題も解決ではないのか?」
ザッフィーが聞いてくる。まあ、ヒットするって事は管理局のデータにその人物が載っているという事だからな。これが人為的なものだと仮定するなら容疑者が浮上したという事になるしな。
『いえ、大問題です。何せよく似た魔力波長は「夜天の書」の主、八神はやてのものなのですから』
「「なっ!?」」
驚くヴィータとザッフィー。まさかその名が出てくるとは思わなかったようだ。まあ、俺もだがな!
「どういうことだ?」
『少々お待ちください……出ました。解析の結果残留魔力の波長は「闇の書」の波長と一致しました』
「と、いう事は?」
『はい、このISは「闇の書」の魔力によってああなった可能性があります』
スサノオの声が俺達三人にはやけに大きく聞こえた。